IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 重慶医科大学附属口腔医院の特許一覧

特許7378486医療用接着剤及びその調製方法、その用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】医療用接着剤及びその調製方法、その用途
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/00 20060101AFI20231106BHJP
   A61K 35/65 20150101ALI20231106BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20231106BHJP
   A61L 15/40 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231106BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
A61L24/00 100
A61L24/00 210
A61L24/00 240
A61L24/00 250
A61K35/65
A61L15/58 100
A61L15/40 100
A61K9/06
A61P17/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021549446
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2020076763
(87)【国際公開番号】W WO2020173459
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】201910140042.8
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910603111.4
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910536465.1
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521371038
【氏名又は名称】重慶医科大学附属口腔医院
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】張曦木
(72)【発明者】
【氏名】季平
(72)【発明者】
【氏名】宋錦▲リン▼
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107236134(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104815349(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104740678(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106581736(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108421080(CN,A)
【文献】特開2014-023956(JP,A)
【文献】特表2006-503612(JP,A)
【文献】特表2010-508897(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107281535(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L、A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と、
水溶液または水系溶媒と、を含み、
前記オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末および前記水溶液または水系溶媒の混合比が1:1~1:6または1:2~1:6(重量比)であり、
前記水溶液または水系溶媒は、クロルヘキシジンの水溶液であることを特徴とする、
医療用接着剤。
【請求項2】
前記医療用接着剤がゲル状であることを特徴とする請求項1に記載の医療用接着剤。
【請求項3】
前記医療用接着剤が多孔質構造を有することを特徴とする請求項2に記載の医療用接着剤。
【請求項4】
オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を提供する工程と、
前記オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を滅菌する工程と、
前記オオサンショウウオ皮膚粘液の滅菌済み凍結乾燥粉末を水溶液または水系溶媒と混合して、ゲル形成作用を行い、ゲル状の前記医療用接着剤を形成する工程とを順に含み、
前記医療用接着剤が、前記オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末および前記水溶液または水系溶媒の混合比が1:1~1:6または1:2~1:6(重量比)であり、前記水溶液または水系溶媒は、クロルヘキシジンの水溶液であることを特徴とする、
請求項1に記載の医療用接着剤の調製方法。
【請求項5】
オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を提供する工程は、生きているオオサンショウウオの皮膚からオオサンショウウオの皮膚粘液を得る工程と、前記オオサンショウウオの皮膚粘液を凍結乾燥する工程と、凍結乾燥後の前記オオサンショウウオの皮膚粘液を研磨および破砕して、前記オオサンショウウオの皮膚粘液凍結乾燥粉体を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項4に記載の医療用接着剤の調製方法。
【請求項6】
前記オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の粒度は-20メッシュであることを特徴とする請求項5に記載の医療用接着剤の調製方法。
【請求項7】
前記オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の粒度は-60メッシュ~+300メッシュであることを特徴とする請求項5に記載の医療用接着剤の調製方法。
【請求項8】
前記滅菌する工程はエチレンオキシドを利用して行われることを特徴とする請求項4に記載の医療用接着剤の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体材料の分野に関し、創傷の面治療に関するものであり、具体的には、天然成分から調製された医療用接着剤と、その調製方法と、その用途とに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年2月26日に出願されたPCT特許出願第PCT/CN2020/076763に対応する。上述したPCT特許出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
外科的な傷口の閉鎖は、手術治療において不可欠な部分であり、臨床現場では60%以上の傷が縫合糸やスキンステープラーを使って縫合される。しかしながら、抜糸による2回目の来院は、患者の来院回数を増加させるだけでなく、張力による瘢痕形成、拘縮、異物感染などに繋がるリスクを伴う。これに対し、生物医学用接着剤などの無縫合法を用いると、手術の手順を簡略化し、回復時間を短縮し、患者の治療の質を向上させることができる。
【0004】
治癒が困難な傷、穿刺による深い傷、湿潤環境で容易に包帯を巻くのが難しい傷の場合、医療用接着剤を使って創傷表面を密封し、組織の再生を促進し、治癒を促進できるか否かについての研究成果はまだ出ていない。
【0005】
密な結合組織とは、少量のマトリックスと細胞、多くの密な繊維で構成され、繊維は粗く、密に配列され、真皮、腱、靭帯などの支持と結合を主な機能とする組織である。腱には、ふくらはぎの筋肉と踵骨をつなぐアキレス腱と、膝蓋骨と脛骨をつなぐ膝蓋腱がある。靭帯には、関節腔の周囲にある被膜外靭帯と、関節腔にある被膜内靭帯が含まれる。
密な結合組織の損傷は、一般的な整形外科疾患の一つだ。密な結合組織の損傷は、使いすぎ、捻挫、病気、一般的な老化など、多くの原因によって引き起こされる。人間の寿命が延び、スポーツや激しい運動をする中高年が増えたことで、腱損傷や靭帯損傷の発生率は年々増加している。腱の損傷は、急性のものと慢性のものに分けられ、その原因には、内因性のものと外因性のものがあり、内因性にせよ内外因性の組み合わせにせよ腱の損傷を引き起こす可能性がある。腱損傷は主にスポーツや職場で発生し、通常は患部の痛みやこわばり、腱の強度損傷をもたらす。アキレス腱と膝蓋腱の損傷は、最もよく見られるスポーツの2種類の腱損傷である。
【0006】
腱の損傷または靭帯の損傷は、臨床診療において依然として深刻であり未解決の問題だ。現在、腱や靭帯の断裂や切断は、通常、縫合などの外科的方法で治療されている。血液の供給不足やその他の理由により、腱や靭帯の損傷は感染症や治癒の遅れを招きやすい。また、現在のところ、損傷した腱や靭帯を正常な組織構造や機械的強度に戻すことができる手術方法はない。同時に、腱の損傷は長期的な不健全な状態につながる可能性があり、たとえどのような看護方法が使用されても、それらによって引き起こされる障害は数ヶ月続く可能性がある。現在ある腱障害の治療法については、わずかな対照臨床試験しか実施されていない。ほとんどの手段はまだ前臨床試験に属しており、さらに一部の治療法の結果には議論の余地がある。コラゲナーゼ誘発性アキレス腱炎のラットモデルにおいて、体外衝撃波療法は、TGF-β(Transforming growth factor-β、トランスフォーミング増殖因子ベータ)およびIGF-1(Insulin-like growth factor 1、インスリン様成長因子1)の発現を誘導することにより、腱の治癒を促進することが示されている。ラットのアキレス腱炎モデルでは、17Hzのパルス磁場および電磁場がコラーゲン繊維の配列を促進することができる。さらに、TGF-βやIGF-1などのいくつかのサイトカインや成長因子、遺伝子治療や組織工学で使用される間葉系幹細胞(MSC)は、腱損傷の治療に使用されており、そのより良い効果が期待されている。しかし、成長因子は高価で分解されやすいため、患者へ大きな経済的負担をかけてしまう。
【0007】
縫合治療法の代替としての医療用接着剤を用いた密な結合組織の接着治療は現在のところ報告されていない。腱または靭帯組織は身体の動きによって常にストレスを受けるため、腱または靭帯組織を接着するために使用される医療用接着剤は、強力な接着力を有するだけでなく、張力に対する耐性もなければならない。同時に、術後の回復の観点から、使用する接着剤は生体適合性が良く、組織に吸収されやすく、生体安全性の高いものでなければならない。
【0008】
密な結合組織の創傷の面や創傷の臨床治療および修復のために、十分な供給量があり、生体適合性があり、高い接着力を持ち、容易に生分解される医療用接着剤は現行の技術では不足している。既存の医療用接着技術の中で、縫合に代替する臨床手段として広く使われているのは主にシアノアクリレートとフィブリンである。シアノアクリレートは、明らかな細胞毒性があり、接着時に激しい酸化還元反応による発熱や、接着後の剛性が大きく分解しにくいなどの欠点があるため、大きな面積や顕著な張力帯の傷口への適用は難しく、動物実験では発熱、細胞毒性、腫瘍形成性が示されたため、これ以上の適用が制約されている。また、フィブリンは美容縫合で縫合糸と一緒に使うことで縫い目の数や瘢痕の成長を抑えることができるが、硬化が遅く、機械的強度が低いため、単独で使用することは困難である。このように、上述の2つの医療用接着剤の応用範囲は狭く、密な結合組織の接着剤としては全く適していない。
【0009】
