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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】遠隔操作式排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/23 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
E03C1/23 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019239901
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107662
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永原 徹
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040176(JP,A)
【文献】米国特許第6347417(US,B1)
【文献】特開2013-253419(JP,A)
【文献】特開2016-172961(JP,A)
【文献】特開2004-150246(JP,A)
【文献】特開2018-145653(JP,A)
【文献】特開2002-081737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を遠隔操作により開閉する遠隔操作式排水栓装置において、
槽体の底面に設けられた排水口と、
前記排水口上を上下することで前記排水口を開閉する弁体と、
前記排水口の開閉を操作する操作部と、
からなり、
前記弁体が上昇した状態で固定されることで前記排水口が開口した開口状態となると共に、
開口状態が、前記排水口に対して前記弁体との高さ位置が異なる複数の開口状態を備え、
手動操作によって前記排水口を開閉する手動操作部と、
電動操作によって前記排水口を開閉する電動操作部とを備え、
前記手動操作による開口状態より、
前記電動操作による開口状態が、より前記弁体が高い高さ位置となる開口状態を備えたことを特徴とする、遠隔操作式排水栓装置。
【請求項2】
前記遠隔操作式排水栓装置において、
前記排水口の開口時の目的に対応して、前記排水口の開口時における前記弁体の高さ状態が異なる開口状態に変化させることを特徴とする、請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項3】
排水口を遠隔操作により開閉する遠隔操作式排水栓装置において、
槽体の底面に設けられた排水口と、
前記排水口上を上下することで前記排水口を開閉する弁体と、
前記排水口の開閉を操作する操作部と、
からなり、
前記弁体が上昇した状態で固定されることで前記排水口が開口した開口状態となると共に、
開口状態が、前記排水口に対して前記弁体との高さ位置が異なる複数の開口状態を備え、
自動的に前記槽体内の洗浄を行う自動洗浄機能を備えると共に、
前記槽体内の通常の排水を行う第一の排水状態と、
前記槽体内の自動洗浄時の排水を行う第二の排水状態と、を備え、
前記第一の排水状態の開口時の前記弁体の高さ位置より、前記第二の排水状態の開口時の前記弁体の高さ位置の方が、より前記弁体が高い高さ位置となるように構成したことを特徴とする、遠隔操作式排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を、排水口から離間した位置に設けた操作部への操作により開閉する遠隔操作式の排水栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽や洗面ボウルなどの槽体の内部に生じた排水を処理するため、槽体の底面等に排水口を設け、この排水口から配管部材を介し、下水側に排水を排出する方法が広く知られている。また、排水口を覆うように弁体を配置することで槽体内に水を溜めると共に、弁体を上昇させて排水口から離間させることで排水口を開口する方法があるが、この弁体の昇降による排水口の開閉を、弁体や排水口から離間した位置、例えば槽体の縁部や槽体側面の上方に設けた操作部への操作によって行う遠隔操作式排水栓装置が知られている。
広く知られた遠隔操作式排水栓装置としては、特許文献1に記載のような、槽体の底面に設けられた排水口と、排水口上を上下動することによって排水口を開閉する弁体と、槽体の近傍に備えられた、ボタン部材及び操作軸を有する操作部と、操作部に加えられた操作を排水口に備えられた弁体に伝達するレリースワイヤと、から構成されるものがある。
この特許文献1の遠隔操作式排水栓装置の操作部は、円筒の途中部分に箱体を組み合わせたような形状であって、上下方向に備えられた円筒の内部に操作軸を貫通させると共に、円筒の上端には開口部を備えてなり、その開口部の内部に操作用のボタン部材を配置して、当該ボタン部材を押すことで操作軸を降下させるように構成してなる。
また、操作部には電動操作のため、モーター部材等からなる電動駆動部を併設し、モーター部材の動作によっても操作軸を降下させることが可能なように構成されてなる。
また、特許文献1に記載された遠隔操作式排水栓装置では、操作軸とレリースワイヤの間に、レリースワイヤの動作を固定し、弁体の上昇状態を維持するため、ロック機構(スラストロック機構)が備えられてなる。
以下に、特許文献1の遠隔操作式排水栓装置の操作方法を説明する。
まず手動操作による排水口の開閉操作について説明する。
特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置においては、ボタン部材を押し込むことで、ボタン部材に接続された操作軸が下方に押し込まれ、この押し込み操作を行う都度、ロック機構のロック軸(特許文献1では「ロッド部))を下方に突出した状態で固定/固定を解除しスプリングなどの作用によりロック軸を上昇、を交互に繰り返すことができる。ここで、ロック機構はレリースワイヤの一端に接続されており、ロック軸の上昇/下降に対応してレリースワイヤの他端に接続されている弁体も下降/上昇(ロック軸が上昇している時弁体は降下し、ロック軸が降下している時弁体は上昇するため、弁体側は下降、上昇の順番で記載)することで、排水口を開閉することができる。
