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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
H01L21/304 648L
H01L21/304 643A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022150893
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2018126671の分割
【原出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2022171969
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幸嗣
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-184660(JP,A)
【文献】特開2016-012629(JP,A)
【文献】特開2014-022558(JP,A)
【文献】特開2003-309102(JP,A)
【文献】特開2017-188665(JP,A)
【文献】特開2018-046063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
基板を水平状態で保持する基板保持部と、
上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、
前記基板の上面に対向する板状であり、前記基板を処理する際に前記上面に近接した処理位置に配置されることにより、前記上面との間で処理空間を形成する遮断板と、
前記上下方向を向く中心軸を中心として前記遮断板を回転する遮断板回転機構と、
前記遮断板の外周縁部から上方に向かって突出する周壁部と、
を備え
前記周壁部が、前記遮断板の上面よりも上方に突出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記遮断板の上方において、下降気流を形成する気流形成部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記基板の前記上面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板の前記上面から飛散する処理液を受けるカップ部と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記遮断板が前記処理位置に配置された際に、前記カップ部の上端が、前記周壁部と近接することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の基板処理装置であって、
前記遮断板が前記処理位置に配置された際に、前記カップ部の上端が、前記周壁部と径方向に対向することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記遮断板を前記基板保持部に対して前記上下方向に相対的に移動する昇降機構をさらに備え、
前記基板に対する一の処理時、および、前記基板に対する他の処理時において、前記上下方向における前記処理空間の幅が相違し、
前記一の処理時、および、前記他の処理時において、前記カップ部の前記上端が、前記周壁部と前記径方向に対向することを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記遮断板および前記基板が円板状であり、
前記遮断板の直径が、前記基板の直径以上であることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造では、半導体基板(以下、単に「基板」という。)に対して様々な処理を行う基板処理装置が用いられている。例えば、特許文献1では、基板の上面に対向するトッププレート(遮断板)を当該上面に近接した位置に配置しつつ、当該上面に対して薬液処理、洗浄処理、および、乾燥処理を行う基板処理装置が開示されている。また、トッププレートにおいて、円板状の本体部の外周縁から下方に広がる略円筒状の部材を設けることにより、薬液処理後、トッププレートが基板に対してさらに近接した位置へと移動する際に、基板の周囲へと押し出された薬液雰囲気を、下方に向けて案内することが可能となる。
【0003】
また、特許文献2では、カップ内で基板を回転させる基板回転保持装置が開示されている。当該装置では、基板を水平姿勢で保持する基板保持部の外周側に円環部が設けられ、当該円環部が、カップの内壁面に向かって水平方向に延びる環状の平坦面を有する。基板および円環部が回転する際には、カップ内壁と円環部の外周端との間の隙間部分の気流の速度が速くなることにより、カップ内のミストの巻き上がりを抑えることが可能となる。特許文献3の基板処理装置では、スピンチャックに保持された基板を取り囲む環状部材が設けられる。当該環状部材が、基板の上面周縁部を取り囲む上側環状親水面と、基板の下面周縁部を取り囲む下側環状親水面とを有することにより、基板の上面および下面が疎水性である場合であっても、基板の上面全域および下面全域を処理液によって覆うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-72343号公報
【文献】特開平9-314022号公報
