(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20231107BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20231107BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20231107BHJP
C23C 16/54 20060101ALI20231107BHJP
H05F 3/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/265 603C
C23C14/56 F
C23C16/54
H05F3/04
(21)【出願番号】P 2019171480
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元喜
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-051749(JP,A)
【文献】特開2019-096459(JP,A)
【文献】特開2019-119921(JP,A)
【文献】特開2002-118161(JP,A)
【文献】特開2004-241420(JP,A)
【文献】特開2003-297811(JP,A)
【文献】特開2003-142570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/265
C23C 14/56
C23C 16/54
H05F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板に対して真空雰囲気で所定の処理を施す処理室と、
真空雰囲気と大気圧雰囲気を切り替えられ、前記ガラス基板を収容する少なくとも一つのロードロック室と、
少なくとも一つの前記ロードロック室内に前記ガラス基板の帯電を緩和させるアルゴンガス、またはアルゴンガスと窒素ガスの混合気体である帯電緩和ガスを導入するガス供給装置と、
前記ガラス基板が前記ロードロック室から搬出され、前記処理を施されて前記ロードロック室に搬入されるまでの間、前記ガラス基板を保持するホルダーと、を備え、
前記処理はイオン注入であり、
前記ガラス基板が前記処理を施されて前記ロードロック室に搬入された後、前記帯電緩和ガスが導入され
、
前記ガラス基板は、前記ホルダーに保持された後、前記帯電緩和ガスが導入されるまでの間、前記ホルダーと異なる部材とは接触することがない基板処理装置。
【請求項2】
前記ガラス基板が前記処理を施された後、前記ロードロック室に搬入されるより前に前記ガラス基板に帯電した静電気の帯電量を測定する表面電圧測定装置を備え、前記表面電圧測定装置は測定した値から前記帯電緩和ガスの導入量を制御する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理室と前記ロードロック
室との間に搬送室を備え、前記表面電圧測定装置の前記帯電量を検出する検出部は、前記搬送室に配置されている請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ホルダーは、前記ガラス基板の外縁部を支持する請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、特に、ガラス基板に対して所定の処理を施すために使用される基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造工程においては、ガラス基板に対してイオン注入や成膜等の各種処理を施す基板処理装置が使用される。従来の基板処理装置においては一般に、ガラス基板は、まず外部からロードロック室に搬入され、その後、搬送ロボット等の搬送装置によってロードロック室から処理室に搬送されてプラテン等の支持装置に渡される。そして、ガラス基板は処理室において支持装置に保持された状態で所定の処理を施された後、搬送装置によって支持装置から取り外され、再びロードロック室に搬送され、外部に搬出される。
【0003】
また、ガラス基板と搬送装置または支持装置との間での接触、摩擦、あるいは剥離が起きると静電気が発生し、ガラス基板は帯電する。すなわち、従来の基板処理装置においては、ガラス基板は搬送装置と支持装置との間で何度か受け渡しが行われて基板処理装置内を搬送されるため、ガラス基板が搬送装置または支持装置と接触や剥離を繰り返す度に静電気が発生し、ガラス基板が大きく帯電することになる。
【0004】
ガラス基板の帯電は、ガラス基板表面へのパーティクルの付着や静電気放電を引き起こす虞があるため、ガラス基板の帯電を取り除くために除電装置(イオナイザー)を用いられている。このような除電装置を備えた基板処理装置として、特許文献1に開示されたフラットパネルディスプレイ製造装置が知られている。特許文献1に開示されたフラットパネルディスプレイ製造装置は、処理室へのガラス基板の搬入出経路を成す搬送路を構成する真空容器の外壁面に、ガラス基板の除電に用いる電子を放出する除電装置(イオナイザー)が接続された構成である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された除電装置(イオナイザー)はメンテナンス時等にパーティクルが発生する虞があり、また、除電装置自体の構成が複雑であるため、基板処理装置の構造が複雑になる。
【0006】
