(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】塗装方法及び装飾板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 5/06 20060101AFI20231106BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20231106BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
B05D5/06 101Z
B05D3/12 B
B05D7/24 301F
B05D7/24 301G
(21)【出願番号】P 2022117633
(22)【出願日】2022-07-25
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】592134088
【氏名又は名称】佐藤興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 ▲廣▼正
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-158746(JP,A)
【文献】特開2017-226756(JP,A)
【文献】特開平07-040700(JP,A)
【文献】特開2001-327913(JP,A)
【文献】特公昭40-026914(JP,B1)
【文献】特公昭47-006905(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1・00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1塗料によって塗装面に筋状の木目模様を形成するステップと、
前記木目模様を前記塗装面に沿って擦ることによって、前記木目模様をぼかすステップと、
前記木目模様を形成するステップの前に、水を塗布するステップと、を備え、
前記第1塗料は、水性塗料である
ことを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
前記第1塗料とは異なる第2塗料によって前記塗装面にベース層を形成するステップと、
前記第1塗料とは異なる第3塗料によって前記ベース層の表面に筋状の複数の突部を形成するステップと、を備え、
前記木目模様を形成するステップは、前記複数の突部が形成されている状態で前記第1塗料を塗布することで、前記第1塗料によって前記複数の突部に沿った木目模様を形成するステップである
ことを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項3】
前記第2塗料及び前記第3塗料は、略同一色の塗料である
ことを特徴とする請求項
2記載の塗装方法。
【請求項4】
前記第3塗料によって前記ベース層の表面に重ねた重ね層を形成するステップを備え、
前記複数の突部を形成するステップは、前記第3塗料が筋状に残るように前記重ね層の前記第3塗料の一部を除去するステップである
ことを特徴とする請求項
2記載の塗装方法。
【請求項5】
前記重ね層を形成するステップの前に、前記ベース層の表面に水を塗布するステップを備え、
前記第3塗料は、水性塗料である
ことを特徴とする請求項
4記載の塗装方法。
【請求項6】
前記木目模様は、第1木目模様であり、
第4塗料によって前記塗装面に筋状の第2木目模様を形成するステップを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項7】
前記第1塗料は、透光性を有する半透明の塗料である
ことを特徴とする請求項
1記載の塗装方法。
【請求項8】
第1塗料によって装飾板の塗装面に筋状の木目模様を形成するステップと、
前記木目模様を前記塗装面に沿って擦ることによって、前記木目模様をぼかすステップと、
前記木目模様を形成するステップの前に、水を塗布するステップと、を備え、
前記第1塗料は、水性塗料である
ことを特徴とする装飾板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗装方法及び装飾板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材以外の材料を塗装することによって、木目模様を形成する塗布方法が知られている(特許文献1参照)。この塗布方法は、金属材料の表面に木目模様の基調色となる塗料を下地として塗装し、その上に基調色とは異なる色の塗料を刷毛で塗装して、金属材料に木目模様を形成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、塗料によって壁、床、装飾板等の物品に木目模様を形成する場合、本物らしい外観の木目模様を形成することは難しく、木目模様の外観上の本物らしさを向上させることができる塗装方法が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するものであって、従来よりも木目模様の外観上の本物らしさを向上させることができる塗装方法及び装飾板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る塗装方法は、第1塗料によって塗装面に筋状の木目模様を形成するステップと、木目模様を塗装面に沿って擦ることによって、木目模様をぼかすステップと、木目模様を形成するステップの前に、水を塗布するステップと、を備え、第1塗料は、水性塗料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、第1塗料によって形成した木目模様を塗装面に沿って擦ることによって木目模様をぼかすようにしたので、従来よりも木目模様の外観上の本物らしさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る塗装方法によって、塗装者が塗装面を塗装する様子を示す図。
