(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】調整可能なリストレットクラスプ
(51)【国際特許分類】
A44C 5/18 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
A44C5/18 G
A44C5/18 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022082781
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-05-20
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・レッチャー
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実公昭43-008388(JP,Y1)
【文献】特開2019-030636(JP,A)
【文献】特開平2-111301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の薄材(1、2)がある折りたたみバックルタイプのリストレットクラスプであって、
前記第1及び第2の薄材(1、2)は、前記第1及び第2の薄材の各第1の端において、着用位置である閉位置と少なくとも1つの開位置の間で動くように、互いに対してヒンジ接続し、
前記第1の薄材は、前記第1の薄材の第2の端において第1のリストレットストランドを固定するための固定メンバーと、前記第1の薄材の第2の端において前記第1及び第2の薄材(1、2)を閉位置に保持するためのロック手段とを担持し、
前記第2の薄材(2)は、前記第2の薄材の第2の端において第2のリストレットストランドを固定するための固定メンバーを担持し
、
ヒンジ接続された
可動薄材(3、4)は、第1のヒンジ(A1)と第2のヒンジ(A2)を介して前記第1及び第2の薄材(1、2)
の各第1の端に接続され、
それにより、前記第1及び第2の薄材(1、2)は、前記可動薄材(3、4)の対を介して互いに接続し、
前記第1及び第2のヒンジ(A1、A2)は、手首の大きさに応じて
前記閉位置における2つの所定の着用位置を定めるように、前記第1及び第2の薄材(1、2)の前記第1の端及び前記第1及び第2の可動薄材(3、4)の
第2の端にそれぞれ形成される止め(10a、10b、21a、21b、30a、30b、40a、40b)によって角度的に限定される
ことを特徴とするクラスプ。
【請求項2】
前記第1及び第2のヒンジ(A1、A2)の角変位の振幅は、5°~35°の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載のクラスプ。
【請求項3】
前記第1及び第2の可動薄材(3、4)の長さは同じである
ことを特徴とする請求項2に記載のクラスプ。
【請求項4】
前記第1及び第2の薄材(1、2)の前記第1の端と、前記第1及び第2の可動薄材(3、4)の前記第2の端には、ノッチ(23、23')が形成されており、
前記第1及び第2の薄材(1、2)の前記第1の端と、前記第1及び第2の可動薄材(3、4)の前記第2の端は、前記ノッチにおいて相互ロックするように構成している
ことを特徴とする請求項3に記載のクラスプ。
【請求項5】
前記第1及び第2の薄材(1、2)の前記ノッチの自由端は、半円形であり、
前記ノッチの底には、平らな面がある
ことを特徴とする請求項4に記載のクラスプ。
【請求項6】
前記第1及び第2の可動薄材(3、4)の前記ノッチの自由端は、
食いつき部(40c)があるまっすぐな形であり、
前記ノッチの底には、半円形の面がある
ことを特徴とする請求項4に記載のクラスプ。
【請求項7】
前記第1及び第2の薄材(1、2)の前記ノッチは内側ノッチであり、かつ、前記第1及び第2の可動薄材(3、4)の前記ノッチは外側ノッチであるか、又はその逆である
ことを特徴とする請求項4に記載のクラスプ。
【請求項8】
前記第1及び第2の薄材(1、2)及び前記第1及び第2の可動薄材(3、4)は、金属、金属合金、複合材料、又はセラミックスによって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のクラスプ。
【請求項9】
請求項1に記載のクラスプを備えるリストレットを備える
