(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】バッテリ用断熱素子
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20231106BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20231106BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231106BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/651
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2021554416
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 KR2021001594
(87)【国際公開番号】W WO2022169005
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】521406802
【氏名又は名称】エアロゲル アールアンドディー ピーティーイー.リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AEROGEL R&D PTE.LTD.
【住所又は居所原語表記】133 New Bridge Road #08-03,059413 Chinatown Point(SG)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン チョル
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174837(WO,A1)
【文献】特開2010-169255(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1303378(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/658
H01M 10/651
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱が移動可能な通路の役割を果たすように構成された第1ホール
(11)を含む第1カバー層
(10)と、
前記第1カバー層
(10)の一面に付着し、
熱が移動可能な通路の役割を果たすように構成された第2ホール(21)を含む第2カバー層
(20)と、
前記第2カバー層
(20)において前記第1カバー層
(10)の付着した面の反対面に位置する第3カバー層
(30)と
を含む断熱素子
(1000、2000)であって、
前記断熱素子は、
前記第3カバー層の内側空間に断熱部
(50)を含み、
前記断熱部は、
前記断熱素子の断熱性能を向上させるように構成された機能性充填材を含
み、
前記機能性充填材は、該機能性充填材の100重量部を基準としたときにエアロゲル粉末を50重量部~100重量部の範囲で含み、
前記断熱部に含まれる機能性充填材の充填密度は、0.05g/cm
3
~0.20g/cm
3
の範囲である、
バッテリ用断熱素子。
【請求項2】
前記第1カバー層
(10)の平均厚さ
又は前記第2カバー層(20)の平均厚さは、10μm~50μmの範囲である、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項3】
前記第1カバー層
(10)は、ポリイミド(Polyimide、PI)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthanlate、PET)フィルム、シクロオレフィンポリマー(Cyclo olefin polymer、COP)フィルム、未延伸ポリプロピレン(casting polypropylene、CPP)フィルム、およびナイロンフィルムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項4】
前記断熱部に含まれる機能性充填材の充填密度は、0.10g/cm
3
~0.15g/cm
3
の範囲である、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項5】
前記第2カバー層
(20)は、アルミニウムおよび雲母のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項6】
前記第3カバー層
(30)の平均厚さは、0.1mm~1.5mmの範囲である、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項7】
前記第3カバー層
(30)は、ガラス繊維、シリカウール、ミネラルウール、セラミックウール、そして製織繊維および不織布繊維のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項8】
前記第3カバー層
(30)は、30g/m
2~200g/m
2の範囲の密度を有する素材から構成されたものである、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項9】
前記断熱素子の平均厚さは、4mm以下である、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項10】
