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特許7378462蓄電デバイス用非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20231106BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20231106BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231106BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20231106BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20231106BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20231106BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20231106BHJP
   H01G 11/58 20130101ALI20231106BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
H01G11/62
H01G11/60
H01G11/58
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021511936
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013736
(87)【国際公開番号】W WO2020203664
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2019065820
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019151252
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】垣田 一成
(72)【発明者】
【氏名】久留宮 晶
(72)【発明者】
【氏名】松尾 孝
(72)【発明者】
【氏名】田渕 雅人
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 俊平
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-268870(JP,A)
【文献】特開2013-155318(JP,A)
【文献】特開2011-174019(JP,A)
【文献】特開2012-209229(JP,A)
【文献】特開2012-209230(JP,A)
【文献】特開2012-216347(JP,A)
【文献】特開2012-226854(JP,A)
【文献】特開2012-226937(JP,A)
【文献】特開2013-175393(JP,A)
【文献】特開2013-175701(JP,A)
【文献】特開2013-196993(JP,A)
【文献】特開2013-196994(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057602(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、重量平均分子量が10万~250万であるエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル重合体が、下記式(1)由来の繰り返し単位を0~50モル%と、下記式(2)由来の繰り返し単位を30~99モル%と、下記式(3)由来の繰り返し単位を0~20モル%とを含み、前記ポリエーテル重合体の濃度が、前記非水電解液の0.01~2質量%である蓄電デバイス用非水電解液。
式(1):
【化8】
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基、または-CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または-CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1~12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0~12の整数である。]
式(2):
【化9】
式(3):
【化10】
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
【請求項5】
正極、負極、および非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスであって、該非水電解液が請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用非水電解液であることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの初期放電容量を低下させることなく、高温で保存した場合でもガス発生を抑制可能な非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電デバイス、特にリチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の小型電子機器、電気自動車や電力貯蔵用として広く使用されている。最近ではリチウム二次電池の中でも、重量や体積あたりの高容量化の観点から、ラミネートパウチ型電池の割合が増加傾向にあり、非水電解液の分解によるガス膨れが問題となる場合が多く、ガス発生を抑制する非水電解液の開発が求められている。
尚、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
特許文献1にはリチウムポリマー二次電池用に重合性のモノマーを電解液に添加し、電池作製後に数時間加熱重合させる方法が開示されているが、加熱重合がプロセスとして必要である。
特許文献2には電気化学キャパシタのゲル電解質用組成物としてポリエーテル重合体を含むものが開示されている。ポリエーテル重合体の固形分濃度はゲル電解質用組成物の全固形分の5~20%であるが、ゲル電解質としては高いイオン伝導性を示している。しかし、ポリエーテル重合体を5質量%以上となるように電解液に添加すると粘度が高くなり、リチウムイオン二次電池の充放電特性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-92146号公報
【文献】国際公開第2017/057602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、蓄電デバイスの初期放電容量を低下させることなく、高温で保存した場合でもガス発生を抑制可能な非水電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、非水電解液に特定のポリマーを添加することにより、加熱重合の工程を経ることなく非水電解液を調製した場合であっても、蓄電デバイスの初期放電容量を低下させることなく、高温保存時のガス発生を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の(1)~(5)を提供するものである。
【0007】
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、重量平均分子量が10万~250万であるエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル重合体が、下記式(1)由来の繰り返し単位を0~50モル%と、下記式(2)由来の繰り返し単位を30~100モル%と、下記式(3)由来の繰り返し単位を0~20モル%とを含み、前記ポリエーテル重合体の濃度が、前記非水電解液の0.01~2質量%である蓄電デバイス用非水電解液。
【0008】
式(1):
【化1】