次に電動操作による排水口の開閉操作について説明する。
特許文献1の遠隔操作式排水栓装置の操作部は、電動による排水口の開閉操作を行う機構として、ピニオンと呼ばれる歯車を備えたモーター部材と、ラックと呼ばれる該歯車と歯合する直線状の歯を備えた動作変換部材とを備えてなる。モーター部材は操作の際に回転数を管理できるステッピングモーターと呼ばれるモーターからなり、また動作変換部材は降下する際に操作軸に係止して操作軸を下方に押し込むことができるように構成されてなる。但し、操作ボタンを押し込むことで操作軸が降下する場合は、操作軸が降下するだけで動作変換部材は降下しない。
電動操作にてモーター部材を動作させると、モーターに備えられた歯車が回転し、ラックとピニオンの連動により動作変換部材が降下し、この動作変換部材に係止される操作軸も降下してロック機構が動作する。
尚、ロック機構が動作した後は、モーター部材は動作変換部材が当初の位置に戻るまで歯車を逆回転させ、これにより動作変換部材は当初の位置まで上昇して停止する。
上記の手順にてロック機構のロック軸が電動操作により進退することで、手動操作時と同様に排水口を覆う弁体が上下動し、排水口を開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-145653号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記遠隔操作式排水栓装置において、排水口が排水を排出する能力、いわゆる排水性能は、ある程度の範囲では、弁体を排水口から高く上昇させるほどに向上する。排水口の内径が40ミリメートル程度の場合、開口時の弁体と排水口の高低差は、10ミリーメートル程度の時より、20ミリメートルや、それ以上に弁体が上昇した場合のほうが、排水性能は向上する(ただし、高低差が100ミリメートル等充分に弁体が上昇した場合は、例えば100ミリメートルを110ミリメートルにするなどそれ以上弁体を上昇させても排水性能にほぼ変化はない)。
即ち、排水性能の向上、という観点では、弁体をなるべく排水口から上昇させると好適である。
【0005】
また、特に浴槽において、要介護者の入浴のため、できる限り高速で浴槽の排水を行うことが望まれている。介護者用の浴槽においては、浴槽の側面に扉を設け、この扉を開くことで、身体の不自由な介護者が浴槽の縁を跨がなくても浴槽を出入り可能としている。しかし、この扉を使用するためには、扉を開いても浴槽内から浴湯などが流出しないように、浴槽内の浴湯などが完全に排出されている必要がある。そして、浴湯の排出に時間がかかると入浴者が湯冷めしてしまうことから、要介護者向け浴槽の排水は、できる限り速く行われることが望まれる。
【0006】
また、近年では、やはり浴槽において、機械的機構により浴槽内に洗剤を自動噴霧し、更に浴槽内に自動的に洗浄水を噴射して、浴槽内を機械的に自動で洗浄する自動洗浄機能が付加された浴槽がある。この自動洗浄機を備えた浴槽の場合、自動洗浄時の排水には洗剤によって泡が多数含まれるが、泡の大きさが排水口と弁体の間の幅よりも大きいと、排水はともかく泡は排水口内に流れにくい。従って、泡を流出させるためには、弁体をなるべく排水口から上昇させると好適である。
【0007】
しかしながら、従来の遠隔操作式排水栓装置では、以下に記載する理由から、開口時での排水口と弁体の高低差は10ミリメートル前後に留まっていた。
従来の遠隔操作式排水栓装置では、ボタン部材の押し込みの長さが、ほぼそのまま弁体の上昇する上昇高さとなっていた。例えば特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置の場合、操作ボタンを押し込むと、押し込まれた長さ分だけ操作軸及びロック軸が降下し、レリースワイヤも同じ長さだけ押し込まれることで弁体が上昇する。従って、弁体の上昇高さは、使用者が操作ボタンを押し込んだ長さを超えることはできない。実際には、ロック機構の性質や部材間の隙間が存在することから、使用者が操作ボタンを押し込んだ長さよりも、弁体の上昇高さの方が更に数ミリメートル低くなる。
ここで、使用者が操作ボタンを押し込む長さは通常10~13ミリメートル程度であり、これよりも押し込み長さを長くすると、使用者が簡単に押し込みを行える長さではなくなってしまい、押し込みの操作を不便に感じるようになってしまう。
このため、通常の手動操作による遠隔操作式排水栓装置では、操作ボタンを押し込む長さは10~13ミリメートル程度とされ、結果、開口時での排水口と弁体の高低差も10ミリメートル前後に留まっていた。
【0008】
特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置では、手動操作に加えて電動操作の機能も有しているが、ロック機構のロック軸は手動操作に合わせて、10ミリメートル程度に突出した状態で固定されてしまう構造であり、このロック機構を電動操作の機構と兼用しているため、電動操作であってもロック軸の降下する幅は手動操作の場合と同じにするしかなく、電動操作であっても開口時での排水口と弁体の高低差も10ミリメートル前後に留まっていた。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、必要に応じて排水口に対する弁体の高さ位置を変更することが可能な遠隔操作式排水栓装置を提唱するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、排水口を遠隔操作により開閉する遠隔操作式排水栓装置において、
槽体の底面に設けられた排水口と、
前記排水口上を上下することで前記排水口を開閉する弁体と、
前記排水口の開閉を操作する操作部と、
からなり、
前記弁体が上昇した状態で固定されることで前記排水口が開口した開口状態となると共に、
開口状態が、前記排水口に対して前記弁体との高さ位置が異なる複数の開口状態を備え、
