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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/50 20060101AFI20231106BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20231106BHJP
   F16F 9/48 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
F16F9/50
F16F9/34
F16F9/48
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022540157
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026490
(87)【国際公開番号】W WO2022024766
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2020128097
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 崇将
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-067880(JP,A)
【文献】特表2018-514728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00-9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内の室を2室に区画するピストンと、
前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
前記ピストンの移動により上流側となる前記室から下流側となる前記室に作動流体が流れ出す第1通路と、
前記第1通路に設けられ、減衰力を発生する第1減衰力発生機構と、
前記第1通路とは別に設けられ、前記シリンダ内の室と連通する第2通路と、
前記第2通路に設けられ、前記第1減衰力発生機構よりもピストン速度低速時に開弁して減衰力を発生する第2減衰力発生機構と、
前記第2通路とは別に設けられ、前記シリンダ内の室と連通する第3通路と
記第3通路とは別に設けられ、前記第3通路と連通する第4通路と、
前記第3通路からの前記作動流体によって動作する可撓ディスクと、前記可撓ディスクが動作し、前記第2減衰力発生機構が開弁した後に開弁し、前記第3通路と前記第4通路とを流通させるリリーフ機構とを有する体積可変機構と、
を備える緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記可撓ディスクは、撓み可能であって、前記第2減衰力発生機構が開弁するよりも前に変形すると共に内周端部から外周端部までの間、または、内周端部から前記ピストンロッドの外径までの間に、上流側と下流側とを連通する連通孔が形成されており、
前記体積可変機構は、前記可撓ディスクの端面に当接し該可撓ディスクを付勢する付勢部材を有し、
前記リリーフ機構は、前記可撓ディスクの前記連通孔を該可撓ディスクの撓み量により開閉可能に構成されている緩衝器。
【請求項3】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記可撓ディスクは、撓み可能であって、前記第2減衰力発生機構が開弁するよりも前に変形すると共に内周側の中心軸に対して外周側の長さが異なる大径部と小径部とを有しており、
前記体積可変機構は、前記可撓ディスクの前記小径部よりも内側に配置されると共に該可撓ディスクの端面に当接し該可撓ディスクを付勢する付勢部材を有し、
前記リリーフ機構は、前記可撓ディスクの撓み量により前記付勢部材と該可撓ディスクとの当接部が前記小径部よりも外側に位置することで開弁する
緩衝器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の緩衝器であって、
前記リリーフ機構は、前記付勢部材前記可撓ディスクの端面に当接する部分が、該可撓ディスクの撓み量により、該可撓ディスクの端面から少なくとも一部離れる緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
本願は、2020年7月29日に、日本に出願された特願2020-128097号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器には、同一行程で開弁するバルブを2つ有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平2-41666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緩衝器において耐久性の向上を図る要望がある。
【0005】
本発明は、耐久性の向上を図ることが可能となる緩衝器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により上流側となる前記室から下流側となる前記室に作動流体が流れ出す第1通路と、前記第1通路に設けられ、減衰力を発生する第1減衰力発生機構と、前記第1通路とは別に設けられる第2通路と、前記第2通路に設けられ、前記第1減衰力発生機構よりもピストン速度低速時に開弁して減衰力を発生する第2減衰力発生機構と、前記第2通路とは別に設けられる第3通路と、前記第3通路に設けられる体積可変機構と、前記第3通路とは別に設けられる第4通路と、前記第4通路に設けられ、前記第2減衰力発生機構が開弁した後に開弁するリリーフ機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記した緩衝器によれば、耐久性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る緩衝器を示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る緩衝器のピストン周辺を示す部分断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る緩衝器の皿バネを示す平面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る緩衝器の可撓ディスクを示す平面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る緩衝器の伸び行程でのリリーフ機構の作動状態を示す部分断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る緩衝器の縮み行程でのリリーフ機構の作動状態を示す部分断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る緩衝器の油圧回路図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る緩衝器の可撓ディスクの変形例を示す平面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る緩衝器の可撓ディスクを示す平面図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図13】本発明の第4実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図14】本発明の第5実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図15】本発明の第6実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図16】本発明の第7実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図17】本発明の第8実施形態に係る緩衝器のピストン周辺を示す部分断面図である。
図18】本発明の第8実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図19】本発明の第8実施形態に係る緩衝器の油圧回路図である。
図20】本発明の第9実施形態に係る緩衝器の要部を示す部分断面図である。
図21】本発明の第9実施形態に係る緩衝器の可撓ディスクを示す平面図である。
図22】本発明の第9実施形態に係る緩衝器の可撓ディスクの変形例を示す平面図である。
図23】本発明の第9実施形態に係る緩衝器の可撓ディスクの別の変形例を示す平面図である。
図24】ベースバルブへの適用例を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態を図1図9に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図1図3図6図7図10図12図18図20における上側を「上」とし、図1図3図6図7図10図12図18図20における下側を「下」として説明する。
【0010】
<構成>
第1実施形態の緩衝器1は、鉄道車両や二輪、四輪等の自動車のサスペンション装置に用いられる緩衝器である。具体的には四輪自動車のサスペンション装置に用いられる緩衝器である。図1に示すように、緩衝器1は、円筒状の内筒2と、内筒2よりも大径で内筒2の径方向外側に設けられる有底筒状の外筒3とを有するシリンダ4を備えた複筒式の緩衝器である。外筒3と内筒2との間は、リザーバ室5となっている。
【0011】
外筒3は、軸方向両端側が軸方向中間部よりも小径とされた段付き円筒状の胴部材8と、胴部材8の軸方向の一端部を閉塞する底部材9とを有している。胴部材8の底部材9とは反対側は開口部となっている。
【0012】
緩衝器1は、内筒2の軸方向の一端部に設けられる円環状のバルブボディ12と、内筒2および外筒3の軸方向の他端部に設けられる円環状のロッドガイド13と、を有している。バルブボディ12は、ベースバルブ15を構成する。ベースバルブ15は、外周部が段差状をなしている。ロッドガイド13も、外周部が段差状をなしている。ロッドガイド13の大径部分が胴部材8に嵌合されている。
【0013】
内筒2は、軸方向の一端部が、バルブボディ12の外周部の小径部分に嵌合されている。内筒2は、バルブボディ12を介して外筒3の底部材9に係合している。内筒2は、軸方向の他端部が、ロッドガイド13の外周部の小径部分に嵌合されている。内筒2は、ロッドガイド13を介して外筒3の胴部材8に係合している。この状態で、内筒2は、外筒3に対して径方向に位置決めされる。バルブボディ12と底部材9との間は、バルブボディ12に形成された通路溝16を介して内筒2と外筒3との間に連通しており、内筒2と外筒3との間と同様、リザーバ室5を構成している。
【0014】
緩衝器1は、ロッドガイド13の底部材9とは反対側に、円環状のシール部材18を有している。このシール部材18も、ロッドガイド13と同様に胴部材8の内周部に嵌合されている。胴部材8の底部材9とは反対の端部には、胴部材8をカール加工等の加締め加工によって径方向内方に塑性変形させて係止部19が形成されている。シール部材18は、この係止部19とロッドガイド13とに挟持されている。シール部材18は、外筒3の開口部を閉塞するものである。シール部材18は、具体的にはオイルシールである。
【0015】
緩衝器1は、シリンダ4内に設けられるピストン21を有している。ピストン21は、シリンダ4の内筒2に摺動可能に設けられている。ピストン21は、内筒2内を上室22と下室23との2室に区画している。上室22は、内筒2内のピストン21とロッドガイド13との間に設けられている。下室23は、内筒2内のピストン21とバルブボディ12との間に設けられている。下室23は、バルブボディ12によって、リザーバ室5と画成されている。シリンダ4内には、上室22および下室23に作動流体としての油液Lが封入されている。リザーバ室5に、作動流体としてのガスGと油液Lとが封入されている。
【0016】
緩衝器1は、ピストンロッド25を備えている。ピストンロッド25は、軸方向の一端側部分がシリンダ4の内部に配置されてピストン21に連結固定されると共に他端側部分がシリンダ4の外部に延出される。ピストンロッド25は、金属製である。ピストンロッド25は、上室22内を貫通しており、下室23は貫通していない。よって、上室22は、ピストンロッド25が貫通するロッド側室であり、下室23はシリンダ4の底部材9側のボトム側室である。
【0017】
ピストン21およびピストンロッド25は一体に移動する。ピストンロッド25がシリンダ4からの突出量を増やす緩衝器1の伸び行程において、ピストン21は上室22側へ移動する。ピストンロッド25がシリンダ4からの突出量を減らす緩衝器1の縮み行程において、ピストン21は下室23側へ移動する。
【0018】
ロッドガイド13およびシール部材18は、いずれも円環状である。ピストンロッド25は、これらロッドガイド13およびシール部材18のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ4の内部から外部に延出されている。ピストンロッド25の軸方向の一端側部分は、シリンダ4の内部でピストン21に固定されている。ピストンロッド25の軸方向の他端側部分は、シリンダ4の外部に、ロッドガイド13およびシール部材18を介して突出している。
【0019】
ロッドガイド13は、シリンダ4に対してピストンロッド25を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド25の移動を案内する。シール部材18の外周部はシリンダ4に密着する。シール部材18の内周部は、軸方向に移動するピストンロッド25の外周部に摺接する。これにより、シール部材18は、シリンダ4内の油液LやガスGが外部に漏洩するのを防止する。
【0020】
ピストンロッド25は、主軸部27と、これよりも小径の取付軸部28と、を有している。主軸部27は、ロッドガイド13およびシール部材18に摺動可能に嵌合される。取付軸部28は、シリンダ4内に配置されてピストン21等に連結される。主軸部27の取付軸部28側の端部は、軸直交方向に広がる軸段部29となっている。
【0021】
取付軸部28の外周部には、軸方向の中間位置に軸方向に延在する通路切欠部30が形成されており、軸方向の主軸部27とは反対側の先端位置にオネジ31が形成されている。通路切欠部30は、例えば、取付軸部28の外周部を、取付軸部28の中心軸線に平行な面で平面状に切り欠いて形成されている。通路切欠部30は、取付軸部28の周方向の180度異なる二カ所の位置に、いわゆる二面幅の形状に形成できる。
【0022】
緩衝器1は、例えばピストンロッド25のシリンダ4からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ4の底部材9が下部に配置されて車輪側に連結される。
これとは逆に、シリンダ4側が車体により支持され、ピストンロッド25が車輪側に連結されるようにしても良い。
【0023】
図2に示すように、ピストン21は、ピストンロッド25に接して連結される金属製のピストン本体36と、ピストン本体36の外周面に一体に装着されてシリンダ4の内筒2内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材37とによって構成されている。
【0024】
ピストン本体36には、上室22と下室23とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一箇所のみ図示)の通路穴38と、上室22と下室23とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一箇所のみ図示)の通路穴39とが設けられている。
【0025】
複数の通路穴38は、ピストン本体36の円周方向において、それぞれ間に一箇所の通路穴39を挟んで等ピッチで形成されており、通路穴38,39の全数のうちの半数を構成する。複数の通路穴38は、2箇所の屈曲点を有するクランク形状である。複数の通路穴38は、ピストン21の軸方向における下室23側が、上室22側よりもピストン21の径方向における内側に開口している。ピストン本体36には、軸方向の下室23側に、複数の通路穴38を連通させる円環状の環状溝55が形成されている。
【0026】
環状溝55の下室23側には、第1減衰力発生機構41が設けられている。第1減衰力発生機構41は、環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を開閉して減衰力を発生する。第1減衰力発生機構41が下室23側に配置されることで、複数の通路穴38内および環状溝55内の通路は、ピストン21の上室22側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室22から下流側となる下室23に向けて油液Lが流れ出す伸び側の通路となる。これら複数の通路穴38内および環状溝55内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構41は、伸び側の複数の通路穴38内および環状溝55内の通路から下室23への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構である。
【0027】
通路穴38,39の全数のうちの残りの半数を構成する通路穴39は、ピストン本体36の円周方向において、それぞれ間に一箇所の通路穴38を挟んで等ピッチで形成されている。複数の通路穴39は、2箇所の屈曲点を有するクランク形状である。複数の通路穴39は、ピストン21の軸方向における上室22側が、下室23側よりもピストン21の径方向における内側に開口している。ピストン本体36には、軸方向の上室22側に複数の通路穴39を連通させる円環状の環状溝56が形成されている。
【0028】
環状溝56の上室22側には、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構42が設けられている。第1減衰力発生機構42が上室22側に配置されることで、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路は、ピストン21の下室23側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室23から下流側となる上室22に向けて油液Lが流れ出す縮み側の通路となる。これら複数の通路穴39内および環状溝56内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構42は、縮み側の複数の通路穴39内および環状溝56内の通路から上室22への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構である。
【0029】
ピストン本体36は、略円板形状をなしている。ピストン本体36の径方向の中央には、ピストンロッド25の取付軸部28が挿入される挿入穴44が軸方向に貫通して形成されている。挿入穴44は、ピストンロッド25の取付軸部28を嵌合させる軸方向一側の小径穴部45と、小径穴部45よりも大径の軸方向他側の大径穴部46と、を有している。小径穴部45が軸方向の上室22側に、大径穴部46が軸方向の下室23側にそれぞれ設けられている。ピストン21は、小径穴部45に取付軸部28が嵌合されて、ピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0030】
ピストン本体36の軸方向の下室23側の端部には、環状溝55の下室23側の開口よりも、ピストン本体36の径方向における内側に円環状の内側シート部47が形成されている。ピストン本体36の軸方向の下室23側の端部には、環状溝55の下室23側の開口よりも、ピストン本体36の径方向における外側に、第1減衰力発生機構41の一部を構成する円環状のバルブシート部48が形成されている。
【0031】
ピストン本体36の軸方向の上室22側の端部には、環状溝56の上室22側の開口よりもピストン本体36の径方向における内側に円環状の内側シート部49が形成されている。ピストン本体36の軸方向の上室22側の端部には、環状溝56の上室22側の開口よりも、ピストン本体36の径方向における外側に、第1減衰力発生機構42の一部を構成する円環状のバルブシート部50が形成されている。
【0032】
ピストン本体36の挿入穴44は、大径穴部46が、小径穴部45よりも軸方向の内側シート部47側に設けられている。ピストン本体36の大径穴部46内の通路は、ピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51と軸方向の位置を重ね合わせて常時連通している。
【0033】
ピストン本体36において、バルブシート部48よりも径方向外側は、バルブシート部48よりも軸線方向高さが低い段差状をなしている。この段差状の部分に縮み側の通路穴39の下室23側の開口が配置されている。また、同様に、ピストン本体36において、バルブシート部50よりも径方向外側は、バルブシート部50よりも軸線方向高さが低い段差状をなしている。この段差状の部分に伸び側の通路穴38の上室22側の開口が配置されている。
【0034】
縮み側の第1減衰力発生機構42は、ピストン21のバルブシート部50を含んでいる。第1減衰力発生機構42は、軸方向のピストン21側から順に、一枚のディスク63と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク64と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には三枚)のディスク65と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク66と、一枚のディスク67と、一枚のディスク68と、一枚の環状部材69と、を有している。ディスク63~68および環状部材69は、金属製であり、いずれも一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ディスク63~68および環状部材69は、いずれも内側に取付軸部28が嵌合されてピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。ディスク63~68は、プレーンディスク(軸方向に突出する突起のない平面ディスク)である。
【0035】
ディスク63は、ピストン21の内側シート部49の外径よりも大径であってバルブシート部50の内径よりも小径の外径を有する。ディスク63は、内側シート部49に常時当接している。複数枚のディスク64は、ピストン21のバルブシート部50の外径と同等の外径を有する。複数枚のディスク64は、バルブシート部50に着座可能である。複数枚のディスク65は、ディスク64の外径よりも小径の外径を有する。複数枚のディスク66は、ディスク65の外径よりも小径の外径を有する。ディスク67は、ディスク66の外径よりも小径であってピストン21の内側シート部49の外径と同等の外径を有する。ディスク68は、ディスク65の外径と同等の外径を有する。環状部材69は、ディスク68の外径よりも小径であってピストンロッド25の軸段部29の外径よりも大径の外径を有する。環状部材69は、ディスク63~68よりも厚く高剛性である環状部材69は、軸段部29に当接している。
【0036】
複数枚のディスク64、複数枚のディスク65および複数枚のディスク66が、バルブシート部50に離着座可能な縮み側のメインバルブ71を構成している。メインバルブ71は、バルブシート部50から離座することで、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路を上室22に連通させると共に、バルブシート部50との間の油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。環状部材69は、ディスク68とによって、メインバルブ71の開方向への規定以上の変形をメインバルブ71に当接して規制する。
【0037】
複数の通路穴39内および環状溝56内の通路と、開弁時に出現するメインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路とが、ピストン21に形成され、ピストン21の下室23側への移動によりシリンダ4内の上流側となる下室23から下流側となる上室22に油液Lが流れ出す縮み側の第1通路72を構成している。減衰力を発生する縮み側の第1減衰力発生機構42は、メインバルブ71とバルブシート部50とを含んでいる。よって、第1減衰力発生機構42は第1通路72に設けられている。第1通路72は、バルブシート部50を含むピストン21に形成されている。ピストンロッド25およびピストン21が縮み側に移動するときに、油液Lが第1通路72を通過する。
【0038】
縮み側の第1減衰力発生機構42には、バルブシート部50およびこれに当接するメインバルブ71のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室22と下室23とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第1減衰力発生機構42は、バルブシート部50およびメインバルブ71が全周にわたって当接状態にあれば、上室22と下室23とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路72は、上室22と下室23とを常時連通させる固定オリフィスが形成されておらず、上室22と下室23とを常時連通させる通路ではない。
【0039】