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基、または-CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または-CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1~12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0~12の整数である。]
【0009】
式(2):
【化2】
【0010】
式(3):
【化3】
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
【0011】
(2)前記非水電解液の25℃での粘度が2~20mPa・sである(1)に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
(3)前記非水電解液が、前記電解質塩として、LiPFを含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
(4)前記非水電解液が、前記非水溶媒として、不飽和結合を有する環状カーボネートを含有することを特徴とする(1)~(3)のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
(5)正極、負極、および非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスであって、該非水電解液が(1)~(4)のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用非水電解液であることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄電デバイスの初期放電容量を低下させることなく、高温で保存した場合でもガス発生を抑制可能な非水電解液および、それを用いたリチウム電池等の蓄電デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【0014】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、重量平均分子量が10万~250万であるエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル重合体を非水電解液中に含有することを特徴とする。
【0015】
〔ポリエーテル重合体〕
本発明の非水電解液中に含まれるポリエーテル重合体は、下記式(2)由来の繰り返し単位を少なくとも有し、式(1)由来の繰り返し単位、式(3)由来の繰り返し単位を有することが好ましい。
【0016】
式(1):
【化4】
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基、または-CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または-CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1~12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0~12の整数である。]
【0017】
式(2):
【化5】
【0018】
式(3):
【化6】
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
【0019】
ここで式(1)由来の繰り返し単位及び式(3)由来の繰り返し単位は、それぞれ2種以上の異なるモノマーから誘導されるものであってもよい。
【0020】
式(1)の化合物は市販品からの入手、またはエピハロヒドリンとアルコールからの一般的なエーテル合成法等により容易に合成が可能である。また、アリール基としては、フェニル基が挙げられる。
市販品から入手可能な化合物としては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシヘプタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシへキサン、グリシジルフェニルエーテル、1,2-エポキシペンタン、グリシジルイソプロピルエーテルなどが使用できる。これら市販品のなかでは、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテルが好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルが特に好ましい。
合成によって得られる式(1)で表される単量体では、Rは-CHO(CR)が好ましく、R、R、Rの少なくとも一つが-CHO(CHCHO)であることが好ましい。Rは炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。nは0~6が好ましく、0~4がより好ましい。
【0021】
式(2)の化合物は基礎化学品であり、市販品を容易に入手可能である。
【0022】
式(3)の化合物において、Rはエチレン性不飽和基を含む置換基であり、炭素数としては2~13であることが好ましい。エチレン性不飽和基含有のモノマー成分としては、アリルグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α-テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカンジエン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5-シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル-4-ヘキセノエートが用いられる。好ましくは、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルである。
【0023】
ポリエーテル重合体としては、式(1)由来の繰り返し単位、式(2)由来の繰り返し単位、及び式(3)由来の繰り返し単位のモル比率が、(1)0~50モル%、(2)30~100モル%、及び(3)0~20モル%であることが好ましく、(1)0~40モル%、(2)45~100モル%、及び(3)0~15モル%であることがより好ましく、(1)0~30モル%、(2)60~100モル%、及び(3)0~10モル%であることがさらに好ましい。
【0024】
ポリエーテル重合体としては、式(2)由来の繰り返し単位と、式(1)由来の繰り返し単位、式(3)由来の繰り返し単位のいずれかを有することが好ましい。
【0025】
ポリエーテル重合体としては、式(1)由来の繰り返し単位と式(2)由来の繰り返し単位を有する場合には、式(1)由来の繰り返し単位のモル比率は1モル%以上有することが好ましく、3モル%以上有することがより好ましく、5モル%以上有することが特に好ましく、50モル%以下有することが好ましく、40モル%以下有することがより好ましく、30モル%以下有することが特に好ましい。式(2)由来の繰り返し単位のモル比率は30モル%以上有することが好ましく、45モル%以上有することがより好ましく、50モル%以上有することがさらに好ましく、60モル%以上有することが特に好ましく、99モル%以下有することが好ましく、97モル%以下有することがより好ましく、95モル%以下有することが特に好ましい。
【0026】
ポリエーテル重合体としては、式(2)由来の繰り返し単位と式(3)由来の繰り返し単位を有する場合には、式(2)由来の繰り返し単位のモル比率は30モル%以上有することが好ましく、45モル%以上有することがより好ましく、60モル%以上有することが特に好ましく、80モル%以上有することが最も好ましく、99モル%以下有することが好ましく、97モル%以下有することがより好ましく、95モル%以下有することが特に好ましい。式(3)由来の繰り返し単位のモル比率は0.5モル%以上有することが好ましく、1モル%以上有することがより好ましく、1.5モル%以上有することが特に好ましく、20モル%以下有することであってもよいが、15モル%以下有することが好ましく、12モル%以下有することがより好ましく、10モル%以下有することが特に好ましい。
【0027】