ことを特徴とする腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のための調整可能なクラスプに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなクラスプを備える腕時計に関する。
【背景技術】
【0003】
リストレットの長さを調整するためのデバイスの必要性に関する問題がよく知られている。
【0004】
2つのリストレットストランドの端に取り付けられその取り付けられた状態を維持するクラスプを用いることが知られている。このようなクラスプは、閉位置と開位置の2つの位置を占める。閉位置は、携行型時計を着用するときの位置であり、この閉位置においては、ストラップとクラスプが、手首の周のまわりに配置され、携行型時計を保持できるようにする全長を有する。開位置は、展開位置とも呼ばれ、クラスプの長さ、したがってリストレットの長さ、を大きくして、手を通すことと携行型時計の取り外しを可能にする。
【0005】
クラスプを用いる手法の第1の目的は、リストレットを着用するときの快適性を最適にすることである。このために、大きな手首においても小さな手首においても、クラスプが閉じた構成になっているときに、クラスプが手首の輪郭に最も良好に合致すると有利である。したがって、クラスプの製造においては、着用者の手首の寸法構成にかかわらず、適切かつ快適な形態で、腕時計の着用者の手首に合致させることが難しい。
【0006】
例として、欧州特許出願EP09131060A1は、一連の穴の対が形成されたカバーがある折りたたみバックルタイプのクラスプについて記載しており、これらの穴は、リストレットを固定するためのストリップの端を収容するように意図されたものである。上記の問題に対処するために、リストレットの有効長の調整ピッチを定める距離の分、隣接する穴の2つの対どうしが離れている。
【0007】
しかし、このようなリストレットの長さを調整するためのデバイスは、カバーの側方に調整穴が見えることを考えると魅力的ではない。また、このようなクラスプの調整操作には、ある程度の器用さが必要である。なぜなら、先の尖った工具を穴に挿入してリストレットの固定用ストリップを圧縮する必要があり、調整者が不器用な場合にはカバーが破損するおそれがあるからである。
【0008】
このような状況を避けるために、欧州特許EP0350785B1のような代替的なデバイスがすでに開示されている。この特許は、以前のものと同様のクラスプであるが、工具なしで取り扱うことができるリストレットの有効長を調整するためのデバイスを備えるものについて記載している。実際に、この特許に記載されているクラスプは、2つの薄材がそれらの両方を通り抜けるロッドを用いてヒンジ接続している折りたたみバックルタイプのものであり、各薄材は、その自由端において、リストレットに固定するための固定メンバーを担持している。第1の薄材は、フックを担持しており、このフックは、第2の薄材に形成された穴にて係合してトリガーと連係するように意図されている。このトリガーによって、フックをロックして、クラスプを閉じた状態にロックすることができる。第2の薄材には、2つの部分があり、これらの2つの部分は、リストレットの有効長を調整するためのピッチを定める所定の範囲内で互いに対して摺動することができる。その2つの部分のうちの第1の部分は、第2の薄材を第1の薄材に接続するヒンジを担持し、第2の部分は、ロック用トリガーを担持する。クラスプをロックするためにフックが係合する穴は、第2の薄材の2つの部分の間の摺動範囲に対応する、リストレットの縦方向における長さを有する。トリガーには、中央部分があり、この中央部分は、リストレットの2つの異なる有効長に対応する、リストレットの縦方向に沿った、フックの2つの箇所を定める。特に押し部品を備える、制御メンバーによって、トリガーをアクチュエートしてフックを解放しクラスプを開くことができる。
【0009】
しかし、このような手法には、構成を複雑にし、大きさを大きくし、そしてクラスプを扱うことを難しくしてしまうという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な目的は、手首の大きさにかかわらず快適な装着感を与えるようなリストレットクラスプを提供することによって、従来技術において知られているクラスプの課題を解決することである。本発明は、さらに、構造が単純であり取り扱いが容易であるようなリストレットを提供するように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、より詳細には、第1及び第2の薄材がある折りたたみバックルタイプのリストレットクラスプに関し、前記第1及び第2の薄材は、前記第1及び第2の薄材の各第1の端において、着用位置である閉位置と少なくとも1つの開位置の間で動くように、互いに対してヒンジ接続し、前記第1の薄材は、前記第1の薄材の第2の端において第1のリストレットストランドを固定するための固定メンバーと、前記第1の薄材の第2の端において前記第1及び第2の薄材を閉位置に保持するためのロック手段とを担持し、前記第2の薄材は、前記第2の薄材の第2の端において第2のリストレットストランドを固定するための固定メンバーを担持する。