前記第2カバー層(20)の周縁に位置する密封部(40)
で前記第1カバー層、前記第2カバー層、及び前記第3カバー層が付着
している、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子
(1000)。
【請求項11】
前記密封部は、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ポリフタレート接着剤、PPA接着剤(acid modified polypropylene)、およびPEA接着剤(acid modified polyethylene)のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項12】
前記第1ホールの平均直径は、15μm以下である、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項13】
前記第1カバー層は、前記第1ホールを複数個含み、
前記第1ホール間の間隔は、0.5cm以下である、請求項
12に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項14】
前記第2ホールの平均直径は、15μm以下である、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項15】
前記第2カバー層は、前記第2ホールを複数個含み、
前記第2ホール間の間隔は、0.5cm以下である、請求項
14に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項16】
前記第1ホールおよび前記第2ホールは、
1回の工程で通孔されたものである、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項17】
前記機能性充填材は
、ヒュームドシリカおよびガラスバブルのうちの少なくとも1つを
さらに含む、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項18】
前記機能性充填材の平均粒径は、100μm以下である、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項19】
前記断熱部は、第1添加材をさらに含む、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項20】
前記第1添加材は、二酸化チタン(TiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、
および水酸化鉄(Fe
2O
3
)のうちの少なくとも1つを含む、請求項
19に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項21】
前記第1添加材の含有量は、前記機能性充填材100重量部に対して、1重量部~20重量部の範囲である、請求項
19に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項22】
前記断熱部は、第2添加材をさらに含む、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項23】
前記第2添加材は、マグネシウムヒドロキシド(Magnesium hydroxide、MDH)、アルミニウムヒドロキシド(Aluminum hydroxide、ATH)、ホウ酸亜鉛(Zinc Borate)、GREP-EG(graphite)、および三酸化アンチモン(Antimony Trioxide)のうちの少なくとも1つを含む、請求項
22に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項24】
前記第2添加材の含有量は、前記機能性充填材100重量部に対して、1重量部~20重量部の範囲である、請求項
22に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項25】
前記第2カバー層(20)および
前記第3カバー層(30)の間に位置する接着層を介して
前記第2カバー層(20)および前記第3カバー層(30)が付着
している、請求項1に記載のバッテリ用断熱素子
(2000)。
【請求項26】
前記接着層は、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレンビニルアセテート(EVA)フィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、およびアクリレートフィルムのうちの少なくとも1つを含む、請求項
25に記載のバッテリ用断熱素子。
【請求項27】
前記接着層は、第3ホール
(71)を含み、
前記第3ホールは、前記第1
ホール(11)および
前記第2ホール
(21)と
1回の工程で形成されたものである、請求項
26に記載のバッテリ用断熱素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に適用されるバッテリ用断熱素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近は、エネルギー密度が高い特性を利用して、二次電池をハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源または電力貯蔵用電源として用いるための研究が活発に行われている。
