IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 平田機工株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ODCマネージメントの特許一覧

特許7378580観察用ホルダ、観察装置、観察用チップおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】観察用ホルダ、観察装置、観察用チップおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/483 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
G01N33/483 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022509848
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020013090
(87)【国際公開番号】W WO2021192055
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391032358
【氏名又は名称】平田機工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522300961
【氏名又は名称】株式会社ODCマネージメント
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 朋子
(72)【発明者】
【氏名】金ヶ崎 士朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 正剛
(72)【発明者】
【氏名】森田 健二
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-038923(JP,A)
【文献】国際公開第2005/054425(WO,A1)
【文献】特開2003-088357(JP,A)
【文献】特開2005-333912(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064984(WO,A1)
【文献】特開2014-064507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/483
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で矩形形状を有し且つ観察対象物を収容可能に構成された収容部と、該収容部の下部に設けられた観察部とを備える観察用ホルダであって、
前記観察部は、前記収容部に収容された観察対象物を下方から観察可能に構成され、
前記収容部は、
観察対象物を収容するための複数の孔が互いに離間して設けられた収容部本体と、
前記収容部本体の上部に設けられた収容部上部と、
を含み、
前記収容部上部は、所定の液体を貯留する貯留部として前記収容部本体の上方の空間を取り囲む壁部を含み、
前記収容部上部における前記空間の上方部には開口が設けられており、
前記複数の孔は水平方向に配列されて設けられ、個々の孔は前記収容部本体を上下方向に貫通して前記開口に連通し、前記複数の孔のうち隣り合う2つは前記観察部において接続される
ことを特徴とする観察用ホルダ。
【請求項2】
前記壁部は、前記複数の孔の配列方向に沿うように前記複数の孔を矩形状に取り囲む
ことを特徴とする請求項1記載の観察用ホルダ。
【請求項3】
前記収容部本体は、非透光性材料で構成され、
前記収容部上部は、透光性材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の観察用ホルダ。
【請求項4】
前記収容部本体および前記収容部上部は何れも非透光性材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の観察用ホルダ。
【請求項5】
前記観察部は、
前記収容部本体を下方から覆う第1の板材と、
前記第1の板材を下方から覆う透光性の第2の板材と、
を含み、
前記第1の板材および前記第2の板材の少なくとも一方は、前記隣り合う2つの孔が相互に通連するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の観察用ホルダ。
【請求項6】
前記第1の板材には、前記複数の孔に対応する複数の貫通孔が設けられ、
前記第1の板材の下面には、前記複数の貫通孔のうち互いに隣り合う2つを接続する窪みであって、その外縁が該2つの貫通孔を取り囲む窪みが設けられている
ことを特徴とする請求項5記載の観察用ホルダ。
【請求項7】
前記窪みは、前記互いに隣り合う2つの貫通孔の間において平坦面を形成している
ことを特徴とする請求項6記載の観察用ホルダ。
【請求項8】
前記窪みを形成する側壁は、
前記隣り合う2つの貫通孔の一方の外縁の一部に沿って設けられた第1の周壁部と、
前記隣り合う2つの貫通孔の他方の外縁の一部に沿って設けられた第2の周壁部と、
前記第1の周壁部と前記第2の周壁部とを接続して連続面を形成する第3の周壁部と、
を含む
ことを特徴とする請求項7記載の観察用ホルダ。
【請求項9】
前記収容部本体の下面には、前記第1の板材の位置を規定するための規定部が設けられている
ことを特徴とする請求項5から請求項8の何れか1項記載の観察用ホルダ。
【請求項10】