【0012】
本発明によると、前記第1及び第2の薄材は、前記第1及び第2の薄材の各第1の端において可動薄材の対を用いて互いにヒンジ接続し、ヒンジ接続された前記可動薄材は、第1のヒンジと第2のヒンジを介して前記第1及び第2の薄材に接続され、前記第1及び第2のヒンジは、2つの所定の着用位置を定めるように、前記第1及び第2の薄材の前記第1の端及び前記第1及び第2の可動薄材の前記第2の端にそれぞれ形成される止めによって角度的に限定される。
【0013】
本発明の他の有利な変異形態は、以下の特徴を有する。
- 前記第1及び第2のヒンジの角変位の振幅は、5°~35°の範囲内である。
- 前記第1及び第2の可動薄材の長さは同じである。
- 前記第1及び第2の薄材の前記第1の端と、前記第1及び第2の可動薄材の前記第2の端には、ノッチが形成されており、前記第1及び第2の薄材の前記第1の端と、前記第1及び第2の可動薄材の前記第2の端は、前記ノッチにおいて相互ロックするように構成している。
- 前記第1及び第2の薄材の前記ノッチの自由端は、半円形であり、前記ノッチの底には、平らな面がある。
- 前記第1及び第2の可動薄材の前記ノッチの自由端は、食いつき部があるまっすぐな形であり、前記ノッチの底には、半円形の面がある。
- 前記第1及び第2の薄材の前記ノッチは内側ノッチであり、かつ、前記第1及び第2の可動薄材の前記ノッチは外側ノッチである。
- 前記第1及び第2の薄材及び前記第1及び第2の可動薄材は、金属、金属合金、複合材料、又はセラミックスによって作られている。
本発明は、さらに、本発明に係るクラスプを備えるリストレットを備える腕時計に関する。
【0014】
例として与えられる添付の図面を参照しながら以下の好ましい実施形態についての詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点を明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】開位置である本発明に係るリストレットクラスプの全体的な斜視図である。
【
図3】リストレットの曲がりを調整する手段の詳細な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図示しているクラスプは、特に限定していないが、本発明の好ましい実施形態に対応するものである。具体的には、当該クラスプは、折りたたみバックルタイプのものであり、計時器のリストレットを閉じるように意図されている。
【0017】
図示するように、クラスプ100には、第2の薄材2にヒンジ接続する第1の薄材1がある。薄材1、2のそれぞれは、リストレットの縦方向において細長い形状を有し、着用者の手首の形状に良好に合致するようにわずかに曲がっている。
【0018】
第1の薄材1には、2つの柱部材10があり、これらの柱部材10は、それらの一方の端において互いに接触するように構成している。これらの柱部材10のそれぞれには、それらの長さの大部分にわたって互いに接触しないように空欠部11がある。
【0019】
図1によってわかるように、柱部材10のそれぞれは、リストレットの縦方向に垂直な方向に延在している拡張部12を、他方の端の近くにおいて担持しており、これによって、制御メンバーを定める押し部品を形成して、クラスプのロックを解除することを可能にする。
【0020】
第1の薄材1には、さらに、側壁15を支持する上壁14と、下壁16があるカバー13がある。側壁15には、2つの開口17が形成され、この開口17によって、伝統的な形態で、第1のリストレットストランドのストリップの一端を固定することができる。側壁15には、さらに、2つの空欠部があり、この空欠部によって、拡張部12が突き出て、クラスプ1のロックを解除することができる。
【0021】