【
図2】実施の形態1に係る塗装方法を示すフローチャート。
【
図3】実施の形態1に係る塗装方法によって、塗装面にベース塗料を塗布するステップを示す斜視図。
【
図4】実施の形態1に係る塗装方法によって、塗装面にベース塗料を塗布した状態を示す断面図。
【
図5】実施の形態1に係る塗装方法によって、ベース層の表面に突部を形成した状態を示す斜視図。
【
図6】実施の形態1に係る塗装方法によって、ベース層の表面に突部を形成した状態を示す
図5の断面図。
【
図7】実施の形態1に係る塗装方法によって、第1木目塗料及び第2木目塗料を塗布した状態を示す斜視図。
【
図8】実施の形態1に係る塗装方法によって、第1木目塗料及び第2木目塗料を塗布した状態を示す
図7の断面図。
【
図9】実施の形態1に係る塗装方法によって、第1木目模様及び第2木目模様をぼかした状態を示す斜視図。
【
図10】実施の形態1に係る塗装方法によって、第1木目模様及び第2木目模様をぼかした状態を示す
図9の断面図。
【
図11】実施の形態1に係る塗装方法によって、木目模様を擦る方向を示す平面図。
【
図12】実施の形態2に係る塗装方法を示すフローチャート。
【
図13】実施の形態2に係る塗装方法によって、第1突部及び第2突部を形成した状態を示す斜視図。
【
図14】実施の形態3に係る塗装方法を示すフローチャート。
【
図15】実施の形態3に係る塗装方法によって、木目模様を形成した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
まず、
図1乃至
図11を参照して、実施の形態1に係る塗装方法について説明する。
図1は、実施の形態1に係る塗装方法によって、塗装者が塗装面Sを塗装する様子を示す図である。実施の形態1に係る塗装方法は、壁面、床面、天井の表面、建築用の装飾板、物品の表面等、塗装を行う塗装面Sに、木材の断面に現れる筋状の木目を模した木目模様を形成するための塗装方法である。例えば、塗装者Hは、塗装ローラ1、刷毛、塗装用のスプレー等の塗装具を用いて、塗料を塗装面に付着させることで、塗装面に木目模様を形成する塗装を行う。
【0010】
図2は、実施の形態1に係る塗装方法を示すフローチャートである。まず、塗装者は、塗装面Sにベース塗料P1を均一に塗布する(ステップST11)。
図3は、実施の形態1に係る塗装方法によって、塗装面Sにベース塗料P1を塗布するステップを示す斜視図であり、
図4は、実施の形態1に係る塗装方法によって、塗装面Sにベース塗料P1を塗布した状態を示す断面図である。このステップにおいて、塗装者は、例えば、回転自在に軸支された回転筒と、回転筒を軸支するグリップと、を有する塗装ローラ1によって、塗装面Sに塗布されるベース塗料P1の厚さが均一になるように、塗装面Sにベース塗料P1を塗布して、塗装面Sの表面にベース層を形成している。
【0011】
塗装する前の状態において、塗装面Sに汚れ、色ムラ、細かい凹凸等、不均一な部分があると、木目模様を形成した際に、木目模様の見栄えが低下する場合がある。このため、ステップST11において、塗装者は、塗装面Sにベース塗料P1を均一に塗布することによって、塗装面Sの外観及び粗さが均一になるようにしている。また、例えば、ベース塗料P1は、明度の高くかつ彩度が低い色の水性塗料である。具体的には、ベース塗料P1は、白色で、かつ透光性が低い不透明の水性塗料である。なお、ベース塗料P1は、実施の形態1において、第2塗料を構成する。
【0012】
ステップST11を行うと、塗装者は、ベース塗料P1を乾燥させる(ステップST12)。このステップにおいて、塗装者は、ベース塗料P1を乾燥させることによって、ベース層を形成しているベース塗料P1を固化させて、以降のステップにおいてベース塗料P1が塗装面Sに沿って移動しないように、塗装面Sに定着させている。例えば、このステップにおいて、塗装者は、ブロア等の送風機を使用してベース塗料P1を乾燥させてもよいし、ベース塗料P1が乾燥するまで放置してもよい。なお、実施の形態1において、乾燥とは、塗料から全ての水分を除去することのみを意味せず、塗料の移動が十分に抑制される程度に塗料を固化させるものであればよい。
【0013】
ステップST12を行うと、塗装者は、ベース層の表面に均一に水を散布する(ステップST13)。例えば、塗装者は、霧吹きまたはスプレー等を使用して、ベース層の表面に均一に水を散布(塗布)する。このステップにおいて、塗装者は、ベース層の表面に水を塗布することによって、ベース層の表面と、ベース層の表面に重ねて塗布した塗料と、の間に水の膜が形成されやすい状態にしている。なお、このステップにおいてベース層の表面に塗布するものは、純粋な水に限定されない。このステップにおいてベース層の表面に塗布するものは、水分を多く含む液体であればよく、例えば、塗料及び不純物等、水以外の物質を含むものであってもよい。
【0014】
ステップST13を行うと、塗装者は、突部形成塗料P2を均一に塗布する(ステップST14)。このステップにおいて、塗装者は、例えば、塗装ローラ1によって、ベース層の表面に塗布される突部形成塗料P2の厚さが均一になるように、ベース層の表面に突部形成塗料P2を塗布して、ベース層の表面に重ねた重ね層を形成している。例えば、突部形成塗料P2は、ベース塗料P1と略同一色の、明度の高い色の水性塗料である。具体的には、ベース塗料P1は、白色で、かつ透光性が低い不透明の水性塗料である。なお、突部形成塗料P2は、ベース塗料P1と完全に同一の塗料である必要はなく、例えば、製品として同一色となるように生産された塗料であればよい。また、突部形成塗料P2は、ベース塗料P1と色以外の光沢、質感等が異なっていてもよい。また、突部形成塗料P2は、ベース塗料P1と同系色の塗料であってもよいし、全く異なる色の塗料であってもよい。なお、突部形成塗料P2は、実施の形態1において、第3塗料を構成する。
