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特許7378632電池、電気装置、電池の製造方法及び製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】電池、電気装置、電池の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20231106BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20231106BHJP
   H01M 50/367 20210101ALI20231106BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20231106BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/342 101
H01M50/35 201
H01M50/367
H01M50/291
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022552680
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 CN2021109403
(87)【国際公開番号】W WO2023004721
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】唐 ▲ゆう▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 海奇
(72)【発明者】
【氏名】曾 智敏
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬
(72)【発明者】
【氏名】黄 小騰
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112331992(CN,A)
【文献】特表2022-522369(JP,A)
【文献】特表2021-536099(JP,A)
【文献】特開2010-108823(JP,A)
【文献】特開2021-057145(JP,A)
【文献】特開2018-077932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向において対向して設置される第1の電池セル及び第2の電池セルと、
前記第1の電池セル及び前記第2の電池セルを収容するケースと、
前記第1の方向において前記第1の電池セルと前記第2の電池セルとを仕切るための仕切り部材と、を備え、
前記仕切り部材は、互いに対向して設置する第1の壁と第2の壁を含み、前記第1の壁は第1のスルーホールが設置され、前記第2の壁は第2のスルーホールが設置され、前記第1のスルーホールは前記第1の電池セルの圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものであり、前記第2のスルーホールは前記第2の電池セルの圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものであり、
前記第1の壁に設置され、前記第1のスルーホールに対向して設置される第1の弱部を有する第1の防護部材と、
前記第2の壁に設置され、前記第2のスルーホールに対向して設置される第2の弱部を有する第2の防護部材と、
を備え、
前記第1の方向に垂直する断面において、前記第1の弱部の面積は前記第1のスルーホールよりも大きく、前記第2の弱部の面積は前記第2のスルーホールよりも大きい、
電池。
【請求項2】
前記第1の防護部材は前記第1の壁に密着して設置され、前記第2の防護部材は前記第2の壁に密着して設置される、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1の弱部は、前記第1の防護部材に形成したノッチ、又は前記第1の弱部の厚さを前記第1の防護部材の他の部分よりも薄く形成した部分により設けられ、
前記第2の弱部は、前記第2の防護部材に形成したノッチ、又は前記第2の弱部の厚さを前記第2の防護部材の他の部分よりも薄く形成した部分により設けられる、請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1の方向において、前記第1のスルーホールの投影は前記第1の弱部の投影に覆われ、前記第2のスルーホールの投影は前記第2の弱部の投影に覆われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記ケースは、前記第1の方向に直交する第2の方向において、接続されている上カバーとハウジングを有し、前記第1の電池セルと前記第2の電池セルは前記上カバーと前記ハウジングにより囲まれた空間に収容され、
前記仕切り部材は、前記上カバーと前記ハウジングに封止接続されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記第1の壁、前記第2の壁、前記上カバー及び前記ハウジングにより囲まれて、前記放出物が流れる排気通路が形成される、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記ケースにおける前記排気通路の出口に対向する位置に、前記排気通路を流れる前記放出物を前記ケースの外部へ排出するための排気部材が形成されている、請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記仕切り部材は、前記第1の壁と前記第2の壁とを接続するための接続部材を更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記ケースは、前記第1の方向に直交する第2の方向において、接続されている上カバーとハウジングを有し、
前記接続部材は、前記仕切り部材の前記第2の方向における頂部と底部の両方に形成され、前記頂部の前記接続部材は前記上カバーに封止接続されており、前記底部の前記接続部材は前記ハウジングに封止接続されている、請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記仕切り部材は、前記第1の防護部材を支持するための第1の支持部材と、前記第2の防護部材を支持するための第2の支持部材とを更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
前記第1の支持部材は前記第1の壁に接続されており、
前記第2の支持部材は前記第2の壁に接続されている、請求項10に記載の電池。
【請求項12】
前記仕切り部材は、前記第1の防護部材を支持するための第1の支持部材と、前記第2の防護部材を支持するための第2の支持部材とを更に備える、請求項8又は9に記載の電池。
【請求項13】
