(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】トライボロジー被覆があるマイクロメカニカルな機能的アセンブリー
(51)【国際特許分類】
G04B 15/14 20060101AFI20231106BHJP
G04B 13/02 20060101ALI20231106BHJP
G04B 31/08 20060101ALI20231106BHJP
G04B 1/10 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
G04B15/14 A
G04B15/14 B
G04B13/02 C
G04B31/08 A
G04B1/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022129167
(22)【出願日】2022-08-15
【審査請求日】2022-08-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・フォール
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・マナステルスキ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-520974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
C30B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材(8)によって形成される少なくとも1つの第1の部分(2)を含むマイクロメカニカルな機能的アセンブリー(1)であって、
前記第1の基材(8)上に、第2の機能面(3a)と摩擦接触するように意図されている第1の機能面(2a)があり、
前記第2の機能面(
3a)は、前記第1の部分(2)、又は第2の基材によって形成される少なくとも1つの第2の部分(3)のいずれかに属し、
前記第2の基材上に、前記第2の機能面(3a)があり、
前記第2の部分(3)は、前記第1の部分(2)と前記機能的アセンブリー(1)を構成し、
前記第1の機能面(2a)と前記第2の機能面(3a)がある前記機能的アセンブリー(1)は、第1の層(9a)によって形成され、
この第1の層(9a)は、前記第1の基材(8)と前記第2の基材(8)と一体的となっているか、又は前記第1の基材(8)と前記第2の基材(8)とは別個のものであるかのいずれかであり、
前記第1の層(9a)は、超ナノ結晶、ナノ結晶又は微結晶のダイヤモンドを含み、
前記第1の層(9a)上に、S及びF原子を含む第2の層(9b)があり、
前記第2の層(9b)は、
2~50nmの範囲内の平均厚みを有する
ことを特徴とする機能的アセンブリー(1)。
【請求項2】
前記第2の層(9b)は、SF
6を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の機能的アセンブリー(1)。
【請求項3】
前記第2の層(9b)は、ロッドによって形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の機能的アセンブリー(1)。
【請求項4】
前記第1の部分(2)は、パレット(4)であり、
前記第2の部分(3)は、エスケープ車(6)である
ことを特徴とする請求項1に記載の機能的アセンブリー(1)。
【請求項5】
前記第1の部分(2)は、可動部品のシャフトであり、
前記第2の部分(3)は、ベアリングである
ことを特徴とする請求項1に記載の機能的アセンブリー(1)。
【請求項6】
前記第1の部分(2)と前記第2の部分(3)は、歯車の歯である
ことを特徴とする請求項1に記載の機能的アセンブリー(1)。
【請求項7】
前記第2の機能面は、前記第1の部分(2)に属し、
前記第1の部分(2)は、ブレードによって形成されるバレルばねであり、
前記ブレードの前面が、前記第1の機能面を形成し、
前記ブレードの背面が、前記第2の機能面を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の機能的アセンブリー(1)。
【請求項8】
前記第1の層(9a)が前記第1の基材(8)と前記第2の基材(8)とは異なる場合に、前記第1の基材(8)と前記第2の基材(8)は、セラミックス、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び鋼から選択される材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載の機能的アセンブリー(1)。
【請求項9】
超ナノ結晶、ナノ結晶又は微結晶のダイヤモンドを官能化する方法であって、
a)前記超ナノ結晶、ナノ結晶又は微結晶のダイヤモンドの第1の層(9a)で被覆された少なくとも1つの第1の基材(8)、又は超ナノ結晶、ナノ結晶又は微結晶のダイヤモンドによって作られた少なくとも1つの第1の基材(8)、を用意する用意ステップと、及び
b)反応器(11)と電極(14)がある反応性イオンエッチング装置(10)において前記用意ステップa)の第1の基材(8)を官能化するステップとを備え、
この官能化が、反応性ガス(12)としてSとFを含む化合物を用いて、40~60Wの範囲内の高周波パワーで行われ、
前記電極(14)の間の電圧が、
130~170Vの範囲内である