【0015】
また、このステップにおいて、塗装者は、ステップST13で塗布した水が蒸発する前に、ベース層の表面に突部形成塗料P2によって厚さが均一な重ね層を形成する。これにより、ベース層と重ね層との間に水が介在し、重ね層を形成している突部形成塗料P2が、ベース層に対して移動しやすい状態にしている。
【0016】
ステップST14を行うと、塗装者は、突部形成具によって、筋状の複数の突部を形成する(ステップST15)。
図5は、実施の形態1に係る塗装方法によって、ベース層の表面に突部を形成した状態を示す斜視図であり、
図6は、実施の形態1に係る塗装方法によって、ベース層の表面に突部を形成した状態を示す
図5の断面図である。このステップにおいて、塗装者は、突部形成具を使用して、突部形成塗料P2が筋状に残るように、重ね層を形成する突部形成塗料P2の一部を除去している。これにより、塗装面Sには、塗装面Sと直交する方向へベース層から突出し、互いに交差しない複数の筋状の突部が形成される。
【0017】
例えば、突部形成具は、直線状に並ぶ複数の歯を有して、突部形成塗料P2を掻き取る櫛状の道具であってもよいし、へら状の道具であってもよい。また、例えば、突部形成具は、複数の同心円の溝を有して、重ね層に押付けた状態で押付け力及び重ね層に対する角度を変えながら塗装面Sに沿って移動させることで突部形成塗料P2が自然の木目のような筋状の突部として残るように、突部形成塗料P2を掻き取るウッドグレイナーであってもよいし、転がしながら塗装面Sに沿って移動させることで、突部形成塗料P2が筋状に残るようにパターンを転写するパターンローラであってもよい。例えば、ステップST15まで行った状態で、ベース塗料P1と突部形成塗料P2とが同一色の塗料である場合、塗装面Sは、単一色で塗装されている状態、かつ木目を模した複数の筋状の突部が形成されている状態になっている。
【0018】
なお、このステップにおいて、塗装者は、ステップST13で塗布した水が蒸発する前、かつステップST14で形成した重ね層の突部形成塗料P2が乾燥する前に、突部を形成する。これにより、塗装者は、軽い力で突部形成塗料P2の一部を除去することを可能にしている。
【0019】
ステップST15を行うと、塗装者は、突部形成塗料P2を乾燥させる(ステップST16)。このステップにおいて、塗装者は、ベース層の表面の水を蒸発させると共に突部形成塗料P2を乾燥させることによって、突部を形成している突部形成塗料P2を固化させて、以降のステップにおいて突部形成塗料P2が塗装面Sに沿って移動しないように、ベース層の表面に定着させている。突部形成塗料P2を乾燥させる方法は、ステップST12と同様であるため、説明を省略する。
【0020】
ステップST16を行うと、塗装者は、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を塗布する(ステップST17)。
図7は、実施の形態1に係る塗装方法によって、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を塗布した状態を示す斜視図であり、
図8は、実施の形態1に係る塗装方法によって、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を塗布した状態を示す
図7の断面図である。このステップは、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2のいずれとも異なる第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4によって、塗装面Sに木目模様を形成するステップである。なお、第1木目塗料P3は、実施の形態1において、第1塗料を構成し、第2木目塗料P4は、実施の形態1において、第4塗料を構成する。
【0021】
上述したように、ベース層の表面には、突部形成塗料P2によって複数の筋状の突部が形成されている。この状態で、刷毛または塗装ローラ等によって、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2のいずれとも異なる第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4がベース層及び突部の上に塗布されると、突部の表面よりもベース層の表面の方が、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4が付着しやすい。このため、ステップST17において、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4が塗布されると、突部の表面における第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の厚さよりも、ベース層の表面における第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の厚さが大きくなる。
【0022】