前記第1の支持部材は前記第1の壁及び/又は前記接続部材に接続されており、
前記第2の支持部材は前記第の壁及び/又は前記接続部材に接続されている、請求項12に記載の電池。
【請求項14】
前記第1の壁と前記第1の支持部材との間には、前記第1の防護部材を位置決めするように前記第1の防護部材がスライドする溝が形成され、
前記第2の防護部材を位置決めするように、前記第2の壁と前記第2の支持部材との間には、前記第2の防護部材を位置決めするように前記第2の防護部材がスライドする溝が形成される、請求項10~13のいずれか一項に記載の電池。
【請求項15】
前記第1の防護部材と前記第2の防護部材とは防護接続具を介して接続されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の電池。
【請求項16】
前記第1の防護部材、前記防護接続具及び前記第2の防護部材は一体物として形成される、請求項15に記載の電池。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の電池であって、電気エネルギーを供給するための電池を備える、電気装置。
【請求項18】
それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向において対向して設置される第1の電池セル及び第2の電池セルを供給することと、
前記第1の電池セル及び前記第2の電池セルを収容するケースを供給することと、
互いに対向して設置する第1の壁と第2の壁を含み、前記第1の壁は第1のスルーホールが設置され、前記第2の壁は第2のスルーホールが設置され、前記第1のスルーホールは前記第1の電池セルの圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものであり、前記第2のスルーホールは前記第2の電池セルの圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものである、仕切り部材を供給することと、
前記第1の壁に設置され、前記第1のスルーホールに対向して設置される第1の弱部を有する第1の防護部材を供給することと、
前記第2の壁に設置され、前記第2のスルーホールに対向して設置される第2の弱部を有する第2の防護部材を供給することと
を含み、
前記第1の方向に垂直する断面において、前記第1の弱部の面積が前記第1のスルーホールよりも大きく、前記第2の弱部の面積が前記第2のスルーホールよりも大きい、電池の製造方法。
【請求項19】
それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向において対向して設置される第1の電池セル及び第2の電池セルを供給するための第1の供給モジュールと、
前記第1の電池セル及び前記第2の電池セルを収容するケースを供給するための第2の供給モジュールと、
互いに対向して設置する第1の壁と第2の壁を含み、前記第1の壁は第1のスルーホールが設置され、前記第2の壁は第2のスルーホールが設置され、前記第1のスルーホールは前記第1の電池セルの圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものであり、前記第2のスルーホールは前記第2の電池セルの圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものである、仕切り部材を供給するための第3の供給モジュールと、
第1の弱部を有する第1の防護部材を供給するための第4の供給モジュールと、
第2の弱部を有する第2の防護部材を供給するための第5の供給モジュールと、
前記第1の防護部材の前記第1の弱部と前記第1のスルーホールとが対向して設置されるように、前記第1の防護部材を前記第1の壁に設置すると共に、前記第2の防護部材の前記第2の弱部と前記第2のスルーホールとが対向して設置されるように、前記第2の防護部材を前記第2の壁に設置し、前記仕切り部材と前記電池セルを前記ケースに取り付ける取付モジュールと、
を備え
前記第1の方向に垂直する断面において、前記第1の弱部の面積が前記第1のスルーホールよりも大きく、前記第2の弱部の面積が前記第2のスルーホールよりも大きい、電池の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はエネルギー蓄積装置の分野に関し、具体的に、電池、電気装置、電池の製造方法及製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業の持続可能な発展のため、省エネルギーと排出削減は大事なことである。このような状況において、電気自動車は省エネルギーで環境に優しいというその利点から、自動車産業の持続可能な発展における重要な構成部分となっている。電気自動車にとって、電池技術はその発展に関する1つの重要な要因である。
【0003】
電池技術の絶え間ない発展に伴って、電池の性能に対してより高い要件が求められており、多方面での設計要素を同時に考慮できる電池が要望されている。
【発明の概要】
【0004】
本願は、電池の安全性を向上するために、電池、電気装置、電池の製造方法及製造装置を提供する。
【0005】
本発明は、第1の局面において、それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向において対向して設置される第1の電池セル及び第2の電池セルと、第1の電池セル及び第2の電池セルを収容するケースと、上記第1の方向において上記第1の電池セルと上記第2の電池セルとを仕切るための仕切り部材と、を備え、上記仕切り部材は、互いに対向して設置する第1の壁と第2の壁を含み、上記第1の壁は第1のスルーホールが設置され、上記第2の壁は第2のスルーホールが設置され、上記第1のスルーホールは上記第1の電池セルの圧力放出機構から排出された放出物を案内するためのものであり、上記第2のスルーホールは上記第2の電池セルの圧力放出機構から排出された放出物を案内するためのものであり、上記第1の壁に設置され、上記第1のスルーホールに対向して設置される第1の弱部を有する第1の防護部材と、上記第2の壁に設置され、上記第2のスルーホールに対向して設置される第2の弱部を有する第2の防護部材とを備え、上記第1の方向に垂直する断面において、上記第1の弱部の面積は上記第1のスルーホールよりも大きく、上記第2の弱部の面積は上記第2のスルーホールよりも大きい電池を提供する。
【0006】
電池において、電池セルが熱暴走したり破損した等の場合、電池セルの圧力放出機構から高温、高圧の放出物を排出することになる。圧力放出機構が隣り合う2つの電池セルの間にある場合、熱暴走している電池セルに生じた熱は更に、その対向して設置されるもう1つの電池セルに伝わり、熱暴走が拡散して状況が悪くなり、ひいては発火、爆発などの問題を引き起こすおそれがある。
【0007】
