(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】保持リングを備えるフランジ型マスタ軌道ピン
(51)【国際特許分類】
B62D 55/21 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
B62D55/21 Z
(21)【出願番号】P 2021510021
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 US2019047147
(87)【国際公開番号】W WO2020041235
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-20
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーバース、ブライス
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172418(JP,A)
【文献】実開平01-144182(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329157(US,A1)
【文献】米国特許第05802694(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械(10)の連続軌道(14)用マスタリンクボックス(100)であって、
第1の遠位面(112)、前記第1の遠位面(112)に対向する第1の近位面(114)、前記第1の遠位面(112)および前記第1の近位面(114)の間に延びられる第1のピンボア(118)、第1のリンクシールボア(120)、および前記第1のピンボア(118)の周りに配置され、前記第1の遠位面(112)から挿入された第1の横方向環状凹部(122)を備える左側マスタリンク(102);
第2の遠位面(112)、前記第2の遠位面(112)に対向する第2の近位面(114)、前記第2の遠位面(112)および前記第2の近位面(114)の間に延びられる第2のピンボア(118)、第2のリンクシールボア(120)、および前記第2のピンボア(118)の周りに配置され、前記第2の遠位面(112)から挿入された第2の横方向環状凹部(122)を備える右側マスタリンク(104);
遠位端部(126)、前記遠位端部(126)に対向する近位端部(128)、外周面(130)、前記遠位端部(126)近くの前記外周面(130)の遠位環状溝(138)
、前記遠位端部(126)に配置された遠位カウンタボア(142)および前記近位端部(128)近くの半径方向フランジ(132)を備えるマスタリンクピン(106);および
前記マスタリンクピン(106)の前記遠位環状溝(138)に配置されたマスタ保持リング(107)を含み、
ここで、組み立て中に前記マスタリンクピン(106)は、前記第1のピンボアおよび前記第2のピンボア(118)を通って延びられ、前記半径方向フランジ(132)は、前記第1の横方向環状凹部(122)に隣接し、前記第1の横方向環状溝(138)は、前記第1の遠位面(112)および前記第2の遠位面(112)のうちの1つを超えて遠位に配置される、マスタリンクボックス(100)。
【請求項2】
前記マスタリンクボックス(100)は、前記マスタリンクピン(106)を前記左側または右側マスタリンク(102、104)を介して組み立てられるように構成される、請求項1に記載のマスタリンクボックス(100)。
【請求項3】
前記マスタ保持リング(107)は、前記第1のピンボア(118)の内径および前記第2のピンボア(118)の内径よりも直径が大きい外面(148)を備える、請求項1に記載のマスタリンクボックス(100)。
【請求項4】
前記マスタ保持リング(107)は、三重ラップ保持リング(triple wrap retaining ring)である、請求項1に記載のマスタリンクボックス(100)。
【請求項5】
作業機械(10)の連続軌道(14)で使用するためのマスタリンクボックス(100)であって、
第1の遠位面(112)、前記第1の遠位面(112)に対向する第1の近位面(114)、前記第1の遠位面(112)および前記第1の近位面(114)の間に延びられる第1のピンボア(118)、第1のリンクシールボア(120)、および前記第1のピンボア(118)の周りに配置され、前記第1の遠位面(112)から挿入された第1の横方向環状凹部(122)を備える左側マスタリンク(102);
第2遠位面(112)、前記第2遠位面(112)に対向する近位面(114)、ピンボア(118)、前記第2遠位面(112)および前記第2近位面(114)の間に延びられる第2のリンクシールボア(120)、および前記第2のピンボア(118)の周りに配置され、前記第2遠位面(112)から嵌め込まれた第2横方向環状凹部(122)を備える右側マスタ(104);
前記第1のピンボア(118)および前記第2のピンボア(118)に収容可能なマスタリンクピン(106)であって、前記マスタリンクピン(106)は:
遠位端部(126);
前記遠位端部(126)に対向する近位端部(128);
外周面(130);
前記遠位端部(126)近くの前記外周面(130)内の遠位環状溝(138);
前記遠位端部(126)に配置された遠位カウンタボア(142);および
前記近位端部(128)近くに備えられ、前記外周面(130)から外向きに延びられる突出面(132)を備える半径方向突出部(132)を含む、マスタリンクピン(106);および
前記の遠位環状溝(138)に配置されたマスタ保持リング(107)を含み、
ここで、前記マスタリンクボックス(100)を組み立てるため、前記マスタリンクピン(106)は、最初に前記左側マスタリンク(102)または前記右側マスタリンク(104)のいずれかを介して挿入され、続いて前記マスタ保持リング(107)によって所定の位置に固定されるように構成される、マスタリンクボックス(100)。
【請求項6】
前記マスタリンクピン(106)は、前記マスタリンクボックス(100)内で回転自在である、請求項5に記載のマスタリンクボックス(100)。
【請求項7】
前記突出面(132)は、前記外周面(130)に垂直に延びられる、請求項5に記載のマスタリンクボックス(100)。
【請求項8】
前記突出面(132)は、前記マスタリンクボックス(100)が組み立てられるとき、前記第1の横方向環状凹部(122)および前記第2の横方向環状凹部のうちの1つに隣接する、請求項5に記載のマスタリンクボックス(100)。
【請求項9】
前記遠位環状溝(138)は、前記第1の遠位面(112)および前記第2の遠位面(112)のうちの1つを超えて遠位に配置される、請求項8に記載のマスタリンクボックス(100)。
【請求項10】
前記マスタ保持リング(107)は、三重ラップ保持リング(triple wrap retaining ring)である、請求項5に記載のマスタリンクボックス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、機械軌道、およびこれに関連する組み立ておよび分解戦略に関し、より具体的には、軌道を固定するために機械軌道リンクに収容可能なリンクピンに関する。
【背景技術】
【0002】
建設、鉱山および農業機械、軍用車両、コンベアおよびトルク伝達装置には、1世紀以上も様々な機械軌道が使用されてきた。一般に、機械軌道は、回転要素に対し、ともに結合され、延びられる無限軌道リンクのチェーンで構成される。移動機械を推進するために使用されるものなどの地面係合軌道(ground engaging track)の場合、通常、駆動スプロケットとして知られている歯付き回転要素が機械の重量を支える複数の軌道ローラおよび1つ以上のアイドラ(idler)を中心に軌道を回転させるのにしばしば使用される。このような軌道は広く使用されており、過酷な環境で作動する多くの機械の必須構成要素として位置を獲得している。軌道型機械に使用される軌道の耐久性、有用性およびそれによる商業的成功は、大部分多数の特殊な構成要素に対する何十年にもわたる研究とエンジニアリングの結果である。軌道型機械が、一般に作動する過酷なオフロード環境に適しているということが多くの設計によって立証されているが、事実上すべての実行可能な軌道設計の短所は、サービスや、部品交換または機械分解のために軌道を分解または「離脱(break)」させるのに難しさがあるということである。
【0003】
ある1つの設計によると、ピンを利用して軌道リンクをともに結合し、並列に無限軌道チェーンのセットが形成される。これらの設計のいくつかにおいては、単一のピンが、各並列チェーンの内部リンクと外部リンクをともに結合する。それぞれのチェーンに結合された軌道シュー(track shoes)は、機械を推進するために地面に係合する要素を提供する。圧入(press fit)は、ピンに関連する軌道リンクの間の堅牢な連結を提供するのにしばしば使用される。圧入によって形成されたほとんどの軌道、特にS字型のリンクが備えられた軌道を分解するには、一般にピンを軌道の外へ押し出すための比較的大きな油圧プレスが必要である。ピンを取り外した後にも、潤滑油を保持し、構成要素を異物の流入から保護するのに使用されるシール材(seals)は、軌道のさらなる分解を妨害する可能性があるため、指定されたジョイントで軌道の分解を完了するために追加の油圧プレスを使用する必要がある。分解中に軌道構成要素を損傷しないように細心の注意が必要になる場合が多い。直線リンクを備える軌道は、ピンを外に押し出すのではなく、軌道ピンの端部の外側リンクを引き抜いて整備する場合が多い。
