(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】抗TNFR2抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231106BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231106BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231106BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231106BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231106BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231106BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231106BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231106BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231106BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20231106BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231106BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
G01N33/531 A
G01N33/53 D
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021578006
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2020106057
(87)【国際公開番号】W WO2021023098
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】201910713742.1
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517405493
【氏名又は名称】チャンスー シムサー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】521568775
【氏名又は名称】シムサー バイオ-ファーマシューティカル テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、シンイェン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、シアオフォン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、シーチアン
(72)【発明者】
【氏名】パン、ラン
(72)【発明者】
【氏名】リー、シンシン
(72)【発明者】
【氏名】レン、チンション
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/083525(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/197331(WO,A2)
【文献】国際公開第2020/102739(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/187068(WO,A1)
【文献】特表2018-503401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/00
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDR1-VHと、CDR2-VHと、CDR3-VHとの重鎖CDR組み合わせであって、IMGT解析によれば、CDR1-VHは配列番号74の配列を含み、CDR2-VHは配列番号75の配列を含み、CDR3-VHは配列番号76の配列を含む重鎖CDR組み合わせ、及び
CDR1-VLと、CDR2-VLと、CDR3-VLとの軽鎖CDR組み合わせであって、IMGT解析によれば、CDR1-VLは配列番号80の配列を含み、CDR2-VLは配列番号81の配列を含み、CDR3-VLは配列番号82の配列を含む軽鎖CDR組み合わせ、
を含むか、あるいは
CDR1-VHと、CDR2-VHと、CDR3-VHとの重鎖CDR組み合わせであって、KABAT解析によれば、CDR1-VHは配列番号71の配列を含み、CDR2-VHは配列番号72の配列を含み、CDR3-VHは配列番号73の配列を含む重鎖CDR組み合わせ、及び
CDR1-VLと、CDR2-VLと、CDR3-VLとの軽鎖CDR組み合わせであって、KABAT解析によれば、CDR1-VLは配列番号77の配列を含み、CDR2-VLは配列番号78の配列を含み、CDR3-VLは配列番号79の配列を含む軽鎖CDR組み合わせ、
を含む、TNFR2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ、配列番号9及び配列番号10に示された配列を有する、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
ヒトTNFR2に結合する解離定数(KD)が5nM以下であり、カニクイザルTNFR2に結合する解離定数(KD)が5nM以下である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントはキメラ抗体
又はヒト化抗
体である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、およびIgDからなる群から選択される定常領域を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗原結合フラグメントは、F(ab)
2、Fab’、Fab、Fv、scFv、及び二重特異抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項9】
原核細胞又は真核細胞である、請求項8に記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項10】
前記細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、酵母細胞、昆虫細胞、大腸菌の細胞、及び枯草菌の細胞から選択される、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項7に記載のポリヌクレオチド、請求項8に記載の発現ベクター、又は請求項9に記載の細胞、及び、薬学上許容されるベクターを含む医薬組成物。
【請求項12】
追加の抗腫瘍剤をさらに含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗腫瘍剤は、化学療法剤、標的治療剤、又は免疫治療剤である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記免疫治療剤は抗PD-1/PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項7に記載のポリヌクレオチド、請求項8に記載の発現ベクター、又は請求項9に記載の細胞、及び使用説明書を含むキット。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項7に記載のポリヌクレオチド、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9に記載の細胞、又は請求項11に記載の医薬組成物を含む、免疫異常関連疾患を治療するための医薬であって、
前記免疫異常関連疾患は腫瘍である、前記医薬。
【請求項17】
可溶性TNFR2を検出するための方法であって、
可溶性TNFR2(sTNFR2)を含む疑いがある試料を、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年8月2日に中国特許庁に出願された中国特許出願201910713742.1に基づく優先権を主張し、その全内容をここに援用する。
【0002】
本発明は、抗TNFR2抗体またはその抗原結合フラグメント、該TNFR2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫は、多くの遺伝子、たんぱく質、及び細胞の作用を受けている体の保護反応である。免疫異常は、腫瘍、免疫不全(エイズなど)、アレルギー、関節リウマチなど、多くの病気を引き起こす可能性がある。過去数年間で、腫瘍免疫療法は全く新しい治療方式として、腫瘍治療研究分野の大きなホットスポットになった。抗PD-1や抗CTLA-4マブなどの免疫チェックポイントタンパク質を標的とする拮抗抗体は、様々な種類のがんの治療に使用されており、悪性腫瘍患者の生存期間を大幅に延長する画期的な結果を得た。しかし、多くのがん患者は免疫チェックポイントタンパク質の拮抗性抗体の治療に反応しないか、短期治療の後に抵抗性または薬剤耐性が生じる。そのため、免疫チェックポイントタンパク質を含む拮抗性抗体を単独または他の腫瘍治療法と組み合わせて使用することにより、治療効果と安全性をさらに向上させることができる、がんを治療する新しい薬剤を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、ヒトTNFR2がヒトTregおよび様々なヒト腫瘍細胞表面で過剰に発現し、ヒトTNFR2が患者の腫瘍形成を促進し、腫瘍微小環境の免疫抑制および免疫回避を媒介する可能性があること提示することを見出した。
【0005】
TNFR2を介してTreg細胞の機能を制御することにより、腫瘍の発生を抑制することは、非常に潜在力のある抗腫瘍策略であるかもしれない。本発明者らは以下の機能があるTNFR2に対するアンタゴニスト抗体を製造した。1)TNFR2に特異的に結合し、TNFR2とそのリガンドであるTNFαとの結合を阻害することにより、Treg細胞の増殖およびそれが介した阻害機能を阻害し、T細胞の増幅、およびT細胞と他の免疫細胞が介した抗腫瘍機能を促進することができる。また、2)TNFR2はヒトの腫瘍細胞株に高度に発現しているため、この抗体はTNFR2の発現が高い腫瘍細胞に対する殺傷作用を直接媒介することもできる。
【0006】
発明者はまた、マウスのインビボ関連実験により、TNFR2標的の潜在的な機能をさらに検証した。マウスの結腸直腸癌のCT26モデルの結果から示しているように、TNFR2拮抗抗体は、PD-1抗体またはPD-L1マブと比較して、PD-1抗体耐性腫瘍の増殖を有意に抑制し、腫瘍サイズを縮小し、CD8+T/Tregの比を効果的に向上させ、CD8+T細胞の免疫枯渇状態を部分的に逆転えきる。そのため、TNFR2は腫瘍免疫治療の全く新しい標的になる可能性があり、TNFR2拮抗性抗体が腫瘍の微小環境の変化を助けることは期待され、単独及び/又は既存の免疫チェックポイント拮抗性抗体と併用することができ、広範な応用前景がある。本発明者らは、この目的のために様々なTNFR2抗体を作製し、それに基づいて本発明を完成した。
【0007】
第1の態様において、本発明は、TNFR2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、免疫細胞の機能を調節することができ、腫瘍などの免疫異常に関連する疾患の治療薬として有用である抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0008】