本願の技術手段によれば、第1の電池セルと第2の電池セルの圧力放出機構は第1の方向において対向して設置され、第1の電池セルと第2の電池セルとの間に仕切り部材を設置することで、電池セルが熱暴走した場合に、仕切り部材により熱を隔てて防火することができる。また、隣り合う圧力放出機構から噴出された放出物を、第1のスルーホールと第2のスルーホールで仕切り部材の内部へ案内することで、放出物を容易に案内して排出することができる。更に、上記した第1の防護部材と第2の防護部材の構造を採用することにより、第1のスルーホールから仕切り部材内に入った放出物が第2のスルーホールを経由して第2の電池セルに到達することはなく、第2のスルーホールから仕切り部材内に入った放出物が第1のスルーホールを経由して第1の電池セルに到達することもない。これによって、上記した熱暴走が拡散する問題を起こさないようになる。
【0008】
一部の実施形態において、上記第1の防護部材は上記第1の壁に密着して設置され、上記第2の防護部材は上記第2の壁に密着して設置される。これにより、例えば第1のスルーホールから仕切り部材内に入った放出物が第2の防護部材に衝突する時に、第2の防護部材と密着する第2の壁が第2の防護部材を支持し、第2の防護部材の構造剛性を更に確保することができ、第2の防護部材が第1のスルーホールから入った放出物と衝突することで離されることにより、その放出物が第2の電池セルに到達することはない。第1の防護部材についても同様である。
【0009】
一部の実施形態において、上記第1の弱部は、上記第1の防護部材に形成したノッチ、又は上記第1の弱部の厚さを上記第1の防護部材の他の部分よりも薄く形成した部分により設けられ、上記第2の弱部は、上記第2の防護部材に形成したノッチ、又は上記第2の弱部の厚さを上記第2の防護部材の他の部分よりも薄く形成した部分により設けられる。このように第1の弱部を形成することで、第1の電池セルの圧力放出機構から噴出された放出物は、第1の弱部の面積よりも小さい第1のスルーホールから第1の弱部に衝突してこれを開けることができ、仕切り部材内に入ることができる。また、第2の弱部は第2のスルーホールの面積よりも大きいため、第1のスルーホールから入った放出物が第2の弱部に衝突してこれを開けることはなく、第1のスルーホールから入った放出物が第2の電池セルに悪影響を与えることを防止して、熱暴走の拡散を防止することができる。第2の弱部の機能についても同様である。
【0010】
一部の実施形態において、上記第1の方向において、上記第1のスルーホールの投影は上記第1の弱部の投影で覆われ、上記第2のスルーホールの投影は上記第2の弱部の投影で覆われる。これにより、第1の弱部と第2の弱部が部分的に破れないように確保することができる。
【0011】
一部の実施形態において、上記ケースは、上記第1の方向に直交する第2の方向において、接続されている上カバーとハウジングを有し、上記第1の電池セルと上記第2の電池セルは上記上カバーと上記ハウジングにより囲まれた空間に収容され、上記仕切り部材は、上記上カバーと上記ハウジングに封止接続されている。一部の実施形態においては、上記第1の壁、上記第2の壁、上記上カバー及び上記ハウジングにより囲まれて、上記放出物が流れる排気通路が形成される。第1のスルーホールと第2のスルーホールから仕切り部材内の空間に入った放出物が再び仕切り部材外へ漏れることなく排気通路に沿って流れるために、仕切り部材を上カバーとハウジングの両方に対して封止する。当該封止は、例えばシーリングゴムを塗布したり、又はシーリングライナーを設置したりすることなどにより実現してもよい。
【0012】
一部の実施形態において、上記ケースにおける上記排気通路の出口に対向する位置に、上記排気通路を流れる上記放出物を上記ケースの外部へ排出するための排気部材が形成されている。第1の壁、第2の壁、上カバー及びハウジングにより囲まれて形成された排気通路は、その延伸方向に出口を有し、ケースにおける当該出口に対向する位置に排気部材が設置されている。これにより、排気通路を経由して出口に到達した放出物を効率よくケース外へ排出できる。
【0013】
一部の実施形態において、上記仕切り部材は、上記第1の壁と上記第2の壁を接続するための接続部材を更に含む。これにより、仕切り部材全体の剛性を向上できる。また、仕切り部材を一体物として成形してもよい。
【0014】
一部の実施形態において、上記ケースは、上記第1の方向に直交する第2の方向において、接続されている上カバーとハウジングを有し、前記接続部材は、上記仕切り部材の上記第2の方向における頂部と底部の両方に形成され、頂部の上記接続部材は上記上カバーに封止接続されており、底部の上記接続部材は上記ハウジングに封止接続されている。即ち、仕切り部材は、「ロ」字状として形成され、頂部の接続部材と底部の接続部材が形成されない場合よりも、封止接続される面積が大きくなり、仕切り部材全体の剛性を向上できるだけでなく、封止性を向上できる。
【0015】
一部の実施形態において、上記仕切り部材は、上記第1の防護部材を支持するための第1の支持部材と、上記第2の防護部材を支持するための第2の支持部材とを更に含む。一部の実施形態において、上記第1の支持部材が上記第1の壁に接続されており、上記第2の支持部材が上記第2の壁に接続されている。これにより、仕切り部材が接続部材を有することなく第1の壁と第2の壁だけを有する場合に、仕切り部材の第1の支持部材と第2の支持部材で第1の防護部材と第2の防護部材を安定に支持することができる。第1の防護部材と第2の防護部材の構造安定性を確保できる。
【0016】
一部の実施形態において、上記仕切り部材は、上記第1の防護部材を支持するための第1の支持部材と、上記第2の防護部材を支持するための第2の支持部材とを更に含む。上記第1の支持部材は上記第1の壁及び/又は上記接続部材に接続されており、上記第2の支持部材は上記第2の壁及び/又は上記接続部材に接続されている。これにより、仕切り部材が第1の壁、第2の壁を有すると共に接続部材を有する場合に、仕切り部材及び/又は接続部材に設置された第1の支持部材と第2の支持部材により、第1の防護部材と第2の防護部材を安定して支持することができる。第1の防護部材と第2の防護部材の構造安定性を確保できる。
【0017】
一部の実施形態において、上記第1の防護部材を位置決めするために、上記第1の壁と上記第1の支持部材との間には、上記第1の防護部材がスライドする溝が形成される。上記第2の防護部材を位置決めするために、上記第2の壁と上記第2の支持部材との間には、上記第2の防護部材がスライドする溝が形成される。これにより、取付の際に、第1の防護部材と第2の防護部材が溝に沿って適切な取付位置までスライドすることができ、位置決めの精度を向上でき、また、仕切り部材がその延伸方向に長い場合にも、第1の防護部材と第2の防護部材を適切な取付位置に良好にセットすることができる。
【0018】