手動操作によって前記排水口を開閉する手動操作部と、
電動操作によって前記排水口を開閉する電動操作部とを備え、
前記手動操作による開口状態より、
前記電動操作による開口状態が、より前記弁体が高い高さ位置となる開口状態を備えたことを特徴とする、遠隔操作式排水栓装置である。
ここで「弁体が上昇した状態で固定されることで排水口が開口した開口状態となる」について説明すると、「排水口が開口した開口状態」とは、「弁体が排水口から上昇し、且つ機械的な構造により移動を止めて固定された状態」を指し示すものであって、例えば、単に「遠隔操作式排水栓装置の操作中に、弁体が上昇しつつあるため排水口から弁体が離間している状態」や、「使用者が操作ボタン等を押し込んだ状態で手を止めているため弁体も移動しないだけで、使用者が操作ボタン等から手を離すと操作ボタン等及び弁体も移動してしまう状態」といった、弁体が開閉の動作の為に上昇又は降下している途中の状態は含ないものである。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、前記遠隔操作式排水栓装置において、
前記排水口の開口時の目的に対応して、前記排水口の開口時における前記弁体の高さ状態が異なる開口状態に変化させることを特徴とする、請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、
排水口を遠隔操作により開閉する遠隔操作式排水栓装置において、
槽体の底面に設けられた排水口と、
前記排水口上を上下することで前記排水口を開閉する弁体と、
前記排水口の開閉を操作する操作部と、
からなり、
前記弁体が上昇した状態で固定されることで前記排水口が開口した開口状態となると共に、
開口状態が、前記排水口に対して前記弁体との高さ位置が異なる複数の開口状態を備え、
自動的に前記槽体内の洗浄を行う自動洗浄機能を備えると共に、
前記槽体内の通常の排水を行う第一の排水状態と、
前記槽体内の自動洗浄時の排水を行う第二の排水状態と、を備え、
前記第一の排水状態の開口時の前記弁体の高さ位置より、前記第二の排水状態の開口時の前記弁体の高さ位置の方が、より前記弁体が高い高さ位置となるように構成したことを特徴とする、遠隔操作式排水栓装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の本発明では、遠隔操作式排水栓装置の開口状態において、排水口と弁体との高さ位置が異なる複数の開口状態を備えるように構成したことにより、必要に応じて開口時の弁体の高さ位置を高くし、その分排水性能等を高くすることができる。又、開口時に弁体がより高い位置に上昇する場合、手動操作では操作ボタンの押し込み長さが増大する等使用者に不便さを感じさせる操作を、電動操作によって行うことで、手動操作の使用者に不便さを感じさせることなく行うことができる。
請求項2に記載の本発明では、上記高さ位置の変更を、目的に対応して行うことで、例えば、介護浴槽のために、排水を高速で行ったり、請求項に記載の発明のように、槽体の自動洗浄に対応して弁体を高くすることで特に洗剤によって生じた泡を効率的に排出させる、といった対応を行うことができる。

以上
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施例の遠隔操作式排水栓装置を示す断面図である。
図2】第一実施例の操作部本体関連の部材構成を示す参考図である。
図3】第一実施例の操作部を示す参考図である。
図4】第一実施例の操作部本体の参考図である。
図5】第一動作変換部材と歯車部材の正面図である。
図6】第一実施例の操作部本体の平面視方向の参考図である。
図7】ロック機構の動作を示す参考図である。
図8】ロック機構の動作を示す参考図である。
図9】ロック機構の動作を示す参考図である。
図10】排水口の閉口状態を示す断面図である。
図11】手動操作による操作部の開口状態を示す参考図である。
図12】排水口の通常の開口状態を示す断面図である。
図13】電動操作による操作部の開口状態を示す参考図である。
図14】電動操作による大開口状態での操作部を示す参考図である。
図15】排水口の大開口状態を示す参考図である。
図16】他の実施例を示す参考図である。
【0015】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。尚、以下の各実施例への説明においては、レリースワイヤ11のインナーワイヤ11bが排水口8a側に移動することを「前進」、操作部S側に移動することを「後退」として記載する。また、本実施例の説明における「上」「下」は、図1の図示に基づいて記載する。
図1乃至図15に示した、本発明の第一実施例の排水栓装置は、槽体の一種である浴槽Bの排水配管に採用される遠隔操作式の排水栓装置であって、以下に記載する、排水口本体8、支持部材9、継手部材10、操作部S、弁体7、操作伝達部材としてのレリースワイヤ11、支持部材9、ロック機構5、ガイド管12、等の部材より構成される。
浴槽Bは上方が開口した箱体であって、その底面に排水口本体8を取り付けるための取付孔B1を、また上縁周縁に操作部Sを取り付けるための操作部取付孔B2を備えてなる。
また、本実施例の遠隔操作式排水栓装置が施工される浴槽Bは、自動洗浄機能と呼ばれる、浴槽B内に洗剤を自動噴霧し、更に浴槽B内に自動的に洗浄水を噴射して、浴槽B内を機械的に自動で洗浄する機能が付加された浴槽Bである。この自動洗浄機能は、給湯器の操作パネルを操作することによって作動させることができる。
排水口本体8は略円筒形状を成す部材であって、その上端部分外周側には、側面方向に突出するフランジ部8bを設けてなり、外側面には雄ネジを設けてなる。また、排水口本体8内部には、直径40ミリメートル程度の円形の排水口8aを形成してなる。
支持部材9は、レリースワイヤ11端部を排水口8a内に配置固定する部材であって、その中央部分にアウターチューブ11a端部が接続される。