1つの実施形態において、前記調節は、Treg細胞および/または骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の増殖および/または活性化への抑制を含む。別の実施形態では、調節は、TNFαとTNFR2との結合をブロックすることによって達成される。
【0009】
特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下(1)及び(2)を含む。
(1)CDR1-VH、CDR2-VH及びCDR3-VHの重鎖CDRの組み合わせ、
CDR1-VH、CDR2-VH、およびCDR3-VHは、以下の配列の組み合わせから選択されるか、または配列の組み合わせと比較して1、2、3またはそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失、および/または置換を有する配列の組み合わせを有する。
【0010】
【0011】
(2)CDR1-VL、CDR2-VL及びCDR3-VLの軽鎖CDRの組み合わせ、
CDR1-VL、CDR2-VL、およびCDR3-VLは、以下のいずれかの配列の組み合わせから選択される、または前記配列の組み合わせと比較して1、2、3又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失、および/または置換を有する配列の組み合わせを有する。
【0012】
【0013】
特に、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、VH1+VL1、VH2+VL2、VH3+VL3、VH4+VL4、VH5+VL5、VH6+VL6、VH7+VL7、VH8+VL8、VH9+VL9、VH10+VL10、VH11+VL11、VH12+VL12、VH13+VL13、VH14+VL14、VH15+VL15、VH16+VL16、VH17+VL17、VH18+VL18、VH19+VH19、VH20+VL20、VH21+VL21およびVH22+VL22、および前記重鎖CDRおよび軽鎖CDRと比較して1、2又は3以上のアミノ酸の挿入、欠失、および/または置換を有するものからなる群から選択される重鎖CDRおよび軽鎖CDRの組み合わせを含む。
【0014】
別の具体的な実施形態において、本発明は、そのような抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
1)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し、
2)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号3及び配列番号4に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し、
3)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号5及び配列番号6に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し、
4)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号7及び配列番号8に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し、
5)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号9及び配列番号10に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し、
6)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号11及び配列番号12に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し
7)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号13及び配列番号14に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し、
8)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号15及び配列番号16に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し、
9)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号17及び配列番号18に示された配列、又は示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を有し、
10)重鎖可変領域および軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号19および配列番号20に示された配列、または示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する配列を有し、または
11)重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号21および配列番号22に示された配列、または示された配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する配列を有する。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトTNFR2に結合する解離定数(KD)が5nM以下であり、カニクイザルTNFR2に結合する解離定数(KD)が5nM以下である。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、キメラ抗体またはヒト化された抗体、または完全ヒト化された抗体である。
【0017】
好ましい実施形態おいて、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、およびIgDからなる群から選択される定常領域を含み、抗体または抗原結合フラグメントは、
1)細胞表面にTNFR2を発現している細胞へ、特異的に結合する、
2)Treg細胞に特異的に結合する、
3)TNFαとTNFR2タンパク質の結合を抑制する、
4)TNFαと細胞表面に発現されるTNFR2との結合を抑制する、
5)TNFαを介したTregの増殖および/またはTreg機能を抑制する、
6)TNFR2発現細胞に対するADCC機能を媒介する、又は/及び
【0018】
7)腫瘍の増殖を抑制する。
別の好ましい実施形態において、本発明の抗原結合フラグメントは、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、二重特異抗体、ナノ抗体、および抗体最小認識単位からなる群から選択される。
【0019】
別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、番号001、088、125、133、219、224、226、309、352、365および395からなる群から選択される抗体とTNFR2に競合的に結合することができる。
【0020】
第2の態様において、本発明は、上記第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、またはそれらの任意の組み合わせをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0021】
第3の態様において、本発明は、上記第2の態様に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0022】
第4の態様において、本発明は、上記第3の態様に記載の発現ベクターを含む細胞を提供する。細胞は、例えば、原核細胞または真核細胞であり、チャイニーズハムスター卵巣細胞、酵母細胞、昆虫細胞、大腸菌および枯草菌を含む。
【0023】
第5の態様において、本発明は、上記第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、第2の態様に記載のポリヌクレオチド、第3の態様に記載の発現ベクター、または第4の態様に記載の細胞、および薬学的に受容可能なベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0024】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物はさらに追加の抗腫瘍剤を含む。例えば、前記追加の抗腫瘍剤は、抗PD-1/PD-L1治療剤(抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体を含む)、および抗CTLA-4治療剤(抗CTLA-4抗体を含む)といった化学療法剤、標的治療剤、および免疫治療剤から選択される。
【0025】
第6の態様において、本発明は、上記第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、第2の態様に記載のポリヌクレオチド、第4の態様に記載の発現ベクター、または第4の態様に記載の細胞、および使用説明書を含むキットを提供する。
【0026】
第7の様態において、本発明は、上記の第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、第2の態様に記載のポリヌクレオチド、第3の態様に記載の発現ベクター、第4の態様に記載の細胞、または第5の態様に記載の医薬組成物を、必要性を有する対象に投与することを含む免疫異常関連疾患の治療および/または予防方法を提供する。前記免疫異常関連疾患は、例えばsTNFR2異常を特徴とし、Treg細胞および/またはMDSC機能に関連する疾患、具体的には腫瘍などである免疫異常疾患である。
【0027】
一実施形態では、本発明の方法は、化学治療、放射線療法、標的治療化療、および免疫療法、例えば抗PD-1/PD-L1治療、例えば抗PD-1/PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体などの抗CTLA-4治療剤を含む治療剤で行われる追加の抗腫瘍治療を対象に投与することをさらに含む。
【0028】
1つの実施形態において、関連する疾患は腫瘍であり、好ましくは:
1)卵巣がん、進行性表皮T細胞リンパ腫、第III/IV期転移性結腸直腸がん、トリプルネガティブ乳がんおよび/または膵臓がん、または、
2)CTLA-4およびPD-1療法に耐性の転移性黒色腫または他の可能性のある進行固形腫。
【0029】
第8の態様において、本発明は、第7の態様に記載の予防および/または治療方法において使用される、上記第7の態様に記載の方法に対応する医薬品を提供する。さらに、上記第1~第5の態様の製品を用いて製造された、上記第7の態様の予防および/または治療方法に使用される、上記第7の態様の方法に対応する医薬またはキットの調製のための使用を提供する。
【0030】