言い換えると、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の厚さが第1厚さの部分である突部の表面と、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の厚さが第1厚さよりも大きい第2厚さの部分であるベース層の表面と、がそれぞれ筋状に形成された状態になる。これにより、突部の表面よりもベース層の表面の方が、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の色が濃い状態になる。このように、施の形態1に係る塗装方法は、ベース層の表面に複数の筋状の突部が形成されている状態で、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を塗布することによって、複数の突部に沿った木目模様が形成される。
【0023】
例えば、第1木目塗料P3は、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2よりも明度が低い色の水性塗料である。また、例えば、第1木目塗料P3は、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2よりも明度が低くかつ彩度が高い色の水性塗料である。具体的には、第1木目塗料P3は、赤、橙、黄、黄緑、緑、薄青、濃青、紫、ピンク等、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2よりも明度が低くかつ彩度が高い色の水性塗料を、水で希釈した半透明の塗料である。
【0024】
同様に、例えば、第2木目塗料P4は、第1木目塗料P3とは異なる塗料であり、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2よりも明度が低い色の水性塗料である。また、例えば、第2木目塗料P4は、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2よりも明度が低くかつ彩度が高い色の水性塗料である。具体的には、第2木目塗料P4は、赤、橙、黄、黄緑、緑、薄青、濃青、紫、ピンク等、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2よりも明度が低くかつ彩度が高い色で、第1木目塗料P3とは異なる色の水性塗料を、水で希釈した半透明の塗料である。
【0025】
図7及び
図8に示すように、例えば、ステップST17において、塗装者は、第1木目塗料P3と第2木目塗料P4とを互いに異なる領域に塗布する。具体的には、第1木目塗料P3と第2木目塗料P4との塗布される領域が互いに異なる領域となるように、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を、木目模様の少なくとも一部の延在方向に沿って幅広の帯状に塗布する。これにより、塗装面Sには、第1木目塗料P3によって形成された木目模様である第1木目模様と、第1木目塗料P3によって形成された木目模様である第1木目模様と、が表される。なお、このステップにおいて、第1木目塗料P3が塗布される領域を第1領域、第2木目塗料P4が塗布される領域を第2領域とした場合、第1領域と第2領域は一部が重なっていてもよいし、第1領域及び第2領域の一方が他方に含まれる領域であってもよい。
【0026】
また、ステップST17まで行った状態で、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4によって形成された木目模様は、塗料の厚さが大きい部分と小さい部分との幅方向(
図7の矢印方向)における境界が明確になりやすい。言い換えると、ステップST17まで行った状態で、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4によって形成された木目模様は、幅方向における輪郭が明確になりやすい。一般に、塗装によって筋状の木目模様を形成する場合、木目模様の幅方向における輪郭が明確であると、当該塗装で形成した木目模様は、自然の木目との外観の差が大きく、外観上の本物らしさが低い。
【0027】
このため、実施の形態1に係る塗装方法は、ステップST17で塗布した第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4が乾燥する前に、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4によって形成された木目模様を擦ることによって当該木目模様をぼかし、木目模様の外観上の本物らしさを向上させるようにしている。
【0028】
ステップST17を行うと、塗装者は、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4によって形成された木目模様を擦ることによってぼかす(ステップST18)。このステップにおいて、塗装者は、例えば、塗料及び水が付着していない刷毛、または付着している塗料及び水が十分に少ない刷毛を用意し、用意した刷毛を用いて、塗装面Sに沿って木目模様を擦る。これにより、塗装者は、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の一部を刷毛によって除去すると共に、木目模様の幅方向における輪郭付近の塗料の厚さを小さくすることで、幅方向における輪郭をぼかしている。
【0029】
図9は、実施の形態1に係る塗装方法によって、第1木目模様及び第2木目模様をぼかした状態を示す斜視図であり、
図10は、実施の形態1に係る塗装方法によって、第1木目模様及び第2木目模様をぼかした状態を示す
図9の断面図である。ステップST18によって、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の一部が除去され、特定の突部から木目模様の幅方向における距離が大きくなるにつれて、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の厚さが小さくなっており、木目模様の幅方向における輪郭がぼけてみえる。
【0030】
