(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20231107BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20231107BHJP
B62K 25/08 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
F16F9/32 K
F16J15/10 K
F16J15/10 L
B62K25/08 Z
(21)【出願番号】P 2019211205
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】石黒 一暢
(72)【発明者】
【氏名】野崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】陣内 孝彦
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-278333(JP,A)
【文献】実開昭63-013397(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
F16J 15/00-15/14
B62K 25/00-27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作動油を収容する筒部材と、
前記筒部材の端部の外周に螺着されて前記筒部材の端部を閉塞するキャップ部材と、
前記筒部材と前記キャップ部材との間を封止するシール部材とを備えた緩衝器であって、
前記キャップ部材は、筒部と、前記筒部の端部を閉塞する底部とを有し、
前記筒部は、内周に前記筒部材の端部の外周に螺着される螺子部を有する大径筒部と、前記大径筒部の底部側に設けられて前記大径筒部より内径が小径な小径筒部と、内周であって前記小径筒部と前記大径筒部との境に形成されて前記筒部材の端部における端面に対向する環状の段部とを有し、
前記シール部材は、前記筒部材の前記端面と前記段部との間で挟持される芯金と、前記芯金に一体に結合されて前記筒部材に当接する第一シール部と、前記芯金に一体に結合されて前記キャップ部材に当接する第二シール部とを有
し、
前記芯金の前記段部への接触面積が前記筒部材の前記端面の面積よりも大きく設定され、
前記芯金が、前記筒部材を前記キャップ部材へねじ込んだときに前記筒部材から軸方向の荷重を受ける
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記第二シール部は、前記段部に当接する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記第一シール部は、前記筒部材の内周に当接する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記芯金に対して前記第一シール部と前記第二シール部とがインサート成型によって結合されている
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記芯金は、前記筒部材の前記端部の内周に対向する筒状のシール保持筒と、前記シール保持筒の端部の外周に連なって前記筒部材の前記端面と前記段部との間で挟持されるシート部とを有し、
前記シール保持筒は、前記シール保持筒の前記端部を外周側に湾曲して形成された湾曲面を有しており、
前記第二シール部は、前記湾曲面に一体に結合されている
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝器としては、たとえば、鞍乗車両の前側の操向輪を支持するとともに伸縮時に減衰力を発揮して車体の振動を抑制するフロントフォークとして利用されるものがある。
【0003】
このようなフロントフォークでは、車体側チューブと車体側チューブ内に移動自在に挿入される車軸側チューブと備えるとともに、車軸側チューブの下端を閉塞するキャップ部材を前述操向輪の車軸を保持するアクスルブラケットとして利用している。
【0004】
