(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】車両用ホイールエンド組立体
(51)【国際特許分類】
B60K 17/30 20060101AFI20231106BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20231106BHJP
B60B 35/14 20060101ALI20231106BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20231106BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20231106BHJP
【FI】
B60K17/30 Z
B60K17/06 G
B60B35/14 V
B60K17/04 Z
F16H57/04 E
F16H57/04 D
(21)【出願番号】P 2022519073
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2019076083
(87)【国際公開番号】W WO2021058105
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ザクリソン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】エールフェルト,ペール
(72)【発明者】
【氏名】ダーグ,インゲマル
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-51892(JP,A)
【文献】特開昭62-221918(JP,A)
【文献】特開2013-82370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/00
F16H 57/00
B60B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールスピンドル(2)と、
回転軸(A)を中心として前記ホイールスピンドル(2)に回転可能に取り付けられたホイールハブ(3)と、
前記ホイールハブ(3)を駆動するためのドライブシャフト(4)と、
前記ホイールハブ(3)の内側部(51)に配置され、前記ホイールハブ(3)を駆動するための前記ドライブシャフト(4)に接続された減速機(5)と、
前記ホイールスピンドル(3)に接続され、前記減速機(5)の少なくとも一部分を担持する減速機キャリア部材(6)と
を備えた車両用ホイールエンド組立体(1)であって、
前記車両用ホイールエンド組立体(1)が、前記ホイールハブ(3)内に潤滑剤を循環させるための潤滑剤ポンプ(7)と、該潤滑剤ポンプ(7)と前記ホイールハブ(3)の前記内側部(51)とを流体接続する潤滑剤導管(61)とをさらに備え、
前記ドライブシャフト(4)が、前記潤滑剤ポンプ(7)に駆動接続されて該潤滑剤ポンプ(7)を駆動し、
前記潤滑剤導管(61)の少なくとも一部分が、前記減速機キャリア部材(6)内に設けられる、車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項2】
前記潤滑剤導管(61)が、近位端(23)と遠位端(64)とを備え、前記近位端(23)が、前記潤滑剤ポンプ(7)に近接し、前記遠位端(64)が、前記車両用ホイールエンド組立体(1)が車両(100)に取り付けられたときに見えるように、前記ホイールハブ(3)の前記内側部(51)の垂直方向の下部(52)に設けられる、請求項1に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項3】
前記潤滑剤ポンプ(7)が、運転中に前記潤滑剤導管(61)を介して前記ホイールハブ(3)の前記内側部(51)から潤滑剤を排出するように構成された、請求項1または2に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項4】
前記潤滑剤ポンプ(7)が前記ホイールスピンドル(2)に取り付けられた、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項5】
前記潤滑剤ポンプ(7)が、前記ドライブシャフト(4)を周方向に囲む前記ホイールスピンドル(2)の潤滑剤ポンプ固定受け部(22)に設けられた、請求項4に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項6】