【0003】
このように、ハイブリッド自動車や電気自動車には、電気的に直列および/または並列とされた複数の二次電池を含むバッテリセルと、前記バッテリセルを複数個含むバッテリモジュールとを内部に収容するバッテリパック形態が適用される。
【0004】
このようなバッテリパックにおける主要研究課題の一つは、バッテリパックの安全性を向上させることにある。例えば、バッテリセルにおいて内部短絡、過充電および過放電などによって二次電池が発熱して電解質分解反応と熱暴走現象が発生する場合、電池内部の圧力が急激に上昇してバッテリセルの爆発が誘発されることがある。
【0005】
このようにバッテリセルで爆発が誘発される場合、隣接したバッテリセルに2次発火乃至爆発が発生することがあり、このような爆発は単にバッテリセルが破損すること以外に、使用者に致命的な被害を加えることがある。
【0006】
したがって、バッテリモジュールおよびバッテリパックの安全性を向上させることができる技術の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本実施例では、バッテリモジュールおよびバッテリパックに適用して、効果的に断熱性能を実現できるバッテリ用断熱素子を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施例によるバッテリ用断熱素子は、第1ホールを含む第1カバー層と、前記第1カバー層の一面に付着し、第2ホールを含む第2カバー層と、前記第2カバー層において前記第1カバー層の付着した面の反対面に位置する第3カバー層とを含む断熱素子であって、前記断熱素子は、内部に断熱部を含み、前記断熱部は、機能性充填材を含むことができる。
【0009】
前記断熱部に含まれる機能性充填材の充填密度は、0.05g/cm3~0.20g/cm3の範囲であってもよい。
【0010】
前記第1カバー層の平均厚さは、10μm~50μmの範囲であってもよい。
【0011】
このとき、前記第1カバー層は、ポリイミド(Polyimide、PI)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthanlate、PET)フィルム、シクロオレフィンポリマー(Cyclo olefin polymer、COP)フィルム、未延伸ポリプロピレン(casting polypropylene、CPP)フィルム、およびナイロンフィルムのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0012】
また、前記第2カバー層の平均厚さは、10μm~50μmの範囲であってもよい。
【0013】
前記第2カバー層は、アルミニウムおよび雲母のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0014】
前記第3カバー層の平均厚さは、0.1mm~1.5mmの範囲であってもよい。
【0015】
次に、前記第3カバー層は、ガラス繊維、シリカウール、ミネラルウール、セラミックウール、そして製織繊維および不織布繊維のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
第3カバー層は、30g/m2~200g/m2の範囲の密度を有する素材から構成される。
【0017】
前記断熱素子の平均厚さは、4mm以下であってもよい。
【0018】
本実施例において、前記断熱素子は、前記第1カバー層と、前記第2カバー層と、前記第3カバー層とを含む外装材を2以上含み、前記2以上の外装材は、前記第2カバー層の周縁に位置する密封部を介して付着したものであってもよい。
【0019】
前記密封部は、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ポリフタレート接着剤、PPA接着剤(acid modified polypropylene)、およびPEA接着剤(acid modified polyethylene)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0020】
前記第1ホールの平均直径は、15μm以下であってもよい。
【0021】
また、前記第1カバー層は、前記第1ホールを複数個含み、前記第1ホール間の間隔は、0.5cm以下であってもよい。
【0022】
前記第2ホールの平均直径は、15μm以下であってもよい。
【0023】
また、前記第2カバー層は、前記第2ホールを複数個含み、前記第2ホール間の間隔は、0.5cm以下であってもよい。
【0024】
本実施例において、前記第1ホールおよび前記第2ホールは、一体に形成されたものであってもよい。
【0025】
一方、前記機能性充填材は、エアロゲル粉末、ヒュームドシリカ、およびガラスバブルのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0026】
前記エアロゲル粉末は、前記機能性充填材100重量部を基準として、50重量部~100重量部の範囲に含まれる。
【0027】
前記機能性充填材の平均粒径は、100μm以下であってもよい。
【0028】
前記断熱部は、第1添加材をさらに含むことができる。
【0029】