前記収容部本体および前記収容部上部は、それらの前記水平方向の一方向における幅が互いに等しくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項4から請求項9の何れか1項記載の観察用ホルダ。
【請求項11】
観察対象物についての情報を付与可能な情報付与部を更に備える
ことを特徴とする請求項1から請求項10の何れか1項記載の観察用ホルダ。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れか1項記載の観察用ホルダを複数並べながら該複数の観察用ホルダが水平方向に配列されるように支持する支持台と、
前記複数の観察用ホルダに収容された観察対象物を撮像するための撮像部と、
前記撮像部を前記支持台に対して前記水平方向に相対移動させる移動機構と、を備える
ことを特徴とする観察装置。
【請求項13】
請求項1から請求項11の何れか1項記載の観察用ホルダに観察対象物を収容させるための観察準備部備え、
前記観察準備部は、観察対象物を収容する前の状態の前記観察用ホルダを支持するための準備用支持台と、前記準備用支持台を所定方向に移動可能な第2の移動機構と、を含む
ことを特徴とする請求項12記載の観察装置。
【請求項14】
観察対象物を収容可能に構成された収容部と、該収容部の下部に設けられた観察部とを備える観察用ホルダに、前記観察部の構成部品として取付け可能な観察用チップであって、
前記収容部には、観察対象物を収容するための複数の孔が上下方向にそれぞれ延び且つ水平方向に並ぶように設けられ、
前記観察用チップは、
前記収容部を下方から覆う第1の板材と、
前記第1の板材を下方から覆う透光性の第2の板材と、
を備え、
前記第1の板材には、前記複数の孔に対応する複数の貫通孔が設けられ、
前記第1の板材の下面には、前記複数の貫通孔のうち互いに隣り合う2つを接続する窪みであって、その外縁が該2つの貫通孔を取り囲む窪みが設けられており、
前記窪みを形成する側壁は、
前記隣り合う2つの貫通孔の一方の外縁の一部に沿って設けられた第1の周壁部と、
前記隣り合う2つの貫通孔の他方の外縁の一部に沿って設けられた第2の周壁部と、
前記第1の周壁部と前記第2の周壁部とを接続して連続面を形成する第3の周壁部と、
を含む
ことを特徴とする観察用チップ。
【請求項15】
請求項14記載の観察用チップの製造方法であって、
前記第1の板材の下面に前記第2の板材を重ねる工程と、
前記第1の板材と前記第2の板材とを陽極接合法により接合する工程と、
を含む
ことを特徴とする観察用チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察用ホルダ(主に細胞用観察用ホルダ)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、観察対象物を観察可能に収容する観察用ホルダの構造が記載されている。観察用ホルダは観察対象物である細胞を観察用ホルダの下方から観察可能に構成され、医師・検査技師・研究者等のユーザは、このような観察用ホルダを用いることにより所定の観察用器具(例えば顕微鏡、撮像カメラなど)を介して観察対象物を映像により観察することができる。観察対象物の例としては、ヒトを含む動物の、細胞を構成要素する組織や体液そのもの、例えばヒトやマウスの血液やリンパ液、腹水洗浄液、肺胞洗浄液、その構成成分である各種白血球細胞やその他の細胞、組織から分離したがん細胞や株化した培養細胞など、さらには真菌などの微生物を含む分離した植物細胞が挙げられ、このような観察対象物である細胞が有する複数の異なる機能を映像により同時に観察可能にする観察用ホルダは、例えば新生児などのマススクリーニング検査や種々の疾患の診断などに用いられうる(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-124904号公報
【文献】特開2011-038923号公報
【文献】特開2018-102295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の観察用ホルダにおいては、一度に多くの観察対象物である細胞が有する複数の異なる特性、機能を、簡便に、効率よく観察可能とし、さらにこれらの観察ないし測定を、一度に多くの試料、例えば多数の患者試料に対して同時に可能にするため、構造上の更なる改善が求められうる。
【0005】
本発明は、一つの観察対象物が有する複数の異なる特性を、簡便に、効率よく観察でき、更にこれらの観察を一度に多くの試料に対して可能とする観察用ホルダの新規な構造を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は観察用ホルダに係り、前記観察用ホルダは、平面視で矩形形状を有し且つ観察対象物を収容可能に構成された収容部と、該収容部の下部に設けられた観察部とを備える観察用ホルダであって、前記観察部は、前記収容部に収容された観察対象物を下方から観察可能に構成され、前記収容部は、観察対象物を収容するための複数の孔が互いに離間して設けられた収容部本体と、前記収容部本体の上部に設けられた収容部上部と、を含み、前記収容部上部は、所定の液体を貯留する貯留部として前記収容部本体の上方の空間を取り囲む壁部を含み、前記収容部上部における前記空間の上方部には開口が設けられており、前記複数の孔は水平方向に配列されて設けられ、個々の孔は前記収容部本体を上下方向に貫通して前記開口に連通し、前記複数の孔のうち隣り合う2つは前記観察部において接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一つの観察対象物が有する複数の異なる特性を、簡便に、効率よく観察可能となる。