オオサンショウウオ(Andrias davidianus Blanchard)は、大型の両生類で、有尾目、オオサンショウウオ科、通称「(中国語では)娃娃魚」と呼ばれ、国家保護の第2級に属している。オオサンショウウオは、外部からの刺激を受けると、体の表面からの粘液を分泌する。現在の研究結果では、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末から接着剤や止血剤を調製することが可能であることがわかっている。オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を用いた接着剤の調製に関しては、中国の発明特許公告番号CN104815349Bでは、オオサンショウウオの粘液から接着剤を製するの方法が開示されているが、この方法は接着剤の調製のためにガンマ線で滅菌した後のオオサンショウウオの粘液の接着性を予備的に開示しているだけで、この方法で調製されたオオサンショウウオの粘液の材料工学的な記述や試験はない。別の中国の発明特許開示番号CN106581736Aには、オオサンショウウオの粘液を凍結乾燥させた粉末を作る方法が簡単に開示されているだけで、その方法によってもたらされる効果を裏付ける科学的な経験的証拠は示されていない。別の中国の発明特許公開番号番号CN108421080Aでは、オオサンショウウオの分泌物のハイドロゲルを調製する方法が開示されているが、この方法は、ゲルに調製する過程で外部からの圧力を必要とし、溶媒系は水のみであり、薄膜にのみしか形成できず、使用に不便であり、この方法の動物体内における実験効果を裏付ける科学的経験証拠に欠けている。
【0010】
以上のことから、オオサンショウウオの皮膚粘液から調製した医療用接着剤には、まだ解決すべき欠陥があることがわかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、密な結合組織の接着剤としては全く適していなく、科学的経験証拠に欠けている問題を解決するために適用される医療用接着剤を提供する。
【0012】
本発明の目的は、オオサンショウウオの皮膚粘液の強力な接着性を利用し、凍結乾燥粉末に調製して滅菌した後、外科創傷の面またはその他の傷口の治癒治療に適用されるもので、その用途は皮膚系、骨格系、筋肉系などの各種組織を含み、特に密な結合組織に対して顕著な効果をもたらすものである。
【0013】
本発明の別の目的は、より優れた安全性、より優れた生体適合性、分解性、および再生促進効果、さらに抗菌および止血効果を有することで、本発明の医療用接着剤は手術創傷の面や傷口の組織接着剤または包帯として適しており、前記医療用接着剤に関する要件を満たす材料である。
【0014】
上記の目的によれば、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と、水溶液または水系溶媒とを含む医療用接着剤であって、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒を重量部比で1:1~1:6または1:2~1:6の割合で含む医療用接着剤を提供する。
【0015】
本発明の医療用接着剤によれば、医療用接着剤はゲル状である
【0016】
本発明の医療用接着剤によれば、医療用接着剤に含まれる水溶液または水系溶媒の成分は、蒸留水、生理的緩衝液、クロルヘキシジン、血液、血漿、血液細胞調製物、多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)、多血小板血漿フィブリン(platelet-rich fibrin、PRF)、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0017】
本発明の医療用接着剤によれば、水溶液または水系溶媒に含まれる生理的緩衝液の成分は、生理食塩水、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、クエン酸緩衝液、または前記任意の組み合わせから選択される。
【0018】
本発明の医療用接着剤によれば、ゲル状医療用接着剤は多孔質構造を有する。
【0019】
本発明の医療用接着剤によれば、多孔質構造の孔の平均直径は116μm未満である。
【0020】
本発明の医療用接着剤によれば、多孔質構造の孔の平均直径は6μm~37μmの間である。
【0021】
本発明の医療用接着剤によれば、医療用接着剤に含まれるサンショウウオの皮膚粘液の凍結乾燥粉末は、-20メッシュの粒径を有する。
【0022】
本発明の医療用接着剤によれば、医療用接着剤に含まれるオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末は、-60メッシュ~+300メッシュの粒形を有する。
本発明によれば、
【0023】
上記の目的によれば、本発明は、創傷の面の接着と、修復と、治癒とに使用される医療用接着剤の用途を提供するものである。
【0024】
本発明の用途によれば、用途が適用される創傷の面は、表皮、真皮および皮下結合組織に位置する創傷の面を含む。
【0025】
本発明の用途によれば、用途が適用される創傷の面は、骨格筋、腱、靭帯、骨および/または骨格周囲の結合組織に位置する創傷の面を含む。
本発明の用途によれば、本発明の医療用接着剤を使用する際、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末および水溶液または水系溶媒を創傷の面に直接塗布して、それにより、創傷の面に直接医療用接着剤を形成する。
【0026】
本発明の用途によれば、本発明の医療用接着剤を使用する際、事前にオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末および水溶液または水系溶媒を使用して医療用接着剤を調製し、その後、創傷の面に包帯するか創傷の面を密封するために使用される。
【0027】
上記の目的によれば、本発明は、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を提供する工程と、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を滅菌する工程と、オオサンショウウオ皮膚粘液の滅菌済み凍結乾燥粉末を水溶液または水系溶媒と混合して、ゲル形成作用を行い、ゲル状の医療用接着剤を形成する工程とを手順によって含み、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末および前記水溶液または水系溶媒の混合比が1:1~1:6または1:2~1:6(重量比)である医療用接着剤を調製するための調製方法を提供する。
【0028】
本発明の調製方法によれば、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を提供する工程では、凍結乾燥後の前記オオサンショウウオの皮膚粘液を研磨および破砕して、前記オオサンショウウオの皮膚粘液凍結乾燥粉体を形成する工程とをさらり含む。
【0029】
本発明の調製方法によれば、サンショウウオの皮膚粘液の凍結乾燥粉末は-20メッシュの粒径を有する。
【0030】
本発明の調製方法によれば、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末は-60メッシュ~+300メッシュの粒形を有する。
本発明の調製方法によれば、滅菌する工程はエチレンオキシドを使用することによって達成される。
【0031】
本発明の調製方法によれば、水溶液または水系溶媒の成分は、蒸留水、生理的緩衝液、クロルヘキシジン、血液、血漿、血液細胞調製物、多血小板血漿、多血小板血漿フィブリン、または上記の任意の組み合わせから選択される。
【0032】
本発明の調製方法によれば、生理的緩衝液の成分は、蒸留水、生理的緩衝液、クロルヘキシジン、血液、血漿、多血小板血漿、多血小板血漿フィブリン、または上記の任意の組み合わせから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に従って、医療用接着剤の調製方法を模式的に表す図である。
図2】本発明に従って、実施例1に記載されたオオサンショウウオ(a)、機械で削って得られたオオサンショウウオの皮膚粘液(b)、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末(c)、医療用接着剤の組織への接着描画の種類(d)、オオサンショウウオの皮膚粘液乾燥をゲル化したときの形態(e)を表したものである。
図3A】本発明に従って、実施例2において、異なる篩で得られた異なる粒径のオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末(SSAD粉末)と、オオサンショウウの皮膚粘液凍結乾燥粉末をゲル化後、水和、ハイドロゲル状態となった走査型電子顕微鏡(SEM)画像を表している。この画像では、ゲル形成後の孔の大きさを見ることができる。
図3B】本発明に従って、実施例2における、異なるゲル形成時間(2hおよび12h)の医療用接着剤における多孔質構造体の孔径分布を表す。
図3C】本発明の実施例2の各種殺菌方法によって達成された殺菌効果データ(a)と接着強度データ(b)のグラフである。
図4A】本発明に従って、実施例3における、医療用接着剤と2種類の一般的な市販の医療用接着剤のインビトロ接着性能の比較を表しており、豚の皮膚を生物マトリックスとして、医療用接着剤の接着強度の標準的な創傷閉鎖試験を行ったものである(n=4):改良された接着強度の標準試験方法(ASTM F2458-05)の概略図(i)、代表的なひずみ-応力曲線(ii)、さまざまな医療用接着剤の接着強度の定量的比較(iii)(統計的差異では、**でPが0.01より小さいことを表し、***でPが0.001より小さいことを表す)。
図4B】本発明に従って、実施例3において、医療用接着剤と2種類の一般的な市販の医療用接着剤のインビトロ接着性能の比較を表しており、豚の皮膚を生体マトリックスとして用いて、豚の皮下の脂肪面に接着した後、せん断強度試験を行ったものである:改良されたせん断試験の標準法(ASTM F2255-05)の概略図(i)、代表的なひずみ-応力曲線(ii)、さまざまな医療用接着剤の接着強度の定量的比較(iii)(統計的差異では、**でPが0.01より小さいことを表し、***でPが0.001より小さいことを表す)。
図4C】本発明に従って、実施例3において、医療用接着剤と2種類の一般的な市販の医療用接着剤とのインビトロ接着性能の比較を表しており、豚の皮膚を生体マトリックスとして、修正3点曲げ試験を用いて、医療用接着剤で接着した後の豚の皮膚の弾性と延性を測定したものだ:接着後の豚の皮膚の弾性と延性を試験するための修正3点曲げ試験法の概略図(i)、代表的なひずみ-変位曲線(ii)、固定の変形(11.5%)における異なる医療用接着剤によって必要となる負荷力の定量的な比較(iii)(統計的差異では、*でPが0.05より小さいことを表し、**でPが0.01より小さいことを表し、***でPが0.001より小さいことを表す)。
図5A】本発明に従って、実験例3の医療用接着剤を用いた細胞のスクラッチ実験の結果を表している。
図5B】本発明の実験例3の医療用接着剤を用いた細胞のスクラッチ実験の統計分析結果を示している。
図5C】本発明に従って、実験例3の医療用接着剤を用いたトランスウエル細胞実験の結果を表している。
図6】本発明に従って、実験例4において、SSAD治療群と他の4つの群の創傷閉鎖法とのインビボ効果を比較した図である。ここで図6aは、0日目、1日目、3日目、5日目のラットの皮膚切開の画像を表している。図6bは、切開により損傷を受けた組織のH&E染色画像であり、それぞれ表皮(E)、真皮(D)、かさぶた(SC)、切開部位(★)、創傷領域(枠線で示す)、劣化していないシアノアクリレート接着剤(CA)、フィブリン接着剤(FG)で表示されている。