第2の薄材2には、2つのアーム20があり、これらのアーム20どうしは、第2の薄材2の中央領域において横断方向部材21によって接続される。アーム20の続きには、第2のリストレットストランドのための留め環3を定めるキュービット(肘)部分22がある。この留め環3には、第1のピン7と第2のピン31があり、これらの両方とも、リストレットにおける異なる穴に係合して、クラスプに対してリストレットストランドを固定する第1及び第2のアンカー点を定め、したがって、クラスプに対して良好な整列状態を維持するように意図されている。
【0022】
また、第2の薄材2の自由端には、クラスプ100に関連づけられるように意図されたリストレットの有効長を調整するためのデバイスを担持することができる。
【0023】
図1に示しているように、第1及び第2の薄材1、2は、それらの対応する第1の端にて可動薄材3、4の対を用いて互いにヒンジ接続され、これらの可動薄材3、4は、第1のヒンジA1と第2のヒンジA2を介して第1及び第2の薄材1、2に接続される。
【0024】
好ましいことに、ヒンジA1、A2は、第1及び第2の薄材1、2の第1の端及び可動薄材3、4の第2の端にそれぞれ形成される止めによって角度的に限定され、これによって、2つの所定の着用位置、具体的には、小さな手首のための着用位置と大きな手首のための着用位置、を定める。
【0025】
ヒンジA1及びA2のそれぞれは、可動薄材3、4の対応する止め30a、30b、40a、40bと連係する第1及び第2の薄材1、2の止め10a、10b、21a、21bによって角度的に限定される。これらの止めは、可動薄材3、4、そして暗黙的にクラスプ、の第1及び第2の位置を定める。このクラスプにおいては、2つの可動薄材3、4が両方とも同じ位置を占める。
【0026】
したがって、可動薄材3、4は、クラスプが閉じているときに、小さな手首に適応する第1の位置と、大きな手首に適応する第2の位置を占めることができる。止めのおかげで、携行型時計が着用されているときに、ある位置から別の位置への切り替えが自然に行われる。
【0027】
多くの手首の形態に適応するクラスプを提供することができるようにするために、ヒンジA1、A2の角変位の振幅は、例えば、5°~35°の範囲内である。このような変位の振幅によって、着用者の手首の大きさに応じて着用者の快適性を最適化することが可能になる。変位が小さすぎたり大きすぎたりすると快適性に悪影響を及ぼす。
【0028】
図2及び3に示しているように、薄材1、2の第1の端及び薄材3、4の第2の端にはそれぞれ、ノッチ23、23'、31、41が形成されており、これによって、これらのノッチにおいて相互ロックすることによって連係する。第1及び第2の薄材1、2のノッチ23、23'は内側ノッチであり、可動薄材3、4のノッチ31、41は外側ノッチである。
【0029】
薄材1、2のノッチ23、23'の自由端は半円形であり、ノッチ23、23'の底部には平らな面がある。止め30a、30b、40a、40bを形成する可動薄材3、4のノッチ31、41の自由端は、食いつき部40cがあるまっすぐな形であり、そのノッチの底部には半円形の面がある。
【0030】
したがって、ノッチ23、23'の底部とノッチ31、41の自由端の間の連係が止めを形成し、食いつき部は、ヒンジA1、A2の角変位の振幅を定める。
【0031】
この説明から、本発明に係るクラスプが、クラスプとリストレットの曲がりを調整するために動くことができる第2の薄材3、4の対を備えることがわかる。このクラスプの構造と取り扱いは単純であり、ユーザーが必要に応じてクラスプを容易に調整することを可能にする。
【0032】
上記の説明は、例示(これに限定されない)によって特定の実施形態を説明するように意図されており、本発明は、ここで説明した特定の特徴、例えば、薄材に対して具体的に示し説明した形、又はクラスプのロックを確実にすることを可能にする薄材の連係のモード、の実装に限定されない。
【0033】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本開示の内容を自分のニーズに適応させ、特に計時器のための、クラスプを実装する際に、特に困難に遭遇しない。当業者であれば、例えば、図示し説明したものとは異なる構造を有する折りたたみバックルの構築のために本開示内容を適応することは、特に困難なことではない。
【符号の説明】
【0034】
1 第1の薄材
2 第2の薄材
3 第1の可動薄材
4 第2の可動薄材
10 柱部材
10a、10b、21a、21b、30a、30b、40a、40b 止め
23、23’、31、41 ノッチ
20 アーム
A1 第1のヒンジ
A2 第2のヒンジ