フロントフォーク内には減衰力の発揮のために作動油が充填されているため、車軸側チューブとアクスルブラケットとの間を封止する必要がある。アクスルブラケットは、車軸側チューブの下端外周に設けられた螺子部に螺着される筒部を備えた有底筒状とされていて、筒部の内周にOリングが収容される環状溝を備えている。アクスルブラケットの環状溝に収容されたOリングは、車軸側チューブの最下端の外周であって螺子部を避ける位置に密着して、アクスルブラケットと車軸側チューブとの間をシールしてフロントフォーク内を油密に封止している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように構成された緩衝器では、前述したようにOリングを金属製のキャップ部材の筒部の内周に装着するために筒部の内周を切削して環状溝を形成する加工が必要となる。このような切削加工では、金属の切削屑が生じるが環状溝内を洗浄しても環状溝内に切削屑が取り残されてしまう可能性がある。環状溝内に切削屑が取り残された状態でOリングを環状溝に装着してしまうと、切削屑によってOリングが傷んでシール性能が劣化してしまう可能性がある。そこで、環状溝内に切削屑が取り残されているかを厳重に確認するのであるが、環状溝がキャップ部材の深い位置にあることから環状溝内を視認して切削屑の有無を確認する作業は時間と労力を要する作業となっている。さらに、キャップ部材の筒部の内周に形成される環状溝にOリングを装着するために、この装着作業も容易ではなく装着作業にも時間と労力を要している。つまり、従来の緩衝器では、製造作業が容易ではなく時間と労力が必要なっていた。
【0007】
また、キャップ部材の筒部の内周に環状溝を設けることからキャップ部材における筒部の肉厚を確保しなくてはならないためキャップ部材の外径が大径化してしまう。
【0008】
なお、フロントフォーク以外にも、緩衝器のアウターシェルの端部を閉塞するキャップ部材に車軸或いは車体に連結可能なブラケットを設けて緩衝器を車両に取り付ける例も周知であるが、このような緩衝器でも、同様に切削屑の有無の確認作業とOリングの装着作業に時間と労力が必要となるとともに、キャップ部材が大型化してしまうという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、容易に製造できシール性の劣化を招かず、キャップ部材の大型化を抑制できる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段における緩衝器は、内部に作動油を収容する筒部材と、筒部材の端部の外周に螺着されて筒部材の端部を閉塞するキャップ部材と、筒部材とキャップ部材との間を封止するシール部材とを備え、キャップ部材が筒部と筒部の端部を閉塞する底部とを有し、筒部が内周に筒部材の端部の外周に螺着される螺子部を有する大径筒部と、大径筒部の底部側に設けられて大径筒部より内径が小径な小径筒部と、内周であって小径筒部と大径筒部との境に形成されて筒部材の端部における端面に対向する環状の段部とを有し、シール部材が筒部材の端面と段部との間で挟持される芯金と、芯金に一体に結合されて筒部材に当接する第一シール部と、芯金に一体に結合されてキャップ部材に当接する第二シール部とを有し、芯金の段部への接触面積が筒部材の端面の面積よりも大きく設定され、芯金が筒部材をキャップ部材へねじ込んだときに筒部材から軸方向の荷重を受けることを特徴とする。
【0011】
このように構成された緩衝器では、キャップ部材の筒部の内周にOリングを収容する環状溝を設けることなくシール部材を設置できるので、切削屑がキャップ部材内に取り残されることがなく、また、異物がキャップ部材内に侵入していても組立作業時に異物を容易に視認でき除去できる。したがって、このように構成された緩衝器では、シール部材を切削屑や異物で痛めてしまうことがなく、切削屑や異物の有無の確認も容易となるので、緩衝器の製造作業も非常に容易となる。
【0012】
また、キャップ部材の筒部の内周に環状溝を設ける必要がなくなるので、キャップ部材の筒部の肉厚の確保も不要となって、キャップ部材の外径の大径化を防止できる。
【0013】
さらに、第二シール部が段部に当接してもよい。このように構成された緩衝器によれば、シール部材における第二シール部が筒部材から受ける軸力でキャップ部材の段部に押圧されて段部に密着してシール性が向上する。
【0014】
また、第一シール部が筒部材の内周に当接してもよい。このように構成された緩衝器によれば、車軸側チューブの端部の面積が小さな端面に当接する場合と比較して、第一シール部を傷めてシール性を損なう心配もない。
【0015】
