(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】シクロドデカノン及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/58 20060101AFI20231106BHJP
C07D 303/02 20060101ALI20231106BHJP
C07C 49/413 20060101ALI20231106BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
C07C45/58
C07D303/02
C07C49/413
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022524220
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(86)【国際出願番号】 KR2020014666
(87)【国際公開番号】W WO2021085966
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0135498
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ナムジン
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-226311(JP,A)
【文献】特開2016-034938(JP,A)
【文献】特表2009-541439(JP,A)
【文献】特開2004-115471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン化合物、リン酸化合物及びアミン化合物を含む触媒系の下で、シクロドデセン及び過酸化水素の混合物に過酸化水素を
、下記関係式を満たすように追加注入しながら熱を加えることによりエポキシ化シクロドデカンを製造するステップと、
[関係式]
50≦In
f
≦150
1.0≦In
m
≦3.0
上記関係式において、
In
f
は、追加注入される過酸化水素の1分当たりの注入流量(μl/min)であり、
In
m
は、シクロドデセン(A)と追加注入される過酸化水素(B)とのモル比(B/A)である
アルカリ金属ハライド触媒の下で、前記エポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物を分離することなく、転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップと、
前記シクロドデカノンを含む反応混合物に有機酸水溶液を混合して撹拌することによりシクロドデカノンを精製するステップとを含むものであ
り、
前記アルカリ金属ハライド触媒は、LiI、LiCl、およびLiBrから選択される1つ又は2つ以上の混合物を含み、
前記有機酸水溶液中の有機酸は、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、及びシュウ酸から選択される1種以上を含む、
シクロドデカノンの製造方法。
【請求項2】
前記混合物は、
シクロドデカンを含まないものである、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項3】
前記混合物は、
前記シクロドデセン100重量部を基準として、
1~10重量部の過酸化水素が混合されたものである、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項4】
前記タングステン化合物は、
タングステン酸、タングステン酸の塩又はこれらの混合物である、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項5】
前記リン酸化合物は、
無機リン酸、無機リン酸塩、有機リン酸又はこれらの混合物である、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項6】
前記アミン化合物は、
第三級アミン、第四級アンモニウム塩及びこれらの混合物である、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項7】
前記触媒系は、
前記シクロドデセン100重量部を基準として、
0.001~10重量部で含まれるものである、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項8】
前記触媒系は、
前記タングステン化合物(a)、前記リン酸化合物(b)及び前記アミン化合物(c)が1:0.1~2.0:0.1~5.0の重量比で混合されたものである、
請求項7に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項9】
前記エポキシ化シクロドデカンを製造するステップは、
50~120℃の温度条件で行われるものである、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項10】
前記転位反応は、
溶媒なしで行われるものである、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属ハライド触媒は、
前記エポキシ化シクロドデカン100重量部を基準として、
0.01~10重量部で含まれるものである、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項12】
前記有機酸水溶液は、有機酸1~95重量%を含む、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項13】