【0004】
機械軌道を分解するのに必要な時間、管理および専用工具により、軌道でマスタリンクを使用することが一般的になった。マスタリンクは、指定されたジョイントで軌道を比較的容易に分解することができるが、これらは依然として専用工具をしばしば必要とし、軌道が一箇所のみで離脱できるように提供される。さらに、マスタリンクは、比較的広範囲に機械加工された部品であるため、高価であって場合によっては軌道に弱点が生じる可能性もある。付加的に、マスタリンクは通常、軌道の片側からのみ軌道に嵌めることができる。
【0005】
「クローラベルト結合装置(Crawler belt coupling apparatus)」という名称の米国特許第9,630,665号は、第1および第2のクローラベルトリンク、マスタピン、係止ピンおよびスナップリング(snap ring)を含むクローリングベルト結合装置を開示する。しかしながら、この特許は、連続軌道のいずれかの側からも組み立てることができず、組み立ても容易ではない。したがって、耐久性に優れ、かつリンクアセンブリに容易にインストールできるリンクピンを必要とする。
【0006】
本発明は、上記に提示された1つ以上の問題点や欠点を解決することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様によれば、作業機械の連続軌道用マスタリンクボックスが提供される。マスタリンクボックスは、第1の遠位面(first distal surface)、第1の遠位面に対向する第1の近位面(first proximal surface)、第1の遠位面と第1の近位面との間に延びられる第1のピンボア(first pin bore)、第1のリンクシールボア、および第1のピンボアの周りに配置され、第1の遠位面から嵌め込まれた第1の横方向環状凹部(first lateral annular recess)を備える左側マスタリンク(left‐hand master link)と、第2の遠位面、第2の遠位面に対向する第2の近位面、第2の遠位面と第2の近位面との間に延びられる第2のピンボア、第2のリンクシールボア、および第2のピンボアの周りに配置され、第2の遠位面から嵌め込まれた第2の横方向環状凹部を備える右側マスタリンク(right‐hand master link)を含む。マスタリンクボックスはまた、遠位端部(distal end)、遠位端部に対向する近位端部(proximal end)、外周面(outer circumferential surface)、遠位端部近くの外周面内の遠位環状溝(distal annular groove)および近位端部近くの半径方向フランジを備えるマスタリンクピンを含む。マスタリンクボックスは、マスタリンクピンの遠位環状溝に配置されたマスタ保持リングをさらに含む。組み立てられるとき、マスタリンクピンは、第1のピンボアおよび第2のピンボアを通って延びられ、半径方向フランジは、第1の横方向環状凹部に隣接し、遠位環状溝は、第1の遠位面および第2の遠位面のうちの1つを超えて遠位の側に配置される。
【0008】
他の態様によれば、作業機械の連続軌道用マスタリンクボックスが提供される。マスタリンクボックスは、第1の遠位面、第1の遠位面に対向する第1の近位面、第1の遠位面と第1の近位面との間に延びられる第1のピンボア、第1のリンクシールボア、および第1のピンボアの周りに配置され、第1の遠位面から嵌め込まれた第1の横方向環状凹部を備える左側マスタリンクと、第2の遠位面、第2の遠位面に対向する第2の近位面、第2の遠位面と第2の近位面との間に延びられる第2のピンボア、第2のリンクシールボア、および第2のピンボアの周りに配置され、第2の遠位面から嵌め込まれた第2の横方向環状凹部を備える右側マスタリンクを含む。マスタリンクボックスはまた、第1のピンボアと第2のピンボアに収容可能なマスタリンクピンを含む。マスタリンクピンは、遠位端部、遠位端部に対向する近位端部、外周面、遠位端部近くの外周面内の遠位環状溝、および近位端部近くに備えられ、外周面から外向きに延びられる突出面を備える半径方向突出部を含む。マスタリンクボックスは、遠位環状溝に配置されたマスタ保持リングをさらに含む。マスタリンクボックスを組み立てるため、マスタリンクピンは、最初に左側マスタリンクまたは右側マスタリンクのいずれかを介して挿入され、続いてマスタ保持リングによって所定の位置に固定されるように構成される。
【0009】
他の様態によれば、作業機械用連続軌道を形成する方法が提供される。この方法は、第1の端部および第2の端部を備えるリンクアセンブリを形成する複数の軌道リンクボックスを提供する段階およびリンクアセンブリの前端部(front end)と後端部(rear end)との間にマスタリンクボックスを提供する段階を含む。マスタリンクボックスは、第1のピンボアと第1のリンクシールボアを備える左側マスタリンク、第2のピンボアと第2のリンクシールボアを備える右側マスタリンク、マスタリンクブッシング(master link bushing)、遠位端部近くには遠位環状溝と近位端部近くには半径方向突出部を備えるマスタリンクピン、およびマスタ保持リングを含む。この方法はまた、リンクアセンブリの第1の端部に第1のリンクシールボアと第2のリンクシールボアを固定する段階、リンクアセンブリの第2の端部を画定する軌道リンクボックスの2つのリンクシールボアの間にマスタリンクブッシングを固定する段階、第1のピンボアおよび第2のピンボアをマスタリンクブッシングと整列する段階、マスタリンクピンを第1のピンボアと第2のピンボアのうちの1つを介して、マスタリンクブッシングを介して、そして第1のピンボアおよび第2のピンボアのうちのもう1つに挿入する段階、およびマスタリンクピンの遠位環状溝にマスタ保持リングを固定する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を使用する実施形態の説明から明らかになるであろう。図面において、
【
図3】第1の例示的な軌道リンクピンを備える軌道リンクボックスの断面図である。
【
図4】第2の例示的な軌道リンクピンを備える軌道リンクボックスの断面図である。
【
図6】リンクアセンブリの前端部に結合された例示的なマスタリンクボックスの斜視図である。
【
図7】リンクアセンブリの前端部および後端部を結合する例示的なマスタリンクボックスの斜視図である。
【
図8】第1の例示的なマスタリンクボックスの断面図である。
【
図9】第2の例示的なマスタリンクボックスの断面図である。
【
図10】
図8のマスタリンクボックスの部分の拡大断面図である。
【
図11】
図8のマスタリンクボックスの部分の拡大断面図である。
【
図12】リンクアセンブリに結合された
図8のマスタリンクボックスの断面に対する斜視断面図である。 特定の例示的な実施形態に関し、以下の詳細な説明が提供されるであろうが、図面は必ずしも縮尺どおりに示される必要はなく、開示された実施形態は、時々図式的かつ部分的な図面に示されるということを理解されたい。さらに、場合によっては、開示された主題の理解に必要でないか、他の詳細を認識し難くする詳細は省略されている可能性がある。したがって、本発明は、本明細書に開示され、かつ説明された特定の実施形態に限定されず、むしろ、全体の開示内容および請求の範囲だけでなく、それに対する任意の等価物を公正な読み出しに限定されるということを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、一実施形態による作業機械10が示されている。作業機械10は、フレーム12およびフレーム12と結合された1つ以上の軌道14を含むことができる。示された実施形態において、作業機械10は、フレーム12に対向して配置された第1の軌道14と同一の1対の同一軌道14を含む高駆動軌道型トラクタである。しかしながら、作業機械10は、連続軌道を備える任意の他の機械であり得るということが理解されよう。たとえば、作業機械10は、半軌道機械(half‐track machine)、掘削機、タンク、その他の類型の移動機械であり得るか、またはコンベアなどの固定機械も本明細書に提示された説明に従って構成され得る。
【0012】
各軌道14は、たとえば、駆動スプロケット16、後方アイドラ18および前方アイドラ20だけでなく、複数の軌道ローラ22を含む複数の回転可能な要素に対して延びられる無限軌道を含むことができる。軌道14は、2つの平行な軌道チェーンを形成する複数のともに結合された軌道リンクボックス24をさらに含み、これは従来の方法で軌道シューと結合することができる。
図2~は