伸び側の第1減衰力発生機構41は、ピストン21のバルブシート部48を含んでいる。第1減衰力発生機構41は、軸方向のピストン21側から順に、一枚のディスク82と、一枚のディスク83と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には四枚)のディスク84と、一枚のディスク85と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には三枚)のディスク86と、一枚のディスク87と、を有している。ディスク82~87は、金属製であり、いずれも一定厚さの有孔円形平板状をなすプレーンディスクである。ディスク82~87は、いずれも内側に取付軸部28が嵌合されて、ピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0040】
ディスク82は、ピストン21の内側シート部47の外径よりも大径であってバルブシート部48の内径よりも小径の外径を有する。ディスク82は、内側シート部47に常時当接している。ディスク82には、図3に示すように、環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を、ピストン21の大径穴部46内の通路およびピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51に常時連通させる切欠部90が、径方向の内側シート部47よりも外側の途中位置から内周縁部まで形成されている。切欠部90は、ディスク82のプレス成形時に形成される。切欠部90は、ピストン21の大径穴部46に隣り合って対向している。ディスク83は、ディスク82と同外径であり、ディスク82のような切欠部は形成されていない。複数枚のディスク84は、ピストン21のバルブシート部48の外径と同等の外径を有する。複数枚のディスク84は、バルブシート部48に着座可能である。ディスク85は、ディスク84の外径よりも小径の外径を有する。複数枚のディスク86は、ディスク85の外径よりも小径の外径を有する。ディスク87は、ディスク86の外径よりも小径であってピストン21の内側シート部47の外径よりも若干大径の外径を有する。
【0041】
複数枚のディスク84、一枚のディスク85、複数枚のディスク86が、バルブシート部48に離着座可能な伸び側のメインバルブ91を構成している。メインバルブ91は、バルブシート部48から離座することで、環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を下室23に連通させると共に、バルブシート部48との間の油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。
【0042】
図2に示すように、複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、開弁時に出現するメインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路とが、ピストン21に形成され、ピストン21の上室22側への移動によりシリンダ4内の上流側となる上室22から下流側となる下室23に油液Lが流れ出す伸び側の第1通路92を構成している。減衰力を発生する伸び側の第1減衰力発生機構41は、メインバルブ91とバルブシート部48とを含んでいる。よって、第1減衰力発生機構41は、第1通路92に設けられている。第1通路92は、バルブシート部48を含むピストン21に形成されている。ピストンロッド25およびピストン21が伸び側に移動するときに、油液Lが第1通路92を通過する。
【0043】
伸び側の第1減衰力発生機構41には、バルブシート部48およびこれに当接するメインバルブ91のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室22と下室23とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第1減衰力発生機構41は、バルブシート部48およびメインバルブ91が全周にわたって当接状態にあれば、上室22と下室23とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路92は、上室22と下室23とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室22と下室23とを常時連通させる通路ではない。
【0044】
図3に示すように、伸び側の第1減衰力発生機構41のピストン21とは反対側には、第1減衰力発生機構41側から順に、一つのキャップ部材95と、一枚の皿バネ116(付勢部材)と、一枚のディスク97と、一枚の可撓ディスク100と、一枚の弁座ディスク101と、一枚のディスク102と、一枚のディスク103と、一枚のディスク104と、一枚のバネ部材105と、一枚のディスク106と、一枚のサブバルブ107と、外周側に一つのOリング108が設けられた一つの弁座部材109と、一枚のサブバルブ110と、一枚のディスク111と、一枚のバネ部材112と、一枚のディスク113と、一枚の環状部材114とが、ピストンロッド25の取付軸部28をそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。取付軸部28をそれぞれの内側に嵌合させることにより、キャップ部材95、皿バネ116、ディスク97、可撓ディスク100、弁座ディスク101、ディスク102~104、バネ部材105、ディスク106、サブバルブ107、弁座部材109、サブバルブ110、ディスク111、バネ部材112、ディスク113および環状部材114は、ピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0045】
図2に示すように、ピストンロッド25の取付軸部28には、環状部材114よりも突出する部分にオネジ31が形成されている。オネジ31にナット119が螺合されている。ナット119は、環状部材114に当接している。
【0046】
環状部材69と、ディスク63~68と、ピストン21と、ディスク82~87と、キャップ部材95と、図3に示す皿バネ116と、ディスク97と、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、ディスク102~104と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、弁座部材109と、サブバルブ110と、ディスク111と、バネ部材112と、ディスク113と、環状部材114とは、図2に示すように、少なくとも径方向内周側が、ピストンロッド25の軸段部29とナット119とによって軸方向にクランプされており、ピストンロッド25に固定されている。この状態で、図3に示すように、皿バネ116と、ディスク97と、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、ディスク102~104と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、弁座部材109と、サブバルブ110と、ディスク111と、バネ部材112と、ディスク113とが、キャップ部材95内に配置されている。
【0047】
キャップ部材95、ディスク97,102~104,106,111,113、可撓ディスク100、弁座ディスク101、バネ部材105,112、サブバルブ107,110、弁座部材109、環状部材114および皿バネ116は、いずれも金属製である。ディスク97,102~104,106,111,113、可撓ディスク100、弁座ディスク101、サブバルブ107,110および環状部材114は、いずれも一定厚さの有孔円形平板状をなすプレーンディスクである。キャップ部材95、弁座部材109および皿バネ116は、円環状である。バネ部材105,112は環状である。
【0048】
キャップ部材95は、有底筒状の一体成形品である。キャップ部材95は、例えば金属板の塑性加工や切削加工により形成されている。キャップ部材95は、有孔円板状の一定厚さの底部122と、底部122の外周縁部から、底部122の軸方向一側に拡径しつつ延出する中間湾曲部123と、中間湾曲部123の底部122とは反対側の端縁部から底部122とは反対方向に延出する円筒状の筒状部124と、を有している。
【0049】
底部122は、全周にわたって径方向の幅が一定の有孔円形平板状である。底部122の内周部には、ピストンロッド25の取付軸部28が嵌合される。底部122の内周部に取付軸部28を嵌合させることで、キャップ部材95は、ピストンロッド25に対し径方向に位置決めされて同軸状に配置される。底部122には、内周部と外周部との間に、底部122を底部122の軸方向に貫通する通路孔126が複数形成されている。複数の通路孔126は、底部122の中心から等距離の位置に底部122の周方向に等間隔に配置されている。キャップ部材95は、底部122が、筒状部124よりもピストン21側に位置する向きで配置されてディスク87に当接している。キャップ部材95は、底部122の内周部において取付軸部28に嵌合している。ディスク87の外径は、キャップ部材95の径方向の中心と通路孔126とを結ぶ最短距離の2倍よりも小径である。
【0050】
中間湾曲部123は、底部122と同軸の円環状である。中間湾曲部123は、その中心軸線を含む面での断面が径方向外側かつ軸方向の底部122側に凸の湾曲形状である。筒状部124も、底部122および中間湾曲部123と同軸状である。
【0051】
キャップ部材95は、ディスク84~86の一枚の厚さよりも厚く、有底筒状をなすことも合わせて、ディスク84~86よりも高剛性となっている。よって、キャップ部材95は、複数枚のディスク84~86で構成されるメインバルブ91の開方向への規定以上の変形をメインバルブ91に当接して規制する。
【0052】
皿バネ116は、金属製の有孔円形の板状であり、撓み可能である。皿バネ116は、一枚の板材からプレス成形による打ち抜きおよび折り曲げによって形成される。皿バネ116は、図4に示すように、内側円環部401と、中間円環部402と、外側円錐状部403と、内側円環部401および中間円環部402を繋ぐ複数、具体的には2本の支持部404とを有している。内側円環部401は、有孔円形平板状である。中間円環部402は、内側円環部401の外径よりも大径の内径を有する有孔円形平板状である。2本の支持部404は、内側円環部401と中間円環部402との間に設けられている。内側円環部401と中間円環部402と2本の支持部404とは同一平面に配置された平板状である。外側円錐状部403は、中間円環部402の外周縁部から径方向外方かつ軸方向一側に広がる円錐筒状である。皿バネ116の外径側は、外側円錐状部403である。皿バネ116の内径側は、内側円環部401と中間円環部402と2本の支持部404とを有する内側平面状部414である。内側平面状部414は、外側円錐状部403よりも平面に近い。
【0053】
皿バネ116は、図3に示すように、外側円錐状部403の外径、すなわち皿バネ116の外径が、キャップ部材95の筒状部124の内径よりも若干小径である。内側円環部401と中間円環部402と2本の支持部404とがキャップ部材95の底部122に当接する。外側円錐状部403が軸方向において筒状部124と同側に延出する。皿バネ116は、この状態で内側円環部401の内周側に取付軸部28が嵌合することにより、ピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。皿バネ116は、内周端部がピストンロッド25と当接するように形成されている。皿バネ116の径方向外側に、キャップ部材95の筒状部124が配置されている。
【0054】
図4に示すように、内側円環部401、中間円環部402および外側円錐状部403は、いずれも全周にわたって径方向の幅が一定である。外側円錐状部403の径方向の幅は、内側円環部401の径方向の幅よりも広くなっている。内側円環部401の径方向の幅は、中間円環部402の径方向の幅よりも広くなっている。内側円環部401と中間円環部402と外側円錐状部403とは同軸状に配置されている。2本の支持部404は、内側円環部401と、中間円環部402および外側円錐状部403とを同軸の状態で連結する。2本の支持部404は、内側円環部401の外周縁部と中間円環部402の内周縁部とを結んでいる。
【0055】
2本の支持部404は、内側円環部401、中間円環部402および外側円錐状部403の中心、言い換えれば皿バネ116の中心を通る同一直線上に配置された2箇所の外側接続部411を有している。これら外側接続部411が中間円環部402と接続されている。2箇所の外側接続部411は、中間円環部402の周方向に180度位相を異ならせて配置されている。2箇所の外側接続部411は、いずれも中間円環部402の内周縁部から中間円環部402の径方向内側に突出している。
【0056】
2本の支持部404は、皿バネ116の中心を通る同一直線上に配置された2箇所の内側接続部412を有している。これら内側接続部412が内側円環部401と接続されている。2箇所の内側接続部412は、内側円環部401の周方向に180度位相を異ならせて配置されている。2箇所の内側接続部412は、いずれも内側円環部401の外周縁部から内側円環部401の径方向外側に突出している。2箇所の外側接続部411は、いずれも、第一の内側接続部412との皿バネ116の周方向における距離が、第二の内側接続部412との距離よりも短くなっている。言い換えれば、2箇所の内側接続部412は、いずれも、第一の外側接続部411との皿バネ116の周方向における距離が、第二の外側接続部411との距離よりも短くなっている。
【0057】
皿バネ116の第一の側における外側接続部411と内側接続部412との周方向の距離は、皿バネ116の第二の側における外側接続部411と内側接続部412との周方向の距離と同等である。
【0058】
2本の支持部404には、外側接続部411と内側接続部412とを接続させるように2箇所の連結腕部413が設けられている。すなわち、皿バネ116には、皿バネ116の周方向において第一の側における外側接続部411と内側接続部412とを接続させる第一の連結腕部413が設けられている。これら外側接続部411、内側接続部412および連結腕部413が第一の支持部404を構成している。皿バネ116の周方向において第二の側における外側接続部411と内側接続部412とを接続させる第二の連結腕部413が設けられている。これら外側接続部411、内側接続部412および連結腕部413が、第二の支持部404を構成している。
【0059】
第一及び第二の連結腕部413は、内側円環部401の外周面および中間円環部402の内周面に沿って円弧状に延びている。第一及び第二の連結腕部413は、内側円環部401、中間円環部402および外側円錐状部403と同心の同一円上に配置されている。第一及び第二の連結腕部413は、それぞれが、皿バネ116の周方向において180°より若干小さい角度範囲で延びている。第一及び第二の連結腕部413は、中間円環部402の内周面からの径方向距離が、内側円環部401の外周面からの径方向距離よりも大きくなっている。
【0060】
皿バネ116は、上記形状をなすことで、内側円環部401と中間円環部402と2箇所の支持部404とで囲まれて段付き円弧状の2箇所の穴部415が形成されている。2箇所の穴部415は、皿バネ116を厚さ方向(軸方向)に貫通している。2箇所の穴部415は、内側円環部401と中間円環部402との間に設けられている。よって、皿バネ116は、内周端部から外周端部までの間に段付き円弧状の2箇所の穴部415を有している。段付き円弧状の2箇所の穴部415は、内側平面状部414に設けられている。
【0061】
2箇所の穴部415は、同形状である。2箇所の穴部415は、内側円環部401と連結腕部413との間に形成される円弧状の小径穴部421と、中間円環部402と連結腕部413との間に形成される円弧状の大径穴部422と、小径穴部421および大径穴部422を繋ぐ連結穴部423とを有している。小径穴部421および大径穴部422は、いずれも内側円環部401およびと中間円環部402と同軸の円弧状である。大径穴部422は小径穴部421よりも大径の円弧状である。穴部415は、大径穴部422と小径穴部421とが周方向に隣り合うように配置されている。大径穴部422および小径穴部421の互いに近接する側が、皿バネ116の径方向に沿う連結穴部423で連通されている。
【0062】
図3に示すように、皿バネ116の中間円環部402の内径は、キャップ部材95の径方向の中心と通路孔126とを結ぶ最長距離の2倍よりも小径であり、キャップ部材95の径方向の中心と通路孔126とを結ぶ最短距離の2倍よりも大径である。よって、皿バネ116は、穴部415内の連通路425が底部122の通路孔126内の連通路148に常時連通する。皿バネ116は、穴部415の連通路425の図4に示す大径穴部422内の部分において通路孔126内の連通路148に常時連通する。図3に示すように、皿バネ116の中間円環部402の外径、すなわち外側円錐状部403の内径は、キャップ部材95の径方向の中心と通路孔126とを結ぶ最長距離の2倍よりも大径である。皿バネ116は、中間円環部402が、キャップ部材95の底部122の全ての通路孔126よりも底部122の径方向における外側位置に全周にわたって当接する。
【0063】
ディスク97は、全周にわたって径方向の幅が一定である。ディスク97の外径は、皿バネ116の内側円環部401の外径よりも小径である。ディスク97は、皿バネ116の内側円環部401の厚さ、すなわち皿バネ116の板厚よりも厚くなっている。
【0064】
皿バネ116の内側円環部401が、図3に示すキャップ部材95の底部122とディスク97とによって軸方向にクランプされる。これにより、皿バネ116はピストンロッド25に固定される。図4に示す2箇所の支持部404と中間円環部402とについては、図3に示すキャップ部材95の底部122に当接するものの、ディスク97には当接しない。よって、2箇所の支持部404と中間円環部402とは、軸方向にクランプされない。
【0065】
可撓ディスク100は、撓み可能である。可撓ディスク100は、内周端部がピストンロッド25と当接する。可撓ディスク100の外径は、皿バネ116の外径よりも大径であり、キャップ部材95の筒状部124の内径よりも若干小径である。可撓ディスク100は、皿バネ116の板厚と同等の厚さである。
【0066】
可撓ディスク100は、一枚の板材からプレス成形による打ち抜きによって形成される。可撓ディスク100は、ピストンロッド25に組み付けられる前の自然状態で、平板状をなす。可撓ディスク100は、図5に示すように、径方向の幅が全周にわたって一定である。可撓ディスク100には、径方向の中間位置に連通孔501が複数、具体的には15箇所形成されている。全ての連通孔501は同径の丸穴であり、可撓ディスク100を厚さ方向(軸方向)に貫通している。全ての連通孔501は、可撓ディスク100の中心から等距離の位置に形成されている。全ての連通孔501は、可撓ディスク100の周方向に等間隔で形成されている。
【0067】
可撓ディスク100は、複数の連通孔501が形成されることで、内周縁部から連通孔501までの内側円環部502と、外周縁部から連通孔501までの外側円環部503と、可撓ディスク100の径方向に延びて内側円環部502と外側円環部503とを繋ぐ連結部504とを有している。内側円環部502は、径方向の幅が全周にわたって一定である。外側円環部503も、径方向の幅が全周にわたって一定である。外側円環部503は、径方向の幅が内側円環部502よりも大きい。
【0068】
連結部504は、可撓ディスク100の周方向において隣り合う連通孔501と連通孔501との間にある。よって、連結部504は、可撓ディスク100の径方向の中間位置に複数、具体的には連通孔501と同数の15箇所形成されている。全ての連結部504は同形状であり、可撓ディスク100の中心から等距離の位置に形成されている。全ての連結部504は、可撓ディスク100の周方向に等間隔で形成されている。図3に示すように、可撓ディスク100の内側円環部502の外径は、ディスク97の外径よりも大径である。よって、可撓ディスク100の連通孔501は、ディスク97で閉塞されることはない。
【0069】
皿バネ116は、外側円錐状部403の中間円環部402とは反対側の端縁部が円形である。この円形の端縁部が全周にわたって可撓ディスク100の外側円環部503の外周縁部側に当接する。
【0070】
弁座ディスク101は、全周にわたって径方向の幅が一定である。弁座ディスク101は、ピストンロッド25に組み付けられる前の自然状態で、平板状をなす。弁座ディスク101は、可撓ディスク100よりも若干厚さが薄い。弁座ディスク101の外径は、可撓ディスク100の外側円環部503の内径よりも大径であり、外側円環部503の外径よりも小径である。弁座ディスク101は、可撓ディスク100の外側円環部503に全周にわたって面接触で当接すると、全ての連通孔501を閉塞する。
【0071】
ディスク102は、ディスク97と同形状であり、互換性を有する。ディスク102は、ディスク97とで可撓ディスク100および弁座ディスク101の内周側を軸方向にクランプする。
【0072】
ディスク103は、全周にわたって径方向の幅が一定である。ディスク103の外径は、ディスク102の外径よりも大径であり、弁座ディスク101の外径よりも小径である。ディスク103は、可撓ディスク100の厚さと同等の厚さである。
【0073】
ディスク104は、全周にわたって径方向の幅が一定である。ディスク104は、外径が、弁座ディスク101の外径よりも大径であり、可撓ディスク100の外径よりも小径である。ディスク104は、ディスク97,102の厚さと同等の厚さである。ディスク104は、可撓ディスク100および弁座ディスク101よりも厚さが厚く高剛性である。
【0074】
バネ部材105は、取付軸部28に嵌合する有孔円形平板状の基板部331と、基板部331の周方向の等間隔位置から基板部331の径方向の外方に延出する複数のバネ板部332とを有している。バネ板部332は、延出先端側ほど基板部331から基板部331の軸方向に離れるように基板部331に対して傾斜している。バネ部材105は、基板部331においてディスク104に当接する。バネ部材105は、基板部331からバネ板部332が基板部331の軸方向においてサブバルブ107側に延出するように取付軸部28に取り付けられている。
【0075】
ディスク106の外径は、バネ部材105の基板部331の外径よりも小径であってディスク102の外径よりも大径である。バネ部材105の基板部331がディスク106に当接する。バネ部材105の複数のバネ板部332が、サブバルブ107に当接する。
【0076】
図2に示すように、弁座部材109は、有孔円板状である。弁座部材109には、その軸方向に延び厚さ方向に貫通して取付軸部28を挿入させる貫通孔131が径方向の中央に形成されている。貫通孔131は、ピストンロッド25の取付軸部28を嵌合させる軸方向一側の小径穴部132と、小径穴部132よりも大径の軸方向他側の大径穴部133と、を有している。
【0077】
弁座部材109は、軸方向の大径穴部133側の端部に、大径穴部133を囲むように円環状をなす内側シート部134を有している。弁座部材109は、この内側シート部134から径方向外方に広がるバルブシート部135を有している。弁座部材109は、軸方向反対側の小径穴部132側の端部に、小径穴部132を囲むように円環状をなす内側シート部138を有している。弁座部材109は、この内側シート部138から径方向外方に広がるバルブシート部139を有している。弁座部材109は、その軸方向の内側シート部134およびバルブシート部135と、内側シート部138およびバルブシート部139と、の間が有孔円板状の本体部140となっている。
【0078】
内側シート部134は、本体部140の軸方向の大径穴部133側の内周縁部から、本体部140の軸方向に沿って一側に突出している。バルブシート部135も、内側シート部134の径方向外側で本体部140の軸方向に沿って本体部140から内側シート部134と同側に突出している。内側シート部134およびバルブシート部135は、突出側の先端面、すなわち本体部140とは反対側の先端面が、平坦面である。内側シート部134およびバルブシート部135は、弁座部材109の軸直交方向に広がって同一平面に配置されている。
【0079】
内側シート部138は、本体部140の軸方向の小径穴部132側の内周縁部から、本体部140の軸方向に沿って内側シート部134とは反対側に突出している。バルブシート部139も、内側シート部138の径方向外側で本体部140の軸方向に沿って本体部140から内側シート部138と同側に突出している。内側シート部138およびバルブシート部139は、突出側の先端面、すなわち本体部140とは反対側の先端面が、平坦面である。内側シート部138およびバルブシート部139は、弁座部材109の軸直交方向に広がって同一平面に配置されている。内側シート部134,138は、同等の外径を有している。
【0080】
バルブシート部135は、花びら型の異形シートである。バルブシート部135は、複数(図2では断面とした関係上一箇所のみ図示)のバルブシート構成部201を有している。これらのバルブシート構成部201は、同形状であり、弁座部材109の周方向に等間隔で配置されている。内側シート部134は、弁座部材109の中心軸線を中心とする円環状をなしている。
【0081】
各バルブシート構成部201の内側には、内側シート部134の一部とで囲まれて、これらの突出側の先端面から弁座部材109の軸方向に凹む通路凹部205が形成されている。通路凹部205の底面は本体部140によって形成されている。すべてのバルブシート構成部201の内側に通路凹部205が形成されている。
【0082】
弁座部材109の周方向における通路凹部205の中央位置には、本体部140を軸方向に貫通することで弁座部材109を軸方向に貫通する通路孔206が形成されている。
通路孔206は、弁座部材109の中心軸線に平行な直線状の孔である。すべての通路凹部205の底面に通路孔206が形成されている。
【0083】