前記シクロドデカノンを精製するステップにおいては、前記シクロドデカノンを含む反応混合物100重量部に対して、前記有機酸水溶液20~150重量部を混合する、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項14】
前記シクロドデカノンを精製するステップは、水を混合して撹拌することにより追加精製するステップをさらに含む、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【請求項15】
前記シクロドデカノンを精製するステップで製造された反応生成物のアルカリ金属濃度は、100ppm以下である、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロドデカノン及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロドデカノン(CDON,cyclododecanone)は、ラウロラクタム(laurolactam)の製造のために用いられ、前記ラウロラクタムは、エンジニアリングプラスチックの1つであるポリアミド(例えば、ナイロン-12、ナイロン6-12など)を製造するためのモノマーとして用いられる有機化合物である。
【0003】
シクロドデカノンの製造は、一般的にシクロドデカトリエン(CDT,cyclododecatriene)から出発して行うことができる。具体的には、シクロドデカノンは、シクロドデカトリエンから選択的水素化反応でシクロドデセン(CDEN,cyclododecene)を製造し、その後それを酸化反応させて製造することができる。しかし、前述したシクロドデカノンの製造方法によれば、相当量の副生成物(例えば、シクロドデカノール、シクロドデカジオールなど)が発生するという問題がある。
【0004】
よって、上記従来技術の問題はラウロラクタムの製造のための全プロセスシステムを構築する上で不利な影響を及ぼすので、より効率的な方法を見付ける研究は依然として必要である。
【0005】
このような従来技術の問題を解決するために、本発明者らは、シクロドデカノンの製造方法に関する効率的な方法の研究を深化した。その結果、エポキシ化シクロドデセンを中間体とする中間ステップの導入において、過酸化水素の添加形態を調節することにより、著しく向上した転換率及び選択度でシクロドデカノンを製造できることを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い転換率及び選択度で製造されたシクロドデカノン及びこれを製造できる製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、過酸化水素の分解を効果的に抑制し、過酸化水素の選択度を高めることのできるシクロドデカノンの製造方法を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、より簡素化された工程構成により、経済性のあるシクロドデカノンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的のために、タングステン化合物、リン酸化合物及びアミン化合物を含む触媒系の下で、シクロドデセン及び過酸化水素の混合物に過酸化水素を追加注入しながら熱を加えることによりエポキシ化シクロドデカンを製造するステップと、アルカリ金属ハライド触媒の下で、前記エポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物を分離することなく、転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップと、前記シクロドデカノンを含む反応混合物に有機酸水溶液を混合して撹拌することによりシクロドデカノンを精製するステップとを含むものである、シクロドデカノンの製造方法を提供する。
【0010】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記追加注入される過酸化水素は、下記関係式を満たすように注入されるものであってもよい。
【0011】
[関係式]
50≦Inf≦150
1.0≦Inm≦3.0
[上記関係式において、
Infは、追加注入される過酸化水素の1分当たりの注入流量(μl/min)であり、
Inmは、シクロドデセン(A)と追加注入される過酸化水素(B)とのモル比(B/A)である。]
【0012】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記混合物は、実質的にシクロドデカンを含まないものであってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記混合物は、前記シクロドデセン100重量部を基準として、1~10重量部の過酸化水素が混合されたものであってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記タングステン化合物は、タングステン酸やタングステン酸の塩などから選択される1つ又は2つ以上の混合物であってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記リン酸化合物は、無機リン酸、無機リン酸塩、有機リン酸などから選択される1つ又は2つ以上の混合物であってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記アミン化合物は、第三級アミンや第四級アンモニウム塩などから選択される1つ又は2つ以上の混合物であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記触媒系は、前記シクロドデセン100重量部を基準として、0.001~10重量部で含まれるものであってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記触媒系のタングステン化合物(