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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】硬貨類合流装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/30 20060101AFI20231107BHJP
   G07D 11/17 20190101ALI20231107BHJP
   B65G 47/68 20060101ALI20231107BHJP
   B65G 47/88 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B65G47/30 G
G07D11/17
B65G47/68 E
B65G47/88 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019181573
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021054626
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503208150
【氏名又は名称】独立行政法人 造幣局
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松岡 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】前▲高▼ 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤田 宣久
(72)【発明者】
【氏名】迚野 泰一
(72)【発明者】
【氏名】津田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】住田 成司
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-128238(JP,A)
【文献】特開平01-046894(JP,A)
【文献】特開平07-334728(JP,A)
【文献】特開平07-025451(JP,A)
【文献】特開2009-234670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/22 - 47/32
G07D 11/17
B65G 47/68 - 47/78
B65G 47/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された硬貨類が一層一列状態で移動可能な複数の上流路と、
複数の前記上流路が1つに合流する合流部と、
前記合流部からの前記硬貨類が一層一列状態で移動可能な下流路と、
前記上流路にある最も下流側の硬貨類に作用して前記上流路から前記合流部へ一枚ずつ送り出す送出機構と、を備え、
前記送出機構は、複数の前記上流路の夫々に対して、硬貨類に作用する作用状態及び硬貨類に作用しない非作用状態の何れかの状態となるように構成されると共に、1の前記上流路に対して前記作用状態となるときに他の前記上流路に対して前記非作用状態となるように構成されており、
前記上流路及び前記下流路は、少なくとも前記合流部との接続部分が水平方向に設けられており、
前記送出機構は、軸心周りに回転駆動される回転体と、前記回転体に設けられると共に前記硬貨類を厚さ方向から押圧しながら前記硬貨類に接触して前記上流路から前記合流部に送り出す接触部と、により構成されている硬貨類合流装置。
【請求項2】
前記送出機構は、複数の前記上流路の夫々に対応して設けられた複数の前記接触部を有しており、
前記接触部は、前記回転体の周方向における一部の領域に設けられており、
夫々の前記接触部は、前記硬貨類に接触するタイミングが互いに異なるように前記回転体に設けられている請求項に記載の硬貨類合流装置。
【請求項3】
複数の前記接触部は、前記回転体の回転方向に対して、1の前記接触部の後端部分と他の前記接触部の前端部分との周方向距離が前記硬貨類の直径の2倍よりも大きくなるように前記回転体に設けられている請求項に記載の硬貨類合流装置。
【請求項4】
前記回転体は、所定の回転速度にて回転駆動され、
前記接触部が前記上流路を移動する前記硬貨類に接触可能となる時間周期は、前記上流路に前記硬貨類が供給される時間周期の最小値よりも小さい請求項からのいずれか1項に記載の硬貨類合流装置。
【請求項5】
前記接触部は、前記硬貨類の中心からオフセットした位置にて前記硬貨類と接触する請求項からのいずれか1項に記載の硬貨類合流装置。
【請求項6】
前記送出機構は、複数の前記上流路の夫々に対応して設けられた複数の前記回転体を有しており、
1つの前記回転体に少なくとも1つの前記接触部が設けられており、