バルブシート部139も、花びら型の異形シートである。バルブシート部139は、複数(図2では断面とした関係上一箇所のみ図示)のバルブシート構成部211を有している。これらのバルブシート構成部211は同形状であり、弁座部材109の周方向に等間隔で配置されている。バルブシート構成部211は、バルブシート構成部201と同形状となっている。内側シート部138は、弁座部材109の中心軸線を中心とする円環状をなしている。
【0084】
各バルブシート構成部211の内側には、内側シート部138の一部とで囲まれて、これらの突出側の先端面から弁座部材109の軸方向に凹む通路凹部215が形成されている。通路凹部215の底面は本体部140によって形成されている。すべてのバルブシート構成部211の内側に通路凹部215が形成されている。
【0085】
弁座部材109の周方向における通路凹部215の中央位置には、本体部140を軸方向に貫通することで弁座部材109を軸方向に貫通する通路孔216が形成されている。
通路孔216は、弁座部材109の中心軸線に平行な直線状の孔である。すべての通路凹部215の底面に通路孔216が形成されている。
【0086】
複数のバルブシート構成部201の弁座部材109の周方向における配置ピッチと、複数のバルブシート構成部211の弁座部材109の周方向における配置ピッチとは同じである。バルブシート構成部201およびバルブシート構成部211は、互いに半ピッチ分ずれている。通路孔206は、弁座部材109の周方向に隣り合うバルブシート構成部211とバルブシート構成部211との間に配置されている。よって、通路孔206は、バルブシート部139の範囲の外側に配置されている。通路孔216は、弁座部材109の周方向に隣り合うバルブシート構成部201とバルブシート構成部201との間に配置されている。よって、通路孔216は、バルブシート部135の範囲の外側に配置されている。
【0087】
弁座部材109には、軸方向の大径穴部133側に、内側シート部134を径方向に横断する通路溝221が形成されている。通路溝221は、内側シート部134の本体部140とは反対側の先端面から弁座部材109の軸方向に凹んで形成されている。通路溝221は、弁座部材109の周方向において隣り合うバルブシート構成部201とバルブシート構成部201との間も含んでいる。通路孔216は、通路溝221の底面に開口している。通路溝221は、通路孔216と大径穴部133とを連通させる。
【0088】
通路孔216と、この通路孔216が開口する通路凹部215とが、弁座部材109に設けられる第1通路部161を形成している。弁座部材109には第1通路部161が複数、弁座部材109の周方向に等間隔で設けられている。通路溝221は、第1通路部161に向けて径方向に延びる径方向通路222を形成している。弁座部材109には径方向通路222が複数、弁座部材109の周方向に等間隔で設けられている。
【0089】
弁座部材109は、弁座部材109の周方向において隣り合うバルブシート構成部211とバルブシート構成部211との間が通路溝225となっている。通路孔206は、通路溝225の底面に開口している。よって、通路溝225は、通路孔206に連通する。
【0090】
通路孔206と、この通路孔206が開口する通路凹部205とが、弁座部材109に設けられる第2通路部162を形成している。弁座部材109には第2通路部162が複数、弁座部材109の周方向に等間隔で設けられている。
【0091】
複数の第1通路部161および複数の第2通路部162が、弁座部材109に設けられて油液Lが流通する弁座部材通路部160を構成している。
【0092】
弁座部材109には、本体部140の外周部の軸方向中間位置に、径方向内方に凹む円環状のシール溝141が形成されている。このシール溝141内に、Oリング108が配置されている。弁座部材109は、内側シート部138およびバルブシート部139を、底部122とは反対側に向けた状態で、外周部においてキャップ部材95の筒状部124に嵌合されている。この状態で、Oリング108は、キャップ部材95の筒状部124と弁座部材109との隙間をシールする。
【0093】
キャップ部材95、Oリング108および弁座部材109は、キャップ部材95の内側にキャップ室146を形成している。キャップ室146は、キャップ部材95の底部122と弁座部材109との間に設けられている。図3に示すように、ディスク97,102~104,106、可撓ディスク100、弁座ディスク101、バネ部材105、サブバルブ107および皿バネ116は、このキャップ室146内に設けられている。
【0094】
キャップ室146内には、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116と、ディスク97と、キャップ部材95の底部122とで囲まれて下室連通室149が形成されている。この下室連通室149は、皿バネ116の複数の穴部415内の連通路425およびキャップ部材95の底部122の複数の通路孔126内の連通路148に常時連通している。
【0095】
キャップ室146内には、キャップ部材95と、皿バネ116と、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、ディスク102~104,106と、バネ部材105と、サブバルブ107とで囲まれて上室連通室147が形成されている。下室連通室149と上室連通室147とは、皿バネ116と、可撓ディスク100と、弁座ディスク101とによって連通が遮断されている。
【0096】
図2に示すように、環状の弁座部材109および有底筒状のキャップ部材95は、下室23に配置されている。その際に、弁座部材109は、バルブシート部135がキャップ室146側に、バルブシート部139が下室23側に配置されている。図3に示すように、キャップ部材95の底部122の連通路148は、下室23に常時連通している。
【0097】
上室連通室147は、キャップ部材95の筒状部124とサブバルブ107との間の通路と、弁座部材109の通路溝221内の径方向通路222と、弁座部材109の大径穴部133内の通路、ピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51およびピストン21の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストン21の環状溝55内および複数の通路穴38内の通路とを介して、図2に示す上室22に常時連通している。
【0098】
可撓ディスク100が軸方向に撓むことによって、下室連通室149および上室連通室147の容積が変化する。すなわち、可撓ディスク100が撓むことによって下室連通室149および上室連通室147にアキュムレータの機能をもたせる。下室連通室149は、上室連通室147の容積の増大を吸収するために容積が減少して油液Lを下室23に排出したり、上室連通室147の容積の減少を吸収するために容積が増大して油液Lを下室23から流入させたりする。逆に、上室連通室147は、下室連通室149の容積の増大を吸収するために容積が減少して油液Lを上室22側に排出したり、下室連通室149の容積の減少を吸収するために容積が増大して油液Lを上室22側から流入させたりする。
以上のようにして、可撓ディスク100の変形が上室連通室147および下室連通室149の油液Lによって阻害されることが抑制される。
【0099】
弁座部材109の複数の通路溝225は下室23に臨んで設けられている。複数の第2通路部162は、複数の通路溝225内の通路を介して下室23に常時連通している。図3に示すように、皿バネ116に形成された連通路425およびキャップ部材95の底部122に形成された連通路148は、上室22および下室23のうちの一方である下室23と常時連通する。
【0100】
弁座部材109の第1通路部161に開口する通路溝221内の径方向通路222は、上室連通室147に常時連通している。径方向通路222は、上室連通室147内と、弁座部材109の大径穴部133内の通路およびピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51とを常時連通している。
【0101】
図2に示すように、サブバルブ107は、ディスク状である。サブバルブ107は、弁座部材109のバルブシート部135の外径と同等の外径を有する。サブバルブ107は、内側シート部134に常時当接し、バルブシート部135に離着座可能である。サブバルブ107は、バルブシート部135の全体に着座することで、すべての第2通路部162を閉塞する。サブバルブ107は、バルブシート部135のうちのいずれかのバルブシート構成部201の全体に着座することで、バルブシート構成部201の内側の第2通路部162を閉塞する。バネ部材105は、サブバルブ107を弁座部材109のバルブシート部135に当接させる。サブバルブ107は、バネ部材105の付勢力によってバルブシート部135に着座して第2通路部162を閉塞する。
【0102】
バルブシート部135に離着座可能なサブバルブ107は、キャップ室146内に設けられている。サブバルブ107は、キャップ室146内でバルブシート部135から離座することで、複数の第2通路部162と上室連通室147とを連通させ、その結果、下室23を上室22に連通させる。このとき、サブバルブ107は、バルブシート部135との間の油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。サブバルブ107は、下室23から上室連通室147側へ、複数の第2通路部162を介して油液Lを流入させる際に開く流入バルブである。サブバルブ107は、上室連通室147から下室23への第2通路部162を介しての油液Lの流出を規制する逆止弁である。ここで、第1通路部161を構成する通路孔216は、弁座部材109におけるバルブシート部135の範囲よりも外側に開口している。このため、通路孔216は、バルブシート部135に着座するサブバルブ107とは無関係に上室連通室147に常時連通する。
【0103】
複数の通路溝225内の通路と、複数の第2通路部162と、開弁時に出現するサブバルブ107およびバルブシート部135の間の通路と、上室連通室147と、弁座部材109の通路溝221内の径方向通路222と、弁座部材109の大径穴部133内の通路、ピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51およびピストン21の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストン21の環状溝55内および複数の通路穴38内の通路とが、第2通路172を構成している。ピストン21の下室23側への移動により、油液Lが、第2通路172を通ってシリンダ4内の上流側となる下室23から下流側となる上室22に流れる。第2通路172は、ピストン21の下室23側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室23から下流側となる上室22に向けて油液Lが流れ出す縮み側の通路となる。縮み側の第2通路172は、同じく縮み側の第1通路72とは別に設けられている。
【0104】
連通路148,425と下室連通室149とは、縮み側の第3通路511を構成している。第3通路511は常時下室23に連通する。縮み側の第3通路511は、同じく縮み側の第2通路172とは別に設けられている。第3通路511は、第2通路172に対して並列に配置されている。
【0105】
ディスク104は、サブバルブ107よりも厚く剛性が高い。ディスク104は、サブバルブ107の変形時にサブバルブ107に当接して、それ以上のサブバルブ107の変形を抑制する。ディスク104は、可撓ディスク100の変形時に可撓ディスク100に当接して、それ以上の可撓ディスク100の変形を抑制する。サブバルブ107と、バルブシート部135を含む弁座部材109と、キャップ部材95と、キャップ部材95に形成された連通路148と、皿バネ116と、図3に示すディスク97,102~104,106と、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、バネ部材105とが、縮み側の第2減衰力発生機構173を構成している。第2減衰力発生機構173は、図2に示す縮み側の第2通路172に設けられる。第2減衰力発生機構173は、第2通路172を開閉し、この第2通路172から上室22への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する。
【0106】
第2減衰力発生機構173は、ピストンロッド25に設けられている。第2減衰力発生機構173のバルブシート部135が弁座部材109に設けられている。第2減衰力発生機構173は、同じ縮み行程で減衰力を発生させる第1減衰力発生機構42とは別に配置されている。縮み側の第2減衰力発生機構173を構成するサブバルブ107は、縮み側のサブバルブである。キャップ部材95は、第2減衰力発生機構173の一端面側と弁座部材109の外周面側とを覆っている。キャップ部材95は、第2減衰力発生機構173の一端面側と弁座部材109の外周面の少なくとも一部とを覆っていれば良い。
【0107】
図3に示すように、キャップ部材95の軸方向一端側の底部122には、キャップ部材95の内外を連通する連通路148が形成されている。皿バネ116は、軸方向の一端面側がキャップ部材95の連通路148よりも外周側と当接するよう設けられている。撓み可能な可撓ディスク100は、皿バネ116の軸方向の他端面側と当接するように設けられている。
【0108】
図2に示すように、第2通路172において、第2減衰力発生機構173が開状態にあるときに、ディスク82の切欠部90内の通路が、流路断面積が固定の部分の中で最も狭く、流路断面積がその上流側および下流側よりも狭くなって、第2通路172におけるオリフィス175となる。オリフィス175は、サブバルブ107が開弁して第2通路172で油液Lが流れる際の油液Lの流れのサブバルブ107よりも下流側に配置されている。オリフィス175は、サブバルブ107が開弁して第2通路172で油液Lが流れる際の油液Lの流れのサブバルブ107よりも上流側に配置されていても良い。オリフィス175は、第1減衰力発生機構41のうち、ピストン21に当接するディスク82を切り欠いて形成されている。
【0109】
縮み側の第2減衰力発生機構173は、バルブシート部135およびこれに当接するサブバルブ107のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室22と下室23とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第2減衰力発生機構173は、バルブシート部135とサブバルブ107とが全周にわたって当接状態にあれば、上室22と下室23とを連通させることはない。言い換えれば、第2通路172は、上室22と下室23とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室22と下室23とを常時連通させる通路ではない。
【0110】
上室22と下室23とを連通可能な縮み側の第2通路172は、同じく上室22と下室23とを連通可能な縮み側の通路である第1通路72と並列している。第1通路72に第1減衰力発生機構42が設けられている。第2通路172に第2減衰力発生機構173が設けられている。よって、縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構173は、並列に配置されている。
【0111】
図3に示すように、サブバルブ110は、ディスク状である。サブバルブ110は、弁座部材109のバルブシート部139の外径と同等の外径を有する。サブバルブ110は、内側シート部138に常時当接し、バルブシート部139に離着座可能である。サブバルブ110は、バルブシート部139の全体に着座することで、すべての第1通路部161を閉塞する。サブバルブ110は、バルブシート部139のうちのいずれかのバルブシート構成部211の全体に着座することで、バルブシート構成部211の内側の第1通路部161を閉塞する。サブバルブ110は、サブバルブ107と同形状として、互換性を持たせることができる。
【0112】
ディスク111は、ディスク106と同形状であり、互換性を有する。ディスク111の外径は、サブバルブ110の外径よりも小径であって、内側シート部138の外径よりも小径である。
【0113】
バネ部材112は、取付軸部28に嵌合する有孔円形平板状の基板部341と、基板部341の周方向の等間隔位置から基板部341の径方向の外方に延出する複数のバネ板部342とを有している。基板部341の外径は、ディスク111の外径よりも大径である。バネ板部342は、延出先端側ほど基板部341から基板部341の軸方向に離れるように基板部341に対して傾斜している。バネ部材112は、基板部341からバネ板部342が基板部341の軸方向においてサブバルブ110側に延出するように取付軸部28に取り付けられている。バネ部材112の基板部341がディスク111に当接する。バネ部材112の複数のバネ板部342がサブバルブ110に当接する。バネ部材112は、サブバルブ110を弁座部材109のバルブシート部139に当接させる。サブバルブ110は、バネ部材112の付勢力によってバルブシート部139に着座して第1通路部161を閉塞する。
【0114】
サブバルブ110は、下室23内に設けられている。サブバルブ110は、バルブシート部139から離座することで、上室22および上室連通室147と、下室23とを連通させる。このとき、サブバルブ110は、バルブシート部139との間の油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。サブバルブ110は、上室22および上室連通室147内から油液Lを下室23に、弁座部材109の複数の第1通路部161を介して排出する際に開く排出バルブである。サブバルブ110は、下室23から上室22および上室連通室147内への第1通路部161を介しての油液Lの流入を規制する逆止弁である。図2に示すように、第2通路部162を構成する通路孔206は、弁座部材109におけるバルブシート部139の範囲よりも外側に開口している。このため、通路孔206は、バルブシート部139に着座するサブバルブ110とは無関係に下室23に常時連通する。
【0115】
ピストン21の複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51、ピストン21の大径穴部46内の通路および弁座部材109の大径穴部133内の通路と、弁座部材109の通路溝221内の径方向通路222と、弁座部材109の複数の第1通路部161と、開弁時に出現するサブバルブ110およびバルブシート部139の間の通路とが、第2通路182を構成している。ピストン21の上室22側への移動により、油液Lが、シリンダ4内の上流側となる上室22から下流側となる下室23に第2通路182を通って流れる。第2通路182は、ピストン21の上室22側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室22から下流側となる下室23に向けて油液Lが流れ出す伸び側の通路となる。
【0116】
上室22と下室23とを連通可能な伸び側の第2通路182は、上室22と下室23とを連通可能な伸び側の通路である第1通路92と、上室22側の環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を除いて並列している。第1通路92および第2通路182は、並列部分が、互いに別に設けられている。
【0117】
上室連通室147は、キャップ部材95の筒状部124とサブバルブ107との間の通路とで、伸び側の第3通路512を構成する。伸び側の第3通路512は、同じく伸び側の第2通路182から分岐しており、第2通路182とは別に設けられている。
【0118】
ディスク113は、外径が、サブバルブ110の外径と同等になっている。ディスク113は、サブバルブ110よりも厚く剛性が高い。ディスク113は、サブバルブ110の変形時にサブバルブ110に当接して、それ以上のサブバルブ110の変形を抑制する。環状部材114は、外径が、ディスク113の外径よりも小径である。環状部材114は、環状部材69と同形状の共通部品である。
【0119】
サブバルブ110と、バルブシート部139を含む弁座部材109と、ディスク111,113と、バネ部材112とが、伸び側の第2減衰力発生機構183を構成している。第2減衰力発生機構183は、伸び側の第2通路182に設けられる。第2減衰力発生機構183は、第2通路182を開閉し、この第2通路182から下室23への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する。言い換えれば、この第2減衰力発生機構183は、ピストンロッド25に設けられている。第2減衰力発生機構183のバルブシート部139が弁座部材109に設けられている。第2減衰力発生機構183は、伸び行程で減衰力を発生させる第1減衰力発生機構41とは別に配置されている。伸び側の第2減衰力発生機構183を構成するサブバルブ110は、伸び側のサブバルブである。
【0120】
図3に示すように、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116と、ディスク97と、キャップ部材95の底部122と、下室連通室149とが、下室連通室149の体積を変更可能な下室体積可変機構185を構成している。下室体積可変機構185は、下室連通室149を含む縮み側の第3通路511に設けられている。流路上、可撓ディスク100とサブバルブ110との、下室23および連通路148,425を介しての間に下室連通室149が設けられている。
【0121】
下室体積可変機構185は、可撓ディスク100および弁座ディスク101が、底部122から離れるように一体に変形し移動することで下室連通室149の体積を増やすように変更する。その際に、可撓ディスク100は、全周にわたって皿バネ116に当接する状態が維持されていれば、皿バネ116の外側円錐状部403との間が閉塞される。すなわち、可撓ディスク100は、底部122から離れるように変形する際に、全周にわたって皿バネ116に当接する状態が維持されていれば、下室連通室149と上室連通室147との遮断状態を維持する。
【0122】
下室体積可変機構185は、可撓ディスク100および弁座ディスク101が、底部122に近づくように一体に変形し移動することで下室連通室149の体積を減らすように変更する。その際に、可撓ディスク100は、全体的に皿バネ116に当接する状態が維持され皿バネ116の外側円錐状部403との間が閉塞される。
【0123】
図2に示すように、上室22に連通する上室連通室147を含む伸び側の第3通路512は、伸び側の第2通路182から分岐しており、第2通路182とは別に設けられている。図3に示すように、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116と、ディスク102~104と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95と、上室連通室147とが、上室連通室147の体積を変更可能な上室体積可変機構186を構成している。上室体積可変機構186は、上室連通室147を含む伸び側の第3通路512に設けられている。流路上、可撓ディスク100とサブバルブ107との間に上室連通室147が設けられている。
【0124】
上室体積可変機構186は、可撓ディスク100および弁座ディスク101が、ディスク104から離れるように一体に変形し移動することで上室連通室147の体積を増やすように変更する。その際に、弁座ディスク101は、全体的に可撓ディスク100に当接する状態が維持されていれば、可撓ディスク100の連通孔501内の連通路505を閉塞する。すなわち、下室連通室149と上室連通室147との遮断状態を維持する。
【0125】
上室体積可変機構186は、可撓ディスク100および弁座ディスク101が、ディスク104に近づくように変形し移動することで上室連通室147の体積を減らすように変更する。その際に、弁座ディスク101は、全体的に可撓ディスク100に当接する状態が維持され可撓ディスク100の連通孔501内の連通路505を閉塞する。
【0126】
下室体積可変機構185と上室体積可変機構186とに対して、可撓ディスク100、弁座ディスク101および皿バネ116が共用である。下室連通室149を含む下室体積可変機構185と、上室連通室147を含む上室体積可変機構186とが、作動流体としての油液を貯留するアキュムレータ190を構成している。アキュムレータ190は、ピストンロッド25に設けられている。アキュムレータ190は、緩衝器1内に、伸び側の第2減衰力発生機構183とは別に配置されている。アキュムレータ190の可撓ディスク100は、伸び行程において第2減衰力発生機構183が開弁するよりも前に変形し、縮み行程において第2減衰力発生機構173が開弁するよりも前に変形する。
【0127】
第2通路182において、第2減衰力発生機構183が開状態にあるときに、ディスク82の切欠部90内の通路が、流路断面積が固定の部分の中で最も狭く、流路断面積がその上流側および下流側よりも狭くなって第2通路182においてもオリフィス175となる。オリフィス175は、第2通路172,182に共通である。オリフィス175は、サブバルブ110が開弁して第2通路182で油液Lが流れる際の油液Lの流れのサブバルブ110よりも上流側に配置されている。オリフィス175は、サブバルブ110が開弁して第2通路182で油液Lが流れる際の油液Lの流れのサブバルブ110よりも下流側に配置されていても良い。サブバルブ110と、上記したサブバルブ107とは独立して開閉する。
【0128】