さらに、芯金に対して第一シール部と第二シール部とがインサート成型によって結合されてもよく、このように構成された緩衝器によれば、芯金に第一シール部と第二シール部を一体的に結合しつつ成型でき、シール部材を容易に製造できる。また、芯金は、筒部材の端部の内周に対向する筒状のシール保持筒と、シール保持筒の端部の外周に連なって筒部材の端面と段部との間で挟持されるシート部とを有し、シール保持筒はシール保持筒の端部を外周側に湾曲して形成された湾曲面を有しており、第二シール部は湾曲面に一体に結合されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
よって、本発明の緩衝器によれば、容易に製造できシール性の劣化を招かず、キャップ部材の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態における緩衝器の断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態における緩衝器のシール部材の拡大断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態における緩衝器のシール部材の一変形例の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。本実施の形態における緩衝器Dは、
図1および
図2に示すように、内部に作動油を収容する筒部材としての車軸側チューブ1と、車軸側チューブ1の端部である図中下端1aの外周に螺着されて車軸側チューブの下端1aを閉塞するキャップ部材としてのアクスルブラケット2と、車軸側チューブ1とアクスルブラケット2との間を封止するシール部材Sとを備えている。
【0019】
本実施の形態における緩衝器Dは、図示しない鞍乗車両の前輪を懸架するフロントフォークとして機能するため、車軸側チューブ1が出入り可能に挿入される車体側チューブ4を備える他、車軸側チューブ1と車体側チューブ4との間に介装されて伸縮時に減衰力を発揮するダンパカートリッジDCと、車軸側チューブ1と車体側チューブ4との間に介装されて両者を離間するよう付勢する懸架ばね13とを備え、車軸側チューブ1と車体側チューブ4とで内部に形成される空間内には図示しない作動油が貯留されている。
【0020】
車体側チューブ4の上端は、ヘッドキャップ11によって閉塞されている。また、車体側チューブ4の下端内周には、車軸側チューブ1の外周に摺接するシール4aが設けられており、車体側チューブ4と車軸側チューブ1との間が封止されている。車軸側チューブ1の下端1aとアクスルブラケット2との間はシール部材Sによって封止されているので、車体側チューブ4と車軸側チューブ1とで形成される空間は気密に封止されている。なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、車体側チューブ4内に車軸側チューブ1が挿入されているが、逆に、車体側チューブ4を小径として車軸側チューブ1内に挿入するようにしてもよい。
【0021】
ダンパカートリッジDCは、詳しくは図示しないが、たとえば、アクスルブラケット2にボルトBによって連結されるシリンダ10と、車体側チューブ4の上端に装着されたヘッドキャップ11に連結されてシリンダ10内に移動自在に挿入されるピストンロッド12と、シリンダ10内に挿入されてピストンロッド12に連結される図外のピストンと、図外の減衰バルブとを備えており、伸縮する際に車軸側チューブ1と車体側チューブ4の軸方向の相対移動を妨げる減衰力を発揮する。また、ダンパカートリッジDCは、伸縮時に車軸側チューブ1と車体側チューブ4とで形成される空間とシリンダ10内とで作動油をやり取りして、減衰力の発揮とシリンダ10内に出入りするピストンロッド12の体積補償を行う。なお、ダンパカートリッジDCの構成は、前述した構造に限定されるものではなく、また、ダンパカートリッジDCは、伸長或いは収縮の一方のみで減衰力を発揮するものでもよい。さらに、ダンパカートリッジDCは、シリンダ10が車軸側チューブ1に、ピストンロッド12が車体側チューブ4に連結されているが、図中で天地逆向きに設置されてもよい。
【0022】
また、緩衝器Dは、フロントフォークとして利用される場合、ダンパカートリッジDCを省略して懸架ばね13による付勢力のみの発揮で車軸側チューブ1と車体側チューブ4との接近に対して抵抗する力を発揮するものであってもよい。また、懸架ばね13は、図示したところでは、コイルスプリングとされているが、前記空間に加圧した気体を封入して形成されるエアばねとされてもよい。