前記潤滑剤ポンプ(7)が、前記車両用ホイールエンド組立体(1)のホイールベアリング装置(8)またはブレーキディスク(9)あるいはそれらの両方の軸方向外側に配置された、請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項7】
前記潤滑剤ポンプ(7)が、前記減速機(5)の軸方向内側に配置された、請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項8】
前記潤滑剤管路(61)が、前記減速機キャリア部材(6)のキャリアアーム(62)内に設けられた、請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項9】
潤滑剤を一方向にのみ循環させるための一方向バルブ(63)をさらに備えた、請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項10】
前記潤滑材導管(61)がさらに、前記ホイールスピンドル(2)内に設けられた、請求項1から9のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項11】
前記循環剤ポンプ(7)がベーンポンプである、請求項1から10のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項12】
前記減速機(5)が遊星歯車減速機である、請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項13】
前記潤滑剤ポンプ(7)および前記潤滑剤導管(61)が閉鎖循環システム(70)の一部である、請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項14】
前記ホイールハブ(3)の前記内側部(51)を換気するための通気口(74)をさらに備える、請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項15】
前記潤滑剤導管(61)が、潤滑剤が流れるように適合された別個の管状部材を備える、請求項1から14のいずれか1項に記載の車両用ホイールエンド組立体(1)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の前記車両用ホイールエンド組立体(1)を備える車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイールエンド組立体、および車両用ホイールエンド組立体を備えた車両に関する。
【0002】
本発明は、トラックやバスや建設機械などの大型車両(重量車)に適用することができる。本発明は大型トラックに関連して説明するが、本発明はこの特定の車両に限定されるものではなく、軽量トラック、アーティキュレートホーラ、ショベルカー、ホイールローダ、バックホーローダなど、他の車両に適用することもできる。
【背景技術】
【0003】
車両用ホイールエンド組立体は、該ホイールエンド組立体のホイールハブを駆動するためのドライブシャフトを備えることがある。さらに、場合によっては、ホイールエンド組立体は、ドライブシャフトとホイールハブとの間にギヤ減速をもたらすための遊星ギヤなどの総合減速機も備えることがある。これは、ホイールエンド組立体が電気モータに駆動接続される場合に特に有用であるが、他のモータ/エンジンが使用される場合もある。
【0004】
EP1553332A1の特許出願は、駆動車軸に接続されたホイールエンドを開示しており、該ホイールエンドは、駆動車軸によって駆動されるギヤセットを備える。ギヤセットはギヤハウジング内に収容されており、駆動車軸は、ギヤハウジング内の所定の油量を維持するポンピング機構を含む。
【0005】