継手部材10は、有底略円筒形状を成す部材であって、上方の開口に排水口本体8の雄ネジと螺合する雌ネジを、側面に内部の排水を排出するための排出口10aと、レリースワイヤ11を挿通するための筒状の挿通部10bを、それぞれ備えてなる。
操作部Sは浴槽Bの操作部取付孔B2に取り付けられる部材であって、以下に記載する、第一ケーシング1、第二ケーシング2、操作部本体S1、電動駆動部6、第一操作軸3、第二操作軸4、操作ボタン13、から構成される。
第一ケーシング1は、略円筒形状を成す部材であって、その両端に開口を備えてなり、上端側は浴槽Bの操作部取付孔B2に取り付けられる。この上端側の端部は、操作ボタン13が進退する開口部1aを形成する。
該開口部1a内には、施工完了時、操作ボタン13を上下動自在に収納する。但し、開口部1a内に設けた凹凸等により、上方に対しては、意図して抜脱しようとしない限り、操作ボタン13の上面が、開口部1aの上端、即ち第一ケーシング1の上端と一致する位置までしか上昇できないように構成されている。また、下方に対しては、上記した操作ボタン13の上昇上限から、13ミリメートル降下する位置までしか降下できないように構成されている。
また、開口部1aとは反対側の端部には接続部C1を備えてなる。
第二ケーシング2は、略円筒形状を成す部材であって、両端に開口を備えてなり、上端は第一ケーシング1の接続部C1と接続される被接続部C2を備えてなる。また、その内部は、ロック機構5を弾性嵌合により着脱自在に固定できるように構成されてなる。
操作部本体S1は略箱状の外形を備えたケーシング体であって、上面に第二ケーシング2と同じ被接続部C2を、また該被接続部C2の同軸上であって、対向する下面に第一ケーシング1と同じ接続部C1を、それぞれ備えてなる。
また、操作部本体S1の上面には被接続部C2が、下面には接続部C1が、操作部本体S1の平面視において同心円状、即ち中心が重なるようにしてそれぞれ設けられてなる。
第一操作軸3は、上方は略円盤状部分を備え、該円盤状部分中央から略円筒形状部分が垂下されてなる。第一操作軸3の上端は後述する操作ボタン13の下面と当接し、また筒状部分の内側端部は後述する第二操作軸4の上端部分と弾性嵌合可能に構成されてなる。
第二操作軸4は、棒状の部材であって、一端は上記第一操作軸3の筒部分の端部と弾性嵌合可能に、また他端は後述するロック機構5のロック軸5b端部と弾性嵌合可能に、それぞれ構成されてなる。また、第二操作軸4の側面には段部4aが設けられてなる。施工完了時、第二操作軸4は、被接続部C2および接続部C1の中心軸と同軸となるようにして、後述するロック軸を配置・接続してなる。
電動駆動部6は、操作部本体S1内に配置される部材であって、回転軸を有するモーター部材MOを備えてなり、基板部材ESから供給された電力を該モーター部材MOに供給することで、モーター部材MOの回転軸に備えられた歯車部材6aを回転動作させる。尚、本実施例のモーター部材MOはステッピングモーターと呼ばれる、回転軸の回転数や回転の方向を管理できるモーターである。
基板部材ESは、板状部分に電子制御等を行うための電子部品等を配置し、配線した部材であって、給湯器の操作パネルなど、電動操作用の操作部に接続されるように構成されてなり、モーター部材MOを備えた電動駆動部6の歯車部材6aの回転動作を制御する動作制御と、電気的に排水口の開閉を指示する電動操作部からの操作信号を処理する通信制御の両方の機能を有してなる。
動作変換部材14は、モーター部材14が発生させる回転運動の動作を、ロック軸5bの動作に必要な直線運動の動作に変換させるための部材であって、筒体を、その中心軸を通過する平面にて等分したような形状からなり、その側面には歯車部材6aと歯合する歯合部14aが備えられてなり、またその内部には第二操作軸4の段部4aに対し一方向だけ係合する係止段部14bが備えられてなる。
尚、動作変換部材14は、施工完了時、操作軸の一部となる第二操作軸4に沿ってのみ移動可能なように、操作部本体S1内に配置される。
ここで、動作変換部材14を介した、第二操作軸4とモーター部材MOに接続された歯車部材6aとの連結について以下に詳述する。
第二操作軸4には段部4aがあり、この段部4aを覆うようにして動作変換部材14を配置する。この時、図3に示したように、第二操作軸4の段部4aを、動作変換部材14の係止段部14bが覆うように配置する。
また、このように配置することによって、図4に示したように、動作変換部材14の歯合部14aが歯車部材6aと歯合するように配置される。
このように、動作変換部材14を介して、第二操作軸4とモーター部材MOに接続された歯車部材6aとは連結されてなり、歯車部材6aが回転すると、歯合する動作変換部材14が回転に対応して上下動する。
操作ボタン13は、遠隔操作式排水栓装置を手動にて操作する場合の使用者が、押し込み操作を行うための部材であって、円盤部分と該円盤部分の周縁から垂下される筒状部分、及び円盤部分の中央下部より下方に垂下される軸部分とから構成され、前述の通り、第一ケーシング1の開口部1a内を、開口部1aの上端から、下方に向かって13ミリメートルの範囲で上下動するように構成されている。
接続部材C3は、略C字形状を成す部材であって、第一ケーシング1と電動駆動部6、及び電動駆動部6と第二ケーシング2の接続部C1と被接続部C2が接続された状態において、側面方向から差し込むことで、接続状態を維持固定するように機能する。尚、特に詳述しないが、この接続部C1と被接続部C2の接続はOリング等を介して水密的に、且つ回動可能に接続される。
また、接続部材C3を接続部C1および被接続部C2の側面方向から抜脱することで、接続部C1と被接続部C2の接続を解除することが可能である。
弁体7は、排水口8aの上端を閉口する略円盤状の部材であって、その下面中央部分に、後述するレリースワイヤ11の弁軸11c先端との嵌合部分を構成されてなる。
レリースワイヤ11は、側面方向に可撓性を、軸方向に剛性を有したアウターチューブ11aと、該アウターチューブ11a内に摺動自在に配置される、側面方向に可撓性を、軸方向に剛性を有したインナーワイヤ11bと、インナーワイヤ11bの一方の端部に備えられた棒状の硬質の部材である弁軸11cと、レリースワイヤ11内に備えられ、インナーワイヤ11bをアウターチューブ11aに対して弁軸11cとは反対側に付勢する戻りスプリングと、から構成されてなる。