図7】本発明に従って、実験例5における糖尿病性SDラットの体内の全層皮膚の損傷治癒率および品質評価を表している。図7aは、3日目、7日目、14日目、21日目の創傷治癒の様子を目視で観察したものだ。図7bは、3日目、7日目、14日目、21日目の創傷治癒を統計的分析した結果だ。図7cは、各グループの欠損組織の表皮治癒を組織学的に観察したもので、黒線は皮膚の厚さのテストラインである(スケール=3mm)。図7dは、各群の創傷の皮膚の厚さの定量的な検出統計結果を示している。図7eは、21日目の皮膚欠損部のマッソン(Masson)染色の結果を示しており、対応する毛包(HF)、皮脂腺(SG)、血管(BV)を表示している。図7fは、各視野内の血管、毛包、皮脂腺の数を示している(スケール=50μm)。図7gは、血管新生関連マーカーであるCD31とα-SMAi3の染色結果で、創傷部位の血管の新生状況を判断している(*でPが0.05より小さいことを表し、**でPが0.01より小さいことを表す)。
図8】本発明に従って、実験例6における医療用接着剤の分解の組織学的分析図を示している。
図9】本発明に従って、実験例9における医療用接着剤の腱に対する治療効果を評価するための、ラットのアキレス腱腱断裂欠損モデルの手術操作を表す図である。
図10】本発明に従って、実験例9における上側(右脚)を実験脚として、SDラットの最大足跡長(前足が地面に触れる最大の長さ)の比較写真を表したものである(正常対照群との比較では、最大足跡長が短いほど治癒が良好であることを示している)。
図11】本発明に従って、実験例9におけるSDラットの実験側の歩幅(Stride length、同じ足の連続する2つの足跡の中点間の距離)を表した写真である。(正常対照群と比較では、歩幅が大きいほど治癒力が高いことを示している)。
図12】本発明に従って、実験例9における、実験側の歩行サイクルにおける立脚時間(歩行サイクル中に足が地面に接触している時間)を表しており、横の枠が広いほど接触時間が長いことを示している(正常対照群と比較では、接触時間が短いほど治癒効果が高いことを示している)。
図13】本発明の実験例9における、手術から28日後のSDラットの右後脚(実験側)のアキレス腱の切片のHE染色写真を表す。その中で、ブランク対照群(a)では腱の中のコラーゲン配列が乱れており、細胞の向きも明らかではない、SSAD治療群(b)では、腱の中のコラーゲン配列が一貫しているように見え、細胞は明らかな方向性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書に組み込まれ一部を構成する添付の内容は、開示された様々な実施形態を示し、その説明とともに、開示された実施形態の原理を説明する。本明細書で用いるところでは、「含む(comprise)」といった用語やそれらの任意の他の変化は、非排他的な包含をカバーすることを意図される。
【0035】
生で採取したオオサンショウウオの皮膚粘液はゲル状で、完全に殺菌することが難しく、保存性も低いため、臨床で利用することは難しい。上述の欠点を解決するために、本発明で用いられる技術的解決策は、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を、品質の確認と十分な滅菌処理を行った後、水溶液または水系溶媒と混合して形成した医療用接着剤を提供することである。医療用接着剤は、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒を1:1~1:6の重量比で含有し、すなわち、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末1重量部と水溶液または水系溶媒1重量部~6重量部を配合する(以下の説明では、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒の重量比を「粉末対水比」という。)水溶液または水系溶媒は、純水または生体適合性物質を含む水溶液から選択することができ、生体適合性物質とは、生体適合性物質を配合した後の水溶液または水系溶媒が、オオサンショウウオの皮膚粘液中の活性成分の不活性化を引き起こさないことを主に意味する。好ましくは、水溶液または水系溶媒は、蒸留水、脱イオン水、生理食塩水(0.9%NaCl緩衝液)、リン酸緩衝液(PBS)、トリス緩衝液(TBS)、クエン酸緩衝液、クロルヘキシジンの水溶液(好ましくは2%の濃度)、臨床使用に許容される水溶液のいずれか1つまたは複数から選ぶことができる。さらに、水溶液または水系溶媒は、ヒトの全血も含み、血漿、血清、血漿、血液細胞調製物、多血小板血漿(PRP)、多血小板血漿フィブリン(PRF)など、水を含むヒトの血液抽出物も適している。本発明の目的のために、創傷の面や傷口から滲み出た血液や体液も、水溶液または水系溶媒の一部として使用することができる。
【0036】
オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒を必要な成分とするほかに、保存、配送、臨床応用が容易な製品を作るために、最適に利用できる医療用接着剤のためにその他の成分または原料を組み合わせて使用するが、それは特に限定しない。具体例を挙げると、本発明の好ましい実施形態によれば、本発明によって提供される医療用接着剤の製剤の中には、止血、抗炎症、組織成長促進作用を有する他の成分を含んでいてもよいが、本発明はこれに限定しない。
【0037】
本発明では、医療用接着剤が、理想的な多孔質構造を有し、人体や他の動物の組織、特に密な結合組織、皮膚組織、皮下脂肪組織、骨格系または前記異なる組織の間の接着に適用するための良好な生体適合性を有するように、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒の比率、および水溶液または水系溶媒に含まれる組成および濃度を設計している。
【0038】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、医療用接着剤を調製する方法は、以下の手順を含む:オオサンショウウオの皮膚から粘液を採取し、それを凍結乾燥させる。凍結乾燥したオオサンショウウオの皮膚粘液を粉砕・破砕し、品質保証の条件の一つとしてふるいにかけた後、必要な粒度のオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を入手する。オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を滅菌し、後で使用するために保管する。
【0039】
以下では添付図面により好ましい技術的解決策を説明している。図1が示すように、本発明は、以下の手順を含む医療用接着剤の調製方法を提供している。手順1:オオサンショウウオの皮膚から粘液を採取し、粘液を凍結乾燥させる。手順2:凍結乾燥した粘液を凍結状態で粉砕し、ふるいにかけて特定の粒度範囲の粉末を得る。手順3:粉末を滅菌して、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を得る。手順4:滅菌後のオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒を重量比で1:1~1:6の割合で混合し、ゲル状の医療用接着剤を形成する。好ましくは、医療用接着剤の調製に用いられるオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒との混合比は、1:2~1:6である。
【0040】
前記手順1の粘液の採取法は、オオサンショウウオを殺さずに、永久的な障害を回避できるように中国の動物保護法に厳密に従って実施する必要がある。引っかき傷法または電気な刺激を与える方法を採用できる。また、商業養殖オオサンショウウオを死なせた後に粘液を採取することもできる。本発明はこれを限定するものではない。
【0041】
前記手順2では、採取したオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を、ボールミルを使い低温状態で粉砕して微粉末にする。特定の粒度(特定の仕様を超えない粒度)の粉体を得るために、メッシュサイズの異なるふるいを用いてふるい分けすることができる。
【0042】
国際間でふるい目の基準がわずかに異なるため、本発明では好ましくは中国で一般的に使用されているテイラー標準ふるい目盛を採用してふるい目を定義し、その指標は200メッシュのふるい穴の大きさ0.074mmを基準としているが、その詳細は本領域の技術者の通常の知識の範囲内であり、特に述べない。しかし、この基準を用いて、本発明のオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の粒径を説明する場合、メッシュの前の正負の符号は、粉砕または破砕後に粉末がそのメッシュを抜けられるかどうかを示し、負の数値は、粉末がそのメッシュを抜けられることを示し、ふるい分け後に得られた粉末の粒径がメッシュサイズよりも小さいことを示している。また、正の数値は、その数値のメッシュを粉体が抜けないこと、つまり、ふるい分け後に得られる粉体の粒径がメッシュサイズよりも大きいことを示す。
【0043】
その中で、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末のより優れた性能を得るために、本発明のオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の粒子径はマイナス20メッシュであり、ふるいのメッシュが20メッシュ以上であることを示す(実験によって得られた対応する実際の粒子径は約850μm以下)。好ましい実施形態によれば、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の粒子径は、-60メッシュ~+300メッシュの間である(実験によって得られた対応する実際の粒子径は約50~250μm)。具体的な実施例では、-20メッシュの粒子径の粉末を得るために、20より大きいメッシュサイズのふるいを用いて通過させることで、通常850μmを超えない粒子径のオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を得ることができる。
【0044】
手順2の完了後、粉末は後で使用するために-20℃未満の冷蔵庫に保管できる。
前記手順3において、手順2で得られた粉末は滅菌および消毒される。この手順は、製品を臨床で応用するための重要な手順であり、製品の臨床使用のための性能に関わってくる。関連する規制によると、滅菌されていないオオサンショウウオの皮膚粘液関連製品は、臨床で直接使用することはできない。さらに、生きているオオサンショウウオの体表面に分泌された粘液は、手順1によって採取された場合、人体に潜在的に有害なウイルスや雑菌が含まれている可能性があり、ウイルスや殺菌は手順2の凍結乾燥粉末では完全には不活性化できず、傷の表面に直接使用すると傷口が感染する可能性が高まる。オオサンショウウオ皮膚粘液の主成分は、タンパク質、ペプチド、ムコ多糖、抗菌ペプチドなどの有効成分であり、最適な殺菌方法は、生体高分子の構造を破壊や変化させることもないし、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の接着性や生物活性の低下を引き起こすこともない。現在の技術によれば、オオサンショウウオ皮膚粘液の関連製品の消毒殺菌方法は、低温、紫外線、コバルト放射、殺菌剤殺菌方法を含む。好ましくは、本発明の手順3の殺菌および消毒方法は、エチレンオキサイド殺菌法である。
【0045】