上記の開示は、ホイールエンドのギヤセットを潤滑する解決策を提示してはいるが、依然として、改良された潤滑式車両用ホイールエンド組立体の開発に向けた努力が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑み、本発明の目的は、少なくともいくつかの点において従来技術における欠点の少なくとも1つを軽減する、改良された車両用ホイールエンド組立体を提供し、および/または、少なくとも有用な代替案を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、請求項1に記載の車両用ホイールエンド組立体によって達成される。本発明の第2の態様によれば、この目的は、請求項16に記載の車両によって達成される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、ホイールスピンドルと、回転軸を中心としてホイールスピンドルに回転可能に取り付けられたホイールハブと、ホイールハブを駆動するためのドライブシャフトとを備える車両用ホイールエンド組立体によって達成される。車両用ホイールエンド組立体は、ホイールハブの内側部に配置され、ホイールハブを駆動するためのドライブシャフトに接続された減速ギヤ(減速機)と、ホイールスピンドルに接続され、減速機の少なくとも一部分を担持する減速機キャリア部材とをさらに備える。車両用ホイールエンド組立体は、ホイールハブ内に潤滑剤を循環させるための潤滑剤ポンプと、該潤滑剤ポンプとホイールハブの内側部とを流体接続する潤滑剤導管とをさらに備え、ドライブシャフトは、潤滑剤ポンプに駆動接続されて該潤滑剤ポンプを駆動し、潤滑剤導管の少なくとも一部分は、減速機キャリア部材内に設けられる。
【0009】
「減速機キャリア部材内に設けられる」という用語は、本明細書では、潤滑剤導管が減速機キャリア部材の物体/物質内に設けられることを意味している。それゆえ、また任意選択的に、潤滑剤導管は、減速機キャリア部材に一体化してもよい。
【0010】
本明細書に開示される本発明の提供により、車両用ホイールエンド組立体の潤滑が改善され、また、よりコンパクトな車両用ホイールエンド組立体が提供される。より詳細には、本明細書に規定されるように、潤滑剤導管の少なくとも一部分を減速機キャリア部材内に設けることにより、別個のパイプなどが不要となり、より少ない構成要素から成るよりコンパクトな構成が提供される。さらに、車両用ホイールエンド組立体の別個の部品の数を低減または最小化することによって、より信頼性の高い構成を提供することができ、また、例えばパイプ漏れや故障などの起こり得るリスクを低減することができる。さらに、本明細書に開示される本構成は、潤滑剤の循環を改善し、それによって、運転中の減速機の冷却を改善できることも示されている。使用される潤滑剤は、好ましくは油であるが、他の種類の潤滑剤を使用することもできる。
【0011】
任意選択的に、潤滑剤導管は、近位端と遠位端とを備えてもよく、近位端は、潤滑剤ポンプに近接し、遠位端は、車両用ホイールエンド組立体が車両に取り付けられたときに見えるように、ホイールハブの内側部の垂直方向の下部に設けられる。それによって、潤滑剤導管は、有利には、ホイールハブの内側部から潤滑剤を排出するために使用することができる。本明細書で使用される垂直方向の下部とは、内側部の底面に近接するなど、少なくとも、ホイールハブの径方向中心と交差する水平面より下方に設けられることを意味する。
【0012】
任意選択的に、潤滑剤ポンプは、運転中に潤滑剤導管を介してホイールハブの内側部から潤滑剤を排出するように構成してもよい。
【0013】
任意選択的に、潤滑剤ポンプは、ホイールスピンドルに取り付けてもよい。潤滑剤ポンプをホイールスピンドルに取り付けることは、簡略化された構成を提供し得る点、および/または構成がよりコンパクトとなり得る点で有益であることが示されている。設計上の制限により、一般的に車両においてホイールエンド組立体が利用可能な空間は限られているため、よりコンパクトな構成が望まれる。さらに任意選択的に、潤滑剤ポンプは、ドライブシャフトを周方向に囲む、ホイールスピンドルの潤滑剤ポンプ固定(seat)受け部に設けてもよい。潤滑剤ポンプ固定受け部がドライブシャフトを周方向に囲むことで、取り付けの簡略化を図ることができ、よりコンパクトな構成とすることも可能である。
【0014】
任意選択的に、潤滑剤ポンプは、車両用ホイールエンド組立体のホイールベアリング装置および/またはブレーキディスクの軸方向外側に配置してもよい。それにより、潤滑剤ポンプを、減速機が設けられている内側部から潤滑剤導管を介して排出されるべき潤滑剤のより近くに配置することができる。潤滑剤ポンプを減速機が設けられている内側部のより近くに配置することで、ポンプの吸引能力が向上することが示されており、すなわち、潤滑剤ポンプと潤滑剤が存在する内側部との間の距離を短くすることは有益である。さらに任意選択的に、潤滑剤ポンプは、減速機の軸方向内側に配置してもよく、それによって、よりコンパクトな車両用ホイールエンド組立体が提供される。軸方向とは、本明細書では、ホイールハブの回転軸に沿う方向を意味する。任意選択的に、減速機は、車両用ホイールエンド組立体の軸方向最外側の位置に配置される。