ガイド管12は、操作部Sから挿通部10bまでを接続する、軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えた軟質塩ビ材からなるチューブ管であって、操作部Sに挿通されたレリースワイヤ11を、挿通部10bから継手部材10内部にガイドするように構成されてなる。
【0016】
ロック機構5は、内部に傾斜歯T1等を設けた円筒形状のロック機構本体5aと、該ロック機構本体5a内を貫通するようにして進退自在に挿通配置される軸部としてのロック軸5bと、ロック軸5bに回動自在且つロック軸5bに沿って移動不可能に取り付けられた歯車である回転ギア5cから構成されてなる。
ロック軸5bは上述の通り、略棒状の部材であって、後述する回転ギア5cを回動自在且つ軸方向に沿って移動不可能に備えてなり、上方の端部は第二操作軸4に、下方の端部はインナーワイヤ11bに、それぞれ接続される。
回転ギア5cは、平面視リング状の筒状部材であって、その側面より外側に向けて突出するようにして係止歯5dが形成されている。係止歯5dは正面視左右非対称形状を成す略三角形状であり、回転ギア5cの側面より90°毎に形成されている。
ロック機構本体5aは、略円筒形状をした部材であって、その内部に、ロック軸5bを進退自在に収納すると共に、内部の機構によって、ロック軸5bを、上限まで上方に上昇した状態/下方に降下した状態で固定、のいずれかの状態に維持固定する機能を有してなる。更に、後述する構成により、下方に降下した状態で固定から、更に下方にロック軸5bを降下させることが可能である。
ロック機構本体5a内部について詳述すると、ロック機構本体5a内部には、以下に記載する、傾斜歯T1、下溝部T2、保持歯T3、上溝部T4、をそれぞれ備えてなる。
傾斜歯T1はロック機構本体5a内の内周全周に亘って形成された鋸歯状であって、ロック機構本体5a内の中間地点に形成され、ロック軸5bが手動操作時の下限まで下降した際に回転ギア5cの係止歯5dが当接する位置に形成されている。即ち、傾斜歯T1はロック軸5bが上下動する都度、回転ギア5cを回動させる。
また、傾斜歯T1はその下端に、係止歯5dが内部に配置可能な程度の幅を有する下溝部T2を備えてなる。
保持歯T3はロック機構本体5a内の内周において、周方向に上溝部T4を挟んで所定の間隔で形成されており、上記傾斜歯T1と対向する位置に傾斜面を形成されてなり、この傾斜面により、保持歯T3に回転ギア5cの係止歯5dが押し当てられる都度、回転ギア5cが回動する。尚、上溝部T4は上記回転ギア5cの係止歯5dが内部に配置可能な程度の幅を有している。
ここで、係止歯5dは約3ミリメートル、上溝部T4は約11ミリメートル程度、保持歯T3と傾斜歯T1との間は約3ミリメートル程度、下溝部T2は約20ミリメートル程度、それぞれ上下方向に高さ幅を有してなる。
また、ロック機構本体5aはレリースワイヤ11のアウターチューブ11a端部に固定されてなる。
また、ロック軸5bは、同軸上に配置されるレリースワイヤ11のインナーワイヤ11bが、戻りスプリングの作用により常時後退方向、即ち操作部S側に付勢されているため、常時インナーワイヤ11b端部に当接され、後退方向、ロック軸5bにおいては上昇方向に付勢された状態となる。
また、ロック機構5は、後述するように、第二ケーシンク2の被接続部C2内に配置固定されて、施工完了時、操作部本体S1内部に配置される。
【0017】
以下に、上記遠隔操作式排水栓装置に採用されているロック機構5の動作について説明する。尚、以下の説明では、ロック軸5bにはレリースワイヤ11に組み込まれた戻りスプリングにより、常に操作部S側に後退しようとするインナーワイヤ11bの応力を受けて、常に上昇する方向の付勢を受けているものとする。
また、以下の説明では、特に記載しない限り、ロック軸5が上限まで上昇した状態、即ち係止歯5dが上溝部T4の上端に達している状態を「上端の状態」とし、この状態から記載した長さ分降下した場合、「上端から○○ミリメートル降下した状態」と記載する。例えばロック軸5bが上限の位置から10ミリメートル下がった場合は、「上端から10ミリメートル降下した状態」と記載する。
まず、図7(a)に示したように、ロック軸5bに備えられている回転ギア5cの係止歯5dが、上溝部T4の上端の位置まで上昇した上端の状態とする。
この状態よりロック軸に押し込み操作を行い、ロック軸を13ミリメートル程度降下させると、図7(a)の矢印で示したように、ロック軸5bの下降に伴い係止歯5dも下降する。
前述の通り、上溝部T4の高さ幅は約11ミリメートル程度、保持歯T3と傾斜歯T1との間の高さ幅は約3ミリメートル程度であるから、全高3ミリメートル程度の係止歯5dが上端の状態から13ミリメートル降下すると、回転ギア5cの係止歯5dの下端が傾斜歯T1と当接する位置まで降下し、傾斜歯T1の傾斜面に沿って所定角度回転する。
そして、ロック軸5bへの押し込み操作を解除すると、ロック軸5bはインナーワイヤ11bの付勢により上昇し、ロック軸5b及び回転ギア5cが上昇する。しかし、上述の通り、回転ギア5cは傾斜歯T1によって所定角度回転されており、回転ギア5cの係止歯5dは、上溝部T4の位置からずれて、保持歯T3の直下に位置している。従って、図7(b)に示すように、インナーワイヤ11bの付勢により上昇した係止歯5dは保持歯T3に形成された傾斜面によって更に所定角度回動した後に保持歯T3と噛合し、回転ギア5c及びロック軸5bの高さ位置が保持固定される。この時の係止歯5dの高さ位置は、上端の状態から約10ミリメートル降下した状態となる。
【0018】
この図7(b)の状態より再びロック軸5bに押し込み操作を行い、ロック軸5bを上端の状態から13ミリメートル程度降下した位置まで降下させると、上記と同様の過程を経て、図8(a)に示したように、係止歯5d下端が傾斜歯T1と当接し、傾斜歯T1の傾斜面に沿って所定角度回転する。
