(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】グリップに取り付け自在で好みの数値化されたグリップ圧を検知できる補助グリップシート装置
(51)【国際特許分類】
A63B 60/46 20150101AFI20231107BHJP
A63B 69/36 20060101ALI20231107BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20231107BHJP
【FI】
A63B60/46
A63B69/36 501C
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2023063110
(22)【出願日】2023-04-08
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2022173736
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596143761
【氏名又は名称】株式会社ユニオン楽器
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】石田 峻之
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509622(JP,A)
【文献】特開2010-252845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0165296(US,A1)
【文献】米国特許第08449410(US,B1)
【文献】特開平03-121083(JP,A)
【文献】特開2019-093142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
A63B 49/00-51/16
A63B 55/00-60/64
A63B 69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲性のあるシート状に形成されており、ゴルフクラブのグリップ部に取り付け自在であり、グリップ圧を数値化して検知し振動で知らせることができる補助グリップシート装置であって、
グリップ部を握った実際のグリップ圧を検知するグリップ圧検知部と、好ましいグリップ圧を数値設定する選択圧力設定部と、実際のグリップ圧が好ましいグリップ圧と同じか否かを判定するグリップ圧判定部と、振動を発生する振動発生部と、
グリップ部を外れた位置に延設された延長部と、を有し、グリップ圧検知部により、握った実際のグリップ圧を検知し、そのグリップ圧が選択圧力設定部により設定した好ましいグリップ圧を超えた場合に振動発生部により振動が発生するものであ
り、延長部に回線を介して独立させた選択圧力設定部が設けられるものであり、延長部が選択圧力設定部をグリップ部から外れた位置で包み込むように覆うものであることを特徴とする補助グリップシート装置。
【請求項2】
選択圧力設定部により、入力されている複数のグリップ圧から一つの好みのグリップ圧を選択するものであることを特徴とする請求項1記載の補助グリップシート装置。
【請求項3】
入力されている複数のグリップ圧が5つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の補助グリップシート装置。
【請求項4】
グリップ圧検知部が、少なくともグリップする指の小指及び中指に対応する位置に設けられたものである請求項1又は2に記載の補助グリップシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフのグリップに取り付けて使用する補助グリップシート装置に関するものであって、更に詳しくは、グリップに取り付け自在であり、しかも好みの数値化されたグリップ圧を振動によりを感知できる補助グリップシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴルフの基本はグリップの仕方(いわゆる握り方)から始まるといわれている。
指導者は、教える前に、このことの重要性を初心者に強く伝えている。
間違ったとされているグリップを一旦覚えてしまうと、その癖がなかなか抜けにくくなり、後からの修正が極めて困難である。
そのため、初心者の段階でグリップの仕方に癖が付かないようにゴルフの基本技術を習得する必要がある。