前記第1添加材は、二酸化チタン(TiO2)、水酸化鉄(Fe2O3)、および酸化アルミニウム(Al2O3)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0030】
前記第1添加材の含有量は、前記機能性充填材100重量部に対して、1重量部~20重量部の範囲であってもよい。
【0031】
前記断熱部は、第2添加材をさらに含むことができる。
【0032】
前記第2添加材は、マグネシウムヒドロキシド(Magnesium hydroxide、MDH)、アルミニウムヒドロキシド(Aluminum hydroxide、ATH)、ホウ酸亜鉛(Zinc Borate)、GREP-EG(graphite)、および三酸化アンチモン(Antimony Trioxide)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0033】
前記第2添加材の含有量は、前記機能性充填材100重量部に対して、1重量部~20重量部の範囲であってもよい。
【0034】
他の実施例による断熱素子は、前記第1カバー層と、前記第2カバー層と、前記第3カバー層とを含む外装材を2以上含み、前記2以上の外装材は、前記第2カバー層および第3カバー層の間に位置する接着層を介して付着したものであってもよい。
【0035】
このとき、前記接着層は、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレンビニルアセテート(EVA)フィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、およびアクリレートフィルムのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0036】
前記接着層は、第3ホールを含み、前記第3ホールは、前記第1および第2ホールと一体に形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0037】
実施例によれば、本実施例によるバッテリ用断熱素子を適用する場合、優れた断熱性能を有するバッテリモジュールおよびバッテリパックを実現することができる。
具体的には、本実施例では、断熱部にバインダーなしに機能性充填材を高密度に充填させることによって、機能性充填材本来の高い断熱効果を有する断熱素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】一実施例によるバッテリ用断熱素子を概略的に示す断面図である。
【
図2】他の実施例によるバッテリ用断熱素子を概略的に示す断面図である。
【
図3】実施例1により製造された断熱素子に対する断熱性能テストの結果である。
【
図4】実施例2により製造された断熱素子に対する断熱性能テストの結果である。
【
図5】参考例1により製造された断熱素子に対する断熱性能テストの結果である。
【
図6】参考例2により製造された断熱素子に対する断熱性能テストの結果である。
【
図7】比較例1に対する断熱性能テストの結果である。
【
図8】比較例2に対する断熱性能テストの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及される。
【0040】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文章がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0041】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及した場合、これは、まさに他の部分の上にあるか、その間に他の部分が伴ってもよい。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及した場合、その間に他の部分が介在しない。
【0042】
また、特に言及しない限り、%は、重量%を意味し、1ppmは、0.0001重量%である。
【0043】
他に定義しないが、ここで使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
【0044】
図1は、一実施例によるバッテリ用断熱素子を概略的に示す断面図である。
図1を参照すれば、一実施例によるバッテリ用断熱素子1000は、順次に積層された第1カバー層10、第2カバー層20、および第3カバー層30を含む。
第1カバー層10は、第1ホール11を含む。
第2カバー層20は、前記第1カバー層10の一面に付着し、第2ホール21を含む。
第3カバー層30は、第2カバー層20において第1カバー層10の付着した面の反対面に位置する。
このとき、第3カバー層30は、第2カバー層20に付着した構造であってもよく、付着しない構造であってもよい。
【0045】
前記断熱素子1000は、内部に断熱部50を含み、前記断熱部50は、機能性充填材60を含む。
【0046】
本実施例において、断熱部50に含まれる機能性充填材60の充填密度は、0.05g/cm3~0.20g/cm3、より具体的には0.10g/cm3~0.15g/cm3の範囲であってもよい。
【0047】
機能性充填材の充填密度が0.05g/cm3を満足する場合、優れた断熱性能を確保することができる。また、機能性充填材の充填密度が0.15g/cm3を超える場合には、断熱性能の向上効果はわずかでありながら機能性充填材の使用量のみ増加させるため、生産単価が増加して経済性が顕著に低下する問題点がある。