【0023】
つづいて、筒部材としての車軸側チューブ1の下端1aの外周には、螺子部1bが設けられており、前述のように、図示しない鞍乗車両の前輪の車軸を保持するアクスルブラケット2が装着され、車軸側チューブ1の下端1aの開口部がアクスルブラケット2によって閉塞される。
【0024】
キャップ部材としてのアクスルブラケット2は、
図2に示すように、車軸側チューブ1の下端1aの外周に螺着される筒部21と、筒部21の
図2中下端を閉塞する底部22と、底部22の下方に設けられて図示しない前輪の車軸を把持する環状の把持部23とを備えている。そして、アクスルブラケット2は、車軸側チューブ1の下端1aに螺着されると車軸側チューブ1の下端1aを閉塞する。なお、アクスルブラケット2は、フロントフォークとして利用されるため、鞍乗車両のブレーキ等を支持する支持片24,25を備えている。
【0025】
筒部21は、内周に筒部材としての車軸側チューブ1の下端1aの外周に螺着される螺子部21bを有する大径筒部21aと、大径筒部21aの底部22側に設けられて大径筒部21aより内径が小径な小径筒部21cと、内周であって小径筒部21cと大径筒部21aとの境に形成される環状の段部21dとを備えて構成されている。
【0026】
筒部21の大径筒部21a内には、車軸側チューブ1が挿入されるとともに、螺子部21bに車軸側チューブ1の螺子部1bが螺着されてアクスルブラケット2と車軸側チューブ1とが連結される。車軸側チューブ1の下端1aの端面1cは、アクスルブラケット2の筒部21の内周に形成された段部21dに対向している。
【0027】
そして、車軸側チューブ1をアクスルブラケット2に螺着する際、予め筒部21内にシール部材Sが挿入してあり、車軸側チューブ1をアクスルブラケット2にねじ込んでいくと、シール部材Sが車軸側チューブ1の下端1aと段部21dとの間で挟持される。このようにシール部材Sは、車軸側チューブ1とアクスルブラケット2とに挟持されて車軸側チューブ1とアクスルブラケット2とに固定される。
【0028】
シール部材Sは、
図2および
図3に示すように、車軸側チューブ1の下端1aの端面1cと段部21dとの間で挟持される芯金5と、芯金5に一体に結合されて車軸側チューブ1に当接する第一シール部6と、芯金5に一体に結合されてアクスルブラケット2に当接する第二シール部7とを備えている。
【0029】
芯金5は、車軸側チューブ1の下端1aの内周に対向する筒状のシール保持筒5aと、シール保持筒5aの下端外周に連なって端面1cと段部21dとの間で挟持されるフランジ状のシート部5bとを備えている。
【0030】
シール保持筒5aは、下端部が外周側に湾曲した形状とされている。そして、シール保持筒5aの外周には、車軸側チューブ1の下端1aの内周に当接する第一シール部6が一体に取り付けられており、また、シール保持筒5aの下端内周にはアクスルブラケット2の段部21dに当接する第二シール部7が一体に取り付けられている。
【0031】
第一シール部6は、芯金5に一体的に結合されており、本実施の形態ではシール保持筒5a側から車軸側チューブ1の内周に向けて突出する二つの環状のシールリップ6a,6bを備えている。シールリップ6a,6bの外径は、車軸側チューブ1の内径よりも大径となっており、第一シール部6を車軸側チューブ1内に挿入すると、シールリップ6a,6bが弾性変形して車軸側チューブ1の下端1aの内周に密着する。
【0032】
第二シール部7は、芯金5のシール保持筒5aの下端の湾曲面に一体的に結合されており、本実施の形態では段部21dへ向けて突出する環状のシールリップ7aを備えている。そして、芯金5のシート部5bが車軸側チューブ1とアクスルブラケット2とで挟持されるとシールリップ7aが段部21dに押し付けられて弾性変形して段部21dに密着する。
【0033】
このようにシール部材Sの第一シール部6が車軸側チューブ1に密着し、第二シール部7がアクスルブラケット2に密着すると、シール部材Sによって車軸側チューブ1とアクスルブラケット2との間が封止される。
【0034】