【0008】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】観察装置の構成例を示す側面概略図。
図2】観察装置の一部についての斜視図。
図3】観察用ホルダについての斜視図。
図4】観察用ホルダについての分解図。
図5】観察部の一部を構成する板材の斜視図。
図6】観察用ホルダについての下方側斜視図。
図7A】観察用ホルダについての断面図。
図7B】観察用ホルダについての断面図。
図8A】観察部の製造方法を説明するための図。
図8B】観察部の製造方法を説明するための図。
図8C】観察部の製造方法を説明するための図。
図8D】観察部の製造方法を説明するための図。
図8E】観察部の製造方法を説明するための図。
図8F】観察部の製造方法を説明するための図。
図8G】観察部の製造方法を説明するための図。
図8H】観察部の製造方法を説明するための図。
図8I】観察部の製造方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(観察装置の全体構成について)
図1は、実施形態に係る観察装置1についての側面概略図を示し、図2は、観察装置1の一部についての斜視図を示す。観察装置1は、支持台11、撮像部12および移動機構13を備える、また観察装置1は、観察準備部14を備える。また観察装置1に含まれない後述の観察用ホルダ2が支持台11上に載置される。
【0012】
支持台11は、所定の厚みの板状部材である。支持台11は、複数の観察用ホルダ2を支持可能に構成され、複数の観察用ホルダ2は、支持台11上において水平方向に配列される。ここで言う水平方向は、支持台11を水平姿勢としたときの支持台11の上面と平行な任意の方向である。詳細については後述とするが、個々の観察用ホルダ2は、所定の観察対象物を収容可能に構成される。観察対象物の例としては、例えばヒトの血液など動物の中の白血球細胞が挙げられる。
【0013】
尚、図2において、複数の観察用ホルダ2の配列方向における一方向はX方向として示され、また、該配列方向における他方向(X方向と直交する方向)はY方向として示される。また、上記配列方向を水平方向として、垂直方向ないし上下方向はZ方向として示される。
【0014】
また、詳細については後述とするが、本実施形態においては、支持台11には、X方向に等間隔に6個、かつ、Y方向に2列に配置される凹部111が設けられる。個々の凹部111には、観察用ホルダ2を嵌合させて載置することができる。また、個々の凹部111の底部111aには、上下方向に貫通する開口112が設けられ、該載置された観察用ホルダ2を下方から視認可能となっている。
【0015】
凹部111の底部111aは、開口112を形成すると共に、その縁に沿って中心側に鍔状に延出することにより載置部111bを形成しており、それにより観察用ホルダ2を載置可能とする。後述の観察用ホルダ2の観察部22の板材(第2の板材)222が載置部111bと当接し、載置される。また、凹部111の側壁は、観察用ホルダ2が嵌合された際に観察用ホルダ2を水平方向への移動を規制するための周囲壁(案内壁)111cを構成している。周囲壁111cの高さは、例えば、後述の観察用ホルダ2の本体部210の本体下部210Lより高く、本体部210の本体上部より低い寸法で形成される。
【0016】
撮像部12は、観察用ホルダ2に収容された観察対象物を撮像可能に構成され、本実施形態においては支持台11の下方に設置される。撮像部12には、動画及び/又は静止画を撮像可能なもの、例えばCCD/CMOSイメージセンサ等を備える公知のカメラ、が用いられればよい。尚、以下の説明において、撮像部12による撮像は観察とも表現されうる。
【0017】
移動機構13は、撮像部12を支持台11に対して水平方向に相対移動可能に構成され、その移動方向は、本実施形態においてはX方向と実質的に平行とする。この移動機構13による撮像部12の移動の際、撮像部12は、X方向に並んで複数形成される各開口112に臨んで移動される。移動機構13には、公知のスライダ機構、例えば、撮像部12をX方向に摺動可能に支持するレール131、撮像部12に含まれる不図示のナット、該レール131に沿って平行に設けられ且つ該ナットと螺合し回転可能に支持されるボールネジ、該ボールネジを回転駆動する電動モータ132等、が用いられうる。
【0018】
複数の観察用ホルダ2は、本実施形態では図2に示されるように、X方向に並ぶ6個の凹部111を1列としてY方向に2列並ぶ計12個の凹部111を備える。移動機構13は、撮像部12をX方向およびY方向に移動可能とする。或いは、移動機構13は、撮像部12をX方向のみに移動可能とし、移動機構13および撮像部12の組合せをY方向に2セット設けるようにしても良い。また、撮像部12としては、ビジョンカメラ、対物レンズ、その他の撮像装置が挙げられる。撮像部12として対物レンズを用いる場合は、撮像部12をインデックステーブル式とし、そのインデックステーブルに倍率の異なる対物レンズを複数セットしておき、インデックス回転により任意の倍率の対物レンズを選択できるようにしても良い。
【0019】
観察準備部14は、ユーザが準備作業を行うためのユニットである。観察準備部14は、準備用支持台141および移動機構(第2の移動機構)142を含む。準備用支持台141は、観察対象物を収容する前の状態(未収容状態)の観察用ホルダ2を支持可能に構成される。準備用支持台141には、支持台11同様に凹部111及び開口112が設けられる。詳細については後述とするが、ユーザは、準備用支持台141に支持された観察用ホルダ2に、所定の器具ないし装置を用いて、例えばシリンジ、スポイトなどによる手動注入器、垂直6軸ロボットやスカラロボットなどによる自動注入機等により、観察対象物を注入して観察対象物を収容させることで観察の準備を行うことができる。