また、非特許文献1に開示されているように、アルゴンガスやアルゴンと窒素の混合ガスを導入することにより、帯電緩和効果があることが知られている。 しかしながら、従来の基板処理装置において、アルゴンガス、または、アルゴンと窒素の混合ガスを導入するのみでは、帯電した基板に対する十分な除電効果は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】三浦崇、静電気学会誌 vol.43 No.1(2019) 項8-12「アルゴン中でのマイクロギャップ放電による摩擦帯電緩和の効率」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でガラス基板の帯電を抑制できる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る基板処理装置は、ガラス基板に対して真空雰囲気で所定の処理を施す処理室と、真空雰囲気と大気圧雰囲気を切り替えられ、前記ガラス基板を収容する少なくとも一つのロードロック室と、少なくとも一つの前記ロードロック室内に前記ガラス基板の帯電を緩和せる帯電緩和ガスを導入するガス供給装置と、前記ガラス基板が前記ロードロック室から搬出され、前記処理を施されて前記ロードロック室に搬入されるまでの間、前記ガラス基板を保持するホルダーとを備え、前記ガラス基板が前記処理を施されて前記ロードロック室に搬入された後、前記帯電緩和ガスが導入される構成とされている。
【0011】
ガラス基板は、ロードロック室から搬出され、処理を施されてロードロック室に搬入されるまでの間、ホルダーによって保持されていることから、ガラス基板は搬送される過程においてホルダー以外の物体と接触することがなく、帯電が抑制される。
また、ガラス基板が処理を施されてロードロック室に搬入された後、帯電緩和ガスが導入されることから、ガラス基板がホルダーから取り外される際に静電気が発生することが抑制される。
したがって、従来のような除電装置(イオナイザー)を使用することなく、ガラス基板の帯電を抑制できる。
【0012】
また、前記ガラス基板が前記処理を施された後、前記ロードロック室に搬入されるより前に前記ガラス基板に帯電した静電気の帯電量を測定する表面電圧測定装置を備え、前記表面電圧測定装置は測定した値から前記帯電緩和ガスの導入量を制御する構成としてもよい。
この場合、表面電圧測定装置によってした値によって、帯電緩和ガスの導入量を調整できることから、帯電緩和ガスを余分に使用することがない。
【0013】
また、前記処理室と前記ロードロックとの間に搬送室を備え、前記表面電圧測定装置の前記帯電量を検出する検出部は、前記搬送室に配置されている構成としてもよい。
【0014】
また、前記保持体は、前記ガラス基板の外縁部を支持する構成としてもよい。
【0015】
この場合、ガラス基板は外縁部を支持されることから、ガラス基板の撓みが抑制されることにより、ガラス基板の変形を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の基板処理装置によれば、簡易な構成でガラス基板の帯電を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の構成示す模式図。
【
図2】本発明に係る処理部および搬送室の構成を示す模式的縦断面図。
【
図4】本発明に係る保持部材の
図3におけるX―X断面を示す断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態における基板処理装置10について説明する。基板処理装置10は、フラットパネルディスプレイ製造過程で使用され、ガラス基板Sに対してイオン注入を行うイオン注入装置である。
【0019】
まず、基板処理装置10の構成について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態における基板処理装置10は、ガラス基板Sに対して真空雰囲気でイオン注入を施す処理室11と、真空雰囲気と大気圧雰囲気を切り替えられ、ガラス基板Sを収容する二つのロードロック室12と、搬送室13を備えている。
【0020】
二つのロードロック室12のうち、第一ロードロック室12aは外部から搬入されるガラス基板Sを収容するために使用され、第二ロードロック室12bは外部へ搬出される基板Sを収容するために使用される。また、処理室11、第一ロードロック室12a、および第二ロードロック室12bはそれぞれ搬送室13を取り囲むように配置されている。
【0021】
図2に示すように、搬送室13には、基板収容装置10内でのガラス基板Sの搬送を行う搬送装置14が配置されており、ガラス基板Sは基板収容装置10内では搬送装置14により移送される。
【0022】
また、
図1および
図2に示すように、基板収容装置10は、ガラス基板Sに帯電した静電気の帯電量測定する非接触式の表面電圧測定装置40を備える。 表面電圧測定装置40は、ガラス基板S帯電量を検出する検出部41と、後述するガス供給装置30に対して制御を行う制御部42を備えており、
図2に示すように、検出部41は、ガラス基板Sがイオン注入処理を施された後、第二ロードロック室12bに搬入される前のガラス基板Sの帯電量を検出し得るよう搬送室13内に配置されている。
【0023】
図1に示すように、基板収容装置10は、第二ロードロック室12b内にガラス基板Sの帯電を緩和せる帯電緩和ガスを導入するガス供給装置30をさらに備えている。
【0024】
ここで、帯電緩和ガスとは静電気の緩和効果を有する気体であり、例えば、アルゴンガスやアルゴンガスと窒素ガスの混合気体である。非特許文献1にも記載されているように、これらのガスには帯電緩和効果があることが知られている。
【0025】
ガス供給装置30は、供給される帯電緩和ガスを貯蔵する貯蔵部31、貯蔵部32から第二ロードロック室12bにつながる流路32、流路32の途中に構成され、第二ロードロック室12bに供給される帯電緩和ガス量を調整するバルブ33から構成されている。