ポリエーテル重合体としては、式(1)由来の繰り返し単位と式(2)由来の繰り返し単位と式(3)由来の繰り返し単位を有する場合には、式(1)由来の繰り返し単位のモル比率は1モル%以上有することが好ましく、3モル%以上有することがより好ましく、5モル%以上有することが特に好ましく、50モル%以下有することが好ましく、40モル%以下有することがより好ましく、30モル%以下有することが特に好ましい。式(2)由来の繰り返し単位のモル比率は30モル%以上有することが好ましく、45モル%以上有することがより好ましく、60モル%以上有することが特に好ましく、98.5モル%以下有することが好ましく、96モル%以下有することがより好ましく、93.5モル%以下有することが特に好ましい。式(3)由来の繰り返し単位のモル比率は0.5モル%以上有することが好ましく、1モル%以上有することがより好ましく、1.5モル%以上有することが特に好ましく、15モル%以下有することが好ましく、12モル%以下有することがより好ましく、10モル%以下有することが特に好ましい。
【0028】
ポリエーテル重合体の重合組成のモル比率は、H-NMRにより各ユニットの積分値を求め、その算出結果から組成を決定することができる。
【0029】
なお、本発明において、重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出する。
ポリエーテル重合体は、ブロック重合体、ランダム重合体何れの重合タイプでも良い。ランダム重合体がよりポリエチレンオキシドの結晶性を低下させる効果が大きいので好ましい。
【0030】
ポリエーテル重合体の重量平均分子量に関しては、重量平均分子量の下限が10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましく、20万以上であることが更に好ましく、重量平均分子量の上限は250万以下であることが好ましく、210万以下であることがより好ましく、180万以下がさらに好ましく、150万以下が尚さらに好ましく、140万以下が最も好ましい。ポリエーテル重合体の分子量測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。尚、溶媒にはDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)を用いる。
【0031】
ポリエーテル重合体の合成は次のようにして行える。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにKを含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10~120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル重合体が得られる。
【0032】
本発明の非水電解液が前記ポリエーテル重合体を含有することから、本発明の非水電解液を蓄電デバイスに用いた場合に、電解液の調製時に加熱プロセスを実施することなく、本発明の効果であるガス発生の抑制を達成し得る。
【0033】
本発明の非水電解液において、ポリエーテル重合体の含有量は、電解液の粘度が高すぎず、初期放電容量を低下させず、かつガス抑制効果を示す含有量が好ましく、非水電解液中に0.01~2質量%が好ましい。該含有量は、非水電解液中に0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、その上限は、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0034】
本発明の非水電解液において、前記ポリエーテル重合体を以下に述べる非水溶媒、電解質塩、更にその他の添加剤を組み合わせることにより、ガス発生を抑制できる効果が相乗的に向上するという特異な効果を発現する。
【0035】
〔非水溶媒〕
まず本明細書において、「溶媒」とは溶質を溶解するための物質を示す。
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、およびアミドから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。非水溶媒には、環状カーボネートが含まれることが好ましく、鎖状カーボネートまたは鎖状カルボン酸エステルが含まれることがより好ましい。環状カーボネートと鎖状カーボネートの両方、または、環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルの両方が含まれることが更に好ましい。
【0036】
なお、「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネートおよび鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
さらに、「鎖状カーボネート」とは炭酸直鎖アルキル誘導体であるものと定義する。
【0037】
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルブチルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネート、メチル(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート(MTEC)から選ばれる1種又は2種以上の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、およびジブチルカーボネート(DBC)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の対称鎖状カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル(EP)、プロパン酸プロピル、プロパン酸ブチル等のプロパン酸エステル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸プロピル、ブタン酸ブチル等のブタン酸エステル、3,3,3-トリフルオロプロパン酸メチル等のフッ素含有カルボン酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の鎖状カルボン酸エステルが好適である。
【0038】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)、トランスもしくはシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、および4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、ビニレンカーボネート、および4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)からなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好適である。環状カーボネートを2種以上用いる場合の組み合わせとしては、エチレンカーボネートとビニレンカーボネートの組み合わせが挙げられる。
【0039】
環状カーボネートとしては、不飽和結合を有する環状カーボネートも好適に挙げられる。不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、分子中に炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートであれば特に限定されないが、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、および4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられ、なかでも、VCが好ましい。また、不飽和結合を有する環状カーボネートは、不飽和結合を有しない環状カーボネートと組み合わせて用いることもできる。不飽和結合を有しない環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)、およびトランスもしくはシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0040】
鎖状エステルの含有量は、特に制限されないが、非水電解液全量に対して5~90質量%の範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。また、90質量%以下であれば、ガス発生をより一層抑制できるので好ましい。