伸び側の第2減衰力発生機構183は、バルブシート部139およびこれに当接するサブバルブ110のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室22と下室23とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第2減衰力発生機構183は、バルブシート部139とサブバルブ110とが全周にわたって当接状態にあれば、上室22と下室23とを連通させることはない。言い換えれば、第2通路182は、上室22と下室23とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室22と下室23とを常時連通させる通路ではない。環状部材114は、ディスク113とによって、サブバルブ110の開方向への規定以上の変形をサブバルブ110に当接して規制する。
【0129】
緩衝器1は、少なくともピストン21の範囲内で軸方向に油液Lを通過させる流れとしては、上室22と下室23とが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183を介してのみ連通可能である。緩衝器1は、油液Lの通路上には、上室22と下室23とを常時連通させる固定オリフィスは設けられていない。
【0130】
上記したように第2通路182と第1通路92とは、環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を除いて並列している。並列部分には、第1通路92に第1減衰力発生機構41が設けられている。第2通路182に第2減衰力発生機構183が設けられている。よって、伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構183は、並列に配置されている。
【0131】
第2減衰力発生機構173,183は、弁座部材109と、第2通路172,182のうちの弁座部材109に設けられる部分である弁座部材通路部160の一側に設けられるサブバルブ110および弁座部材通路部160の他側に設けられるサブバルブ107と、第2通路172,182におけるピストン21と弁座部材109との間に設けられる有底筒状のキャップ部材95と、を備えている。弁座部材109はキャップ部材95内に設けられている。サブバルブ110は、弁座部材109の下室23側に設けられている。サブバルブ107は、キャップ部材95の底部122と弁座部材109との間のキャップ室146内に設けられている。
【0132】
上室体積可変機構186は、可撓ディスク100が、ディスク104から離れるように変形し移動することで上室連通室147の体積を増やすように変更する。第2減衰力発生機構183が開弁した状態で、上室連通室147と下室連通室149との圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100は、図6に示すように、皿バネ116の外側円錐状部403を底部122側に弾性変形させながら、外周側が底部122側に変形する。すると、可撓ディスク100は、弁座ディスク101から軸方向に離れ、連通孔501内の連通路505を介して上室連通室147と下室連通室149とを連通させる。連通孔501内の連通路505と、可撓ディスク100および弁座ディスク101の間の通路とが、伸び行程において、上室連通室147と下室連通室149とを連通させる伸び側の第4通路521である。第4通路521は、上室連通室147を含む第3通路512とは別に設けられている。第4通路521は、開いた時に第3通路512と直列で連通するように設けられている。
【0133】
可撓ディスク100と弁座ディスク101とが、第4通路521を介して上室連通室147から下室連通室149に、言い換えれば上室22から下室23に油液Lを流す伸び側のリリーフ機構522を構成している。リリーフ機構522は、伸び側の第4通路521に設けられている。リリーフ機構522は、伸び側の第2減衰力発生機構183が開弁した後に開弁するように設定されている。
【0134】
上室体積可変機構186は、撓み可能な可撓ディスク100と、皿バネ116と、を有している。可撓ディスク100は、第2減衰力発生機構183が開弁するよりも前に変形する。可撓ディスク100には、内周端部から外周端部までの間に、上流側と下流側とを連通する連通孔501が形成されている。皿バネ116は、可撓ディスク100の端面に当接し可撓ディスク100を付勢する。リリーフ機構522は、可撓ディスク100の連通孔501を、この可撓ディスク100の撓み量により開閉可能に配置されている。
【0135】
下室体積可変機構185は、可撓ディスク100が、ディスク104に近づくように変形し移動することで下室連通室149の体積を増やすように変更する。第2減衰力発生機構173が開弁した状態で、上室連通室147と下室連通室149との圧力差が所定値を超えると、図7に示すように、可撓ディスク100の外周側の変形量が大きくなる。すると、可撓ディスク100は、皿バネ116から軸方向に離れ、皿バネ116との間を介して下室連通室149と上室連通室147とを連通させる。言い換えれば、皿バネ116は、可撓ディスク100の端面に当接する部分が、可撓ディスク100の撓み量により、可撓ディスク100の端面から少なくとも一部離れる。可撓ディスク100と皿バネ116との間の通路が、縮み行程において、下室連通室149と上室連通室147とを連通させる縮み側の第4通路531である。第4通路531は、下室連通室149を含む第3通路511とは別に設けられている。第4通路531は、開いた時に、第3通路511と直列で連通するように設けられている。
【0136】
可撓ディスク100と皿バネ116とが、第4通路531を介して下室連通室149から上室連通室147に、言い換えれば下室23から上室22に油液Lを流す縮み側のリリーフ機構532を構成している。リリーフ機構532は、縮み側の第4通路531に設けられている。リリーフ機構532は、縮み側の第2減衰力発生機構173が開弁した後に開弁するように設定されている。
【0137】
ピストンロッド25に組み付けられた状態で、メインバルブ71は、ディスク63とディスク67とに内周側がクランプされるとともに、ピストン21のバルブシート部50に外周側が全周にわたって当接する。この状態で、メインバルブ91は、ディスク83とディスク87とに内周側がクランプされるとともに、ピストン21のバルブシート部48に外周側が全周にわたって当接する。
【0138】
この状態で、サブバルブ107は、弁座部材109の内側シート部134とディスク106とに内周側がクランプされるとともに、弁座部材109のバルブシート部135に全周にわたって当接する。この状態で、サブバルブ110は、弁座部材109の内側シート部138とディスク111とに内周側がクランプされるとともに、弁座部材109のバルブシート部139に全周にわたって当接する。
【0139】
この状態で、図3に示すように、可撓ディスク100は、弁座ディスク101と共にディスク97,102に内周側がクランプされるとともに、外周側が全周にわたって皿バネ116の外側円錐状部403に当接する。その際に、可撓ディスク100は、ディスク97よりも径方向外側の部分が径方向外側ほど軸方向において底部122から離れるようにテーパ状に弾性変形する。このとき、皿バネ116は、その外側円錐状部403が弾性変形しつつ可撓ディスク100に全周にわたって当接する。この状態で、弁座ディスク101も、可撓ディスク100の形状に倣って、ディスク102よりも径方向外側の部分が径方向外側ほど軸方向において底部122から離れるようにテーパ状に弾性変形する。
【0140】
図1に示すように、バルブボディ12には、軸方向に貫通する液通路251および液通路252が形成されている。液通路251,252は、下室23とリザーバ室5とを連通可能である。ベースバルブ15は、バルブボディ12の軸方向の底部材9側に、液通路251を開閉可能な縮み側の減衰力発生機構255を有している。ベースバルブ15は、バルブボディ12の軸方向の底部材9とは反対側に、液通路252を開閉可能な伸び側の減衰力発生機構256を有している。
【0141】
ベースバルブ15は、ピストンロッド25が縮み側に移動しピストン21が下室23を狭める方向に移動して下室23の圧力がリザーバ室5の圧力よりも所定値以上高くなると、減衰力発生機構255が液通路251を開いて、下室23の油液Lをリザーバ室5に流し、その際に減衰力を発生させる。言い換えれば、ピストンロッド25が縮み側に移動してピストン21を移動させると、液通路251において油液Lがリザーバ室5に流れ出す。減衰力発生機構255は、縮み側の減衰力発生機構である。この減衰力発生機構255は、液通路252の油液Lの流れを阻害することはない。
【0142】
ベースバルブ15は、ピストンロッド25が伸び側に移動しピストン21が上室22側に移動して下室23の圧力がリザーバ室5の圧力より低下すると、減衰力発生機構256が液通路252を開いて、リザーバ室5の油液Lを下室23に流し、その際に減衰力を発生させる。言い換えれば、ピストンロッド25が伸び側に移動してピストン21を移動させると、液通路252において油液Lが下室23に流れ出す。減衰力発生機構256は、伸び側の減衰力発生機構である。この減衰力発生機構256は、液通路251の油液Lの流れを阻害することはない。減衰力発生機構256は、リザーバ室5から下室23内に実質的に減衰力を発生させずに油液Lを流すサクションバルブとしても良い。
【0143】
以上の第1実施形態の緩衝器1のピストン21等のピストンロッド25に設けられた部品による油圧回路図を図8に示す。上室22と下室23との間に第1減衰力発生機構41,42と第2減衰力発生機構173,183とが並列に設けられている。第2減衰力発生機構173,183の上室22側にオリフィス175が設けられている。オリフィス175よりも下室23側に、第2減衰力発生機構173,183と並列してアキュムレータ190が設けられている。オリフィス175よりも下室23側に、第2減衰力発生機構173,183およびアキュムレータ190と並列してリリーフ機構522,532が設けられている。
【0144】
<作動>
図2に示すように、第1減衰力発生機構41のメインバルブ91は、第2減衰力発生機構183のサブバルブ110よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、伸び行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構183が開弁する。また、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構183が共に開弁する。サブバルブ110は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
【0145】
すなわち、伸び行程においては、ピストン21が上室22側に移動することで上室22の圧力が高くなり、下室23の圧力が低くなる。すると、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183のいずれにも、上室22と下室23とを常時連通させる固定オリフィスはないものの、上室22の油液Lが、ピストン21の複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、オリフィス175と、ピストン21の大径穴部46内の通路、ピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51および弁座部材109の大径穴部133内の通路と、弁座部材109の通路溝221内の径方向通路222と、第3通路512とを介して上室連通室147に流入する。これにより、上室連通室147が昇圧する。このため、上室体積可変機構186は、第2減衰力発生機構183が開弁する前に、可撓ディスク100の皿バネ116の外側円錐状部403への当接位置よりも径方向内側の部分が、底部122側に撓んで上室連通室147の容量を大きくする。これにより、上室体積可変機構186が、上室連通室147の圧力の上昇を抑える。このとき、弁座ディスク101は、可撓ディスク100に倣って変形し第4通路521の閉状態を維持する。また、このとき、可撓ディスク100が底部122側に撓んで移動することから、下室体積可変機構185は下室連通室149の体積を小さくする。
【0146】
ここで、緩衝器1の低周波入力時(大振幅加振時)の伸び行程では、上記のような上室22から上室連通室147への油液Lの流入量が大となるため、可撓ディスク100が大きく変形する。可撓ディスク100は変形量が大きくなると、クランプされた内周側の支持剛性による反力が大きくなって変形量に制限がかかる。これにより、上室連通室147が昇圧していく。その結果、第2減衰力発生機構183が開弁する状態まで第2通路182が昇圧する。
【0147】
このとき、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183のいずれにも、上室22と下室23とを常時連通させる固定オリフィスがないことから、ピストン速度が、第2減衰力発生機構183が開弁する第1所定値未満での伸び行程においては、減衰力が急激に立ち上がる。また、ピストン速度が、第1所定値よりも高速の領域であって、第1所定値よりも高速の第2所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構183が開弁する。
【0148】
つまり、サブバルブ110がバルブシート部139から離座して、伸び側の第2通路182で上室22と下室23とを連通させる。よって、上室22の油液Lが、ピストン21の複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、オリフィス175と、ピストン21の大径穴部46内の通路、ピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51および弁座部材109の大径穴部133内の通路と、弁座部材109の通路溝221内の径方向通路222と、弁座部材109内の第1通路部161と、サブバルブ110およびバルブシート部139の間の通路とを介して下室23に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
【0149】
伸び行程において、第2減衰力発生機構183が開弁した後に開弁するリリーフ機構522が設けられている。このため、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では、上室連通室147の圧力が高くなると、第2減衰力発生機構183が開弁した状態のまま、図6に示すように、リリーフ機構522が第4通路521を開いて、上室連通室147の油液Lを下室23に流す。その後、第2減衰力発生機構183およびリリーフ機構522が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構41が開弁する。すなわち、上記のようにサブバルブ110がバルブシート部139から離座して、伸び側の第2通路182で上室22から下室23に油液Lを流し、その後、第2減衰力発生機構183が開弁した状態のまま、リリーフ機構522が第4通路521を開いて、第4通路521で上室22から下室23に油液Lを流す。このとき、第2通路182においてメインバルブ91よりも下流側に設けられたオリフィス175で油液Lの流れが絞られることにより、メインバルブ91に加わる圧力が高くなって差圧が高まり、メインバルブ91がバルブシート部48から離座して、伸び側の第1通路92で上室22から下室23に油液Lを流す。よって、上室22の油液Lが、複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、メインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路とを介して下室23に流れる。
【0150】
これにより、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する伸び側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する伸び側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
【0151】
ここで、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では、上室22と下室23との差圧は、第1所定値以上第2所定値未満の低速領域よりも大きくなるが、第1通路92はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ91が開弁することで油液Lを第1通路92を介して大流量で流すことができる。これと、第2通路182をオリフィス175で絞ること、及び、リリーフ機構522が第4通路521を開いて、上室連通室147の油液Lを下室23に流すことにより、サブバルブ110の変形を抑制することができる。
【0152】
このとき、閉状態のサブバルブ107には、下室23と上室連通室147とから反対向きの圧力が加わる。上室22と下室23との差圧が大きくなっても、第2通路182においてサブバルブ107よりも上流側にオリフィス175が形成されているため、上室連通室147の圧力上昇が上室22の圧力上昇に対して緩やかになる。更に、リリーフ機構522が第4通路521を開いて、上室連通室147の油液Lを下室23に流す。これにより、上室連通室147と下室23との圧力差が大きくなることを抑制する。よって、閉状態のサブバルブ107が受ける上室連通室147と下室23との圧力差が大きくなることを抑制でき、サブバルブ107に上室連通室147側から下室23側に向けた大きな背圧が加わることを抑制できる。
【0153】
緩衝器1は、伸び行程で上室22から下室23に油液Lを流す流路を第1通路92と第2通路182との並列で設け、メインバルブ91とサブバルブ110とを並列で設けている。オリフィス175は、サブバルブ110と直列に接続されている。
【0154】
以上のように、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では、メインバルブ91が開弁することで油液Lを第1通路92を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ110およびバルブシート部139の間の通路を流れる流量が小さくなる。よって、例えば、ピストン速度が通常速度領域(第2所定値以上)でのピストン速度の上昇に対する減衰力の増加率を下げることができる。言い換えれば、通常速度領域(第2所定値以上)におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域(第2所定値未満)よりも寝かせることができる。これにより、設計自由度を拡大することができる。
【0155】
上記した低周波入力時よりも高い周波数が緩衝器1に入力される高周波入力時(小振幅加振時)の伸び行程では、上室22から上室連通室147への油液Lの流入量が小さい。
このため、可撓ディスク100の変形は小さく、上室体積可変機構186は、可撓ディスク100の撓み量で、上室連通室147への油液Lの流入のボリュームを吸収できることになって、上室連通室147の昇圧が小さくなる。このため、極微低速減衰力の立ち上がり時には、あたかも、可撓ディスク100がなく、上室連通室147が皿バネ116の連通路425およびキャップ部材95の連通路148で下室23に常時連通する状態、すなわち第2減衰力発生機構183がない構造と同じ状態にすることが可能となる。
【0156】
よって、高周波入力時の伸び行程においては、低周波入力時に対して、極微低速減衰力の立ち上がりが緩やかになる。または、従来の減衰力特性に対して、極微低速減衰力の立ち上がりが緩やかになる。言い換えれば、伸び行程において、ピストン21の周波数が所定周波数を超えると、可撓ディスク100を含む上室体積可変機構186により、第2減衰力発生機構183のサブバルブ110への油液Lの流量を制限する。なお、可撓ディスク100の剛性(板厚など)の違いにより、第2減衰力発生機構183の開弁までの減衰力変化(ピストン速度に対する減衰力の傾き)を調整できる。
【0157】
第1減衰力発生機構42のメインバルブ71は、第2減衰力発生機構173のサブバルブ107よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、縮み行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構173が開弁する。ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構173がともに開弁する。サブバルブ107は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
【0158】
すなわち、縮み行程においては、ピストン21が下室23側に移動することで下室23の圧力が高くなり、上室22の圧力が低くなる。すると、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183のいずれにも、下室23の油液Lが、キャップ部材95の連通路148および皿バネ116の連通路425を介して下室連通室149に流入する。これにより、下室連通室149が昇圧する。このため、下室体積可変機構185は、第2減衰力発生機構173が開弁する前に、可撓ディスク100が、ディスク104側に撓んで下室連通室149の容量を大きくする。これにより、下室体積可変機構185が、下室連通室149の圧力の上昇を抑える。このとき、弁座ディスク101は、可撓ディスク100に倣って変形し第4通路521の閉状態を維持する。また、このとき、可撓ディスク100がディスク104側に撓んで移動することから、上室体積可変機構186は上室連通室147の体積を小さくする。
【0159】
緩衝器1の低周波入力時(大振幅加振時)の縮み行程では、上記のような下室23から下室連通室149への油液Lの流入量が大となる。このため、可撓ディスク100が大きく変形する。可撓ディスク100は変形量が大きくなると、クランプされた内周側の支持剛性による反力が大きくなって変形量に制限がかかる。これにより、下室連通室149が昇圧する。その結果、第2減衰力発生機構173が開弁する状態まで第2通路172が昇圧する。
【0160】
このとき、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183のいずれにも、下室23と上室22とを常時連通させる固定オリフィスがない。このため、ピストン速度が、第2減衰力発生機構173が開弁する第3所定値未満での縮み行程においては、減衰力が急激に立ち上がる。また、ピストン速度が、第3所定値よりも高速の領域であって、第3所定値よりも高速の第4所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構173が開弁する。
【0161】
すなわち、サブバルブ107がバルブシート部135から離座して、縮み側の第2通路172で下室23と上室22とを連通させる。よって、下室23の油液Lが、弁座部材109内の第2通路部162と、サブバルブ107およびバルブシート部135の間の通路と、上室連通室147と、弁座部材109の通路溝221内の径方向通路222と、弁座部材109の大径穴部133内の通路と、ピストンロッド25の通路切欠部30内のピストンロッド通路部51と、ピストン21の大径穴部46内の通路と、オリフィス175と、ピストン21の複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、を介して上室22に流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
【0162】
また、縮み行程において、第2減衰力発生機構173が開弁した後に開弁するリリーフ機構532が設けられている。このため、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、下室連通室149の圧力が高くなると、第2減衰力発生機構173が開弁した状態のまま、図7に示すように、リリーフ機構532が第4通路531を開いて、下室23および下室連通室149の油液Lを上室連通室147を介して上室22に流す。その後、第2減衰力発生機構173およびリリーフ機構532が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構42が開弁する。すなわち、上記のようにサブバルブ107がバルブシート部135から離座して、縮み側の第2通路172で下室23から上室22に油液Lを流す。その後、第2減衰力発生機構173が開弁した状態のまま、リリーフ機構532が第4通路531を開いて、第4通路531で下室23から上室22に油液Lを流す。このとき、第2通路172においてサブバルブ107およびリリーフ機構532よりも下流側に設けられたオリフィス175で油液Lの流れが絞られることにより、メインバルブ71に加わる圧力が高くなって差圧が高まり、メインバルブ71がバルブシート部50から離座して、縮み側の第1通路72で下室23から上室22に油液Lを流す。よって、下室23の油液Lが、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路と、メインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路とを介して上室22に流れる。
【0163】
これにより、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
【0164】
ここで、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、下室23と上室22との差圧は、第3所定値以上第4所定値未満の低速領域よりも大きくなるが、第1通路72はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ71が開弁することで油液Lを第1通路72を介して大流量で流すことができる。これと、第2通路172をオリフィス175で絞ることと、リリーフ機構532が第4通路531を開いて、下室23および下室連通室149の油液Lを上室連通室147に流すこととにより、サブバルブ107の変形を抑制することができる。