【0003】
ところで、グリップの仕方、いわゆる握り方の方式には種々の違いがありそれぞれ特色を持っている。
例えば、ウイークグリップ、フックグリップ(ストロンググリップ)、スクエーアグリップ等によってクラブのグリップに対する握る指の使い方が異なる。
一方で、グリップの握り方の違いにかかわらず握る圧力(グリップ圧)については極めて重要である。
【0004】
一般に、よく言われるように、グリップ圧(いわゆるグリッププレッシャー)は、強すぎないことが肝要である。
著名なゴルフ指南書の多くには、この適正なグリップ圧の重要性が記されている。
【0005】
例えば、グリップ部は小鳥を掴むように握ることが肝要であるとか、或いはクラブを引き抜く方向に多少の力を加えた場合に掌から抜ける程度の強さであればよいとか、感覚的な表現によって教示されている。
基本的にグリップは、あまり強く握り過ぎないようにすることがコツである。
尚、自分のグリップ圧を数値化して検知できるのであれば、その効果は大きいものと考えられる。
実際、ゴルフコースで経験することであるが、強く握った状態では、手首の柔軟性を得られず、コックによる遠心力効果にも悪影響を及ぼしヘッドスピードの向上が図れない。
【0006】
更には、アドレス時の姿勢にも悪影響があるとされている。
強くグリップすると飛距離が伸びないことはよく経験することである。
このようなことを背景に、グリップ圧を測定して光等により知らせる装置が開発されている〈特許文献1参照〉。
【0007】
しかし、この装置で使用されているクラブは、グリップ自体に測定装置が内蔵された特殊なグリップを備えたクラブであり、通常、使っているゴルフクラブには適用できない。
すなわち、実際のゴルフコースで使用しているクラブに取り付けて対応できるものではない。
全てのゴルフクラブのグリップ部に汎用的に適応できるものではないのである。
【0008】
また、この装置では、グリップ圧を過大だと知らせてくれる光が、使用者の顔を向ける方向によっては視認できない場合も生じる。
一方、グリップ圧を検出してヘッド部を振動させるゴルフクラブも開発されている〈特許文献2参照〉。
【0009】
しかし、これも練習用に作られた特殊なグリップ部を有するものであり、汎用性がないものである。
しかも、好みのグリップ圧を振動で知らせるものではない。
因みに、グリップの強さは、先述したように小鳥を掴むような強さとか、グリップが掌から抜け出さないような強さとか等、表現していわれているが、極めて曖昧である。
【0010】
そのため、自分に最適なグリップ圧を見極めることはできない。
グリップ圧を数値化して自分の掌でそれが確かめられれば、極めて便利であることがわかる。
そして更に、例えば有名プロの数値化されたグリップ圧を感知できるようになれば、更に便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2005-532559号公報
【文献】特開2011-120609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来の技術的な問題点を解決するものである。
すなわち、本発明の目的は、通常使用するゴルフクラブのグリップ部にも簡単に取り付け或いは取り外すことができ汎用性があり、且つ数値化されたグリップ圧を検知して振動で知らせることができる補助グリップシート装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のような背景に対して、本発明者が、鋭意、工夫を重ねた結果、補助グリップとしてグリップ圧検知部1と選択圧力設定部2とグリップ圧判定部3と振動発生部4とを備えた、取り付け自在のシート状の補助グリップシート装置を用いることにより、汎用性が出て上記問題点をも解決できることを見出し、この知見により本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、(1)、屈曲性のあるシート状に形成されており、ゴルフクラブのグリップ部Bに取り付け自在であり、グリップ圧を数値化して検知し振動で知らせることができる補助グリップシート装置Aであって、グリップ部Bを握った実際のグリップ圧を検知するグリップ圧検知部1と、好ましいグリップ圧を数値設定する選択圧力設定部2と、実際のグリップ圧が好ましいグリップ圧と同じか否かを判定するグリップ圧判定部3と、振動を発生する振動発生部4と、グリップ部Bを外れた位置に延設された延長部aと、を有し、グリップ圧検知部1により、握った実際のグリップ圧を検知し、そのグリップ圧が選択圧力設定部2により設定した好ましいグリップ圧を超えた場合に振動発生部4により振動が発生するものであり、延長部aに回線を介して独立させた選択圧力設定部2が設けられるものであり、延長部aが選択圧力設定部2をグリップ部Bから外れた位置で包み込むように覆うものである補助グリップシート装置Aに存する。