一部の実施形態において、上記第1の防護部材と上記第2の防護部材とは防護接続具を介して接続されている。これにより、第1の防護部材と第2の防護部材の剛性を向上できる。一部の実施形態において、上記第1の防護部材、上記防護接続具及び上記第2の防護部材は一体物として形成される。これにより、加工が容易になり、生産率を向上することができる。
【0019】
本発明は、第2の局面において、第1の局面の電池であって、電気エネルギーを供給するための電池を備える電気装置を提供する。
【0020】
本発明は、第3の局面において、それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向において対向して設置される第1の電池セル及び第2の電池セルを供給することと、第1の電池セル及び第2の電池セルを収容するケースを供給することと、互いに対向して設置する第1の壁と第2の壁を含み、前記第1の壁は第1のスルーホールが設置され、前記第2の壁は第2のスルーホールが設置され、前記第1のスルーホールは上記第1の電池セルの圧力放出機構から排出された放出物を案内するためのものであり、前記第2のスルーホールは上記第2の電池セルの圧力放出機構から排出された放出物を案内するためのものである、仕切り部材を供給することと、上記第1の壁に設置され、上記第1のスルーホールに対向して設置される第1の弱部を有する第1の防護部材を供給することと、上記第2の壁に設置され、上記第2のスルーホールに対向して設置される第2の弱部を有する第2の防護部材を供給することとを含み、上記第1の方向に垂直する断面において、上記第1の弱部の面積が上記第1のスルーホールよりも大きく、上記第2の弱部の面積が上記第2のスルーホールよりも大きい、電池の製造方法を提供する。
【0021】
本発明は、第4の局面において、それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向において対向して設置される第1の電池セルと第2の電池セルを供給するための第1の供給モジュールと、第1の電池セルと第2の電池セルを収容するケースを供給するための第2の供給モジュールと、互いに対向して設置する第1の壁と第2の壁を含み、前記第1の壁は第1のスルーホールが設置され、前記第2の壁は第2のスルーホールが設置され、前記第1のスルーホールは上記第1の電池セルの圧力放出機構から排出された放出物を案内するためのものであり、上記第2のスルーホールは上記第2の電池セルの圧力放出機構から排出された放出物を案内するためのものである、仕切り部材を供給するための第3の供給モジュールと、第1の弱部を有する第1の防護部材を供給するための第4の供給モジュールと、第2の弱部を有する第2の防護部材を供給するための第5の供給モジュールと、上記第1の防護部材の上記第1の弱部と上記第1のスルーホールが対向して設置されるように、上記第1の防護部材を上記第1の壁に設置すると共に、上記第2の防護部材の上記第2の弱部と上記第2のスルーホールが対向して設置されるように、上記第2の防護部材を上記第2の壁に設置し、上記仕切り部材と上記電池セルを上記ケースに取り付ける取付モジュールとを備え、上記第1の方向に垂直する断面において、上記第1の弱部の面積が上記第1のスルーホールよりも大きく、上記第2の弱部の面積が上記第2のスルーホールよりも大きい、電池の製造装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここで説明される添付図面は、本願に対する更なる理解を提供して本願の一部を構成するためのものであり、本願に係る模式的な実施形態及びその説明は、本願を解釈するためのものであり、本願を不適切に限定するためのものでない。添付図面は、以下のようなものである。
図1】本願の一実施形態に係る車両の模式図である。
図2】本願の一実施形態に係る電池の構造の斜視模式図である。
図3(a)】2つの電池セル及び2つの電池セルの間にある仕切り部材の構造の斜視模式図である。
図3(b)】図3(a)における仕切り部材の、第2の壁側から見た構造の斜視模式図である。
図4(a)】図3(a)のI-I断面図である。
図4(b)】第1のスルーホールと第1の弱部の、第1の方向における投影のサイズ関係を示す模式図である。
図5(a)】仕切り部材が第1の壁と第2の壁からなる場合の排気通路の構造模式図である。
図5(b)】図5(a)における仕切り部材の構造模式図である。
図6】仕切り部材の構造のもう1つの実施形態である。
図7】仕切り部材の構造の更に1つの実施形態である。
図8】本願の一実施形態に係る電池の製造方法の模式的フローチャートである。
図9】本願の一実施形態に係る電池の製造装置の模式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願に係る実施形態の目的、技術手段及び利点をより明らかにするために、本願の実施形態における図面に基づいて、本願の実施形態における技術手段を詳細に説明するが、もちろん、説明される実施形態は、本願の一部の実施形態であり、本願の全ての実施形態ではない。当業者が本願の実施形態に基づいて創造的な労力を要することなく得られた全ての他の実施形態は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0024】
本願で使用する全ての技術用語及び科学用語は、別途定義しない限り、当業者が通常に理解する意味と同じ意味を有し、本願の明細書に利用される用語は、本願を限定するものではなく、ただ具体的な実施形態を説明するためのものである。本願の明細書、特許請求の範囲及び上記図面の説明における「含む」及び「有する」という用語及びそれらの任意の類似表現は、排他的ではない包含をカバーすることを意図している。本願の明細書、特許請求の範囲及び上記図面における「第1」、「第2」等の用語は、異なる対象を区別するために用いられ、特定の順序又は主従関係を説明するために用いられるものものでない。
【0025】
本願で言及されている「実施形態」は、実施形態に基づいて説明された所定の特徴、構成又は特性が本願の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。明細書の各所にこの用語が出現しても、必ずしもその全てが同じ実施形態を指すわけではなく、他の実施形態と相互に排他的で独立した又は代替的な実施形態を指すものでもない。当業者は、本明細書に記載の実施形態が他の実施形態と組み合わせることができることを明示的かつ暗示的に理解する。
【0026】
本願の説明において、「取付」、「繋がる」、「接続」、「固定」などという用語は、別途明確に定義及び限定しない限り、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続でもよいし、着脱可能な接続であってもよく、一体接続であってもよい。直接繋がってもよいし、中間媒体を介して間接的に繋がっていてもよく、2つの要素内部の連通であってもよい。当業者は、具体的な状況に応じて本願における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0027】