【0041】
環状カーボネートの含有量は、非水電解液全量に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、最も好ましくは40質量%以下であると、ガス発生をより一層抑制できるので好ましい。
【0042】
不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量は、非水電解液全量に対して好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.8質量%以下であると、ガス発生をより一層抑制できるので好ましい。
【0043】
これらの溶媒は1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用した場合は、ガス発生をより一層抑制できるので好ましい。
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、環状カーボネート:鎖状エステル(質量比)が10:90~50:50が好ましく、30:70~40:60がさらに好ましい。
【0044】
その他の非水溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン等の鎖状エーテル、ジメチルホルムアミド等のアミド、スルホラン等のスルホン、およびγ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、α-アンゲリカラクトン等のラクトンから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0045】
その他の非水溶媒の含有量は、非水電解液全量に対して、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上であり、また通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0046】
非水電解液中にさらにその他の添加剤を加えることができる。
その他の添加剤の具体例としては、以下の(A)~(I)の化合物が挙げられる。
【0047】
(A)アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、およびセバコニトリルから選ばれる1種又は2種以上のニトリル。
【0048】
(B)シクロヘキシルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、tert-アミルベンゼン、又は1-フルオロ-4-tert-ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物や、ビフェニル、ターフェニル(o-、m-、p-体)、フルオロベンゼン、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、又はジフェニルカーボネート等の芳香族化合物。
【0049】
(C)メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2-イソシアナトエチル アクリレート、および2-イソシアナトエチル メタクリレートから選ばれる1種又は2種以上のイソシアネート化合物。
【0050】
(D)2-プロピニル メチル カーボネート、酢酸 2-プロピニル、ギ酸 2-プロピニル、メタクリル酸 2-プロピニル、メタンスルホン酸 2-プロピニル、ビニルスルホン酸 2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレート、2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネート、および2-ブチン-1,4-ジイル ジホルメートから選ばれる1種又は2種以上の三重結合含有化合物。
【0051】
(E)1,3-プロパンスルトン(PS)、1,3-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、もしくは2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル アセテート等のスルトン、エチレンサルファイト等の環状サルファイト、エチレンサルフェート等の環状サルフェート、ブタン-2,3-ジイル ジメタンスルホネート、ブタン-1,4-ジイル ジメタンスルホネート、もしくはメチレンメタンジスルホネート等のスルホン酸エステル、およびジビニルスルホン、1,2-ビス(ビニルスルホニル)エタン、もしくはビス(2-ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物から選ばれる1種又は2種以上のS=O基含有化合物。
【0052】
(F)環状アセタール化合物としては、分子内に「アセタール基」を有する化合物であれば、その種類は特に限定されない。その具体例としては、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、又は1,3,5-トリオキサン等の環状アセタール化合物。
【0053】
(G)リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、及び2-プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテートから選ばれる1種又は2種以上のリン含有化合物。
【0054】
(H)カルボン酸無水物としては、分子内に「C(=O)-O-C(=O)基」を有する化合物であれば特にその種類は限定されない。その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸等の鎖状のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、3-アリル無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、又は3-スルホ-プロピオン酸無水物等の環状酸無水物。
【0055】
(I)ホスファゼン化合物としては、分子内に「N=P-N基」を有する化合物であれば、その種類は特に限定されない。その具体例としては、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、又はエトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼン等の環状ホスファゼン化合物。
【0056】
上記の中でも、(A)ニトリル、(B)芳香族化合物、および(C)イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含むと一段と高温での電気化学特性が向上するので好ましい。
【0057】
(A)ニトリルの中では、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、およびピメロニトリルから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0058】
(B)芳香族化合物の中では、ビフェニル、ターフェニル(o-、m-、p-体)、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、およびtert-アミルベンゼンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ビフェニル、o-ターフェニル、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、およびtert-アミルベンゼンから選ばれる1種又は2種以上が特に好ましい。
【0059】
(C)イソシアネート化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2-イソシアナトエチル アクリレート、および2-イソシアナトエチル メタクリレートから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0060】
前記(A)~(C)の化合物の含有量は、非水電解液中に0.01~7質量%が好ましい。この範囲では、被膜が厚くなり過ぎずに十分に形成され、ガス発生を抑制できる。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、その上限は、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0061】