【0020】
尚、ここでいうユーザとしては、医師・検査技師・研究者等の作業者が典型例として挙げられるが、それ/それらの指示に基づいて動作する産業用ロボットないしマニピュレータであってもよい。
【0021】
移動機構142は、準備用支持台141を所定方向(少なくともZ方向)に移動可能に構成され、例えば、準備用支持台141を使用する際には移動機構142を動作させ、準備用支持台141の高さの調節を行い、観察の準備を行うことができる。移動機構142には、公知のスライダ機構、例えば、準備用支持台141を摺動可能に支持するレール1421、該レール1421に沿って準備用支持台141を摺動させる電動モータ1422等、が用いられうる。
【0022】
詳細については後述とするが、このような観察装置1において、ユーザは、準備用支持台141に支持される観察用ホルダ2に観察対象物を注入させ、観察対象物の準備が行われる。その後、観察用ホルダ2を準備用支持台141から支持台11に移載することで、観察装置1に対する観察用ホルダ2のセットが完了する。その後、撮像部12を用いて観察用ホルダ2の下方から観察対象物の観察が行われる。ここで、観察対象物の準備は、観察用ホルダ2の観察部22(後述)を下方から撮像部12で撮像しつつ、その撮像画像を確認しながら観察対象物を観察用ホルダ2の所定の位置(観察位置)に注入し、観察対象物となる細胞を観察位置に配置させる、ことを可能な状態にすることを指す。観察装置1は、観察システム、評価装置、評価システム、診断装置、診断システム等と称されてもよい。
【0023】
(観察用ホルダの構成について)
図3は、観察用ホルダ2の斜視図を示す。図4は、観察用ホルダ2の分解図を示す。観察用ホルダ2は、収容部21および観察部22を備える。尚、図3図4には、図2に対応するように、X方向、Y方向およびZ方向が示される。
【0024】
収容部21は、平面視(Z方向での視点。上面視。)で矩形形状、ここでは長方形形状、を有しており、前述の観察対象物を収容可能に構成される。収容部21は、本実施形態においては収容部本体210および収容部上部211を含む。収容部本体210は、平面視の短手方向(図3中ではY方向)の中央部に突起部2101を備える。この突起部2101は、平面視の長手方向(図3中ではX方向)に延設される。これにより、突起部2101の両側には段差面2102が形成される。
【0025】
収容部本体210の突起部2101には、観察対象物を収容するための複数の孔H1が互いに離間して設けられる。複数の孔H1はX方向およびY方向に配列されて設けられ、個々の孔H1は突起部2101をZ方向に貫通するように設けられる。収容部本体210に形成され、液体に接する複数の孔H1のそれぞれの面には、親水性化の加工処理が行われうる。突起部2101の上面210Uは平坦化されており、この上面210Uに個々の孔H1の開口端が位置する。また、上面210Uにおける各孔H1およびその周囲を含む領域を平坦領域210Rとする(図3参照)。
【0026】
収容部上部211は、収容部本体210の上部に設けられ、収容部本体210に収容部上部211をセットした際に、収容部本体210の平坦領域210Rの上方に空間を形成するための開口2112を備える。言い換えると、収容部上部211における壁部2111aで取り囲まれた空間が開口2112である。開口2112は、収容部上部211を貫通して形成され、開口面積は、収容部上部211の上部と下部とで互いに異なる。下部開口2112bは、突起部210が挿入される部分であり、突起部210の形状とほぼ同じ大きさで形成される。
【0027】
一方、上部開口2112aは、平坦領域210Rの上方に空間を形成する部分であり、平坦領域210Rの形状とほぼ同じ大きさで形成される。即ち、上部開口2112aの開口面積の方が、下部開口2112bの開口面積よりも小さい。突起部210の上面210Uの一部が、上部開口2112aと下部開口2112bとの段差面SSに係合し、結果として、平坦領域210Rが上部開口2112aに臨むこととなる。その際、収容部上部211の下部211Lの一部は、収容部本体210の段差面2102に係合する。この状態において、上部開口2112aと平坦領域210Rとで囲まれた空間は、所定の液体を貯留するための貯留部として機能する。尚、開口2112の最上部2112cはテーパ状に広がって形成される。
【0028】
このように、開口2112の断面積を収容部上部211の上部と下部とで異なるものとし、断面積の小さい上部開口2112aで貯留部を形成して貯留容積を小さくしたことで、貯留部に貯留させる液体の量を少なくすることができる。また、収容部上部211に貯留部として形成され、貯留される液体と接するそれぞれの面には、複数の孔H1を形成する面と同様に親水性化の加工処理が行われうる。液体としては、観察対象物に対応する液体培地が用いられうるが、生理食塩水等の他の溶液が用いられてもよい。
【0029】
詳細については後述とするが、収容部本体210に設けられる複数の孔H1は、それぞれを独立して用いるのではなく、隣り合う2つ孔H1を一組とし、観察部22において孔H1の下端同士を接続してなるU字状の通路として用いられる。
【0030】