【0048】
前記第1カバー層10の平均厚さは、10μm~50μmの範囲であってもよく、より具体的には15μm~30μmであってもよい。第1カバー層の平均厚さが50μmを超える場合、断熱性能により有利な効果が現れずに製品の厚さのみ増加させる問題点がある。また、第1および第2カバー層に形成された第1および第2ホールが再度詰まる問題点が発生しうる。さらに、第1カバー層の平均厚さが10μm以下の場合、外部衝撃から第2カバー層を保護できない問題点がある。
【0049】
前記第1カバー層10は、本実施例の断熱素子を外部環境から保護する役割を果たす外部層であってもよい。第1カバー層は、例えば、ポリイミド(Polyimide、PI)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthanlate、PET)フィルム、シクロオレフィンポリマー(Cyclo olefin polymer、COP)フィルム、未延伸ポリプロピレン(casting polypropylene、CPP)フィルム、およびナイロンフィルムのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0050】
前記第2カバー層20の平均厚さは、10μm~50μmの範囲、より具体的には20μm~40μmの範囲であってもよい。第2カバー層の平均厚さが50μmを超える場合、断熱性能により有利な効果が現れずに製品の厚さのみ増加させる問題点がある。また、第1および第2カバー層に形成された第1および第2ホールが再度詰まる問題点が発生しうる。さらに、第2カバー層の平均厚さが10μm未満の場合、断熱素子の形態を維持しにくい問題点がある。また、外部熱から第3カバー層と機能性充填材を保護しにくい。
【0051】
前記第2カバー層は、熱と火災を遮断し、断熱素子の形態を維持する役割を果たす。第2カバー層は、例えば、アルミニウムおよび雲母(MICA)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0052】
次に、前記第3カバー層30の平均厚さは、0.1mm~1.5mmの範囲、より具体的には0.2mm~1.0mmの範囲であってもよい。第3カバー層の平均厚さが1.5mmを超える場合、機能性充填材の充填空間が減少して2.0mm以下といった平均厚さが薄い断熱素子を実現しにくい問題点がある。また、断熱素子の全体密度が増加して、バッテリパックの重量を加重させる。
【0053】
また、第3カバー層の平均厚さが0.1mm未満の場合、断熱部に充填される粉末形態の機能性充填材が均等に維持されにくい。
【0054】
前記第3カバー層は、基本的に断熱性能を備えている素材から構成される。したがって、第3カバー層は、断熱素子の断熱性能とともに、その形態を維持する役割と機能性充填材が均一に分布した状態を維持できる内部構造を形成する役割を果たす。
【0055】
第3カバー層は、例えば、ガラス繊維、シリカウール、ミネラルウール、セラミックウール、そして製織繊維および不織布繊維のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0056】
このように、前記第3カバー層は、内部空隙を有する素材から構成されることから、本実施例において、断熱部に充填される機能性充填材は、前記第3カバー層の空隙内に位置できる。
【0057】
また、前記第3カバー層は、30g/m2~200g/m2の範囲の密度、より具体的には50g/m2~130g/m2の範囲の密度を有する素材から構成される。第3カバー層の密度が200g/m2を超える場合、断熱素子の全体密度が高くなり、熱伝導が上昇して断熱効果が低下しうる。さらに、バッテリパックの重量を加重させることがある。
【0058】
また、第3カバー層の密度が30g/m2未満の場合、断熱素子の形態を維持するのに十分でなく、機能性充填材が均一に維持する役割を果たしにくい。
【0059】
本実施例において、前記断熱素子の平均厚さは、4mm以下、より具体的には1.0mm~3.5mmまたは1.5mm~2.0mmの範囲であってもよい。断熱素子の平均厚さが1.0mm未満の場合、断熱素子としての機能を果たしにくい。また、断熱素子の平均厚さが4mmを超える場合、バッテリパックにおいて断熱素子の占める空間が多くなってバッテリパックのエネルギー密度を低下させる問題がある。
【0060】
一方、前記断熱素子1000は、前記第1カバー層10、前記第2カバー層20および前記第3カバー層30を含む外装材100を2以上含み、前記2以上の外装材は、前記第2カバー層20の周縁に位置する密封部40を介して付着できる。
【0061】
前記密封部40は、例えば、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ポリフタレート接着剤、PPA接着剤(acid modified polypropylene)、およびPEA接着剤(acid modified polyethylene)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0062】