図4において、第1または左側軌道リンク26、第2または右側軌道リンク28、左側および右側軌道リンク26、28の間に配置されたブッシング30、および左側軌道リンク26、ブッシング30および右側軌道リンク28が結合できる軌道リンクピン32を含む例示的な軌道リンクボックス24が示されている。
【0013】
図2に示されるように、左側および右側軌道リンク26、28は、一般に第1の端部34、第2の端部36、遠位面38、近位面40および上面42を備える細長い長円状である。軌道リンク26、28は、実質的に互いの鏡像である場合があり、軌道リンクボックス24で互いに対して実質的に平行に配向される場合がある。一実施形態において、左側および右側軌道リンク26、28は、第1の端部34が遠位外向きにフレア状(flared)またはテーパ状(tapered)となり、第2の端部36が各軌道リンク26、28の残りの部分から近位内向きにフレア状またはテーパ状となるオフセットリンク(off‐set link)である。隣接するリンクボックス24が整列されるとき、1対の軌道リンク26、28の第2の端部36が隣接する1対の軌道リンク26、28の第1の端部34の間に配置され得る範囲まで、第1の端部34は外向きにフレア状になる可能性があり、第2の端部36は内向きにフレア状になる可能性がある。
【0014】
軌道リンク26、28がオフセットリンクとして説明されたが、軌道リンク26、28は様々な形状および構成をとることができる。たとえば、軌道リンク26、28は、内側および外側リンク、S字型リンクまたは任意の他の適切な構成のリンクの交互の対を備える直線リンクであり得る。
【0015】
軌道リンク26、28は、第1の端部34を介して延びられる第1またはピンボア44、および第2の端部36を介して延びられる第2またはリンクシールボア46を備えることができる。ピンボア44は、軌道リンクピン32の一部が収容できる大きさの円形ボアであってもよく、リンクシールボア46は、ブッシング30の一部が収容できる大きさの円形ボアであってもよい。好ましい実施形態において、ピンボア44およびリンクシールボア46はネジ山がない。
【0016】
軌道リンク26、28はまた、上面42に配置され、軌道リンク26、28内に部分的に延びられる1つ以上の軌道シューボア50を含むことができる。軌道シューボア50は、軌道シュー54(
図1)を軌道リンク26、28に固定するために軌道シューファスナ52を少なくとも部分的に収容するようにそれぞれネジ山が形成され、大きさが決められる。好ましい実施形態において、軌道シューファスナ52は、軌道シュー54を介して軌道シューボア50内に延びられ、軌道シュー54を軌道リンク26、28に固定するネジ山ボルト(threaded bolt)である。
【0017】
図2~
図4に示されるように、ブッシング30は、一般に第1の開口56、第1の開口に対向する第2の開口58(図示せず)、円筒状内面60および円筒状外面62を備える中空シリンダである。円筒状外面62は、ブッシング30の端部が軌道リンク26、28のリンクシールボア46内に固定可能に収容できるように、第1および第2の開口56、58近くで半径方向内向きにテーパ状としてもよい。円筒状内面60は、軌道リンクピン32を収容し、軌道リンクピン32が円筒状内面60内で回転可能な大きさであり得る内径を備えるボアを画定する。円筒状外面62がテーパ状になっているように示されているが、ブッシング30は他の設計を備えていてもよい。例えば、円筒状外面62は、階段状外径を備える場合があり、ここで、円筒状外面62は、第1および第2の開口56、58近くのブッシング30の長さに沿って一定の第1の直径、および第1の直径を備える部分の間でブッシング30の長さに沿って一定の第2の直径を備えるか、または任意の他の適切な幾何学的構造を備える。
【0018】
図2~
図4を参照すると、軌道リンクピン32は、実質的に遠位端部64、近位端部66および外周面68を備える円筒状棒(cylindrical rod)である。軌道リンクピン32は、軌道リンク26、28のピンボア44とブッシング30の円筒状内面60を介して少なくとも部分的に挿入されるような大きさおよび形状である。
【0019】
図4に示されるように、軌道リンクピン32は、近位端部66で、またはその近くで外周面68から半径方向外向きに突出するフレア状端部や半径方向フランジまたは突出部70を備えることができる。半径方向突出部70は、外周面68から外向きに延びられる突出面72、および外周面68と実質的に同心であり、突出面72と近位端部66との間に延びられる半径方向外面74を備える。
【0020】
再び
図2に戻ると、軌道リンク26、28は、ピンボア44の周りに配置され、遠位面38から挿入された横方向環状凹部76、およびピンボア44の周りに配置され、近位面40から挿入された内側環状凹部77を含むことができる。横方向環状凹部76は、後述のように、軌道リンクピン32の半径方向突出部70を収容できるような大きさであってもよい。横方向環状凹部76は、半径方向突出部70と実質的に同一の幅であるか、またはそれよりわずかに大きくてもよく、横方向環状凹部76は、突出面72および近位端部66の間に延びられる半径方向突出部70の長さと実質的に同一の深さまで遠位面38から嵌め込まれていてもよい。内側環状凹部77は、ブッシング30を部分的に収容できるような大きさであってもよい。内側環状凹部77は、ブッシング30の第1および/または第2の開口56、58近くのブッシング30の円筒状外面62と実質的に同一の幅であるか、またはそれよりわずかに大きくてもよい。内側環状凹部77はまた、後述のように、ロードリング(load ring)78、シールリップ(seal lip)82を備えるシールリング80、およびスラストリング(thrust ring)83がブッシング30とそれぞれの軌道リンク26、28との間に配置できるように、軌道リンクボックス24が組み立てられるとき、近位面40から凹まれていてもよい。内側環状凹部77は、軌道リンクボックス24がロードリング78、シールリング80およびスラストリング83を含み得るように凹まれているが、他のシール材、リング、シールリング、またはこれらの任意の組み合わせが利用できることが理解されよう。たとえば、内側環状凹部77は、軌道リンクボックス24がスラストリングおよびオイルシール(oil seal)、グリースシール(grease seal)、または任意の他の適切なシール材、あるいはシールリングを含み得るように凹まれていてもよい。
【0021】
図4に示されるように、軌道リンクピン32は、遠位端部64および/または近位端部66近くの外周面68に1つ以上の環状溝75を含むことができる。環状溝75は、外周面68から凹まれていてもよい。示された実施形態において、環状溝75は、丸みを帯びている。しかしながら、他の実施形態も考慮されるということが理解されよう。たとえば、環状溝75は、三角形、長方形、または任意の他の適切な設計である可能性がある。
【0022】
軌道リンクボックス24はまた、軌道リンクピン32の環状溝75に配置された1つ以上の保持リング88を含むことができる。保持リング88は、軌道リンクピン32の環状溝75に固定可能に嵌め込まれ得るような円盤状および大きさであり得る。保持リング88は、軌道リンク26、28のピンボア44より大きくてもよい。軌道リンクピン32が軌道リンクボックス24に挿入されるとき、保持リング88は、軌道リンクピン32の環状溝75に配置され、軌道リンクピン32を軌道リンクボックス24に保持することができる。好ましい実施形態において、保持リング88は、環状溝75に圧入される。
【0023】
図4に示されるように、軌道リンクピン32は、遠位端部64から軌道リンクピン32の長さ方向に延びられる長さ方向ボア79および長さ方向ボア79から外周面68の半径方向外向きに延びられる側面流体通路81を含むことができる。このように、軌道リンクピン32の外周面68、側面流体通路81、長さ方向ボア79および遠位端部64は、流体的に連結される可能性がある。軌道リンクピン32はまた、遠位端部64から長さ方向ボア79を閉鎖するか、もしくはシールするために遠位端部64から長さ方向ボア79内に挿入され得るキャップ85を含むことができる。一実施形態において、キャップ85は、長さ方向ボア79をシールするために遠位端部64から長さ方向ボア79に対してネジ山が形成され得る螺子であるか、別な方法で固定され得る他のファスナである。
【0024】
軌道リンクピン32が、保持リング88、長さ方向ボア79、側面流体通路81およびキャップ85が収容できる1つ以上の環状溝75を備えるものとして説明されたが、他の実施形態も考慮され得る。たとえば、グリースが軌道リンクボックス24内の潤滑剤として使用される場合、後述のように、軌道リンクピン32は、実質的に環状溝75のない滑らかな外周面68を備えてもよく、軌道リンクボックス24は、軌道リンクボックス24に軌道リンクピン32を固定するための保持リング88を含まなくてもよい。また、グリースが軌道リンクボックス24内の潤滑剤として使用される場合、軌道リンクピン32は、実質的に、ある内部通路やボア、またはキャップのない固体棒(solid rod)であってもよい。
【0025】
図3および