【0015】
また、本発明は、(2)、選択圧力設定部2により、入力されている複数のグリップ圧から一つの好みのグリップ圧(閾値)を選択するものである上記(1)記載の補助グリップシート装置Aに存する。
【0016】
また本発明は、(3)、入力されている複数のグリップ圧が5つである上記(1)又は(2)記載の補助グリップシート装置Aに存する。
【0017】
また、本発明は、(4)、グリップ圧検知部1が、少なくともグリップする指の小指FK及び中指FNに対応する位置に設けられたものである上記(1)又は(2)に記載の補助グリップシート装置Aに存する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、(1)、屈曲性のあるシート状に形成されており、ゴルフクラブのグリップ部Bに取り付け自在であり、グリップ圧を数値化して検知し振動で知らせることができる補助グリップシート装置Aであって、グリップ部Bを握った実際のグリップ圧を検知するグリップ圧検知部1と、好ましいグリップ圧を数値設定する選択圧力設定部2と、実際のグリップ圧が好ましいグリップ圧と同じか否かを判定するグリップ圧判定部と、振動を発生する振動発生部4と、を有し、グリップ圧検知部1により、握った実際のグリップ圧を検知し、そのグリップ圧が選択圧力設定部2により設定した好ましいグリップ圧を超えた場合に振動発生部4により振動が発生するものであるので、使用者(ゴルファー)は、数値化された好みのグリップ圧を振動により掌で確認することができ、大きく上達に効果を得ることができる。
【0020】
また、本発明は、(2)、選択圧力設定部2により、入力されている複数のグリップ圧から一つの好みのグリップ圧(閾値)を選択するものであるので、例えば、複数のプロゴルファーのうち好みのプロゴルファーのグリップ圧を振動により掌で実際に確認することができる。
【0021】
また、本発明は、(3)、入力されている複数のグリップ圧が5つである補助グリップシート装置Aであるので、男女別、年齢等を考慮した多様なグリップ圧を含ませることができ有用である。例えば、選択設定することにより好みのプロゴルファーA、プロゴルファーB、又はプロゴルファーC、プロゴルファーD、及びプロゴルファーEの5人の多様なグリップ圧を振動により掌で確認することができる。
【0022】
また、本発明は、(4)、グリップ部Bを外れた位置に延設された延長部aを更に有し、延長部aに選択圧力設定部2が設けられたものであるので、使用者がグリップ部Bを握る際に、選択圧力設定部2にまでグリップ圧が作用しない。
【0023】
また、本発明は、(5)、延長部aが延設されており、回線を介して独立させた選択圧力設定部2をグリップ部Bから外れた位置で包み込むように覆うものであるので、使用者がグリップ部Bを握る際に、選択圧力設定部2にまでグリップ圧が作用しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の補助グリップシート装置の外観図である。
【
図2】
図2は、本発明の補助グリップシート装置をまだゴルフクラブに取り付けていない状態のゴルフクラブを示す図である。
【
図3】
図3は、補助グリップシート装置を示す外観図である。
【
図4】
図4は、本発明の補助グリップシート装置をゴルフクラブに取り付けた後の状態のゴルフクラブを示す図である。
【
図5】
図5は、機能部の相互の関係を示したものである。
【
図6】
図6は、グリップ圧が設定された好ましいグリップ圧になった場合に、振動が発生するまでのフローチャートを示す図である。
【
図7】
図7は、好みのグリップ圧(α)、実際のグリップ圧(β)、及び振動の関係を示す説明図である。
【
図8】
図8は、タッチファスナによるグリップ部への取り付けを可能とした補助グリップシート装置の外観図である。
【
図9】
図9は、選択圧力設定部を回線を介して独立させるようにした補助グリップシート装置を示す。
【
図10】