また、シール部材Sは、前述のようにシート部5bが車軸側チューブ1の端面1cとアクスルブラケット2の段部21dとで挟み込まれることで、車軸側チューブ1とアクスルブラケット2とに固定されている。芯金5は車軸側チューブ1の端面1cとアクスルブラケット2の段部21dとで挟み込まれることで、車軸側チューブ1の端面1cと段部21dとが直接接触するのを阻止している。ここで、シート部5bの段部21dへの接触面積は、車軸側チューブ1の下端1aにおける端面1cの面積よりも大きくなるように設定されている。車軸側チューブ1をアクスルブラケット2へねじ込んでいくと、アクスルブラケット2の段部21dは車軸側チューブ1から軸方向の荷重を受ける。芯金5のシート部5bは、段部21dへの当接面積が車軸側チューブ(筒部材)1における端面1cの面積よりも大きく、芯金5が車軸側チューブ1の端面1cの面積よりも大きな面積で段部21dに接するので、段部21dが車軸側チューブ1から受ける面圧が低減され、段部21dを保護でき、段部21dが車軸側チューブ1から受ける軸力で変形するのを防止できる。
【0035】
このようなシール部材Sを得るには、芯金5を第一シール部6と第二シール部7を成型する図示しない型内に挿入して、前記型内に第一シール部6と第二シール部7となる樹脂を注入して成型するインサート成型すればよい。このようにインサート成型すれば、芯金5に第一シール部6と第二シール部7を一体的に結合しつつ成型でき容易に製造できる。なお、芯金5に第一シール部6と第二シール部7を溶着や接着してシール部材Sを製造してもよい。
【0036】
以上説明した通り、本実施の形態の緩衝器Dは、内部に作動油を収容する車軸側チューブ(筒部材)1と、車軸側チューブ(筒部材)1の下端(端部)1aの外周に螺着されて車軸側チューブ(筒部材)1の下端(端部)1aを閉塞するアクスルブラケット(キャップ部材)2と、車軸側チューブ(筒部材)1とアクスルブラケット(キャップ部材)2との間を封止するシール部材Sとを備え、アクスルブラケット(キャップ部材)2が筒部21と筒部21の端部を閉塞する底部22とを有し、筒部21が内周に車軸側チューブ(筒部材)1の下端(端部)1aの外周に螺着される螺子部21bを有する大径筒部21aと、大径筒部21aの底部22側に設けられて大径筒部21aより内径が小径な小径筒部21cと、内周であって小径筒部21cと大径筒部21aとの境に形成されて車軸側チューブ(筒部材)1の下端(端部)1aにおける端面1cに対向する環状の段部21dとを有し、シール部材Sが車軸側チューブ(筒部材)1の下端(端部)1aの端面1cと段部21dとの間で挟持される芯金5と、芯金5に一体に結合されて車軸側チューブ(筒部材)1に当接する第一シール部6と、芯金5に一体に結合されてアクスルブラケット(キャップ部材)2に当接する第二シール部7とを有する。
【0037】
このように構成された緩衝器Dでは、アクスルブラケット(キャップ部材)2の筒部21の内周にOリングを収容する環状溝を設けることなくシール部材Sを設置できるので、切削屑がアクスルブラケット(キャップ部材)2内に取り残されることがなく、また、異物がアクスルブラケット(キャップ部材)2内に侵入していても組立作業時に異物を容易に視認でき除去できる。したがって、本実施の形態の緩衝器Dでは、シール部材Sを切削屑や異物で痛めてしまうことがなく、切削屑や異物の有無の確認も容易となるので、緩衝器Dの製造作業も非常に容易となる。
【0038】
また、アクスルブラケット(キャップ部材)2の筒部21の内周に環状溝を設ける必要がなくなるので、アクスルブラケット(キャップ部材)2の筒部21の肉厚の確保も不要となって、アクスルブラケット(キャップ部材)2の外径の大径化を防止できる。加えて、アクスルブラケット(キャップ部材)2の筒部21の内周に環状溝を設ける必要がなくなるので、筒部21の螺子部21bを避ける位置に環状溝を設けるスペースを確保する必要もなくなるので、筒部21の軸方向長さも短くすることができる。
【0039】
さらに、車軸側チューブ(筒部材)1からの荷重を受ける芯金5に第一シール部6と第二シール部7を一体にしているので、アクスルブラケット(キャップ部材)2を保護できる。アクスルブラケット(キャップ部材)2の保護のために、段部21dと車軸側チューブ1との間にはワッシャを介装する必要があるが、芯金5がこの役割を果たしており、シール部材Sをこのように構成したので部品点数の増加も招かない。
【0040】
以上より、本実施の形態の緩衝器Dによれば、容易に製造できシール性の劣化を招かず、アクスルブラケット(キャップ部材)2の大型化を抑制できる。