図4に示されるように、軌道リンクピン32はまた、遠位端部64に配置された第1のカウンタボア84および/または近位端部66に配置された第2のカウンタボア87を含むことができる。第1および第2のカウンタボア84、87は、部分的に軌道リンクピン32に延びられる場合があり、軌道リンクピン32を組み立てやすくつくることができおよび/またはほこりまたは他の異物が軌道リンクボックス24に蓄積するのを防ぐことができる。示された実施形態において、第1および第2のカウンタボア84、87は、相対的に円錐状(conical)である。しかしながら、他の実施形態も考慮されるということが理解されよう。たとえば、第1および/または第2のカウンタボア84、87は、丸みを帯びた形、三角形、長方形、五角形、または任意の他の適切な形状であり得る。
【0026】
軌道リンクピン32が、遠位端部64に配置された第1のカウンタボア84を備えるものとして説明されたが、他の実施形態も考慮されるということが理解されよう。たとえば、軌道リンクピン32が、長さ方向ボア79、側面流体通路81およびキャップ85を含む場合、軌道リンクピン32は、遠位端部64に配置された第1のカウンタボア84を備えなくてもよい。
【0027】
図3~
図5を参照すると、第1または内側軌道リンクの対26、28が第2または外側軌道リンクの対26、28に結合され、リンクアセンブリ86を形成することができる。第1または内側軌道リンクの対26、28のリンクシールボア46は、ブッシング30の第1および第2の開口56、58またはその近くでブッシング30の円筒状外面62に適切に固定される場合がある。リンクシールボア46は、油圧プレスなどの工具または機械を使用することにより、ブッシング30に圧入され得る。しかしながら、軌道リンク26、28のリンクシールボア46は、任意の他の適切な手段によってブッシング30に固定されるか、もしくは取り付けられる場合がある。
【0028】
次いで、第2または外側軌道リンクの対26、28のピンボア44は、ブッシング30の第1および第2の開口56、58および/または第1の軌道リンクの対26、28のリンクシールボア46と整列されることがある。次いで、軌道リンクピン32は、外側の対の左側または右側軌道リンク26、28のうちの1つのピンボア44とブッシング30を介し、外側の対の軌道リンク26、28のうちのもう一つのピンボア44に挿入され得る。軌道リンクピン32が、最初に挿入された軌道リンク26、28の環状凹部76に軌道リンクピン32の突出面72が隣接するまで、軌道リンクピン32は、ピンボア44およびブッシング30を介して挿入され得る。軌道リンクピン32は、油圧プレスなどの工具または機械を使用することにより、ピンボア44およびブッシング30に圧入され得る。しかしながら、軌道リンクピン32は、任意の他の適切な手段によってピンボア44およびブッシング30を介して固定されるか、もしくは挿入される場合がある。軌道リンクピン32は、可能であれば、軌道リンクピン32と軌道リンクピン32に固定された外側軌道リンクの対26、28が、軌道リンクピン32を介して延びられる軸を中心にブッシング30とブッシング30に固定された内側軌道リンクの対26、28から独立して回転できるように外側軌道リンクの対26、28のピンボア44にのみ固定される場合がある。軌道リンクボックス24が隣接する軌道リンクボックス24に固定されると、軌道シュー54は、軌道シュー54を介して1つ以上の軌道シューボア50に1つ以上の軌道シューファスナ52に挿入することにより、軌道リンク26、28の上面42に固定することができる。
【0029】
図3~
図5に示されるように、第1または内側軌道リンクの対26、28のリンクシールボア46、ブッシング30の端部、ロードリング78、シールリング80、スラストリング83および軌道リンクピン32の外周面68は、軌道リンクピン32がリンクシールボア46およびブッシング30を介して挿入されるとき、流体シールを形成することができる。ロードリング78は、ブッシング30と軌道リンク26、28との間に流体シールを形成するためにシールリング80のシールリップ82をブッシング30の端部に対して押し付けるか、加圧するシールリング80のスラスト荷重(thrust load)や類似の力を提供することがある。スラストリング83は、ロードリング78とシールリング80を保護するためにブッシング30と軌道リンク26、28の内側環状凹部77を分離する。その結果、軌道リンクピン32が軌道リンクボックス24に挿入されると、ブッシング30の円筒状内面60、軌道リンクピン32の外周面68、ロードリング78、シールリング80およびスラストリング83の間にシールされたリンクキャビティ90が形成される。軌道リンクボックス24が、シールされたリンクキャビティ90を形成するロードリング78、シールリング80およびスラストリング83を備えるものとして説明されたが、他のシール材、リングおよびシールリングまたはこれらの組み合わせがシールされたリンクキャビティ90を形成するために使用され得るということが理解されよう。たとえば、軌道リンクボックス24は、軌道リンクピン32が長さ方向ボア79を含む場合などはスラストリングとオイルシールを使用することができるか、軌道リンクピン32が長さ方向ボア79を含まない場合などにはグリースシールを使用することができるか、または任意の他の適切なシール材、リングまたはシールリング、あるいはこれらの任意の組み合わせを使用することができる。
【0030】
軌道リンクピン32がピンボア44およびブッシング30に取り付けられる前に、ブッシング30内部軌道リンクピン32の回転を容易にし、ブッシング30および/または軌道リンクピン32の摩擦および/または摩耗を低減し、熱発生を低減するため、グリース、オイルまたは任意の他の適切な潤滑剤などの潤滑剤92がシールされたリンクキャビティ90に挿入され得る。
【0031】
第1実施形態において、潤滑剤92は、軌道リンクピン32が軌道リンクボックス24に挿入される前、または軌道リンクピン32が軌道リンクボックス24に部分的に挿入された後に軌道リンクピン32が軌道リンクボックス24に完全に挿入される前に、シールされたリンクキャビティ90および/またはブッシング30に挿入され得る。このように、軌道リンクピン32が軌道リンクボックス24に完全に挿入されるとき、潤滑剤92は軌道リンクボックス24のシールされたリンクキャビティ90内に流体的にシールされよう。
【0032】
軌道リンクピンが長さ方向ボア79と側面流体通路81(
図4)を備える第2の実施形態において、たとえば、潤滑剤92がオイルである場合など、軌道リンクピン32が軌道リンクボックス24に挿入された後に潤滑剤92が軌道リンクピン32の長さ方向ボア79に挿入され、潤滑剤92が側面流体通路81を介してシールされたリンクキャビティ90に流れることができる。十分な量の潤滑剤92がシールされたリンクキャビティ90に追加された後、キャップ85は長さ方向ボア79に挿入され、長さ方向ボア79をシールすることにより、シールされたリンクキャビティ90内に潤滑剤92を保持することができる。
【0033】
軌道リンクピン32が、軌道リンク26、28のうちの1つのピンボア44、ブッシング30および軌道リンク26、28のうちのもう1つのピンボア44を通って挿入された後、保持リング88は、軌道リンクピン32の遠位端部64が延びられる軌道リンクピン32の環状溝75に固定される場合がある。保持リング88が、軌道リンク26、28のピンボア44よりも大きいため、保持リング88は、環状溝75に固定されるとき、軌道リンクピン32の遠位端部64が延びられる軌道リンク26、28のピンボア44を通って軌道リンクピン32の遠位端部64が後退するのを防ぐであろう。このようにして、保持リング88は、軌道リンクボックス24に軌道リンクピン32を固定することができる。
【0034】
リンクアセンブリ86を形成するために軌道リンク26、28をともに結合するプロセスは、リンクアセンブリ86が実質的に連続軌道14の長さになるまで、追加の軌道リンクの対26、28、ブッシング30および軌道リンクピン32を使用して繰り返され得る。好ましい実施形態において、リンクアセンブリ86が連続軌道14の所望の長さよりも短い1つの軌道リンクボックス24になるまでプロセスが繰り返される。
【0035】
最終リンクアセンブリ86は、実質的にリンクボックス24の直線状チェーンであり、第1または前端部94および第2または後端部96を備える。好ましい実施形態において、リンクアセンブリ86の前端部94は、前方軌道リンク26、28のピンボア44が露出されるように前方リンクボックス24の軌道リンク26、28の第1の端部34で構成され、リンクアセンブリ86の後端部96は、後方軌道リンク26、28のリンクシールボア46がともに嵌め込まれて整列することがあり、後続軌道リンク26、28のピンボア44と結合されるように後方リンクボックス24の軌道リンク26、28の第2の端部36で構成される。リンクアセンブリ86に関連する前端部と後端部という用語は、例示を明確にするために使用される説明であって、リンクアセンブリ86の前端部94はリンクアセンブリ86の後方に配置される場合があり、リンクアセンブリ86の後端部96はリンクアセンブリ86の前方に配置される場合があるということが理解されよう。