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記化合物は、SF
6である
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器(11)内の圧力は、3~15×10
6N/m
2
(30~150バール)の範囲内である
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器(11)内の反応性ガス(12)の流量は、
3~20sccmの範囲内である
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記反応器(11)内の前記第1の基材(8)の官能化時間は、
20~120分の範囲内である
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記反応性イオンエッチング装置(10)において、容量性プラズマ結合を行う
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トライボロジー(摩擦)被覆を必要とする摩擦接触する面がある少なくとも1つの部分を含むマイクロメカニカルな機能的アセンブリーに関する。このマイクロメカニカルな機能的アセンブリーは、特に、エスケープ車やアンカーのパレットのような、互いに機械的に連係するマイクロメカニカルな計時器用部品の対に関する。
【背景技術】
【0002】
化学蒸着によってダイヤモンド(CVDダイヤモンド)を製造する技術が最初に開発されたときに、ダイヤモンド固有の硬さのために、トライボロジー的に大きな期待が寄せられた。2つのダイヤモンド面の間を乾燥摩擦させることは、接触する計時器用部品どうしを接着してしまうために、トライボロジー的に有望ではない。これは、ダイヤモンド対ダイヤモンドの対の2つのパートナー材料の炭素原子(C-C)の間に結合が形成されることに起因している。この接着の影響を最小限に抑えるには、ダイヤモンド対ダイヤモンドの材料の対は、相対湿度(%RH)が少なくとも50%である環境に存在する必要がある。この50%RHのしきい値のおかげで、接触面に水(H2O)の微小液滴を供給することができる。これによって、ある面の別の面に対する接線方向の変位力FTが減少する。したがって、このような微小液滴は、接触する計時器用部品の相対的な運動を促進させる局所的な潤滑剤として機能する。前記しきい値を下回る場合、接着の現象が悪化し、短い負荷時間で接触が不安定になる。
【0003】
したがって、動的な接触条件(低い垂直方向の力と高い接線方向の力)の下で、
図1に示しているように、ダイアモンドとダイアモンドの対のグローバル摩擦係数CoFは、0.2より低くなることがある。残念ながら、このような環境条件では、5分間を超えた試験においては材料の対のトライボロジー的安定性が確実とはならない。実際に、この試験において3.5分から摩擦が不安定になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況で、本発明が解決しようとする課題は、長期間にわたって、潤滑剤なしで安定したトライボロジーふるまいを確実にしつつ、このダイヤモンド/ダイヤモンド対をマイクロメカニカルな機能的アセンブリーにおいて用いることに関連している。
【0005】
本発明の主題は、ダイヤモンド層のトライボロジー的性質を変えることによって、前記課題を解決することである。実際に、上で説明したように、水素、酸素又は湿度の雰囲気は、長期間使用するときに維持することが難しい。本発明の主題は、前記環境が発生させる原子的なOH又はHの不動態化結合を他の分子で置き換えることである。本発明にしたがって、ダイヤモンド層を官能化することによって、このようなトライボロジー的性質を変えるための極端な面改質を達成することができる。特に、本発明にしたがって、ダイヤモンド層が硫黄とフッ素の化合物で官能化される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、第2の機能面と摩擦接触するように意図されている第1の機能面がある少なくとも1つの第1の部分を含むマイクロメカニカルな機能的アセンブリーに関する。前記第2の機能面は、前記第1の部分、又は前記第1の部分と機能的アセンブリーを構成する少なくとも1つの第2の部分のいずれかに属する。前記機能的アセンブリーにおいて、前記第1の機能面及び前記第2の機能面は、超ナノ結晶、ナノ結晶又は微結晶のダイヤモンドを含む第1の層によって形成され、前記第1の層は、S原子とF原子を含む第2の層で被覆されている。前記第1の層は、前記第1及び第2の部分を構成している基材と同じ材料によって、又は前記基材とは異なる材料によって、作ることができることがわかる。
【0007】
試験によって、このような機能面のトライボロジー的ふるまいが改善することが観察された。この改善は、(C-C)結合の形成を防ぐ役割を果たすために相対湿度が十分高くなくなっても(C-C)結合の形成を防ぐようなSに起因していると考えられる。したがって、少なくとも標準的な基準となるものと同等の性能で、パレット/エスケープ車の接触を潤滑せずに、スイス式アンカーエスケープのような運動する計時器用システムの機能を提供することが可能となる。
【0008】
このようなトライボロジー的ふるまいは、接触している2つの機能面が同じ組成のトライボロジー層で被覆されている場合に特に改善する。
【0009】