本願における「及び/又は」という用語は、ただ関連する対象どうしの関係を説明するためのものであり、3種類の関係が存在可能であることを示し、例として、A及び/又はBは、Aが単独して存在する、AとBが同時に存在する、Bが単独して存在する、という3つの状況を示すことができる。なお、本文における「/」という記号は、一般的に前後の関連する対象が互いに「又は」の関係であることを示す。
【0028】
本願に出現する「複数」は2つ以上(2つを含む)を表し、同様に、「複数組」は2組以上(2組を含む)を表し、「複数枚」は2枚以上(2枚を含む)を表す。
【0029】
本願の実施形態で言及される電池は、より高い電圧及び容量を提供するために複数の電池セルを含む単一の物理的モジュールを表す。例えば、本願で言及される電池は、電池モジュール又は電池パックなどを含むことができる。
【0030】
電池セルは、電極素子及び電解液を含み、電極素子は正極シート、負極シート及びセパレータを含む。電池セルは、主に金属イオンが正極シートと負極シートとの間を移動することによって動作する。正極シートは正極集電体及び正極活物質層を含み、正極活物質層は正極集電体の表面に塗布され、正極活物質層が塗布されていない集電体は正極活物質層が塗布された集電体から突出して正極タブとして機能する。リチウムイオン電池を例とすると、正極集電体の材質はアルミニウムであってもよく、正極活物質はコバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元リチウム又はマンガン酸リチウム等であってもよい。負極シートは負極集電体及び負極活物質層を含み、負極活物質層は負極集電体の表面に塗布され、負極活物質層が塗布されていない集電体は負極活物質層が塗布された集電体から突出して負極タブとして機能する。負極集電体の材質は銅であってもよく、負極活物質は炭素又はケイ素などであってもよい。大電流を流しても溶断が発生しないようにするために、複数の正極タブを使用し一体に積層すると共に、複数の負極タブを使用し一体に積層するようにしてもよい。セパレータの材質はPP又はPEなどであってもよい。なお、電極素子は、巻回式構造でもよく、積層式構造でもよく、本願の実施形態はこれに限定されない。
【0031】
電池技術の発展には多方面の設計要素、例えば、エネルギー密度、サイクル寿命、放電容量、充放電効率等の性能パラメータを同時に考慮する必要があり、また、電池の安全性も考慮する必要がある。
【0032】
現在、電気自動車の電池は、数十個又は千個を超える電池セルで構成する必要がある。電池において、電池セルが熱暴走した場合又は破断した場合等に、電池セルの圧力放出機構から高温及び高圧の放出物が排出されるおそれがある。圧力放出機構が隣り合う2つの電池セルの間に位置する場合には、熱暴走している電池セルに発生した熱が、それに対向して設置されている他の電池セルに伝わることになり、熱暴走が拡散して状況が悪くなり、ひいては発火、爆発等の事故を引き起こすおそれがある。
【0033】
本願は、これに鑑み、以下の技術手段を提供する。即ち、それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向において対向して設置される第1の電池セル及び第2の電池セルと、第1の電池セル及び第2の電池セルを収容するケースと、前記第1の方向において前記第1の電池セルと前記第2の電池セルとを仕切るための仕切り部材と、を備え、前記仕切り部材は、互いに対向して設置する第1の壁と第2の壁を含み、前記第1の壁は第1のスルーホールが設置され、前記第2の壁は第2のスルーホールが設置され、前記第1のスルーホールは上記第1の電池セルの圧力放出機構から排出された放出物を案内するためのものであり、上記第2のスルーホールは上記第2の電池セルの圧力放出機構から排出された放出物を案内するためのものであり、上記第1の壁に設置され、上記第1のスルーホールに対向して設置される第1の弱部を有する第1の防護部材と、上記第2の壁に設置され、上記第2のスルーホールに対向して設置される第2の弱部を有する第2の防護部材とを備え、上記第1の方向に垂直する断面において、上記第1の弱部の面積が上記第1のスルーホールよりも大きく、上記第2の弱部の面積が上記第2のスルーホールよりも大きい、電池である。
【0034】
第1の電池セルと第2の電池セルの圧力放出機構が第1の方向において対向して設置され、第1の電池セルと第2の電池セルとの間に仕切り部材が設置されることにより、電池セルが熱暴走した場合に、仕切り部材によって熱を隔てて防火することができる。また、隣接する圧力放出機構から排出された放出物を、第1のスルーホールと第2のスルーホールによって仕切り部材の内部へ案内することにより、仕切り部材の端部から排気することもでき、これにより放出物を容易に案内して排出し、電池全体の安全性を高めることができる。更に、上記第1の防護部材と第2の防護部材の構造を採用することにより、第1のスルーホールから仕切り部材内に入った放出物が第2のスルーホールを経由して第2の電池セルに到達することがなく、第2のスルーホールから仕切り部材内に入った放出物が第1のスルーホールを経由して第1の電池セルに到達することもない。これによって、熱暴走が拡散する問題が引き起こされないようにすることができる。
【0035】
本願の一実施形態は、電池が電気エネルギーを供給するために用いられる電気装置を提供する。
【0036】
本願の実施形態に記載の技術手段は、いずれも電池を利用する装置、例えば携帯電話、携帯機器、ノートパソコン、電気自転車、電動玩具、電動工具、電気自動車、船舶及び航空機などにも適用でき、例えば、航空機には、飛行機、ロケット、スペースシャトル及び宇宙船などが含まれる。
【0037】
当然のことながら、本願の実施形態に記載の技術手段は、上記機器に適用できるのみならず、電池を使用するすべての機器にも適用できるが、説明の便宜のために、以下の実施形態ではいずれも電気自動車を例として説明する。
【0038】
例えば、図1は本願の一実施形態の車両100の構造模式図であり、車両100は、ガソリン自動車、天然ガス自動車、又は新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は電気自動車、ハイブリッド自動車又はレンジエクステンダー自動車等であってもよい。車両100の内部には、モータ2、コントローラ3及び電池1を設置することができ、コントローラ3は電池1を制御してモータ2へ給電するために用いられる。例えば、電池1は、車両100の底部、前側又は後側に設置することができる。電池1は車両100の給電に用いられ、例えば、電池1は車両100の動作電源として車両100の回路システムに用いることができ、例えば車両100の起動、ナビゲーション及び走行時の作業電力への必要を賄う。本願の別の実施形態において、電池1は車両100の動作電源としてだけでなく、車両100の駆動電源として、燃料又は天然ガスの代わりに又はそれを部分的に代替して車両100に駆動動力を提供することができる。