図11は、実施の形態1に係る塗装方法によって、木目模様を擦る方向を示す平面図である。例えば、ステップST18において、塗装者は、
図11に示す矢印方向のように、木目模様と交差する方向に木目模様を擦ることによって、木目模様をぼかす。言い換えると、ステップST18において、塗装者は、木目模様の筋状の部分が延在する方向と交差する方向に木目模様を擦ることによって、木目模様をぼかす。例えば、ステップST18において、塗装者は、互いに交差する複数の方向に木目模様を擦ることによって、木目模様をぼかす。また、例えば、ステップST18において、塗装者は、特定の点を中心とする放射方向に木目模様を擦ることによって、木目模様をぼかす。このように木目模様を擦ることによって、木目模様の幅方向の輪郭をぼかしやすくなり、木目模様の外観上の本物らしさを向上させることを可能にしている。
【0031】
ステップST18を行うと、塗装者は、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を乾燥させる(ステップST19)。このステップにおいて、塗装者は、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を乾燥させることによって、木目模様を形成している第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を固化させて、ベース層の表面に定着させている。第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を乾燥させる方法は、ステップST12と同様であるため、説明を省略する。
【0032】
以上、実施の形態1に係る塗装方法は、第1木目塗料P3によって塗装面Sに筋状の木目模様を形成するステップと、木目模様を塗装面Sに沿って擦ることによって、木目模様をぼかすステップと、を備えている。このように、実施の形態1に係る塗装方法は、第1木目塗料P3によって形成した木目模様を塗装面に沿って刷毛等を用いて擦ることによって、筋状の木目模様の幅方向の輪郭をぼかすようにしたので、従来よりも木目模様の外観上の本物らしさを向上させることができる。
【0033】
また、実施の形態1に係る塗装方法において、木目模様をぼかすステップは、塗装面Sに沿って木目模様と交差する方向に木目模様を擦るステップである。これにより、実施の形態1に係る塗装方法においては、筋状の木目模様の幅方向における輪郭をぼかしやすくなり、木目模様の外観上の本物らしさを向上させることができる。
【0034】
また、実施の形態1に係る塗装方法は、第1木目塗料P3とは異なるベース塗料P1によって塗装面Sにベース層を形成するステップと、第1木目塗料とは異なる突部形成塗料P2によってベース層の表面に筋状の複数の突部を形成するステップと、を備え、木目模様を形成するステップは、複数の突部が形成されている状態で第1木目塗料を塗布することで、第1木目塗料によって複数の突部に沿った木目模様を形成するステップである。このように、実施の形態1に係る塗装方法は、筋状の複数の突部に沿った木目模様を形成するので、木目模様を形成する塗料を塗布する際に高度な技術を要することなく、容易に木目模様を形成することが可能になる。
【0035】
また、実施の形態1に係る塗装方法において、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2は、略同一色の塗料であり、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2とは異なる第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4によって木目模様を形成する。これにより、実施の形態1に係る塗装方法は、例えば、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4が乾燥する前に第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を水で落としてから、再度第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4によって木目模様を形成することで、同一の突部に沿った木目模様の形成を複数回やり直すことが可能になる。
【0036】
また、実施の形態1に係る塗装方法は、突部形成塗料P2によってベース層の表面に重ねた重ね層を形成するステップを備え、複数の突部を形成するステップは、突部形成塗料P2が筋状に残るように、重ね層の突部形成塗料P2の一部を除去するステップである。これにより、実施の形態1に係る塗装方法は、例えば、突部形成具を用いて重ね層の突部形成塗料P2の一部を除去することで、刷毛等を用いて手書きで突部を形成するよりも容易に突部を形成することが可能になる。
【0037】
また、実施の形態1に係る塗装方法は、重ね層を形成するステップの前に、ベース層の表面に水を塗布するステップを備え、突部形成塗料P2は、水性塗料である。これにより、実施の形態1に係る塗装方法は、ベース層と重ね層との間の水によって突部形成塗料P2が移動しやすくなるので、重ね層の突部形成塗料P2の一部を除去しやすくなり、複数の突部を形成しやすくなる。また、実施の形態1に係る塗装方法は、突部形成塗料P2が水性塗料であることにより、油性塗料を使用する場合と比較して乾燥時間の短縮が可能になる。
【0038】
なお、実施の形態1に係る塗装方法において、ベース塗料P1を塗装面Sの全体に均一に塗布する方法を例に説明したが、これに限定されない。ベース塗料P1は、塗装面Sの一部のみに塗布されてもよいし、均一とならないように塗布されてもよいし、必要がない場合には塗布されなくてもよい。また、塗装方法は、複数のベース塗料によって、複数層のベース層が形成される方法であってもよい。