【0165】
このとき、閉状態のサブバルブ110には下室23と上室連通室147側とから反対向きの圧力が加わる。下室23と上室22との差圧が大きくなっても、第2通路172においてサブバルブ110よりも下流側にオリフィス175が形成されていることと、リリーフ機構532が第4通路531を開いて、下室23および下室連通室149の油液Lを上室連通室147に流すことととにより、下室23と上室連通室147との圧力差が大きくなることを抑制する。よって、閉状態のサブバルブ110が受ける下室23と上室連通室147との圧力差が大きくなることを抑制でき、サブバルブ110に下室23側から上室連通室147側に向けた大きな背圧が加わることを抑制できる。
【0166】
緩衝器1には、縮み行程で下室23から上室22に油液Lを流す流路が、第1通路72と第2通路172との並列で設けられている。緩衝器1には、メインバルブ71とサブバルブ107とが並列で設けられている。オリフィス175はサブバルブ107と直列に接続されている。
【0167】
以上のように、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、メインバルブ71が開弁することで油液Lを第1通路72を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ107およびバルブシート部135の間の通路を流れる流量が小さくなる。よって、例えば、ピストン速度が通常速度領域(第4所定値以上)でのピストン速度の上昇に対する減衰力の増加率を下げること等ができる。言い換えれば、通常速度領域(第4所定値以上)におけるピストン速度の上昇に対する縮み側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域(第4所定値未満)よりも寝かせることができる。これにより、設計自由度を拡大することができる。
【0168】
上記した低周波入力時よりも高い周波数が緩衝器1に入力される高周波入力時(小振幅加振時)の縮み行程では、下室23から下室連通室149への油液Lの流入量が小さい。
このため、可撓ディスク100の変形は小さい。よって、可撓ディスク100の変形は小さく、下室体積可変機構185は、可撓ディスク100の撓み量で、下室連通室149への油液Lの流入のボリュームを吸収できることになって、下室連通室149の昇圧が小さくなる。このため、極微低速減衰力の立ち上がり時には、あたかも、可撓ディスク100がなく、下室連通室149が上室連通室147に常時連通する状態、すなわち第2減衰力発生機構173がない構造と同じ状態にすることが可能となる。
【0169】
よって、高周波入力時の縮み行程において、低周波入力時または、従来の減衰力特性に対して、極微低速減衰力の立ち上がりが緩やかになる。言い換えれば、ピストン21の周波数が所定周波数を超えると、可撓ディスク100を含む下室体積可変機構185により、第2減衰力発生機構173のサブバルブ107への油液Lの流量を制限する。なお、可撓ディスク100の剛性(板厚など)の違いにより、第2減衰力発生機構173の開弁までの減衰力変化(ピストン速度に対する減衰力の傾き)を調整できる。
【0170】
ここで、縮み行程においては、減衰力発生機構255による減衰力特性も合わせた特性となる。
【0171】
上記した特許文献1には、同一行程で開弁するバルブを2つ有する緩衝器が記載されている。このように同一行程で開弁するバルブを2つ有する構造を採用することで、一方のバルブを他方のバルブよりもピストン速度が低速の領域で開弁させ、これよりも高速の領域では両方のバルブを開弁させることができる。このような構造の緩衝器において、特に、微操舵入力時の応答性改善や良路乗り心地のフラット感改善等のため、極微低速領域での低周波入力時に減衰力を出す設定にすると、高周波入力時において異音が発生する可能性がある。また、緩衝器においては、付勢部材の組み付け性の向上が望まれている。
【0172】
第1実施形態の緩衝器1は、キャップ部材95の軸方向一端側の底部122および皿バネ116に、キャップ部材95の内外を連通する連通路148,425が形成されている。皿バネ116が、軸方向の一端面側がキャップ部材95の連通路148よりも外周側と当接するよう設けられている。撓み可能な可撓ディスク100が、皿バネ116の軸方向の他端面側と当接するように設けられている。よって、キャップ部材95と可撓ディスク100と皿バネ116との間に、連通路148,425を介して下室23に連通する下室連通室149を形成することができる。そして、可撓ディスク100は、変形することにより下室連通室149の体積を変更する下室体積可変機構185を構成する。
【0173】
これにより、上記のように縮み行程において、極微低速領域での低周波入力時に減衰力を出す設定にしても、高周波入力時には、下室体積可変機構185によって、第2通路172と並列に設けられた下室連通室149の体積を変更することが可能となる。よって、高周波入力時に、第2通路172を流れる油液Lの流量を変更することが可能となる。したがって、縮み行程において、極微低速領域での低周波入力時に減衰力を出す設定にしても、高周波入力時における縮み行程での異音の発生を抑制することが可能となる。
【0174】
また、第1実施形態の緩衝器1は、可撓ディスク100によって上室22に連通する上室連通室147を形成することができる。そして、可撓ディスク100は、変形することにより上室連通室147の体積を変更する上室体積可変機構186を構成する。
【0175】
これにより、上記のように伸び行程において、極微低速領域での低周波入力時に減衰力を出す設定にしても、高周波入力時には、上室体積可変機構186によって、第2通路182に連通する上室連通室147の体積を変更することが可能となる。よって、高周波入力時に、第2通路182を流れる油液Lの流量を変更することが可能となる。したがって、伸び行程において、極微低速領域での低周波入力時に減衰力を出す設定にしても、高周波入力時における異音の発生を抑制することが可能となる。
【0176】
また、第1実施形態の緩衝器1は、伸び側の第2減衰力発生機構183が開弁した後に開弁するリリーフ機構522が設けられている。このため、上室連通室147の圧力が高くなると、リリーフ機構522が第4通路521を開いて、上室22および上室連通室147の油液Lを下室連通室149および下室23に流す。これにより、可撓ディスク100およびサブバルブ110の変形を抑制することができる。よって、可撓ディスク100およびサブバルブ110の耐久性を向上させることができる。
【0177】
また、第1実施形態の緩衝器1は、縮み側の第2減衰力発生機構173が開弁した後に開弁するリリーフ機構532が設けられている。このため、下室連通室149の圧力が高くなると、リリーフ機構532が第4通路531を開いて、下室23および下室連通室149の油液Lを上室連通室147および上室22に流す。これにより、可撓ディスク100およびサブバルブ107の変形を抑制することができる。よって、可撓ディスク100およびサブバルブ107の耐久性を向上させることができる。
【0178】
皿バネ116は、内周端部から外周端部までの間に穴部415を有すると共に、内周端部がピストンロッド25と当接するよう形成されている。このように、皿バネ116は、内周端部から外周端部までの間に穴部415を有するため、下室連通室149の下室23への連通を確保することができる。その上で、皿バネ116は、内周端部がピストンロッド25と当接するよう形成されているため、皿バネ116のピストンロッド25への組み付け性を向上させることができる。したがって、皿バネ116を自動機でピストンロッド25に組み付けることができ、人手を不要とし、また、組付時間を短縮できるため、組付コストを低減することができる。
【0179】
皿バネ116は、外径側がバネ力を発生させる外側円錐状部403であり、内径側が外側円錐状部403よりも平面に近い内側平面状部414である。このため、内側平面状部414においてバキュームによる吸着および搬送が容易となり、さらに組付時間を短縮できる。したがって、組付コストを一層低減することができる。
【0180】
皿バネ116は、穴部415が内側平面状部414に形成されている。このため、上室連通室147および下室連通室149の画成が容易となる。
【0181】
なお、可撓ディスク100にかえて、図9に示すような変形例の可撓ディスク100Aを設けても良い。可撓ディスク100Aは、可撓ディスク100と同様の内側円環部502および外側円環部503を有しており、可撓ディスク100と同様の連結部504が1箇所のみ設けられている。可撓ディスク100Aには、内側円環部502、外側円環部503および連結部504で囲まれて円弧状の連通孔501Aが形成されている。連通孔501Aは径方向の幅が連通孔501の内径と同等になっている。連通孔501Aは、内側円環部502および外側円環部503と同心の円弧状である。連通孔501Aは、可撓ディスク100Aを厚さ方向に貫通しており、その内側が連通路505Aとなっている。連通路505Aも、連通路505と同様に弁座ディスク101で開閉されることになり、開時に弁座ディスク101との間の通路とで第4通路521を形成する。
【0182】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図10および図11に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0183】
第2実施形態の緩衝器1Bにおいては、図10に示すように、第1実施形態のアキュムレータ190にかえて、アキュムレータ190Bが設けられている。
アキュムレータ190Bは、第1実施形態の可撓ディスク100にかえて可撓ディスク100Bが設けられている。図11に示すように、可撓ディスク100Bは、可撓ディスク100の外側円環部503のみを有する形状である。よって、可撓ディスク100Bは、径方向の幅が全周にわたって一定である。可撓ディスク100Bは、単純支持のフリーバルブである。可撓ディスク100Bは、可撓ディスク100の外側円環部503と同様に、図10に示すように弁座ディスク101および皿バネ116に当接する。可撓ディスク100Bは、ピストンロッド25に対して径方向に移動可能である。可撓ディスク100Bは、キャップ部材95の筒状部124に当接することで径方向の移動量が所定の範囲内に制限される。可撓ディスク100Bは、最大限径方向に移動しても全周にわたって弁座ディスク101および皿バネ116に対し径方向の位置が重なり合う状態が維持される。
【0184】
アキュムレータ190Bは、第1実施形態のディスク97にかえて、ディスク97B、ディスク98Bおよびディスク99Bが、軸方向の底部122側から順に設けられている。ディスク97B、ディスク98Bおよびディスク99Bは、いずれも金属製であり、いずれも径方向の幅が全周にわたって一定の有孔円形平板状である。ディスク97B、ディスク98Bおよびディスク99Bは、いずれも、内側に取付軸部28が嵌合されることで、ピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0185】
ディスク97Bは皿バネ116の内側円環部401に当接している。ディスク97Bの外径は、皿バネ116の内側円環部401の外径よりも若干大径であって、連結腕部413の内径よりも小径の内径である。ディスク98Bおよびディスク99Bは、いずれも外径がディスク102の外径と同等である。ディスク99Bが弁座ディスク101に当接する。可撓ディスク100Bと、ディスク97B~99Bとの間には、径方向に隙間がある。この部分が、第1実施形態の連通路505に対応する連通路505Bとなっている。言い換えれば、可撓ディスク100Bは、内周端部からピストンロッド25の外径までの間に、上流側と下流側とを連通する連通孔506Bが形成されている。
【0186】
可撓ディスク100Bと、弁座ディスク101と、皿バネ116と、キャップ部材95の底部122と、ディスク97B~99Bとが、第1実施形態の下室連通室149に対応する下室連通室149Bを形成している。下室連通室149Bも、連通路425,148とで、第1実施形態の第3通路511に対応する第3通路511Bを構成する。可撓ディスク100Bと、弁座ディスク101と、皿バネ116と、ディスク97B~99Bと、キャップ部材95の底部122と、下室連通室149Bとが、第3通路511Bに設けられて第1実施形態の下室体積可変機構185と同様に作動する下室体積可変機構185Bを構成している。
【0187】
可撓ディスク100Bと、弁座ディスク101と、ディスク102~104と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95とが、第1実施形態の上室連通室147に対応する上室連通室147Bを形成している。上室連通室147Bもサブバルブ107と筒状部124との間の通路とで、第1実施形態の第3通路512に対応する第3通路512Bを構成する。可撓ディスク100Bと、弁座ディスク101と、皿バネ116と、ディスク102~104と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95と、上室連通室147とが、第3通路512Bに設けられて第1実施形態の上室体積可変機構186と同様に作動する上室体積可変機構186Bを構成している。
【0188】
可撓ディスク100Bと弁座ディスク101との間が、第1実施形態の第4通路521に対応する第4通路521Bを構成する。可撓ディスク100Bと弁座ディスク101とが離間することで、これらの間の第4通路521Bが開かれて上室連通室147Bと下室連通室149Bとが連通する。可撓ディスク100Bと弁座ディスク101とが、第4通路521Bに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構522と同様に作動する伸び側のリリーフ機構522Bを構成している。
【0189】
可撓ディスク100Bと皿バネ116との間が、第1実施形態の第4通路531に対応する第4通路531Bを構成する。可撓ディスク100Bと皿バネ116とが離間することで、これらの間の第4通路531Bが開かれて下室連通室149Bと上室連通室147Bとが連通する。可撓ディスク100Bと皿バネ116とが、第4通路531Bに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構532と同様に作動する縮み側のリリーフ機構532Bを構成している。
【0190】
緩衝器1Bは、可撓ディスク100Bがピストンロッド25に固定されていない点およびキャップ部材95の筒状部124で移動が制限される点が主に第1実施形態の緩衝器1と相違しており、第1実施形態の緩衝器1と同様の油圧回路となる。緩衝器1Bは、伸び行程および縮み行程の両行程において、第1実施形態の緩衝器1と同様に作動する。
【0191】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を主に図12に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0192】
第3実施形態の緩衝器1Cにおいては、図12に示すように、第1実施形態のアキュムレータ190にかえて、アキュムレータ190Cが設けられている。
アキュムレータ190Cは、第1実施形態のディスク97にかえて、ディスク97C、ディスク98Cおよびディスク99Cが、軸方向の底部122側から順に設けられている。
ディスク97C、ディスク98Cおよびディスク99C、いずれも金属製であり、いずれも径方向の幅が全周にわたって一定の有孔円形平板状である。ディスク97C、ディスク98Cおよびディスク99Cは、いずれも、内側に取付軸部28を嵌合させることでピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0193】
ディスク97Cは皿バネ116の内側円環部401に当接している。ディスク97Cの外径は、皿バネ116の内側円環部401の外径よりも若干大径であって、連結腕部413の内径よりも小径の内径である。ディスク98Cの外径はディスク97Cの外径よりも大径であって、皿バネ116の連結腕部413の外径と同等である。ディスク99Cは、外径がディスク102の外径と同等である。
【0194】
アキュムレータ190Cは、第1実施形態の弁座ディスク101にかえて、弁座ディスク101Cが設けられている。弁座ディスク101Cは径方向の中間部に軸方向に突出する突出部551Cが形成されている点が、弁座ディスク101とは異なっている。突出部551Cは、弁座ディスク101Cの中心軸線を中心とする円環状である。突出部551Cは、弁座ディスク101Cの中心軸線を含む面での断面が円弧状をなしている。
【0195】
弁座ディスク101Cの突出部551Cよりも径方向の内側は、径方向の幅が全周にわたって一定の内側円環部552Cである。弁座ディスク101Cの突出部551Cよりも径方向の外側は、径方向の幅が全周にわたって一定の外側円環部553Cである。弁座ディスク101Cがピストンロッド25に組み付けられる前の自然状態にあるとき、内側円環部552Cおよび外側円環部553Cは、いずれも平板状をなしており、同一平面上に配置される。
【0196】
弁座ディスク101Cは、ピストンロッド25に組み付けられると、内側円環部552Cが可撓ディスク100の内側円環部502と共にディスク99Cとディスク102とによって軸方向にクランプされる。この状態で、突出部551Cは、可撓ディスク100の複数の連通孔501よりも径方向外側の外側円環部503に全周にわたって当接する。これにより、弁座ディスク101Cが可撓ディスク100の複数の連通路505を閉塞させる。
【0197】
可撓ディスク100と、弁座ディスク101Cと、皿バネ116と、キャップ部材95の底部122と、ディスク97C~99Cとが、第1実施形態の下室連通室149に対応する下室連通室149Cを形成している。この下室連通室149Cも連通路425,148とで、第1実施形態の第3通路511に対応する第3通路511Cを構成する。可撓ディスク100と、弁座ディスク101Cと、皿バネ116と、キャップ部材95の底部122と、ディスク97C~99Cと、下室連通室149Cとが、第3通路511Cに設けられて、第1実施形態の下室体積可変機構185とほぼ同様に作動する下室体積可変機構185Cを構成している。
【0198】
可撓ディスク100と、弁座ディスク101Cと、皿バネ116と、ディスク102~104と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95とが、第1実施形態の上室連通室147に対応する上室連通室147Cを形成している。この上室連通室147Cもサブバルブ107と筒状部124との間の通路とで、第1実施形態の第3通路512に対応する第3通路512Cを構成する。可撓ディスク100と、弁座ディスク101Cと、皿バネ116と、ディスク102~104と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95と、上室連通室147Cとが、第3通路512Cに設けられて第1実施形態の上室体積可変機構186とほぼ同様に作動する上室体積可変機構186Cを構成している。
【0199】
可撓ディスク100と弁座ディスク101Cとの間が、第1実施形態の第4通路521に対応する第4通路521Cとなっている。可撓ディスク100と弁座ディスク101Cとが離間することで、これらの間の第4通路521Cが開かれて上室連通室147Cと下室連通室149Cとが連通する。可撓ディスク100と弁座ディスク101Cとが、第4通路521Cに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構522とほぼ同様に作動する伸び側のリリーフ機構522Cを構成している。
【0200】
可撓ディスク100と皿バネ116との間が、第1実施形態の第4通路531に対応する第4通路531Cとなっている。可撓ディスク100と皿バネ116とが離間することで、これらの間の第4通路531Cが開かれて下室連通室149Cと上室連通室147Cとが連通する。可撓ディスク100と皿バネ116とが、第4通路531Cに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構532とほぼ同様に作動する伸び側のリリーフ機構532Cを構成している。
【0201】
アキュムレータ190Cは、弁座ディスク101Cが、円環状の突出部551Cを有している。アキュムレータ190Cの突出部551Cが可撓ディスク100に当接している。緩衝器1Cは、第1実施形態の緩衝器1と同様の油圧回路となるものの、アキュムレータ190Cの作動が第1実施形態のアキュムレータ190の作動と若干異なる。
【0202】
アキュムレータ190Cは、伸び行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101Cが、皿バネ116との当接位置よりも径方向内側の部分を底部122に近づけるように弾性変形して上室連通室147Cの体積を拡大する。このとき、弁座ディスク101Cも可撓ディスク100と一体に変形して突出部551Cを可撓ディスク100に当接させて第4通路521Cを閉状態に維持する。
【0203】
アキュムレータ190Cは、伸び行程において、第2減衰力発生機構183が開弁した状態で、上室連通室147Cおよび下室連通室149Cの圧力差が所定値を超えると、第1実施形態と同様、可撓ディスク100が皿バネ116の外側円錐状部403を弾性変形させながら底部122に近づくように弾性変形して、弁座ディスク101Cの突出部551Cから離れ、第4通路521Cを開いて上室連通室147Cを下室連通室149Cに連通させる。すなわち、リリーフ機構522Cは、伸び行程において第2減衰力発生機構183が開弁した後に開弁して、第4通路521Cを介して上室連通室147Cを下室連通室149Cに連通させる。
【0204】
アキュムレータ190Cは、縮み行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101Cが、突出部551Cへの当接位置よりも径方向内側の部分をディスク104側に弾性変形させて下室連通室149Cの体積を拡大する。このとき、弁座ディスク101Cは突出部551Cを可撓ディスク100に当接させた状態を維持し第4通路521Cを閉状態に維持する。
【0205】
アキュムレータ190Cは、縮み行程において、第2減衰力発生機構173が開弁した状態で、下室連通室149Cおよび上室連通室147Cの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100が弁座ディスク101Cと共にディスク104に近づくように変形して、皿バネ116の外側円錐状部403から離れ、第4通路531Cを開いて下室連通室149Cを上室連通室147Cに連通させる。すなわち、リリーフ機構532Cは、縮み行程において第2減衰力発生機構173が開弁した後に開弁して、第4通路531Cを介して下室連通室149Cを上室連通室147Cに連通させる。
【0206】
緩衝器1Cは、アキュムレータ190Cの上記作動以外は、伸び行程および縮み行程の両行程において、第1実施形態の緩衝器1と同様に作動する。
【0207】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態を主に図13に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0208】
第4実施形態の緩衝器1Dにおいては、図13に示すように、第1実施形態のアキュムレータ190にかえて、アキュムレータ190Dが設けられている。
アキュムレータ190Dは、第1実施形態のディスク97にかえて、ディスク97D、ディスク98Dおよびディスク99Dが、軸方向の底部122側から順に設けられている。
アキュムレータ190Dは、第1実施形態のディスク102~104にかえて、ディスク102D、ディスク103D、ディスク104D、皿バネ117Dおよびバネ当接ディスク561Dが、軸方向の底部122側から順に設けられている。
【0209】
ディスク97D~99D,102D~104Dおよびバネ当接ディスク561Dは、いずれも金属製であり、いずれも径方向の幅が全周にわたって一定の有孔円形平板状である。皿バネ117Dは、皿バネ116と同形状であり、互換性を有している。ディスク97D~99D,102D~104D、皿バネ117Dおよびバネ当接ディスク561Dは、いずれも、内側に取付軸部28が嵌合されることでピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0210】
ディスク97Dは皿バネ116の内側円環部401に当接している。ディスク97Dの外径は、皿バネ116の内側円環部401の外径よりも若干大径であって、連結腕部413の内径よりも小径の内径である。ディスク98Dの外径は、ディスク97Dの外径よりも大径であって、皿バネ116の連結腕部413の外径と同等である。ディスク99Dの外径は、ディスク97Dの外径よりも小径である。ディスク99Dは、可撓ディスク100に当接している。ディスク102Dは、ディスク99Dと同形状であり、互換性を有している。ディスク102Dは、弁座ディスク101に当接している。ディスク103Dは、ディスク98Dと同形状であり、互換性を有している。ディスク104Dは、ディスク97Dと同形状であり、互換性を有している。
【0211】
皿バネ117Dの内側円環部401がディスク104Dに当接している。皿バネ117Dは、外側円錐状部403の中間円環部402とは反対側の端縁部が全周にわたって可撓ディスク100の外周側に当接している。すなわち、皿バネ117Dは、皿バネ116とで、可撓ディスク100を軸方向両側から挟持している。
【0212】