第9の態様において、本発明は、sTNFR2を含有可能な試料を、第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させることを含む、sTNFR2の検出方法を提供する。本発明の検出方法は、sTNFR2異常を特徴する免疫異常疾患の診断に有用であり、例えば、サンプル由来の被験者が免疫異常関連疾患(例えば、Treg細胞および/またはMDSC機能関連疾患)に罹患しているか、または発症の危険性があるかの診断に有用である。従って、本発明は、sTNFR2を検出するための試薬を用いて、サンプル由来の被検体が免疫異常関連疾患(例えば、TNFR2発現異常に関連する免疫異常疾患)に罹患しているか否か、または発症の危険性を診断するための診断キットを製造するための使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下では、本発明の詳細な説明および添付の図面を介して、本発明の前に述べた態様および他の態様を明確に説明する。本願の添付図面は、本発明のいくつかの好ましい実施形態を例示するためのものであるが、本発明は開示された特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0032】
【
図1】
図1は13株のヒト腫瘍細胞株のTNFR2発現状況を示し、陽性割合は同亜型蛍光対照の陰性抗体のフローサイトフルオレオソート(FACS)染色後の検出値から決定し、図中に示したパーセンテージはTNFR2の発現パーセンテージである。
【
図2】
図2は、ヒト末梢単核血細胞(PBMC)のTreg、CD8
+T細胞、CD4
+CD25-Tcon細胞におけるTNFR2の発現を示したものである。
図2AはTreg細胞、CD8
+T細胞とTcon細胞のフロー細胞染色とループゲート策略及び細胞上のTNFR2の発現割合のフロー散布図である。
図2Bは活性化Treg(CD4
+CD25
hiFoxP3
hi Treg),非活性化Treg(CD4
+CD25
hiFoxP3
+Treg),Tcon(CD4
+CD25-T細胞)およびCD8
+T細胞におけるTNFR2発現の割合および平均蛍光強度(MFI)値である。
【
図3】
図3は、被測抗体とヒトTNFR2を高発現するCHO細胞(CHO-TNFR2)との結合能を示したものである。
図3A CHO-TNFR2細胞表面におけるヒトTNFR2の発現検証である。
図3Bは11例の被験者の細胞表面標的結合能力の検証である。その中のanti-human IgG1 Fc-PE only、および抗卵白リゾチーム(anti-Hel)ホモタイプ対照抗体(卵白リゾチームは細胞内抗原であり、ヒト体内に存在しないため、良好な無関係対照抗体であり、百英生物(Biotron)からアウトソーシング生産された)はいずれもこの実験の陰性対照であり、Unstainedはいかなる抗体も加えていない空白細胞対照である。
【
図4】
図4に被測抗体とTreg細胞の結合能を示す。
図4Aに示す実験に用いたFoxp3
+Treg細胞の純度は91.4%,TNFR2の発現割合は99.5%であった(中空ピークはTNFR2抗体のanti-Helホモタイプ対照抗体、ソリッドピークはanti-TNFR2 PE抗体)。
図4Bは11個の抗体それぞれのTreg細胞への結合能(ソリッドピーク)を示しており、human IgG1 Fc-PE onlyとUnstained(抗体を加えていないブランク細胞対照)はいずれも陰性対照であり、抗体濃度は200ng/mlであった。
【
図5-1】
図5は、被測抗体がヒトTNFαとCHO-TNFR2細胞上のヒトTNFR2との相互作用を抑制することを示している。002#Abはツール抗体(tool antibody)であり、この実験では陽性対照抗体である。anti-Hel isotype controlは陰性同型対照抗体である。細胞コントロールはCHO-K1(ヒトTNFR2を発現しないCHO-TNFR2を構築するための芽細胞)である。
【
図5-2】
図5は、被測抗体がヒトTNFαとCHO-TNFR2細胞上のヒトTNFR2との相互作用を抑制することを示している。002#Abはツール抗体(tool antibody)であり、この実験では陽性対照抗体である。anti-Hel isotype controlは陰性同型対照抗体である。細胞コントロールはCHO-K1(ヒトTNFR2を発現しないCHO-TNFR2を構築するための芽細胞)である。
【
図6】
図6は、TregのTcon細胞増殖抑制活性に対する被測抗体の抑制作用を示したものである。縦軸は異なる抗体、横軸は(抗体ごとのエフェクター細胞の増殖割合-コントロール抗体ごとのエフェクター細胞の増殖割合)/コントロール抗体ごとのエフェクター細胞の増殖割合*100%、コントロール抗体はanti-Hel、各抗体の実験濃度は12.5ug/ml、エフェクター細胞はCD4
+CD25
-Tcon細胞を使用した。
【
図7】
図7は、Treg機能抑制活性実験の細胞上清sTNFR2発現に対する被測抗体の影響を示したものである。縦軸は異なる抗体、横軸は(各抗体に対応する細胞上清中sTNFR2の発現量-コントロール抗体の細胞上清中sTNFR2の発現量)/コントロール抗体の細胞上清中sTNFR2の発現量*100%、コントロール抗体はanti-Hel、各抗体の実験濃度は12.5ug/mlである。
【
図8】
図8は試験抗体によるTNFα誘導Treg細胞増殖の抑制を示す。
図8AはTreg細胞のサイトカイン無添加、IL-2単独添加、またはIL-2とTNFαを添加して培養3日後の増殖を示したものである。
図8Bは異なる抗体によるTNFα誘導Treg増殖に対する抑制作用である。縦軸は異なる抗体,横軸は(抗体ごとのTNFα誘導Treg増殖抑制能-対照抗体のTNFα誘導Treg増殖抑制能)/対照抗体のTNFα誘導Treg増殖抑制能*100%、対照抗体はanti-Hel、抗体ごとの実験濃度は12.5ug/mlであった。
【
図9】
図9は、ELISA検出対象抗体によるIL-2およびTNF-α抗CD4
+T細胞分泌sTNFR2の抑制作用を示す。統計的分析方法:Graphpad prism6、One-way ANOVA、**P<0.01、***P<0.001。
【
図10-1】
図10はTregに対する被測抗体のADCC(antibody-dependent cellular cytotoxicity)殺傷作用を示す。
図10Aは標的細胞すなわちTreg上のTNFR2の発現状況である。
図10Bはヒト末梢血細胞PBMCから分離して濃縮したエフェクター細胞NK細胞の純度の検証である。
図10Cは被測抗体ADCC作用の強弱であり、#52サンプルはTNFR2標的に対してスクリーニングされたADCC陽性対照抗体であり、anti-Hel isotype controltはホモ抗体陰性対照である。
【
図10-2】
図10はTregに対する被測抗体のADCC(antibody-dependent cellular cytotoxicity)殺傷作用を示す。
図10Aは標的細胞すなわちTreg上のTNFR2の発現状況である。
図10Bはヒト末梢血細胞PBMCから分離して濃縮したエフェクター細胞NK細胞の純度の検証である。
図10Cは被測抗体ADCC作用の強弱であり、#52サンプルはTNFR2標的に対してスクリーニングされたADCC陽性対照抗体であり、anti-Hel isotype
【
図11】
図11は、ヒトTNFR2を高発現するCHO-TNFR2細胞に対する被測抗体のADCC殺傷作用を示す。ここで、#219、#224、#001は被測抗体であり、anti-Hel isotype controlは陰性対照抗体である。
【
図12】
図12は、PD-1抗体耐性CT26腫瘍細胞のインビボ薬効試験における各投与群の腫瘍体積mm
3の変化曲線(12A)と腫瘍成長抑制率(tumor growth inhibition%,TGI%)の変化曲線(12B)およびマウス体重の変化曲線(12C)を示す。
【
図13-1】
図13は、マウス体内CT 26腫瘍細胞体内薬効実験のマウス体内腫瘍組織内浸潤リンパ球(tumor infiltrated lymphocyte,TIL)中の各免疫細胞亜群の分析を示す。13Aと13BはFACS免疫タイピング中のpanel 1とpanel 2のラップゲートストラテジーである。13CはFACS免疫タイピングによるCD4+T、CD8+T及びTreg細胞の割合に対する研究を示す。
図13DはFACS免疫タイピングがその中の総(total)CD8
+T細胞数とTreg細胞数の比に対する研究を示す。
図13EはFACS免疫タイピングによる記憶(memory)CD8
+T細胞数とTreg細胞数の比の研究を示す。
図13FはFACS免疫タイピングがその中のCD8
+T発現のPD-1、LAG-3とTNFR2の高低に対する研究を示した。
【
図13-2】
図13は、マウス体内CT 26腫瘍細胞体内薬効実験のマウス体内腫瘍組織内浸潤リンパ球(tumor infiltrated lymphocyte,TIL)中の各免疫細胞亜群の分析を示す。13Aと13BはFACS免疫タイピング中のpanel 1とpanel 2のラップゲートストラテジーである。13CはFACS免疫タイピングによるCD4+T、CD8+T及びTreg細胞の割合に対する研究を示す。
図13DはFACS免疫タイピングがその中の総(total)CD8
+T細胞数とTreg細胞数の比に対する研究を示す。
図13EはFACS免疫タイピングによる記憶(memory)CD8
+T細胞数とTreg細胞数の比の研究を示す。
図13FはFACS免疫タイピングがその中のCD8
+T発現のPD-1、LAG-3とTNFR2の高低に対する研究を示した。
【
図14】
図14は、CT26腫瘍細胞マウスのインビボ薬効実験における抗TNFR2抗体または抗PD-1抗体単独または2抗体併用による4つの実験群の腫瘍体積mm
3の変化曲線(14A)と腫瘍成長抑制率(TGI%)の変化(14B)、およびマウスの生存曲線(14C)を比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
具体的な実施形態
【0034】
特に明記されていない限り、本願で使用される用語は、当業者によって通常理解される意味を有する。本願において明示的に定義されている用語については、用語の意味は、記載されている定義に基づいている。
【0035】
本願に記載されている通り、「抗体」(Ab)という用語は、標的抗原に特異的に結合するか、または免疫反応性を有する免疫グロブリン分子を意味し、抗体のポリクローナル、モノクローナル、遺伝子操作および他の修飾形態(キメラ抗体、ヒト化抗体、全ヒト抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性、三特異性および四特異性抗体、二重抗体、三抗体および四抗体)、抗体結合体を含むがこれらに限定されない)、ならびに抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgGおよびscFv断片を含む)を含む。さらに、特に明記されていない限り、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、標的タンパク質に特異的に結合することができる完全な抗体分子と、不完全な抗体フラグメントとを含むことを意味し、不完全な抗体フラグメントは例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメントのように、完全な抗体のFcフラグメントを欠如している(動物循環からより迅速に除去される)ため、Fc媒介エフェクター機能(effector function)を欠如している(Wahlら、J.Nucl.Med.24:31 6,198 3参照。その内容は本願に引用される)。
【0036】
本願で使用されるように、「抗原結合フラグメント」という用語は、標的抗原に特異的に結合する能力を保持する1つまたは複数のフラグメント抗体フラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって実行することができる。 フラグメントは、Fab、F(ab’)2、scFv、SMIP、二重抗体、三抗体、アフィニティー(affibody)、ナノ抗体、アプタマー、またはドメイン抗体である。抗体の「抗原結合フラグメント」という用語をカバーする結合フラグメントの例には以下のいずれかが含まれるが、それらに制限されていない。