【0039】
電池1は、様々な使用電力の需要を満たすために、複数の電池セルを含むことができ、ここで複数の電池セルの間は、直列接続、並列接続、又は直並列接続することができ、直並列接続は、直列接続と並列接続の混合接続を意味する。
【0040】
例えば、図2は本願の一実施形態の電池1の構造を示す斜視模式図である。電池1はケース50を備え、ケース50の内部は中空構造であり、ケース50の内部には電池セル10’が収容される。図2で示すように、ケース50は2つの部分(ここでは、上カバー51とハウジング52と称する)を含んでもよい。上カバー51とハウジング52は一体に係合される。上カバー51とハウジング52の形状は、複数の電池セル10’が組み合わされた形状に基づいて決めることができる。例えば、上カバー51とハウジング52の両方が中空の長方体で且つそれぞれ1つの面のみが開口面であり、上カバー51の開口とハウジング52の開口は対向して設置され、上カバー51とハウジング52を互いに係合して閉塞チャンバーを有するケース50を形成してもよい。上カバー51が開口を有する長方体でハウジング52がプレート状であり、又は、ハウジング52が開口を有する長方体で上カバー51がプレート状であり、上カバー51とハウジング52が対向して設置され且つ係合して閉塞チャンバーを有するケース50を形成してもよい。
【0041】
図2に示すように、ケース50には複数の電池セル10’が収容され、複数電池セル10’は、第1の方向X及び第1の方向Xに直交する第3の方向Yに並んでいる。即ち、電池1の複数の電池セル10’は、行列状の構造として配列することができる。複数の電池セル10’は、互いに並列接続、直列接続、又は混合接続として組み合わされた後、上カバー51とハウジング52とを互いに係合して形成されるケース50の内部に設置される。好ましくは、電池1が有する電池セル10’は、2つの電池セル10’とすることができ、2つの電池セル10’の圧力放出機構は第1の方向Xで対向するように設置することができる。
【0042】
図3(a)は、2つの電池セル10’の圧力放出機構が第1の方向Xで対向するように設置されており、2つの電池セル10’の間に仕切り部材30を設置した構造を示す斜視模式図である。図3(b)は、図3(a)で示す仕切り部材30を、図中、第2の壁32の側から見た構造を示す斜視模式図である。図4(a)は図3(a)のI-I断面図である。図4(b)は、第1のスルーホール33と第1の弱部42とを、第1の方向Xで投影したときの大きさの違いを比較して示す模式図である。
【0043】
図3(a)及び図3(b)に示すように、電池1は第1の電池セル10と第2の電池セル20を有し、第1の電池セル10の第1の圧力放出機構11と第2の電池セル20の第2の圧力放出機構21は第1の方向Xで対向して設置されている。仕切り部材30は、第1の方向Xで第1の電池セル10と第2の電池セル20との間にあり、第1の電池セル10と第2の電池セル20とを仕切っている。仕切り部材30は、互いに対向する第1の壁31と第2の壁32とを有しており、第1の壁31には第1のスルーホール33が設置され、第2の壁32には第2のスルーホール34が設置されている。第1のスルーホール33は、第1の圧力放出機構11から排出された放出物を仕切り部材30の内部の空間に案内するために用いられ、第2のスルーホール34は、第2の圧力放出機構21から排出された放出物を仕切り部材30の内部の空間に案内するために用いられる。第1の壁31には第1の防護部材40が取付けられており、第1の防護部材40は第1のスルーホール33に対向して設置される第1の弱部42を有している。第2の壁32には第2の防護部材41が取付けられており、第2の防護部材41は第2のスルーホール34に対向して設置される第2の弱部43を有している。第1の方向Xに垂直な断面において、第1の弱部42の面積は第1のスルーホール33よりも大きく、第2の弱部43の面積は第2のスルーホール34よりも大きい。
【0044】
このように第1の電池セル10と第2の電池セル20との間に仕切り部材30を設置することにより、第1の電池セル10又は第2の電池セル20が熱暴走した場合に、仕切り部材30によって熱を隔てて防火することができる。第1の圧力放出機構11又は第2の圧力放出機構21から噴出された放出物は、第1のスルーホール33と第2のスルーホール34を通じて仕切り部材30の内部の空間へ案内されることにより、容易に排気することができる。また、第1の方向Xに垂直な断面で見た場合に、第1の弱部42の面積は第1のスルーホール33よりも大きく、第2の弱部43の面積は第2のスルーホール34よりも大きい。このため、第1のスルーホール33から仕切り部材30の内部に入った放出物が第2のスルーホール34を経由して第2の電池セル20に到達することはなく、第2のスルーホール34から仕切り部材30の内部に入った放出物が第1のスルーホール33を経由して第1の電池セル10に到達することもなく、熱暴走の拡散が引き起こされないようにすることができる。
【0045】
圧力放出機構(例えば、第1の圧力放出機構11と第2の圧力放出機構21)は、電池セル10’の内部圧力又は温度が所定の閾値に達したときに、内部圧力又は温度を解放するように作動する要素又は部材を指す。その閾値の設計は設計要求によって異なる。上記閾値は、電池セル10’における正極シート、負極シート、電解液及びセパレータのうちの1つ又は複数の素材により決めるようにしてもよい。圧力放出機構としては、例えば防爆バルブ、ガスバルブ、圧力放出バルブ又は安全弁などの形態のものを使用することができ、例えば、圧力を感知する感圧素子又は感圧構造や、熱を感知する感熱素子又は感熱構造を使用することができる。即ち、第1の電池セル10及び/又は第2の電池セル20の内部圧力又は温度が所定の閾値に達したときに、第1の圧力放出機構11及び/又は第2の圧力放出機構21が作動することにより、又は第1の圧力放出機構11及び/又は第2の圧力放出機構21に設けられた構造上の弱部が開かれることにより、内部圧力又は温度を解放できるようにするための開口又は通路を形成することができる。
【0046】
本願で言及する「作動する」とは、圧力放出機構が動作し、又は一定の状態まで活性化され、電池セル10’の内部圧力及び温度が解放されることを意味する。第1の圧力放出機構11及び/又は第2の圧力放出機構21による動作は、第1の圧力放出機構11及び/又は第2の圧力放出機構21における少なくとも一部が破裂すること、破損すること、引き裂かれること又は開くこと等を含むが、これらに限定されるものではない。第1の圧力放出機構11及び/又は第2の圧力放出機構21が作動することができれば、電池セル10’の内部の高温高圧物質が放出物として、その作動部から外へ排出することができる。このように圧力又は温度が制御可能な状況とすることにより、第1の電池セル10及び/又は第2の電池セル20から圧力及び温度を解放し、より重大な事故の発生を未然に回避することができる。