バネ当接ディスク561Dには、径方向の中間位置に厚さ方向(軸方向)に貫通する通路孔562Dが周方向に間隔をあけて複数形成されている。通路孔562D内は連通路563Dとなっている。通路孔562Dはバネ当接ディスク561Dの中心からの距離が、底部122の中心からの通路孔126の距離と同等になっている。連通路563Dは、皿バネ117Dの連通路425に常時連通している。バネ当接ディスク561Dは、皿バネ117Dおよび可撓ディスク100よりも厚さが厚く高剛性である。
【0213】
緩衝器1Dは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116と、キャップ部材95の底部122と、ディスク97D~99Dとが、第1実施形態の下室連通室149に対応する下室連通室149Dを形成している。この下室連通室149Dも連通路425,148とで、第1実施形態の第3通路511に対応する第3通路511Dを構成する。アキュムレータ190Dは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116,117Dと、キャップ部材95の底部122と、ディスク97D~99Dと、下室連通室149Dとが、第3通路511Dに設けられて第1実施形態の下室体積可変機構185とほぼ同様に作動する下室体積可変機構185Dを構成している。
【0214】
緩衝器1Dは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、ディスク102D~104Dと、皿バネ116,117Dと、バネ当接ディスク561Dと、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95とが、第1実施形態の上室連通室147に対応する上室連通室147Dを形成している。この上室連通室147Dもサブバルブ107と筒状部124との間の通路とで、第1実施形態の第3通路512に対応する第3通路512Dを構成する。上室連通室147Dは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、ディスク102D~104Dと、皿バネ117Dと、バネ当接ディスク561Dとで囲まれた室565Dを含んでいる。アキュムレータ190Dは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、ディスク102D~104Dと、皿バネ116,117Dと、バネ当接ディスク561Dと、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95と、上室連通室147Dとが、第3通路512Dに設けられて第1実施形態の上室体積可変機構186とほぼ同様に作動する上室体積可変機構186Dを構成している。
【0215】
可撓ディスク100と弁座ディスク101との間が、第1実施形態の第4通路521に対応する第4通路521Dとなっている。可撓ディスク100と弁座ディスク101とが離間することで、これらの間の第4通路521Dが開かれて上室連通室147Dと下室連通室149Dとが連通する。可撓ディスク100と弁座ディスク101とが、第4通路521Dに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構522とほぼ同様に作動する伸び側のリリーフ機構522Dを構成している。
【0216】
可撓ディスク100と皿バネ116との間が、第1実施形態の第4通路531に対応する第4通路531Dとなっている。可撓ディスク100と皿バネ116とが離間することで、これらの間の第4通路531Dが開かれて下室連通室149Dと上室連通室147Dとが連通する。可撓ディスク100と皿バネ116とが、第4通路531Dに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構532とほぼ同様に作動する縮み側のリリーフ機構532Dを構成している。
【0217】
緩衝器1Dは、第1実施形態の緩衝器1と同様の油圧回路となるものの、アキュムレータ190Dの作動が第1実施形態のアキュムレータ190の作動と若干異なる。
【0218】
アキュムレータ190Dは、伸び行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101が一体に、可撓ディスク100の皿バネ116との当接位置よりも径方向内側の部分を底部122に近づけるように弾性変形して室565Dの体積を拡大し、室565Dを含む上室連通室147Dの体積を拡大する。このとき、弁座ディスク101は、可撓ディスク100と一体に変形する状態では、第4通路521Dを閉状態に維持する。
【0219】
アキュムレータ190Dは、伸び行程において、第2減衰力発生機構183が開弁した状態で、上室連通室147Dおよび下室連通室149Dの圧力差が所定値を超えると、第1実施形態と同様、可撓ディスク100が皿バネ116の外側円錐状部403を弾性変形させながら底部122に近づくように弾性変形して、弁座ディスク101から離れ、第4通路521Dを開いて上室連通室147Dを下室連通室149Dに連通させる。すなわち、リリーフ機構522Dは、伸び行程において第2減衰力発生機構183が開弁した後に開弁して、第4通路521Dを介して上室連通室147Dを下室連通室149Dに連通させる。
【0220】
アキュムレータ190Dは、縮み行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101が一体に、可撓ディスク100の皿バネ117Dへの当接位置よりも径方向内側の部分をバネ当接ディスク561D側に弾性変形させて下室連通室149Dの体積を拡大する。このとき、弁座ディスク101は可撓ディスク100に当接する状態を維持し第4通路521Dを閉状態に維持する。
【0221】
アキュムレータ190Dは、縮み行程において、第2減衰力発生機構173が開弁した状態で、下室連通室149Dおよび上室連通室147Dの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100が皿バネ117Dの外側円錐状部403を弾性変形させながら、弁座ディスク101と共にバネ当接ディスク561Dに近づくように変形して、皿バネ116の外側円錐状部403から離れ、第4通路531Dを開いて下室連通室149Dを上室連通室147Dに連通させる。すなわち、リリーフ機構532Dは、縮み行程において第2減衰力発生機構173が開弁した後に開弁して、第4通路531Dを介して下室連通室149Dを上室連通室147Dに連通させる。
【0222】
緩衝器1Dは、アキュムレータ190Dの上記作動以外は、伸び行程および縮み行程の両行程において、第1実施形態の緩衝器1と同様に作動する。
【0223】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態を主に図14に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0224】
第5実施形態の緩衝器1Eにおいては、図14に示すように、第1実施形態のアキュムレータ190にかえて、アキュムレータ190Eが設けられている。
アキュムレータ190Eには、第1実施形態の皿バネ116にかえて、ゴム等の弾性のシール部材からなるOリング116E(付勢部材)が設けられている。アキュムレータ190Eは、第1実施形態のディスク97にかえて、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク97E、ディスク98Eおよびディスク99Eが、軸方向の底部122側から順に設けられている。アキュムレータ190Eは、第1実施形態の可撓ディスク100にかえて、可撓ディスク100の外周部の軸方向一側にゴム等からなる円環状の弾性部材567Eを貼着してなる可撓ディスク100Eが設けられている。
アキュムレータ190Eは、第1実施形態のディスク104にかえて、ディスク104Eが設けられている。ディスク104Eは、ディスク104に軸方向に貫通する貫通穴568Eが形成され、貫通穴568E内が連通路569Eとされた構成となっている。
【0225】
ディスク97E~99Eは、いずれも金属製であり、いずれも径方向の幅が全周にわたって一定の有孔円形平板状である。ディスク97E~99Eは、いずれも、内側に取付軸部28が嵌合されることでピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0226】
ディスク97Eはキャップ部材95の底部122に当接している。ディスク97Eは、外径がキャップ部材95の径方向における中心から通路孔126までの最小距離の2倍よりも小径である。ディスク98E外径は、ディスク97Eの外径よりも大径である。ディスク99Eの外径は、ディスク97Eの外径よりも小径である。ディスク99Eは、可撓ディスク100Eの内側円環部502に当接している。ディスク97E~99Eは、Oリング116Eの径方向内側に、Oリング116Eから径方向に離れて配置されている。
【0227】
Oリング116Eの外径は、筒状部124の内径よりも小径である。Oリング116Eの内径は、キャップ部材95の径方向における中心から通路孔126までの最大距離の2倍よりも大径である。Oリング116Eは、キャップ部材95の底部122の全ての連通路148を底部122の径方向における外側で囲むようにして軸方向の一端側が全周にわたって底部122に当接している。Oリング116Eは、軸方向の他端側が可撓ディスク100Eの外側円環部503の外周側に全周にわたって当接している。可撓ディスク100Eは、弾性部材567Eがディスク104Eの径方向における連通路569Eよりも外側に全周にわたって当接している。
【0228】
緩衝器1Eは、可撓ディスク100Eと、弁座ディスク101と、Oリング116Eと、キャップ部材95の底部122と、ディスク97E~99Eとが、第1実施形態の下室連通室149に対応する下室連通室149Eを形成している。この下室連通室149Eも連通路425,148とで第1実施形態の第3通路511に対応する第3通路511Eを構成する。アキュムレータ190Eは、可撓ディスク100Eと、弁座ディスク101と、Oリング116Eと、キャップ部材95の底部122と、ディスク97E~99Eと、下室連通室149Eとが、第3通路511Eに設けられて第1実施形態の下室体積可変機構185とほぼ同様に作動する下室体積可変機構185Eを構成している。
【0229】
緩衝器1Eは、可撓ディスク100Eと、弁座ディスク101と、Oリング116Eと、ディスク102,103と、ディスク104Eと、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95とが、第1実施形態の上室連通室147に対応する上室連通室147Eを形成している。ディスク104Eの連通路569Eは、上室連通室147Eの全体を同圧にするように形成されている。この上室連通室147Eもサブバルブ107と筒状部124との間の通路とで第1実施形態の第3通路512に対応する第3通路512Eを構成する。アキュムレータ190Eは、可撓ディスク100Eと、弁座ディスク101と、Oリング116Eと、ディスク102,103と、ディスク104Eと、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95と、上室連通室147Eとが、第3通路512Eに設けられて第1実施形態の上室体積可変機構186とほぼ同様に作動する上室体積可変機構186Eを構成している。
【0230】
可撓ディスク100Eと弁座ディスク101との間が、第1実施形態の第4通路521,531に対応する第4通路521Eとなっている。可撓ディスク100Eと弁座ディスク101とが離間することで、これらの間の第4通路521Eが開かれて上室連通室147Eと下室連通室149Eとが連通する。可撓ディスク100Eと弁座ディスク101とが、第4通路521Eに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構522,532とほぼ同様に作動する伸び側および縮み側のリリーフ機構522Eを構成している。
【0231】
緩衝器1Eは、第1実施形態の緩衝器1と同様の油圧回路となるものの、アキュムレータ190Eの作動が第1実施形態のアキュムレータ190の作動と若干異なる。
【0232】
アキュムレータ190Eは、伸び行程においては、可撓ディスク100Eおよび弁座ディスク101が一体に、可撓ディスク100EのOリング116Eとの当接位置よりも径方向内側の部分を底部122に近づけるように弾性変形して上室連通室147Eの体積を拡大する。このとき、Oリング116Eも弾性変形する。このとき、弁座ディスク101は、可撓ディスク100Eと一体に変形する状態では、第4通路521Eを閉状態に維持する。
【0233】
アキュムレータ190Eは、伸び行程において、第2減衰力発生機構183が開弁した状態で、上室連通室147Eおよび下室連通室149Eの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100EがOリング116Eをさらに弾性変形させながら底部122に近づくように弾性変形して、弁座ディスク101から離れ、第4通路521Eを開いて上室連通室147Eを下室連通室149Eに連通させる。すなわち、リリーフ機構522Eは、伸び行程において第2減衰力発生機構183が開弁した後に開弁して、第4通路521Eを介して上室連通室147Eを下室連通室149Eに連通させる。
【0234】
アキュムレータ190Eは、縮み行程においては、可撓ディスク100Eおよび弁座ディスク101が一体に、ディスク104E側に弾性変形して下室連通室149Eの体積を拡大する。このとき、弁座ディスク101は可撓ディスク100Eに当接する状態を維持し第4通路521Eを閉状態に維持する。
【0235】
アキュムレータ190Eは、縮み行程において、第2減衰力発生機構173が開弁した状態で、下室連通室149Eおよび上室連通室147Eの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100Eが、弁座ディスク101と共にディスク104E側に、弾性部材567Eを弾性変形させながら弾性変形し、弁座ディスク101が可撓ディスク100Eから離れて、連通路505を含む第4通路521Eを開いて下室連通室149Eを上室連通室147Eに連通させる。この際に、Oリング116Eはシール機能を維持する。
【0236】
緩衝器1Eは、アキュムレータ190Eの上記作動以外は、伸び行程および縮み行程の両行程において、第1実施形態の緩衝器1と同様に作動する。
【0237】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態を主に図15に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0238】
第6実施形態の緩衝器1Fにおいては、図15に示すように、第1実施形態と同様の可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116と、ディスク97と、ディスク102,103と、第5実施形態と同様のディスク104Eとが、キャップ部材95内ではなく、キャップ部材95の外に、しかも軸方向に反転して設けられている。緩衝器1Fにおいては、キャップ部材95の底部122とディスク87との間に、軸方向のディスク87側から順に、ディスク104E、ディスク103、ディスク102、弁座ディスク101、可撓ディスク100、ディスク97および皿バネ116が設けられている。
【0239】
皿バネ116の内側円環部401、中間円環部402および2本の支持部404が、キャップ部材95の底部122に当接する。皿バネ116の、外側円錐状部403の中間円環部402とは反対側の端縁部が、全周にわたって可撓ディスク100の外側円環部503に当接する。皿バネ116の連通路425は、キャップ部材95の底部122の連通路148に常時連通する。バネ部材105が基板部331においてキャップ部材95の底部122に当接する。
【0240】
緩衝器1Fは、弁座ディスク101と、可撓ディスク100と、ディスク97と、皿バネ116と、キャップ部材95と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107とが、第1実施形態の上室連通室147に対応する上室連通室147Fを形成している。この上室連通室147Fもサブバルブ107と筒状部124との間の通路とで、第1実施形態の第3通路512に対応する第3通路512Fを構成する。アキュムレータ190Fは、弁座ディスク101と、可撓ディスク100と、ディスク97と、皿バネ116と、キャップ部材95と、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、上室連通室147Fとが、第3通路512Fに設けられて、第1実施形態の上室体積可変機構186とほぼ同様に作動する上室体積可変機構186Fを構成している。
【0241】
アキュムレータ190Fは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116と、ディスク97とが、第1実施形態の下室体積可変機構185とほぼ同様に作動する下室体積可変機構185Fを構成している。
【0242】
可撓ディスク100と弁座ディスク101との間が、下室23と上室連通室147Fとを連通可能な第4通路531Fとなっている。可撓ディスク100と弁座ディスク101とが離間することで、これらの間の第4通路531Fが開かれて下室23と上室連通室147Fとが連通する。可撓ディスク100と弁座ディスク101とが、第4通路531Fに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構532とほぼ同様に作動する縮み側のリリーフ機構532Fを構成している。
【0243】
可撓ディスク100と皿バネ116との間が、上室連通室147Fと下室23とを連通可能な第4通路521Fとなっている。可撓ディスク100と皿バネ116とが離間することで、これらの間の第4通路521Fが開かれて上室連通室147Fと下室23とが連通する。可撓ディスク100と皿バネ116とが、第4通路521Fに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構522とほぼ同様に作動する伸び側のリリーフ機構522Fを構成している。
【0244】
緩衝器1Fは、第1実施形態の緩衝器1と同様の油圧回路となるものの、アキュムレータ190Fの作動が第1実施形態のアキュムレータ190の作動と若干異なる。
【0245】
アキュムレータ190Fは、伸び行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101が一体に、ディスク104E側に弾性変形して上室連通室147Fの体積を拡大する。このとき、弁座ディスク101は、可撓ディスク100に当接する状態を維持し第4通路531Fを閉状態に維持する。
【0246】
アキュムレータ190Fは、伸び行程において、第2減衰力発生機構183が開弁した状態で、上室連通室147Fおよび下室23の圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100が弁座ディスク101と共にディスク104E側に弾性変形して、皿バネ116との間の第4通路521Fを開いて上室連通室147Fを下室23に連通させる。すなわち、リリーフ機構522Fは、伸び行程において第2減衰力発生機構183が開弁した後に開弁して、第4通路521Fを介して上室連通室147Fを下室23に連通させる。なお、ディスク104Eの連通路569Eは、可撓ディスク100がディスク104Eに近づいても差圧を発生させないようにする。
【0247】
アキュムレータ190Fは、縮み行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101が、可撓ディスク100の皿バネ116との当接位置よりも径方向内側の部分をキャップ部材95の底部122側に弾性変形させて下室23の体積を拡大する。このとき、弁座ディスク101は、可撓ディスク100と一体に変形する状態では、第4通路531Fを閉状態に維持する。
【0248】
アキュムレータ190Eは、縮み行程において、第2減衰力発生機構173が開弁した状態で、下室23および上室連通室147Fの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100が皿バネ116の外側円錐状部403を弾性変形させながら底部122に近づくように弾性変形して、弁座ディスク101から離れ、第4通路531Fを開いて下室23を上室連通室147Fに連通させる。すなわち、リリーフ機構532Fは、縮み行程において第2減衰力発生機構173が開弁した後に開弁して、第4通路531Fを介して下室23を上室連通室147Fに連通させる。
【0249】
緩衝器1Fは、アキュムレータ190Fの上記作動以外は、伸び行程および縮み行程の両行程において、第1実施形態の緩衝器1と同様に作動する。
【0250】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態を主に図16に基づいて第6実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第6実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0251】
第7実施形態の緩衝器1Gにおいては、図16に示すように、第6実施形態のディスク86が一枚のみ設けられ、第1実施形態と同様のディスク104が複数枚(具体的には二枚)設けられている。緩衝器1Gにおいては、キャップ部材95、バネ部材105、ディスク106、サブバルブ107、弁座部材109、サブバルブ110、ディスク111およびバネ部材112にかえて、弁座部材109Gと、ディスク571Gと、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク572Gとが、軸方向の皿バネ116側から順に設けられている。緩衝器1Gには、単純支持のフリーバルブであるサブバルブ573Gが設けられている。
【0252】
弁座部材109G、ディスク571G、ディスク572Gおよびサブバルブ573Gは、いずれも金属製である。ディスク571G、ディスク572Gおよびサブバルブ573Gは、径方向に一定幅の有孔円形平板状である。弁座部材109G、ディスク571Gおよびディスク572Gは、内側に取付軸部28が嵌合されることでピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0253】
弁座部材109Gは、径方向の中央に軸方向に貫通する貫通孔131Gが形成されている。貫通孔131Gは、取付軸部28を嵌合させる小径穴部132Gと、これよりも大径の大径穴部133Gとを有している。弁座部材109Gは、軸方向の小径穴部132G側に、円環状の内側シート部138Gと、内側シート部138Gより大径の円環状の外側シート部139Gと、外側シート部139Gよりも大径の円環状の係止突出部581Gとを有している。内側シート部138Gと外側シート部139Gとの間は、これらよりも軸方向に凹む円環状の通路凹部215Gとなっている。
【0254】
内側シート部138Gには、これを径方向に貫通する通路溝221Gが形成されている。通路溝221G内がピストンロッド通路部51に常時連通する径方向通路222Gとなっている。通路凹部215Gには、弁座部材109Gを軸方向に貫通する複数の通路孔216Gが形成されている。通路凹部215Gおよび複数の通路孔216G内の通路部が、径方向通路222Gおよび皿バネ116の連通路425に常時連通している。係止突出部581Gには径方向に貫通する通路溝582Gが形成されている。
【0255】
ディスク571Gは、内側シート部138Gの先端面の外径よりも大径の外径を有する。ディスク572Gは、ディスク571Gの外径よりも大径の外径を有する。
【0256】
サブバルブ573Gの外径は、外側シート部139Gの先端面の内径よりも大径であり、係止突出部581Gの内径よりも小径である。サブバルブ573Gは、係止突出部581Gによって径方向の移動が規制される。サブバルブ573Gの内径は、ディスク571Gの外径よりも大径であり、ディスク572Gの外径よりも小径である。サブバルブ573Gは、外径側が軸方向一側から外側シート部139Gに当接し、内径側が、軸方向他側からディスク572Gに当接する。この状態で、サブバルブ573Gは、径方向外側ほど軸方向においてディスク113に近づくようにテーパ状に変形する。
【0257】
サブバルブ573Gは、伸び行程においては、ディスク572Gに当接した状態のまま外側シート部139Gから離座する。サブバルブ573Gと外側シート部139Gとの間の通路と、通路凹部215G内の通路と、径方向通路222Gとは、ピストンロッド通路部51に常時連通しており、よって、第1実施形態の伸び側の第2通路182に対応する伸び側の第2通路182Gを構成している。サブバルブ573Gと外側シート部139Gとは、第1実施形態の伸び側の第2減衰力発生機構183に対応する第2減衰力発生機構183Gを構成している。
【0258】
サブバルブ573Gは、縮み行程においては、外側シート部139Gに当接した状態のまま、ディスク572Gから離座する。サブバルブ573Gとディスク572Gとの間の通路と、通路凹部215G内の通路と、径方向通路222Gとは、ピストンロッド通路部51に常時連通しており、よって、第1実施形態の縮み側の第2通路172に対応する縮み側の第2通路172Gを構成している。サブバルブ573Gとディスク572Gとは、第1実施形態の縮み側の第2減衰力発生機構173に対応する第2減衰力発生機構173Gを構成している。
【0259】
緩衝器1Gは、弁座ディスク101と、可撓ディスク100と、ディスク97と、皿バネ116と、弁座部材109Gと、ディスク571G,572Gと、サブバルブ573Gとが、第6実施形態の上室連通室147Fに対応する上室連通室147Gを形成している。この上室連通室147Gは、第6実施形態の第3通路512Fに対応する第3通路512Gを構成する。アキュムレータ190Gは、弁座ディスク101と、可撓ディスク100と、ディスク97と、皿バネ116と、弁座部材109Gと、ディスク571G,572Gと、サブバルブ573Gと、上室連通室147Gとが、第3通路512Gに設けられて、第6実施形態の上室体積可変機構186Fとほぼ同様に作動する上室体積可変機構186Gを構成している。