(i)Fabフラグメント、VL、VH、CLおよびCHドメインからなる1価のフラグメント、
(ii)F(ab)2フラグメントであって、ヒンジ領域においてジスルフィド結合により結合された二個のFabフラグメントを含む二価のフラグメント、
(iii)VHドメイン及びCHドメインからなるFabフラグメント、
(iv)抗体の片方のアームのVLドメインとVHドメインで構成されるFvフラグメント、
(V)VH及びVLドメインを含むdAb、
(vi)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward等、Nature 341:544-546、1989)、
(vii)VH又はVLドメインからなるdAb、
(viii)分離相補決定領域(CDR)、
(ix)任意に合成リンカーで結合することができる2つ以上の分離されたCDRの組み合わせ。
【0037】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは、独立した遺伝子によってコードされているが、この2つのドメインは、組換え法を用いて、VLおよびVH領域が1価の分子の単一タンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)と呼ばれる。例えば、Birdら、Science242:423-426,1988およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883,1988を参照)を形成するようにアダプターを介して結合することができる。これらのフラグメント抗体フラグメントは、当業者に知られている従来技術を用いて入手することができ、完全抗体と同様に使用するためにスクリーニングされる。抗原結合フラグメントは、組換えDNA技術、完全免疫グロブリンの酵素的または化学的切断、またはいくつかの実施形態において当技術分野で知られている化学的ペプチド合成手順によって生成されてもよい。
【0038】
本願で使用するように、「TNFR2」という用語は腫瘍壊死因子受容体2を指し、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B(TNFRSF1B)またはCD120bとも呼ばれ、これは腫瘍壊死因子-α(TNFα)に結合する膜受容体である。TNFR2は、ヒトTNFR2であることが好ましい。
【0039】
本願で使用したように、用語「抗-腫瘍壊死因子受容体2抗体」、「腫瘍壊死因子受容体2抗体」、「抗TNFR2抗体」、「TNFR2抗体」、「抗TNFR2抗体」および/または「抗TNFR2抗体部分」TNFR2フラグメント抗体フラグメント」等とは、TNFR2に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子の少なくとも一部(例えば、重鎖または軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)またはそのリガンド結合部分、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク領域またはその任意の部分)を含むタンパク質またはペプチドを含む分子を指す。TNFR2抗体はまた、抗体CDRと構造および溶媒アクセス性が類似したBC、DEおよびFG構造ループを含む抗体様タンパク質足場(例えば、第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3))を含み、10Fn3ドメインの三次構造はIgG重鎖可変領域の三次構造に類似しており、10Fn3のBC、DEおよびFGループの残基がTNFR2モノクローナル抗体のCDR-H1、CDR-H2またはCDR-H3領域からの残基で置換されており、当業者は、例えばTNFR2モノクローナル抗体のCDRをフィブロネクチン足場にグラフトすることができる。
【0040】
本願で使用されるように、「二重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる抗原に対してモノクローナル結合特異性を有する抗体を意味し、通常はヒトまたはヒト化された抗体である。本発明では、結合特異性の1つは、TNFR2の抗原エピトープに対して検出することができ、もう1つは、TNFR2の別の抗原エピトープまたは任意の他の抗原、例えば、細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異性抗原、ウイルス由来タンパク質、ウイルスがコードするエンベロープタンパク質、細菌由来タンパク質または細菌表面タンパク質などに対して検出することができる。
【0041】
本願で使用されるように、「キメラ」抗体という用語は、ある由来生物(例えば、ラットまたはマウス)由来の免疫グロブリンの可変配列と、異なる生物(例えば、ヒト)由来の免疫グロブリンの定常領域とを有する抗体を意味する。本発明のキメラ抗体の製造方法は、本発明の技術分野において公知である。例えば、Morrison,1985,Science 229(4719):1202-7;Oiら,1986,Bio Techniques 4:21 4-221;Gilliesら,1985 J Immunol Methods 125:191-202、以上の内容を引用して本願に組み込む。
【0042】
本願で使用されるように、「相補性決定領域」(CDR)という用語は、軽鎖および重鎖の可変領域の両方に見なされる高可変領域を指す。可変ドメインのうちより保守性の高い部分をフレーム領域(FR)と呼ぶ。当技術分野で理解されているように、抗体の高変異領域を表すアミノ酸の位置は、文脈および当技術分野で知られている様々な定義に従って変化することができる。可変領域内のいくつかの位置は、IMGTまたはKABATのような標準下の可変領域内にあると見なされ、KABATまたはIMGTのような異なる標準下の可変領域外にあると見なされるため、ヘテロ接合高可変位置と見なされる。これらの位置のうちの1つまたは複数は、拡張可変領域内にも見出されることができる。本発明は、これらのヘテロ接合の可変位置に修飾抗体を含むことを含む。天然重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、主にシート構造を採用する4つのフレーム領域を含み、これらは3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)によって連結され、これら3つのCDRはシート構造を連結するループを形成し、ある場合にはシート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRはFR領域を介してFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順で緊密に保持され、他の抗体鎖からのCDRと抗体の抗原結合部位の形成を促進する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institute of Health、Bethesda、Md.1987参照。その内容を引用して本願に組み込む)。例えば、本願では、CDR1-VH、CDR2-VH、およびCDR3-VHは、それぞれ、重鎖可変領域(VH)の第1のCDR、第2のCDR、および第3のCDRを指し、これら3つのCDRは、重鎖(またはその可変領域)のCDR組み合わせ(VHCDR組み合わせ)を構成する。CDR1-VL、CDR2-VLおよびCDR3-VLは、それぞれ軽鎖可変領域(VL)の第1のCDR、第2のCDRおよび第3のCDRを指し、これら3つのCDRは軽鎖(またはその可変領域)のCDR組み合わせ(VLCDR組み合わせ)を構成する。
【0043】
本願で使用される「抗体結合体」とは、抗体分子が直接又はリンカーを介して他の分子と化学的に結合して形成されるコンジュゲート/複合体をいう。例えば、抗体-薬物複合体(ADC)を例にとると、薬物分子は上記の他の分子である。
【0044】
本願で使用されるように、「モノクローナル抗体」という用語は、単一のクローン(真核、原核、またはファージクローンを含む)に由来する抗体を意味し、抗体の産生方法に限定されるものではない。
【0045】
本願で使用されるように、「VH」という用語は、抗体の免疫グロブリン重鎖(Fv、scFvまたはFabの重鎖を含む)の可変領域を意味する。用語「VL」は、免疫グロブリン軽鎖(Fv、scFv、dsFvまたはFabの軽鎖を含む)の可変領域を意味する。
【0046】
本願で使用するように、用語「制御性T細胞」或いは「Treg」はかつて抑制T細胞(suppressor T cells)と呼ばれ、生体免疫反応を負に調節するリンパ細胞であり、自己抗原に対する耐性を維持し、免疫反応の過度を制御し、正常細胞に対する免疫損傷を避け、自己免疫病の発生を防止する。Tregは以下のバイオマーカー:CD4、FOXP3とCD25を発現し、幼若型CD47細胞と同一系統由来と考えられている。Tregは腫瘍の発生において非常に重要な役割を果たし、多くの研究により、メラニン癌、卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌などを含む腫瘍微小環境におけるTreg細胞の数が顕著に増加することが示されており、同時にTreg細胞の数と腫瘍患者の生存率も密接に関連している。また、腫瘍細胞は腫瘍浸潤性Treg細胞の増殖を誘導し、増殖したTreg細胞はTGF-βなどの免疫抑制因子を大量に分泌し、CD8+T細胞などの免疫細胞の機能を抑制し、免疫細胞の腫瘍に対する殺傷作用を抑制し、多種の固形腫瘍と血液腫瘍の免疫治療失敗の重要な薬剤耐性機序である。最近の研究により、PD-1/PD-L1などの免疫治療患者の免疫寛容もTregと密接に関連していることが明らかになった。
【0047】
本願で使用するように、用語「髄源性抑制細胞」或いは「MDSC」は免疫応答と腫瘍免疫反応を抑制する作用がある、未熟な好中球、単球と樹状細胞からなる免疫系の異質性細胞群である。MDSCは多種のエフェクター細胞と抗原提示細胞(例えばT細胞、NK細胞、樹状細胞とマクロファージなど)の活性を調節する。骨髄由来サプレッサー細胞は遺伝子発現プロファイルにより区別され、B7-1(CD80)、B7-H1(PD-Ll)、CCR2、CD1d、CD1dl、CD2、CD31(PECAM-I)、CD43、CD44、補体成分C5aRl、F4/80(EMRl)、FcγRIII(CD16)、FcγRII(CD32)、FcγRIIA(CD32a)、FcγRIIB(CD32b)、FcγRIIB/C(CD32b/c)、FcγRIIC(CD32c)、FcγRIIIA(CD16A)、FcγRIIIB(CD16b)、ガレクチン-3、GP130、Gr-1(Ly-6G)、ICAM-1(CD54)、IL-1RI、IL-4Ra、IL-6Ra、インテグリンa4(CD49d)、インテグリンaL(CDlla)、インテグリンaM(CDllb)、M-CSFR、MGL1(CD301a)、MGL1/2(CD301a/b)、MGL2(CD301b)、一酸化窒素、PSGL-1(CD162)、L-セレクチン(CD62L)、シアル酸結合Ig様レクチン-3(CD33)(Sialic acid-binding Ig-like lectin-3(CD33))、トランスフェリン受容体(TfR)、VEGFRl(Flt-I)及びVEGFR2(KDRまたはFlk-1)からなる群より選択されるタンパク質および小分子の全部または一部を発現する。特に、MDSCは、B7-2(CD86)、B7-H4、CD11c、CD14、CD21、CD23(FcεRII)、CD34、CD35、CD40(TNFRSF5)、CD117(c-kit)、HLA-DRおよびSca-I(Ly6)からなる群から選択されるタンパク質を発現しない。