本実施形態においては、収容部本体210は非透光性材料で構成される。また、収容部上部211は透光性材料で構成されるものとする。尚、非透光性とは、可視光の透過率が比較的低いことを指し、例えば該透過率が50%以下、好適には30%以下、より好適には10%以下であるとよい。また、透光性とは、可視光の透過率が比較的高いことを指し、例えば該透過率が50%以上、好適には70%以上、より好適には90%以上であるとよい。他の実施形態として、収容部上部211は非透過性材料で構成されても良い。
【0031】
また、収容部本体210および収容部上部211は、一つの部材で構成されても良く、一つの部材で構成する場合、いずれも非透過性材料で構成されることが好ましい。
【0032】
観察部22は、収容部21の下部に設けられ、収容部21に収容された観察対象物を撮像部12により下方から観察可能に構成される。観察部22は、板材(第1の板材)221および板材(第2の板材)222を含む。板材221は、収容部本体210を下方から覆い、また、板材222は、この板材221を下方から覆う。板材222は、板材221を下方から覆い、実質的に透光性の材料で構成される。板材221は、本実施形態においては部分的に透光性の材料で構成されるものとするが、その全部が非透光性あるいは反射性の材料で構成されてもよい。また、表面が暗色系(例えば黒色)の素材を採用してもよい。板材221は、例えば、異方性のドライエッチング(誘導結合プラズマ式反応性イオンエッチング)で微細加工したシリコンディスク(シリコンウェハ)が採用される。板材221及び222は、本実施形態においては、平面視で同一サイズの矩形状の部材が採用される。板材221及び222の少なくとも一方は、上記隣り合う2つの孔H1が相互に通連するように構成されればよい。このことを、図5を参照しながら以下に述べる。
【0033】
図5は、板材221の斜視図を示す。本実施形態においては、板材221には、複数の孔H1に対応する複数の貫通孔H3が設けられる。板材221の下面には、複数の貫通孔H3のうち互いに隣り合う2つ(例えばH3a及びH3b)を接続する窪みCC1が設けられる。この窪みCC1は、その外縁が上記2つの貫通孔H3を取り囲むように設けられる。即ち、複数の貫通孔H3は、板材221の上面側では、複数の孔H1と対向する位置に互いに独立して設けられているのに対し、板材221の下面側では、上記隣り合う2つの孔H3が窪みCC1により連通することにより部分的に独立していない。本実施形態の場合、窪みCC1は、平面視長円状で設けられる。窪みCC1は、テラス、リセス等と称されてもよい。
【0034】
窪みCC1は、上記隣り合う2つの貫通孔H3の間において平坦部PLを含む。平坦部PLは平坦面PL1を含む。また、窪みCC1の外縁は側壁WPで構成される。側壁WPは、周壁部WP1、WP2及び二つのWP3を含む。周壁部WP1及びWP2は、長円における円周部に対応する壁部であり、周壁部WP3は長円における直線部に対応する壁部である。また、周壁部WP1は、上記2つの貫通孔H3の一方(ここではH3a)に臨む部分であり、周壁部WP2は、上記2つの貫通孔H3の他方(ここではH3b)に臨む部分である。
【0035】
具体的には、周壁部WP1は、貫通孔H3のサイズと同一サイズで形成される筒状の上部周壁部WP1Uと、上部周壁部WP1Uと連続して形成され且つ同一サイズで形成される半筒状の下部周壁部WP1Lと、を含む。また、周壁部WP2は、周壁部WP1同様、貫通孔H3のサイズと同一サイズで形成される筒状の上部周壁部WP2Uと、上部周壁部WP2Uと連続して形成され且つ同一サイズで形成される半筒状の下部周壁部WP2Lと、を含む。
【0036】
二つの周壁部WP3は、周壁部WP1及びWP2と接続する連続面を形成するようにそれぞれ設けられる。具体的には、二つの周壁部WP3は、周壁部WP1の下部周壁部WP1Lと、周壁部WP1の下部周壁部WP1Lと対向して設けられる周壁部WP2の下部周壁部WP2Lと、を接続する下部周壁部WP1Lおよび下部周壁部WP2Lの高さと同じ高さの連続面として、それぞれ設けられる。
【0037】
本実施形態においては、平面視において、個々の貫通孔H3は略円形に設けられ、周壁部WP1及びWP2の上部周壁部WP1Uおよび上部周壁部WP2Uのそれぞれは貫通孔H3の径と同径の円を描くように、また、周壁部WP1及びWP2の下部周壁部WP1Lおよび下部周壁部WP2Lのそれぞれは、貫通孔H3の径と同径の半円の円弧を描くように、設けられ、周壁部WP3は略直線を描くように設けられる。
【0038】
このように形成された板材221の下面、すなわち窪みCC1、を平板状の板材222で覆設することで、周壁部WP1、WP2、WP3、平坦部PLおよび板材221で囲まれた空間からなる通路が連絡通路220Wとして形成される(図6参照)。これにより、隣り合う2つの貫通孔H3の下部同士が連絡通路220Wを介して接続され、2つの貫通孔H3が繋がって1つの通路を形成する。そして、板材221の上面側において、隣り合う2つの孔H1に対応するそれぞれの貫通孔H3を連通させることで、収容部21に収容された観察対象物が、連絡通路220Wに滞在する際に撮像部12により観察することが可能となる。また、隣り合う複数の孔H1を連通する連絡通路220Wを形成し、連絡通路220Wを移動する液体と接する窪みCC1のそれぞれの面には、親水性化の加工処理が行われうる。
【0039】
尚、側壁WPの形状は、本実施形態に限られるものではなく、平面視において上記2つの貫通孔H3の全部を包含するように設けられればよい。また、貫通孔H3のサイズ(径)、WP1のサイズ(径)およびWP1のサイズ(径)は、それぞれの円弧が一致するように合わせられること(同一サイズであること)が好ましいが、観察の際に見えにくくなるなどの影響がなければ、互いに異なるサイズであってもよい。