【0047】
本願で言及する放出物は、電解液、溶解又は分裂した正極シート又は負極シート、セパレータの欠片、反応による高温又は高圧の気体、火炎などを含むが、これに限られるものではない。
【0048】
第1の弱部42と第1のスルーホール33、及び第2の弱部43と第2のスルーホール34との大きさの違いは、図4(b)に示すように、第1の方向Xにおいて、第1のスルーホール33の投影領域が第1の弱部42の投影領域内に含まれ、また第2のスルーホール34の投影領域が第2の弱部43の投影領域内に含まれることが好ましい。これによって、第1の弱部42が、第2の電池セル20の第2の圧力放出機構21から噴出した放出物が衝突することで開くことができないようにし、また、第2の弱部43が、第1の電池セル10の第1の圧力放出機構11から噴出した放出物が衝突することで開くことができないようにすることができる。
【0049】
ここで「弱部」とは、衝撃を受けたときに破れやすい部分を指す。例えば、第1の弱部42は第1の防護部材40にノッチを形成したり、又は第1の弱部42の厚さを第1の防護部材40の他の部分より薄く形成することにより設けることができ、第2の弱部43は第2の防護部材41にノッチを形成したり、又は第2の弱部43の厚さを第2の防護部材41の他の部分よりも薄く形成することにより設けることができる。これによって、第1の圧力放出機構11から噴出された放出物は、第1のスルーホール33から第1の弱部42に衝突して仕切り部材30の内部の空間に入ることができる。第2の圧力放出機構21から噴出された放出物は、第2のスルーホール34から第2の弱部43に衝突して仕切り部材30の内部の空間に入ることができる。
【0050】
また、図4(b)では、第1のスルーホール33と第1の弱部42がいずれも円形の構造のものを例示するが、本願はこれに限定するものではなく、第1のスルーホール33と第1の弱部42は、円形以外の形状、例えば長方形、正方形、五角形、楕円形などの各種の形状であってもよい。図4(b)には、第1のスルーホール33と第1の弱部42との大きさの違いを明示しているが、第2のスルーホール34と第2の弱部43との大きさの違いもそれと同じである。
【0051】
図3(a)、図3(b)、図4(a)に示すように、第1の防護部材40は第1の壁31に密着して設置され、第2の防護部材41は第2の壁32に密着して設置される。このように第1の防護部材40と第1の壁31との第1の方向Xにおける距離を極めて小さくすると共に、第2の防護部材41と第2の壁32との第1の方向Xにおける距離を極めて小さくすることによって、第1の壁31が密着状態で第1の防護部材40を支持すると共に、第2の壁32が密着状態で第2の防護部材41を支持することができる。それにより、例えば第1のスルーホール33から仕切り部材30の内部に入った放出物が第2の防護部材41に衝突したときでも、第2の壁32が第2の防護部材41を支持し、第2の防護部材41の構造剛性を確保することができ、したがって第1のスルーホール33から入った放出物が第2の弱部43に衝突し、第2の弱部43を開けて、第2の電池セル20に到達することはない。第1の防護部材40についても同様であり、即ち、第2のスルーホール34から仕切り部材30の内部に入った放出物が第1の防護部材40に衝突したときでも、第1の壁31が第1の防護部材40を支持し、第1の防護部材40の構造剛性を確保することができ、したがって第2のスルーホール34から入った放出物が第1の弱部42に衝突し、第1の弱部42を開けて、第1の電池セル10に到達することはない。
【0052】
図3(b)、図4(a)は、仕切り部材30が第1の壁31、第2の壁32、第1の壁31と第2の壁32を接続するための接続部材35を有する構造を示している。これによって、仕切り部材30の全体の剛性を向上でき、仕切り部材30を一体として成形することにより生産率を向上することができる。
【0053】
もちろん、本願はそれに限定するものではなく、仕切り部材30は第1の壁31と第2の壁32だけを有するものでもよい。図5(a)は、仕切り部材30が第1の壁31と第2の壁32とからなる場合の排気通路60の構造の例を模式図で示しており、そこにはスルーホールと弱部の記載を省略している。図5(b)は図5(a)の仕切り部材30の構造模式図を示している。
【0054】
図5(a)に示すように、ケース50は第2の方向Zにおいて、相互に組み合わさる上カバー51とハウジング52を有し、第1の壁31、第2の壁32、上カバー51及びハウジング52により囲まれた排気通路60が形成されており、放出物はそこを流れることができる。第1のスルーホール33と第2のスルーホール34から仕切り部材30の内部の空間に入った放出物が、再び仕切り部材30の外部へ漏出せずに排気通路60に沿って流れるように、仕切り部材30は上カバー51とハウジング52のそれぞれに対して封止状態となるように密着固定している。その封止は、例えば、シーリングゴムを塗布したり、又はシーリングライナーを設置したりすること等で実現することができる(図に示せず)。また、図2に示すように、ケース50における排気通路60の出口に対向する位置には、排気通路60を流れる放出物をケース50の外部へ排出するための排気部材70が形成される。これにより排気通路60を経由して出口に到達した放出物をケース50の外部へ効率よく排出し、電池1全体の安全性を高めることができる。
【0055】
そして、図5(a)に示すように、仕切り部材30は、第1の防護部材40を支持するための第1の支持部材36と、第2の防護部材41を支持するための第2の支持部材37とを更に含む。第1の支持部材36は第1の壁31に接続されており、第2の支持部材37は第2の壁32に接続されている。これにより仕切り部材30の第1の支持部材36と第2の支持部材37とが、第1の防護部材40と第2の防護部材41とを安定して支持することができる。
【0056】
図5(b)に示すように、仕切り部材30は、第1の防護部材40を位置決めするために、第1の壁31と第1の支持部材36との間に、第1の防護部材40がスライドする溝38が形成され、また、第2の防護部材41を位置決めするために、第2の壁32と第2の支持部材37との間に、第2の防護部材41がスライドする溝38が形成される。これにより取付の際に、第1の防護部材40と第2の防護部材41とをそれぞれ溝38に沿って適切な取付位置までスライドさせることができ、位置決め精度を向上することができる。仕切り部材30がその延伸方向である第3の方向Yに長い場合でも、第1の防護部材40と第2の防護部材41とを適切な取付位置に良好にセットすることができる。
【0057】
図6は、仕切り部材30の構造の別の実施形態を示している。
【0058】