【0048】
本願で使用したように、「パーセンテージ(%)配列一致性」という用語は、配列一致性の最大パーセンテージを達成するために、必要に応じてシーケンスを比較し、空孔を導入する際に(例えば、最適な比較のために、候補配列および参照配列の一方または両方に空孔を導入することができ、比較のために非相同性配列は無視することができる)の後に、候補配列のアミノ酸(またはヌクレオチド)残基では、参照配列のアミノ酸(またはヌクレオチド)残基と同じ残基の割合である。パーセンテージ配列一致性を決定するために、当業者が熟知している複数の方法、例えば、BLAST、ALIGN又はMegalign(DNASTAIi)ソフトウェアのような公衆に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用することで前記比較を実現することができる。当業者は、比較測定のに対して適切なパラメータを決定することができ、適切なパラメータとしては、例えば、比較対象配列の全長範囲にわたって最大の比較を達成するための任意のアルゴリズムが含まれる。一方、候補配列と比較するための比較配列は、候補配列の全長または候補配列の連続するアミノ酸(またはヌクレオチド)残基の選択された部分において、候補配列が50%から100%の配列同一性を示すことを示してもよい。比較のために比較される候補配列の長さは、例えば、参照配列の長さの少なくとも30%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%)であってもよい。候補配列中の位置が参照配列中の対応する位置と同じアミノ酸(またはヌクレオチド)残基によって占められている場合、これらの分子はその位置で同じである。
【0049】
本願で使用されるように、「特異的結合」という用語は、例えば抗体またはその抗原結合フラグメントによって特異的に認識されるタンパク質および他の生体分子の異質な集団における抗原の存在状態を決定する結合反応を意味する。抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、100nM未満のKDで抗原に結合する。例えば、抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、100nM(例えば、1pMから100nMの間)までのKDで抗原に結合する。特定の抗原またはそのエピトープに特異的に結合することを示さない抗体またはその抗原結合フラグメントは、特定の抗原またはそのエピトープに対して100nMより大きい(例えば、500nM、1μM、100μCSS、500μCSSまたは1mMより大きい)KDを示す。いつくかの免疫測定方法を使用することで、特定のタンパク質または炭水化物と特異的な免疫反応を行う抗体を選択することができる。例えば、一般的に、固相ELISAイムノアッセイ法を用いて、タンパク質や炭水化物に対して特異的な免疫反応を行う抗体を選択する。特定の免疫反応性を決定することができる免疫測定方法および条件を記載している、Harlow&Lane,Using Antibodies,A Laboratory Manual,ColdSpringHarbor Press,New York(1988)およびHarlow&Lane,Using Antibodies,A Laboratory Manual,ColdSpringHarbor Press,New York(1999)を参照できる。
【0050】
本願で使用されるように、「ベクター」という用語は、DNAベクター(プラスミドなど)、RNAベクター、ウイルスまたは他の適切なレプリコン(ウイルスベクターなど)などの核酸ベクターを含む。外来タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞または真核細胞に送達するための複数のベクターが開発されてきた。本発明の発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列と、例えばタンパク質の発現および/またはこれらのポリヌクレオチド配列を哺乳動物細胞ゲノムに組み込むための追加の配列要素とを含む。本発明の抗体およびフラグメント抗体フラグメントの発現に使用できる特定のベクターは、遺伝子転写を指示する調節配列(例えば、プロモーターおよびエンハンサー領域)を含むプラスミドを含む。抗体およびフラグメント抗体フラグメントを発現するための他の有用なベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を増強するか、または遺伝子の転写によって産生されるmRNAの安定性または核出力を改善するポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列要素は、例えば、発現ベクター上に担持された遺伝子の効率的な転写を指示するために、5’および3’の非翻訳領域、内部リボソーム進入部位(IRES)、およびポリアデニル化シグナル部位を含む。本発明の発現ベクターは、さらに、このようなベクターを含む細胞を選択するためのマーカーをコードする以下のポリヌクレオチドを含むことができる。適切なマーカーの例は、抗生物質(例えば、アンピニシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノルセリン)に対する耐性をコードする遺伝子を含む。
【0051】
本願で使用されるように、「対象」、「対象」、および「患者」という用語は、本願で説明されるような特定の疾患または状態(例えば、癌または伝染性疾患)の治療を受ける生物を意味する。対象および患者の例には、ヒト、霊長類、ブタ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ネコ、イヌ、モルモット、ウシ科ファミリーメンバー(家牛、バイソン、水牛、ヘラジカ、ヤクなど)、ウシ、ヒツジ、ウマ、バイソンなど、疾患または状態(例えば、がんまたは伝染性疾患などの細胞増殖性状態)の治療を受けている哺乳動物が含まれる。
【0052】
本願で使用するように、用語「治療」は外科手術或いは薬物処理(surgical or therapeutic treatment)を指し、その目的は治療対象中の望ましくない生理変化或いは病変、例えば細胞増殖性病症(例えば癌或いは伝染性疾病)の進展を予防、緩和(減少)することである。有益なまたは望ましい臨床結果には、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患状態の安定(すなわち、悪化していない)、疾患の進行の遅延または遅延、疾患状態の改善または緩和、および検出可能であるか検出不可能であるかを問わず、緩和(部分的であるか完全であるかを問わない)が含まれるが、これらに限定されない。治療を必要とする対象には、既に病気や病気に罹患している対象と、病気や病気に罹患しやすい対象や病気や病気を予防しようとする対象とが含まれる。緩和、軽減、減弱、緩和、緩和などの用語に言及する場合、その意味には除去、消失、発生しないなどの状況も含まれる。
【0053】
以下では、実施形態に関連して本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下の実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものとはみなされないことを当業者は理解するであろう。実施例に具体的な条件が明記されていない場合は、通常の条件又は製造業者が提案した条件に従って実施する。使用する試薬又は機器にメーカーが明記されていない場合は、いずれも市販購入により取得できる通常の製品である。
【0054】
実施例1.TNFR2モノクローナル抗体の調製
6-8週齢の雌SJLマウス(北京維通利華実験動物技術有限公司より購入)又はBalb/cマウス(上海斯莱克実験動物有限公司より購入)に対して、コンプリートフルアジュバント(completefreund‘sadjuvant,CFA,SIGMAより購入,商品番号:F5881)とヒトTNFR2組換え蛋白質(SinoBiological,10417-H08H及びNovoprotein,C830)を混合して第一次免疫注射用とし、フセリ不完全アジュバント(incompletefreund’sadjuvant、IFA、SIGMAから購入、商品番号:F5506)とCpGODN1826(上海生工生物から合成)を使用して、最後の3回の免疫注射のアジュバントとした。特に、1回目と2回目は後足パッドと背中を免疫注射し、3回目と4回目は尾部皮下と背中を免疫注射することにより、高力価、高親和性、高特異性の抗血清と特異性の免疫細胞を得た。最終免疫(4回目の免疫)後7日目に安楽死したマウスは無菌で脾臓を取り出し、マウス脾臓リンパ球を無菌分離して抽出し、後で使用する時に細胞を蘇生させるために、液体窒素中に分けて凍結保存した。免疫後のマウスの脾臓またはリンパ節中のTNFR2特異的な単一B細胞をBDAriaIIIフローソーターにより96ウェルプレートにて選別し、単一細胞のmRNAをcDNAに逆転写した。その後、cDNAを鋳型として巣PCRを行い、それぞれ抗体重鎖増幅と軽鎖増幅を行った。増幅して抗体重鎖可変領域と軽鎖可変領域を得て、それぞれ相同組換え法により重鎖発現ベクターと軽鎖発現ベクターにクローニングした。重鎖発現ベクターと軽鎖発現ベクターの定常領域はいずれもヒトIgG1に由来した。完全重鎖発現配列はシグナルペプチド-VH-CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3であり、完全軽鎖発現配列はシグナルペプチド-Vκ-Cκであった。上記の単B細胞抗体のクローニングと発現はすべて96ウェルプレート内で高スループット方式で抗体の迅速な同定と発見を達成した。一連の理化学と機能スクリーニングを経て、523対クローン発現した抗体重鎖と軽鎖を得た後、計11個の陽性候補抗体分子を得て、それぞれ配列のCDRをIMGTおよびKABATソフトウェアで解析した。抗体候補分子のVH配列およびVL配列を表1に、抗体候補分子のIMGT解析結果を表2に、抗体候補分子のKABAT解析結果を表3にそれぞれ示している。
【0055】
表1.候補抗体分子のVHおよびVL配列
【表1-3】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
実施例2.FACSによる腫瘍細胞株TNFR2の発現の検出
成長良好な細胞を収集し、計数した後、各種類の腫瘍細胞ごとに、2×106個の細胞を取得し、それぞれisotype対照群、TNFR2染色群(1×106 cells/test)に応用した。PBSで細胞を2回洗浄し、300g×5min遠心した後、上清を捨て、1×Live/Dead作動液(Zombie violet L/D,Biolegend,商品番号:423114)100μl/testを加え、室温で20分間染色した。20分後、FACS buffer(DPBS+2%FBS)で細胞を2回洗浄し、300g×5min遠心した後、上清を捨て,以下のように1×染色抗体作動液100μl/testを加え、4℃で30分間光を避けて培養した。
【0060】
ヒト腫瘍細胞に対して:1)isotype対照群:1μl PE rat IgG2b,κisotype control(BD Pharmingen,商品番号:553989)/100μl FACS buffer/testを加える。2)TNFR2染色群:ヒト由来腫瘍細胞に8μl PE Rat anti-human CD120b(BD Pharmingen、商品番号:552418)/100μl FACS buffer/testを加えた。培養終了後、FACS bufferで細胞を2回洗浄し、300g×5min遠心分離した後、上清を捨て、300μlのFACS bufferで細胞を細胞懸濁液に再懸濁させ、上向流式計(Invitrogen,Attune NxT)で検出し、データを導出した後、Flowjoソフトウェアで解析して