また、(D)三重結合含有化合物、(E)スルトン、環状サルファイト、スルホン酸エステル、ビニルスルホンから選ばれる環状又は鎖状のS=O基含有化合物、(F)環状アセタール化合物、(G)リン含有化合物、(H)環状酸無水物、および(I)環状ホスファゼン化合物を含むと、ガス発生を抑制できるので好ましい。
【0062】
(D)三重結合含有化合物としては、2-プロピニル メチル カーボネート、メタクリル酸 2-プロピニル、メタンスルホン酸 2-プロピニル、ビニルスルホン酸 2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレート、および2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネートから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、メタンスルホン酸 2-プロピニル、ビニルスルホン酸 2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレート、および2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネートから選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
【0063】
(E)スルトン、環状サルファイト、環状サルフェート、スルホン酸エステル、およびビニルスルホンから選ばれる環状又は鎖状のS=O基含有化合物(但し、三重結合含有化合物、および前記式のいずれかで表される特定の化合物は含まない)を用いることが好ましい。
【0064】
前記環状のS=O基含有化合物としては、1,3-プロパンスルトン、1,3-ブタンスルトン、1,4-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル アセテート、メチレン メタンジスルホネート、エチレンサルファイト、およびエチレンサルフェートから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0065】
また、鎖状のS=O基含有化合物としては、ブタン-2,3-ジイル ジメタンスルホネート、ブタン-1,4-ジイル ジメタンスルホネート、ジメチル メタンジスルホネート、ペンタフルオロフェニル メタンスルホネート、ジビニルスルホン、およびビス(2-ビニルスルホニルエチル)エーテルから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0066】
前記環状又は鎖状のS=O基含有化合物の中でも、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル アセテート、エチレンサルフェート、ペンタフルオロフェニル メタンスルホネート、およびジビニルスルホンから選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
【0067】
(F)環状アセタール化合物としては、1,3-ジオキソラン、又は1,3-ジオキサンが好ましく、1,3-ジオキサンが更に好ましい。
【0068】
(G)リン含有化合物としては、エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、又は2-プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテートが好ましく、2-プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテートが更に好ましい。
【0069】
(H)環状酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、又は3-アリル無水コハク酸が好ましく、無水コハク酸又は3-アリル無水コハク酸が更に好ましい。
【0070】
(I)環状ホスファゼン化合物としては、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、又はフェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等の環状ホスファゼン化合物が好ましく、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、又はエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンが更に好ましい。
【0071】
前記(D)~(I)の化合物のそれぞれの含有量は、非水電解液全量に対して0.001~5質量%が好ましい。この範囲では、被膜が厚くなり過ぎずに十分に形成され、一段とガス発生を抑制できる。該含有量は、非水電解液中に0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、その上限は、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0072】
また、一段と高温でのガス発生を抑制させる目的で、非水電解液中にさらに、シュウ酸骨格を有するリチウム塩、リン酸骨格を有するリチウム塩およびS=O基を有するリチウム塩の中からなる群より選ばれる1種以上のリチウム塩を含むことが好ましい。
前記群から選ばれるリチウム塩の具体例としては、リチウム ビス(オキサラト)ボレート〔LiBOB〕、リチウム ジフルオロ(オキサラト)ボレート〔LiDFOB〕、リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート〔LiTFOP〕、およびリチウム ジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート〔LiDFOP〕から選ばれる少なくとも1種のシュウ酸骨格を有するリチウム塩、LiPOやLiPOF等のリン酸骨格を有するリチウム塩、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート〔LiTFMSB〕、リチウム ペンタフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ホスフェート〔LiPFMSP〕、リチウム メチルサルフェート〔LMS〕、リチウムエチルサルフェート〔LES〕、リチウム 2,2,2-トリフルオロエチルサルフェート〔LFES〕、リチウム 2,2,3,3-テトラフルオロプロピルサルフェート〔LTFPS〕およびFSOLiから選ばれる1種以上のS=O基を有するリチウム塩が好適に挙げられ、LiBOB、LiDFOB、LiTFOP、LiDFOP、LiPO、LiTFMSB、LMS、LES、LFES、LTFPS、およびFSOLiから選ばれるリチウム塩を含むことがより好ましい。
【0073】
前記群から選ばれるそれぞれのリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、非水電解液全量に対して0.01質量%以上8質量%以下である場合が好ましい。この範囲にあると一段とガス発生抑制効果および容量低下抑制効果を向上させることができる。好ましくは非水電解液全量に対して0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上である。その上限は、更に好ましくは非水電解液全量に対して6質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
【0074】
(電解質塩)
本発明に使用される電解質塩としては、下記のリチウム塩が好適に挙げられる。
リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO等の無機リチウム塩、LiN(SOF)〔LiFSI〕、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso-C、LiPF(iso-C)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF(SONLi、(CF(SONLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩等が好適に挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩を含有することが好ましく、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