【文献】特開2012-94836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、基板の上面に対向する遮断板を用いる場合、当該上面と遮断板との間に狭い処理空間を形成して、当該上面に対する処理の均一性を向上することが可能となる。一方、基板保持部において、周方向に配列される複数の支持部により基板の外周縁を支持する場合には、基板保持部の回転時に複数の支持部により気流の乱れが発生する。この場合、基板の上面と遮断板との間に周囲の空気が入り込み、処理の均一性が低下してしまう。また、遮断板を基板保持部と同様に回転する場合には、遮断板の上面において外側に飛び出す気流が発生する。この場合、当該気流が、遮断板の周囲において下方に向かう気流と衝突し、基板の外周縁近傍において気流の乱れが発生する。これにより、基板に悪影響が及ぶ場合がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の外周縁近傍における気流の乱れを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板処理装置であって、基板を水平状態で保持する基板保持部と、上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、前記基板の上面に対向する板状であり、前記基板を処理する際に前記上面に近接した処理位置に配置されることにより、前記上面との間で処理空間を形成する遮断板と、前記上下方向を向く中心軸を中心として前記遮断板を回転する遮断板回転機構と、前記遮断板の外周縁部から上方に向かって突出する周壁部とを備え、前記周壁部が、前記遮断板の上面よりも上方に突出する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記遮断板の上方において、下降気流を形成する気流形成部をさらに備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理装置であって、前記基板の前記上面に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板の前記上面から飛散する処理液を受けるカップ部とをさらに備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の基板処理装置であって、前記遮断板が前記処理位置に配置された際に、前記カップ部の上端が、前記周壁部と近接する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の基板処理装置であって、前記遮断板が前記処理位置に配置された際に、前記カップ部の上端が、前記周壁部と径方向に対向する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の基板処理装置であって、前記遮断板を前記基板保持部に対して前記上下方向に相対的に移動する昇降機構をさらに備え、前記基板に対する一の処理時、および、前記基板に対する他の処理時において、前記上下方向における前記処理空間の幅が相違し、前記一の処理時、および、前記他の処理時において、前記カップ部の前記上端が、前記周壁部と前記径方向に対向する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記遮断板および前記基板が円板状であり、前記遮断板の直径が、前記基板の直径以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板の外周縁近傍における気流の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】基板処理装置の構成を示す図である。
図2】気液供給ユニットの構成を示す図である。
図3】基板保持部を示す平面図である。
図4】支持部を示す斜視図である。
図5】基板処理装置が基板を処理する流れを示す図である。
図6】基板処理装置を示す図である。
図7】基板保持部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、円板状の基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であり、基板洗浄装置とも呼ばれる。基板処理装置1は、基板保持部2と、基板回転機構3と、カップユニット41と、カップ昇降機構44と、遮断板51と、遮断板回転機構53と、遮断板昇降機構54とを備える。基板処理装置1におけるこれらの構成は、箱状のチャンバ6内に収容される。チャンバ6は、およそ密閉された内部空間を形成する。チャンバ6も、基板処理装置1の一部である。
【0017】
基板保持部2は、保持ベース21と、複数の支持部22と、外周リング部23とを備える。保持ベース21は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする円板状である。複数の支持部22は、保持ベース21の上面211に設けられる。複数の支持部22は、中心軸J1を中心とする円周上において、周方向に等間隔に配置される(後述の図3参照)。基板保持部2が基板9を保持する際には、複数の支持部22における当接部224が、基板9の外周縁に当接する。これにより、基板9が保持ベース21の上方において水平状態で保持される。基板保持部2により保持された基板9の中心は、中心軸J1上に位置する。基板9の下方に位置する保持ベース21の上面211と、基板9の下方を向く主面92(以下、「下面92」という。)とは、互いに平行であり、両者は隙間を空けて直接的に対向する。支持部22の個数は任意に決定されてよく、典型的には、3個以上である。複数の支持部22の詳細、および、外周リング部23については後述する。
【0018】
保持ベース21の下面の中央には、中心軸J1を中心とするシャフト部31の上端が固定される。モータを有する基板回転機構3が、シャフト部31の下端部を回転することにより、基板保持部2が基板9と共に中心軸J1を中心として回転する。保持ベース21およびシャフト部31には、上下方向に延びる中空部が中心軸J1上に設けられており、下部ノズル72が当該中空部内に配置される。下部ノズル72は、上下方向に延びており、下部ノズル72の上端面は、保持ベース21の上面211近傍に配置される。下部ノズル72は、基板9の下面92側に位置する。下部ノズル72は、保持ベース21の中央部に位置し、基板9の下面92の中央部に直接的に対向する。
【0019】
カップユニット41は、外側カップ部42と、内側カップ部43とを備える。外側カップ部42および内側カップ部43は、共に中心軸J1を中心とする略筒状である。内側カップ部43は、保持ベース21の周囲を囲み、外側カップ部42は、内側カップ部43の周囲を囲む。外側カップ部42および内側カップ部43のそれぞれは、上方に向かうに従って直径が漸次減少するカップ上部421,431を有する。外側カップ部42の上端は、カップ上部421の上端であり、内側カップ部43の上端は、カップ上部431の上端である。外側カップ部42の上端、および、内側カップ部43の上端は、いずれも円環状である。