図10は、選択圧力設定部を回線を介して独立させた別の補助グリップシート装置を示し、(A)は、ボタン式を示し、(B)は、ダイヤル式を示す。
【
図11】
図11は、小面積のシート状のグリップ圧検知部を設けた例であり、(A)は、小指が当接する位置を示し、(B)は、小指及び中指が当接する位置を示す。
【
図12】
図12は、ゴルフクラブの表面に取り付けた小面積のシート状の補助グリップシート装置に指を当接させた状態を一部断面で示す説明図である。
【
図13】
図13は、掌における、指の当接位置を示す図である。
【
図14】
図14は、小面積のシート状のグリップ圧検知部を小指の位置に設けた場合における補助グリップシート装置の外観図(展開状態)である。
【
図15】
図15は、小面積のシート状のグリップ圧検知部を小指の位置に設けた場合における補助グリップシート装置の外観図(展開状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明は通常使用するゴルフクラブのグリップ部Bに簡単に取り付け或いは取り外すことができるものである。
そしてスイングした場合、最初に選択して設定したグリップ圧を振動により掌で感じることができる。
【0026】
図1は、本発明の補助グリップシート装置Aの外観図(展開状態)である。
本発明の補助グリップシート装置Aは、屈曲性のあるシート状に形成されており、図に示すように強制的に平面状に展開することができる(
図3の状態→
図1の状態)。
シート状の材料としては、合成樹脂シート、繊維シート等が採用される。
尚、この実施の形態では展開状態では矩形状となっている。
【0027】
通常は、補助グリップシート装置Aに備わったバネ線体Lにより、全体が筒状に維持された状態にある。
この補助グリップシート装置Aは、この筒状の状態から拡開してグリップ部Bに取り付けることができる。
バネ線体Lによって締め付け力が生じるようになっているが、合成樹脂シートの弾性を利用して締め付け力を発揮するようにすることも当然可能である。
【0028】
補助グリップシート装置Aには、その内部に鎖線で示すグリップ圧検知部1、選択圧力設定部2及びグリップ圧判定部3、振動発生部4が組み込まれており、これについては、後述する。
【0029】
補助グリップシート装置Aには、下面部に円弧状のバネ線体Lが間隔を開けて複数個設けられており、ゴルフクラブのグリップ部Bに弾圧的に取り付け可能となっている。
補助グリップシート装置Aを取り付ける際には、補助グリップシート装置Aの端辺と端辺の間の部分であるC字状のバネ線体Lの円弧(断面視)が切れている部分(すなわち切れ目K)を押し広げる。
尚、バネ線体Lは、後述するグリップ圧検知部を指で圧するのに支障とならないようになっている。
そしてグリップ部Bに当てがい、その後、グリップ部Bに押し込む。
【0030】
補助グリップシート装置Aをグリップ部Bに挿入した後にバネ線体Lに加わっている力を除くと、バネ線体Lが有する弾圧力により元の形に復帰し、バネ線体Lがグリップ部Bを弾圧的に保持する状態となる。
これにより、補助グリップシート装置Aのグリップ部Bへの取り付けが極めて容易、かつ確実に行える。
尚、補助グリップシート装置Aはグリップ部Bの端から軸方向に押し入れることも可能である。
【0031】
ところで、グリップ部Bは、通常、端部に向けて径が太くなっており、そのためグリップ部Bの表面は傾斜面を形成している。
図2は、本発明の補助グリップシート装置Aをまだゴルフクラブに取り付けていない状態のゴルフクラブを示す図である。
【0032】
図3は、補助グリップシート装置Aを示す外観図である。
筒状に維持された状態にある補助グリップシート装置Aは、グリップ部Bの太さに応じて弾圧的にグリップ部Bに装着される。
バネ線体Lの切れ目Kの間隙が変わることで、太さの異なるグリップ部Bに対応することができる。
このように、切れ目Kがあることにより、グリップ部Aに対する取り付けの自由度が増すことになる。
【0033】
ところで、バネ線体Lの長さがグリップ部Bの傾斜面に対応するように、徐々に長くなるように設け、これに合わせて補助グリップシート装置Aのシートを台形状に設けることも可能である。
これにより、テーパー状に設けられたグリップ部Bに対応して、確実に補助グリップシート装置Aを取り付けることができる。
【0034】
補助グリップシート装置Aをグリップ部Bに取り付ける場合には、先述したように、まず補助グリップシート装置Aの切れ目Kの部分をゴルフクラブのグリップ部Bにあてがう。