次に、前記第1カバー層10における第1ホール11の平均直径は、15μm以下、より具体的には1μm~10μmまたは5μm~10μmの範囲であってもよい。第1ホールの平均直径が15μm以下の場合、粉末形態の機能性充填材が外部に流出することを遮断し、通気性を確保することができる。具体的には、第1ホールは、熱が移動可能な通路の役割を果たすため、断熱素子の断熱効果をより向上させることができる。
【0063】
一方、第1ホールの平均直径が1μm未満の場合、外部衝撃で第1ホールが詰まりやすくなり、通気性を確保しにくい問題点がある。
【0064】
前記第1カバー層10は、第1ホール11を複数個含む。
【0065】
また、前記第1ホール間の間隔は、0.5cm以下、より具体的には0.3cm~0.5cmまたは0.35cm~0.4cmの範囲であってもよい。第1ホール間の間隔が前記範囲を満足する場合、通気が円滑になり、断熱素子が外部衝撃に対して圧縮または原状復帰することが容易で断熱部の形態を維持するのに有利である。
【0066】
前記第2ホールの平均直径は、15μm以下、より具体的には1μm~10μmまたは5μm~10μmの範囲であってもよい。第2ホールの平均直径が15μm以下の場合、粉末形態の機能性充填材が外部に流出することを遮断し、通気性を確保することができる。具体的には、第2ホールは、熱が移動可能な通路の役割を果たすため、断熱素子の断熱効果をより向上させることができる。
【0067】
一方、第2ホールの平均直径が1μm未満の場合、外部衝撃で第1ホールが詰まりやすくなり、通気性を確保しにくい問題点がある。
【0068】
前記第2カバー層20は、第2ホール21を複数個含む。
【0069】
また、前記第2ホール間の間隔は、0.5cm以下、より具体的には0.3cm~0.5cmまたは0.35cm~0.4cmの範囲であってもよい。第2ホール間の間隔が前記範囲を満足する場合、通気が円滑になり、断熱素子が外部衝撃に対して圧縮または原状復帰することが容易で断熱部の形態を維持するのに有利である。
【0070】
本実施例において、前記第1ホールおよび前記第2ホールは、一体に形成されたものであってもよい。
【0071】
つまり、第1カバー層および第2カバー層が付着した状態で、1回の工程で通孔した第1および第2ホールを形成することができる。
【0072】
一方、前記機能性充填材60は、例えば、エアロゲル粉末、ヒュームドシリカ、およびガラスバブルのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0073】
機能性充填材60として前記エアロゲル粉末を充填する場合、その含有量は、前記機能性充填材100重量部を基準として、50重量部~100重量部、または80重量部~100重量部の範囲に含まれる。エアロゲル粉末の含有量が前記範囲を満足する場合、断熱性能がより向上した断熱素子を実現することができる。
【0074】
前記機能性充填材の平均粒径は、100μm以下、より具体的には10μm~80μm、または20μm~50μmの範囲であってもよい。機能性充填材の平均粒径が前記範囲を満足する場合、断熱部において機能性充填材が均等に分布可能であり、第1および第2カバー層に形成された第1および第2ホールを介して外部に流出しない。
【0075】
本実施例において、前記断熱部50は、第1添加材をさらに含むことができる。
【0076】
前記第1添加材は、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、水酸化鉄(Fe2O3)、および酸化アルミニウム(Al2O3)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0077】
前記第1添加材の含有量は、前記機能性充填材100重量部に対して、1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部の範囲であってもよい。
【0078】
第1添加材の含有量が前記範囲を満足する場合、高温環境でも断熱素子の熱伝導度が増加することを抑制して断熱性能をより向上させることができる。
【0079】
前記断熱部50は、第2添加材をさらに含むことができる。
【0080】
前記第2添加材は、マグネシウムヒドロキシド(Magnesium hydroxide、MDH)、アルミニウムヒドロキシド(Aluminum hydroxide、ATH)、ホウ酸亜鉛(Zinc Borate)、GREP-EG(graphite)、および三酸化アンチモン(Antimony Trioxide)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0081】
前記第2添加材の含有量は、前記機能性充填材100重量部に対して、1重量部~20重量部、または3重量部~10重量部の範囲であってもよい。第2添加材の含有量が前記範囲を満足する場合、バッテリパックに火災が発生する場合、燃焼過程中に第2添加材が分解されて、水と窒素、アンモニアまたは二酸化炭素のような非可燃性気体を放出させて冷却および酸素希釈作用をするとともに、水を生成させて火災を遅延させることができる。
【0082】
図2には、他の実施例によるバッテリ用断熱素子を概略的に示す断面図を示した。
【0083】
図2を参照すれば、他の実施例による断熱素子2000は、第1カバー層10と、第2カバー層20と、第3カバー層30とを含む外装材100を2以上含み、前記2以上の外装材100は、第2カバー層20および第3カバー層30の間に位置する接着層70を介して付着したものであってもよい。