a)、リン酸化合物(b)及びアミン化合物(c)は、1:0.1~2.0:0.1~5.0の重量比で混合されたものであってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記エポキシ化シクロドデカンを製造するステップは、50~120℃の温度条件で行われるものであってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記転位反応は、溶媒なしで行われるものであってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記アルカリ金属ハライド触媒は、前記エポキシ化シクロドデカン100重量部を基準として、0.01~10重量部で含まれるものであってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法によれば、前記有機酸水溶液は、有機酸1~95重量%を含むものであってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法によれば、前記シクロドデカノンを精製するステップは、前記シクロドデカノンを含む反応混合物100重量部に対して、前記有機酸水溶液20~150重量部を混合するものであってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法によれば、前記シクロドデカノンを精製するステップは、水を混合して撹拌することにより追加精製するステップをさらに含むものであってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法によれば、前記シクロドデカノンを精製するステップで製造された反応生成物のアルカリ金属濃度は、100ppm以下のものであってもよい。
【0026】
本発明の他の一実施形態によれば、前記シクロドデカノンの製造方法で製造されたものであって、前記シクロドデセンの転換率及び前記エポキシ化シクロドデカンの転換率がそれぞれ90%以上である、シクロドデカノンを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、最終生成物中で反応副生成物として得られるシクロドデカノールやシクロドデカジオールなどの割合を画期的に減少させることができ、高い転換率でシクロドデカノンを製造することができる。
【0028】
また、本発明によれば、反応副生成物の除去のための分離・精製工程も不要である。よって、本発明は、簡素化された工程構成を提供することにより、商業的に大量生産することが容易なシクロドデカノンの製造方法を提供することができるという利点を有する。
【0029】
さらに、本発明によれば、過酸化水素の添加形態を調節して過酸化水素自体の分解を効果的に抑制し、過酸化水素の選択度を高めることができる。よって、本発明は、過酸化水素の分解による爆発的な反応を防止し、それによる反応熱を効率的に制御することにより、工程利便性を向上させることができるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明によるシクロドデカノンの製造方法について詳細に説明するが、ここで用いられる技術用語及び科学用語において、他の定義がなければ、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、以下の説明において、本発明の要旨を不要に不明にし得る公知の機能及び構成についての説明は省略する。
【0031】
本発明は、前述した従来技術の問題に着目し、非常に経済的な方法で高い転換率及び選択度を実現できるシクロドデカノンの製造方法を提案する。
【0032】
本発明によれば、高い転換率を実現し、未反応物及び反応副生成物の生成を最小限に抑えることから、追加の分離及び精製ステップを伴わないので、工程構成を簡素化することができる。また、本発明によれば、触媒活性を極大化し、過酸化水素による爆発危険性のない安定した製造工程を提供することができる。
【0033】
よって、本発明によれば、高い転換率及び選択度を示すことはもとより、連続的に運転することのできる簡素化された工程構成により、実際の産業への適用に非常に有利であるという利点を有する。
【0034】
本発明は、前述したように、過酸化水素の添加形態を調節することにより、予想できなかった転換率及び選択度の向上を確認すると共に、アルカリ金属ハライド触媒の下で行われる転位反応により効率的なシクロドデカノンの製造が可能であることを確認し、これを提案する。
【0035】
以下、本発明のシクロドデカノンの製造方法について具体的に説明する。
【0036】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法は、(1)タングステン化合物、リン酸化合物及びアミン化合物を含む触媒系の下で、シクロドデセン及び過酸化水素の混合物に過酸化水素を追加注入しながら熱を加えることによりエポキシ化シクロドデカンを製造するステップと、(2)アルカリ金属ハライド触媒の下で、前記エポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物から転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップと、(3)前記シクロドデカノンを含む反応混合物に有機酸水溶液を混合して撹拌することによりシクロドデカノンを精製するステップとを含む。ここで、前記エポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物は、ステップ(1)で追加の分離及び精製工程なしに用いられるものであってもよい。
【0037】
具体的には、本発明によるシクロドデカノンの製造方法において、前記過酸化水素の添加形態は、前記シクロドデセン100重量部を基準として、10重量部以下の過酸化水素を混合した混合物を含む反応器内に連続的に過酸化水素を追加投入する形態であってもよい。