【0026】
図1に示すように、バルブ33は、表面電圧測定装置40の制御部42に接続されて制御され、第二ロードロック室12bに導入される帯電緩和ガスの流量を調整できる構成とされている。
【0027】
図1に示すように、基板収容装置10は、ガラス基板Sを保持するホルダー20を備え、ガラス基板Sはホルダー20に保持された状態で基板処理装置10内を移送され、所定の処理を施される。
【0028】
ホルダー20は、平面全体形状が矩形状であり、ガラス基板Sの外縁部が載置される載置部21と、ガラス基板Sを載置部21との間で挟持する複数のクランプ部22とを備える。載置部21とクランプ部22のガラス基板Sとの接触する部位には、シリコンラバーにより形成された絶縁部材23が配置されている。また、載置部21の一部には、第二ロードロック室12bにおいてガラス基板Sがホルダー20を取り外す際に、ピン(不図示)の昇降を受け入れる孔部24が形成されている。
【0029】
次に、基板処理装置10の動作について説明する。
図1の破線の矢印A
1~A
6はガラス基板Sの移動を模式的に示している。
図1の矢印A
1に示すように、ガラス基板Sは外部から大気圧雰囲気の第一ロードロック室12aに搬入された後、ホルダー20により保持される。
【0030】
その後、第一ロードロック室12aが真空雰囲気にされた後、矢印A2に示すように、真空雰囲気にされた搬送室14を通って処理室14の搬出入位置P1に搬送され、搬出入位置P1において処理室14のプラテン15に保持される。
【0031】
処理室14においては、矢印A3で示すように基板Sは所定の処理位置P2に移動されイオンビーム照射IBが照射され、その後、基板Sは矢印A4で示すように搬出入位置P1に再び戻り、プラテン15から搬送装置14受け渡される。
【0032】
続いて、ガラス基板Sは、矢印A5に示すように処理室12から搬送室14を通って第二ロードロック室12bに搬送される。このとき、表面電圧測定装置40によってガラス基板Sの帯電量が測定される。
【0033】
ガラス基板Sが第二ロードロック室12bに収容された後、第二ロードロック室12b内に帯電緩和ガスが導入される。帯電緩和ガスの導入量は、表面電位測定装置40の制御部42により決定され、制御部42がバルブを制御することにより調整される。
【0034】
このとき、第二ロードロック室12bに帯電緩和ガスが導入されることによって、第二ロードロック室12bの内圧が高まり、真空雰囲気から大気圧雰囲気に戻される。尚、このとき、帯電緩和ガスとは別に窒素ガス等を導入することによって、所定の内圧まで高める構成としてもよい。
【0035】
その後、ガラス基板Sは、ホルダー20から取り外された、矢印A6に示すように第二ロードロック室12bから基板収容装置10の外部へと搬出される。
【0036】
本発明に係る基板収容装置10は、矢印A1~A5に示す、ガラス基板Sが第一ロードロック室12aでホルダー20に保持された後、第二ロードロック室12b内に帯電緩和ガスが導入されるまでの間、ガラス基板Sは常にホルダー20より保持されている。
【0037】
したがって、この間にガラス基板Sはホルダー20以外の部材と接触することはないため、ガラス基板Sへの帯電が抑制される。さらに、第二ロードロック室12bにおいてガラス基板Sがホルダー20から取り外される際にも、帯電緩和ガスが導入されていることから静電気の発生が抑制される。
【0038】
また、基板収容装置10によれば、従来のような除電装置(イオナイザー)を使用する必要がないため、除電装置を採用した場合のメンテナンス時等でのパーティクル発生がなく、また、除電装置を採用した場合のような複雑な構成になることもない。したがって、基板収容装置10は、簡易な構成でガラス基板Sの帯電を抑制することができる。
【0039】
また、ガラス基板Sはホルダー20によりガラス基板Sの外縁部を支持された状態で移送されるため、ガラス基板Sの変形が抑制できる。したがって、従来よりも薄型化されたガラス基板Sなど、従来よりも強度が低いガラス基板Sに対しても特別な変更を行うことなく取り扱うことができる。
【0040】
また、表面電位測定装置10により、第二ロードロック室12bに導入される帯電緩和ガスの導入量を決定できるため、帯電緩和ガスを余分に導入する必要がない。
【0041】
本発明の一実施形態に係る基板収容装置10はイオン注入装置であるが、本発明の基板収容装置はイオン注入装置に限定されず、基板収容装置で行われる所定の処理もイオン注入に限定されない。例えばCVD装置等であってもよい。
【0042】
また、基板処理装置10は二つのロードロック室12(12a、12b)備える構成としたが、外部とのガラス基板Sとの搬出入を同一のロードロック室より行う構成としてもよく、この場合、ロードロック室はひとつでよい。また、ロードロック室12を三つ以上備える構成とした場合であっても、少なくとも外部へガラス基板Sを搬出するロードロック室へ帯電緩和ガスを導入できる構成とすればよい。
【0043】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
S 基板
10 基板処理装置
11 処理室
12 ロードロック室
12a 第一ロードロック室
12b 第二ロードロック室
13 搬送室
14 搬送装置
15 プラテン
20 保持部材
21 載置部
22 クランプ部
23 絶縁部材
24 孔部
30 ガス供給装置
31 貯蔵部
32 流路
33 バルブ
40 表面電圧測定装置
41 検出部
42 制御部
P1 搬出入位置
P2 処理位置