更にロック軸5bへの押し込み操作を解除すると、ロック軸5bはインナーワイヤ11bの付勢により矢印で示したように上昇し、ロック軸5bと共に上昇した係止歯5dは保持歯T3に形成された傾斜面によって所定角度回動した後に上溝部T4に案内されて、図8(b)に示した状態、又は図7(a)に示した当初の状態に戻る。
【0019】
更に本実施例のロック機構5においては、図9等に示したように、傾斜歯T1の傾斜の下端に連続するようにして下溝部T2を備えてなる。このため、上端の状態に対してロック軸5bを30ミリメートル押し込むと、係止歯5dが、当初上溝部T4上端にあった場合は図9(a)のようにして、保持歯5dが保持歯T3と係止していた場合は図9(b)のようにして、係止歯5dは傾斜歯T1の傾斜面に案内され、溝部T2の、上端の状態から30ミリメートル降下した高さ位置まで移動し、またロック軸5bも上端の状態から30ミリメートル降下した位置まで移動させることができる。
但し、ロック機構5においては、このロック軸5bが上端の状態から30ミリメートル降下した高さ位置となる状態を維持固定する機械的機能は無い。従って、この状態を維持固定するためには、ロック機構5の機構とは別の維持固定方法が必要になる。
上記状態から、ロック軸5bへの押し込み状態操作を解除すると、ロック軸5bはインナーワイヤ11bの付勢により上昇し、係止歯5dは保持歯T3によって所定角度回転する。
このため、ロック軸5bの押し込み操作前に係止歯5dが上溝部T4にあった場合は係止歯5dが保持歯T3と歯合した状態に、係止歯5dが保持歯T3と歯合した状態にあった場合は、係止歯5dが上溝部T4にあった状態に、それぞれ移動して操作は完了する。
【0020】
上記のように構成された遠隔操作式排水栓装置を用いた排水配管は、以下のようにして浴槽Bに施工される。
尚、操作部本体S1は、工場などにおいて、モーター部材MO及び基板部材ESは操作部本体S1内に配置・固定され、被接続部C2から接続部C1を貫通するようにして第二操作軸4が配置された上で、歯車部材6a、動作変換部材14を介して歯車部材6aと第二操作軸4が連結された状態に加工されて施工現場に搬入されてなる。
以下に、実施例の施工方法について、図面を参照しつつ説明する。
まず、ガイド管12の一端に継手部材10の挿通部10bを、他端に第二ケーシング2の端部を接続する。
次に、レリースワイヤ11の操作部S側端部にロック機構5を嵌合により接続した上で、第二ケーシング2の上流側端部からレリースワイヤ11の弁軸11c側端部を挿通する。レリースワイヤ11の弁軸11c側端部が継手部材10内に達した状態で、ロック機構5を第二ケーシング2内に弾性嵌合させて固定する。このようにして、ロック機構5を介してレリースワイヤ11端部が、第二ケーシング2に支持固定される。
次に、継手部材10の排出口10aを、排水を下水側に排出するための床下配管に接続する。
次に、浴槽Bの取付孔B1に排水口本体8を挿通し、排水口本体8のフランジ部8b下面を、取付孔B1周縁の上面に当接させる。更に、継手部材10の雌ネジを、排水口本体8の雄ネジに螺合させ、フランジ部8b下面と継手部材10上面とで取付孔B1周縁を挟持させて排水口本体8及び継手部材10を浴槽Bに固定させる。
次に、レリースワイヤ11の端部を排水口8aから引き上げた上で、支持部材9にレリースワイヤ11端部を接続し、更に排水口8a内に支持部材9を配置固定する。
次に、排水口8a内に配置された弁軸11cの先端に弁体7を嵌合させて取り付ける。
次に、第二ケーシング2の被接続部C2を、操作部本体S1の接続部C1に、接続部材C3を用いて接続させる。更に、ロック軸5bを第二操作軸4に嵌合させる。
次に、第一ケーシング1を浴槽Bの操作部取付孔B2に取り付ける。
次に、第一ケーシング1の接続部C1を、操作部本体S1の被接続部C2に、接続部材C3を用いて接続させる。
次に、第一ケーシング1の開口部1aから、第一操作軸3を挿入し、第二操作軸4の端部と嵌合させる。
更に、第一ケーシング1の開口部1a内に操作ボタン13を挿入し、操作ボタン13が開口部1a内を上下動可能として、本発明の実施例の遠隔操作式排水栓装置を用いた排水配管の施工が完了する。尚、電動駆動部6と操作パネルなど電気操作関連の配線については記載しない手順の中で適宜行ったものとする。
この実施例では、第一操作軸3、第二操作軸4、ロック機構5のロック軸5bによって押し込み操作が加えられることによってロック機構5が動作し、排水口8aを開閉する。即ち、第一操作軸3、第二操作軸4、ロック機構5のロック軸5bを組み合わせたものが、本実施例での操作軸である。
【0021】
以下に、上記実施例の遠隔操作式排水栓装置の使用方法を説明する。
まず、手動操作による排水口8aの開閉方法について説明する。
上記のように構成した排水栓装置を使用する場合、まず弁体7を降下して、排水口8aが図10のように閉口した状態とする。
この時、操作部S近傍は図3に示したような状態であり、ロック機構5においては、ロック軸5bはインナーワイヤ11に付勢されて、図7(a)に示したように係止歯5dが上溝部T4の上端にあって、ロック軸5bが最も上方に位置した状態、即ち「上端の状態」となっている。
またボタン部材13は、ロック軸5bに接続された第二操作軸4、第一操作軸3に押し上げられ、ボタン部材13の上面が開口部1aの上端位置にまで上昇している。
また、動作変換部材14は係止段部14bが第二操作軸4の段部4aに当接しているが押し込まない高さ位置に配置されている。この、排水口8aが閉口している状態において、係止段部14bが第二操作軸4の段部4aに当接しているが押し込まない高さ位置に配置されている状態の動作変換部材14の高さ位置を、以降動作変換部材14の「通常の高さ位置」と記載する。