【0041】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、第二シール部7が段部21dに当接している。このように構成された緩衝器Dによれば、シール部材Sにおける第二シール部7が車軸側チューブ(筒部材)1から受ける軸力でアクスルブラケット(キャップ部材)2の段部21dに押圧されて段部21dに密着してシール性が向上する。第二シール部7は、本実施の形態では、芯金5のシール保持筒5aの下端部であって拡径するように湾曲された湾曲面に一体的に結合されており、芯金5の前記湾曲面と段部21dとの間にできる隙間に配置されるから、車軸側チューブ1からの軸力で過剰に押しつぶされないので傷むこともない。なお、第二シール部7は、アクスルブラケット2に当接するシールリップ7aを備えており、シールリップ7aを備えることでアクスルブラケット2に対する接触面圧を高めて密にアクスルブラケット2を封止できる。第二シール部7は、シールリップ7aを複数備えていてもよく、また、シールリップ7aを備えずにアクスルブラケット2に当接するものであってもよい。
【0042】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、第一シール部6が車軸側チューブ(筒部材)1の内周に当接している。このように構成された緩衝器Dによれば、車軸側チューブ1の下端1aの面積が小さな端面1cに当接する場合と比較して、第一シール部6を傷めてシール性を損なう心配もない。また、芯金5のシール保持筒5aの外径と車軸側チューブ1の内径との差を適宜設計変更することによって、第一シール部6の車軸側チューブ1への接触面圧を任意に調節できる。なお、第一シール部6は、車軸側チューブ1に当接するシールリップ6aを備えており、シールリップ6aを備えることで車軸側チューブ1に対する接触面圧を高めて密に車軸側チューブ1を封止できる。第一シール部6におけるシールリップ6aの設置数は、任意であり、また、第一シール部6は、シールリップ6aを備えずに車軸側チューブ1に当接するものであってもよい。
【0043】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、芯金5に対して第一シール部6と第二シール部7とがインサート成型によって結合されているので、芯金5に第一シール部6と第二シール部7を一体的に結合しつつ成型でき、シール部材Sを容易に製造できる。
【0044】
なお、シール部材S1は、
図4に示すように構成されてもよい。
図4に示したシール部材S1は、芯金51と、芯金51に一体的に結合される第一シール部61と第二シール部71とを備えている。芯金51は、車軸側チューブ1の内周に対向する環状の第一シール保持筒51aと、第一シール保持筒51aの下端外周に連なるフランジ状のシート部51bを備える他、シート部51bの内周に連なってアクスルブラケット2の小径筒部21cの内周に対向する環状の第二シール保持筒51cを備えている。第一シール部61は、第一シール保持筒51aの内周に設けられており、車軸側チューブ1の下端1aの内周に当接氏、第二シール部71は、第二シール保持筒51cの内周に設けられており、アクスルブラケット2の小径筒部21cの内周に当接している。このようにシール部材S1を構成しても、車軸側チューブ1の内周に第一シール部61が当接し、アクスルブラケット2の筒部21の内周に第一シール部61が当接して、シール部材S1は車軸側チューブ1とアクスルブラケット2との間を封止できる。
【0045】
なお、前述したところでは、緩衝器Dがフロントフォークとして利用される態様を例に本発明を説明したが、緩衝器Dは、フロントフォーク以外にも鞍乗車両の後輪と車体との間に介装されるリヤクッションユニットとして利用されてもよいし、車両以外の緩衝器として利用されてもよい。このように、本発明は、筒部材をシリンダやアウターシェルとして、筒部材にねじ締結されるキャップ部材とを備えた緩衝器に具現化できる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・車軸側チューブ(筒部材)、1a・・・下端(端部)、1c・・・端面、2・・・アクスルブラケット(キャップ部材)、21・・・筒部、21a・・・大径筒部、21b・・・螺子部、21c・・・小径筒部、21d・・・段部、22・・・底部、5,51・・・芯金、6,61・・・第一シール部、7,71・・・第二シール部、D・・・緩衝器、S,S1・・・シール部材