前記手順4では、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末は、水溶液または水系溶媒と混合された後にゲル化され、ゲル状の医療用接着剤を形成する。水溶液または水系溶媒は、蒸留水、脱イオン水、および/または生理食塩水(NaCl緩衝液)、リン酸緩衝液(PBS)、トリス緩衝液(TBS)、クエン酸緩衝液などの生理的緩衝液を含むが、これらに限定されない。また、2%クロルヘキシジン、ヒト全血、多血小板血漿(PRP)、多血小板血漿フィブリン(PRF)、血漿および/または血液細胞調製物などを含んでもよく、必要に応じてこれら成分を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明は、さらに医療用接着剤の用途、具体的には創傷の面の接着、修復、治癒における用途を提供する。好ましくは、本発明による医療用接着剤の特性は、密な結合組織の創傷の面に特に適しており、具体的には、創傷の面は表皮、真皮および皮下結合組織の創傷表面が含まれるが、これらに限定されない。特に強調すべきは、医療用接着剤は、骨格系および筋肉系の創傷癒着のニーズを満たすことができるということであり、創傷の面は、骨格筋、腱、靭帯、骨、および骨格筋周囲の結合組織の創傷を含むが、これらに限定されるものではない。
【0047】
前記用途に基づき、さらに本発明の好ましい実施形態に基づき、医療用接着剤の使用例として2つの方法を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0048】
方法1には、創傷の面や傷口の出血や体液の滲出物に応じて、適量のオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と適量の水溶液または水系溶媒を直接適用して、傷口表面に直接塗布してゲルを形成し、傷口のより良い接着効果を実現する。その中で、水溶液または水系溶媒を塗布する際には、より好ましい方法は、創傷の面や傷口の出血や体液の滲出物の体積を一緒に見積もった後、さらに適量の水溶液や水系溶媒を適用し、より理想的な創傷接着効果を維持するために、粉末と水の比率を選択することである。創傷の面や傷口の出血や体液の滲出量と、塗布したオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末とが滑らかにゲル化し、良好な創傷接着効果を得ることができた場合には、追加の水溶液または水系溶媒を適用しなくてもよい。
【0049】
方法2には、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末1重量部に応じて、水溶液または水系溶媒1~6重量部を混合した後、任意の形状のゲルを形成し、このゲルは、治療上の必要性に応じて、創傷の面や創傷に特定の必要な形状(立体形状、表面積、厚さ等)で適合することができる。出血量が多かったり組織液の滲出が多かったりする傷に対しては、粉末と水の適切な比率を選択し、ゲルを創傷に塗布した後、傷口の組織液を吸収し、さらに膨らんでゲルを形成することで、止血し、湿潤接着し、傷の乾燥を保つ効果がある。
【0050】
以下の説明は、上記の方法に従って医療用接着剤を調製するためのものである。以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない。
【0051】
(実施例1)
医療用接着剤の調製
図2を参照されたい。前記した手順1のように、生きたオオサンショウウオを取り出し(図2a)、機械的な刺激法によってオオサンショウウオの粘液を得て(図2b)、オオサンショウウオの粘液を集めて準備する。手順2では、採取したオオサンショウウオの粘液を(図2c)凍結乾燥粉末(白い粉末)にする。この工程では、オオサンショウウオの粘液を採取後、出来るだけ早く凍結乾燥粉末にし、採取完了から凍結乾燥開始までの時間は1時間(以下、「h」と表記)を超えないようにする。凍結乾燥の速度は1時間当たり10~15℃低下するように設定し、4時間以内に-20℃まで低下する。その後、粉砕により微粉末を得、粒度の条件を満たさない微粉末を除去して、粒度が一定の範囲を超えない凍結乾燥粉末を得る。本実施形態では、メッシュサイズがそれぞれ14、20、60、100、200、300のふるいを用いてふるい分けを行い、ふるいの直径よりも小さい粒径の凍結乾燥粉末を得て、その凍結乾燥粉末を冷蔵下で密閉容器に保存して準備を行う。
【0052】
手順3では、エチレンオキシドを用いて前記凍結乾燥粉末を滅菌する。前記ようにして得られた凍結乾燥粉末は、エチレンオキシド専用滅菌バッグに封入されるか、あるいは開放容器に詰め、容器口に綿球をゆるく詰めた後に、エチレンオキシド専用殺菌袋に封入される。滅菌された包装袋はエチレンオキシド(EO)滅菌容器に入れ、エチレンオキシドを用いて滅菌し、滅菌時間と温度は、凍結乾燥粉末の性能を損なわない原則に基づいており、特別な制限はない。次に、滅菌済みの凍結乾燥粉末を放置し、残留するエチレンオキサイドが揮発するのを待つ。最後に、GB/T 16886.7-2001”医療機器の生物学的評価”,第7部:”エチレンオキサイドの残留物による殺菌効果の評価”を参照して、エチレンオキシドの残留率を確認する。この検査に合格すると、全体の滅菌手順が完了する
【0053】
さらに、本発明におけるエチレンオキシドの好ましい用途の効果を説明するために、異なる滅菌方法の評価と効果を以下に説明する。まず、考えられる滅菌方法を総合的に評価すると、低温・紫外線による滅菌効果は不完全であることが疑われ、殺菌処理時間が長くなり、低温または紫外線で消毒されたオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末は加水分解を起こしやすく、保存期間が短くなる。また、γ線法は放射線を含み、操作が複雑であり、オオサンショウウオ皮膚粘液関連製品の接着性能が低下する。
【0054】
本発明により提案されるエチレンオキシド滅菌方法については、GB 18279-2000”医療機器エチレンオキシド滅菌の確認および日常管理”を参考にして国家規格により具体的な滅菌工程を実施するのが好ましい。粉砕されたオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末は、エチレンオキシド専用殺菌バッグに封入されるか、あるいは解放容器に詰めた後、容器口に綿球をゆるく詰めてエチレンオキサイド専用殺菌袋に封入されている。滅菌包装袋は、エチレンオキシド(EO)滅菌容器に入れられ、エチレンオキシドが使用され、滅菌パラメータは100%エチレンオキシド、54℃、60分間の滅菌、15時間の分析である。滅菌後、GB/T 16886.7-2001「医療機器の生物学的評価」第7部:エチレンオキシド滅菌の残留量の評価(残留率≦10ppm)を参照し、検査が合格の後、全体の滅菌手順が完了する。
【0055】
臨床的な安全性の要求に基づいて、前記エチレンオキシド滅菌法による滅菌性能とその他の既存の滅菌方法と比較した結果を図3Cに示す。その結果、エチレンオキシド滅菌法とコバルト線消毒法は、低温殺菌(-20℃、-50℃、-80℃、液体窒素を含む)や紫外線よりも優れており(図3C-a)、コバルト線消毒法は接着性能への影響が大きく、エチレンオキシド殺菌法は良好な接着性能を兼ね備えることができ(図3C-b)、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末に最適な消毒滅菌方法ということがわかった。
【0056】
特に指定がなければ、以下の実施形態で使用される凍結乾燥粉末(一般的に「SSAD」と呼ばれたり表記されたりする)は、前記手順によって得られる。
【0057】
前記手順4に記載されているように、前記検査に合格したオオサンショウウオの粘液凍結乾燥粉末と選定された水溶液または水系溶媒と混合することによって、ゲル状の医療用接着剤が得られる。本発明の医療用接着剤は、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒が1:1~1:6の重量比、好ましくは1:2~1:6の重量比で適用され、すなわち、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末1重量部を水溶液または水系溶媒2重量部~6重量部と混合することで得られる。本実施形態のゲル状医療用接着剤において、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の好ましい重量含有率は14.2%~50%である。
【0058】
本発明では、オオサンショウウオの粘液凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒の重量比を設計し、本発明の医療用接着剤に特殊で実用的な優れたゲル化特性を与える。具体的には、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を水溶液または水系溶媒と混合する際に、ペプチド架橋ネットワークが溶解するのではなく膨潤し、混合後に、オオサンショウウオの皮膚粘液凍結粉末の水素結合、ジスルフィド結合、π-π共役結合によって駆動される絡み合ったタンパク質ネットワークが変化して、ゲルを形成し(2dおよび2eに示す)、その過程は「ゲル形成」と呼ばれる。ゲル形成時には、ポリペプチド鎖のアミノ酸残基が構造変化を起こしてゲル状の医療用接着剤を形成し、フェノール性の水酸基やアミノ基が高表面エネルギーや親水性界面に水素結合供与体として作用し、水素結合やファンデルワールス力によって生体接着を促進する。さらに、ベンゼン環は、低表面エネルギーや疎水性界面に接触すると、π-π電子やカチオン-π相互作用を介して基板と強い相互作用を形成する。
【0059】
本発明の前記医療用接着剤の特性に基づき、ヒトや動物の創傷界面にはタンパク質などの細胞外マトリックスが豊富に含まれている事実を考慮すると、ゲルを調製する際には適切な粉末対水比を選択する必要があり、医療用接着剤中の活性物質、水溶液または水系溶媒、および創傷組織中の細胞間液が相乗的効果を持ち、医療用接着剤と創傷との間に水素結合およびファンデルワールス力を介して最良な接着が得られる。
以上のことからわかるように、水溶液または水系溶媒は、純水または臨床的に許容される水溶液を選択でき、適度に生体適合性物質を含むことができ、生体適合性物質の選択は、オオサンショウウオの皮膚粘液中の有効成分の不活性化を起こさず、ゲル形成に影響を与えない。そのため、人工的に調製した水溶液や水系溶媒を使用する以外にも、創傷の面や傷口から滲み出た血液や、組織液を水溶液または水系溶媒として使用したり、前記水溶液と混合して水溶液または水系溶媒を形成したりすることもできる。
【0060】
また、外科的創傷や創傷の面は通常、体表と外部との間の界面に位置し、同時に外部の温度変化や約37℃の人間の組織の恒温状態の環境にさらされるため、接着剤の形成には良質な性能が求められる。従って、本実施形態では、医療用接着剤のゲル化形成を4℃または37℃の条件でそれぞれ評価する。オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末100mgとPBS(水溶液または水系溶媒)200μLを均一に混合し、ゆっくりと型に流し込み、医療用接着剤としてゲル状に固まるまで4℃または37℃の温度下で3分以上放置する。実験では、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と水溶液または水系溶媒は、粘性のあるゲルを速やかに形成することが示された。
【0061】
(実施例2)
医療用接着剤の構造解析
本発明が提供する医療用接着剤は、ゲル化形成後に多孔質構造を有するため、臨床用途で使用した場合、組織液中の栄養分や代謝物の交換を促進することができる。
走査型電子顕微鏡(日立、S-3400N II、日本)で、本発明の実施例1で得られた異なる粒子径(粒径)のオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末(SSAD粉末)の多孔質構造を分析したところ、図3Aに示すように、走査型電子顕微鏡では不均一でブロック状であることが示された。しかし、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を水溶液または水系溶媒と混合すると、凝集体のポリペプチド鎖が膨潤して、相互に浸透し、3次元のハニカム構造であるゲル状の医療用接着剤(SSADハイドロゲル)が形成された。
【0062】