【0040】
再び図4を参照すると、収容部本体210の本体下部210Lには、板材221の位置を規定するための規定部210aが設けられる。この規定部210aは、本実施形態においては収容部本体210の底面に陥凹して設けられた陥凹部であり、平面視において、該陥凹の形状は板材221の外形に従う。該陥凹部の深さは、板材221の厚みと同等またはそれ以上とされる。規定部210aである該陥凹に観察部22の板材221を嵌合させることにより、収容部21に対する観察部22の位置決めを適切に行うことができる。実際には、貫通孔H3に対応する周壁部WP1及びWP2の上部周壁部WP1Uおよび上部周壁部WP2Uの位置合わせが適切に行うことができればよい。代替的/付随的に、印字、切欠き等、所定のマークが規定部210aとして設けられてもよい。
【0041】
図6は、前述の収容部21および観察部22が相互に組み付けられて成る観察用ホルダ2の下方側斜視図を示す。観察部22の板材222は透光性材料で構成される。そのため、観察対象物は、上記2つの貫通孔H3(例えばH3a及びH3b)を繋ぐ連絡通路220Wに滞在する際に、撮像部12(図1図2参照)により観察部22を介して撮像可能となる。
【0042】
連絡通路220Wの一部を構成する平坦面PL1は、上記2つの貫通孔H3(例えばH3a及びH3b)の間の領域の全部が平坦面として設けられることが好ましいが、平坦部PLに含まれる平坦面PL1が該領域の一部のみに設けてもよく、その場合、該領域に部分的に段差が(平坦面PL1が他の平坦部PLと異なる高さ位置に)存在してもよい。
【0043】
図7Aは、複数の孔H1を通り且つX方向に沿った垂直面を切断面とする観察用ホルダ2の断面図を示す。図7Bは、図7AのVIIB‐VIIB線断面図を示す。また、図7Bは、破線で囲まれる観察部22の部分拡大図を含む。観察部22は、収容部本体210に設けられた複数の孔H1の内、隣り合う2つの孔H1が、対応の貫通孔H3a及びH3b並びに連絡通路220Wを介して接続され、一組の孔H1が一つの通路を形成することとなる。
【0044】
一例として、観察対象物が血液の場合、孔H1及び貫通孔H3は、例えば700[μm]~1300[μm]程度、より好適には900[μm]~1100[μm]程度、更に好適には1000[μm]程度、の直径で設けられるとよい。また、上記2つの貫通孔H3間の距離は、例えば350[μm]~650[μm]程度、より好適には450[μm]~550[μm]程度、更に好適には500[μm]程度、とするとよい。この場合、窪みCC1は、使用する体液などに存在する粒子の大きさに応じて決定されれば良い。例えばヒト血液の場合、その中に存在する白血球の大きさに応じて、例えば2[μm]~7[μm]程度、より好適には3[μm]~5[μm]程度、更に好適には4[μm]程度、の深さで設けられれば良い。また、組織から分離したがん細胞などの場合は、例えば12[μm]~5[μm]程度、好ましくは10[μm]~6[μm]程度、より好ましくは8[μm]程度の深さで設けられればよい。尚、平坦部PLに段差部を含む平坦面PL1を設ける際には、平坦部PLの深さを50-100[μm]とし、平坦面PL1と連絡通路220Wを形成する板材222の面との距離は、使用する体液などに存在する粒子の大きさより小さく、粒子が移動できる程度の距離で決定して設ければ良い。
【0045】
ここで、撮像部12による観察対象物の観察が適切に実現されるように、撮像部12は、+Z方向を指向範囲の中心とするように且つ上記2つの貫通孔H3(例えばH3a及びH3b)の間の窪みCC1内の平坦面PL1直下を走査するように、設置されるとよい。
【0046】
また、図7A図7Bからも分かるように、本実施形態においては、収容部本体210および収容部上部211は、それらの水平方向の一方向(ここではY方向)における幅が互いに等しくなるように構成される。これにより、収容部21、即ち観察用ホルダ2そのもの、の小型化が可能となり、支持台11上に複数の観察用ホルダ2を密に配列可能となる。本実施形態においては、水平方向の一方向(ここではY方向)を特に密に配列可能となる。
【0047】
また、本実施形態においては、収容部本体210および収容部上部211は、それらの水平方向の他方向(ここではX方向)における幅が互いに異なるように構成される。このような構成によれば、撮像部12の撮像範囲となる窪みCC1が設けられる観察部22、複数の孔H1が設けられる収容部本体210、及び、開口2112が設けられる収容部上部211を小サイズ化することが可能となり、観察用ホルダ2の製造材料を削減可能となる。また、ユーザによる観察用ホルダ2の把持の仕損じ(それに伴う観察用ホルダ2の落下等)を防止可能となる。なお、これらの幅は、X方向及びY方向の一方において互いに異なっていてもよいが、他の実施形態として、双方において互いに等しくてもよい。
【0048】
本実施形態の観察用ホルダ2においては、図3に示したように、収容部上部211に情報付与部23が設けられる。具体的には、情報付与部23は、収容部上部上面211Uに設けられる。情報付与部23は、観察対象物についての情報を付与可能なものである。この情報は観察対象情報とも表現可能であり、その例としては、被検者の氏名、観察対象物の採取日等が挙げられる。また、この情報は、被検者の氏名、観察対象物の採取日等と関連付けて管理されるコード情報でもよい。コード情報としては、複数の番号の組合せによる番号情報、二次元データ情報(例えば、バーコード、QRコード)等を採用することができる。コード情報は、不図示のコード情報読取装置により読み取ることが可能である。情報付与部23は、観察対象情報を印字可能に構成されてもよいし、観察対象情報が記載されたシールを貼付け可能に構成されてもよい。ユーザは、この情報付与部23を用いることにより観察対象物を比較的簡便に管理可能となる。