【0015】
任意選択的に、潤滑剤管路は、減速機キャリア部材のキャリアアーム内に設けてもよい。したがって、減速機キャリア部材は、ホイールハブの回転軸から半径方向に延びる3、4、5または6個など、1つまたは複数のキャリアアームを備えてもよい。別の例として、減速機キャリア部材は、ディスクおよび/またはカップ形状であってもよく、その場合潤滑剤導管は、ディスクおよび/またはカップ形状の減速機キャリア部材内に設けられる。
【0016】
任意選択的に、車両用ホイールエンド組立体は、潤滑剤を一方向にのみ循環させるための一方向バルブをさらに備えてもよい。さらに任意選択的に、一方向バルブは、減速機キャリア部材内の潤滑剤導管に設けてもよい。したがって、一方向バルブは、ホイールハブが回転していないとき、または、例えば車両がバックしているときなど、反対方向に回転しているときに起こり得る、潤滑剤の反対方向への漏れを防止することができる。さらに、一方向バルブにより、常に潤滑剤ポンプ内に潤滑剤がある状態を保つことができ、それによって、空気が送り込まれるリスクを回避または低減することができる。さらに任意選択的に、車両用ホイールエンド組立体は、潤滑剤が反対方向に循環しようとする際に一方向バルブに対してかかり得る圧力の上昇を低減または抑止するように構成された補助バルブ、例えばバイパスバルブをさらに備えてもよい。
【0017】
任意選択的に、潤滑材導管はさらに、ホイールスピンドル内に設けてもよい。例えば、潤滑剤ポンプが上述の固定受け部(シート受け部)に設けられている場合、潤滑剤導管をさらにホイールスピンドル内に設けることが有利となり得る。それにより、潤滑剤ポンプと、減速機キャリア部材内に設けられた潤滑剤導管の一部分とを流体接続するためのさらなる配管等が不要になる。
【0018】
任意選択的に、潤滑剤ポンプは、ベーンポンプであってもよい。ベーンポンプは、効率的な方法で潤滑剤を圧送することができ、またコンパクトで、例えば、上記の固定受け部など、ホイールスピンドルの周囲に配置できることが示されている。ベーンポンプおよびその機能は当業者にとって周知であり、従って、本明細書ではこれ以上詳述しない。
【0019】
任意選択的に、減速機は遊星ギヤ(遊星歯車減速機)であってもよい。遊星ギヤは、所望の速度に減速でき、また、特にその軸方向で見た場合にコンパクトであるという点で有利である。
【0020】
任意選択的に、潤滑剤ポンプおよび潤滑剤導管は、閉鎖潤滑システムの一部であってもよい。例えば、閉鎖潤滑システムは、タンクなどの潤滑剤リザーバを備えてもよい。潤滑剤が潤滑剤リザーバから汲み出されて内側部に流動し、潤滑剤ポンプによって該内側部から汲み上げられて潤滑剤リザーバに還流することにより、循環型潤滑システムが形成される。さらに任意選択的に、車両用ホイールエンド組立体は、ホイールハブの内側部を換気するための通気口をさらに備えてもよい。
【0021】
任意選択的に、潤滑剤導管は、潤滑剤が流れるように適合された別個の管状部材を備えてもよい。よって、管状部材は、減速機キャリア部材の孔内など、少なくとも部分的に減速機キャリア部材内に設けてもよい。管状部材は、鋼、アルミニウム、真鍮、銅、ポリマーなど、任意の適切な材料で構成してもよい。前述の一方向バルブはさらに、管状部材に設けてもよい。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、本発明の目的は、本発明の第1の態様の実施形態のいずれか1つによる車両用ホイールエンド組立体を備える車両によって達成される。
【0023】
本発明の第2の態様によって提供される利点および効果は、本発明の第1の態様の実施形態による車両用ホイールエンド組立体によって提供される利点および効果とほぼ同様である。また、本発明の第2の態様のすべての実施形態は、本発明の第1の態様のすべての実施形態に適用可能であり、組み合わせることができ、その逆もまた然りであることに留意されたい。
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、例として挙げた本発明の実施形態について、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の例示的な実施形態によるトラックの形態としての車両の側面図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による車両用ホイールエンド組立体の断面図である。