【0260】
アキュムレータ190Gは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116と、ディスク97とが、第6実施形態の下室体積可変機構185Fとほぼ同様に作動する下室体積可変機構185Gを構成している。
【0261】
可撓ディスク100と弁座ディスク101との間が、下室23と上室連通室147Gとを連通可能な第4通路531Gとなっている。可撓ディスク100と弁座ディスク101とが離間することで、これらの間の第4通路531Gが開かれて下室23と上室連通室147Gとが連通する。可撓ディスク100と弁座ディスク101とが、第4通路531Gに設けられて、第6実施形態のリリーフ機構532Fとほぼ同様に作動する縮み側のリリーフ機構532Gを構成している。
【0262】
可撓ディスク100と皿バネ116との間が、上室連通室147Gと下室23とを連通可能な第4通路521Gとなっている。可撓ディスク100と皿バネ116とが離間することで、これらの間の第4通路521Gが開かれて上室連通室147Gと下室23とが連通する。可撓ディスク100と皿バネ116とが、第4通路521Gに設けられて、第6実施形態のリリーフ機構522Fとほぼ同様に作動する伸び側のリリーフ機構522Gを構成している。
【0263】
緩衝器1Gは、第6実施形態の緩衝器1Fと同様の油圧回路となる。アキュムレータ190Gの作動も第6実施形態のアキュムレータ190Fの作動と同様となる。
【0264】
アキュムレータ190Gは、伸び行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101が一体に、ディスク104側に弾性変形して上室連通室147Gの体積を拡大する。
【0265】
また、アキュムレータ190Gは、伸び行程において、第2減衰力発生機構183Gが開弁した状態で、上室連通室147Gおよび下室23の圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100が弁座ディスク101と共にディスク104側に弾性変形して、皿バネ116との間の第4通路521Gを開いて上室連通室147Gを下室23に連通させる。すなわち、リリーフ機構522Gは、伸び行程において第2減衰力発生機構183Gが開弁した後に開弁して、第4通路521Gを介して上室連通室147Gを下室23に連通させる。
【0266】
アキュムレータ190Gは、縮み行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101が、可撓ディスク100の皿バネ116との当接位置よりも径方向内側の部分をキャップ部材95の底部122側に弾性変形させて下室23の体積を拡大する。
【0267】
アキュムレータ190Gは、縮み行程において、第2減衰力発生機構173Gが開弁した状態で、下室23および上室連通室147Gの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100が皿バネ116の外側円錐状部403を弾性変形させながら弁座部材10Gに近づくように弾性変形して、弁座ディスク101から離れ、第4通路531Gを開いて下室23を上室連通室147G連通させる。すなわち、リリーフ機構532Gは、縮み行程において第2減衰力発生機構173Gが開弁した後に開弁して、第4通路531Gを介して下室23を上室連通室147Gに連通させる。
【0268】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態を主に図17図19に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0269】
第8実施形態の緩衝器1Hにおいては、図17に示すように、ピストンロッド25にかえて、ピストンロッド25Hが設けられている。ピストンロッド25Hは、取付軸部28Hを有している。取付軸部28Hは、通路切欠部30およびピストンロッド通路部51とは位置が異なる通路切欠部30Hおよびピストンロッド通路部51Hを有している。
【0270】
緩衝器1Hにおいては、ピストン21にかえて、ピストン21Hを有している。ピストン21Hは、ピストンロッド25Hに連結される金属製の第1ピストン体33Hと、ピストンロッド25Hに連結される金属製の第2ピストン体34Hとを有している。ピストン21Hは、第1ピストン体33Hの外周面に摺動部材37が装着されている。
【0271】
第1ピストン体33Hの本体部36Hには、軸方向に貫通する複数の通路穴37Hと、軸方向に貫通する複数の通路穴39Hとが形成されている。
【0272】
複数の通路穴37Hは、第1ピストン体33Hの軸方向に沿って直線状に延びる形状である。複数の通路穴37Hは、第1ピストン体33Hの円周方向に等ピッチで形成されている。第1ピストン体33Hには、軸方向の上室22とは反対側に、複数の通路穴37Hを連通させる円環状の環状溝40Hが形成されている。環状溝40Hの上室22とは反対側には、環状溝40H内および複数の通路穴37H内の第1通路43Hを開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構41Hが設けられている。
【0273】
複数の通路穴37H内および環状溝40H内の第1通路43Hは、伸び行程において上流側となる上室22から下流側となる下室23に向けて油液Lが流れ出す伸び側の通路となる。第1通路43Hに対して設けられた第1減衰力発生機構41Hは、伸び側の第1通路43Hから下室23への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構となっている。
【0274】
複数の通路穴39Hは、第1ピストン体33Hの軸方向に沿って直線状に延びる形状である。複数の通路穴39Hは、第1ピストン体33Hの円周方向に所定のピッチで形成されている。すべての通路穴39Hは、すべての通路穴37Hよりも第1ピストン体33Hの径方向における外側に形成されている。複数の通路穴39Hの上室22側には、複数の通路穴39H内の第1通路174Hを開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構42Hが設けられている。
【0275】
複数の通路穴39H内の第1通路174Hは、縮み行程において上流側となる下室23から下流側となる上室22に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。第1通路174Hに対して設けられた第1減衰力発生機構42Hは、縮み側の第1通路174Hから上室22への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構となっている。
【0276】
第1ピストン体33Hは、略円板形状をなしている。第1ピストン体33Hの径方向の中央には、ピストンロッド25Hの取付軸部28Hが挿入される挿入穴44Hが軸方向に貫通して形成されている。挿入穴44Hに、ピストンロッド25Hの取付軸部28Hが嵌合することにより、第1ピストン体33Hはピストンロッド25Hに対し径方向に位置決めされる。
【0277】
第1ピストン体33Hの軸方向の上室22とは反対側の部分には、環状溝40Hの上室22とは反対側の開口よりも第1ピストン体33Hの径方向における内側に、環状の内側シート部46Hが形成されている。第1ピストン体33Hの軸方向の上室22とは反対側の部分には、環状溝40Hの上室22とは反対側の開口よりも第1ピストン体33Hの径方向における外側に、第1減衰力発生機構41Hの一部を構成する円環状のバルブシート部47Hが形成されている。内側シート部46Hおよびバルブシート部47Hは、本体部36Hから軸方向の上室22とは反対側に突出している。
【0278】
第1ピストン体33Hの軸方向の上室22側の端部には、複数の通路穴37Hの上室22側の開口よりも第1ピストン体33Hの径方向における内側に環状の内側シート部49Hが形成されている。第1ピストン体33Hの軸方向の上室22側の端部には、複数の通路穴39Hの一つまたは複数の上室22側の開口を囲むように、環状で異形のバルブシート部50Hが形成されている。内側シート部49Hおよびバルブシート部50Hは、本体部36Hから軸方向の上室22側に突出している。バルブシート部50Hは、第1ピストン体33Hの周方向に間隔をあけて複数形成されている。複数の通路穴37Hは、バルブシート部50H間の隙間を介して上室22に常時連通している。
【0279】
縮み側の第1減衰力発生機構42Hは、第1ピストン体33Hのバルブシート部50Hを含んでいる。第1減衰力発生機構42Hは、軸方向の第1ピストン体33H側から順に、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には四枚)のディスク63Hと、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク64Hとを有している。ディスク64Hのディスク63Hとは反対側には、ディスク64H側から順に、一枚のディスク65Hと、一枚のディスク66Hと、第1実施形態と同様の環状部材69とが設けられている。ディスク63H~66Hは、いずれも金属製であり、いずれも内側にピストンロッド25Hの取付軸部28Hを嵌合可能である。ディスク63H~66Hは、いずれも径方向の幅が全周にわたって一定の有孔円形平板状をなしている。
【0280】
ディスク63Hの外径は、複数のバルブシート部50Hの外接円の径と略同径である。ディスク64Hは、ディスク63Hの外径よりも小径であって第1ピストン体33Hの内側シート部49Hの外径よりも大径の外径を有する。ディスク65Hは、第1ピストン体33Hの内側シート部49Hの外径よりも小径の外径を有する。ディスク66Hは、ディスク64Hおよび環状部材69の外径よりも大径であってディスク63Hの外径よりも小径の外径を有する。環状部材69は、ディスク63H~66Hよりも厚く高剛性である。
【0281】
複数枚のディスク63Hは、内側シート部49Hに常時当接している。複数枚のディスク63Hは、バルブシート部50Hに着座してバルブシート部50Hを閉塞可能である。複数枚のディスク63Hおよび複数枚のディスク64Hが、撓み可能であってバルブシート部50Hに離着座可能な縮み側のメインバルブ71Hを構成している。メインバルブ71Hは、バルブシート部50Hから離座することで、複数の通路穴39H内の第1通路174Hを上室22に連通させると共に、バルブシート部50Hとの間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。環状部材69は、ディスク66Hとによって、メインバルブ71Hの開方向への規定以上の変形を規制する。
【0282】
バルブシート部50Hおよびこれに当接するメインバルブ71Hの少なくともいずれか一方には、これらが当接状態にあっても第1通路174Hを上室22に連通させる図19に示す固定オリフィス581Hが形成されている。固定オリフィス581Hは、第1減衰力発生機構42Hと並列に設けられている。
【0283】
図17に示すように、伸び側の第1減衰力発生機構41Hは、第1ピストン体33Hのバルブシート部47Hを含んでいる。第1減衰力発生機構41Hは、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク83Hを有している。ディスク83Hのバルブシート部47Hとは反対側には、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク84Hが設けられている。ディスク83H,84Hは、いずれも金属製である。ディスク83H,84Hは、いずれも内側にピストンロッド25Hの取付軸部28Hを嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。
【0284】
複数枚のディスク83Hは、第1ピストン体33Hのバルブシート部47Hの外径と略同等の外径を有する。複数枚のディスク83Hは、バルブシート部47Hに着座可能である。ディスク84Hは、ディスク83Hの外径よりも小径であって第1ピストン体33Hの内側シート部46Hの外径よりも小径の外径を有する。
【0285】
複数枚のディスク83Hは、内側シート部46Hに常時当接している。複数枚のディスク83Hは、バルブシート部47Hに着座してバルブシート部47Hを閉塞可能である。複数枚のディスク83Hが、撓み可能であってバルブシート部47Hに離着座可能な伸び側のメインバルブ91Hを構成している。メインバルブ91Hは、バルブシート部47Hから離座することで、第1通路43Hを下室23に連通可能とすると共に、バルブシート部47Hとの間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。
【0286】
バルブシート部47Hおよびこれに当接するメインバルブ91Hの少なくともいずれか一方には、これらが当接状態にあっても、第1通路43Hをメインバルブ91Hと第2ピストン体34Hとの間の中間室118Hに連通させる図19に示す固定オリフィス582Hが設けられている。固定オリフィス582Hは、第1減衰力発生機構41Hと並列に設けられている。固定オリフィス581H,582Hおよび第1減衰力発生機構41H,42Hが並列に設けられている。
【0287】
図17に示すように、第1ピストン体33Hには、バルブシート部47Hよりも第1ピストン体33Hの径方向における外側に、本体部36Hからバルブシート部47Hよりも上室22とは反対側に突出する円環状の嵌合筒部95Hが形成されている。
【0288】
複数枚のディスク84Hの軸方向の上室22とは反対側には、ディスク84H側から順に、一つの第2ピストン体34Hと、一枚のディスクバルブ101Hと、一枚のディスク102Hと、一枚のディスク103Hと、一枚のディスク104Hと、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク105Hとが、ピストンロッド25Hの取付軸部28Hがそれぞれの内側に嵌合されて設けられている。ディスクバルブ101Hおよびディスク102H~105Hは、いずれも金属製であり、いずれも内側にピストンロッド25Hの取付軸部28Hを嵌合可能である。ディスクバルブ101Hおよびディスク102H~105Hは、いずれも全周にわたって径方向の幅が一定の有孔円形平板状をなしている。
【0289】
第2ピストン体34Hは、有底筒状の一体成形品である。第2ピストン体34Hは、有孔円板状の底部111Hと、底部111Hの外周縁部から、底部111Hの軸方向一側に突出する円環状の外側筒部112Hと、底部111Hの内周縁部から、外側筒部112Hと軸方向同側に突出する円環状の内側筒部113Hとを有している。外側筒部112Hと内側筒部113Hとは、同軸状に配置されている。外側筒部112Hは、内側筒部113Hよりも底部111Hからの軸方向長さが長くなっている。
【0290】
第2ピストン体34Hの外周部は、段付き形状をなしている。第2ピストン体34Hは、軸方向において、底部111Hが、外側筒部112Hおよび内側筒部113Hよりも第1ピストン体33H側に位置する向きで配置されており、取付軸部28Hに嵌合している。第2ピストン体34Hは、外周部が小径部分において第1ピストン体33Hの嵌合筒部95Hに嵌合する。第2ピストン体34Hは、底部111Hにおいてディスク84Hに当接する。
第1ピストン体33Hと第2ピストン体34Hとは、間に中間室118Hを形成する。この中間室118Hにメインバルブ91Hと複数枚のディスク84Hとが配置されている。中間室118Hは、第1通路43H,174Hおよび図19に示す固定オリフィス581H,582Hを介して上室22に常時連通している。
【0291】
外側筒部112Hは、全周にわたって連続する円環状をなしている。外側筒部112Hの内周面は、底部111Hから軸方向に離れるほど大径となるテーパ面となっている。外側筒部112Hの軸方向における底部111Hとは反対側の先端面は、第2ピストン体34Hの中心軸線に直交する平面となっている。外側筒部112Hの先端面および内周面の境界側の角縁部は、円環状をなしており、ディスクバルブ101Hが離着座する第1バルブシート121Hとなっている。
【0292】
内側筒部113Hの外周面は、底部111Hから軸方向に離れるほど小径となるテーパ面となっている。内側筒部113Hの軸方向における底部111Hとは反対側の先端面が、第2ピストン体34Hの中心軸線に直交する平面となっている。
【0293】
底部111Hには、径方向の外側筒部112Hと内側筒部113Hとの間の位置に、底部111Hを軸方向に貫通する貫通穴123Hが形成されている。貫通穴123Hは、底部111Hの周方向に間隔をあけて複数形成されている。第2ピストン体34Hには、外側筒部112Hと内側筒部113Hとの間に、複数の貫通穴123Hを連通させる円環状の環状溝124Hが形成されている。
【0294】
第2ピストン体34Hには、その径方向の中央に、底部111Hおよび内側筒部113Hを軸方向に貫通して、挿通穴125Hが形成されている。挿通穴125Hには、ピストンロッド25Hの取付軸部28Hが挿通される。挿通穴125Hは、底部111Hの内側に設けられる小径穴部586Hと、これより大径で内側筒部113Hの内側に設けられる大径穴部587Hとを有している。第2ピストン体34Hは、小径穴部586Hに取付軸部28Hを嵌合させることによりピストンロッド25Hに対して径方向に位置決めされる。挿通穴125Hの大径穴部587H内の通路は、ピストンロッド25Hの通路切欠部30H内のピストンロッド通路部51Hに常時連通している。内側筒部113Hには、径方向に貫通する通路溝588Hが形成されている。通路溝588H内の通路は、大径穴部587H内の通路に常時連通しており、環状溝124H内の通路に常時連通している。
【0295】
ディスク105Hの外径は、第2ピストン体34Hの内側筒部113Hの底部111Hとは反対側の先端面の外径よりも大径である。ディスク104Hは、ディスク105Hの外径よりも大径の外径を有する。ディスク103Hは、ディスク104Hの外径よりも大径の外径を有する。ディスク102Hは、ディスク103Hの外径よりも大径の外径を有する。
【0296】
ディスク102Hの外径は、第2ピストン体34Hの外側筒部112Hの先端面の内径、言い換えれば、第1バルブシート121Hの内径よりも小径である。ディスク102Hの軸方向の内側筒部113H側の端面は、第2ピストン体34Hの第1バルブシート121Hの底部111Hとは反対側の先端面と、軸方向において同等位置に配置されている。
【0297】
ディスク102Hの、軸方向の内側筒部113H側の円環状の外周部に、ディスクバルブ101Hが離着座する。ディスク102Hは、これに積層されたディスク103H,104Hとともに、ディスクバルブ101Hが離着座する第2バルブシート135Hを構成している。第2バルブシート135Hは、取付軸部28Hが径方向内側に嵌合されることによりピストンロッド25Hに対して径方向に位置決めされる。第2バルブシート135Hは、第2ピストン体34Hの第1バルブシート121Hに対して径方向内側に離間して配置されている。
【0298】
ディスク102H~104Hからなる第2バルブシート135Hは、撓み可能な構成である。これに対し、第2ピストン体34Hの第1バルブシート121Hは、第2バルブシート135Hと比べて剛性が高く、基本的に撓むことはない。第2バルブシート135Hは、ディスク102H~104Hのそれぞれの厚みや外径、枚数等を変更することで、ディスクバルブ101Hの支持剛性を調整することができる。
【0299】
ディスクバルブ101Hは、撓み可能である。ディスクバルブ101Hは、ピストンロッド25Hに組み付けられる前の自然状態では全体が平板状をなしている。自然状態にあるディスクバルブ101Hは、有孔円形平板状の外側環状部141Hと、外側環状部141Hの内径よりも小径の外径を有して外側環状部141Hの径方向内側に配置される有孔円形平板状の内側環状部142Hと、外側環状部141Hと内側環状部142Hとを接続する支持部143Hとを有している。外側環状部141Hと内側環状部142Hとの間は、支持部143Hを除いて、ディスクバルブ101Hを厚さ方向に貫通する通路となっている。
【0300】
外側環状部141Hおよび内側環状部142Hは、いずれも径方向の幅が全周にわたって一定の円環状をなしている。支持部143Hは、内側環状部142Hと外側環状部141Hとの間に配置されている。支持部143Hは、内側環状部142Hに外側環状部141Hを同心状に支持する。支持部143Hは、内側環状部142Hおよび外側環状部141Hよりも低剛性である。
【0301】
ディスクバルブ101Hの内側環状部142Hの内側に取付軸部28Hが嵌合されている。これにより、ディスクバルブ101Hは、ピストンロッド25Hに対し径方向に位置決めされる。内側環状部142Hは、外径がディスク102Hの外径、すなわち第2バルブシート135Hの外径よりも小径である。内側環状部142Hの外径は、第2ピストン体34Hの内側筒部113Hの先端面の外径よりも大きく、ディスク105Hの外径と同等になっている。よって、ディスクバルブ101Hは、内側環状部142Hが、ディスク102H~104Hとともに、第2ピストン体34Hの内側筒部113Hとディスク105Hとで軸方向にクランプされる。
【0302】
外側環状部141Hの内径は、ディスク102Hの外径、すなわち第2バルブシート135Hの外径よりも小径である。外側環状部141Hの外径は、第2ピストン体34Hの外側筒部112Hの先端面の内径、すなわち第1バルブシート121Hの直径よりも大径である。
【0303】
外側環状部141Hは、第2ピストン体34Hの第1バルブシート121Hに外周部分が離接可能である。外側環状部141Hは、全周にわたって第1バルブシート121Hに着座すると第1バルブシート121Hとの隙間を閉塞し、第1バルブシート121Hから離座すると第1バルブシート121Hとの隙間を開放する。
【0304】
また、外側環状部141Hは、第2バルブシート135Hのディスク102Hに内周部分が離接可能である。外側環状部141Hは、全周にわたって第2バルブシート135Hに着座すると第2バルブシート135Hとの隙間を閉塞し、第2バルブシート135Hから離座すると第2バルブシート135Hとの隙間を開放する。外側環状部141Hが全周にわたって第2バルブシート135Hに着座する状態にあるとき、ディスク102Hは、ディスクバルブ101Hの外側環状部141Hと内側環状部142Hとの間の通路を閉塞する。外側環状部141Hは、支持部143Hに比べて、十分に高い剛性を有する。外側環状部141Hは、開弁時には、支持部143Hのない単純支持のフリーバルブと同様の挙動で動作し、単純支持のフリーバルブと同様に変形する。
【0305】
ディスクバルブ101Hの外側環状部141Hの内周部分は、第2バルブシート135Hに離着座可能なサブバルブ171Hを構成している。サブバルブ171Hは、第2バルブシート135Hから離座することで、第2バルブシート135Hとの隙間と、ディスクバルブ101Hの外側環状部141Hおよび内側環状部142Hの間の通路と、第2ピストン体34Hの環状溝124H内および複数の貫通穴123H内の通路と、中間室118Hと、第1通路43Hと、図19に示す固定オリフィス582Hと、第1通路174Hと、図19に示す固定オリフィス581Hとを介して下室23を上室22に連通させる。このとき、サブバルブ171Hは、第2バルブシート135Hとの間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。
【0306】
開弁時に出現するサブバルブ171Hおよび第2バルブシート135Hの間の通路と、ディスクバルブ101Hの外側環状部141Hおよび内側環状部142Hの間の通路と、第2ピストン体34Hの環状溝124H内および複数の貫通穴123H内の通路と、中間室118Hとが、第2通路172Hを構成している。第2通路172Hと、図19に示す固定オリフィス582Hおよび第1通路43Hと、第1通路174Hおよび図19に示す固定オリフィス581Hとによって、ピストン21Hの下室23側への移動により内筒2内の上流側となる下室23から下流側となる上室22に油液が流れ出す。
【0307】
第2通路172Hは、ピストン21Hの下室23側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室23から下流側となる上室22に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。サブバルブ171Hと、第2バルブシート135Hとが、縮み側の第2通路172Hに設けられてこの第2通路172Hを開閉し、この第2通路172Hから上室22への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の第2減衰力発生機構173Hを構成している。
【0308】
開弁時に出現するメインバルブ71Hおよびバルブシート部50Hの間の通路と、第1ピストン体33Hの複数の通路穴39H内の通路とが、中間室118Hと上室22とを連通可能な第1通路174Hを構成している。第2通路172Hと第1通路174Hとによって、ピストン21Hの下室23側への移動により内筒2内の上流側となる下室23から下流側となる上室22に油液が流れ出す。縮み側の第1減衰力発生機構42Hは、第1通路174Hを開閉し、この第1通路174Hから上室22への油液の流動を抑制して減衰力を発生する。縮み側の第2減衰力発生機構173Hは、第2通路172Hを開閉し、この第2通路172Hから上室22への油液の流動を抑制して減衰力を発生する。縮み側の第1減衰力発生機構42Hおよび第2減衰力発生機構173Hは、第1通路174Hおよび第2通路172Hに直列に配置されている。第2減衰力発生機構173Hは、第1減衰力発生機構42Hよりもピストン速度が低速のときに開弁して減衰力を発生する。第2減衰力発生機構173Hは、第1減衰力発生機構42Hが開弁して減衰力を発生するときにも、開弁する。