【0020】
カップ昇降機構44は、例えば、モータおよびボールねじを備え、外側カップ部42および内側カップ部43のそれぞれを上下方向に移動する。例えば、外側カップ部42は、所定の上位置または下位置に選択的に配置され、内側カップ部43も、所定の上位置または下位置に選択的に配置される。図1に示すように、外側カップ部42を上位置に配置し、内側カップ部43を下位置に配置した状態では、外側カップ部42のカップ上部421が、基板保持部2上の基板9に対して中心軸J1を中心とする径方向に対向する。外側カップ部42を上位置に配置し、内側カップ部43も上位置に配置した状態では、内側カップ部43のカップ上部431が、基板9に対して径方向に対向する。後述する基板9の処理では、基板9の外周縁から飛散する各種処理液が、外側カップ部42の内周面、または、内側カップ部43の内周面により受けられる。当該処理液は、各カップ部42,43の底部に設けられた排出管(図示省略)を介して回収される。なお、排出管は、気液排出部に接続されており、ガスおよび液体の外部への排出が可能である。
【0021】
基板処理装置1に対する基板9の搬入搬出時には、内側カップ部43が下位置に配置され、外側カップ部42も下位置に配置される。これにより、内側カップ部43の上端、および、外側カップ部42の上端が、基板保持部2上の基板9よりも下方に配置され、外部の搬送機構と干渉することが防止される。外側カップ部42および内側カップ部43は、上位置および下位置以外の位置に配置可能であってもよい。
【0022】
遮断板51は、中心軸J1を中心とする円板状である。遮断板51は、基板保持部2の上方に配置される。遮断板51の下面512は、基板保持部2上の基板9の上方を向く主面91(以下、「上面91」という。)と上下方向に対向する。遮断板51の下面512は、基板9の上面91と平行である。遮断板51の直径は、基板9の直径以上であり、基板9の上面91の全体が遮断板51により覆われる。図1の例では、遮断板51の直径は、保持ベース21の直径と同じ、または、保持ベース21の直径よりも僅かに大きい。したがって、遮断板51は、保持ベース21の全体を覆う。基板処理装置1の設計によっては、遮断板51の直径が、保持ベース21の直径未満であってもよい。
【0023】
遮断板51において、基板9とは反対側を向く上面511は、中心軸J1に対して略垂直に広がる。遮断板51の上面511も、基板9の上面91と平行である。遮断板51の上面511における外周縁部513には、上方に向かって突出する周壁部52が設けられる。周壁部52は、当該上面511から円筒状に突出する。周壁部52は、内周面521と、外周面522とを備える。本実施の形態では、内周面521および外周面522は共に、中心軸J1を中心とする円筒面である。図1に示すように、中心軸J1を含む面における遮断板51の断面では、周壁部52の内周面521は、遮断板51の上面511と略垂直となる。また、周壁部52の外周面522も、遮断板51に対して略垂直となる。図1の例では、周壁部52の外周面522、および、遮断板51の外周端面は、中心軸J1を中心とする同一の円筒面に含まれる。
【0024】
遮断板51の上面511の中央には、中心軸J1を中心とするシャフト部531の下端が固定される。モータを有する遮断板回転機構53が、シャフト部531の上端部を回転することにより、遮断板51が中心軸J1を中心として回転する。遮断板回転機構53による遮断板51の回転は、基板回転機構3による基板9の回転とは独立して行われる。遮断板51およびシャフト部531には、上下方向に延びる中空部が中心軸J1上に設けられており、上部ノズル71が当該中空部内に配置される。上部ノズル71は、上下方向に延びており、上部ノズル71の下端面は、遮断板51の下面512近傍に配置される。上部ノズル71は、基板9の上面91側に位置する。上部ノズル71は、遮断板51の下面512の中央部に位置し、基板9の上面91の中央部に直接的に対向する。
【0025】
遮断板昇降機構54は、例えば、モータおよびボールねじを備え、遮断板51を遮断板回転機構53と共に上下方向に移動する。基板9の処理時には、遮断板51が、基板9の上面91に近接した処理位置(図1および後述の図6参照)に配置され、遮断板51の下面512と基板9の上面91との間に、上下方向の幅が微小な空間81(以下、「処理空間81」という。)が形成される。基板処理装置1に対する基板9の搬入搬出時には、図1中に二点鎖線で示すように、遮断板51が、基板9の上面91から離間した離間位置に配置され、外部の搬送機構と干渉することが防止される。
【0026】
チャンバ6の蓋部には、気流形成部61が取り付けられる。気流形成部61は、遮断板51およびカップユニット41の上方に設けられる。気流形成部61は、例えばファンフィルタユニット(FFU)であり、ファン611と、フィルタ612とを有する。ファン611は、チャンバ6外の空気をフィルタ612を介してチャンバ6内に送る。フィルタ612は、例えばHEPAフィルタであり、空気中のパーティクルを除去する。気流形成部61により、チャンバ6内において上部から下方に向かうガス(ここでは、清浄空気)の流れ、すなわち、下降気流が、遮断板51の上方において形成される。気流形成部61では、窒素ガス等により下降気流が形成されてもよい。チャンバ6の下部には、排気管(図示省略)が設けられており、チャンバ6内のガスは、排気管を介してチャンバ6外に排出される。後述する基板9の処理では、一定の流量の下降気流が常時形成される。
【0027】
図2は、基板処理装置1が備える気液供給ユニット7の構成を示す図である。図2では、基板処理装置1における全体制御を担う制御部10も示している。制御部10は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。制御部10は、専用の電気回路により構築されてもよく、部分的に専用の電気回路が利用されてもよい。
【0028】