【0049】
(観察対象物の収容方法および観察方法について)
ユーザは、準備用支持台141に支持された観察用ホルダ2に、例えばシリンジ、スポイト等の所定の器具を用いて、開口H2から任意の孔H1にアクセス可能であり、個々の孔H1に観察対象物を収容することができる。より詳細には、先ず空間SP1及び孔H1に所定の液体(液体培地)が充填され、その後、観察部22により接続された互いに隣り合う2つの孔(一組の孔)H1の一方に観察対象物(例えば血液)が急速に注入される。これにより、その一部は連絡通路220Wおよび窪みCC1に流入する。観察に必要な十分量の細胞が窪みCC1に流入しない場合には、他方の孔H1側に負圧吸引を行うことにより窪みCC1に細胞を流入させることができる。ここで、図3からも分かるように、開口2112の最上部2112cは、例えば傾斜面を形成するように、設けられるとよい。これにより、ユーザは開口2112から任意の孔H1に適切にアクセス可能となる。
【0050】
観察対象物を収容済となった観察用ホルダ2は支持台11に移載され、該観察対象物は撮像部12により観察用ホルダ2の下方から観察部22を介して観察されうる。
【0051】
前述のとおり、本実施形態においては、収容部本体210は非透光性材料で構成され、また、収容部上部211は透光性材料で構成される。収容部本体210が非透光性材料で構成されていることから、観察対象部となる平坦面PL1と観察非対象部となる貫通孔H3との明暗を鮮明にすることができ、観察対象部となる平坦面PL1部分に注入される観察対象物は撮像部12により下方から観察部22を介して観察し易い。また、収容部上部211が透光性材料で構成されていることから、ユーザは、観察対象物を孔H1に収容する際には、開口2112および個々の孔H1の中の様子を上方および側方の双方から視認可能となる。
【0052】
他の実施形態として、ユーザがシリンジやスポイト等の所定の器具を用いて、開口2112から任意の孔H1にアクセスし、個々の孔H1に観察対象物を収容する作業に代わって、自動機により観察対象物を自動的に収容させるようにしても良い。この場合、収容部上部211を透過性材料で構成させなくても良く、収容部本体210および収容部上部211は何れも非透光性材料で構成されてもよい。収容部本体210および収容部上部211を何れも非透光性材料で構成させることで、個々の孔H1の位置を自動機に含まれる検出手段(例えば、カメラ)により上方から視認可能となり、観察対象物の収容作業を効率よく行うことが可能となる。
【0053】
再び図2を参照すると、観察用ホルダ2を支持する支持台11には、観察用ホルダ2を嵌合させて載置するための凹部111と、凹部111底部に上下方向に貫通する開口112と、が設けられる。凹部111の載置部111bが板材222の周縁部下面を支持することで観察対象部となる平坦面PL1部分までの高さが一定に維持され、撮像部12による観察対象物の下方からの観察が適切に実現可能となる。このことは、準備用支持台141についても同様である。
【0054】
観察用ホルダ2は、観察対象物についての観察が完了した後に廃棄可能であり、ディスポーザブルホルダ等と称されてもよい。即ち、観察用ホルダ2を使い捨て型(一度使用された後には破棄が推奨されるもの)とすることによって、測定試料と異なる観察対象物、いわゆるコンタミネーション、の混入を更に防止可能となる。よって、観察用ホルダ2は、その全体がユニット化されて構成されてもよい。例えば、収容部21及び観察部22(それらを構成する各要素)は分離不可に固定されてもよいし、また、収容部21においては、収容部本体210及び収容部上部211は分離不可に固定されてもよい。
【0055】
本実施形態では、ディスポーザブルホルダとしての観察用ホルダ2は、窪みCC1が設けられる観察部22、複数の孔H1が設けられる収容部本体210、及び、開口2112が設けられる収容部上部211を、それぞれに応じた形状ないし外形で構成して小サイズ化を実現させており、有効に活用可能となっている。
【0056】
(観察部の製造方法について)
前述のとおり、板材221及び222を含む上記観察部22は収容部21の下部に設けられる。これにより、収容部21および観察部22は容器を形成することとなる。この観点において、観察部22は、収容部底部、容器底部等と称されてもよいし、また、観察用ホルダ2は、観察用容器等と称されてもよい。このような観察部22は、観察用ホルダ2に構成部品として取付け可能な観察用チップとして個別に用意可能であり、公知の半導体製造技術を用いて作製可能である。
【0057】
図8A図8Iは、観察部22の製造方法の各工程を説明するための図である。本製造方法の概要は、板材221の下面に板材222を重ねた後、板材221及び222を陽極接合法により接合する、というものである。尚、以下においては、説明の容易化のため、本製造方法における主な工程に着目して述べるが、必要に応じて、洗浄処理、熱処理等が適宜行われうる。
【0058】
図8Aの工程では、板材221の材料となる半導体基板SB1を準備し、半導体基板SB1に対して酸化処理を行う。半導体基板SB1にはシリコン基板が好適に用いられうる。尚、この工程で形成される酸化膜OX1の膜厚は0.12μm(1200Å)程度とする。
【0059】