走査型電子顕微鏡による分析では、3次元ハニカム構造体の孔の平均直径は、使用したオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の粒径が小さくなるのに応じて減少した。孔の平均直径と水の粉末の比率との相関関係は統計的に有意ではなく、水の割合は孔の平均直径に有意な影響を与えることはわかっていない。その中で、粒子径-14メッシュのオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の水和によって形成されるゲルの孔の平均細孔直径は116ミクロンであり、粒子径-60メッシュの孔の平均細孔直径は37ミクロンであり、粒子径-300メッシュの孔の平均細孔径は6ミクロンであった。また、ゲル化時間が増加すると、多孔質構造がより明確になり、細孔径がより均一になった。ゲル化12時間後の細孔構造では、空洞の側壁の密度が増加し(ゲル化12時間)、ゲル化2時間後の側壁(ゲル化2時間)に比べて明らかに大きくなっており、水和時間の延長に伴って多孔質ネットワークの構造が安定したことが示された。多孔質構造体の細孔径と細孔寸法の分析結果の一例を図3Bに示す。
【0063】
(実施例3)
医療用接着剤の組織に対する接着強度のインビトロ測定
本実施形態では、主にASTM(American Society for Testing and Materials)基準にのっとり、市販の医療用接着剤であるシアノアクリレート(cyanacrylate)とフィブリン接着剤を対照して、接着効果を評価した。材料や動作環境の違いに対応して行われたそこでの改良は、当分野の技術人員は理解可能かつ許容されるものであり、ここでは詳しく述べない。
【0064】
本実施形態では、万能試験機(MTS Criterion,Model 43,USA)を用いて、実験室でせん断試験を行った。具体的な方法は、豚の皮を組織マトリックスとして使用し、皮を1×8平方センチメートルの長方形にカットした。シアノアクリレート(Baiyun Medical Adhensive,中国、広州)(添付図では”市販接着剤”と表記)、フィブリン接着剤(FIBINGLURAAS,中国、上海)(添付図では”バイオグルー”と表記)、オオサンショウウオの皮膚の凍結乾燥粉末を用いた医療用接着剤(添付図では”SAAD治療群”と表記)をそれぞれ利用し、二通りの方法で接着した:一つは切開整列接着(切開端から切開端)で、もう一つは皮下脂肪と皮下脂肪の接着であり、その方法と結果の概略を4Aと4Bで示している。
【0065】
SSAD治療群に対しては、試験の具体方法は、30mgのオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を秤量し豚の皮膚に塗布し、PBS60~180μL(重量比約1:2~1:6)をピペットで加えて医療用接着剤を形成した。一方、対照試験のバイオグルー群と市販のグルー群は、メーカーの説明書に従って、それぞれフィブリン接着剤とシアノアクリレートを使用し、前記2つの方法で豚の皮膚を接着した。接着後2時間経過後、万能試験機を用いて、接着した部品の接着能力を個別に測定した。
【0066】
ASTM F2255-05規格に基づいて、3つの群の材料のせん断強度を測定するためにラップせん断試験を使用した。切開整列接着方法(図4A-i図に示す)に対するせん断接着抵抗は、市販のグルー群では40.71±3.71kPa、バイオグルー群ではわずか3.76±0.16kPaで、SSAD治療群の26.66±8.22kPaだった(図4A-iiおよび図4A-iiiに示す)。この結果、バイオグルー群と比較して、SSAD治療群の接着強度(p<0.05)と市販グルー群の効果(p<0.01)に統計的に有意な差が見られた。このうち、バイオグルー群の試験結果では、フィブリン接着剤の低粘着性が使用説明書通りであることが示された。フィブリン接着剤は単独で使用するのではなく、縫合糸と併用する必要がある。特に説明が必要なのは、ラップせん断試験の結果では、市販のグルー群はSSAD治療群に比べて破断時のひずみがはるかに大きく、試験中に表皮の一部が損傷したことから、シアノアクリレート系接着剤は皮膚接着剤としては接着能力が高すぎて、かえって表皮の損傷という負の影響を与えている可能性がある。また、市販のグルー群は3つの群の中で最も強い接着力を有するが、表皮層のみが接着可能であり、皮下脂肪層は接着できなかった(図示せず)。
【0067】
対照的に、皮下脂肪と皮下脂肪の接着(図4B-iに示す)を利用して豚の皮膚を接着した場合、SSAD治療群は市販のグルー群やバイオグルー群よりも有意に優れた接着性を示した。図4B-iiおよび図4B-iiiに示すように、SSAD治療群は皮下脂肪へのせん断接着力が約26.11±7.72kPaと著しく抵抗があったのに対し、残りの2つの接着剤はせん断接着力が7kPa未満であった。
【0068】
生体接着剤は、良好な接着性に加えて、良好な弾性と延性を必要とするため、本実施形態では、さらに前記3種類の材料について、接着性に加えて、接着後の弾性と延性を試験し、その結果を図4Cに示した。具体的な試験方法は、豚の皮を生体マトリックスとして使用し、三点曲げ法を改良した三点接着試験を採用して、接着後の豚の皮の弾性と延性を測定した。三点接着試験では、豚の皮の中央部に2cmの切り込みを入れ(図4C-iに示す)、接着したサンプルに100Nのロードセルを用いて1mm/minの速度で完全に離れるまで負荷をかけ、同じ変位を起こすために負荷をかける必要がある応力(荷重)を検出し、代表的なひずみ-変位曲線(図4C-iiに示す)と、固定変形に必要な定量的な負荷力(図4C-iiiに示す)を得た。これまでの試験結果を3種類の素材で比較すると、SSAD治療群では同じ変形量を得るために必要な力は7.84±1.17Nしかなく、バイオグルー群(7±0.99N)と同程度であったが、市販のグルー群(12.33±1.53N)よりも有意に低かった(図4A、4B、4Cでは、*でPが0.05より小さいことを表し、**でPが0.01より小さいことを表し、***でPが0.001より小さいことを表す)。
【0069】
試験の結果、シアノアクリレート接着剤は堅個な接着力を発揮する一方で、本発明の医療用接着剤は皮膚に対して柔軟な接着力を発揮することから、本発明の医療用接着剤の接着性は、皮膚や組織の接着剤としての使用に適していることが示された。
【0070】
以上のように豚の皮を用いた接着能力、せん断抵抗、弾性、延伸性の試験を行ったところ、本発明の医療用接着剤と現在臨床的に一般的に使用されている2つの医療用接着剤(シアノアクリレート系合成接着剤、フィブリン接着剤)を比較すると、総合的に見て、本発明が提供する医療用接着剤は、異なるマトリックスに対して優れた接着性能を発揮することが分かった。
【0071】
本発明の医療用接着剤の骨に対する接着性を試験するために、本実施形態では、万能試験機(MTS Criterion,Model 43,USA)を用いた実験室でのせん断試験を実施した。具体的な方法は、組織マトリックスとして骨を用い、ウサギの大腿骨を骨剪刀で中央1/2で切断し、オオサンショウウオの皮膚粘液を凍結乾燥させた粉末を用いた医療用接着剤を用い、アライメント接着を行い、接着10分後にせん断試験を行い、最終的に得られた接着強度の結果は38.5±11.2KPaであった。
【0072】
本発明の医療用接着剤の創傷の面または傷口の接着に関する性能(抗菌効果、抗酸化効果、細胞遊走効果)について、インビトロ試験と比較を実施し、それぞれ以下の実験例を用いて説明した。
【0073】
(実験例1)
抗菌効果の実験
好気性細菌実験のためオオサンショウウオの皮膚から粘液抽出物を配合する。滅菌したオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末1gを秤量した後、適量のLB(栄養ブロス培地)培地を加えて、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末が十分に水を吸収して膨潤させた後、さらに培地を加え続けて、最終的に液体培地の量が10mLになるようにし、4℃の冷蔵庫に24時間入れて浸出を完了した。
【0074】
嫌気性菌実験で使用されるオオサンショウウオ皮膚の粘液注入液を調製する。滅菌したオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末1gを秤量し、適量のTSB(トリプトン大豆ブロス培地)培地を加えて十分に水を吸収して膨潤させた後、さらに培地を加え続けて、最終的に液体培地の量が10mLになるようにし、4℃の冷蔵庫に24時間入れて浸出を完了させた。
【0075】
好気性菌は大腸菌と黄色ブドウ球菌から選択し、培養方法は以下のとおりである。好気性細菌の実験に使用する浸出液を調製し、24時間抽出した後、浸出液を3000r/minで3分間遠心分離して最終的な浸出液を得た。オオサンショウウオの皮膚粘液浸出液10mLを50mL遠心分離菅に加え、500μLの菌液を接種し、よく混合し、直ちにインキュベーターに入れた。
嫌気性菌はポルフィロモナス・ジンジバリスを選択し、培養方法は以下のとおりである。嫌気性菌の実験に使用する浸出液を調製し、24時間抽出した後、浸出液を3000r/minで3分間遠心分離して最終的な浸出液を得る。50mLの遠心分離菅にオオサンショウウオ皮膚粘液抽出液10mLを加え、羊の血液の5%濃度に応じて、各チューブに500μLずつ羊の血液を加え、同濃度の菌液500μLをそれぞれ接種し、よく混合し、直ちに嫌気性インキュベーターに入れた。
【0076】
ブランク対照群は以下のように調整する。好気性菌:遠心分離管に10mLのLB培地を加え、実験群と同濃度の細菌溶液を接種して、ブランク対照群とする。嫌気性菌:遠心分離菅にTSB培地10mL、羊の血液500μLを加え、実験群と同濃度の菌を接種して、ブランク対象群とした。
【0077】
細菌の検測方法は以下である。大腸菌と黄色ブドウ球菌の検測:吸光度の測定はマイクロプレートリーダー(EnSpire,PerkinElmer,シンガポール)を用い、0時間目~2時間毎に均一に混合した各郡の液体を各ウェルに100μLずつ96ウェルプレートに吸収し追加し、3個のサブウェルを設置する操作方法である。OD=600の条件で各群の吸光度を測定した。データは大腸菌の抗菌効果の比較を示す表1と、黄色ブドウ球菌の抗菌効果の比較を示す表2とを含む。
【0078】
ポルフィロモナス・ジンジバリスの検出:吸光度は、マイクロプレートリーダーを用いて測定し、0日目から均一に混合した液体の各郡を各ウェルに100μLずつ96ウェルプレートに毎日吸引し追加し、5つのサブウェルを設置する操作方法である。OD=600の条件で各郡の吸光度を測定した。データはポルフィロモナス・ジンジバリスの抗菌効果の比較を指す表3に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】

以上の実験により、オオサンショウウオの皮膚の粘液抽出物は、2つの一般的な好気性細菌(大腸菌と黄色ブドウ球菌)に対して、より明らかな阻害効果があり、抗菌時間は16時間に達することが証明された。オオサンショウウオの皮膚の粘液抽出物は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(嫌気性細菌)の増殖を有意に抑制する効果があり、その抗菌時間は5日以上に達した。
【0082】
(実験例2)
酸化防止実験
まず、オオサンショウウオの皮膚粘液抽出液を調製し、その方法は以下である。オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末200mgを2mLの脱イオン水(重量比約1:10)に7日間浸漬して、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末中の可溶性物質を十分に溶解させ、その液の上澄みを採取して、オオサンショウウオの皮膚粘液抽出物を得る。その場で1mg/mLのDPPHエタノール溶液を調製した。
【0083】