気液供給ユニット7は、上面処理液供給部73と、下面処理液供給部74と、不活性ガス供給部75とを備える。上面処理液供給部73は、既述の上部ノズル71と、薬液供給源731と、IPA供給源732と、純水供給源733とを備える。上部ノズル71の下端面には、処理液吐出口711と、ガス噴出口712とが形成される。図2の例では、上部ノズル71の下端面の中央に処理液吐出口711が設けられ、処理液吐出口711の周囲に、略環状のガス噴出口712が設けられる。
【0029】
上部ノズル71において、処理液吐出口711に連通する処理液流路には、薬液供給源731、IPA供給源732および純水供給源733が、弁を介して接続される。薬液供給源731から上部ノズル71の処理液流路に薬液が供給されることにより、処理液吐出口711から基板9の上面91の中央部に向けて薬液が吐出される。薬液は、例えば、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液である。同様に、IPA供給源732から上部ノズル71の処理液流路にIPA(イソプロピルアルコール)が供給されることにより、処理液吐出口711から上面91の中央部に向けてIPAが吐出される。また、純水供給源733から上部ノズル71の処理液流路に純水が供給されることにより、処理液吐出口711から上面91の中央部に向けて純水が吐出される。上面処理液供給部73では、他の種類の処理液が上面91に供給されてもよい。
【0030】
不活性ガス供給部75は、既述の上部ノズル71と、不活性ガス供給源751とを備える。上部ノズル71において、ガス噴出口712に連通するガス流路には、不活性ガス供給源751が弁を介して接続される。不活性ガス供給源751から上部ノズル71のガス流路に不活性ガスが供給されることにより、遮断板51と基板9との間の処理空間81に向けてガス噴出口712から不活性ガスが噴出される。不活性ガスは、基板9自体、および、基板9に形成された薄膜との反応性に乏しいガスであり、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等である。本実施の形態では、窒素ガスが不活性ガスとして処理空間81に供給される。上面処理液供給部73および不活性ガス供給部75では、上部ノズル71が共有されている。
【0031】
下面処理液供給部74は、既述の下部ノズル72と、純水供給源733とを備える。下部ノズル72には、純水供給源733が弁を介して接続される。純水供給源733から下部ノズル72に純水が供給されることにより、下部ノズル72から基板9の下面92の中央部に向けて純水が吐出される。上面処理液供給部73および下面処理液供給部74では、純水供給源733が共有されている。下面処理液供給部74では、他の種類の処理液が下面92に供給されてもよい。
【0032】
図3は、基板保持部2を示す平面図であり、図4は、1つの支持部22を示す斜視図である。既述のように、保持ベース21上には、複数の支持部22が周方向に等間隔に配列される。図3および図4に示すように、各支持部22は、支持棒221と、回動軸部222と、支持板部223と、当接部224とを備える。保持ベース21の上面211の外周縁部には、複数の有底の穴部が周方向に等間隔に設けられる。上下方向に垂直な穴部の断面形状は、円形である。上下方向に延びる支持棒221は、穴部の中央に配置され、支持棒221の下端部は、穴部の底部に固定される。図4では、保持ベース21の図示を省略している。回動軸部222は、円筒状の中空部材であり、支持棒221に嵌め込まれて、保持ベース21の穴部内に配置される。回動軸部222の内径は、支持棒221の直径よりも僅かに大きく、回動軸部222の外径は、穴部の直径よりも僅かに小さい。回動軸部222は、支持棒221および穴部により、支持棒221を中心として回動可能に支持される。ベアリング等を用いて、回動軸部222が回動可能に支持されてもよい。
【0033】
支持板部223は、保持ベース21の上面211に沿って、回動軸部222から水平方向に延びる板状部材である。支持板部223の下面は、保持ベース21の上面211に近接する。支持板部223の大部分は、後述の外周リング部23と、保持ベース21の上面211との間に配置される。図3の例では、支持板部223は、回動軸部222から離れるに従って水平方向の幅が狭くなる楔形状である。支持板部223は、周方向におよそ沿うとともに、回動軸部222から離れるに従って径方向の内側に向かう。当接部224は、支持板部223の上面に設けられる突起部である。当接部224は、回動軸部222から離れた位置に設けられる。
【0034】
図1に示すように、基板保持部2は、リング部241と、伝達機構242とをさらに備える。中心軸J1を中心とするリング部241は、保持ベース21の下方に配置され、図示省略のガイド部により上下方向に移動可能に支持される。伝達機構242は、リング部241と複数の支持部22の回動軸部222とを連結するリンク機構であり、保持ベース21の内部および下方に設けられる。伝達機構242は、リング部241の上下方向の移動に連動して、回動軸部222を回動する。基板9の回転時には、リング部241および伝達機構242は、保持ベース21と共に中心軸J1を中心として回転する。
【0035】
伝達機構242の下方には、リング昇降機構29が設けられる。リング昇降機構29は、例えば、モータおよびボールねじを備え、モータの回転によりボールねじにおける移動体(ナット)を上下方向に移動する。リング部241は、ベアリングの内輪に挿入されており、当該ベアリングの外輪には、リング昇降機構29の移動体が固定される。これにより、リング部241が中心軸J1を中心として回転可能な状態で、リング昇降機構29によるリング部241の上下方向への移動が可能となる。リング昇降機構29のモータは、基板回転機構3を収容するケースに固定される。
【0036】