【0038】
本発明による転換率及び選択度の向上は、前述した過酸化水素の添加形態によるが、注入される全過酸化水素のモル比(シクロドデカノン基準)とそれを注入する流量によって、その効果が驚くべき向上するという点で、本発明は注目される。
【0039】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、追加注入される過酸化水素は、前述した添加形態によることを特徴とし、下記関係式を満たすように注入される場合、驚くべき向上した転換率及び選択度を実現することができる。
【0040】
[関係式]
50≦Inf≦150
1.0≦Inm≦3.0
[上記関係式において、
Infは、追加注入される過酸化水素(B)の流量(μl/min)であり、
Inmは、シクロドデセン(A)と追加注入される過酸化水素(B)とのモル比(B/A)である。]
【0041】
前記Infは、具体的には60~140μl/min、より具体的には70~120μl/minの流量を満たすものであってもよい。ここで、前記Infは、0.1Lの反応器を基準とする流量であり、反応器の容量の増加に応じて定量的に増加した数値の流量によるようにしてもよい。
【0042】
一例として、追加注入される過酸化水素(B)は、ポンプにより、反応溶液を含む反応器に前述した流量で注入されるようにしてもよい。
【0043】
一例として、前記過酸化水素は、純粋過酸化水素や過酸化水素水溶液などであってもよく、前記過酸化水素水溶液は、30wt%、34.5wt%、50wt%などの濃度のものであってもよい。
【0044】
また、前記Inmは、具体的には1.5~2.5のモル比(B/A)、より具体的には2.0~2.4のモル比(B/A)を満たすものであってもよい。
【0045】
上記関係式を満たさない場合、過量の反応副生成物の生成をもたらし、過酸化水素の分解が促進され、エポキシ化に対する選択度(過酸化水素の選択度)が低下し、効率において不利であるので好ましくない。また、過量の過酸化水素の供給は、工程中に2つの液相系の界面温度を高め、過酸化された形態の反応副生成物を急激に生成させるので好ましくない。
【0046】
上記関係式を満たさない場合に生成される反応副生成物は、シクロドデカノール、シクロドデカジオールなどである。よって、本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法の出発物質である前記シクロドデセン又はシクロドデセンを含む混合物は、実質的にシクロドデカンを含まないものであってもよい。
【0047】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記混合物は、前記シクロドデセン100重量部を基準として、1~10重量部の過酸化水素が混合されたものであってもよく、具体的には1~8重量部、より具体的には1~5重量部の過酸化水素が前記シクロドデセンと混合されたものであってもよい。前記混合物に含まれる少量の過酸化水素は、酸化剤としての目的ではなく、触媒活性を極大化する用途のものである。よって、前記混合物に含まれる過酸化水素の量が上記範囲を外れる場合は、触媒活性が低下するので好ましくない。
【0048】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記触媒系に含まれ得る前記タングステン化合物は、タングステン酸やタングステン酸の塩などから選択される1つ又は2つ以上の混合物であってもよい。
【0049】
前記タングステン化合物の一例としては、三酸化タングステンの一水和物形態又は二水和物形態のタングステン酸;タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウムなどのタングステン酸塩;などが挙げられる。
【0050】
一例として、前記触媒系に含まれるタングステン化合物が前述したタングステン酸を含む場合、不均一触媒系の形態を有し得る。
【0051】
一例として、前記触媒系に含まれるタングステン化合物が前述したタングステン酸塩から選択される1つ又は2つ以上の混合物を含む場合、均一触媒系の形態を有し得る。
【0052】
一例として、前記触媒系は、前述したタングステン酸と前述したタングステン酸塩を同時に含む場合、より向上した転換率を実現できるので好ましい。
【0053】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記触媒系に含まれ得る前記リン酸化合物は、無機リン酸、無機リン酸塩、有機リン酸などから選択される1つ又は2つ以上の混合物であってもよい。
【0054】
前記リン酸化合物の一例としては、リン酸、ポリリン酸、ピロリン酸などの無機リン酸;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウムなどの無機リン酸塩;モノメチルリン酸、ジメチルリン酸、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリフェニルリン酸などの有機リン酸;などが挙げられる。
【0055】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記触媒系に含まれ得る前記アミン化合物は、第三級アミンや第四級アンモニウム塩などから選択される1つ又は2つ以上の混合物であってもよい。
【0056】