本発明は、さらに、反応性イオンエッチングによってダイヤモンドを官能化する方法に関する。反応性イオンエッチングは、一般的に、ケイ素上におけるディープエッチングに用いられる。発明者らによって、典型的には30~70Wの範囲内である、非常に低いパワーの反応性イオンエッチング装置を用いることによって、小さな寸法構成の計時器用部品のような部分上でSとFの化合物を合成することができることがわかった。
【0010】
添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことで、目的、利点及び機能が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】相対湿度30%の場合の、従来技術による無潤滑の微結晶のダイヤモンド/微結晶のダイヤモンドの対についての、時間の関数としてのグローバル摩擦係数(CoF(グローバル))の曲線を示している。
【
図2】本発明に係る機能的アセンブリーの2つの部分の部分を概略的に示している断面図である。
【
図3】2つの部分、すなわち、本発明にしたがって官能化された接触面があるエスケープ車及びアンカーパレット、を含む機能的アセンブリーの部分的な図である。
【
図4】ロッド構造であるSとFの第2の層の形態の電子顕微鏡画像を示している。
【
図5】
図5a及び5bはそれぞれ、2つの部分を含む機能的アセンブリーについての、25mの距離におけるトライボロジー的結果を示している。
図5aにおいて、本発明の範囲外である比較のためのものであり、一方の部分は、機能面が微結晶のダイヤモンド(MCD)で被覆され、他方の部分は、SF
6官能化された微結晶のダイヤモンドで被覆されている。
図5bにおいて、本発明にしたがって、2つの部分は、機能面がSF
6官能化された微結晶のダイヤモンドで被覆されている。
【
図6】2500mのより長い距離にわたっての
図5bの対に対するトライボロジー的結果を示している。
【
図7】
図7a及び7bはそれぞれ、基準エスケープ車/アンカーの対、及びSF
6官能化された微結晶のダイヤモンド層がある本発明に係るエスケープ車/アンカーの対についてのバランス車の振幅を示している。
【
図8】ダイヤモンドの官能化に用いられる装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、機能面又は接触面と呼ばれる1つ又は複数の面にて摩擦が発生する少なくとも1つの部分を含む機能的アセンブリーに関する。本発明に係る機能的アセンブリーは、摩擦接触するように意図されている2つの機能面がある単一の部分を含むことができる。例えば、計時器の分野において、この機能的アセンブリーは、ブレードによって形成されるバレルばねによって構成していて、このバレルばねの一方の面がこのバレルばねの他方の面と接触するように意図されていることができる。代わりに、機能的アセンブリーは、少なくとも2つの部分を含み、その各部分にはそれぞれ、他方の部分の機能面との摩擦が発生するように意図されている機能面があることができる。例えば、計時器の分野において、機能的アセンブリー1には、
図3に示しているように、アンカー5のパレット4である第1の部分2と、エスケープ車6である第2の部分3があることができる。より正確には、パレット4には、安静面Aとインパルス面Bがあり、これらの安静面Aとインパルス面Bは、エスケープ車6の歯7の安静面Cとインパルス面Dと連係する。これらの面A、B、C、Dは、大きな応力が与えられる機能面であり、高レベルの摩擦及び/又は接触の対象となり、これには摩擦を低減するために本発明に係るトライボロジー層を必要とし得る。別の時計のアプリケーションにおいて、第1の部分は可動部品のシャフト、第2の部分はベアリングであることができる。この分野の別のアプリケーションによると、第1及び第2の部分は、歯車の歯であることができる。
【0013】
図2に示しているように、機能的アセンブリー1は、基材8によって形成される第1の部分2と第2の部分3を含み、これらの第1の部分2と第2の部分3の機能面2a、3a上に少なくともトライボロジー層9がある。この層9は、UNCD(超ナノ結晶のダイヤモンド:Ultrananocrystalline Diamond)、NCD(ナノ結晶のダイヤモンド:Nanocrystalline Diamond)又はMCD(微結晶のダイヤモンド:Microcrystalline Diamond)であることができるダイヤモンドの第1の層9aによって形成される。本発明によると、この第1の層9aは、第1の層9a上に第2の層9bを形成する、硫黄化合物、具体的にはSとF、で官能化される。好ましいことに、第1の層9aは、SF
6で官能化される。SF
2やSF
4のような他のガスも可能であるが、これらは、より危険であり、用途が限定される。一般的には、ダイヤモンド層の面にある官能化されたSとFは、
図4に示しているようにロッドの形態である。SとFの第2の層は、概して一定ではない厚みを有し、ナノメーター的な寸法構成であり、典型的には、平均厚みが、2~50nm、具体的には5~10nm、の範囲内である。SとFの第2の層を視覚化し化学的に分析するための適切な技術としては、例えば、X線光電子分光法(XPS)や飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)がある。なお、この層は非常に薄く、存在する化合物を精密に特定することが難しい場合がある。以下、SとFを含む層に基づいて説明する。