実験群では、オオサンショウウオの皮膚粘液抽出物1Mlと、DPPHエタノール溶液1mLとを使用した。対照群では、純水1mL及びDPPHエタノール溶液1mLを用いた。分光光度計をエタノールでゼロに調製し、517nmの波長で0.5時間、1時間、2時間測定したところ、対照群の吸光度はA1、実験群の吸光度はA2であった。フリーラジカル消去率を式(I)で算出し、測定結果を表4に示したフリーラジカル消去率計算表に示した。
フリーラジカル消去率=100×(A-A)÷A(I)
【0084】
【表4】
この実験は、オオサンショウウオの皮膚粘液抽出物がDPPH溶液中のほとんどのフリーラジカルを消去することができ、抗酸化機能を持つことを示している。
【0085】
(実験例3)
細胞遊走実験
インビトロの創傷治癒過程をシミュレーションするために、細胞のスクラッチ実験とトランスウエルチャンバー実験を行った。
【0086】
前記2種類の実験に対して、まず完全な培地を準備する。DMEM88部、牛胎児血清10部、ペニシリン1重量部、ストレプトマイシン1重量部を取り、均一に混合して完全な培地を得た。次に、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末1mgと完全培地1mLの割合で、オオサンショウウオの皮膚粘液を完全培地に7日間浸して、オオサンショウウオの皮膚粘液中の可溶性物質を完全に溶解させて、濃度1mg/mLのオオサンショウウオの皮膚粘液の抽出培地を得、さらに、5種類の異なる濃度比のオオサンショウウオの皮膚粘液抽出培地を調製して、濃度はそれぞれ0.5mg/mL、0.1mg/mL、0.05mg/mL、0.01mg/mL、0.005mg/mLであった。
【0087】
細胞スクラッチ実験では、HUVESとL929の2種類の細胞を使用し試験を行い、細胞準備プロセスは以下である。対数増殖期の臍帯静脈内皮細胞(HUVES)と線維芽細胞(L929)を取り、トリプシン消化して、細胞数6×10個/mLの単細胞懸濁液を得る。次に、細胞懸濁液1mLを6ウェルプレートに接種し、完全培地1mLを加えて37℃のインキュベーターで培養し、細胞が壁に付着して6ウェルプレート全体に増殖した後、200μLの黄色いピペットチップで傷をつけ(横方向と縦方向に1つずつ、後の観察時の位置決めのために傷が「+」型になるように)、スクラッチ後にPBSで2~3回洗浄して浮遊細胞を除去し、最後に5つのウェルに前記濃度の異なる5種類のオオサンショウウオの皮膚粘液抽出液を2mL加え、1つのウェルにオオサンショウウオの皮膚粘液抽出液を含まない完全な培地を2mL加えてブランク対照群とする。すべての実験サンプルを37℃のインキュベーター内で培養し、0時間後と24時間後に顕微鏡で観察撮影し、そのうち、0.1mg/mLのオオサンショウウオの皮膚粘液抽出液を用いた実験の結果は、図5Aに示され、残りの濃度は示されていない。
【0088】
Image-Jソフトウェアを利用して収集された写真の面積計算と分析し、その結果を図5Bに示し、実験では、異なる濃度のオオサンショウウオの皮膚粘液抽出培地が、HUVESとL929の二種類の細胞の遊走をある程度促進し、そのうち0.1mg/mLの濃度で最も顕著な効果があることが示され、その細胞の成長と遊走はブランク対照群に比べて有意に速く、また両者の差は統計的に有意であることが証明された。
【0089】
続いて、トランスウエル実験を通して、5種類の異なる濃度のオオサンショウウオの皮膚粘液抽出培地が、HUVESおよびL929の2種類の細胞のインビトロ遊走速度に及ぼす影響を検証し、皮膚および粘膜の再生促進におけるその役割を反映させた。
【0090】
それぞれHUVESとL929との2種類の細胞を試験に使用し、細胞の準備プロセスは以下である。対数増殖期のHUVESとL929とを取り、トリプシンで消化して単細胞懸濁液を得て、HUVESは2×10細胞/mL、L929は3×10細胞/mLの細胞数であり、トランスウエルチャンバーを24ウェルプレートに置き、そして100μLの細胞懸濁液をトランスウエルの上部チャンバーに接種し、下部チャンバーに800μLのオオサンショウウオの皮膚粘液培地をそれぞれ加え、37℃のインキュベーター内で24時間培養した後、ピンセットでチャンバーを慎重に取り外し、上部チャンバー内の液体を吸引し、あらかじめ約800μLのメタノールが添加されたウェルに移し、室温で30分間固定した後、チャンバーを取り除き、上部チャンバー内の固定液を吸引し、あらかじめ約800μLの0.1%のクリスタルバイオレット染色液を加えた24ウェルプレートに移し、室温で15~30分染色し、染色完了後、PBSで数回浸し余分な染色液を洗い流し、最後に上部のチャンバー内の液体を吸引し、濡れた綿棒で上部チャンバー底部の膜の表面にある細胞を丁寧に拭きとった。チャンバーの膜が乾いた後、ピンセットを使用して膜を慎重に取り外し、スライドに移してシールした後、図5Cに示すように200倍の顕微鏡で観察した。そして、実験群の各郡のサンプルからランダムに撮影された写真に対して細胞カウントを実行し、各サンプルについて5つの視野をランダムに選択してカウントし、図5Cは各サンプルの一つの視野を示し、カウントして得られた細胞数を表5に示したトランスウエルチャンバー実験結果に示し、最後に細胞数を取得した後に差分統計分析を行った。
【0091】
【表5】
【0092】
実験の結果、オオサンショウウオの皮膚粘液抽出培地の濃度が異なると、2種類の細胞の遊走速度に異なる程度の影響を与えることが証明された。その中でHUVESにとっては、0.5mg/mL、0.1mg/mLのオオサンショウウオの皮膚粘液注抽出培地群とブランク対照群の差が統計的に有意であった。L929にとっては、0.1mg/mL、0.05mg/mL、0.01mg/mLのオオサンショウウオの皮膚粘液抽出培地群とブランク対照群の差が統計的に有意だった。その中でも、0.1mg/mLのオオサンショウウオ皮膚粘液抽出培地は、2種類の細胞に対して最も顕著な促進効果を示した。本実施例の実験結果では、オオサンショウウオの皮膚粘液抽出培地の濃度が異なると、2種類の細胞の遊走速度に異なる程度の影響を与え、その中で、0.1mg/mLのオオサンショウウオの皮膚粘液の促進効果が特に顕著であることを示している。
【0093】
上記のインビトロ細胞実験の結果は、いずれもオオサンショウウオの皮膚粘液抽出培地の細胞適合性は優れており、細胞に対する顕著な毒性は認められず、0.1mg/mLのオオサンショウウオの皮膚粘液抽出培地は、L929及びHUVESの遊走を有意に促進した
【0094】
(実験例4)
生きた傷口への組織癒着に対する医療用接着剤の評価と効果
まず、本発明の実験に使用した動物は重慶医科大学の実験動物センターから購入したものであることを最初に記しておく。すべての動物実験は、実験動物の看護と使用に関するNIHガイドライン(NIH Publication No.85-23 Rev.1985)に準拠して行われ、重慶医科大学歯学部の動物の看護と資料委員会によって承認された(CQHS-REC-2018-01)。
【0095】
生体内での傷の付着と生体適合性の評価のため、この実験にはSprague-Dawley(SD)の雄ラット(6~8週齢ラット、体重200g±20g)30匹を使用した。SD系ラットにペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)を腹腔内注射により麻酔をかけた。背中の毛を剃り、ヨウ素とエタノールで消毒した後、各SDラットの背中に4か所の2cmの切り込みを入れ、それぞれ4-0非吸収性縫合糸(縫合糸)、本発明の医療用接着剤(SSAD)、シアノアクリレート(市販の接着剤)、フィブリン接着剤(バイオグルー)または止血(ブランク対照)等の方法で創傷を縫合し治療した。
【0096】
SSAD治療群では、5mgのオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を切開部に塗布した後、15μL-20μLのPBSを切開部に滴下し、2つの傷口の縁を軽く押し付けて約30秒間接触させ、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末がPBSと相互作用してゲルを形成し、接着効果を十分に実現した。結果は、市販のグルー群に使用されているシアノアクリレートは、SSAD治療群に使用されている医療用接着剤に比べて堅固な結合性を持ち、医療用接着剤は通常の皮膚と同様の柔軟性を持つことを示した。また、バイオグルー群のフィブリン接着剤もある程度の柔軟性はあるものの、接着力が低く、動きによって接着剤の切り口が切れやすいため、医療用接着剤に比べて性能が劣ることを示した。
【0097】
治癒過程を理解し、創傷閉鎖の状況変化をモニターするために、すべての創傷部位を写真に撮り観察した(図6a)。術後5日目には、閉鎖処理を行わなかったブランク対照群のすべての創傷が裂開していた(図6a)。さらに、バイオグルー群やブランク対照群(単純な止血処置)と比較して、市販のグルー群、縫合糸群、SSAD治療群の傷はいずれも回復し、そのうちSSAD治療群の創傷は回復するだけでなく、傷跡がほとんど残らず、癒合回復効果が他の群に比べて有意に優れていた。さらに、SSAD治療群の創傷の面周辺には、感染や炎症の疑わしい兆候は観察されず、本発明の医療用接着剤が創傷治癒に優れた効果を発揮することが示された。
【0098】
創傷の癒合効果と本発明の医療用接着剤による治療のラットの皮膚組織に対する起こりえる副作用を評価するために、手術の5日後にラットを殺害処置し、皮膚のサンプル(3×3cm)を採取してヘマトキシリン・エオジン染色分析(H&E;G1120、Solarbio、中国)を行い、組織学的研究を行った結果を図6bに示す。SSAD治療群では、医療用接着剤で処理された切開部の下に、縦方向のコラーゲン繊維や散在する好中球や線維芽細胞が見られた。上皮は基底膜と連続的に融合しており、組織の深部にも亀裂は見られなかった。また、切開部には明らかな瘢痕を残さずに発毛の再生が確認されたことから、医療用接着剤が明らかな副作用を伴わずに全体的な創傷の治癒を促進することが示唆された。
【0099】
SSAD治療群以外の群では、縫合創部位に不規則なコラーゲン繊維、好中球細胞、繊維芽細胞が少なく、毛髪の再生も少なかった。注目に値するのはSSAD治療群に比べて、他の群では縫合切開部位に細胞がなかったのに対し、SSAD治療群では有核の青染色された新生物細胞が多く見られたことである。市販のグルー群では、シアノアクリレートで処理した切開部は、その基底部に明確な空胞が見え、これは分解されないシアノアクリレートで満たされている可能性があり、シアノアクリレートの一部は壊死細胞で囲まれており、基底部の細胞領域には明らかな有核の青染色細胞は見られなかった。バイオグルー群の切開部は、明らかな潰瘍表面が見られ、基部には分解されていないフィブリン接着剤の残留が見られた。止血処置のみを行ったブランク対照群では、切開部に多量の肉芽組織で満たされており、創傷部位には一定数の多形核白血球、マクロファージ、線維芽細胞、毛細血管が見られた。
【0100】
市販グルー群のシアノアクリレートは、インビボおよびインビトロの接着力が最も高く、天然の皮膚組織の接着力よりもさらに高かった。しかし、シアノアクリレートは脂肪への接着力が弱く、形成される接着界面はより硬く、その細胞毒性も無視できない。バイオグルー群のフィブリン接着剤は、軟組織に近い性質を持っているが、接着力が低く、単独では使用できない。SSAD治療群については、治療した切開部は従来の縫合糸で治療したものよりも回復が良く、大きな創傷感染や炎症を起こさず、細胞の再生を促進する効果があることが示された。
【0101】
(実験例5)
医療用接着剤のインビボ創傷治癒における評価と効果