前記アミン化合物としては、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ブチルジメチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリイソアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン及びトリ-(2-エチルヘキシル)アミンなどから選択される第三級アミン;並びにドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリブチルアンモニウム塩及びメチルトリオクチルアンモニウム塩などから選択される第四級アンモニウム塩;などが挙げられる。
【0057】
具体的には、前記エポキシ化シクロドデカンを製造するステップ(1)は、シクロドデセンを含む液相及び過酸化水素水溶液を含む他の液相からなる2つの液相系で酸化が起こり、反応終了後、2つの液相系の相分離が早く起こることが好ましい。よって、前記触媒系に含まれるアミン化合物は、炭素数3以上、好ましくは炭素数5以上、より好ましくは炭素数7以上の長鎖アルキルを含むことが望ましい。
【0058】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記触媒系は、前記シクロドデセン100重量部を基準として、0.001~10重量部で含まれるものであってもよく、具体的には0.01~5重量部、より具体的には0.1~1.0重量部で含まれるものであってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記触媒系のタングステン化合物(a)、リン酸化合物(b)及びアミン化合物(c)は、1:0.1~2.0:0.1~5.0の重量比(a:b:c)で混合されたものであってもよい。前記重量比(a:b:c)は、具体的には1:0.5~1.5:0.5~3.0であってもよく、より具体的には1:0.8~1.0:1.0~2.5であってもよい。
【0060】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記エポキシ化シクロドデカンを製造するステップ(1)は、50~120℃の温度条件で行われるものであってもよい。
【0061】
一例として、前記ステップ(1)は、60~100℃の温度条件で0.5~12時間行われるものであってもよい。
【0062】
一例として、前記ステップ(1)は、70~90℃の温度条件で2~8時間行われるものであってもよい。
【0063】
また、本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップ(2)は、アルカリ金属ハライド触媒の下で行われるものであってもよい。
【0064】
前記アルカリ金属ハライド触媒の一例としては、KI、NaI、LiI、NaCl、KCl、LiCl、NaBr、KBr、LiBrなどが挙げられ、これらから選択される1つ又は2つ以上の混合物が用いられてもよいことは言うまでもない。
【0065】
前記転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップ(2)は、溶媒なしで行われるものであってもよい。また、前記ステップ(2)は、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0066】
前記不活性ガスは、通常のものであれば限定されず、一例として、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、ネオンガスなどから選択される1つ又は2つ以上の混合ガスであってもよい。
【0067】
また、前記転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップ(2)は、前述したステップ(1)で得られたエポキシ化シクロドデカンを含む、精製されていない反応混合物を用いるものであってもよい。よって、前記ステップ(2)は、向上した転換率及び選択度を実現することができる。
【0068】
前記ステップ(1)で得られたエポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物は、後続のステップ(2)の転換率及び選択度にも好ましい影響を及ぼす。
【0069】
一例として、前記ステップ(1)は、前記シクロドデセンの転換率が90%以上であってもよく、具体的には95%以上99.99%以下又は95%以上99.9%以下であってもよく、より具体的には98%以上99.99%以下であってもよい。
【0070】
一例として、前記ステップ(2)は、前記エポキシ化シクロドデカンの転換率が90%以上であってもよく、具体的には95%以上99.99%以下又は95%以上99.9%以下であってもよく、より具体的には98%以上99.99%以下であってもよい。
【0071】
一例として、前記ステップ(1)で得られたエポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物は、ステップ(1)が完了した後に追加の分離及び精製工程を伴わず、後続のステップ(2)を連続工程として行うようにしてもよい。よって、本発明は、より簡素化された工程を提供することができる。
【0072】
前記転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップ(2)は、前記エポキシ化シクロドデカン100重量部を基準として、0.01~10重量部で含まれるものであってもよい。具体的には、前記アルカリ金属ハライド触媒は、0.1~5重量部、より具体的には0.5~3重量部で含まれることが好ましい。
【0073】
本発明の一実施形態によるシクロドデカノンの製造方法において、前記転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップ(2)は、100~300℃の温度条件で行われるものであってもよい。
【0074】
一例として、前記ステップ(2)は、120~250℃の温度条件で0.5~8時間行われるものであってもよい。
【0075】
一例として、前記ステップ(2)は、150~230℃の温度条件で0.5~6時間行われるものであってもよい。