その後、バネ線体Lの切れ目を押し広げて、グリップ部Bに押し込むと、グリップ部Bの周囲に巻き付け状態となり、補助グリップシート装置Aはバネ線体Lの弾圧力により固定される。
【0035】
図4は、本発明の補助グリップシート装置Aをゴルフクラブに取り付けた後の状態のゴルフクラブを示す図である。
このように、補助グリップシート装置Aはゴルフクラブのグリップ部Bの周面に沿って巻き付け状態となって固定される。
補助グリップシート装置Aは、屈曲性のあるシート状であり、且つ切れ目Kを有するので、ゴルフクラブの径が大きいものにも、或いはそれより小さいものにも十分対応することができる。
【0036】
なお、補助グリップシート装置Aをゴルフクラブのグリップ部Bから取り外すには、バネ線体Lを押し広げることで容易に取り外せる。
補助グリップシート装置Aは、このように取り付け及び取り外しが極めて簡単に行われる。
【0037】
さて、本発明の補助グリップシート装置Aは、使用者が掌で握る圧力、すなわち、グリップ圧を検知して最終的に振動で知らせることができるものである。
具体的にゴルフクラブのグリップについて述べると、小指から人差し指まで、それぞれの指において最適なグリップ圧で握ることが好ましいとされている。
したがって、グリップ圧検知部1は使用者の計測したい指に対応する位置に設けられることが好ましい。
いうなれば上述した、小鳥を掴むようなグリップ状態を、極力、計測できる位置に対応するように設けられる。
しかも補助グリップシート装置Aは、握ることにより、設定したところの、ある好みのグリップ圧になった場合に、それを振動により感知することができるため極めて便利である。
【0038】
このように、本発明の補助グリップシート装置Aは、好みのグリップ圧である複数のグリップ圧を選択して感じることができるのが特徴の一つである。
そのため、前述したように、本発明の補助グリップシート装置Aの内部には、機能部A1を構成する各機能の部分、すなわちグリップ圧検知部1、振動発生部4、選択圧力設定部2、グリップ圧判定部3が相互に接続されて設けられており、相互に信号が伝達される。
尚、機能部は、屈曲に対応できるようになっていることはいうまでもない。
そして、この機能部は、通常、2枚のフレキシブルなシート材に挟まれて存在する状態となっている(
図12参照)。
【0039】
図5は、これら機能部の相互の関係を示したものである。
尚、回線、電源は省略した。
ここでグリップ圧検知部3は、圧力センサ等により、グリップした場合の圧力(いわゆるグリップ圧)を検知する部分であり、補正を含みキャリブレーションされている。
因みに、圧力センサとしては、圧電素子、圧電シート、圧電ゴム等が使用される。
また、振動発生部4は、振動を発生して使用者の掌に伝える部分である。
また、選択圧力設定部2は、好みのグリップ圧を設定するための操作入力部分である。
【0040】
例えば、既に入力され記憶されている複数の入力値(グリップ圧)の中から一つ選択することができる。
具体的には、例えば,既に入力されているA、B、C、D、Eの5段階(例えば、圧力の一般的な単位、g重或いはN等の単位で入力されている)から一つ選択することができる。
この入力値は、例えば、プロゴルファーのグリップ圧を採用することができる。
5段階程度であると男女別、年齢等を考慮した多様なグリップ圧を含ませることができ有用である。
ここで選択圧力設定部2は、例えば、操作入力部分として押しボタン式のもの、或いは回動ダイヤル式のものが採用される。
しかし、この部分は操作入力部分なので一定の厚みを生じるため、極力、グリップした際にグリップ圧が加わらない部分に設けられることが好ましい。
グリップ圧判定部3は、検知した実際のグリップ圧が設定した好みのグリップ圧に達したか否かを判断する部分、すなわち、実際のグリップ圧が設定した好みのグリップ圧を超えたか否かを判定する。
【0041】
(使用方法)
図6は、グリップ圧が数値設定された好ましいグリップ圧になった場合に、振動が発生するまでのフローチャートを示す図である。
好みのグリップ圧(α)を設定(選択圧力設定部2)→握る→握った際の実際のグリップ圧(β)を検知(グリップ圧検知部1)→好みのグリップ圧を握った際の実際のグリップ圧(β)が超えたか(α≦β)否かを判定(グリップ圧判定部3)→好みのグリップ圧を握った際の実際のグリップ圧(β)が超えた場合(α≦β)振動が発生する(振動発生部4)→振動を掌で感知確認する。