【
図3】
図2に示すような車両用ホイールエンド組立体の別の断面図である。
【
図4】
図2および
図3に示されるような車両用ホイールエンド組立体のさらに別の断面図である。
【0026】
図面は、本発明の実施形態を図式的に例示するものであり、したがって、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。ここで示し、説明する実施形態は例示的なものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。また、本発明をより良く説明し、例示するために、図面の一部詳細は誇張されている場合があることに留意されたい。同一の参照文字は、他に表現されていない限り、説明を通じて同一の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、トラック100の形態としての車両を示す。トラック100は、例えば
図2~4に示されるような車両用ホイールエンド組立体1を備える。車両用ホイールエンド組立体1は、ここではフロントホイールエンド組立体である。しかしながら、車両用ホイールエンド組立体1は、他の位置、例えば1箇所以上の後方位置に設けてもよいことを理解されたい。車両用ホイールエンド組立体1のドライブシャフト4は、1つ以上の電気モータ(図示せず)および/または内燃機関に駆動接続してもよい。トラック100が示されているが、本発明は、バス、建設機械車両等の他のタイプの車両にも使用できることを理解されたい。
【0028】
例えば
図2は、例示的な実施形態による車両用ホイールエンド組立体1の断面図を示す。断面は、車両用ホイールエンド組立体1の回転軸Aによって画定される断面平面である。車両用ホイールエンド組立体1は、ホイールスピンドル2と、ホイールスピンドル2に回転軸Aを中心に回転可能に取り付けられたホイールハブ3とを備え、さらに、ホイールハブ3を駆動するためのドライブシャフト4と、ホイールハブ3の内側部51に配置された減速ギヤ(減速機)5とを備え、該減速機5は、ホイールハブ3を駆動するためのドライブシャフト4と接続されている。図示の実施形態では、ドライブシャフト4は、一方がホイールスピンドル2に取り付けられたローリングベアリング41によって支持され、軸方向外周側が減速機5によって支持されている。より詳細には、ドライブシャフトは、図示の実施形態では遊星ギヤ(遊星歯車減速機)である減速機5の太陽歯車53によって支持され、これに取り付けられている。
【0029】
車両用ホイールエンド組立体1は、ホイールスピンドル2に接続された減速機キャリア部材6をさらに備え、該減速機キャリア部材6は、少なくとも部分的に減速機5、すなわち遊星歯車減速機を担持している。より詳細には、図示の実施形態では、減速機キャリア部材6は、遊星歯車減速機5の外輪歯車54を担持している。太陽歯車53と外輪歯車54との間に遊星歯車55が設けられている。ホイールハブ3には、主遊星歯車キャリア部材57が接続され、遊星歯車減速機5を担持している。主遊星歯車キャリア部材57は、遊星歯車55に接続されている。車両用ホイールエンド組立体1は、ホイールハブ3内に潤滑剤を循環させる潤滑剤ポンプ7と、潤滑剤ポンプ7とホイールハブ3の内側部51とを流体接続する潤滑剤導管61とをさらに備える。ドライブシャフト4は、潤滑剤ポンプ7に駆動接続されて該潤滑剤ポンプ7を駆動し、潤滑剤導管61の少なくとも一部は、減速機キャリア部材6内に設けられている。減速機5が配置された内側部51は、外側キャップ56によって外側から閉塞されている。
【0030】
さらに、例えば
図2に示すように、潤滑剤導管61は、近位端23と遠位端64を備え、近位端23は潤滑剤ポンプ7に近接し、遠位端64は、車両用ホイールエンド組立体1が車両100に取り付けられたときに見えるように、ホイールハブ3の内側部51の垂直方向の下部52に設けられている。内側部51に供給された潤滑剤は、重力により、下部52、すなわち内側部51の底部に流れることになる。これにより、潤滑剤ポンプ7は、運転中、すなわちホイールハブ3が一方向に回転しているときに、潤滑剤導管61を介してホイールハブ3の内側部51から潤滑剤を効率的に排出することができる。
【0031】
例えば