【0076】
前記ステップ(3)は、前記シクロドデカノンを含む反応混合物に有機酸水溶液を混合して撹拌することによりシクロドデカノンを精製するステップである。
【0077】
本発明の前記第2ステップで使用されたアルカリ金属ハライド触媒は、極性溶媒において、特に溶媒中に酸素などの酸化性物質が存在する場合、これらと相互作用して有機層中に不純物として残存することがある。前記アルカリ金属ハライド触媒が残留することによって発生する問題を解決するために、シクロドデカノンを含む反応混合物に有機酸水溶液を混合して撹拌する簡素化工程をさらに行うことにより、当該触媒不純物を効果的に分離することができる。
【0078】
前記第3ステップの混合及び撹拌工程は、前記第2ステップの温度及び撹拌条件で温度を下げて行われるものであってもよい。例えば、50~150℃、例えば50~130℃、50~110℃、50~100℃又は70~90℃の温度で行うことができ、これらに限定されるものではない。
【0079】
前記有機酸水溶液は、有機酸1~95重量%を含む水溶液であってもよく、好ましくは5~80重量%、より好ましくは10~70重量%を含む水溶液であってもよい。有機酸の含有量が低すぎると、前記第2ステップの反応生成物の有機層中の触媒不純物を除去することが困難であり、有機酸の含有量が高すぎると、触媒不純物と有機酸の反応物を水相(water phase)に分離して除去することが困難である。
【0080】
前記第3ステップは、前記シクロドデカノンを含む反応混合物100重量部に対して、前記有機酸水溶液を、20~150重量部、例えば30~150重量部、40~150重量部、50~150重量部、80~150重量部又は80~120重量部含むものであってもよい。有機酸水溶液の含有量が20重量部未満であると、触媒不純物を除去することが困難であり、150重量部を超えると、処理すべき廃液が増加するので工程簡素化及びシクロドデカノン精製の面で好ましくない。
【0081】
前記有機酸としては、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸及び尿酸から選択される1種以上を用いてもよく、好ましくは酢酸又はギ酸、より好ましくは酢酸を用いてもよい。
【0082】
一例として、前記第3ステップで有機酸水溶液でシクロドデカノンを精製した後、さらに水を混合して撹拌することにより精製するステップをさらに含んでもよい。よって、前記有機層中に残存する触媒不純物をより効果的に除去することができる。
【0083】
前記第3ステップで製造された反応生成物のアルカリ金属濃度は、100ppm以下、95ppm以下、90ppm以下又は85ppm以下、好ましくは80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下又は50ppm以下、より好ましくは40ppm以下又は30ppm以下であってもよい。アルカリ金属濃度が上記範囲内の場合、シクロドデカノンに不純物として残存するアルカリ金属ハライド触媒が効果的に除去されたことを確認することができる。一方、前記アルカリ金属は、前記転位反応に使用されたアルカリ金属ハライド触媒に由来するものであってもよい。
【0084】
本発明の他の一態様として、前記シクロドデカノンの製造方法で製造されたものであって、前記シクロドデセンの転換率及び前記エポキシ化シクロドデカンの転換率がそれぞれ独立して90%以上、例えばそれぞれ独立して93%以上、それぞれ独立して95%以上、それぞれ独立して96%以上、好ましくはそれぞれ独立して97%以上、より好ましくはそれぞれ独立して98%以上である、シクロドデカノンを提供する。
【0085】
前述したように、本発明によるシクロドデカノンの製造方法は、ラウロラクタムの製造のための中間ステップであって、高い転換率及び選択度を与える。具体的には、前記シクロドデセンを用いたシクロドデカノンへの転換率は最小90%以上に達し、このような高い転換率は従来技術に比べて顕著な転換率である。このような顕著な効果により、本発明によるシクロドデカノンの製造方法は、ラウロラクタムの商業化のためのプロセスシステムへの適用に有用に活用できるものと期待される。
【0086】
以下、前述した本発明の製造方法を採用した一態様について具体的に説明する。
【0087】
一態様において、前述したシクロドデカノンの製造方法は、ラウロラクタムの製造時に反応中間ステップとして採用されるものであり得る。
【0088】
具体的には、ラウロラクタムの製造方法は、(1)タングステン化合物、リン酸化合物及びアミン化合物を含む触媒系の下で、シクロドデセン及び過酸化水素の混合物に過酸化水素を追加注入しながら熱を加えることによりエポキシ化シクロドデカンを製造するステップと、(2)アルカリ金属ハライド触媒の下で、前記エポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物から転位反応によりシクロドデカノンを製造するステップと、(3)前記シクロドデカノンからアンモニア酸化反応によりシクロドデカノンオキシムを製造するステップと、(4)前記シクロドデカノンオキシムからベックマン転位反応によりラウロラクタムを製造するステップとを含むものであってもよい。
【0089】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの製造方法は、前述した本発明のシクロドデカノンの製造方法を採用することにより、最終ステップまでの転換率に優れた効果を与える。ここで、前記最終ステップまでの転換率とは、前記ステップ(1)~前記ステップ(4)を含む全ステップ(Total step)での転換率を意味する。
【0090】
具体的には、本発明の一実施形態によるラウロラクタムの製造方法において、前記最終ステップまでの転換率は、90%以上であり、著しく向上した転換率で目的とするラウロラクタムを提供することができる。