【0039】
また、実施の形態1に係る塗装方法において、突部形成具を用いて重ね層の突部形成塗料P2の一部を除去することで複数の突部を形成する方法を例に説明したが、これに限定されない。塗装方法は、塗装面に筋状の複数の突部が形成される方法であればよく、例えば、突部形成塗料P2によってベース層の表面に刷毛等を用いて手書きで突部を形成してもよいし、印刷、転写等、他の方法によって突部を形成してもよい。
【0040】
また、実施の形態1に係る塗装方法において、刷毛または塗装ローラ等を用いて第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を帯状に塗布することによって、木目模様を形成する方法を例に説明したが、これに限定されない。塗装方法は、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を塗布することによって、複数の突部に沿った木目模様を形成する方法であればよく、例えば、刷毛等を用いて、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を複数の突部に沿って細い筋状に塗布することによって、複数の突部に沿った木目模様が形成する方法であってもよい。また、塗装方法は、木目模様を形成する塗料として、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の2種類の塗料を使用する方法に限らず、1種類の塗料のみを使用する方法であってもよいし、3種類以上の塗料を使用する方法であってもよい。
【0041】
また、実施の形態1に係る塗装方法において、ベース塗料P1及び突部形成塗料P2に、いずれも白色の塗料を用いて、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4に、いずれもベース塗料P1及び突部形成塗料P2よりも彩度が高く明度が低い塗料を用いる方法を例に説明したが、これに限定されない。塗装方法は、木目模様とベース層及び突部との外観上の差異が十分に大きくなる塗料を用いた方法であればよく、例えば、ベース塗料及び突部形成塗料に、いずれも黒色、茶色、灰色等の塗料を用いて、第1木目塗料及び第2木目塗料に、いずれもベース塗料及び突部形成塗料よりも彩度及び明度が高い塗料を用いる方法であってもよい。
【0042】
また、実施の形態1に係る塗装方法において、刷毛を用いて木目模様を擦ることによって当該木目模様をぼかす方法を例に説明したが、これに限定されない。塗装方法は、木目模様を擦ることによって木目模様をぼかすことが可能であればよく、木目模様を擦る道具としては、刷毛以外の多様な道具が考えられる。
【0043】
実施の形態2.
次に、
図12及び
図13を参照して、実施の形態2に係る塗装方法について説明する。実施の形態2に係る塗装方法は、実施の形態1に係る塗装方法と比較して、ステップST19以降のステップが異なるが、他のステップについては同様であり、実施の形態1と同様のステップについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
図12は、実施の形態2に係る塗装方法を示すフローチャートである。実施の形態2に係る塗装方法は、実施の形態1に係る塗装方法のステップST11~ステップST19までを行った後、新たな木目模様を重ねて形成する塗装方法である。具体的には、実施の形態2に係る塗装方法は、ステップST19において、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の乾燥を行うと、塗装者は、ベース塗料P1、突部形成塗料P2、第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4の上から塗装面に水を散布する(ステップST21)。
【0045】
ステップST21を行うと、塗装者は、突部形成塗料P5を均一に塗布し(ステップST22)、突部形成具によって新たに複数の突部を形成する(ステップST23)。ステップST23において、塗装者は、例えば、ステップST15で形成した複数の突部とは異なる位置に新たに複数の突部を形成する。ステップST15で形成した突部を第1突部、ステップST23で形成した突部を第2突部とすると、
図13は、実施の形態2に係る塗装方法によって、第1突部及び第2突部を形成した状態を示す斜視図である。このステップにおいて、塗装者は、例えば、突部形成塗料P2によって形成されている第1突部と、突部形成塗料P5によって形成されている第2突部と、が互いに交差するように、第2突部を形成する。
【0046】
ステップST23を行うと、塗装者は、突部形成塗料P5を乾燥させ(ステップST24)、再び第1木目塗料P3及び第2木目塗料P4を塗布して木目模様を形成し(ステップST25)、新たに形成した木目模様を刷毛で擦ることによって当該木目模様をぼかす(ステップST26)。ステップST17において形成された木目模様を第1木目模様、ステップST25において形成された木目模様を第2木目模様とすると、第1突部と第2突部とが互いに交差するように形成されている場合、第2木目模様は、第1木目模様に対して交差するように形成される。これにより、実施の形態2に係る塗装方法は、複数の木目模様が重なった模様を形成することで、奥行き感のある塗装を可能としている。なお、突部形成塗料P5は、ステップST17及びステップST18で形成された木目模様が見えやすいように、半透明の塗料であってもよい。また、ステップST21~ステップST26の詳細は、ステップST13~ステップST18と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
実施の形態3.