【0036】
ここで、
図6および
図7に戻ると、マスタリンクボックス100は、連続軌道14を形成するためにリンクアセンブリ86の前端部および後端部94、96に結合され得る。マスタリンクボックス100は、第1または左側マスタリンク102、第2または右側マスタリンク104、マスタリンクブッシング105、マスタリンクピン106およびマスタ保持リング107を含むことができる。
【0037】
図6および
図7に示されるように、マスタリンク102、104は、軌道リンク26、28と大きさおよび形状が類似している。軌道リンク26、28と同様に、マスタリンク102、104は、外向きにフレアされた第1の端部108、内向きにフレアされた第2の端部110、遠位面112、近位面114、上面116、第1の端部108を介して延びられるピンボア118、第2の端部110を介して延びられるリンクシールボア120(図示せず)、ピンボア118の周りに配置され、遠位面112から嵌め込まれた横方向環状凹部122、ピンボア118の周りに配置され、近位面114から嵌め込まれた内側環状凹部123、および上面116の少なくとも1つの軌道シューボア124をそれぞれ備える。上面116の少なくとも1つの軌道シューボア124は、軌道シュー54(
図1)をマスタリンクボックス100に固定するために軌道シューファスナ52(
図2)が収容できるマスタリンク102、104に部分的に延びられる場合がある。好ましい実施形態において、連続軌道14は、複数の軌道リンクボックス24およびマスタリンクボックス100で構成される。しかしながら、他の実施形態も考慮されるということが理解されよう。たとえば、マスタリンク102、104は、リンクアセンブリ86の残りの部分において、軌道リンク26、28の代わりに使用され得るか、リンクアセンブリ86は、軌道リンクボックス24およびマスタリンクボックス100の任意の他の組み合わせであり得る。
【0038】
示された実施形態において、横方向環状凹部122は、直径が約56.4ミリメートル~57.6ミリメートル、好ましくは約56.8ミリメートル~57.2ミリメートル、より好ましくは約57.0ミリメートルである。ピンボア118は、直径が約45.5ミリメートル~46.0ミリメートル、好ましくは約45.7ミリメートルである。
【0039】
図6~
図9および
図12に示されるように、マスタリンクブッシング105は、一般に第1の開口113、第1の開口113に対向して配置された第2の開口115(図示せず)、円筒状内面117および円筒状外面119を備える中空シリンダであり得る。後述のように、マスタリンクブッシング105の端部が、リンクアセンブリ86の後端部96を画定する軌道リンク26、28のリンクシールボア46内に固定可能に収容できるように、円筒状内面117は実質的に滑らかなボアであってもよく、円筒状外面119は第1および第2の開口113、115近くで半径方向内向きにテーパ状としてもよい。円筒状内面117は、マスタリンクピン106を収容し、マスタリンクピン106が円筒状内面117内で回転可能な大きさであり得る内径を備えるボアを画定する。円筒状外面119がテーパ状として示されているが、他の形状も考慮される。たとえば、円筒状外面119は、階段状外径を備える場合があり、ここで、円筒状外面119は、第1および第2の開口113、115近くでマスタリンクブッシング105の長さに沿って一定の第1の直径、および第1の直径を備える部分の間でマスタリンクブッシング105の長さに沿って一定の第2の直径を備えるか、または任意の他の適切な幾何学的構造を備える。
【0040】
マスタリンクボックス100のマスタリンクブッシング105は、軌道リンクボックス24のブッシング30と実質的に同一であり得る。しかしながら、マスタリンクボックス100のマスタリンクブッシング105は、軌道リンクボックス24のブッシング30とは異なる場合がある。
【0041】
図6~
図12を参照すると、マスタリンクピン106は、一般に遠位端部126、近位端部128および外周面130を備える円筒状の棒である。遠位端部および近位端部126、128は、実質的に円形で平坦であってもよく、近位端部128は、外周面130よりも半径方向に大きくてもよい。マスタリンクピン106は、近位端部128の近くの外周面130から半径方向外向きに延びられる半径方向フランジまたは突出部132を備え、これは外周面130から外向きに延びられる突出面134と、外周面130と実質的に同心であり、突出面134と近位端部128との間に延びられる半径方向外周面136を含むことができる。示された実施形態において、突出面134は、外周面130に垂直である。しかしながら、他の実施形態も考慮されるということが理解されよう。たとえば、突出面134は、後述のように、近位端部128に向かって角度が付けられるか、遠位端部126に向かって角度が付けられるか、丸みを帯びるか、または任意の他の適切な形状であってもよく、これは、マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100を介して過度に挿入されるのを防ぐためにマスタリンク102、104に隣接していてもよい。一実施形態において、外周面130は、後述のように、第1および第2のマスタリンク102、104のピンボア118およびマスタリンクブッシング105を介して配置されるマスタリンクピン106の挿入を容易にするために遠位端部126近くでフィレットされるか、テーパ状になるか、もしくは他の形状となる。
【0042】
マスタリンクピン106はまた、遠位端部126近くの外周面130内に配置され、その周りに円周方向に延びらえる遠位環状溝138を含む。後述のように、遠位環状溝138は、マスタリンク102、104がマスタリンクボックス100に整列されるとき、マスタリンク102、104の横方向環状凹部122の間の長さに一般に相応する半径方向突出部132からの距離に配置される。遠位環状溝138は、外周面130から凹まれてもよく、マスタリンクボックス100にマスタリンクピン106を固定するためにマスタ保持リング107または他の固定部材を収容する大きさおよび形状として形成されてもよい。示された実施形態において、遠位環状溝138は長方形である。しかしながら、遠位環状溝138は他の形状であり得るということが理解されよう。たとえば、遠位環状溝138は、丸みを帯びた形、三角形、長円形または任意の他の適切な形状であり得る。
【0043】
図8~
図10に示されるように、マスタリンクピン106はまた、近位端部128および/または半径方向突出部132近くの外周面130に配置され、その周りに円周方向に延びられる近位環状溝140を含むことができる。後述のように、近位環状溝140は、マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100に挿入され、突出面134がマスタリンク102、104のうちの1つの横方向環状凹部122に隣接するとき、突出面134近くのマスタリンクピン106への応力集中を低減するために外周面130から凹まれていてもよい。近位環状溝140はまた、マスタリンクボックス100の製造および組み立ての容易性を向上させることができる。示された実施形態において、近位環状溝140は、実質的に角が丸みを帯びた長方形であり、近位端部128に最も近い近位環状溝140の壁は、半径方向突出部132の突出面134の一部を形成するか、これと同様に拡張される場合がある。しかしながら、遠位環状溝138は他の設計であり得るということが理解されよう。たとえば、遠位環状溝140は、長方形、卵形(oval)、三角形、楕円形(elliptical)または任意の他の適切な形状であってもよい。
【0044】
再び
図6~
図12に戻ると、遠位端部126近くのマスタリンクピン106の遠位部分は、マスタリンク102、104およびマスタリンクブッシング105のピンボア118を通してマスタリンクピン106の配置を容易にするために半径方向にテーパ状となるか、狭くなる場合がある。示された実施形態において、遠位環状溝138と遠位端部126との間の外周面130は、遠位環状溝138と近位環状溝140との間の外周面130の一部と同心であり、この部分よりも小さい直径を備える。しかしながら、遠位端部126近くのマスタリンクピン106の半径方向表面は、他の設計である可能性がある。たとえば、遠位環状溝138と遠位端部126との間の外周面130は、テーパ状であるか、角度付け形状であるか、または丸みを帯びた形状であってもよい。
【0045】
図8、
図9、
図11および
図12に示されるように、マスタリンクピン106は、マスタリンクピン106の遠位端部126に配置された遠位カウンタボア142を含むことができる。遠位カウンタボア142は、遠位端部126のほぼ中央からマスタリンクピン106の近位端部128に向かって近位端部128に最も近い遠位環状溝138のエッジと実質的に同一であるか、それよりわずかに遠い深さまで延びられる場合がある。遠位カウンタボア142は、後述のように、遠位環状溝138内部およびその周りにほこりまたは他の異物が蓄積するのを防ぐことができ、これにより、遠位環状溝138およびその中に配置されたマスタ保持リング107を保護することができる。