【0091】
前記シクロドデカノンオキシムを製造するステップ(3)は、エタノールを含む溶媒中で、アンモニア;過酸化水素;チタンシリカライトなどを含む触媒;及び酢酸アンモニウムなどを含む反応活性剤;をシクロドデカノンと反応させて製造するものであってもよい。
【0092】
一例として、前記ステップ(3)においては、反応器内でエタノールを含む溶媒にシクロドデカノン、触媒及び反応活性剤を混合し、その後反応器内にアンモニアガスを1.3~2.5barになるまで注入するようにしてもよい。その後、ポンプにより、前記反応器内に過酸化水素を0.5~3.5ml/minの流量で注入するようにしてもよい。
【0093】
一例として、前記ステップ(3)は、50~100℃の温度条件で、15~70分間行われてもよい。
【0094】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの製造方法において、前記シクロドデカノンオキシムを製造するステップ(3)は、シクロドデカノンからの転換率が99%以上であってもよく、具体的には99~99.99%であってもよい。
【0095】
前記ラウロラクタムを製造するステップ(4)は、前述した製造方法で製造されたシクロドデカノンオキシムを用いて、通常のベックマン転位反応により製造することができる。
【0096】
前記ベックマン転位反応は、塩化シアヌル(Cyanuric chloride)などを含む主触媒と塩化亜鉛(Zinc chloride)などを含む助触媒とを混合した触媒系を用いて行うことができる。
【0097】
一例として、前記ステップ(4)は、イソプロピルシクロヘキサン(Isopropylcyclohexane)などを含む溶媒中で、70~130℃の温度条件で、1~20分間行われてもよい。
【0098】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの製造方法において、前記シクロドデカノンオキシムを製造するステップ(4)は、シクロドデカノンオキシムからの転換率が99%以上であってもよく、具体的には99~99.99%であってもよい。
【0099】
また、本発明の一実施形態によるラウロラクタムの製造方法において、前記ラウロラクタムの選択度は、99%以上であってもよく、具体的には99~99.99%であってもよい。
【0100】
以下、実施例を挙げて、本発明のエポキシ化シクロドデカンを中間体とする中間ステップを含む、ラウロラクタムの製造のための新たな方法についてより詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明は、これに限定されるものではなく、様々な形態で実現することができる。
【0101】
また、別途定義されない限り、全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者の一人に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本願で説明に用いられる用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであり、本発明を限定する意図ではない。
【0102】
なお、明細書において特に記載していない使用量の単位はgであり得る。
【実施例】
【0103】
(実施例1)
ステップ1.エポキシ化シクロドデカンの製造方法
【0104】
【0105】
高速撹拌回分(Batch)反応器(100ml)にシクロドデセン25g、H2WO40.075g、H3PO40.06g、トリ-n-オクチルアミン(Tri-n-octyl amine)0.105g、H2O1.4g、50wt%のH2O21.02gを入れた。その後、80℃で総4時間反応を進行させた。前記反応の間、反応器の内容物を1500rpmで撹拌させながら、ポンプにより1分当たり85μlの過酸化水素(50wt% in water)を追加注入させた。
【0106】
前記製造方法によるシクロドデセンの転換率は98.8%であり、選択度は99.9%であった。
【0107】
ステップ2.シクロドデカノンの製造方法
【0108】
【0109】
グローブボックス(Glovebox)を用いて、不活性条件(inert condition)で、50mlの丸底フラスコに前記ステップ1で得られたエポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物5g、リチウムブロマイド(LiBr)0.085gを入れた。その後、窒素バルーンを作製してフラスコに連結し、次いで、シリコーンオイルが入ったオイルバス(oil bath)に入れ、200℃で総2時間反応を進行させた。
【0110】
ステップ3.シクロドデカノンの精製方法
温度を80℃に下げ、その後10%酢酸(acetic acid)水溶液5gを入れて5分間強く撹拌した。撹拌を停止し、層分離が起こると水層を除去する。残っている有機層に水5gを入れて5分間強く撹拌して停止し、層分離が起こると水層を除去する。製造されたシクロドデカノンを含む有機層中のリチウム(Li)の濃度を下記表3に示した。
【0111】
前記製造方法によるエポキシ化シクロドデカンの転換率は99.5%であり、選択度は99.8%であった。
【0112】
(実施例2~実施例6)
下記表1に示したように過酸化水素の添加量及び添加形態を調節し、上記実施例1と同様の方法で各反応を行った。
【0113】
その結果、各ステップの転換率及び選択度は下記表2に示した。
【0114】
【0115】
【0116】
(実施例7)ステップ1.エポキシ化シクロドデカンの製造方法