【0014】
本発明によると、接触が意図されている面はそれぞれ、SとFによって官能化されたダイヤモンド層で被覆される。ダイヤモンドの第1の層9a及びSとFの第2の層9bを含む層9は、800nm~1200nm、好ましくは900~1200nm、の範囲内の平均厚みを有し、このダイヤモンドは、MCD、NCD、又はUNCDのダイヤモンドである。
【0015】
例えば、前記基材は、セラミックス、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び鋼を含む材料の群から選択することができる。また、前記基材と前記ダイヤモンド層が単一の固体材料を形成していることもできる。好ましい実施形態において、前記基材は、ケイ素であり、微結晶のダイヤモンド層がSとFで官能化される。
【0016】
ダイヤモンド層を官能化する方法は、以下の通りである。事前に、基材が固体ダイヤモンドではない場合には、化学蒸着(CVD)やホットフィラメント技術によって、ダイヤモンド層を堆積させる。次に、エッチングではなく堆積を実現するために、超低パワーの反応性イオンエッチング法(RIE)によって、前記ダイヤモンド層上に、硫黄とフッ素を第2の超微細層の形態で堆積させる。
図8に、プラズマ反応器11を用いてダイヤモンドを官能化するための装置10をおおまかに示している。これは、例えば、「容量性結合」タイプのものであることができる。
【0017】
この方法のパラメーターは、以下の通りである。
- 反応性ガス(12)は、SF6、SF4、SF2のようなSとFを含み、流量は、3~20sccm(標準立方cm/分:cm3・分-1)、好ましくは5~10sccm、の範囲内である。
- 無線周波数(RF)のパワーは、30~70W、好ましくは40~60Wの範囲内である。
- 反応器内の圧力は、3~15×106N/m2(30~150バール)、好ましくは8~12×106N/m2(80~120バール)、の範囲内である。
- 反応時間は、20~120分、好ましくは30~70分、の範囲内である。
【0018】
このようにして得られた第2の官能化層は、反応時間が1時間のオーダーであっても、数nmのオーダーの非常に薄い厚みを有する。
【0019】
本発明に係る機能的アセンブリーのトライボロジー的ふるまいを評価するために試験を行った。
【0020】
Si製のエスケープ車とSi製のパレットリフトを、SとF、具体的にはSF
6、で官能化された微結晶のダイヤモンドで被覆した。したがって、官能化されたダイヤモンド/官能化されたダイヤモンドの対を用いて試験を行い、ルビーと接触する潤滑された鋼を用いた標準アンカーと比較した。ワークプレートに取り付けられたスイス式アンカーエスケープの性能を測定するためにFEMTOトルク試験を行った。加えられたトルクは16N・mであった。
図7a及び7bにそれぞれ、標準アンカー及び本発明にしたがって処理されたアンカーについてのバランス車(3つのアームがある)の振幅の測定結果を示している。標準アンカーの場合、平均振幅は、1時間の試験のときに274°である。本発明にしたがって処理されたアンカーの場合、平均振幅は、1時間の試験のときに256°であり、これは標準アンカーのものよりも18°小さい。700秒における一時的な障害は別として、振幅の規則性は非常に良好であり、標準の基準バージョンよりも優れていることがわかる。
【0021】
また、並行して、25m及び2500mの距離で直径2mmのボールを用いるボール/平面トライボメーターを用いてトライボロジー的試験も行った。25mの試験は、SF
6官能化ダイヤモンド層があるSi基材をそれぞれ有するボール/平面対(SF
6//SF
6)と、比較用のボール/平面対を用いて行った。この比較用のボール/平面対においては、ボールが、官能化されていない微結晶のダイヤモンドで被覆されたSi基材であり、平面が、本発明にしたがって官能化された微結晶のダイヤモンドで被覆されたSi基材(MCD//SF
6)である。これらの試験の目的は、2つの接触面を官能化することの利点を強調することである。垂直方向の力10mN、摺動速さ10mm/s、振幅4mmで試験を行った。
図5a及び5bにそれぞれ、比較用の対及び本発明に係る対についての、距離の関数としての動摩擦係数を示している。比較用の対における平均摩擦係数が0.1よりも大きいことがわかる。比較用の対においては、ピークが多く、あまり安定していない。一方、本発明に係る対においては、平均摩擦係数は0.1未満であり、安定している。この同じ本発明に係る対に対して、2500mの距離にわたっての、より長い試験を行った。
図6に結果を示している。平均摩擦係数は低く、25mの試験の平均摩擦係数と同じである。短い慣らし期間の後に、試験期間全体にわたって摩擦係数が安定になっている。
【0022】
このように、FEMTOトルク試験とトライボロジー的試験は、官能化されたダイヤモンド対に対して官能化されたダイヤモンドを使用した場合において非常に良好にふるまうことを裏付けた。
【符号の説明】
【0023】
1 機能的アセンブリー
2 第1の部分
2a 機能面とも呼ばれる第1の接触面
3 第2の部分
3a 機能面とも呼ばれる第2の接触面
4 パレット
4a 安静面
4b インパルス面
5 アンカー
6 エスケープ車
7 歯
7c 安静面
7d インパルス面
8 基材
9 トライボロジー層
9a ダイヤモンドを含む第1の層
9b SとFを含む第2の層
10 官能化装置
11 反応器
12 ガス
13 プラズマ
14 電極