【0046】
示された実施形態において、遠位カウンタボア142は、実質的により大きな傾斜を備え、マスタリンクピン106にさらに延びられる第1の円錐形部分と、傾斜がより小さく、第1の円錐形部分よりマスタリンクピン106にわずかに遠くまで延びられる第2の円錐形部分を備える円錐形である。しかしながら、遠位カウンタボア142は他の設計である可能性がある。たとえば、遠位カウンタボア142は、長方形、円形、丸みを帯びた形、三角形、曲線形、円筒形、長方形、六角形または任意の他の適切な形状であってもよい。
【0047】
図6、
図8、
図9、
図11および
図12に示されるように、マスタリンクピン106はまた、マスタリンクピン106の近位端部128に配置された近位カウンタボア144を含むことができる。近位カウンタボア144は、近位端部128のほぼ中央からマスタリンクピン106の遠位端部126に向かって遠位端部126に最も近い近位環状溝140のエッジと実質的に同一であるか、それよりわずかに遠い深さまで延びられる場合がある。近位カウンタボア144は、マスタリンク102、104の横方向環状凹部122およびマスタリンク102、104、外周面130およびマスタリンクピン106の半径方向突出部132の間にほこりまたは他の異物が蓄積するのを防ぎ、マスタリンク102、104のピンボア118およびマスタリンクピン106の半径方向突出部132を保護する。後述のように、近位カウンタボア144はまた、マスタリンクボックス100のいずれかの側からマスタリンクボックス100へのマスタリンクピン106の配置を容易にすることができる。
【0048】
示された実施形態において、近位カウンタボア144は、実質的に遠位カウンタボア142の鏡像である。しかしながら、他の実施形態も考慮されるということが理解されよう。たとえば、近位カウンタボア144は、長方形、円形、丸みを帯びた形、三角形、曲線形、円筒形、または任意の他の適切な形状であってもよい。
【0049】
図9に示されるように、マスタリンクピン106は、遠位端部126からマスタリンクピン106の長さ方向に延びられる長さ方向ボア160および長さ方向ボア160から外周面130の半径方向外向きに延びられる側面流体通路162を含むことができる。このように、マスタリンクピン106の外周面130、側面流体通路162、長さ方向ボア160および遠位端部126は、流体的に連結される可能性がある。マスタリンクピン106はまた、遠位端部126から長さ方向ボア160を閉鎖するか、もしくはシールするために遠位端部126から長さ方向ボア160内に挿入され得るキャップ164を含むことができる。好ましい実施形態において、キャップ164は、長さ方向ボア160を密封するために遠位端部126から長さ方向ボア160に対してネジ山が形成され得る螺子であるか、別な方法で固定され得る他のファスナである。
【0050】
マスタリンクピン106が、遠位端部126に配置された遠位カウンタボア142を備えるものとして説明されたが、他の実施形態も考慮されるということが理解されよう。たとえば、マスタリンクピン106が、長さ方向ボア160、側面流体通路162およびキャップ164を含む場合、マスタリンクピン106は、遠位端部126に配置された遠位カウンタボア142を備えなくてもよい。
【0051】
示された実施形態において、マスタリンクピン106は、遠位端部と近位端部126、128との間に延びられる長さが約244.5ミリメートル~246.5ミリメートルであり、好ましくは約250.0ミリメートル~246.0ミリメートルであり、より好ましくは約245.5ミリメートルであり、外周面130の直径は、約45.90ミリメートル~45.95ミリメートルであり、好ましくは約45.907ミリメートル~45.933ミリメートルであり、より好ましくは約45.92ミリメートルである。リンクピンの遠位環状溝138は約2.77ミリメートルであり、長さは約3.20ミリメートル~3.46ミリメートルであり、好ましくは約3.32ミリメートルである。マスタリンクピン106の半径方向突出部132は、外径が約49.0ミリメートル~50.0ミリメートルであり、好ましくは約49.5ミリメートルである。遠位環状溝138は、半径方向突出部132からの距離が約225.11ミリメートル~225.37ミリメートルであり、好ましくは約225.24ミリメートルである。近位環状溝140は、長さが約2.5ミリメートル~3.5___であり、好ましくは約3.0ミリメートルであり、マスタリンクピン106の外周面130から約0.4ミリメートル~0.8ミリメートル、好ましくは約0.6ミリメートルの深さに凹まれている。
【0052】
図6、
図8、
図9、
図11および
図12を参照すると、マスタ保持リング107は、円筒状内面146、円筒状外面148、遠位面150および近位面152を備える円盤状シール材である。内面および外面146、148は、遠位および近位面150、152の間の距離を延ばす。マスタ保持リング107の内面146は、遠位環状溝138内のマスタリンクピン106の周りに固定されるような大きさおよび形状に形成されてもよい。
【0053】
マスタリンクピン106の遠位環状溝138に固定されるか、別な方法で配置されるとき、マスタ保持リング107は、遠位環状溝138の外へ延びられる場合があり、マスタ保持リング107の外面148がマスタリンクピン106の外周面130を超えて延びられる場合がある。マスタ保持リング107の外面148は、マスタリンク102、104のピンボア118の内径よりも大きい直径を備えてもよい。このような構成において、マスタ保持リング107が遠位環状溝138に配置されると、マスタ保持リング107は、挿入側面に応じてマスタリンクピン106がいずれかのマスタリンク102、104のピンボア118を通って後退するのを防ぐことができる。マスタ保持リング107は、外周面130に沿って遠位環状溝138の幅と実質的に同一の遠位面および近位面150、152の間の深さを備えてもよい。しかしながら、マスタ保持リング107の深さが遠位環状溝138の深さよりも浅い場合、1つ以上のマスタ保持リング107が遠位環状溝138内に配置され、マスタリンクボックス100内のマスタリンクピン106が固定できるということが理解されよう。
【0054】
好ましい実施形態において、マスタ保持リング107は、実質的に工具鋼(tool steel)または他の弾性材料などの線形の鋼や他の金属片である三重ラップ保持リング(triple wrap retaining ring)であり、これは遠位環状溝138でマスタリンクピン106を中心に3回巻き付けられる。このような実施形態において、マスタ保持リング107は、マスタ保持リング107の大きさを拡大および/またはリサイズするために圧入工具または他の工具を使用せずにマスタリンクピン106の遠位環状溝138に固定されるか、配置される場合がある。しかしながら、マスタ保持リング107は他の設計も備え得るということが理解されよう。たとえば、マスタ保持リング107は、マスタリンクピン106を中心に1回、2回または4回以上巻き付けられる鋼(steel)のストリップであり得るか、遠位環状溝138に圧入されるか、スレッジされた(sledged)単独リング(solitaryring)であり得る。
【0055】
示された実施形態において、マスタ保持リング107は、内面146の直径が約42.72ミリメートルであり、外径が約46.5ミリメートル~47.5ミリメートルであり、好ましくは約46.86ミリメートル~47.12ミリメートルであり、より好ましくは約46.99ミリメートルである。マスタ保持リング107は、遠位面150と近位面152との間の厚さが約2.95ミリメートル~3.00ミリメートルであり、好ましくは約2.96ミリメートル~2.98ミリメートルであり、より好ましくは2.97ミリメートルである。
【0056】
図11および
図12に示されるように、マスタリンクボックス100はまた、1つ以上のロードリング78、シールリップ82を備える1つ以上のシールリング80、およびマスタリンクブッシング105とマスタリンク102、104の内側環状凹部123の間に配置された1つ以上のスラストリング83を含むことができる。ロードリング78は、後述のように、マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100に固定されるとき、マスタリンクブッシング105、マスタリンク102、104およびマスタリンクピン106の間に流体シールを形成するためにマスタリンクブッシング105の端部に対してシールリング80のシールリップ82を押し付けるか、加圧するシールリング80のスラスト荷重や類似の力を提供することができる。スラストリング83は、マスタリンクブッシング105とマスタリンク102、104の内側環状凹部123を分離し、ロードリング78とシールリング80を保護することができる。潤滑剤92がオイルである場合などの一実施形態において、スラストリング83は粉末金属で製造され、ロードリング78はゴムで製造され、シールリング80はポリカーボネート材料で製造される。潤滑剤がグリース92の場合などの代替の実施形態において、シールリング80はウレタンで製造される。しかしながら、スラストリング83、ロードリング78およびシールリング80は、工具鋼、ポリカーボネートまたは任意の他の適切な材料で製造され得るということが理解されよう。