図1に示すように、異なる腫瘍細胞の異なる発現レベルのTNFR2を作成し、結果を表4にまとめた。
【0061】
表4.13株ヒト腫瘍細胞株のTNFR2発現結果
【表4】
【0062】
実施例3.FACSによるヒトの異なるT細胞におけるTNFR2発現レベルの検出
商用凍結保存したヒトPBMC(Hemacare)を蘇生し、anti-CD3/CD28 Dynabeads(Gibco,商品番号:11129D)で増幅活性化したTreg細胞を用いて一晩培養した。翌日、ヒトPBMCを300×g条件下で10min遠心分離し、上清に捨てた。計数後、2×106個のPBMC細胞を獲得し、それぞれisotype対照群、TNFR2染色群(1×106 cells/test)に用いた。PBSで細胞を2回洗浄し、300g×5min遠心した後、上清を捨て、1×Live/Dead作動液(Zombie violet L/D,Biolegend,品番:423114)100μl/testを加え、室温で20分間染色した。20分後、FACS buffer(DPBS+2%FBS)で細胞を2回洗浄し、300g×5min遠心した後、上清を捨て、以下のように1×染色抗体作動液100μl/testを加え、4℃で30分間光を避けて培養した。
【0063】
PBMC細胞の場合:1)FMO(Fluorescence Minus One control)群:次の表に示す抗体1μl/100μl FACS buffer/testを加えた。
【0064】
【0065】
TNFR2染色群:次の表に示す抗体1μl/100μl FACS buffer/testを加えた。
【0066】
【0067】
Treg細胞の場合:1)FMO対照群:次の表に示す抗体1μl/100μl FACS buffer/testを加えた。
【0068】
【0069】
TNFR2染色群:次の表に示す抗体1μl/100μl FACS buffer/testを加えた。
【0070】
【0071】
培養が終わった後、FACS bufferで細胞を2回洗浄し、300g×5min遠心分離した後、上清を捨て、300μl FACS bufferで細胞を再懸濁させて細胞懸濁液になり、上向流式計(Invitrogen、Attune NxT)で検出し、データを導出した後、Flowjoソフトウェアで解析して
図2に示すように、TNFR2はCD4
+CD25-Tcon細胞とCD8
+T細胞でTregの発現レベルよりも大幅に低く、非活性化と活性化Treg細胞ではいずれも高発現であり、活性化Treg細胞では最も発現レベルが高い。
【0072】
実施例4.BIAcoreによるTNFR2抗体とヒトおよびカニクイザルのTNFR2タンパク質との特異的結合の検出
【0073】
Biacoreにより、実施例1で得られた11株のTNFR2抗体とヒトおよびサルのTNFR2タンパク質との特異的結合て検出した。この実験は、Protein Aチップによって、チップが希釈した抗体を捕捉するとともに、飽和結合抗原Rmaxが50 RUになるのに要する時間を、手動操作(manual run)で測定した。ヒト(Human TNFR2,Sino 10417-H08H)とカニクイザル(Cynomolgus TNFR2,Sino 90102-C08H)のTNFR2を32,16,8,4,2nMに段階希釈した。抗体と抗原との親和性は、多重循環動力学を用いて測定される。各サイクルにおいて、抗体注入後に段階濃度のTNFR2を注入することで、抗原と抗体に結合・解離過程を発生させる。各サイクルの後、Glycine pH1.5でProtein Aチップの再生(チップ上のタンパク質の除去)を行った。BIAcore T200解析ソフトウェアによって抗体抗原の親和性KDをフィッティングした。
【0074】
表5.TNFR2抗体とヒトまたはサルのTNFR2タンパク質と特異的結合のBiacore結果
【表5】
【0075】
表5の結果から分かるように、実施例1で得られた11個の抗TNFR2抗体はヒトとサルのTNFR2タンパク質と特異的に結合しており、親和性レベルが比較的に高い。
【0076】
実施例5.ELISAによるヒトおよびサルのTNFR2タンパク質へのTNFR2抗体の特異的結合の検出
酵素標識板にあらかじめ100μl/ウェルで0.5μg/mlヒトTNFR2またはカニクイザルTNFR2(実施例4と同じ抗原蛋白)をコーティングした。精製後の実施例1で得られた抗TNFR2抗体を28ng/ml(抗体#1結合曲線のEC80に対応する)になるように希釈し、100μl/ウェルに添加して、室温で1.5h振とう培養した。板を洗った後、マウス抗ヒト(mouse anti-human)IgG Fc-HRPワーキング溶液(1:10 000希釈)を加え、100μl/ウェルに添加して、室温で1.0h振とう培養した。プレートを再度洗浄し、HRPの基質TMBを添加して発色させ、停止液を添加して反応を停止させた後、酵素標識器で吸光値を読みとった。表6のデータから分かるように、11の抗体はすべてサルTNFR2タンパク質に特異的に結合したが、マウスTNFR2または対照のヒトCREG-Hisタンパク質には結合しなかった。
【0077】
表6.TNFR2抗体とヒトおよびサルのTNFR2タンパク質との特異的な結合に関するELISAの結果
【表6】
備考:1、002#はツール抗体(tool antibody、WO2017/083525 A1のSBT-002から由来)であった。
2、抗体は単一の濃度点のみが測定され、OD値で表し、その中、#088と#309抗体濃度は12ng/mLで、他の抗体濃度は28ng/mLであった。
【0078】
実施例6.FACSによって抗体とCHO-TNFR2細胞表面のヒトTNFR2との結合を検出する
TNFR2高発現プラスミドがトランスフェクションされたCHO安定化細胞を用いて、細胞密度が80%を超えない範囲で実験を行った。前記プラスミドはSino Biological(商品番号:HG10417-UT)から購入したものであった。細胞培地を捨て、PBSで洗浄し、パンクレアチン1mlを加えて2分間消化し、10%FBSを含むHamFBS培地で消化を停止させたことにより、細胞懸濁液を作製した。計数後、適量の細胞懸濁液を取り、350×g遠心分離し、上清を捨て、1×10
7細胞/mlの密度で、相応体積のブロッキング液 (10%FBS+PBS)を加えて細胞を重懸濁し、4℃で30分間培養した。培養終了後、350×g遠心分離して上清を除去し、染色緩衝液(2%FBS+PBS)で細胞を2×10
6細胞/mlの密度に重懸濁させ、1ウェルあたり50μlの細胞懸濁液を添加するように、96ウェルプレートに播種した。抗体をPBSで80ng/mlに希釈し、希釈した抗体を50μlの細胞懸濁液が含まれていたウェルに添加して、マイクロプレートシェーカー上で500rpmで1分間振とうさせ、抗体と細胞を十分に混合し、4℃で1時間培養した。培養終了後、染色緩衝液で細胞を2回洗浄した。ウェル当たり100μl、350×gで5分間遠心分離して上清を捨てた。PE goat anti-Human IgG Fc抗体(ebioscience,品番:12-4998-82)を染色緩衝液で250倍に希釈し、洗浄したウェルに1ウェル当たり100μlの体積で加え、均一に混合し、4℃で30分間染色した。染色終了後も同様に染色緩衝液で2回洗浄してから、200μl染色緩衝液で細胞を重懸濁させ、フローサイトメトリーでシグナル強度を測定し、シグナルが強いほど抗体とTNFR2の結合能が強いことを示した。
図3Aに示すように、PE Rat-IgG2b PE Rat-IgG2b(Biolegend,商品番号:400636)とPE Rat anti-hTNFR2(BD Biosciences,商品番号:552418)で測定した結果、CHO-TNFR2細胞表面のTNFR2発現強度は、同型対照の約134倍であった。これに基づいて、実施例1の11個のTNFR2抗体と細胞表面のTNFR2との結合能力を測定した結果、
図3Bに示すように、すべて陽性であった。
【0079】
実施例7.FACSにより抗体とTreg細胞表面のヒトTNFR2との結合を検出する実験
選別kit(Stemcell、商品番号:18063)によって、ヒトPBMCを単離してから、Dynabeads Human Treg Expander(Gibco、商品番号:11129D)での体外刺激により17日増幅した後、ヒトTreg細胞を得て、得られた細胞を分けて凍結保存した。体外で単離増幅したTreg細胞を取って一晩蘇生し、翌日300×gで5分間遠心分離し、DPBSで重懸濁して細胞懸濁液を得て、計数した。実験に必要な数の細胞を遠心管に加え、300×gで5min遠心し、上清を除去し、ブロッキング液 で細胞濃度を1×10
7個/mlに調整し、4°Cで30min培養した。ブロッキングされた細胞300×gを5min遠心分離し、上清を捨て、染色緩衝液で細胞密度を2×10
6/mlに調整し、96ウェルプレートに1ウェルあたり50μl播種した。実施例1の11個の被検抗体#001、#088、#125、#133、#219、#224、#226、#309、#352、#365、#395と対照抗体anti-Hel isotype(PBSでそれぞれ200ng/mlに希釈、総量100μl)を用いた。各試料をウェルごとに50μlずつ加えた。細胞懸濁液と抗体を加えたウェルプレートをマイクロプレートシェーカーに置き、500rpmの速度で1分間振とうし、細胞と抗体を十分に混合した。混合後、ウェルプレートを4°C冷蔵庫に置き、60分間培養した。培養終了後、ウェルごとに100μl染色緩衝液を加え、350×gで5min遠心分離し、上清を捨てた。1ウェル当たり200μl染色緩衝液を加えて細胞を重懸濁させ、350×gで5min遠心分離し、上清を捨てた。染色緩衝液を250:1(染色緩衝液:染料)の割合でPE goat anti-Human IgG Fcに加えて染色液を作製し、染色液を混合した後にウェルに100μlずつ加える。ウェルプレートをマイクロウェルプレート振とう器に載せて500rpmの速度で1分間振とうさせ、細胞と染色液を十分に混合した。混合した後、4°C冷蔵庫に置き、30分間培養した。細胞を2回洗浄し、最後に1ウェル当たり200μlのPBSを加えて細胞を重懸濁させ、シグナルを検出した。
図4Aに示したCD25
+FoxP3
+の細胞がヒトTreg細胞であり、丸印のTreg細胞におけるTNFR2の発現割合は99.5%に達しており、ヒトTreg細胞がTNFR2を非常に高発現していることが分かった。
図4Bが示しているように、対照抗体anti-Hel isotypeがTregに結合しなったが、実施例1の11個の抗体はすべてTreg細胞に有効に結合した。
【0080】
実施例8.ELISAで抗TNFR2抗体のTNFα/TNFR2の結合に対する抑制を検出
酵素標識板にはあらかじめ1μg/ml 100μl/ウェルのヒトTNFR2(Novoprotein,商品番号C830)をコーティングし、実施例1の各TNFR2抗体を40nMと4nMに希釈し、希釈した抗体をそれぞれ15ng/mlヒトTNFa(Acro Biosystem,商品番号TNA-H82E3)と等体積混合し、100μl/ウェルごと酵素標識板に加え、室温振とう2.0h培養した。プレートを洗った後にStreptavidin-HRPワーキング溶液(1:10 000希釈)を加え、100μl/ウェル、室温で40分間振とう培養した。プレートを再度洗浄し、HRPの基質TMBを添加して発色させ、停止液を添加して反応を停止させた後、酵素標識器で吸光値を読み取った。OD値が低いほど、抗体がTNFaとTNFR2の結合を抑制する能力が高いことを意味した。最終的にすべての抗体のOD値を、ツール抗体002#のOD値に対して正規化し、パーセンテージ値が高いほど抑制能力が高いことを意味した。表7のデータから分かったように、実施例1の11抗体は、20nMと2nMの濃度でTNFaとTNFR2の結合を抑制する活性を示した。002#Abと比較して抑制活性に高低があった(表7)。