例えば、リング昇降機構29がリング部241を上下方向における第1の位置に配置することにより、図3中に二点鎖線で示すように、複数の支持部22における当接部224が、基板9の外周縁に当接する。すなわち、複数の当接部224が保持位置に配置され、基板保持部2において基板9が保持される。リング昇降機構29がリング部241を上下方向における第2の位置へと移動することにより、各当接部224が基板9の外周縁から離れるように回動軸部222が回動し、複数の当接部224が図3中に実線で示す解除位置に配置される。これにより、基板保持部2における基板9の保持が解除される。図3の例では、複数の当接部224が基板9の外周縁から離間して、基板9の保持が解除された状態においても、複数の支持部22における支持板部223により、基板9が下方から支持される。支持部22の構造、および、回動軸部222を回動するための上記機構は一例に過ぎず、適宜変更されてよい。
【0037】
基板保持部2は、複数の支持ピン25をさらに備える。保持ベース21の上面211には、他の複数の穴部が周方向に等間隔に設けられており、複数の支持ピン25は当該複数の穴部内にそれぞれ配置される。複数の支持ピン25は、周方向に等間隔に配列される。図3の例では、各支持ピン25は、周方向において互いに隣接する2つの支持部22の間に配置される。径方向における複数の支持ピン25の位置は、保持位置に配置される複数の当接部224よりも僅かに中心軸J1側である。すなわち、複数の支持ピン25は、基板9の外周縁よりも僅かに中心軸J1側に位置する。例えば、複数の支持ピン25の下端は、中心軸J1を中心とする他のリング部(図示省略)に固定される。当該他のリング部は、上記リング部241およびリング昇降機構29と同様に、他のリング昇降機構(図示省略)の移動体にベアリングを介して接続される。これにより、当該他のリング部が中心軸J1を中心として回転可能な状態で、当該他のリング昇降機構による当該他のリング部の上下方向への移動が可能となる。当該他のリング昇降機構のモータは、基板回転機構3を収容するケースに固定される。
【0038】
例えば、当該他のリング昇降機構が当該他のリング部を上下方向における第1の位置に配置することにより、複数の支持ピン25の上端が、保持ベース21の上面211と同じ、または、上面211よりも下方となる待機位置に配置される。当該他のリング昇降機構が当該他のリング部を上下方向における第2の位置に配置することにより、複数の支持ピン25の上端が、複数の当接部224の上端よりも上方となる支持位置に配置される。
【0039】
図3に示すように、外周リング部23は、保持ベース21の外周縁部の上方に配置される環状の板部材である。好ましい外周リング部23は、中心軸J1を中心とする略円環状であり、全周に亘って連続する。外周リング部23は、複数の支持部22における支持棒221の上端部に接続され、保持ベース21に対して固定される。すなわち、外周リング部23は、複数の支持部22により支持される。図4では、外周リング部23を二点鎖線で示している。外周リング部23の内周縁には、各支持部22の当接部224(解除位置に配置された当接部224)との接触を避ける切欠部232が形成される。外周リング部23の内径は、基板9の直径よりも僅かに大きい。外周リング部23の内周縁は、基板保持部2において保持される基板9の外側にて、当該基板9の外周縁に近接する。外周リング部23の内周縁(切欠部232を除く。)と基板9の外周縁との間の径方向の距離は、例えば0.5~2.0mmである。
【0040】
外周リング部23の外周縁は、各支持部22の径方向外側に位置する。各支持部22の大部分、詳細には、支持部22において基板9の外周縁よりも径方向外側に位置する部分のおよそ全体が外周リング部23により覆われる。換言すると、各支持部22のおよそ全体が、外周リング部23および基板9の下方に位置する。典型的には、外周リング部23の外径は、保持ベース21の直径と同じ、または、保持ベース21の直径よりも僅かに小さい。したがって、上下方向に沿って見た場合、すなわち、平面視において、外周リング部23の全体が、保持ベース21と重なる。同様に、典型例では、外周リング部23の外径は、遮断板51(図1参照)の直径と同じ、または、遮断板51の直径よりも僅かに小さい。したがって、平面視において、遮断板51が、外周リング部23の全体と重なり、外周リング部23の全体が遮断板51により覆われる。径方向における外周リング部23の幅は、切欠部232の位置を除き、全周に亘って一定である。外周リング部23の幅は、例えば、2~10mmである。外周リング部23の設計によっては、外周リング部23の幅が周方向に変動してもよい。
【0041】
図3に示す外周リング部23の上面231は、遮断板51の下面512(図1参照)とほぼ平行である。外周リング部23の下面も、保持ベース21の上面211とほぼ平行である。本実施の形態では、支持棒221および当接部224を除き、複数の支持部22のいずれの部位も、外周リング部23よりも下側に位置する。支持棒221および当接部224の上端面は、外周リング部23の上面231とほぼ同じ高さとなる。基板9の処理において、基板9の上面91に供給される処理液を適切に除去するには、外周リング部23の上面231が、基板9の上面91と同じ高さ、または、上面91よりも下方に配置されることが好ましい。図1の例では、外周リング部23の上面231および基板9の上面91が、中心軸J1に垂直な同一平面上に配置される。
【0042】
図5は、基板処理装置1が基板9を処理する流れを示す図である。基板9の処理を開始する際には、処理対象の基板9が基板処理装置1に搬入される(ステップS11)。具体的には、まず、図3の基板保持部2における複数の支持ピン25が上昇し、上端が外周リング部23よりも上方となる支持位置に配置される。図1のチャンバ6の側面部には、開閉可能な搬入出口(図示省略)が設けられており、搬入出口を介して外部の搬送機構により基板9がチャンバ6内に搬送され、複数の支持ピン25上に載置される。搬送機構がチャンバ6外に退避した後、複数の支持ピン25が下降する。このとき、複数の当接部224が、図3中に実線で示す解除位置に配置されており、基板9が複数の支持ピン25から複数の支持板部223に受け渡される。複数の支持ピン25は、保持ベース21内の待機位置まで移動する。その後、リング昇降機構29により複数の当接部224が、基板9の外周縁に当接する保持位置に配置され、基板保持部2において基板9が保持される。既述のように、基板9の搬入搬出時には、外側カップ部42および内側カップ部43の双方が下位置に配置され、遮断板51が離間位置に配置されている。