【0057】
図6~
図12を参照すると、マスタリンクボックス100は、連続軌道14を形成するためにリンクアセンブリ86の前端部および後端部94、96の間に固定することができる。
【0058】
一実施形態において、マスタリンク102、104の第2またはリンクシールボア120は、リンクアセンブリ86の前端部94上に事前に結合される。マスタリンク102、104の第2の端部110は、ブッシング30の円筒状外面62の周りにマスタリンク102、104のリンクシールボア120を固定することにより、ブッシング30と連結することができる。次いで、マスタリンク102、104のリンクシールボア120およびブッシング30は、リンクアセンブリ86の前端部94を画定する軌道リンク26、28のピンボア44とともに配置および整列されることがある。1つ以上のロードリング78、1つ以上のシールリング80および1つ以上のスラストリング83がブッシング30、軌道リンク26、28の内側環状凹部77およびマスタリンク102、104の間に配置されることがある。ボア120、44が整列されると、軌道リンクピン32は、リンクアセンブリ86、ブッシング30およびマスタリンク102、104の前端部94を結合するためにリンクアセンブリ86の前端部94を画定する軌道リンク26、28およびマスタリンク102、104の間に固定されたブッシング30を介して挿入され得る。軌道リンクピン32が挿入されることがあり、マスタリンク102、104は、任意の他の適切な手段によってリンクアセンブリ86の前方リンクボックス24のリンク26、28の第1の端部34に結合されることがある。たとえば、軌道リンクピン32は、前方リンク26、28のピンボア44、ブッシング30およびマスタリンク102、104のリンクシールボア120内に圧入され、かつシールされてもよい。
【0059】
さらなる実施形態において、マスタリンクブッシング105は、リンクアセンブリ86の後端部を画定する軌道リンク26、28のリンクシールボア46の間に事前に結合されてもよく、マスタリンク102、104の第1の端部108は、リンクアセンブリ86の後端部96に事前に結合されていない。マスタリンクブッシング105は、圧入または任意の他の適切な手段によってリンクアセンブリ86の後端部96を画定する軌道リンク26、28のリンクシールボア46の間に固定される場合がある。このような実施形態において、マスタリンクボックス100を含むリンクアセンブリ86は、作業機械10の回転可能な要素16、18、20、22の周りに巻き付けられることがあり、マスタリンク102、104の第1の端部108は、軌道リンク26、28およびマスタリンク102、104が所定の位置に整列され、連続軌道14を形成するとき、リンクアセンブリ86の後端部96に後続して結合されることがある。
【0060】
連続軌道14を形成するためにリンクアセンブリ86の前端部と後端部94、96との間にマスタリンクボックス100を結合するためにマスタリンク102、104のリンクシールボア120は、上述のように、軌道リンクピン32によるリンクアセンブリ86の前端部94に固定されることがあり、マスタリンク102、104のピンボア118は、その間に固定されたマスタリンクブッシング105とともにリンクアセンブリ86の後端部96の第1および第2の軌道リンク26、28のリンクシールボア46と整列されることがある。次いで、マスタリンクピン106の遠位端部126は、遠位面112から左側または右側マスタリンク102、104のピンボア118と、マスタリンクブッシング105(軌道リンク26、28のリンクシールボア46の間に配置される)、および他のマスタリンク102、104のピンボア118を通って挿入されるか、別な方法で嵌め込まれる。マスタリンクピン106は、マスタリンクピン106の半径方向突出部132の突出面134がマスタリンクピン106の遠位端部126が最初に挿入されたマスタリンク102、104の横方向環状凹部122に隣接するまで、マスタリンク102、104のうちの1つと、マスタリンクブッシング105、および他のマスタリンク102、104を介して挿入される。
【0061】
図12に示されるように、マスタリンクボックス100は、マスタリンク102、104の内側環状凹部123とマスタリンクブッシング105との間に配置された1つ以上のロードリング78、1つ以上のシールリング80、および1つ以上のスラストリング83を含むことができる。ロードリング78、シールリング80およびスラストリング83は、マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100に固定されるとき、ロードリング78がマスタリンクブッシング105、マスタリンク102、104およびマスタリンクピン106の間に流体シールを形成するためにマスタリンクブッシング105の端部に対してシールリング83のシールリップ82を押し付けるか、加圧するシールリング80上にスラスト荷重や類似の力が提供できるように配置されることがある。スラストリング83は、ロードリング78とシールリング80を保護するためにマスタリンクブッシング105とマスタリンク102、104の内側環状凹部123を分離することができる。その結果、マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100に挿入されると、マスタリンクブッシング105の円筒状内面60と、マスタリンクピン106の外周面130、ロードリング78、シールリング80、スラストリング83、およびマスタリンク102、104の内側環状凹部123および/またはピンボア118の間にシールされたリンクキャビティ158が形成される。
【0062】
マスタリンクボックス100は、シールされたリンクキャビティ158を形成するロードリング78、シールリング80およびスラストリング83を備えるものとして説明されたが、他のシール材、リングおよびシールリングまたはこれらの組み合わせがシールされたリンクキャビティ158を形成するために使用され得るということが理解されよう。たとえば、マスタリンクボックス100は、スラストリングと、マスタリンクピン106が長さ方向ボア160を含む場合などはオイルシール、マスタリンクピン106が長さ方向ボア160を備えない場合などにはグリースシール、または任意の他の適切なシール材、リングまたはシールリング、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0063】
マスタリンクボックス100はまた、シールされたリンクキャビティ158に潤滑剤92を含むことができる。潤滑剤92は、マスタリンクブッシング105内でマスタリンクピン106の回転を容易にし、マスタリンクブッシング105および/またはマスタリンクピン106の摩擦および/または摩耗を低減し、熱発生を低減することができる。第1の例示的な実施形態において、マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100に完全に挿入される前に、潤滑剤92がシールされたリンクキャビティ90および/またはマスタリンクブッシング105に挿入され得る。このように、マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100に完全に挿入されるとき、潤滑剤92は、マスタリンクボックス100のシールされたリンクキャビティ158内に流体的にシールされるであろう。
【0064】
潤滑剤92がオイルであり、マスタリンクピン106が長さ方向ボア160、側面流体通路162およびキャップ164を含む場合などの第2の例示的な実施形態において、潤滑剤92は、マスタリンクピン106の長さ方向ボア160と、側面流体通路162を介した後、マスタリンクボックス100のシールされたリンクキャビティ158に追加され得る。このような実施形態において、潤滑剤92は、たとえば、マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100に完全に挿入された後など、マスタリンクボックス100の組み立て中に後述のように、常に追加することができる。十分な潤滑剤92がマスタリンクボックス100のシールされたリンクキャビティ158に追加された後、キャップ164は長さ方向のボア160に挿入され、長さ方向のボア160をシールし、これにより、シールされたリンクキャビティ158に潤滑剤92を保持することができる。
【0065】
マスタリンクピン106が最初に挿入されたマスタリンク102、104の横方向環状凹部122にマスタリンクピン106の半径方向突出部132が隣接するまでマスタリンクピン106が左側または右側マスタリンク102、104のピンボア118とマスタリンクブッシング105および他のマスタリンク102、104のピンボア118を通って嵌め込まれたとき、遠位環状溝138は、マスタリンクピン106が2番目に挿入されたマスタリンク102、104(