これらの中でも、LiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SO、およびLiN(SOF)〔LiFSI〕から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、LiPFを含有することがもっとも好ましい。LiPFを含有することは、高い初期放電容量などの蓄電デバイス(特にリチウム二次電池)の性能の観点からも好ましい。電解質塩のそれぞれの濃度は、前記の非水電解液全量に対して、4質量%以上であることが好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。またその上限は、非水電解液全量に対して28質量%以下であることが好ましく、23質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0076】
また、これらの電解質塩の好適な組み合わせとしては、LiPFを含み、更にLiBF、LiN(SOCF、およびLiN(SOF)〔LiFSI〕から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液全量に占めるそれぞれの割合は、0.01質量%以上であると、ガス発生の抑制効果も高まる。非水電解液全量に対して10質量%以下であるとガス抑制効果が低下する懸念が少ないので好ましい。好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは非水電解液全量に対して0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、特に好ましくは0.46質量%以上、最も好ましくは0.6質量%以上である。その上限は、好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下、特に好ましくは6質量%以下である。
【0077】
本発明の非水電解液の25℃での粘度は、好ましくは2~20mPa・sであり、より好ましくは15mPa・s以下であり、さらに好ましくは10mPa・s以下である。
【0078】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩および該非水電解液に対して前記ポリエーテル重合体を添加することにより得ることができる。本発明の非水電解液の製造時には、加熱プロセスを実施したり、活性エネルギー線を照射したりする必要がない。本発明の非水電解液を製造するための全ての操作を常温で行うことができ、5~30℃で行うこともできる。
この際、用いる非水溶媒および非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0079】
本発明の非水電解液は、下記の第1~第4の蓄電デバイスに使用することができる。中でも電解質塩にリチウム塩を使用する第1の蓄電デバイス用(即ち、リチウム電池用)または第4の蓄電デバイス用(即ち、リチウムイオンキャパシタ用)として用いることが好ましく、リチウム電池用として用いることが更に好ましく、リチウム二次電池用として用いることが最も適している。
【0080】
〔第1の蓄電デバイス(リチウム電池)〕
本明細書においてリチウム電池とは、リチウム一次電池及びリチウム二次電池の総称である。また、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。本発明の第1の蓄電デバイスであるリチウム電池は、正極、負極および非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、およびニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiCo1-x(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、およびCuから選ばれる1種又は2種以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiMn、LiNiO、LiCo1-xNi(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnOとLiMO(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、およびLiNi1/2Mn3/2から選ばれる1種以上が好適に挙げられ、2種以上がより好適である。また、LiCoOとLiMn、LiCoOとLiNiO、LiMnとLiNiOのように併用してもよい。
【0081】
高温で動作するリチウム複合金属酸化物を使用すると、充電時および高温保存時における電解液との反応によりガス発生、容量低下が起こりやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらを抑制することができる。
特に、正極活物質中の全遷移金属元素の原子濃度に対するNiの原子濃度の割合が、30atomic%を超える正極活物質を用いた場合に上記効果が顕著になるので好ましく、50atomic%以上が特に好ましい。具体的には、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05等が好適に挙げられる。
【0082】
更に、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。特に鉄、コバルト、ニッケルおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種以上含むリチウム含有オリビン型リン酸塩が好ましい。その具体例としては、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO等が挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、WおよびZr等から選ばれる1種以上の元素で置換したり、またはこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePOまたはLiMnPOが好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
【0083】
また、リチウム一次電池用正極としては、CuO、CuO、AgO、AgCrO、CuS、CuSO、TiO、TiS、SiO、SnO、V、V12、VO、Nb、Bi、BiPb,Sb、CrO、Cr、MoO、WO、SeO、MnO、Mn、Fe、FeO、Fe、Ni、NiO、CoO、CoOなどの、1種もしくは2種以上の金属元素の酸化物あるいはカルコゲン化合物、SO、SOClなどの硫黄化合物、一般式(CFで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)などが挙げられる。中でも、MnO、V、フッ化黒鉛などが好ましい。
【0084】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。また、グラファイトとカーボンブラックを適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1~10質量%が好ましく、特に2~5質量%が好ましい。
【0085】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1-メチル-2-ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成形した後、50℃~250℃程度の温度で、2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
【0086】
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm以上であり、より好ましくは、3g/cm以上であり、更に好ましくは、3.6g/cm以上である。なお、上限としては、4g/cm以下が好ましい。