【0043】
基板9が搬入されると、遮断板昇降機構54により、遮断板51が、図1中に実線で示す液処理位置に配置され、遮断板51の下面512と基板9の上面91との間に処理空間81が形成される(ステップS12)。液処理位置に配置された遮断板51は、基板9の上面91に近接する。既述のように、遮断板51の直径は基板9の直径以上であり、遮断板51の中空部も遮断板51の一部と捉えた場合、液処理位置において遮断板51は基板9の上面91の全面に対向する。遮断板51を液処理位置に配置した状態では、上下方向における処理空間81の幅は、例えば7mmである。
【0044】
また、不活性ガス供給部75により処理空間81への不活性ガスの供給が開始される。不活性ガスは、上部ノズル71を介して処理空間81内に供給される。これにより、所定時間経過後に、処理空間81が、不活性ガスが充填された不活性ガス充填状態(すなわち、酸素濃度および湿度が低い雰囲気)となる。さらに、図1に示すように、外側カップ部42が上位置に配置され、基板9に対して径方向に対向する。外側カップ部42の上端は、全周に亘って周壁部52に近接するとともに、径方向に対向する。一例では、外側カップ部42の上端は、周壁部52の上端よりも3mmほど下方に位置する。なお、内側カップ部43が基板9に対して径方向に対向してもよい。
【0045】
続いて、基板回転機構3により基板9の回転が開始される(ステップS13)。基板9は、水平状態で基板保持部2と共に回転する。また、遮断板回転機構53により遮断板51の回転が開始される(ステップS14)。遮断板51は、水平状態で回転する。本処理例では、遮断板51の回転数は、基板9の回転数とほぼ同じであり、遮断板51は基板9と同じ向きに回転する。基板9に対する処理の種類等によっては、遮断板51の回転数および回転方向が、基板9の回転数および回転方向と相違してもよい。
【0046】
続いて、上面処理液供給部73により上部ノズル71を介して基板9の上面91の中央部に薬液が連続的に供給される(ステップS15)。上面91では、基板9の回転による遠心力により薬液が基板9の外周縁に向かって広がり、上面91の全体に薬液が供給される。基板9に対する薬液による処理は、遮断板51の下面512と基板9の上面91との間の狭い空間、すなわち、不活性ガスが充填された処理空間81において行われる。これにより、基板9に対する薬液処理の均一性を向上することができる。
【0047】
基板9の外周縁、または、外周リング部23の外周縁から飛散する薬液は、外側カップ部42の内周面により受けられ、回収される(後述の純水の供給時において同様)。このとき、外側カップ部42の内周面において受けられた薬液が、仮に基板9に向かって跳ね返る場合でも(いわゆる、スプラッシュバック)、遮断板51の下面512と外周リング部23の上面231との間の幅は狭いため、跳ね返った薬液が基板9に付着して基板9が汚染されることが防止される。基板9に薬液を供給している間も、処理空間81への不活性ガスの供給は継続される(後述の純水の供給時において同様)。
【0048】
薬液の供給が所定時間継続されると、薬液の供給が停止される。続いて、上面処理液供給部73により上部ノズル71を介して上面91の中央部に純水が連続的に供給される。また、下面処理液供給部74により下部ノズル72を介して基板9の下面92の中央部に純水が連続的に供給される(ステップS16)。上面91および下面92では、基板9の回転により純水が基板9の外周縁に向かって広がり、上面91および下面92の全体に純水が供給される。純水の供給により、上面91に付着する薬液が除去される。また、下面92が純水により洗浄される。なお、下面92に供給された純水は、外周リング部23と保持ベース21との間の隙間を介して排出可能である。純水の供給は所定時間継続され、その後、停止される。
【0049】
続いて、遮断板昇降機構54により遮断板51が、図6中に二点鎖線で示す液処理位置から下降し、図6中に実線で示す乾燥処理位置に配置される(ステップS17)。乾燥処理位置は、液処理位置よりも僅かに下方の位置である。これにより、上下方向における処理空間81の幅が狭められ、例えば3mmとなる。遮断板51が乾燥処理位置に配置された状態においても、外側カップ部42の上端は、全周に亘って周壁部52と近接するとともに、径方向に対向する。詳細には、図6中に矢印Wで示すように、外側カップ部42の上端と周壁部52の外周面522との間の幅(径方向における幅)は、遮断板51が液処理位置および乾燥処理位置のいずれに配置される場合も、同じとなる。このように、外側カップ部42と周壁部52との間の開口面積は、2つの処理位置において一定となる。上記幅Wは、気流形成部61から外側カップ部42内に向かう気流の流路の最小幅であり、例えば1.5~3.0mmである。
【0050】
遮断板51が乾燥処理位置に配置されると、基板回転機構3が基板9の回転速度を上記処理液(すなわち、薬液および純水)の供給時よりも高くすることにより、基板9の乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS18)。このとき、遮断板51の回転速度も高くすることにより、遮断板51の下面512に付着する処理液も除去される。基板9の乾燥処理を行っている間も、上部ノズル71から処理空間81への不活性ガスの供給は継続される。なお、基板9の乾燥処理の前に、基板9の上面91上にIPAが供給され、上面91上において純水がIPAに置換されてもよい。
【0051】
乾燥処理が完了すると、遮断板51の回転、および、基板9の回転が停止される(ステップS19,S20)。続いて、遮断板昇降機構54により、遮断板51が上昇して、基板9から離れた離間位置に配置されるとともに、上部ノズル71からの不活性ガスの噴出が停止される。また、外側カップ部42および内側カップ部43が下位置に配置される。その後、基板処理装置1から基板9が搬出される(ステップS21)。基板9の搬出では、まず、リング昇降機構29により複数の当接部224が、図3中に実線で示す解除位置に配置され、基板9の保持が解除される。このとき、基板9は、複数の支持板部223により下側から支持される。続いて、複数の支持ピン25が上昇し、外周リング部23よりも上方の支持位置まで移動する。これにより、基板9が、複数の支持板部223から複数の支持ピン25に受け渡される。その後、搬入出口を介してチャンバ6の内部に進入した搬送機構により、複数の支持ピン25上の基板9が受け取られ、外部へと搬出される。以上により、基板処理装置1における基板9の処理が完了する。