【0042】
更に詳しくいうと、
1)まず、補助グリップシート装置Aをゴルフクラブのグリップ部Bに被せて取り付けた状態とする。
2)次に使用者が好みとするグリップ圧を選択圧力設定部2で選択する。
この場合、選択圧力設定部2においては、複数の入力されているグリップ圧から好みのグリップ圧(いわゆる閾値)を選択設定する(数値設定)。
3)次にグリップ部Bを取り付けた補助グリップシート装置Aを介して握る。
4)グリップ部Bを握ると、その実際のグリップ圧をグリップ圧検知部1により検知する。
5)好みのグリップ圧を、握った際の実際のグリップ圧(β)が超えたか(α≦β)否かを判定する。
この場合、グリップ圧は、最も強い圧を与える指のグリップ圧(β)となる。
6)好みのグリップ圧を、握った際の実際のグリップ圧(β)が超えた場合(α≦β)振動が発生する。
7)使用者は振動を掌で感知する。
使用者はこの振動を感知確認することで、選択設定された好みのグリップ圧が否かを確認することができる。
このとき、好みのグリップ圧(α)と実際のグリップ圧(β)とがα≦βとなっているとき、振動が発生し続ける。
したがって、使用者は振動の有無を感知確認しながら適宜グリップ圧を調整することで、好みのグリップ圧でグリップする感覚を体得することができる。
【0043】
図7は、好みのグリップ圧(α)、実際のグリップ圧(β)、及び振動の関係を示す説明図である。
図に示すように、使用者は、振動を感じながら、グリップ圧を高めたり、或いは弱めたりすることで、好みのグリップ圧(α)を捉える。
これにより、自分のグリップ圧を好みのグリップ圧となるように調整することが可能となる。
次に、この実施形態における補助グリップシート装置Aの使用方法について述べる。
【0044】
(使用方法)
まず、本発明の補助グリップシート装置Aを、ゴルフクラブのグリップ部Bに取り付ける。
それには、ゴルフクラブのグリップ部Bに屈曲性のあるシート状の補助グリップシート装置Aをバネ線体Lの弾圧力を利用して巻き付け状態にすればよい。
【0045】
ここで、一般的にゴルフクラブのグリップ部Bは、手元に至るに従って、径大となっているが、屈曲性のあるシート状の補助グリップシート装置Aであるため確実に巻き付けられた状態となる。
矩形のシート状の補助グリップシート装置Aであると、両側の端部が傾斜することになる。
【0046】
また、ゴルフクラブには、アイアンやドライバーがあり、そのグリップ部Bの径はそれぞれ異なっているので、補助グリップシート装置Aを巻き付けた状態が変わる。
【0047】
しかし、先述したように、補助グリップシート装置Aは、端辺と端辺との間隔(すなわち切れ目Kの間隔)を有するため、径を変更できる自由度があり、径の異なるグリップ部Bに応じて調整することができる。
このように、ゴルフクラブのグリップ部Bに補助グリップシート装置Aを取り付ける際、取り付けの自由度が大となることが分かる。
【0048】
補助グリップシート装置Aをゴルフクラブのグリップ部Bに取り付けた後は、使用者は、次のスイングアクションに備え、手で補助グリップシート装置Aを握るのであるが、ゴルファーによっては、グリップの仕方が異なる。
【0049】
例えば、ストロンググリップ(いわゆるフックグリップ)の場合でも、或いはウイークグリップやスクエーアグリップの場合でも、補助グリップシート装置Aの圧電素子11に力が加わることでは同じである。
【0050】
次に、アドレスしてからそれ以後のスイング過程について考える。
A)アドレス
今、アドレスの状態でグリップ部Bを握るが、その際のグリップ圧(β)が選択圧力設定部2により設定した圧(閾値α)に到達すると、振動発生部4から振動が発生する。
このとき、グリップ圧(β)が設定した圧(α)を超えている間は、振動が発生し続ける。
このため、使用者はこの振動を感じながら適宜グリップ圧(β)を調整することにより、アドレス時に所定のグリップ圧が得られたことを認知することができる。
そのため適正なグリップ圧を習得できることとなる。
【0051】
B)バックスイング
次に、スイングを行うが、バックスイングの途中でグリップ圧が設定した好みのグリップ圧を超えると振動が発生する。
実際のグリップ圧が設定された好みのグリップ圧より小さくなると再び振動が止まる。
このように、使用者はこの振動を感知して適宜グリップ圧(β)を調整することにより、バックスイング時に所定のグリップ圧が得られたことを認知することができる。