本実験例では、全皮膚欠損を適用して、糖尿病性SDラットのインビボ創傷の面に塗布された医療用接着剤の治癒力を評価した。論文(Biomaterials science.2018;6:2757-72)に記載されている方法に従うと、糖尿病ラットは構築に成功後、1%ペントバルビタールナトリウムで麻酔し(腹腔内注射)、そして背表皮の毛をきれいに削り取った。使い捨ての生検針を用いて、背部の皮膚に直径10mmの全厚の円形の傷をつけた。創傷治療では、ブランク対照群はガーゼで覆おわれた。SSAD治療群では、欠損面積30mg/cm2に応じてオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の用量を算出し、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を創傷面に均一に散布し、実験動物の静止状態を2分以上保つことで、オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末が創傷部から血液を吸収し(つまり、水溶液または水系溶媒の機能)ゲルを形成した後、医療用接着剤を形成し、創傷部を覆った。術後0日目、3日目、7日目、14日目、21日目に創傷の閉鎖率を分析した。術後21日に、皮膚の厚さ比(STR)、平均正常な皮膚厚さ、皮膚付着物(毛包、皮脂腺、汗腺など)の数などの統計的分析を含む、創傷部の組織切片分析を行った。
【0102】
創傷閉鎖率は、Image Jソフトウェア(National Institute of Heath)を用いて、以下の式(II)に基づいて算出した。
そのうち、SInitialは初期の創傷サイズ、SCurrenは現在の創傷サイズだ。各条件で少なくとも3回の試験を行った。
【0103】
皮膚の厚さ比率(STR)は、Image Jソフトウェアを用い、式(III)に従って算出した。
そのうち、TScarは瘢痕組織の平均皮膚厚、TNormalは正常な皮膚厚の平均だ。各条件で少なくとも3回の試験を実施した。
【0104】
医療用接着剤のインビボでの創傷の面治癒に対する有効性をさらに評価するために、使い捨ての生検用穿刺機を用いて、ラットの背中に直径1cmの円形の全層皮膚の傷を作った。SSAD治療群は、実施例1のように調製された医療用接着剤を使用し、投与量は、100mg/cmの欠陥面積で計算された。陰性対照群はガーゼで覆い、いかなる接着剤も使用しなかった。手術後0日、3日、7日、14日、21日の時間間隔で治療群の創傷治癒状況を写真撮影で観察し、全体の結果を図7に示した。
【0105】
図7aおよび図7bに示すように、医療用接着剤で処理された傷口では、創傷閉鎖率が有意に高くなった。0日目の画像では、二つの群の欠損部位に有意な差は見られなかった。欠損手術後3日目以降は、治療群の創傷閉鎖率(30.9±8.2%)は対照群(10.4±1.5%)に比べて有意に高かった。7日目では、対照群の創傷閉鎖率が24.4±5.5%であったのに対し、治療群の創傷閉鎖率は54.5±12.4%であった。14日目では治療群の創傷閉鎖率は80.9±7.5%であったのに対して、対照群の創傷閉鎖率が58.2±11.4%であった。21日目には、治療群ではほぼ完全な創傷融合(98.1%±2.6%)し、再生した毛が傷口を覆っているのが観察されたのに対し、対照群の創傷閉鎖率は71.9%±6.4%であった。全体として、治療群は傷口の外観が大幅に改善されたのに対し、未治療の対照群は明らかに大きく長い瘢痕があった。
【0106】
表皮の再生と結合組織の収縮に対する医療用接着剤治療の効果を調べるために、術後21日目にH&E染色を実施した(図7c)。H&E染色の結果、SSAD治療群の皮膚再生が厚く、潰瘍面積が小さくなっていることがわかり、統計結果は比較結果に統計的に差があることを証明した(図7d)。SDラットの創傷部位に対する切片をマソン染色したところ(図7e)、正常皮膚と比較して、21日目では肉芽組織の増殖およびリモデリング段階にあるため、SSAD治療群の肉芽組織は成熟しており、より多くの血管を含んでいた。表皮の治癒に加えて、治療群では、正常な組織成分に近い、成熟した真皮構造(毛包や皮脂腺を含む)が形成されたが、ブランク対照群ではこの現象は観察できなかった(図7f)。
【0107】
傷口部位の血管の新形を判断するために、血管新生関連マーカーであるCD31とα-SMAを分析し、その結果を図7gに示し、比較のために、組織内の細胞核の位置をDAPI染色で示した。図7gに見られるように、術後7日目のSSAD治療群のCD31陽性細胞の含有量は、4.42±0.55%で、ブランク対照群のCD31陽性細胞の含有量は1.48±0.39%だった。術後14日目のオオサンショウウオの皮膚粘液ハイドロゲル治療群のCD31陽性細胞の含有量は13.03±1.03%で、ブランク対照群のCD31陽性細胞の含有量は8.30±1.59%となり、いずれも統計学的に有意な差が認められた(p<0.001)。SSAD治療群は、ブランク対照群と比較して、損傷部位の新生血管の形成を有意に増加させ、創傷治癒を促進することが証明され、また、本発明により提供される医療用接着剤は、組織再生を促進する有意な効果を有することが実証された。
【0108】
(実験例6)
医療用接着剤の生体内での劣化の評価と効果
イソフルラン全身麻酔を深く吸わせ、SDラットを仰向けに寝かせ、背中を無菌にして手術の準備をした。脊髄軸の外側の皮膚切開(3cm)は、その下層の皮下組織から分離させ、医療用接着剤を埋め込むための十分なスペースを確保した。オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を100mg取り、200~600μLのPBSと混合して医療用接着剤を形成し、皮下空間に移植し、移植後に皮膚を縫合して閉じた。術後3日、7日、14日目に周囲組織と全皮膚を採取し組織学的に分析を実施し、医療用接着剤の分解の効果を評価し、その分解効果を図8に示す。
【0109】
医療用接着剤を生体内に移植してから3日後、7日後、14日後のH&Eおよびマソン染色では、軽度の炎症反応が見られた(それぞれ図8a、図8bに示す)。移植から3日後には、移植した医療用接着剤の最外層に中程度の急性炎症反応が観察され、典型的な炎症細胞が濃い青色に染色された(図8のように比較的色の濃い細胞)。移植から7日目後には、医療用接着剤の構造体は完全性を失い始め、侵入する炎症細胞でほぼ満たされ、繊維状のカプセルはほとんど観察されず、医療用接着剤に対する宿主の反応が弱いことを示した。また、移植から14日後には、移植部位に医療用接着剤の残留物はほとんどなく、皮膚構造もブランク対照群と同じくらい正常であったことから、医療用水性ゲルは生体内で完全に分解されることがわかった。
【0110】
リンパ球(CD3)およびマクロファージ(CD68)のマーカー染色を用いて、創傷の治癒部分の細胞特性を評価し、その結果を図8cに示す。図8cの中でi、v、ixは術後3日目の断面の同一視野の局所拡大図である。同様に、ii、vi、xは術後7日目の画像である。iii,vii,xiは術後14日目の画像である。iv,viii,xiiは術後21日目の画像である。図8cに見られるように、移植後3日目では、医療用接着剤治療群では、移植片周囲のリンパ球浸潤率は0.23±0.06%で、マクロファージ浸潤はわずかであることがわかった。マクロファージ浸潤は7日目に最大となった(3.21±0.87%)。時間の経過とともに、リンパ球とマクロファージの浸潤数は減少し、21日目までにほぼ完全に消失し、同時に、上記のプロセスを定量化統計し、その結果を図8dおよび8eに示しており、各時点で統計的な差異が見られる。この観察結果は、オオサンショウウオの皮膚粘液ハイドロゲルが医療用接着剤としての生体適合性を持ち、体内で完全に分解可能であり、ほとんど刺激性が無く、顕著な免疫拒絶反応が見られないことを証明している。
【0111】
オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末に含まれる主な物質の含有量を液体クロマトグラフィーで検出したところ、87%以上が各種アミノ酸であることがわかった。オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末の主要物質の含有量が表6を参照される。
【0112】
【表6】
【0113】
(実験例7)
様々な水溶液または水系溶媒の種類による評価と効果
電気刺激法でオオサンショウウオの皮膚粘液を得、乾式粉砕した後エチレンオキサイドで殺菌し、48時間放置してオオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末を得た。水溶液または水系溶媒は、それぞれ生理食塩水(NaCl緩衝液)、リン酸緩衝液(PBS)、トリス緩衝液(TBS)、クエン酸緩衝液、2%クロルヘキシジン、血液、および多血小板血漿(PRP)、多血小板血漿フィブリン(PRF)、濃厚成長因子(CGF)を用い、本発明の実施例1に記載の方法に従って医療用接着剤を調製した。オオサンショウウオ皮膚粘液の凍結乾燥粉末と上述の水溶液または水系溶媒の重量比を表7に示す。
【0114】
【表7】
【0115】
前記のようにそれぞれ異なる粉末と水の比率の水溶液または水系溶媒で配合された医療用接着剤で多数のラットを治療し、治療方法は創傷の面を覆うように医療用接着剤を付着させ、いずれも創傷の面に付着して覆っており、良好な接着性を示した。35日後、ラットの心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓を採取して組織学分析を行い、医療用接着剤の生体適合性を評価した。血液サンプルを採取し、乳酸脱水素酵素(LDH)、血中尿素窒素(BUN)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を含む血液生化学分析を行い、医療用接着剤が生理的な値に及ぼす影響を評価した。治療期間やその後の観察(損傷後35日)において、ラットの全体的な健康や行動に対する影響は認められなかった。さらに、H&E染色は心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓の組織学的検査に対する全身的な損傷は認められなかった。さらに、医療用接着剤治療群のラットの腎臓(血中尿素窒素)、肝臓(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノ基転移酵素)、一般的障害(乳酸脱水素酵素)に対する毒性作用を評価した。医療用水ゲルの局所投与後、これらのパラメータは、対照群と比較して正常な基準値の範囲内にあり、医療用水ゲル治療後に主要な臓器に明らかな損傷がなかったことを示唆している。
【0116】
(実験例8)
医療用接着剤のインビボ生体適合性の評価と効果
本発明の異なる水溶液または水系溶媒および異なる粉末対水比の医療用接着剤を使用して、多くのラットに対して治療を行い、治療はラットの皮膚の下に適量の医療用接着剤を縫合して行った。治療35日後に、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓を採取し組織学的分析を行い、医療用接着剤の生体適合性を評価した。血液サンプルを採取し、乳酸脱水素酵素(LDH)、血中尿素窒素(BUN)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)などの血液生化学分析を行い、医療用接着剤の生理的な値に及ぼす影響を評価した。医療用接着剤は、皮膚切開部に接着し、糖尿病モデルの創傷の面治癒を促進する可能性がある。しかしながら、生物応用のためにはインビボの長期毒性評価が重要である。治療期間およびその後の観察(損傷後35日目)において、ラットの全体的な健康状態や行動に対する影響は認められなかった。さらに、H&E染色では、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓の組織学的検査に対する全身的な損傷は発見されなかった。また、医療用接着剤治療群のラットを対象に、腎臓(血中尿素窒素)、肝臓(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノ基転移酵素)、一般的障害(乳酸脱水素酵素)に対する毒性作用を評価した。これらのパラメータは、対照群と比較して正常な基準範囲内にあり、医療用接着剤による治療後も主要な臓器に明らかな損傷がなかったことを示唆している。
【0117】