図8および
図9の右側マスタリンク104および
図12の左側マスタリンク102)のピンボア118の遠位側に配置されるであろう。次いで、マスタ保持リング107は、マスタリンクピン106の遠位環状溝138に固定されるか、別な方法で嵌め込まれる場合がある。好ましい実施形態において、マスタ保持リング107は、マスタ保持リング107が遠位環状溝138に固定されるまで、マスタリンクピン106を中心に3回巻き付けられる。次いで、マスタリンクピン106は、マスタリンクボックス100に固定される場合があり、マスタリンクピン106は、マスタリンクブッシング105、マスタリンク102、104のピンボア118および軌道リンク26、28のリンクシールボア46内で回転される場合がある。
【0066】
マスタリンクピン106は、いずれかの側からマスタリンクボックス100に挿入され得る。たとえば、マスタリンクピン106は、最初に左側マスタリンク102を介した後にマスタリンクブッシング105を介し、続いて右側マスタリンク104(
図8および
図9)を介して挿入され得るか、マスタリンクピン106は、右側マスタリンク104を介した後にマスタリンクブッシング105を介し、続いて左側マスタリンク102(
図12)を介して挿入され得る。いずれかの方向からでも挿入される場合、遠位環状溝138は、マスタリンクピン106の遠位端部126が2番目に挿入されたマスタリンク102、104の横方向環状凹部122の遠位側に配置され、マスタ保持リング107は、マスタリンクピン106の遠位環状溝138に固定されるか、別な方法で保持される場合がある。このように、マスタリンクピン106は、いずれかの方向からマスタリンクボックス100に挿入され、次にマスタ保持リング107によってマスタリンクボックス100に固定される場合があり、これにより、ユーザがマスタリンクボックス100をリンクアセンブリ86の前端部および後端部94、96に結合する場合がある。このようにして、連続軌道14は、左右連続軌道14のいずれかに対して作業機械10の外側または作業機械10内側のいずれかから作業機械10に固定される場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0067】
開示されたマスタリンクボックス100は、軌道型トラクタ(track‐type tractor)、半軌道機械(half‐track machine)、掘削機、タンク、他の類型の移動機械またはコンベアなどの固定機械を含むが、これらに限定されず、軌道14の耐久性が要求される多くの作業機械10の軌道14と統合される場合がある。本発明の開示されたマスタリンクボックス100を組み込むことにより、連続軌道14の耐久性が改善されることがあり、連続軌道14がより少ない頻繁で修理されるか、交換されることがある。さらに、マスタリンクボックス100がリンクアセンブリ86の前端部および後端部94、96に含まれる場合、リンクアセンブリ86の端部94、96は、ともに結合され、油圧プレスまたは他の複雑でありおよび/または比較的固定工具を使用せずとも連続軌道14を形成することができる。さらに、マスタリンクボックス100が使用される場合、連続軌道14は、左または右連続軌道14のいずれかについて、作業機械10の外側または内側のいずれかから作業機械10の回転可能な要素16、18、20、22の周りに固定される場合がある。
【0068】
マスタリンクボックス100は、ピンボア118および横方向環状凹部122を備える第1および第2のマスタリンク102、104、マスタリンクブッシング105、および遠位端部126近くに配置された遠位環状溝138および近位端部128近くに配置された半径方向突出部132を備えるマスタリンクピン106を含む。マスタリンクピン106が、マスタリンク102、104のうちの1つのピンボア118、マスタリンクブッシング105、および他のマスタリンク102、104のピンボア118を通ってマスタリンクボックス100に挿入されると、マスタリンクピン106の半径方向突出部132の突出面134は、マスタリンクピン106が適切な位置にあるとき、マスタリンクピン106が最初に挿入されたマスタリンク102、104の横方向環状凹部122に隣接し、これにより、マスタリンクピン106がピンボア118を通って過度に挿入されるのを防ぐであろう。マスタリンクピン106は、高価でありおよび/または対的に移動不能な整列または取付具を使用せずともマスタリンクボックス100と容易に整列され、その中に容易に挿入され得る。マスタリンクピン106は、後に再調整する必要がない。
【0069】
マスタリンクボックス100はまた、マスタリンクピン106の遠位環状溝138に固定可能に嵌め込まれ、マスタリンク102、104のピンボア118よりも大きいマスタ保持リング107を含む。マスタリンクピン106がマスタリンクボックス100に完全に挿入され、マスタ保持リング107が遠位環状溝138に固定されるとき、マスタリンクピン106はマスタリンクボックス100に固定され、マスタリンクボックス100の外へ後退されないであろう。マスタ保持リング107は、遠位環状溝138でマスタリンクピン106を中心に3回巻き付けられる三重ラップ保持リング(triple wrap retaining ring)であり得る。このように、マスタ保持リング107は、高価および/または別な方法で固定工具を使用せずとも遠位環状溝138に容易に固定される場合があり、マスタ保持リング107は、マスタリンクボックス100のマスタリンクピン106を再配置することなく、マスタリンクピン106に固定される場合がある。
【0070】
マスタリンクピン106は、マスタリンクボックス100がリンクアセンブリ86の前端部および後端部94、96を連結し、連続軌道14を形成するようにマスタリンク102、104を2つの軌道リンク26、28の間に配置されたブッシング30に結合することができる。マスタリンクピン106は、マスタリンクピン106の半径方向突出部132とマスタリンク102、104のうちの1つの横方向環状凹部122との間の当接部(abutment)とマスタ保持リング107および他のマスタリンク102、104の横方向環状凹部122との間の当接部を介してマスタリンクボックス100に固定される。このように、マスタリンクピン106は、マスタリンク102、104またはマスタリンクブッシング105のピンボア118内のいずれかにも回転的に固定されない。したがって、連続軌道14が作業機械10の回転可能な要素16、18、20、22を中心に回転することにより、軌道リンク26、28およびマスタリンク102、104は、マスタリンクピン106を中心に回転することができ、その結果、作業機械10に対する乗り心地がよりスムーズになる。
【0071】
マスタリンクピン106は、最初に左側または右側マスタリンク102、104いずれかをして、マスタリンクボックス100の残りの部分を介して挿入された後に、マスタ保持リング107によって固定される場合があるため、マスタリンクボックス100は、軌道14の外側または内側のいずれかから組み立てられる場合がある。このような機能は、特に、現場での軌道14の組み立てまたは再組み立てが軌道14上の様々な位置でマスタリンクボックス100とともに必要とされる場合があるため、軌道14のいずれかの側からマスタリンクボックス100が組み立てできるようにし、リンクアセンブリ86の連続軌道14へより容易に組み立てができるようにする。
【0072】
本発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態の観点において、例示された実施形態は、単に好ましい例示に過ぎず、本発明の範疇を限定するものと見なされるべきではないということを認識されたい。むしろ、本発明の範疇は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【0073】
上述の説明は、開示された装置およびシステムの例示を提供するということが理解されよう。しかしながら、本発明の他の実装例は、上述の例とは詳細が異なる場合があるということが考慮される。本発明またはこれらの例示へのすべての言及は、その時点で説明される特定の例示を言及するように意図されたものであり、より一般に本発明の範疇に関する任意の限定を内包することを意図するものではない。特定の特徴に関する区別および見くびりのすべての言語はその特徴に対する選好の欠如を示すためのものであるが、特に明示しない限り、そのようなものを本発明の範疇から完全に排除しないものと意図される。
【0074】
本明細書における値の範囲の言及は、本明細書に別段に明示されない限り、当該範囲内に属するそれぞれの個別値を個別に言及する速記法として機能することが意図され、それぞれの個別値は、本明細書に個別に引用されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に説明されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。