図2からさらに分かるように、潤滑剤ポンプ7は、ホイールスピンドル2に取り付けられている。より詳細には、潤滑剤ポンプ7は、ホイールスピンドル2の潤滑剤ポンプ固定受け部22に設けられており、この潤滑剤ポンプ固定受け部22は、ドライブシャフト4を周方向に囲んでおり、すなわち回転軸Aを周方向に囲んでいる。
【0032】
潤滑剤ポンプ7はさらに、車両用ホイールエンド組立体1のホイールベアリング装置8およびブレーキディスク9の軸方向外側、さらに減速機5の軸方向内側に配置されている。図示のように、減速機5は、車両用ホイールエンド組立体1の軸方向最外側に配置してもよい。したがって、別の言い方をすれば、潤滑剤ポンプ7は、軸方向においてホイールベアリング装置8/ブレーキディスク9と減速機5との間に設けられる。ホイールベアリング装置8は、図示の実施形態では、テーパーローラベアリングユニットの形態である。しかし、アンギュラボールベアリング、スラストローラベアリング、スライド/プレーンベアリングなど、他のタイプのベアリングも使用できることを理解されたい。
【0033】
図示の減速機キャリア部材6は、回転軸Aから半径方向外側に延びる複数のキャリアアームによって形成されており、よって、潤滑剤導管61は、該キャリアアーム62の1つの中に設けられている。実際には、潤滑剤導管61は、内側部51の下部52に向かって半径方向に延びるキャリアアーム62内に設けられている。
【0034】
車両用ホイールエンド組立体1は、潤滑剤を一方向にのみ循環させるための一方向バルブ63をさらに備える。一方向バルブ63は、ここでは、潤滑剤導管61内およびキャリアアーム62内に設けられている。
【0035】
潤滑剤導管61はさらに、ホイールスピンドル2内に設けられ、固定受け部22に取り付けられた潤滑剤ポンプ7まで延びている。これにより、キャリア部材6の外側にパイプ等の別部材を追加で設けることなく、内側部51の下部52から潤滑剤ポンプ7までの効率的な流路が実現される。潤滑剤導管61のうち、ホイールスピンドル2内に設けられる部分は、孔(ボア)であることが好ましく、ドリル孔であってもよい。上述したように、潤滑剤導管61は、潤滑剤が流れるように適合され、キャリア部材6内およびホイールスピンドル2内に設けられた潤滑剤導管61の部分のうち少なくとも一方に延在する管状部材(図示せず)を備えてもよい。
【0036】
例えば
図2に示すような潤滑剤ポンプ7は、ベーンポンプである。ベーンポンプは、コンパクトであり、また、満足なポンプ効果が得られるという点で有益であることが示されている。ベーンポンプは当業者にとって周知であるため、本明細書ではこれ以上の詳細な説明は行わない。
【0037】
潤滑剤ポンプ7および潤滑剤導管61は、閉鎖潤滑システム70の一部である。閉鎖潤滑システム70は、例えば
図3および4に示されており、潤滑剤を貯蔵することができる潤滑剤リザーバ71を備える。潤滑剤は、好ましくは油である。潤滑剤リザーバ71は、流路72を介して内側部51に流体接続されている。流路72は、潤滑剤リザーバ71から内側部51に潤滑剤を流動させるように構成されている。例えば
図4から分かるように、流路72は、ホイールスピンドル2内に設けてもよい。より詳細には、流路72は、ホイールスピンドル2内に、ホイールスピンドル2とドライブシャフト4との間で内側部51に向かって軸方向に延びる空間722へと続く孔721を備えてもよい。空間722は、ドライブシャフト4に近接するスリーブ42と、ホイールスピンドル2の内周面とによって画定してもよい。潤滑剤リザーバ71はさらに、
図3に示すように、戻り流路73によって内側部51に流体接続してもよい。戻り流路73もまた、ホイールスピンドル2内に設けてもよく、図示の実施形態では、ホイールスピンドル2内の孔として設けられている。戻り流路73は、潤滑剤ポンプ7に流体接続されており、潤滑剤ポンプ7の作動時に潤滑剤リザーバ71に潤滑剤を還流させるように構成されている。潤滑剤ポンプ7は、上述したように、潤滑剤導管61を介して内側部51にさらに流体接続されている。例えば前述のような構成により、循環式閉鎖潤滑システム70が提供される。
【0038】
ホイールハブ3の内側部51は、ホイールハブ3の内側部51を換気するための通気口(図示せず)をさらに備えてもよい。通気口は、例えば、ホイールスピンドル2に設けられる孔として設けてもよい。
【0039】
本発明は、上述し図面に示した実施形態に限定されるものではなく、むしろ、当業者であれば添付の請求項の範囲内で多くの変更および修正を行うことができると認識するであろうことを理解されたい。