【0052】
C)ダウンスイング
次に、ダウンスイングを行うが、ダウンスイングの途中でグリップ圧が設定された好みのグリップ圧を超えると振動が発生する。
また、実際のグリップ圧が設定された好みのグリップ圧より小さくなると再び振動が止まる。
このように、使用者はこの振動を感知して適宜グリップ圧(β)を調整することにより、ダウンスイング時に所定のグリップ圧が得られたことを認知することができる。
【0053】
このように、「アドレスの状態」、「バックスイングの状態」、「ダウンスイングの状態」におけるいずれの状態においても、設定した好みのグリップ圧を超えると振動が発生し、設定した好みのグリップ圧未満だと振動が発生しないため、グリップ圧の変化を確認することができる。
そして、所定のグリップ圧が得られたことを認知することができる。
【0054】
使用者は、この振動を感知することにより、「アドレスの状態」、「バックスイングの状態」、「ダウンスイングの状態」のいずれの状態においてもグリップ圧が好みの圧力に達しているか否かを確認することができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0056】
例えば、
図8は、タッチファスナによるグリップ部Bへの取り付けを可能とした補助グリップシート装置Aの外観図である。
本実施形態に係る補助グリップシート装置Aは、グリップ部Bに対する取り付け手段として、バネ線体Lは使用せずに、タッチファスナTを使用するものである。
矩形状である補助グリップシート装置Aの両側の一定の領域にタッチファスナが設けられており、このタッチファスナTが設けられている部分は、互いに離れて独立している。
ここで、一方は表側に他方は裏側に設けられる。
従って、シート状の補助グリップシート装置Aをゴルフクラブのグリップ部Bの周囲に巻き付けた状態でタッチファスナを介して取り付けることができる。
すなわち、補助グリップシート装置Aに設けられたタッチファスナT同士が密着して固定される。
【0057】
補助グリップシート装置AがタッチファスナTを備えることにより、グリップ部Bへの付け外しが容易であり、かつ様々な太さのゴルフクラブに適用が可能となる。
また、ゴルフクラブのグリップ部Bに巻き付けられた状態から、単にタッチファスナTを引き離せば、シート状の補助グリップシート装置Aは容易にグリップ部Bから取り外すことができる。
また、選択圧力設定部2は、先述したように、グリップした際にグリップ圧が加わらない部分に設けられることが好ましい。
選択圧力設定部2は、押しボタン式のものでも、回動ダイヤル式のものでもよい。
しかし、このようなものを採用した場合、嵩高で一定の厚みを生じるので、選択圧力設定部2のみ回線を介して引き出して独立させることが好ましい。
【0058】
ここで、
図9は、選択圧力設定部2を回線を介して独立させるようにした補助グリップシート装置Aを示す。
図から分かるように、シート状の補助グリップシート装置Aには、延長部aが延設されているため、これにより、回線を介して独立させた選択圧力設定部2をグリップ部Bから外れた位置で包み込むように覆うことができる。
従って、グリップ部Bを握る際には、選択圧力設定部2にまでグリップ圧は作用しない利点がある。
【0059】
図10は、選択圧力設定部2を回線を介して独立させた別の補助グリップシート装置を示し、(A)は、ボタン式を示し、(B)は、ダイヤル式を示す。
【0060】
図9の補助グリップシート装置Aが、バネ線体Lが内蔵されているのに対して、
図10の補助グリップシート装置Aは、タッチファスナTを備えている。
これも、シート状の補助グリップシート装置Aには、延長部aが延設され、これにより、選択圧力設定部2をグリップ部Bを外れた位置で包むように覆うことができる。
従って、この場合も、グリップ部Bを握る際には、選択圧力設定部2にまでグリップ圧は作用しない。
【0061】
ここで、図示はしないが、グリップ圧判定部3も選択圧力設定部2のように、グリップ部Bを外れた位置で包むように覆うことができる。
尚、嵩高な電源(電池)等も同様である。
以上述べたように、機能部の一部を回線を介して指のグリップ圧が作用しない位置に独立させて配置させることができ、しかも延長部aにより覆うことができることは極めて有用である。
【0062】
ところで、グリップ圧検知部1は使用者の計測したい指のみに対応する位置に設けられることが好ましいことは先述した。
ここではその例について述べる。