【0052】
ここで、図1の基板処理装置1において、外周リング部23を省略した比較例の基板処理装置を想定する。基板9の処理では、遮断板51を液処理位置または乾燥処理位置に配置した状態で、基板保持部2が基板9と共に回転する。このとき、遮断板51の下面512と保持ベース21の上面211との間において、基板9と共に回転する複数の支持部22に衝突した空気が保持ベース21の上面211に沿う方向のみらなず、遮断板51側にも広がり、気流の大きな乱れが発生する。これにより、基板9の外周縁近傍において、基板9の上面91側または下面92側に、周囲の空気が入り込んでしまう。その結果、基板9の上面91の外周縁近傍において、不活性ガス雰囲気を維持することができなくなり、上面91に対する処理の均一性が低下してしまう。また、基板9の周囲の空気が、処理液のミスト等を含む場合には、上面91および下面92が汚染されてしまう。さらに、回転方向における各支持部22の後方近傍において、周囲の圧力よりも低い負圧となる部分が発生することがあり、この場合、基板9の外周縁よりも内側まで、周囲の空気が入り込んでしまう。
【0053】
比較例の基板処理装置において、上下方向における処理空間81の幅を小さくする、または、処理空間81への不活性ガスの流量を大きくすることにより、上面91側への周囲の空気の入り込みを抑制することも考えられる。しかしながら、処理空間81の幅を小さくする場合、各種構成部品の寸法精度や位置の調整等の許容範囲を厳しくする必要があり、装置の製造コストが増大してしまう。また、不活性ガスの流量を大きくする場合、不活性ガスの使用量の増大によりランニングコストが増大してしまう。実際には、上記のいずれの場合でも、複数の支持部22が生じさせる気流の乱れによる、上面91側への周囲の空気の入り込みは、ある程度生じてしまう。
【0054】
これに対し、図1の基板処理装置1では、基板9の周囲を囲む環状の板部材である外周リング部23が、基板保持部2に設けられる。外周リング部23の内周縁は、基板9の外周縁に近接しており、各支持部22の大部分が、外周リング部23により覆われる。基板処理装置1では、基板保持部2の回転時に、各支持部22に衝突した空気が遮断板51側へと広がることが外周リング部23により抑制されるため、複数の支持部22により発生する、基板9の外周縁近傍における気流の乱れを抑制(低減)することができる。換言すると、外周リング部23により、基板9の外周縁近傍における気流を整流することができる。
【0055】
これにより、基板9の外周縁近傍において、上面91側または下面92側に、周囲の空気が入り込むことを抑制することができる。その結果、上面91のおよそ全体に亘って不活性雰囲気を維持することができ、上面91に対する処理の均一性を向上することができる。また、上面91および下面92が汚染されることも抑制することができる。外周リング部23を有する基板処理装置1では、上下方向における処理空間81の幅を大きくする場合でも、処理空間81の不活性雰囲気をある程度維持することが可能であるため、各種構成部品の寸法精度や位置の調整等の許容範囲を緩くすることができ、基板処理装置1の製造コストを削減することも可能となる。
【0056】
外周リング部23の外周縁が、各支持部22の径方向外側に位置することにより、外周リング部23により支持部22のより多くの部分を覆うことが可能となる。その結果、複数の支持部22により発生する気流の乱れをさらに低減することができる。また、基板保持部2では、当接部224を回動する回動軸部222が、基板9の径方向外側に位置する。このように、当接部224の回動に必要な回動軸部222を、基板9の下面92に対向しない位置に配置することにより、回動軸部222およびその周囲の部材により発生する気流の乱れが、基板9に与える影響を低減することができる。なお、基板保持部2の設計によっては、各支持部22の一部が、外周リング部23の外周縁よりも径方向外側に位置してもよい。
【0057】
次に、図1の基板処理装置1において、周壁部52を省略した他の比較例の基板処理装置を想定する。基板9の処理では、遮断板51を液処理位置または乾燥処理位置に配置した状態で、遮断板51が高速に回転する。このとき、遮断板51の上面511において外側に飛び出す強い気流が発生する。当該気流は、遮断板51の周囲において下方に向かう気流(下降気流)と衝突し、基板9の外周縁近傍において気流の乱れが発生する。これにより、カップ部の内部における雰囲気(薬液のミスト等を含む雰囲気)が拡散されて、基板9の上面91および下面92が汚染される場合がある。
【0058】
また、基板処理装置1において遮断板51を液処理位置および乾燥処理位置に配置するように、当該他の比較例の基板処理装置において、基板9に対する一の処理時、および、基板9に対する他の処理時に、上下方向における処理空間81の幅を相違させる場合、カップ部の上端と、遮断板51の外周端面との間の距離が変動する。この場合、カップ部に流入する気流の状態が変動してしまい、カップ部の内部における雰囲気(薬液のミスト等を含む雰囲気)が拡散されて、基板9の上面91および下面92が汚染される可能性がある。
【0059】
これに対し、図1の基板処理装置1では、遮断板51の外周縁部513から上方に向かって突出する周壁部52が設けられる。これにより、遮断板51の上面511において外側に飛び出す気流を低減することができ、基板9の外周縁近傍における気流の乱れを抑制することができる。換言すると、基板9の外周縁近傍における気流を整流することができる。その結果、カップ部(外側カップ部42および内側カップ部43)の内部における雰囲気の拡散を抑制することができる。
【0060】