【0087】
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、およびリチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm(ナノメータ)以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛など〕、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、LiTi12などのチタン酸リチウム化合物等を1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵および放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが更に好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm以下、特に0.335~0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
【0088】
複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合或いは結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、例えば鱗片状天然黒鉛粒子に圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、球形化処理を施した黒鉛粒子を用いることにより、負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と正極活物質からの金属溶出量の改善と、充電保存特性が向上するので好ましく、0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
【0089】
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、ガス発生をより一層抑制できるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、TEMにより確認することができる。
高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によってガス発生が増加する傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池ではガス発生をより一層抑制できる。
【0090】
また、負極活物質としてのリチウムを吸蔵および放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、GeおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、SiおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
【0091】
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成形した後、50℃~250℃程度の温度で2時間程度真空下加熱処理することにより作製することができる。
【0092】
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.3g/cm以上であり、特に好ましくは1.5g/cm以上である。なお、上限としては、2g/cm以下が好ましい。
【0093】
また、リチウム一次電池用の負極活物質としては、リチウム金属又はリチウム合金が挙げられる。
【0094】
リチウム電池の構造には特に限定はなく、単層または複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート型電池等を適用できる。
電池用セパレータとしては、特に制限はされないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層または積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
【0095】
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上でもガス発生抑制において特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることができるが、本発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.05~20Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、-40~100℃、好ましくは-10~80℃で充放電することができる。
【0096】
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
【0097】
〔第2の蓄電デバイス(電気二重層キャパシタ)〕
第2の蓄電デバイスは、電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この蓄電デバイスに用いられる最も典型的な電極活物質は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。
【0098】
〔第3の蓄電デバイス〕
第3の蓄電デバイスは、電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。この蓄電デバイスに用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。これらの電極活物質を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応にともなうエネルギー貯蔵が可能である。
【0099】
〔第4の蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ)〕
第4の蓄電デバイスは、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気ニ重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPFなどのリチウム塩が含まれる。
【実施例
【0100】
以下に、合成例、重合例、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0101】
ポリエーテル重合体は以下の方法で測定した。
〔組成モル比率〕
H-NMRスペクトルにより組成単位に由来するシグナル強度比から求めた。
〔重量平均分子量〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。GPC測定は(株)島津製作所製RID-6A、昭和電工(株)製ショウデックスKD-807、KD-806、KD-806MおよびKD-803カラム、および溶媒にDMFを用いて60℃で行った。
【0102】
[合成例(ポリエーテル重合用触媒の製造)]
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10g及びトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら250℃で20分間加熱して留出物を留去させ残留物として固体状の縮合物質を得た。以下の重合例で重合触媒として用いた。
【0103】
[重合例1 ポリエーテル重合体A1]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a):
【化7】
114g、及び溶媒としてn-ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド136gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー210gを得た。得られたポリエーテル重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0104】
[重合例2 ポリエーテル重合体A2]