(実験例9)
腱の治療に対する医療用接着剤の効果の評価
SDラットを実験動物として用い、そのうち正常群は手術をしていない正常ラットを使用した。SSAD治療群は、アキレス腱を切断した後、本発明の医療用接着剤を用いて治療した。ブランク対照群は、アキレス腱を切断した後、リン酸緩衝塩溶液(PBS)で処理し、自然治癒させた。具体的な方法は、体重(280±30g)の生後3カ月のSPF雄SDラット(重慶医科大学実験動物センター提供)20匹を選択した。適応給餌を7日間実施した。確立されたラットのアキレス腱切断モデルに基づいて、腱切断手術の手順を実行した(図9)。任意のラットの片方の後脚(例:右後脚)を選択し実験群とし、皮膚を切開して腱鞘膜を分離した(図9a)。アキレス腱と足底筋腱を露出させた(図9b)。アキレス腱を切断し、内部固定を防ぐために、足底アキレス腱も切除した(図9c)。腱鞘膜はアキレス腱の治癒を促進する成長因子の能力を高めるものであり、腱を切ったり縫合したりする際には、過度に傷つけないように注意が必要である。
【0118】
ラットを無作為にSSAD治療群とブランク対照群に分け、10匹ずつ、前記手術方法でアキレス腱を切断した。SSAD治療群は実施例1で得られた医療用接着剤で治療した。オオサンショウウオの粘液凍結乾燥粉末10mgを腱切断部に置き(図9d)、30マイクロリットルのPBSと混合してアキレス腱切断部の周囲にハイドロゲルを形成し(図9e)、創傷の面を閉鎖した(図9f)。ブランク対照群は、30マイクロリットルのPBSをアキレス腱の切断端に滴下した後、創傷の面を閉鎖した。
【0119】
術後、すべての動物に自由に水と餌(標準飼料)を与え、室温25℃~28℃、湿度75~80%の清潔な環境下で飼育した。術後28日目に小動物用の歩行器具を用いて術後の各群のラットの動きを分析し、一部のサンプルを機械的試験のために採取し(n=6)、残りの腱は固定し、パラフィン切片、HE染色やマッソン染色などの処理を行った。
【0120】
SSAD治療群とブランク対照群の腱強度を比較した。機械試験の方法は、以下の方法で実施した。まず、無傷の腱組織を分離し、2つ一緒になった手術メスで、腱組織をすべて保持しながら、腱組織の上下5mmの安全な距離で周囲の元の筋肉組織を切り取った。5mmの筋肉のある両端を万能試験機(MTS Criterion,Model 43,米国)に固定した。機械試験で使用されるパラメータは15mm/minとし、新生の腱組織が耐えられる最大の力に達したときに腱が破断し、そのとき機械は力と変位の曲線を記録した。最大引張力と事前に測定した新生の腱組織の断面積から、最大破壊強度(単位:N/mm2)を算出した。ヤング率は、その曲線の傾きから算出した。
【0121】
機械試験の結果、術後21日目の、SSAD治療群の腱の最大荷重張力(25.6N±8.2N)は、対照群(13.8±3.9N)に比べて有意に高かった(P<0.05)。同時に、SSAD治療群の腱断面積(10.5±4.7mm2)は、対照群(16.1±5.8mm2)に比べてまだ小さかった。SSAD治療群の腱の強度(2.8±1.1MPa)は対照群(0.9±0.2MPa)よりも高かった(P<0.05)。SSAD治療群の腱の硬さ(17.7±7.5N/mm)の方が対照群(6.9±1.2N/mm)よりも高かった(P<0.05)。SSAD治療群の弾性率(14.6±6.9Mpa)は対照群(3.0±0.6Mpa)よりも高かった。
【0122】
術後28日目、SSAD治療群の腱の最大荷重張力(52.8N±9.8N)は対照群(33.3±8.3N)よりも高かった(P<0.05)。同時に、SSAD治療群の腱の断面積(7.7±1.1mm2)は、対照群(9.3±1.6mm2)よりもまだ小さかった。SSAD治療群の腱強度(7.1±1.9Mpa)は対照群(3.6±0.9MPa)よりも高かった(P<0.05)。SSAD治療群の剛性(28.6±7.8N/mm)は対照群(15.3±3.0N/mm)よりも有意に高かった(P<0.05)。SSAD治療群の弾性率(36.3±11.2Mpa)は対照群(15.0±3.5Mpa)よりも高かった(P<0.05)。
【0123】
正常群の腱の最大荷重張力は42.3±2.9N、強度は14.0±5.8Mpa、剛性は29.8±7.3N/mm、弾性率は44.4±12.9Mpaであった。
【0124】
SSAD治療群の腱の最大負荷張力は正常群よりさらに高かったが、SSAD治療群の面積は正常群よりも大きかった(7.7±1.1mm2対3.5±1.2mm2)。正常群の腱の強度(14.0±5.8Mpa)は、SSAD治療群(7.1±1.9Mpa)よりもはるかに高く、正常群の腱の質はSSAD治療群よりも高いことを示している。SSAD治療群の腱負荷が正常な腱をさらに上回った理由は、過形成を伴う早期の腱の治癒によるものと思われる。本発明の医療用接着剤は、治癒したアキレス腱の強度を向上させ、再破裂のリスクを低減できることが説明される。
【0125】
SSAD治療群、ブランク対照群、正常群の走行状態計器を比較した。そのうち、SSAD治療群とブランク対照群の動物モデルは両方とも左後肢が正常で、右後肢を手術した。正常群は左右どちらの足も手術しなかった。げっ歯類小動物用歩行計(Catwalk XT歩行分析システム、ノルダックス、オランダ)を用いて術後のラットの可動性を評価し、機器には検査結果をエクスポートするソフトウェアが付属している。統計分析はSPSS statistics 25ソフトウェア(IBM、Armonk、NY、米国)を用いて行った。また、データは平均値±標準偏差で表示した。2つの独立したサンプルt検定を使用して、統計的差異の有無を計算した。
【0126】
フットプリント面積と、最大接触面積と、デューティ比と、最大強度比率と、最大接触面積の最大強度と、最大接触面積の平均強度と、最大強度と、平均強度と、最初の15個の最大足圧の平均強度とをそれぞれ測定した。21日目に、ブランク対照群で10匹のラット、SSAD治療群で10匹のラットを測定した。28日目に、ブランク対照群で4匹のラット、SSAD治療群で5匹のラットを測定した。4匹の正常なラットの歩行データを同時に測定した。データは平均値±標準偏差で表した。既存の文献報告および正常なラット群との比較によると、アキレス腱の治癒のよい形は次のようである。最大強度に達する割合が大きくなることを除いて、他の指標はすべて小さくなる。
【0127】
術後21日目に、SSAD治療群のラットのフットプリント面積(1.68±0.55cm2)は、対照群(2.15±0.33cm2)よりも小さかった(P<0.05)。SSAD治療群のラットのデューティ比(足の地面接触時間/歩行周期)(71.7±3.8%)は対照群(77.1±4.8%)よりも低かった(P<0.05)(図10)。SSAD治療群のラットの最大接触面積の最大強度(176.3±32.3)、最大接触面積の平均強度(90.6±13.1)、最大強度(186.0±25.0)、平均強度(96.8±13.9)、最初の15個の最大足圧の平均強度(168.8±32.4)は、対照群の最大接触面積最大強度(199.3±9.7%)、最大接触面積の平均強度(103.0±6.5)、最大強度(205.2±8.1)(図11)、平均強度(109.7±6.9)、最初の15個の最大足圧の平均強度(196.2±13.1)よりも小さかった。SSAD治療群では、足裏接地の最大強度に達するまでの時間の割合(63.8±12.7%)は対照群の時間の割合(47.7±13.9%)よりも大きかった。SSAD治療群と対照群のラットの体重は近く、体重が足の強度に干渉する可能性は排除できる。
【0128】
術後28日目では、SSAD治療群と対照群の間で統計的差異の指標は、最大接触面積(0.8±0.1cm対1.3±0.3cm)(図12)、最大強度(154.9±21.0対192±10.8)、最大接触面積平均強度(67.5±2.7対80.0±8.4)、フットプリント面積(1.2±0.2cm対1.8±0.4cm)、最大強度(173.3±16.8対200.2±7.0)(図11)、最初の15個の最大足圧の平均強度(146.2±13.6対182.1±17.8)(p<0.05)などである。正常群のデータはフットプリント面積(0.45cm2±0.14cm2)、最大接触面積(0.32cm2±0.11cm2)、デューティ比(足の地面接触時間/歩行周期)(62.1±2.9%)、足裏接地の最大強度に達するまでの時間の割合(70.7±12.8%)、最大接触面積の最大強度(83.4±20.2)、最大接触面積の平均強度(47.1±7.4)、最大強度(93.1±21.3)、平均強度(51.8±7.1)、最初の15個の最大足圧の平均強度(74.1±16.2)で、21日目と28日目のいずれにおいても、前記各指標においてSSAD治療群のデータは正常群に近く、本発明が提供する医療接着剤は、損傷した腱の運動機能を改善することを示している。21日目のラットの右足歩行デューティ比は図10であり、これは術後21日のラットの右足のデューティ比(足裏接地時間/歩行周期)であり、3群のラットの歩行サイクルを同じ長さに伸ばすことで、足裏接地時間はブランク対照群>SSAD治療群>正常群となり、デューティ比はブランク対照群>SSAD治療群>正常群となることがわかる。図11は21日目と28日目のラットの右足跡の最大圧力を示しており、これは、手術後21日目と28日目のラットの右足跡の圧力を3Dプロットしたものである。X軸は足跡の長さ、Y軸は足跡の幅、Z軸は足跡の最大圧力を表している。結果は、最大圧力はブランク対照群>SSAD治療群>正常群であることを示している。図12は、21日目と28日目のラットの右足の足跡の最大面積で、術後21日目と28日目のラットの右足のフットプリント面積はブランク対照群>SSAD治療群>正常群であることを示している。すべての歩行指標の具体的なデータを表8に示す。
【0129】
【表8】
術後28日目に、実験群と対照群の2匹のラットの右後脚のHE切片を採取し、染色した。ブランク対照群(図13a)は、コラーゲン線維が少なく、方向性がなく、内部に脂肪細胞の浸潤が見られた。SSAD治療群(図13b)は、コラーゲン線維が豊富で、線維は方向性も見られ、脂肪細胞の顕著な浸潤は見られなかった。このことにより、本発明が腱の治療に有効であることを表している。以上の結果は全て、SSAD治療群のアキレス腱治癒がブランク対照群よりも優れていることを示している。しかし、回復時間が短い(28日)ため、SSAD治療群のラットの運動能力はまだ正常な状態に戻らなかった。
【0130】
以上の説明から、本発明は、未改変のオオサンショウウオの皮膚粘液を用いた医療用接着剤およびその用途を提供し、様々な用途により、創傷の面組織の接着に適用でき、傷口の癒合を促進し、総合的に既存の医療用接着剤より性能が優れている。
【0131】
医療用接着剤の使用により、ハイドロゲルは、ラットの背中の出血した開放傷口を速やか(<60秒)に閉鎖し、糖尿病性SDラットの全皮膚欠損を効果的に治療した。また、医療用接着剤は2週間以内に体内で完全に分解され、炎症性異物反応も少なかった。従って、本発明が提供する医療用接着剤は、操作が容易であり、改変が容易であり、生体適合性が良好であり、組織再生を促進し、創傷治癒を促進し、抗酸化作用があり、抗菌など総合的な効果があり、皮膚、密な結合組織、脆弱な臓器、アクセスできない内部組織の創傷に対して、無縫合の選択肢として有望で実用性を提供している。また、オオサンショウウオの皮膚粘液が低コストであり、環境に優しい加工手順であることを考慮すると、本発明が提案する医療用接着剤は、弾性と延性を備えた医療用接着剤として、既存製品の欠点や限界を克服し、広く運用されることが期待される。
【0132】
上記の実施形態は、本発明の原理及び機能を実証するためだけに提供され、本発明の範囲を限定する意図はない。以下の特許請求の範囲によって規定される本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の種々の変更を当業者によって行うことができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13