この状態から操作ボタン13に押し込み操作を行う。前述のように、操作ボタン13は開口部1a内を、開口部1aの上端から13ミリメートル降下する高さ位置までしか押し込むことはできないように構成されている。このため、第一操作軸4は操作ボタン13の軸部分に押し込まれるものの、押し込みの深さは、上端の状態から13ミリメートルまでに制限される。押し込み操作を解除すると、段落0017に記載したように動作し、ロック軸5bは上端の状態から10ミリ程度下方に降下した状態で固定される。この時、操作部Sは図11のような状態であり、ロック機構5は図7(b)のような状態となる。このため、ロック軸5bに接続されているインナーワイヤ11bも排水口8a側に10ミリメートル突出し、インナーワイヤ11bの先端に取り付けられている弁軸11cも弁体7を10ミリメートル押し上げることで、排水口8aに対して、弁体7が10ミリメートル上昇した、図12のような状態で排水口8aが開口する。
この状態から再び操作ボタン13に押し込み操作を行うと、やはり操作ボタン13は開口部1a内を開口部1aの上端から13ミリメートル降下する高さ位置までしか押し込むことはできないように制限されている。このため、操作軸5bは上端の状態から13ミリメートル降下する高さ位置で停止し、使用者が押し込み操作を解除すると、段落0017に記載した手順を経て、ロック軸5bの固定は解除され、再びロック軸5bは上端の状態に復帰する。このため、ロック軸5bに接続されているインナーワイヤ11bも操作部S側に後退し、インナーワイヤ11bの先端に取り付けられている弁軸11cも弁体7を降下させるため、排水口8aが弁体7により閉口される。
以降、同様の操作を繰り返すことで、排水口8aを遠隔操作により開閉することができる。
この手動操作においては、操作ボタン13の押し込み長さは13ミリメートルで、排水口8aと弁体7の開口時の高低差は10ミリメートル程度である。
【0022】
次に、電動操作による排水口8aの開閉方法について説明する。
ここで、本実施例の遠隔操作式排水栓装置においては、段落0021に記載した、手動操作と同じ程度に排水口8aから弁体7を上昇させる「通常開口状態」と、手動操作以上に排水口8aから弁体7を大きく上昇させる「大開口状態」の二種類の開口状態を備える。
まず、「通常開口状態」について説明する。尚、ここでは「弁体7と排水口8aの開口した時の高低差が、手動操作と同様に10ミリメートルとなる場合」を指して「通常開口状態」と記載している。このため、排水口8aが「閉口」している状態でも、その後の操作によって開口が行われ、弁体7と排水口8aの開口時の高低差が10ミリメートルとなる場合は、「通常開口状態」と記載する。
通常開口状態において、操作パネル等を介して排水口8aを開閉する指示を遠隔操作式排水栓装置に行うと、モーター部材MOが動作し、歯車部材6aが回転数を管理された状態で回転することで、動作変換部材14を通常の状態から図13に示したような状態に移行させる。この時、動作変換部材14の降下の幅は、手動操作と同じ13ミリメートルである。動作変換部材14は、係止段部14bにて第二操作軸4の段部4aに当接するように構成されており、動作変換部材14が13ミリメートル降下すると、それに連動して第二操作軸4も降下し、第二操作軸4に接続されているロック軸5bも降下して、係止歯5dが傾斜歯T1に当接して回転する。その後モーター部材MOは、歯車部材6aが回転数を管理された状態で逆方向に回転して、動作変換部材14を通常の状態の位置、つまり図11の位置に戻す。
このように、段落0021に記載した手動操作において、使用者が操作ボタン13に押し込み操作を行うことでロック軸5bを動作させることに代えて、上記通常開口状態では、動作変換部材14が第二操作軸4に押し込み操作を行うことで、ロック軸5bを動作させることができる。この時のロック軸5bに行われる動作・作用は、段落0021に記載した手動操作の場合と全く同じであり、このため、段落0021に記載した手動操作による排水口8aの開閉と同様の動作により、操作パネルより排水口8aの開閉を指示する都度、排水口8aを遠隔操作により開閉することができる。
尚、ロック機構5が行う動作は、手動操作でも、通常開口状態の電動操作でも同じであるため、手動操作により開口した排水口8aを電動操作により閉口する、といった対応も可能である。
【0023】
次に、電動操作により手動操作以上に排水口8aから弁体7を大きく上昇させる「大開口状態」について説明する。
操作パネルより、遠隔操作式排水栓装置に、大開口にて排水口8aを開口する指示を行うと、モーター部材MOが動作し、歯車部材6aが回転数を管理された状態で回転することで、動作変換部材14を上端の状態に対して30ミリメートル降下した位置に移動させ、それに伴ってロック軸5bも降下する。排水口8aが閉口していた状態、即ちロック機構5の係止歯5dが上溝部T4上端に位置していた場合は、図9(a)のように、係止歯5dは上溝部T4を降下し、傾斜歯T1の傾斜面に沿って回転して下溝部T2まで案内され、そのまま下溝部T2の下端近傍、上端の状態の位置から30ミリメートル下がった位置まで降下し、対応する位置までロック軸5bも降下する。
また、排水口8aが開口していた状態、即ちロック機構5の係止歯5dが保持歯T3と歯合していた場合は、図9(b)のように、係止歯5dは動作変換部材14の係止段部14bが第二操作軸4の段部に当接するまではその位置のままであり、動作変換部材14の係止段部14bが第二操作軸4の段部に当接した後は保持歯T3から傾斜歯T1まで降下し、傾斜歯T1の傾斜面に沿って回転して下溝部T2まで案内され、下溝部T2の下端近傍、上端の状態の位置から30ミリメートル下がった位置まで降下し、対応する位置までロック軸5bも降下する。
ロック軸5bはインナーワイヤ11bを介して弁体7を押し上げるため、ロック軸5bが排水口8aの閉口状態より30ミリメートル降下した状態においては、操作部Sは図14に示したように、弁体7は図15に示したように、排水口8aから30ミリメートル上昇した状態となる。
ロック機構5自体にはこのロック軸5bが排水口8aの閉口状態より30ミリメートル降下した状態を維持固定する機能は無いが、モーター部材MOは電力が供給されない限り動作しないため、あるいは意図的にその「回転しない状態」を維持固定することができる。上記した「弁体7が排水口8aから30ミリメートル上昇した状態」は、「モーター部材MOが動作しないことにより、弁体7が排水口8aから30ミリメートル上昇し、且つ機械的に移動を止めて固定された、排水口8aの開口した状態」である。