【0084】
このとき、前記接着層70は、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレンビニルアセテート(EVA)フィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、およびアクリレートフィルムのうちの少なくとも1つを含むことができる。つまり、本実施例の断熱素子2000は、前記接着層70を介在して、熱融着などの方法を利用して密閉できる。
【0085】
前記接着層70は、第3ホール71を含み、前記第3ホール71は、前記第1ホール11および第2ホール21と一体に形成されたものであってもよい。
【0086】
本実施例において、前記接着層70を除いた他の構成は、一実施例によるバッテリ用断熱素子において
図1を参照して説明したものと同一である。
【0087】
本実施例によるバッテリ用断熱素子において前述した構成以外の残りの構成は、
図1を参照して説明した一実施例のバッテリ用断熱素子において説明したものと同一である。したがって、
図2には同一の図面符号を用い、ここでは詳しい説明を省略する。
【0088】
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【実施例】
【0089】
実施例1
第1カバー層として厚さ25μmのナイロンフィルム、第2カバー層として厚さ40μmのアルミニウム層、第3カバー層として120g/m2の密度および0.4mmの厚さを有するガラス繊維マット(glass fiber chopped mat)を用意した。
第1および第2カバー層を付着させた後、3.5mmの間隔で平均直径が10μmである第1ホールおよび第2ホールを第1および第2カバー層に形成した。
次に、第2カバー層において第1カバー層の付着した反対面に第3カバー層を位置させた外装材を2つを用意した後、第2カバー層の周縁に密封部を形成して2つの外装材を密封した。
次に、密封された外装材内部の断熱部にエアロゲル粉末の密度が0.114g/cm3となるように充填して、平均厚さが2mmの断熱素子を製造した。このとき、前記エアロゲル粉末の平均粒径は20μmであった。
【0090】
実施例2
断熱部にエアロゲル粉末の密度が0.141g/cm3となるように充填したことを除けば、実施例1と同様の方法で断熱素子を製造した。
【0091】
参考例1
断熱部にエアロゲル粉末の密度が0.057g/cm3となるように充填したことを除けば、実施例1と同様の方法で断熱素子を製造した。
【0092】
参考例2
断熱部にエアロゲル粉末の密度が0.171g/cm3となるように充填したことを除けば、実施例1と同様の方法で断熱素子を製造した。
【0093】
比較例1
厚さが2mmの雲母(MICA)シートを用意した。
【0094】
比較例2
厚さが8mmのガラスマット(E-glass mat)を用意した後、厚さが2mmとなるように圧着した。
【0095】
実験例1
実施例1~2、参考例1~2および比較例1~2により製造された断熱素子に対して、断熱性能を測定した。
具体的には、Dulytek(US)社のホットプレス(DHP7 V4 HYDRAULIC HEAT PRESS)装置とYOKOGAWA(JP)社のテンプレコーダー(FX1000)を用いた。
前記装置は上部ホットプレートおよび下部ホットプレートを含み、上部ホットプレートは200℃に昇温させて維持し、下部ホットプレートは25℃となるようにセッティングした。
次に、前記上部プレートおよび下部プレートの間に、実施例1~2、参考例1~2および比較例1~2による断熱素子を位置させた後、一定時間が経過した後、下部ホットプレートに位置した断熱素子の温度を測定した。結果は
図3~
図8に示した。
【0096】
図3および
図4を参照すれば、実施例1および2による断熱素子は、10分後にも下部ホットプレートに位置した断熱素子の温度がそれぞれ48.9℃および47.4℃と50℃未満であることを確認することができる。
【0097】
図5および
図6を参照すれば、参考例1および2による断熱素子は、10分後、下部ホットプレートに位置した断熱素子の温度がそれぞれ58.1℃および54.7℃であった。
【0098】
図7および
図8を参照すれば、比較例1および2によるシートは、10分後、下部ホットプレートに位置した断熱素子の温度がそれぞれ66.3℃および66.9℃であった。
【0099】
つまり、断熱部にエアロゲル粉末を充填した実施例1~2および参考例1~2による断熱素子は、比較例1および2に比べて断熱性能が最低13%以上上昇することを確認することができる。
【0100】
特に、エアロゲル粉末の充填密度が0.05g/cm3~0.15g/cm3の範囲を満足する実施例1~2の場合は、エアロゲル粉末が充填されない比較例1および2と比較する時、最低27%以上断熱性能が向上したことを確認することができる。
【0101】
また、実施例1~2の場合、エアロゲル粉末の充填密度が本実施例の範囲を外れる参考例1および2の場合と比較しても、少なくとも20%以上断熱性能が向上したことが分かる。
【0102】
本発明は実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0103】
1000、2000:バッテリ用断熱素子
10:第1カバー層
20:第2カバー層
30:第3カバー層
40:密封部
50:断熱部
60:機能性充填材
100:外装材