【0081】
表7a.ELISA結果-1:一部の被測抗体はTNFαとTNFR2の結合を抑制できた
【表7a】
【0082】
表7b. ELISA結果-2 一部の被測抗体はTNFαとTNFR2の結合を抑制できた。
【表7b】
備考:1.002#はツール抗体であった。2.%to 002#OD=002#(20nM または 2nM)のELISA OD/抗体のELISA OD(20nM または 2nM)×100
【0083】
実施例9.抗TNFR2抗体のヒトTNFR2を高発現するCHO細胞におけるTNFαとTNFR2との結合に対する抑制
ヒトTNFR2を高発現するCHO安定化細胞を用いて実験を行った。細胞を蘇生させ、状態が良好になるまで継代し、細胞のヒトTNFR2発現レベルを測定した。ホモタイプ対照を比較して平均蛍光強度(MFI)シフト倍数が100倍以上であれば検出できた。
【0084】
CHO-TNFR2細胞消化後、DPBS2回洗浄、Live/Dead(L/D)染色(室温20min)後、1×10
5細胞/50μl/ウェルで播種した。実施例1のanti-TNFR2抗体を染色緩衝液で40nMまで希釈して初期濃度とし、3倍段階で希釈し、計7つの濃度点であった。希釈した抗体を50μl/ウェルに播種された細胞に加え、柔らかく吹き混ぜ、抗体の最終濃度はそれぞれ20,6.67,2.22,0.74,0.247,0.08,0.027と0nMであり、4°Cで30min培養した。その後100μl/ウェルで100ng/mlに希釈したヒトTNFα-biotinを加えて軽く吹いて混合し、混合後4°Cで30min培養した。染色緩衝液を2回洗浄した後、100μl/ウェルでPE-streptavidinを加えて4°C30分間培養した。染色緩衝液を2回洗浄した後、150μlに重懸濁させてから測定した。抗体濃度の対数値を横軸とし、対応のMFI値を縦軸として抗体の抑制曲線をプロットし、4パラメータでフィッティングしてIC50値を算出した。IC50値が小さいほど、抗体のヒトTNFαとヒトTNFR2の結合に対する抑制能力が高かった。一部の抗体の遮断曲線の形状が異なったため、すべての抗体の遮断効果を002#AUCに正規化し、パーセンテージ値が高いほど、抗体抑制の効果が良かったことを示した。11抗体の遮断曲線は
図5に、抑制活性は表8にそれぞれ示された。
【0085】
図5および表8から分かるように、実施例1の11抗体はいずれもTNFαとCHO-TNFR2細胞上のTNFR2の結合を有意に抑制した。ツール抗体002#と比較して11抗体の抑制活性に高低があった。
【0086】
表8.TNFR2抗体のTNFαと細胞表面TNFR2の結合に対する遮断
【0087】
【表8】
備考:AUC%=002#のAUC÷抗体のAUC×100
【0088】
実施例10.TNFR2抗体によるTreg機能の抑制
【0089】
TNFR2抗体が含まれた条件下で、エフェクター(responder)T細胞に対するTreg細胞の抑制機能を測定したことにより、Treg細胞の抑制機能に対する抗体の干渉効果を判定した。実験に必要なTreg(CD4
+CD25
+FoxP3
+T細胞)とTconエフェクター細胞(CD4
+CD25
-T細胞)を取って一晩蘇生し、翌日400×gで5分間遠心分離し、RPMI1640培地(Gibco,商品番号72400047)で重懸濁して細胞懸濁液を得、計数した。Tcon細胞をCellTrace CFSE cell proliferation kit(Biolegend品番423801)で染色し、4×10
6細胞ごとに1μlの貯留液を用いて1mlの染色液に調製した。染色5min、同体積の血清で反応を中和し、5min静置し、400×g 5min遠心分離した。細胞を培地で重懸濁洗浄し、再度遠心分離して上清を得た。96ウェルプレートにウェル当たり1×10
5細胞密度で播種し、50μl培地当たり1×10^5細胞の密度で細胞を重懸濁させ、50mL遠心チューブに移送した。その同時に、Treg細胞を準備した。Treg細胞とTcon細胞を1:1,1:2,1:4,1:8の比例で共培養した。各96ウェルプレートは、それぞれ異なるTreg細胞密度に対応し、ウェルごとに50μl培地に懸濁された。Tcon細胞の総数に応じて1:8の比例で対応するanti-CD3/CD28 Dynabeads(Gibco,商品番号11129D)を用意した。TregとTconの培地に1ウェルあたり50μlの体積で添加した。被測抗体を毎ウェルに添加し、抗体の最終濃度は12.5μg/mlとなった。条件ごとに並列の2つのウェルを設け、上記ウェルプレートを混合した後、37℃インキュベータで4日間培養してFACS検査を行った。その結果、特に#001抗体と#224抗体は異なるTreg/Tcon比例条件下でTregのTcon細胞に対する抑制作用を著しく抑制し、Tconの増殖を促進した(
図6)。
【0090】
実施例1被検抗体と対照抗体anti-Hel isotypeとを比較した場合のTreg細胞の抑制機能への影響の計算式:(被検抗体存在時のエフェクターT細胞の増殖能-anti-Hel抗体存在時のエフェクターT細胞の増殖能)/anti-Hel抗体存在時のエフェクターT細胞の増殖能×100%。
【0091】
実施例11.TNFR2抗体のTreg機能抑制実験における細胞上清sTNFR2発現に対する影響
細胞上清のsTNFR2の発現を測定したことで、TNFR2抗体によるTreg機能の抑制効果を判定した。TregとエフェクターT細胞を実施例1の抗体で処理して4日後に培養上清をサンプルとして採取し、上清を1ウェル当たり100μl採取した。上清を5倍希釈した後、sTNFR2の測定を行った。sTNFR2の測定方法はR&D社humanTNFRII/TNFRSF1Bキット(品番DRT200)を参照した。その結果、#001、#088、#125、#219、#224、#226と#309は、異なるTreg:Tconの比例でも細胞上清中sTNFR2の発現レベルを著しく低下させることができた(
図7)。
【0092】
実施例12.TNFR2抗体のTNFα誘導Treg細胞増殖に対する抑制
TNFR2抗体の存在下でTNFαによるTreg細胞の増殖誘導を測定したことで、TNFαによるTreg細胞の増殖誘導に対する当該抗体の抑制作用を判断した(Zaragoza B et al.,Nat Med.2016 Jan;22(1):16-7)。体外増幅分離後に凍結保存したTreg細胞を取って一晩蘇生させ、翌日400×gで5分間遠心分離し、培地で重懸濁して細胞懸濁液を得て、計数した。TregをCFSEで染色し,4×10
6細胞ごとに1μlの貯留液を用いて染色液1mlに調製した。染色5min、同体積の血清で反応を中和し、静止5min、遠心400×g 5min。細胞を培地で重懸濁洗浄し、再度遠心分離して上清を取った。96ウェルプレートを1ウェルあたり1×10^5細胞密度で播種し、1×10
5細胞あたり50μl培地の密度で細胞を重懸濁させ、96ウェルプレートに移した。実施例1の被検抗体をウェル当たり12.5μg/mlの最終濃度で添加し、インキュベータで30分間培養した。その後、IL-2(終濃度300IU)が含まれた培地50μlとTNFα終濃度50ng/mlの培地50μlを1ウェル当たり添加し、1ウェル当たりの終体積を200μlとした。条件ごとに並列の3つのウェルを設定し、上記ウェルプレートを混合した後、37℃インキュベータで3日間培養してFACS検出を行った。Treg増殖の割合から、この抗体のTNFα誘導Treg増殖に対する抑制作用を判断した。
図8に示すように、対照anti-Hel抗体と比較して、#001(17.1%抑制),#088(6.9%抑制),#125(5.2%抑制),#133(9.7%抑制),#219(13.6%抑制),#226(10.3%抑制),#365(11.0%抑制)の抗体はTNFα誘導Treg細胞増殖を効果的に抑制した。被測抗体が対照抗体と比較して、TNFαにより誘導されるTreg細胞増殖を抑制する割合の計算式:(被測抗体存在時のTNFαによるTreg増殖誘導割合-anti-Hel isotype抗体存在時のTNFαによるTreg増殖誘導割合)/anti-Hel isotype抗体存在時のTNFαによるTreg増殖誘導割合×100%。
図8Aでは、TregはIL-2添加後に増殖が有意に高く(20%vs.4%),TNFα添加後に増加率がさらに高く(40%vs.20%)なった。
図8Bに示したように、11個の抗体はIL-2とTNFα添加後のTregの増殖の誘導能に対する抑制作用を示し、#224,#352,#395を除く8個の候補抗体は、すべてIL-2とTNFαによるTregの増殖を抑制していた。
【0093】
実施例13.ELISAによるCD4+T細胞培養上清におけるsTNFR2発現レベルへのTNFR2抗体の影響の検出
商用凍結保存ヒトPBMC細胞を蘇生し、一晩培養する。翌日、ヒトPBMCを300×g条件下で10min遠心分離し、上清を捨て、キット分離液Easybufferで細胞を2回洗浄した後、細胞を計数した。ヒトCD4+T細胞分離キット取扱説明書(Stemcell,EasySepTM Human CD4+T cell Isolation Kit,品番17952)によりヒトCD4+T細胞の分離を行った。分離したCD4+T細胞を再度計数し、適切な濃度まで懸濁させた後、96ウェルプレートに4×105細胞/ウェルを50μl/ウェルで接種した。抗体作動液(50μg/ml,4×)を調製し、50μl/ウェルをウェルプレートに加え、37°C,5%CO2条件下で30分間培養した。次に,IL-2作動液(800IU/ml,4×)とTNFα作動液(200ng/ml,4×)を調製し、それぞれ50μl/ウェルで添加した。実験群には、非刺激群,IL-2単独刺激群,TNFα単独刺激群,IL-2+TNFα共刺激群,抗体+IL-2+TNFα共刺激群(すなわち被検試料群)があった。播種完了のウェルプレートをインキュベータに入れ、37度C,5%CO2条件下で3日間培養した。3日後、培養上清を収集し、sTNFR2測定を行った。
【0094】
ヒトsTNFR2標準品を調製し、上記実験中の細胞上清を取り出し、ELISAキット仕様書の指示に従って操作した(R&D System,Soluble TNF Receptor II Human ELISA Kit,品番DRT200)。ステップは次の通りである:1)高親和性プレートに細胞上清と標准品100μl/ウェルを加え、室温(18-25°C)で2.5h軽く振とうして培養する。2)上清を捨て、洗浄液(Wash buffer)で4回、300μl/ウェルを洗う。3)水分を除去した後、100μl/ウェルの1×Biotin標識可溶性ヒトTNFR2抗体を加え、室温(18-25°C)でわずかに振とうして1h培養する。4)上清を捨て、洗浄液で板を4回、300μl/ウェルに洗浄、5)水分を除去した後、100μl/ウェルの1×HRP-Streptavidin溶液を加え、室温(18-25°C)で45分間軽く揺さぶって培養し、6)上清を捨て,洗浄液で板を4回,300μl/ウェルに洗浄,7)水分を除去した後、100μl/ウェルのTMB基質溶液を加え、室温(18-25°C)遮光条件下で30分間軽く振とう培養し、8)50μl/ウェルの反応停止液を加え、直ちに酵素標識器でOD450読み取り値を検出した。
【0095】
実験結果は、
図9に示された通り、陰性対照Anti-Hel isotype群と比較して、実施例1の11抗体はいずれも細胞上清中のsTNFR2分泌を抑制した。CD4
+T細胞はIL-2とTNFαの共刺激下で活性化されるため、細胞上清中のsTNFR2の分泌が増加した。11個の抗体はすべて異なる程度にIL-2とTNFαのCD4