尚、操作ボタン13はその上面が開口部1aの上端となる位置から13ミリメートルしか降下できないが、操作ボタン13は第一操作軸3に対し当接しているだけで接続されてはいないので、部材の破損や嵌合が外れる等の問題は生じない。
一方で、上記「大開口状態」の際には、操作ボタン13は第一操作軸3に対し完全に離間しているため、操作ボタン13を介した、手動操作による排水口8aの開閉は行うことはできない。
上記「大開口状態」は、操作パネルに「大開口状態」を解除する指示を行うことで解除される。具体的には、「大開口状態」を解除する指示を行うことで、モーター部材MOの歯車部材6aが、動作変換部材14を上昇させる方向に回転し、動作変換部材14を通常の高さ位置に戻す。
すると、第二操作軸4も上昇し、第二操作軸4に接続されているロック軸14もインナーワイヤ11の付勢により上昇する。結果、「大開口状態」が行われる前の状態が、排水口8aが閉口していた場合には弁体7が上昇して排水口8aを開口した状態となり、排水口8aが開口していた場合には弁体7が降下して排水口8aを開口した状態となる。又、どちらの場合においても電動操作における通常開口状態、又は手動操作が可能な状態に戻る。
【0024】
また、本実施例の遠隔操作式排水栓装置には、上記「大開口状態」と連動した「高速排水モード」及び、「自動洗浄モード」を備える。
【0025】
「高速排水モード」は、操作パネルに高速排水モードを指示することで実施される。
上記の大開口状態と同じ動作をモーター部材MOが行うことにより、排水口8aから弁体7を30ミリメートルの高さ位置まで離間させ、排水性能を向上させることで、通常の、排水口8aから弁体7を10ミリメートルの高さ位置まで離間させた排水よりも高速に排水を行うことができる。
この「高速排水モード」は、開口の目的が排水を早く行う事であると明確である。そこで、事前に浴槽Bの容量と、それに対する高速排水モードでの排水性能から、「浴槽Bの満水状態から、高速排水モードによって排水を行った場合に、排水が確実に完了するだけの時間」を「排水完了時間」としてプログラムに組み込んであり、高速排水モードから排水完了時間が経過した後は、自動的に大開口状態を解除して通常開口状態に復帰するようにプログラムされている。これによって、作業完了後に大開口状態を解除する手間がかからず、使用者が容易に利用できる。
【0026】
「自動洗浄モード」は、操作パネルより浴槽Bの自動洗浄を指示したときに連動して実施される。
本実施例の浴槽Bでは、自動洗浄機能と呼ばれる、浴槽B内に洗剤を自動噴霧し、更に浴槽B内に自動的に洗浄水を放水して、浴槽B内を自動で機械的に洗浄する自動洗浄機能が付加された浴槽Bであり、この自動洗浄が行われる間、大開口状態と同じ動作をモーター部材MOが行うことにより、排水口8aから弁体7を30ミリメートルの高さ位置まで離間させる。弁体7が排水口8aから30ミリメートルと大きく離間する為、洗浄の際に発生した洗剤などの泡が、20ミリメートルほどの大きさであっても、排水口8aと弁体7の間を支障なく通過して排水口8aから排出されるため、好適に排出を行うことができる。
この「自動洗浄モード」における大開口状態は、「自動洗浄が開始されてから自動洗浄が終了し、洗浄時の泡などが排出されるのに充分な時間」を「洗浄時間」としてプログラムに組み込んであり、自動洗浄モードから洗浄時間が経過した後は、自動的に大開口状態を解除して通常開口状態に復帰するようにプログラムされており、作業完了後に大開口状態を解除する手間がかからず、使用者が容易に利用できる。
【0027】
本発明の実施例は以上のようであるが本発明は上記実施例に限定される物ではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば図16に示した参考図のような遠隔操作式排水栓装置によっても、本発明を実施することができる。
図16に示した遠隔操作式排水栓装置では、モーター部材MOに接続された歯車部材6aを動作変換部材14に接続し、動作変換部材14をインナーワイヤ11bの一端に接続し、他端を排水口8aに配置された弁体7に接続する。
この構造であれば、モーター部材MOが管理された回転を行うことで、動作変換部材14の昇降位置を管理することができ、動作変換部材14に連動してインナーワイヤ11bが進退して弁体7を昇降させることができるため、電動操作による遠隔操作式排水栓装置とすることができる。
ここで、モーター部材MOの歯車部材6aの回転数の管理により、排水口8aと弁体7との開口時の高さ位置を複数設定することで、排水口8aの開口時における弁体7の高さ状態が異なる開口状態を有した遠隔操作式排水栓装置とすることができる。
【0028】
また、上記実施例では、遠隔操作式排水栓装置が採用される槽体は浴槽Bであるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、洗面台、流し台等、どのような槽体に採用しても構わない。
【符号の説明】
【0029】
1 第一ケーシング 1a 開口部
2 第二ケーシング 3 第一操作軸
4 第二操作軸 4a 段部
5 ロック機構 5a ロック機構本体
5b ロック軸 5c 回転ギア
5d 係止歯 6 電動駆動部
6a 歯車部材 7 弁体
8 排水口本体 8a 排水口
8b フランジ部 9 支持部材
10 継手部材 10a 排出口
10b 挿通部 11 レリースワイヤ
11a アウターチューブ 11b インナーワイヤ
11c 弁軸 12 ガイド管
13 ボタン部材 14 動作変換部材
14a 歯合部 14b 係止段部
B 浴槽 B1 取付孔
B2 操作部取付孔 C1 接続部
C2 被接続部 C3 接続部材
MO モーター部材 MK 回転軸
S 操作部 S1 操作部本体
T1 傾斜歯 T2 下溝部
T3 保持歯 T4 上溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16