【0309】
ディスクバルブ101Hの外側環状部141Hの外周部分は、第1バルブシート121Hに離着座可能なサブバルブ181Hを構成している。サブバルブ181Hは、第1バルブシート121Hから離座することで、第1ピストン体33Hの第1通路43Hと、固定オリフィス582Hと、固定オリフィス581Hと、第1ピストン体33Hの第1通路174Hと、中間室118Hと、第2ピストン体34Hの複数の貫通穴123H内および環状溝124H内の通路と、第1バルブシート121Hとの隙間と、を介して上室22を下室23に連通させる。このとき、サブバルブ181Hは、第1バルブシート121Hとの間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。
【0310】
中間室118Hと、第2ピストン体34Hの複数の貫通穴123H内および環状溝124H内の通路と、開弁時に出現するサブバルブ181Hおよび第1バルブシート121Hの間の通路とが、第2通路182Hを構成している。第2通路182Hと、第1通路43Hおよび図19に示す固定オリフィス582Hと、図19に示す固定オリフィス581Hおよび第1通路174Hとによって、ピストン21Hの上室22側への移動により内筒2内の上流側となる上室22から下流側となる下室23に油液が流れ出す。
【0311】
第2通路182Hは、ピストン21Hの上室22側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室22から下流側となる下室23に向けて油液が流れ出す伸び側の通路となる。サブバルブ181Hと、第1バルブシート121Hとが、伸び側の第2通路182Hに設けられ、この第2通路182Hを開閉し、この第2通路182Hから下室23への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の第2減衰力発生機構183Hを構成している。
【0312】
第1減衰力発生機構41Hは、第1通路43Hを開閉し、この第1通路43Hを介する上室22から下室23への油液の流動を抑制して減衰力を発生する。伸び側の第1減衰力発生機構41Hおよび第2減衰力発生機構183Hは、第1通路43Hおよび第2通路182Hに直列に配置されている。第2減衰力発生機構183Hは、第1減衰力発生機構41Hよりもピストン速度が低速のときに開弁して減衰力を発生する。第2減衰力発生機構183Hは、第1減衰力発生機構41Hが開弁して減衰力を発生するときにも、開弁して減衰力を発生する。
【0313】
図18に示すように、緩衝器1Hは、ディスク105Hと環状部材114との間に、第1実施形態と同様の可撓ディスク100、弁座ディスク101およびディスク102~104と、皿バネ116Hと、ディスク97Hとが設けられている。軸方向のディスク105H側から順に、複数枚(具体的には二枚)のディスク104と、皿バネ116Hと、ディスク97Hと、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、ディスク102と、ディスク103と、複数枚(具体的には二枚)のディスク104と、が設けられている。
【0314】
皿バネ116Hは、全周にわたって径方向に一定の幅の円環状をなす内側平面状部414Hと、内側平面状部414Hの外周縁部から径方向外方かつ軸方向一側に広がる第1実施形態と同様の外側円錐状部403とを有している。内側平面状部414Hは、穴部415が形成されていない点のみが第1実施形態の内側平面状部414とは異なっている。皿バネ116Hは、内側平面状部414Hが、ディスク104に当接し、外側円錐状部403の内側平面状部414Hとは反対側の端縁部が全周にわたって可撓ディスク100の外側円環部503に当接する。ディスク97Hは、ディスク97に対し径方向に貫通する切欠部591Hを形成して構成されている。切欠部591H内の通路は、ピストンロッド25Hの通路切欠部30H内のピストンロッド通路部51Hに常時連通している。
【0315】
緩衝器1Hは、弁座ディスク101と、可撓ディスク100と、ディスク97Hと、皿バネ116Hとが、第1実施形態の上室連通室147に対応する上室連通室147Hを形成している。この上室連通室147Hは、ディスク97Hの切欠部591H内の通路とで、第1実施形態の第3通路512に対応する第3通路512Hを構成する。アキュムレータ190Hは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、ディスク97Hと、皿バネ116Hと、上室連通室147Hとが、第3通路512Hに設けられて、第1実施形態の上室体積可変機構186とほぼ同様に作動する上室体積可変機構186Hを構成している。
【0316】
アキュムレータ190Hは、可撓ディスク100と、弁座ディスク101と、皿バネ116Hと、ディスク97Hとが、第1実施形態の下室体積可変機構185とほぼ同様に作動する下室体積可変機構185Hを構成している。
【0317】
可撓ディスク100と弁座ディスク101との間が、下室23と上室連通室147Hとを連通可能な第4通路531Hとなっている。可撓ディスク100と弁座ディスク101とが離間することで、これらの間の第4通路531Hが開かれて下室23と上室連通室147Hとが連通する。可撓ディスク100と弁座ディスク101とが、第4通路531Hに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構532とほぼ同様に作動する縮み側のリリーフ機構532Hを構成している。
【0318】
可撓ディスク100と皿バネ116Hとの間が、上室連通室147Hと下室23とを連通可能な第4通路521Hとなっている。可撓ディスク100と皿バネ116とが離間することで、これらの間の第4通路521Hが開かれて上室連通室147Hと下室23とが連通する。可撓ディスク100と皿バネ116とが、第4通路521Hに設けられて、第1実施形態のリリーフ機構522とほぼ同様に作動する伸び側のリリーフ機構522Hを構成している。
【0319】
緩衝器1Hのピストン21H等のピストンロッド25Hに設けられた部品による油圧回路図を図19に示す。上室22と下室23との間に第1減衰力発生機構41H,42Hと固定オリフィス581H,582Hとが並列して設けられている。これらよりも下室23側に、第2減衰力発生機構173H,183Hと、アキュムレータ190Hと、リリーフ機構522H,532Hとが並列して設けられている。第1減衰力発生機構41H,42Hおよび固定オリフィス581H,582Hと、第2減衰力発生機構173H,183H、アキュムレータ190Hおよびリリーフ機構522H,532Hとは、直列に設けられている。
【0320】
アキュムレータ190Hは、伸び行程においては、第2通路182Hから分岐した第3通路512Hに設けられた上室連通室147Hに導入される油液Lの圧力によって可撓ディスク100および弁座ディスク101が一体に、ディスク103側に弾性変形して上室連通室147Hの体積を拡大する。
【0321】
アキュムレータ190Hは、伸び行程において、第2減衰力発生機構183Hが開弁した状態で、上室連通室147Hおよび下室23の圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100が弁座ディスク101と共にディスク103側に弾性変形して、皿バネ116との間の第4通路521Hを開いて上室連通室147Hを下室23に連通させる。すなわち、リリーフ機構522Hは、伸び行程において第2減衰力発生機構183Hが開弁した後に開弁して、第4通路521Hを介して上室連通室147Hを下室23に連通させる。
【0322】
アキュムレータ190Hは、縮み行程においては、可撓ディスク100および弁座ディスク101が、可撓ディスク100の皿バネ116Hとの当接位置よりも径方向内側の部分を皿バネ116H側に弾性変形させて下室23の体積を拡大する。
【0323】
アキュムレータ190Hは、縮み行程において、第2減衰力発生機構173Hが開弁した状態で、下室23および上室連通室147Hの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100が皿バネ116Hの外側円錐状部403を弾性変形させながら皿バネ116Hに当接するディスク104に近づくように弾性変形して、弁座ディスク101から離れ、第4通路531Hを開いて下室23を上室連通室147Hに連通させる。すなわち、リリーフ機構532Hは、縮み行程において第2減衰力発生機構173Hが開弁した後に開弁して、第4通路531Hを介して下室23を上室連通室147Hに連通させる。
【0324】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態を主に図20~23に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0325】
第9実施形態の緩衝器1Jにおいては、図20に示すように、第1実施形態のアキュムレータ190にかえて、アキュムレータ190Jが設けられている。
アキュムレータ190Jは、第1実施形態のディスク97にかえて、ディスク97J、ディスク98Jおよびディスク99Jが、軸方向の底部122側から順に設けられている。
アキュムレータ190Jには、第1実施形態の可撓ディスク100にかえて、撓み可能な可撓ディスク100Jが設けられている。アキュムレータ190Jは、第1実施形態の弁座ディスク101およびディスク102~104にかえて、ディスク102J、ディスク103J、ディスク104J、皿バネ117J(付勢部材)およびバネ当接ディスク561Jが、軸方向の底部122側から順に設けられている。
【0326】
ディスク97J~99J,102J~104J、可撓ディスク100Jおよびバネ当接ディスク561Jは、いずれも金属製であり、いずれも有孔円形平板状である。ディスク97J~99J,102J~104Jおよびバネ当接ディスク561Jは、径方向の幅が全周にわたって一定である。皿バネ117Jは、皿バネ116とほぼ同形状である。ディスク97J~99J,102J~104J、可撓ディスク100J、皿バネ117Jおよびバネ当接ディスク561Jは、いずれも、内側に取付軸部28が嵌合されることでピストンロッド25に対して径方向に位置決めされる。
【0327】
ディスク97Jは皿バネ116の内側円環部401に当接している。ディスク97Jの外径は、皿バネ116の内側円環部401の外径よりも若干大径である。ディスク97Jの内径は、連結腕部413の内径よりも小径である。ディスク98Jの外径は、皿バネ116の連結腕部413の外径よりも若干大径で皿バネ116の中間円環部402の内径よりも小径である。ディスク98Jは、可撓ディスク100Jよりも厚く高剛性である。ディスク99J,102J,104Jは、ディスク97Jと同形状であり、互換性を有する。ディスク103Jは、ディスク98Jと同形状であり、互換性を有する。
【0328】
可撓ディスク100Jは、図21に示すように、径方向の幅が全周にわたって一定の基板部601Jと、基板部601Jの外周縁部から基板部601Jの径方向外方に突出する複数(具体的には18箇所)の同形状の突出部602Jとを有している。突出部602Jは、基板部601Jの周方向に等間隔で配置されている。複数の突出部602Jが基板部601Jの周方向に等間隔で断続的に配置されることで、基板部601Jの周方向に隣り合う突出部602Jと突出部602Jとの間が、可撓ディスク100Jの外端縁部から径方向内方に凹む切欠部603Jとなっている。切欠部603Jは、突出部602Jと同数(具体的には18箇所)設けられている。切欠部603Jは、同形状で、基板部601Jの周方向に等間隔で配置されている。
【0329】
可撓ディスク100Jの外周側において、突出部602Jの基板部601Jとは反対側の先端部が大径部605Jである。可撓ディスク100Jの外周側において、切欠部603Jを構成する基板部601Jの外周縁部が小径部606Jである。大径部605Jは、可撓ディスク100Jの内周側の中心軸からの長さが、小径部606Jの可撓ディスク100Jの内周側の中心軸からの長さよりも長い。よって、可撓ディスク100Jは、内周側の中心軸に対して外周側の長さが異なる大径部605Jと小径部606Jとを有している。
【0330】
皿バネ116の内側平面状部414がキャップ部材95の底部122に当接している。皿バネ116の、外側円錐状部403の内側平面状部414とは反対側の端縁部が、全周にわたって可撓ディスク100Jの基板部601Jの外周縁部側に当接している。言い換えれば、皿バネ116は、その径方向において、可撓ディスク100Jの小径部606Jよりも内側に配置されると共に可撓ディスク100Jの軸方向一側の端面の小径部606Jよりも内側部分に当接して可撓ディスク100Jを付勢する。
【0331】
皿バネ117Jの内側平面状部414が、バネ当接ディスク561Jに当接している。皿バネ117Jは、外側円錐状部403の内側平面状部414とは反対側の端縁部が全周にわたって可撓ディスク100Jの基板部601Jの外周縁部側に当接している。言い換えれば、皿バネ117Jも、その径方向において、可撓ディスク100Jの小径部606Jよりも内側に配置されると共に可撓ディスク100Jの軸方向他側の端面の小径部606Jよりも内側部分に当接して可撓ディスク100Jを付勢する。すなわち、皿バネ117Jは、皿バネ116とで、可撓ディスク100Jを軸方向両側から挟持している。
【0332】
バネ当接ディスク561Jには、径方向の中間位置に厚さ方向(軸方向)に貫通する通路孔562Jが周方向に間隔をあけて複数形成されている。通路孔562J内は連通路563Jとなっている。連通路563Jは、皿バネ117Jの連通路425に常時連通している。バネ当接ディスク561Jは、皿バネ117Jおよび可撓ディスク100Jよりも厚さが厚く高剛性となっている。
【0333】
緩衝器1Jは、可撓ディスク100Jと、皿バネ116と、キャップ部材95の底部122と、ディスク97J~99Jとが、第1実施形態の下室連通室149に対応する下室連通室149Jを形成している。この下室連通室149Jも連通路425,148とで、第1実施形態の第3通路511に対応する第3通路511Jを構成する。アキュムレータ190Jは、可撓ディスク100Jと、皿バネ116,117Jと、ディスク97J~99Jと、キャップ部材95の底部122と、下室連通室149Jとが、第3通路511Jに設けられて第1実施形態の下室体積可変機構185とほぼ同様に作動する下室体積可変機構185Jを構成している。
【0334】
緩衝器1Jは、可撓ディスク100Jと、ディスク102J~104Jと、皿バネ116,117Jと、バネ当接ディスク561Jと、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95とが、第1実施形態の上室連通室147に対応する上室連通室147Jを形成している。この上室連通室147Jもサブバルブ107と筒状部124との間の通路とで、第1実施形態の第3通路512に対応する第3通路512Jを構成する。上室連通室147Jは、可撓ディスク100Jと、ディスク102J~104Jと、皿バネ117Jと、バネ当接ディスク561Jとで囲まれた室565Jを含んでいる。アキュムレータ190Jは、可撓ディスク100Jと、皿バネ116,117Jと、ディスク102J~104Jと、バネ当接ディスク561Jと、バネ部材105と、ディスク106と、サブバルブ107と、キャップ部材95と、上室連通室147Jとが、第3通路512Jに設けられて第1実施形態の上室体積可変機構186とほぼ同様に作動する上室体積可変機構186Jを構成している。
【0335】
可撓ディスク100Jは、上室連通室147Jおよび下室連通室149Jの圧力差で、第2減衰力発生機構173,183が開弁するよりも前に、皿バネ116,117Jに当接する位置よりも径方向内側が変形する。すなわち、可撓ディスク100Jは、上室連通室147Jの方が下室連通室149Jよりも高圧であれば上室連通室147Jを拡大させるように底部122側に変形し、下室連通室149Jの方が上室連通室147Jよりも高圧であれば下室連通室149Jを拡大させるようにバネ当接ディスク561J側に変形する。
【0336】
可撓ディスク100Jは、上室連通室147Jおよび下室連通室149Jの圧力差が所定値を超えると、その撓み量が所定値よりも大きくなり、皿バネ116,117Jに対する当接位置が基板部601Jから複数の突出部602Jにずれる。言い換えれば、可撓ディスク100Jの撓み量により皿バネ116,117Jと可撓ディスク100Jとの当接部が可撓ディスク100Jの小径部606Jよりも外側に位置する。すると、複数の切欠部603J内の通路が上室連通室147Jと下室連通室149Jとを連通させる。ただし、可撓ディスク100Jの撓み量が最大になっても、皿バネ116,117Jと可撓ディスク100Jとの当接部が可撓ディスク100Jの大径部605Jよりも外側に位置することはない。
【0337】
可撓ディスク100Jの撓み量により上室連通室147Jおよび下室連通室149Jを連通させるように出現する複数の切欠部603J内の通路が、第4通路611Jとなっている。可撓ディスク100Jと皿バネ116,117Jとが、リリーフ機構612Jを構成している。リリーフ機構612Jは、第4通路611Jに設けられている。リリーフ機構612Jは、伸縮両行程で上室連通室147Jと下室連通室149Jとを連通させる。
【0338】
緩衝器1Jは、第1実施形態の緩衝器1と同様の油圧回路となるものの、アキュムレータ190Jの作動が第1実施形態のアキュムレータ190の作動と若干異なる。
【0339】
アキュムレータ190Jは、伸び行程においては、可撓ディスク100Jが、可撓ディスク100Jの皿バネ116との当接位置よりも径方向内側の部分を底部122に近づけるように弾性変形して室565Jの体積を拡大し、室565Jを含む上室連通室147Jの体積を拡大する。
【0340】
アキュムレータ190Jは、伸び行程において、第2減衰力発生機構183が開弁した状態で、上室連通室147Jおよび下室連通室149Jの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100Jが底部122に近づくように大きく変形して、第4通路611Jを開いて上室連通室147Jを下室連通室149Jに連通させる。すなわち、リリーフ機構612Jは、伸び行程において第2減衰力発生機構183が開弁した後に開弁して、第4通路611Jを介して上室連通室147Jを下室連通室149Jに連通させる。
【0341】
アキュムレータ190Jは、縮み行程においては、可撓ディスク100Jが、可撓ディスク100Jの皿バネ117Jへの当接位置よりも径方向内側の部分をバネ当接ディスク561J側に弾性変形させて下室連通室149Jの体積を拡大する。
【0342】
アキュムレータ190Jは、縮み行程において、第2減衰力発生機構173が開弁した状態で、下室連通室149Jおよび上室連通室147Jの圧力差が所定値を超えると、可撓ディスク100Jがバネ当接ディスク561Jに近づくように大きく変形して、第4通路611Jを開いて下室連通室149Jを上室連通室147Jに連通させる。すなわち、リリーフ機構612Jは、縮み行程において第2減衰力発生機構173が開弁した後に開弁して、第4通路611Jを介して下室連通室149Jを上室連通室147Jに連通させる。
【0343】
緩衝器1Jは、アキュムレータ190Jの上記作動以外は、伸び行程および縮み行程の両行程において、第1実施形態の緩衝器1と同様に作動する。
【0344】
第9実施形態の緩衝器1Jによれば、リリーフ機構612Jは、可撓ディスク100Jの撓み量により皿バネ116,117Jと可撓ディスク100Jとの当接部が小径部606Jよりも外側に位置することで、上室連通室147Jと下室連通室149Jとを連通させる。よって、リリーフ機構612Jを構成する部品の数を低減することができる。
【0345】
なお、可撓ディスク100Jにかえて、図22に示すような変形例の可撓ディスク100Kを設けても良い。可撓ディスク100Kは、外周縁部が楕円形状をなしている。これにより、可撓ディスク100Kは、外周縁部の長軸方向の両端部が大径部605Kとなり、外周縁部の短軸方向の両端が小径部606Kとなる。このような可撓ディスク100Kを用いても、可撓ディスク100Kの撓み量により皿バネ116,117Jと可撓ディスク100Kとの当接部が小径部606Kよりも外側に位置することで上室連通室147Jと下室連通室149Jとを連通させることになる。
【0346】
また、可撓ディスク100Jにかえて、図23に示すような変形例の可撓ディスク100Lを設けても良い。可撓ディスク100Lは、外周縁部が円形であり、円形の内周縁部に対して偏心している。これにより、外周縁部の内周縁部との径方向の距離が最も長い部分2箇所が大径部605Lとなる。外周縁部の内周縁部との径方向の距離が最も短い部分2箇所が小径部606Lとなる。このような可撓ディスク100Lを用いても、可撓ディスク100Lの撓み量により皿バネ116,117Jと可撓ディスク100Lとの当接部が小径部606Lよりも外側に位置することで上室連通室147Jと下室連通室149Jとを連通させることになる。
【0347】
なお、第1~第9実施形態では、例えば第1実施形態に示すようにアキュムレータ190とリリーフ機構522,532とをピストン21に設ける場合を例にとり説明したが、ベースバルブ15に設けることも可能である。その場合、ベースバルブ15の油圧回路図が、例えば、図24に示すようになり、下室23とリザーバ室5との間に、減衰力発生機構255,256とアキュムレータ190とリリーフ機構522,532とが並列に設けられる構成となる。この場合、ピストン21に設けられた第1減衰力発生機構41,42に対して、減衰力発生機構255,256が第2減衰力発生機構となる。
【0348】
上記第1~第9実施形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、外筒をなくしシリンダ内の下室の上室とは反対側に摺動可能な区画体でガス室を形成するモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよい。また、ディスクにシール部材を設けた構造のパッキンバルブを使用した圧力制御バルブを含むあらゆる緩衝器に用いることができる。
【0349】
以上に述べた実施形態の第1の態様によれば、緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により上流側となる前記室から下流側となる前記室に作動流体が流れ出す第1通路と、前記第1通路に設けられ、減衰力を発生する第1減衰力発生機構と、前記第1通路とは別に設けられる第2通路と、前記第2通路に設けられ、前記第1減衰力発生機構よりもピストン速度低速時に開弁して減衰力を発生する第2減衰力発生機構と、前記第2通路とは別に設けられる第3通路と、前記第3通路に設けられる体積可変機構と、前記第3通路とは別に設けられる第4通路と、前記第4通路に設けられ、前記第2減衰力発生機構が開弁した後に開弁するリリーフ機構と、を備える。これにより、耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0350】
実施形態の第2の態様は、第1の態様において、前記体積可変機構は、前記第2減衰力発生機構が開弁するよりも前に変形すると共に内周端部から外周端部までの間、または、内周端部から前記ピストンロッドの外径までの間に、上流側と下流側とを連通する連通孔が形成された撓み可能な可撓ディスクと、前記可撓ディスクの端面に当接し該可撓ディスクを付勢する付勢部材と、を有し、前記可撓ディスクの前記連通孔を該可撓ディスクの撓み量により開閉可能に配置された前記リリーフ機構と、を備える。
【0351】
実施形態の第3の態様は、第1の態様において、前記体積可変機構は、前記第2減衰力発生機構が開弁するよりも前に変形すると共に内周側の中心軸に対して外周側の長さが異なる大径部と小径部とを有する撓み可能な可撓ディスクと、前記可撓ディスクの前記小径部よりも内側に配置されると共に該可撓ディスクの端面に当接し該可撓ディスクを付勢する付勢部材と、を有し、前記可撓ディスクの撓み量により前記付勢部材と該可撓ディスクとの当接部が前記小径部よりも外側に位置する。
【0352】
実施形態の第4の態様は、第2または第3の態様において、前記付勢部材は、前記可撓ディスクの端面に当接する部分が、該可撓ディスクの撓み量により、該可撓ディスクの端面から少なくとも一部離れる。
【産業上の利用可能性】
【0353】
上記した緩衝器によれば、耐久性の向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0354】
1,1B~1H,1J 緩衝器
4, シリンダ
21,21H ピストン
22 上室(室)
23 下室(室)
25,25H ピストンロッド
41,41H,42,42H 第1減衰力発生機構
43H,72,92,174H 第1通路
100,100A,100B,100J,100K,100L 可撓ディスク
116,116B,116H,117D,117J 皿バネ(付勢部材)
116E Oリング(付勢部材)
172,172G,172H,182,182G,182H 第2通路
173,173G,173H,183,183G,183H 第2減衰力発生機構
185,185B~185H,185J 下室体積可変機構
186,186B~186H,186J 上室体積可変機構
501,501A,506B 連通孔
511,511B~511E,511J,512,512B~512H,512J 第3通路
521,521B~521H,531,531B~531D,531F~531H,611J 第4通路
522,522B~522H,532,532B~532D,532F~532H,612J リリーフ機構
605J 大径部
606J 小径部
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