次に、
図14及び
図15を参照して、実施の形態3に係る塗装方法について説明する。実施の形態3に係る塗装方法は、実施の形態1に係る塗装方法と比較して、ステップST13以降のステップが異なるが、他のステップについては同様であり、実施の形態1と同様のステップについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図14は、実施の形態3に係る塗装方法を示すフローチャートである。実施の形態3に係る塗装方法において、ステップST13を行うと、塗装者は、複数の塗料によって塗装面に木目模様を形成する(ステップST31)。
図15は、実施の形態3に係る塗装方法によって、木目模様を形成した状態を示す斜視図である。
【0049】
例えば、ステップST31において、塗装者は、まず、第3木目塗料P21によって、刷毛を用いて筋状の木目模様を描くことで、第1木目模様を形成する。次に、塗装者は、第4木目塗料P22によって、刷毛を用いて筋状の木目模様を描くことで、第2木目模様を形成する。次に、塗装者は、第5木目塗料P23によって、刷毛を用いて筋状の木目模様を描くことで、第3木目模様を形成する。また、例えば、ステップST31において、塗装者は、第1木目模様、第2木目模様及び第3木目模様を、互いに交差しないように形成する。
【0050】
なお、第3木目塗料P21、第4木目塗料P22及び第5木目塗料P23は、互いに同じ塗料であってもよいし、互いに異なる色の塗料であってもよいが、ベース塗料P1とは異なる色の塗料であることが望ましい。例えば、第3木目塗料P21、第4木目塗料P22及び第5木目塗料P23は、ベース塗料P1よりも明度が低い色の水性塗料である。具体的には、第3木目塗料P21、第4木目塗料P22及び第5木目塗料P23は、赤、橙、黄、黄緑、緑、薄青、濃青、紫、ピンク等、ベース塗料P1よりも明度が低くかつ彩度が高い色の水性塗料を、水で希釈した半透明の塗料である。なお、第3木目塗料P21は、実施の形態3において、第1塗料を構成し、第4木目塗料P22は、実施の形態3において、第4塗料を構成する。
【0051】
ステップST31を行うと、塗装者は、第3木目塗料P21、第4木目塗料P22及び第5木目塗料P23によって形成された木目模様を擦ることによってぼかす(ステップST32)。実施の形態3に係る塗装方法において、木目模様を形成するステップST31の前に、水を塗布するステップST13を備えているため、木目模様を形成する第3木目塗料P21、第4木目塗料P22及び第5木目塗料P23が水性塗料である場合、これら塗料とベース層との間の水によってこれら塗料が移動しやすい状態になるので、刷毛等を用いて木目模様をぼかしやすくなっている。なお、ステップST32の詳細は、ステップST18と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組合せ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 :塗装ローラ
H :塗装者
P1 :ベース塗料
P2 :突部形成塗料
P21 :第3木目塗料
P22 :第4木目塗料
P23 :第5木目塗料
P3 :第1木目塗料
P4 :第2木目塗料
P5 :突部形成塗料
S :塗装面
【要約】
【課題】従来よりも木目模様の外観上の本物らしさを向上させることができる塗装方法及び装飾板の製造方法を提供する。
【解決手段】塗装方法は、第1塗料によって塗装面Sに筋状の木目模様を形成するステップと、木目模様を塗装面Sに沿って擦ることによって、木目模様をぼかすステップと、を備えた。
【選択図】
図1