+T細胞に対する活性化効果を遮断することができ、そのうち、番号#88、#219、#001(P<0.001)、#125、#224(P<0.01)の抗体の抑制作用は特に顕著であり、統計学的意義上の有意差があった。OD450の読み取り値が低いほど、sTNFR2の発現レベルが低いこと、すなわち抗体の拮抗活性が強いことを示していた。
【0096】
実施例14.FACSによりTNFR2抗体が介したTreg細胞に対するADCC活性を検出
1日に前もってPBMCと凍結保存したTreg細胞を完全培地(RPMI1640-Glutamax+10%FBS+1*P/S+1*ITS+50μlMPMメルカプトエタノール)で培養し、PBMCに100IU/mlのIL-2添加を必要とした。実験当日に分離キット(Stemcell,商品番号17955)の要求によりNK細胞をPBMCから分離し、完全培地で重懸濁(IL-2を含まない)させ、密度0.45×10
6/mlとした。Treg細胞をCell Trace violet試薬で標識し、標識終了後に密度を0.3×10
6/mlに調整した。11個の候補抗体を最終濃度の4倍まで完全培地で段階希釈しておいた。実験プレート分布図に従って標的細胞を50μl/ml細胞プレートに播種し、次に希釈した薬物を対応するウェルに播種し、標的細胞と30分間、37°Cで共培養した。培養終了後、エフェクター細胞を加える必要のあるウェルに100μlのエフェクター細胞懸濁液を加え、不要なウェルに100μlの培地を補充し、37°C4時間共培養した。1ウェル当たり1μlのPI染料を加えてから検出を行った。標的細胞中のPIシグナルが強いほどADCC作用が顕著であることを示した。ADCC実験結果(
図10と表9)により、陰性対照anti-Hel isotypeは作用標的がないため、ADCC殺傷作用が現れなかった。陽性対照#52号サンプルは明らかなADCC作用曲線を示した。11個の抗体はすべて微弱なADCC活性作用を示した。
図10AにヒトTregはTNFR2を高発現し、anti-Hel isotype対照抗体染色と比較して80倍のシフトを示した。
図10Bに示された通り、キット分離前のPBMC中のNK細胞の割合が14.5%であり、キット分離後のNK細胞の純度は88.3%であった。
図10Cは11抗体のADCC作用を示しており,#52抗体は陽性対照抗体,anti-Hel isotype抗体は陰性対照抗体、Target aloneはNK細胞がなく標的細胞Tregのみの細胞陰性対照である。
【0097】
表9:Tregに対する被測抗体のADCCキラー作用曲線AUC(Area under the ROC Curve)の比較
【表9】
備考:被検抗体のADCC作用曲線のAUC値と上陽性対照#52抗体サンプルとを比較し、相対的なADCC活性を得た。
【0098】
実施例15.TNFR2抗体を介したCHO-TNFR2細胞に対するADCC活性のレポーター遺伝子法による検出
1日に前もってターゲット細胞(CHO-TNFR2)を透明底白色96ウェルプレート(Corning,商品番号:3610)に播種し、検出緩衝液(RPMI1640(Gibco,商品番号:22400105)+0.5%FBS(Gibco,商品番号:10099141)+1*P/S(Gibco,品番:15140-122))を用いて播種し,1ウェルあたり10000個の細胞を播種し、一晩で細胞を壁に貼り付けた。翌日には検出緩衝液を用いて最終濃度の2倍に段階希釈して置いた。プレート中の検出緩衝液を捨てて、1ウェル当たり25ulの新しい検出緩衝液を加えた後、希釈した薬物を対応するウェルに1ウェル当たり25ul添加し、標的細胞と1時間,37℃で共培養した。培養終了後、対応するウェルに2倍の薬物を25ul加え、ADCC細胞懸濁液(BPS,商品番号60541)を25ul、ウェル当たり75000細胞を指定のウェルに加えた。このとき各ウェル内に100ulの混合液を入れ、インキュベータで6時間培養した。培養終了後、ウェルプレートを室温で10分間放置し、あらかじめ室温まで融解したBright-Glo(Promega,商品番号:2620)試薬を1ウェル当たり100ul添加し,ウェルプレートをウェルプレートで500rpmで10分間振とうさせてから、発光値を検出した。発光信号が強いほどADCCの作用が顕著であることを示していた。ADCC実験の結果、陰性対照anti-Hel isotype同型対照抗体は作用標的がなかったため、ADCC殺傷作用を検出しなかった。一方、検出された#001、#219、#224の3つの抗TNFR2抗体はすべてADCC作用を有した(
図11)。
【0099】
実施例16.抗TNFR2抗体とヒトTNFR2タンパク質上の抗原エピトープ群(Epitope binning)との結合
ヒトTNFR2タンパク質に結合する際にTNFR2抗体が競合するか否かをBiacoreを用いて検出したことにより、いくつかの抗原エピトープボックス(epitope bin)(AbdicheYN et al.,PlosOne.Mar20,2014)に属することを事前に決定した。ヒトTNFR2はアミノ結合で固定され、選択された固定抗体を注射で結合させ、さらに他の抗体をそれぞれ注射で結合させ、その後固定抗体と他の抗体の注射順序を交互に行った。固定抗体と他の抗体との結合シグナルに前後2つの状態に差があるか否かを比較分析したことにより、ヒトTNFR2タンパク質上の抗体間のbinding epitopeの関係を判定した。具体的には、各サイクルにおいて、すべての抗体の測定に300nMの濃度で180s注入し、650mMのHCl溶液を用いて被測定抗体を溶出させた。
【0100】
表10の結果から分かったように、抗体224が結合するTNFR2抗原エピトープは他の10個の抗体と異なった。
【0101】
表10.BiacoreによるTNFR2抗体のヒトTNFR2タンパク質でのEpitope binningに対する測定結果
【表10】
注:Y:エピトープ競合がある。N:エピトープ競合なし
【0102】
実施例17.抗マウスTNFR2代替抗体のインビボ薬効検出
例1の11個の抗ヒトTNFR2抗体はヒトとカニクイザルのTNFR2に特異的に結合し、いずれもマウスのTNFR2に結合しなかったため、抗mTNFR2抗体を代替抗体(surrogate antibody)としてBalb/cマウスにPD-1/PD-L1療法耐性CT26.WT大腸癌動物モデルを作成し、TNFR2標的に関する薬効実験を行った。代替抗体anti-mTNFR2はBioXcell(商品番号BE0247)から購入した。マウス右側皮下に1×105CT26結腸癌細胞を接種した(実験0日目とした)。腫瘍体積が~110mm3に達した場合には、個体の腫瘍体積が適度なマウスを群に選び、動物を腫瘍体積ごとにEXCEL乱数に基づくランダムグルーピング方法を用いて、4つの実験群(G1は対照群、G2はanti-mTNFR2代替抗体群、G3はanti-mPD-L1(BioXcell、商品番号BE0101)抗体群、G4はanti-mPD-1(BioXcell、商品番号BE0146)抗体群に8匹ずつ分配し、グルーピング(13日目)当日に投与を開始した。投与量は,anti-mTNFR2 5mg/kg(mpk),anti-mPD-L1 10mg/kg(mpk),anti-mPD-1 10mg/kg(mpk)で週2回腹腔内投与した。腫瘍の体積と体重は週に3回一定時間測定された。
【0103】
腫瘍接種後21日目に、anti-mTNFR2群とanti-mPD-L1群の腫瘍体積増加は対照群と比較して有意に抑制され、統計学的差があった(P<0.05)。また、anti-mTNFR2グループは、anti-mPD-L1グループよりも大きなTGI値を有する。その結果、このanti-mTNFR2抗体は、抗PD-1または抗PD-L1抗体よりも、この腫瘍モデルにおいて優れた薬効を有することが示された(
図12A-B)。
【0104】
各グループの実験動物は投与期間中の活動と食事状態が良好で、体重がある程度上昇した。その結果、このanti-mTNFR2抗体は安全性に優れていたことが示された(
図12C)。
【0105】
最後の投与の24h後、それぞれG1対照群とG2 anti-mTNFR2抗体群の大部分のマウスを選んでTILの分離を行い、FACSの免疫タイピングを行い、すべての細胞群のゲートの根拠はすべてFMO対照(
図13A-B)であり、結果から示された通り、anti-mTNFR2代替抗体治療群のCD8
+T細胞は対照群より明らかに多く、しかも有意差があった(p<0.01)(
図13C)。同時にanti-mTNFR2治療群の総CD8
+T及び記憶CD8
+T細胞数とTreg細胞数の比(CD8
+T/Treg)も対照群より明らかに高く、しかも統計学的差異があった(p<0.001)(
図13D-E)。anti-mTNFR2治療群のCD8
+T発現PD-1の平均蛍光強度は、同型対照群により低く、有意差があった(p<0.001)(
図13F)。以上のデータから示唆された通り、抗mTNFR2抗体の抗腫瘍効果が、CD8
+T/Tregの割合を向上し、CD8
+T細胞の免疫消耗状態を部分的に逆転したことにで実現された可能性があった。
【0106】
腫瘍体積(tumor volume,TV)は、V=1/2×a×b2として計算された。ここで、aとbはそれぞれ長さと幅を表した。測定結果から、相対腫瘍体積(relative tumor volume,RTV)を、RTV=Vt/V0として算出した。その中、V0は分籠投与時(すなわちDay 0)に測定して得られた腫瘍体積であり、Vtは1回の測定時の腫瘍体積であった。TGI%=[1-RTV(試験群)/RTV(対照群)]×100%。
【0107】
実施例18.抗マウスTNFR2置換抗体と抗マウスPD-1置換抗体との併用のインビボ薬効を検出
マウス右側皮下に1×105 CT26.WT結腸癌細胞を接種した(実験0日目とした)。腫瘍体積が~100mm3に達した場合、個体の腫瘍体積が適度なマウスを群に選び、動物を腫瘍体積ごとにEXCEL乱数に基づくランダム群分け方法を用い、6つの実験群(G1は対照群、G2はanti-mTNFR2抗体群、G3はanti-mPD-1抗体群、G4はanti-mTNFR2+anti-mPD-1抗体群)に9匹ずつ分配し、体内薬効学研究に用いられた。グループ分け(14日目)当日に投与を開始した。投与量はanti-mTNFR2 5mpk,anti-mPD-1 10mpkで週2回腹腔内投与した。腫瘍の体積と体重は週に3回一定時間測定された。
【0108】
腫瘍接種後28日目に、G2 anti-mTNFR2群とG3 anti-mPD-L1群の腫瘍体積増加は対照群と比較して有意に抑制され、統計学的差があった(P<0.05)。また、anti-mTNFR2グループは、anti-mPD-L1グループよりも大きなTGI値を有した。その結果からわかったように、このanti-mTNFR2抗体はこの動物モデル上でより良い薬効を有した。G4併用治療群が最も薬効が良く、各単剤群と比較して統計学的差があり(p<0.01、p<0.001)、anti-mTNFR2抗体とanti-mPD-1抗体を併用投与すると相乗効果があった(
図14A-B)。
【0109】
28日目に投与を停止した後、前の4グループのマウスは薬を停止した後の観察段階に入り、毎週少なくとも1回マウス腫瘍を記録し、薬を停止した後、G2 anti-mTNFR2グループとG3 anti-mPD-L1グループの腫瘍体積は緩やかに増加し始め、そして遅くとも55日目にこの2グループのマウスは完全に死亡し、G4連合治療グループは68日目に、依然として生存しているマウスが残っており、このグループの生存率はずっと50%(55.6%)より高い。G4連合治療群の3匹のマウス腫瘍体積は次第に消退し、しかもずっと成長せず、単剤群及び対照群と比べて有意差があり(p<0.001、p<0.0001)、連合群は各単剤群より更に良い薬効を示した(
図14C)。
【配列表】