遮断板51の上面511において外側に飛び出す気流をより確実に低減するには、周壁部52の高さは10mm以上であることが好ましい。周壁部52の高さの上限は、周壁部52の重量が過度に大きくならない範囲で決定されてよく、例えば15mmである。また、上面511において外側に飛び出す気流を低減することが可能な範囲で、周壁部52の内周面521が遮断板51の上面511に対して傾斜してもよい。中心軸J1を含む遮断板51および周壁部52の断面(図1参照)において、遮断板51の上面511と周壁部52の内周面521とがなす角度は、例えば、60~120度であり、好ましくは、75~105度である。周壁部52の肉厚は、使用する材料の強度、回転により発生する遠心力等を考慮して適宜決定されてよい。
【0061】
また、基板処理装置1では、基板9に対する一の処理時、および、基板9に対する他の処理時において、上下方向における処理空間81の幅を相違させる場合であっても、当該一の処理時および当該他の処理時の双方において、カップ部(上記処理例では、外側カップ部42)の上端が、周壁部52と径方向に対向する。これにより、カップ部内へと向かう気流の流路の最小幅(または、流路の最小面積)を、当該一の処理時および当該他の処理時において一定に保つことができる。このように、基板処理装置1では、基板9に対する処理の内容に応じて処理空間81の幅を変更しつつ、カップ部に流入する気流の状態を一定に保つことができる。その結果、カップ部の内部における雰囲気の拡散を容易に抑制することが可能となる。
【0062】
上記基板処理装置1では様々な変形が可能である。
【0063】
図7に示すように、外周リング部23が、支持部22とは異なるリング支持部材233により支持されてもよい。一方、図7の基板保持部2では、支持部22のみならず、リング支持部材233によっても気流の乱れが発生してしまう。したがって、基板9の外周縁近傍における気流の乱れをより確実に抑制するという観点では、外周リング部23が、複数の支持部22により支持されることが好ましい。また、図7の基板保持部2では、支持部22の回動軸部222aが平面視において基板9と重なるが、回動軸部およびその周囲の部材により発生する気流の乱れが、基板9に与える影響を低減するという観点では、回動軸部が基板9の径方向外側に位置することが好ましい。
【0064】
図3および図7の例では、各支持部22の一部が、外周リング部23により覆われるが、支持部22の全部が、外周リング部23により覆われるように、基板保持部2を設計することも可能である。基板処理装置1では、各支持部22の少なくとも一部が、外周リング部23により覆われていればよい。
【0065】
外周リング部23は、実質的に環状であればよく、設計によっては、周方向における一部が欠落していてもよい。基板保持部2の回転により支持部22に衝突した空気が遮断板51側へと広がることを抑制するという観点では、外周リング部23は、各支持部22から回転方向前側に広がる部分を含むことが好ましい。
【0066】
図1の例では、外周リング部23の全体が遮断板51により覆われるが、基板処理装置1の設計によっては、平面視において、外周リング部23の一部が、遮断板51の外側に配置されてもよい。すなわち、外周リング部23では、少なくとも一部が、所定の処理位置に配置された遮断板51と平面視において重なっていればよい。これにより、基板9の外周縁近傍において、周囲の空気が上面91側に入り込むことを抑制することができる。好ましくは、平面視において、外周リング部23の内周縁が全周に亘って遮断板51と重なる。これにより、基板9の外周縁近傍において、周囲の空気が上面91側に入り込むことを全周に亘って抑制することが可能となる。同様に、平面視において、外周リング部23の内周縁が全周に亘って保持ベース21と重なることが好ましい。これにより、基板9の外周縁近傍において、周囲の空気が下面92側に入り込むことを全周に亘って抑制することが可能となる。
【0067】
周壁部52は、遮断板51の上面511における外周縁部513に設けられるのであるならば、遮断板51の外周端面から僅かに内側(中心軸J1側)に入り込んだ位置に、設けられてもよい。
【0068】
基板9を処理する際に、遮断板51が、基板保持部2に連結されることにより、遮断板51が基板保持部2と共に回転してもよい。例えば、図3の支持棒221が外周リング部23よりも上方に突出しており、基板9を処理する際に、遮断板51の下面512に設けられる凹部が、支持棒221の上端部に嵌まるように、遮断板51が基板保持部2に載置される。これにより、遮断板51と基板保持部2とが連結される。このような基板処理装置1では、基板回転機構3が、遮断板回転機構53を兼ねていると捉えることができる。
【0069】
基板保持部2において外周リング部23を設けない場合等には、基板9の下面92を吸着保持する基板保持部が採用されてもよい。また、遮断板51において周壁部52を設けない場合には、遮断板回転機構53が省略されてもよい。
【0070】
基板処理装置1では、基板保持部2を遮断板51に対して上下方向に移動する昇降機構が設けられてもよい。すなわち、遮断板51は、基板保持部2に対して上下方向に相対的に移動すればよい。
【0071】
基板処理装置1では、基板9の上面91または下面92のいずれか一方のみに対して処理液による処理が行われてもよい。基板処理装置1において処理が行われる基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。また、基板処理装置1が、円板状とは異なる外形の基板の処理に用いられてもよい。
【0072】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0073】
1 基板処理装置
2 基板保持部
3 基板回転機構
9 基板
21 保持ベース
22 支持部
23 外周リング部
42,43 カップ部
51 遮断板
52 周壁部
53 遮断板回転機構
54 遮断板昇降機構
61 気流形成部
73 上面処理液供給部
75 不活性ガス供給部
81 処理空間
91 (基板の)上面
222,222a 回動軸部
224 当接部
513 (遮断板の)外周縁部
J1 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7