本願において、仕切り部材30は、第1の壁31と第2の壁32を接続するための接続部材35を含んでもよい。接続部材35は、第1の壁31と第2の壁32を接続でき、第1のスルーホール33、第2のスルーホール34、第1の防護部材40、第2の防護部材41に対して干渉しない形状であればよく、その第2の方向Zにおける設置位置は特に限定されない。例えば、図6に示すように、仕切り部材30の、第2の方向Zにおける頂部と底部の両方に、接続部材35が形成されている。頂部の接続部材35は上カバー51に封止接続されており、底部の接続部材35はハウジング52に封止接続されている。即ち、仕切り部材30は「ロ」字状として形成され、図5(a)に示すような、頂部の接続部材35と底部の接続部材35とが無いものと比べると、封止接続されている面積が大きくなり、仕切り部材30の全体の剛性を向上できるだけでなく、封止性も向上することができる。
【0059】
図6において、仕切り部材30は、第1の防護部材40を支持するための第1の支持部材36と、第2の防護部材41を支持するための第2の支持部材37とを更に含む。第1の支持部材36と第2の支持部材37は、それぞれ底部の接続部材35に接続されている。第1の支持部材36と第2の支持部材37との設置位置はこれに限定されるのではなく、第1の支持部材36は第1の壁31及び/又は接続部材35に接続されてもよく、第2の支持部材37は第2の壁32及び/又は接続部材35に接続されてもよい。
【0060】
図6に示すように、第1の防護部材40と第2の防護部材41の剛性を向上するために、第1の防護部材40と第2の防護部材41は、防護接続具44を介して接続されてもよい。このような場合、第1の防護部材40、防護接続具44及び第2の防護部材41を一体物として形成することができ、加工が容易になり、生産率を向上することができる。
【0061】
図7は、仕切り部材30のさらに別の構造の実施形態であり、この実施形態では第1の支持部材36と第2の支持部材37とが形成されていない。仕切り部材30は、その頂部と底部の両方に接続部材35が形成され、全体が「ロ」字状として形成されている。第1の防護部材40と第2の防護部材41は、頂部の防護接続具44と底部の防護接続具44により接続されている。このような構造を採用する場合には、第1の防護部材40、第2の防護部材41及び防護接続具44を、接着などによって仕切り部材30の内表面のそれぞれに固定することができる。
【0062】
本願の一実施形態は、更に、上記した各実施形態における電池1を含んでもよい電気装置を提供する。電池1は、電気装置において電気エネルギーを供給するためのものである。
【0063】
以上は本願の実施形態による電池と電気装置を説明したが、以下に、本願の実施形態による電池の製造方法及び製造装置を説明する。ただし、詳細に説明しない部分は、前述した各実施形態を参照することができる。
【0064】
図8には、本願の一実施形態の電池の製造方法400の模式的なフローチャートである。図8に示すように、その方法400は、
それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向Xにおいて対向して設置される第1の電池セル10及び第2の電池セル20を供給すること(410)と、
第1の電池セル10及び第2の電池セル20を収容するケース50を供給すること(420)と、
互いに対向して設置する第1の壁31と第2の壁32とを含み、第1の壁31は第1のスルーホール33が設置され、第2の壁32は第2のスルーホール34が設置され、第1のスルーホール33は第1の電池セル10の圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものであり、第2のスルーホール34は第2の電池セル20の圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものである、仕切り部材30を供給すること(430)と、
第1の壁31に設置され、第1のスルーホール33に対向して設置される第1の弱部42を有する第1の防護部材40を供給すること(440)と、
第2の壁32に設置され、第2のスルーホール34に対向して設置される第2の弱部43を有する第2の防護部材41を供給すること(450)と
を含み、
第1の方向Xに垂直する断面において、第1の弱部42の面積が第1のスルーホール33よりも大きく、第2の弱部43の面積が第2のスルーホール34よりも大きい、電池の製造方法とすることができる。
【0065】
図9には、本願の一実施形態の電池の製造装置500の模式的なブロック図を示している。図9に示すように、電池の製造装置500は、
それぞれの圧力放出機構同士が第1の方向Xにおいて対向して設置される第1の電池セル10及び第2の電池セル20を供給するための第1の供給モジュール510と、
第1の電池セル10及び第2の電池セル20を収容するケース50を供給するための第2の供給モジュール520と、
互いに対向して設置する第1の壁31と第2の壁32を含み、第1の壁31は第1のスルーホール33が設置され、第2の壁32は第2のスルーホール34が設置され、第1のスルーホール33は第1の電池セル10の圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものであり、第2のスルーホール34は第2の電池セル20の圧力放出機構から排出される放出物を案内するためのものである、仕切り部材30を供給するための第3の供給モジュール530と、
第1の弱部42を有する第1の防護部材40を供給するための第4の供給モジュール540と、
第2の弱部43を有する第2の防護部材41を供給するための第5の供給モジュール550と、
第1の防護部材40の第1の弱部42と第1のスルーホール33が対向して設置されるように、第1の防護部材40を第1の壁31に設置すると共に、第2の防護部材41の第2の弱部43と第2のスルーホール34が対向して設置されるように、第2の防護部材41を第2の壁32に設置し、仕切り部材30と電池セル10をケース50に取り付ける取付モジュール560と
を含み、
第1の方向Xに垂直する断面において、第1の弱部42の面積が第1のスルーホール33よりも大きく、第2の弱部43の面積が第2のスルーホール34よりも大きい、電池の製造装置とすることができる。
【0066】
最後に説明すべきであるように、以上の実施形態はただ本願の技術手段を説明するためのものであり、本願はこれに制限されない。上記した実施形態を参照して本願を詳細に説明したが、当業者にとって明らかであるように、依然として上記した各実施形態に記載の技術手段を変更し、又はその中の一部の技術特徴を同等に置き換えることができるが、これらの変更又は置換は、対応する技術手段の本質を本願の各実施形態技術手段の精神と範囲から逸脱させるものではない。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7
図8
図9