図8Bの工程では、図8Aの工程で得られた構造(説明の容易化のため、酸化膜OX1も含めて、本表現とする。以下の説明において同様とする。)の上面の一部に対してエッチング処理を行い、半導体基板SB1の上面の一部が露出するように酸化膜OX1を部分的に除去すると共に、該露出された半導体基板SB1を部分的に除去する。このエッチング処理は、例えば誘導結合型プラズマエッチングにより行われうる。また、エッチングにより除去された部分をエッチング部と称する。
【0060】
図8Cの工程では、図8Bの工程で得られた構造の上面に対して酸化処理を行い、エッチング部および既存の酸化膜OX1を新たな酸化膜OX1で覆う。この工程により、上面に段差を有する半導体基板SB1と、該上面を覆う酸化膜OX1とが得られる。酸化処理の後、CMP(化学機械研磨)処理等の研磨処理を行うことにより酸化膜OX1上面は平坦化されてもよい。
【0061】
図8Dの工程では、図8Cの工程で得られた構造の上面に金属膜M1を形成する。この工程は、スパッタリング法等、公知の堆積法により行われればよい。金属膜M1の材料としてはアルミニウムが好適に用いられうる。尚、この工程で形成される金属膜M1の膜厚は0.4μm程度とする。
【0062】
図8Eの工程では、図8Dの工程で得られた構造の上面の一部に対してエッチング処理を行い、半導体基板SB1の上面の一部が露出するように金属膜M1および酸化膜OX1を部分的に除去すると共に、該露出された半導体基板SB1を部分的に除去する。
【0063】
図8Fの工程では、図8Eの工程で形成されたエッチング部に対して更なるエッチング処理を行い、図8Eの工程で形成されたエッチング部の深さを深くする。これにより、エッチング部は半導体基板SB1における下面側の酸化膜OX1の近傍まで達する。
【0064】
図8Gの工程では、図8Fの工程で得られた構造の下面側に対してCMP処理等の研磨処理を行うことにより、エッチング部が半導体基板SB1を貫通する貫通孔H3となる。
【0065】
図8Hの工程では、図8Gの工程で得られた構造から金属膜M1および酸化膜OX1を除去し、また、付随的に表面酸化処理を行って酸化膜(不図示)を形成する。これにより得られる構造を板材221とする。
【0066】
図8Iの工程では、図8Hの工程で得られた板材221に板材222を重ね、それらを陽極接合法により接合する。板材222の材料には、透明で平坦性が担保される材質のものが採用され、採用される材質に応じて、固相接合法など他の適切な接合方法により接合させても良い。以上の手順により観察部22を作製することができる。
【0067】
前述の観察部22となる観察用チップは、実際には複数の板材221の製造をまとめて一度に行うことにより得られる。複数の観察用チップを一度に製造するため、複数の板材221の処理が可能な所定のサイズの第一親板材(ここではシリコン基板)に対して複数の板材221を製造するための上記処理を行う。次に、第一親板材と同一サイズの第二親板材(ここではガラス板)を重ねて接合させる。その後、該接合された第一及び第二親板材をダイシング等によりチップ毎に切り分ける切り分け工程を経ることで、複数の観察用チップを一度に製造可能である。
【0068】
なお、平坦部PLに段差を含む平坦面PL1を設けた異なる種類の観察用チップを製造する場合には、平坦面PL1と平坦部PLの他の面との境界部分に影が生じる恐れがある。そのため、段差として形成される段差壁面をそれぞれの面に対して垂直になるように直角加工することが好ましい。このことは、前述の製造方法と同様の製造方法により実現可能であるが、その際、境界部分を直角に加工するため直角加工が可能な厚みのシリコン基板(シリコンウェハ)が用いられると良い。
【0069】
(まとめ)
本実施形態によれば、観察用ホルダ2は収容部21および観察部22を備える。収容部21は、平面視で矩形形状を有し且つ観察対象物(例えば血液)を収容可能に構成される。観察部22は、収容部21の下部に設けられ、収容部21に収容された観察対象物を下方から観察可能に構成される。収容部21は、収容部本体210と、その上部に設けられた収容部上部211とを含む。収容部本体210には、観察対象物を収容するための複数の孔H1が設けられる。収容部上部211は、収容部本体210の上方の開口2112を取り囲む壁部2111aを含む。この壁部2111aは、所定の液体(液体培地)を開口2112内に貯留するための貯留部ないし堰き止め部として機能する。複数の孔H1は水平方向に配列されて設けられ、個々の孔H1は収容部本体210を上下方向に貫通して開口2112に連通する。また、複数の孔H1のうち隣り合う2つは観察部22において接続される。
【0070】
このような構成によれば、隣り合う2つの孔H1の間に位置しうる観察対象物は、観察部22を介して下方から観察可能となる。これにより、観察用ホルダ2を所定の支持台11上に複数並べた場合に、一度に多くの観察対象物、または、一つの観察対象物が有する複数の異なる特性を、簡便に、効率よく観察可能となる。また、液体と接するそれぞれの面に対して親水性化の加工処理を行うことで、液体の貯留や試料の注入および試料の観察位置への配置を容易に且つ確実に行うことができる。また、複数の孔H1の何れにも開口H2からアクセス可能となるため、医師・検査技師・研究者等のユーザは、観察対象物を比較的容易に任意の孔H1に収容可能となる。
【0071】
以上の説明においては、理解の容易化のため、各要素をその機能面に関連する名称で示したが、各要素は、実施形態で説明された内容を主機能として備えるものに限られるものではなく、それを補助的に備えるものであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I