重合例1の仕込みにおいてグリシジルエーテル化合物(a)107g、アリルグリシジルエーテル9g、n-ブタノール0.13g及び溶媒としてn-ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド135gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー215gを得た。得られたポリエーテル重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0105】
[重合例3 ポリエーテル重合体A3]
重合例1の仕込みにおいてメタクリル酸グリシジル48g、n-ブタノール1.25g及び溶媒としてn-ヘキサン1000gを仕込み、メタクリル酸グリシジルの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド193gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー207gを得た。得られたポリエーテル重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0106】
[重合例4 ポリエーテル重合体A4]
重合例1の仕込みにおいてグリシジルエーテル化合物(a)68g、アリルグリシジルエーテル34g、n-ブタノール0.13g及び溶媒としてn-ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド148gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー210gを得た。得られたポリエーテル重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0107】
[重合例5 ポリエーテル重合体A5]
重合例1の仕込みにおいてグリシジルエーテル化合物(a)93g、アリルグリシジルエーテル11g、n-ブタノール0.19g及び溶媒としてn-ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド145gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー215gを得た。得られたポリエーテル重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0108】
実施例1~20および比較例2における、使用したポリエーテル重合体の組成モル比率、重量平均分子量を表1に示す。
【表1】
【0109】
実施例1~20、比較例1~4
〔リチウムイオン二次電池の作製1〕
LiCoO(LCO);94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1-メチル-2-ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに切り抜き、正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cmであった。また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1-メチル-2-ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに切り抜き負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cmであった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、各成分を常温で混合することにより調製した表2及び表4に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート型電池を作製した。
【0110】
〔リチウムイオン二次電池の作製2〕
LiNi0.8Mn0.1Co0.1(NMC811);94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1-メチル-2-ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、矩形の正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cmであった。また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質);95質量%と、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1-メチル-2-ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cmであった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、各成分を常温で混合することにより調製した表3に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート型電池を作製した。
【0111】
非水電解液の粘度は以下の方法で測定した。
〔粘度〕
JIS Z 8803に準拠して25℃での粘度を測定した。
【0112】
〔初期放電容量の評価〕
上記の方法で作製した電池を用いて25℃の恒温槽中、0.2Cの定電流および定電圧で終止電圧4.2Vまで充電後0.2Cの定電流で終止電圧2.7Vまで放電することを1サイクルとし、これを3サイクル行った。3サイクル目の放電容量を初期放電容量として評価した。
【0113】
〔高温保存後のガス発生量の評価〕
上記の方法で作製した電池を用いて60℃の恒温槽中、0.2Cの定電流および定電圧で終止電圧4.2Vで20日間静置した。その後、45℃の恒温槽中、0.2Cの定電流下終止電圧2.7Vまで放電した。高温保存後のガス発生量はアルキメデス法により測定した。
【0114】
〔高電圧高温保存後のガス発生量の評価〕
上記の方法で作成した電池を用いて60℃の恒温槽中、0.2Cの定電流および定電圧で終止電圧4.4Vで2日間静置した。高電圧高温保存後のガス発生量はアルキメデス法により測定した。
【0115】
実施例1および比較例1~2における、使用した電極(正極活物質/負極活物質)、非水電解液の組成、粘度、初期放電容量を表2に示す。
比較例1の初期放電容量を100%とし、実施例1および比較例2の相対的な初期放電容量を調べた。
【0116】
【表2】
【0117】
また、実施例2~11および比較例3における、使用した電極(正極活物質/負極活物質)、非水電解液の組成、粘度、高温保存後のガス発生量を表3に示す。
比較例3の初期放電容量を基準とし、実施例2~11の相対的な初期放電容量を調べたところ、いずれの実施例においても初期放電容量の低下は見られなかった。また、比較例3のガス発生量を100%とし、実施例2~11の相対的なガス発生量を調べた。
【0118】
【表3】
【0119】
さらに、実施例12~20および比較例4における、使用した電極(正極活物質/負極活物質)、非水電解液の組成、粘度、高電圧高温保存後のガス発生量を表4に示す。
比較例4の初期放電容量を基準とし、実施例12~20の相対的な初期放電容量を調べたところ、いずれの実施例においても初期放電容量の低下は見られなかった。また、比較例4のガス発生量を100%とし、実施例12~20の相対的なガス発生量を調べた。
【0120】
【表4】
【0121】
上記表2において実施例1は比較例2より初期放電容量が高く、比較例1と同等の初期放電容量であった。また、上記表3において実施例2~11は比較例3と同等の初期放電容量であり、高温保存後のガス発生量が減少していた。さらに、表4において実施例12~20は比較例4と同等の初期放電容量であり、高電圧高温保存後のガス発生量が減少していた。この結果から本発明の非水電解液は初期放電容量を低下させることなく高温保存、高電圧高温保存時におけるガス発生を抑制出来るといえる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の非水電解液を用いた蓄電デバイスは、電池を高温で使用した場合のガス発生の抑制効果および初期放電容量などの電気化学特性に優れたリチウム二次電池等の蓄電デバイスとして有用である。