高速撹拌回分(Batch)反応器(100ml)にシクロドデセン25g、Na2WO40.1g、H3PO40.06g、アリコット336(cognis)0.12g、H2O1.4g、50wt%のH2O21.02gを入れた。その後、80℃で総4時間反応を進行させた。前記反応の間、反応器の内容物を1500rpmで撹拌させながら、ポンプにより1分当たり85μlの過酸化水素を追加注入させた。
【0117】
前記製造方法によるシクロドデセンの転換率は96.0%であり、選択度は98.1%であった。
【0118】
ステップ2.シクロドデカノンの製造方法
前記ステップ1で得られたエポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物を用いて、上記実施例1のステップ2と同様の方法で反応を行った。
【0119】
ステップ3.シクロドデカノンの精製方法
上記実施例1のステップ3と同様の方法で反応を行った。
【0120】
前記製造方法によるエポキシ化シクロドデカンの転換率は99.0%であり、選択度は99.3%であった。
【0121】
(実施例8)
ステップ1.エポキシ化シクロドデカンの製造方法
高速撹拌回分(Batch)反応器(100ml)にシクロドデセン25g、H2WO40.075g、H3PO40.06g、アリコット336(cognis)0.12g、H2O1.4g、50wt%のH2O21.02gを入れた。その後、80℃で総4時間反応を進行させた。前記反応の間、反応器の内容物を1500rpmで撹拌させながら、ポンプにより1分当たり85μlの過酸化水素を追加注入させた。
【0122】
前記製造方法によるシクロドデセンの転換率は99.8%であり、選択度は98.8%であった。
【0123】
ステップ2.シクロドデカノンの製造方法
前記ステップ1で得られたエポキシ化シクロドデカンを含む反応混合物を用いて、上記実施例1のステップ2と同様の方法で反応を行った。
【0124】
ステップ3.シクロドデカノンの精製方法
上記実施例1のステップ3と同様の方法で反応を行った。
【0125】
前記製造方法によるエポキシ化シクロドデカンの転換率は99.0%であり、選択度は99.3%であった。
【0126】
前記製造方法によるエポキシ化シクロドデカンの転換率は99.2%であり、選択度は99.0%であった。
【0127】
(比較例1)
上記実施例1と同様の方法で行ったが、上記実施例1のステップ1で使用された過酸化水素の総使用量を初期反応器に混合して反応を行った。
【0128】
この場合、過酸化水素により爆発的な気体が発生して温度が上昇し、反応中に反応を終結しなければならなかった。
【0129】
上記実施例から、本発明によれば、シクロドデセンから高い転換率及び選択度でシクロドデカノンを製造できることが確認された。特に、追加注入される過酸化水素の流量及び総使用量が上記関係式を満たす場合、転換率及び選択度において驚くべき向上した効果を奏することが確認された。
【0130】
また、前記ステップ1において初期反応器に混合される過酸化水素の量が少ない場合は、触媒の形成に影響を受けて転換率が若干低下し得ることが確認された。さらに、前記ステップ1において初期反応器に混合される過酸化水素の量が過量である場合は、過酸化水素の総使用量が同じであっても、過酸化水素の分解によりエポキシ化に対する選択度が低下し、全転換率が低下し得ることが確認された。
【0131】
さらに、上記実施例から、本発明によれば、未反応物はもとより反応副生成物を最小限に抑え、反応副生成物の除去のための分離及び精製工程も不要であることが確認された。よって、本発明は、簡素化された工程構成を提供し、商業的な大量生産に有利である。
【0132】
(比較例2)
ステップ3を行っていないことを除き、実施例1と同様に進行した。製造されたシクロドデカノンを含む有機層中のリチウム(Li)の濃度を下記表3に示した。
【0133】
(比較例3)
ステップ3において10%酢酸水溶液5gの代わりに水5gを使用したことを除き、実施例1と同様に進行した。製造されたシクロドデカノンを含む有機層中のリチウム(Li)の濃度を下記表3に示した。
【0134】
(比較例4)
ステップ3において10%酢酸水溶液5gの代わりに100%酢酸5gを使用したことを除き、実施例1と同様に進行した。製造されたシクロドデカノンを含む有機層中のリチウム(Li)の濃度を下記表3に示した。
【0135】
【0136】
表3を参照すると、実施例1で製造されたシクロドデカノン反応生成物は、10重量%の有機酸水溶液で抽出する前に有機層中のリチウムの含有量が1,335ppmであったが、10重量%の酢酸で抽出した後に62ppm、水でさらに洗浄した後に30ppm以下に減少したことから、残存する触媒不純物が非常に効果的に除去されたことが分かった。比較例2は、洗浄工程を行っていないので、有機層中のリチウムの含有量が1,335ppmと高く、比較例3は、酢酸なしに水のみで2回洗浄したので、有機層中に残留するリチウムの含有量が435ppmと相対的に高かった。比較例4は、100重量%の酢酸で抽出したが、有機層と水層の分離が起こらなかったので、残存する触媒不純物を除去することができなかった。要するに、本発明によれば、簡素化された工程構成により、高い転換率及び選択度のシクロドデカノンを非常に経済的な条件で提供することができ、ラウロラクタムの商業化のためのプロセスシステムへの適用に有用に活用できるものと期待される。
【0137】
以上、本発明は特定の事項と限定された実施例により説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものにすぎず、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正及び変形が可能である。
【0138】
よって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて定められてはならず、添付の請求の範囲だけでなく、当該請求の範囲と均等であるか又は等価的変形がある全てが本発明の思想の範疇に属するものといえる。