図11は、小面積のシート状のグリップ圧検知部1を設けた例であり、(A)は、小指FKが当接する位置(部分)を示し、(B)は、小指FK及び中指FNが当接する位置(部分)を示す。
このように、グリップ検知部1は、グリップする指の位置に対応する位置に、1箇所或いは複数箇所設けることも可能である。
また
図12は、ゴルフクラブ(ここではグリップ部B)の表面に取り付けた小面積のシート状の補助グリップシート装置Aに指Fを当接させた状態を一部断面で示す説明図である。
指Fの圧力がゴルフクラブに伝わり、その圧力を小面積のシート状の補助グリップシート装置Aが検知するものである。
また、参考までに、
図13は、掌における、指Fの当接位置を示す図である。
図14は、小面積のシート状のグリップ圧検知部1を小指FKの位置に設けた場合における補助グリップシート装置Aの外観図(展開状態)である。
この場合は、この図のような展開状態からバネ線体Lによって締め付け力が生じるため、円筒状に変形して取り付けられる。
図15は、小面積のシート状のグリップ圧検知部を小指FKの位置に設けた場合における補助グリップシート装置Aの外観図(展開状態)である。
図14の例と異なるのは、タッチファスナによるグリップ部Bへの取り付けを可能としたものである。
この場合は、グリップ部Bに対する取り付け手段として、バネ線体Lは使用せずに、タッチファスナTを使用する。
【0063】
本発明の補助グリップシート装置Aは、屋内或いは屋外において練習する際に、グリップ圧を矯正するための練習用として使用することができるが、実際に、ゴルフコースでの本番プレーにおいても使用することができる。
その際、ゴルフコースでは、規則上で不適正の場合、或いは不必要な場合等は、補助グリップシート装置Aを簡単に取り外すことができる。
また、シート状の補助グリップシート装置Aは、本発明の目的を達成できる限り、矩形以外にも正方形や平行四辺形、他の形状も採用可能である。
【0064】
また、円弧状のバネ線体Lはグリップ部Bに弾圧的に取り付け可能となるものであれば、その位置や本数は限定されない。
バネ線体Lには、例えば形状記憶合金よりなるバネ線体Lも使用することができる。
この場合、補助グリップシート装置Aは、形状記憶合金の特性により、常に筒状の状態を維持できる。
【0065】
また、補助グリップシート装置Aのグリップ部Bに対する取り付け手段は、シート状の補助グリップシート装置Aの裏面に粘着剤を塗布したもの等も採用可能である。
その場合、補助グリップシート装置Aの裏面が直接、グリップ部Bの表面に粘着するので、補助グリップシート装置Aとグリップ部Bとの相互の滑りが生じない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の補助グリップシート装置Aは、通常使用するゴルフクラブのグリップ部にも簡単に取り付け或いは取り外すことができ汎用性があり、且つ好みの数値化されたグリップ圧を検知して振動で掌に知らせることができるものである。
この原理を利用するものであれば、グリップ部を備えたもの、例えば、野球バット、テニスラケット、バドミントンラケット、卓球ラケット等に十分、適用が可能である。
【符号の説明】
【0067】
A…補助グリップシート装置
A1…機能部
a…延長部
B…グリップ部
C…可撓性シート
1…グリップ圧検知部
2…選択圧力設定
3…グリップ圧判定部
4…振動発生部
F…指
FK…小指
FN…中指
K…切れ目
L…バネ線体
S…シート材
T…タッチファスナ
【要約】 (修正有)
【課題】ゴルフクラブのグリップ部にも簡単に取り付け或いは取り外すことができ汎用性があり、且つ数値化されたグリップ圧を検知して振動で知らせることができる補助グリップシート装置を提供する。
【解決手段】屈曲性のあるシート状に形成されており、ゴルフクラブのグリップ部に取り付け自在であり、グリップ圧を数値化して検知し振動で知らせることができる補助グリップシート装置Aであって、グリップ部を握った実際のグリップ圧を検知するグリップ圧検知部1と、好ましいグリップ圧を数値設定する選択圧力設定部2と、実際のグリップ圧が好ましいグリップ圧と同じか否かを判定するグリップ圧判定部3と、振動を発生する振動発生部4と、を有し、グリップ圧検知部により、握った実際のグリップ圧を検知し、そのグリップ圧が選択圧力設定部により設定した好ましいグリップ圧を超えた場合に振動発生部4により振動が発生する補助グリップシート装置。
【選択図】
図1