前記回転体は、前記上流路における硬貨類の厚さ方向と移動方向の両方に交差する方向に延びる軸心周りに回転駆動される請求項からのいずれか1項に記載の硬貨類合流装置。
【請求項7】
2つの前記上流路を備え、
2つの前記回転体が2つの前記上流路の各々に対応して1つずつ設けられており、
2つの前記回転体における夫々の前記接触部の回転位相が180度ずれている請求項からのいずれか1項に記載の硬貨類合流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨類合流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨等を搬送する搬送路を合流させる技術が知られている。特許文献1に記載された硬貨処理機は、硬貨を搬送する環状の搬送手段と、金種別に硬貨を収納するものであって搬送手段に対して硬貨を1枚ずつ出し入れ可能とする複数の収納投出部と、を備えている。各々の収納投出部の硬貨出入口において、収納投出部からの硬貨の搬送路と、環状の搬送路(搬送手段)とが合流する。
【0003】
特許文献2に記載されたワーク合流装置は、2つの上流側移送路と、下流側移送路と、合流機構と、を備えている。合流機構は、2つの上流側移送路から落ちてくるコインを交互に合流させて下流側移送路に落とす。詳しくは、合流機構は同期回転する2つの星車を備えており、星車はポケットと爪部とを備えている。上流側移送路から落ちてきたコインは、一方の星車の爪部に当接しつつ、他方の星車のポケットに収まり、星車の回転に伴って下流側移送路へ落とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/120344号公報
【文献】特開2003-128238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の硬貨処理機では、出金指令を受けると、出金すべき硬貨を収納した収納投出部及び搬送手段が駆動され、一つの収納投出部から硬貨が1枚ずつ搬送手段へ投出される。その収納投出部からの出金分の硬貨が投出完了した後に、次の収納投出部から硬貨が投出される。すなわち、一つの収納投出部から硬貨が投出されている間は、他の収納投出部から硬貨が投出されることはない。特許文献1の硬貨処理機では、複数の収納投出部からの硬貨を合流させることは想定されておらず、従って複数の収納投出部からの硬貨同士の接触により硬貨が詰まることは想定されていない。
【0006】
特許文献2のワーク合流装置では、図6に示されるように、2つの上流側移送路からのコインが互いに接触した状態で合流機構へ進入して、左右の星車の両方に接触しながら下流側移送路へ落とされる。特許文献2のワーク合流装置では、コイン同士の接触や左右の星車との接触により合流機構においてコインの詰まりが生じるおそれがある。そのため、処理の高速化を図ることも困難である。
【0007】
本発明の目的は、硬貨類の詰まりを抑制しつつ硬貨類の高速な合流が可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔構成1〕
上記目的を達成するための硬貨類合流装置の特徴構成は、供給された硬貨類が一層一列状態で移動可能な複数の上流路と、複数の前記上流路が1つに合流する合流部と、前記合流部からの前記硬貨類が一層一列状態で移動可能な下流路と、前記上流路にある最も下流側の硬貨類に作用して前記上流路から前記合流部へ一枚ずつ送り出す送出機構と、を備え、前記送出機構は、複数の前記上流路の夫々に対して、硬貨類に作用する作用状態及び硬貨類に作用しない非作用状態の何れかの状態となるように構成されると共に、1の前記上流路に対して前記作用状態となるときに他の前記上流路に対して前記非作用状態となるように構成され、前記上流路及び前記下流路は、少なくとも前記合流部との接続部分が水平方向に設けられており、前記送出機構は、軸心周りに回転駆動される回転体と、前記回転体に設けられると共に前記硬貨類を厚さ方向から押圧しながら前記硬貨類に接触して前記上流路から前記合流部に送り出す接触部と、により構成されている点にある。
【0009】
上記の特徴構成によれば、送出機構が、上流路において一層一列状態にある硬貨類のうち最も下流側の硬貨類に作用して合流部へ一枚ずつ送り出すので、送り出された硬貨類は他の硬貨類と接触しない状態となる。加えて送出機構は、1の上流路に対して作用状態となるときに他の上流路に対して非作用状態となるように構成されているので、複数の上流路から同時に硬貨類が送り出されることがなく、合流部において硬貨類同士が接触することが抑制される。これにより、硬貨類の詰まりが抑制されると共に硬貨類の高速な合流が可能となる。
また、上記の特徴構成によれば、接触部が、硬貨類を厚さ方向から押圧しながら硬貨類に接触して、回転体と共に回転し硬貨類を合流部へ送り出すので、硬貨類を合流部へ確実に送り出すことができる上に、硬貨類の詰まりが起こりにくい。
【0012】
〔構成
本発明に係る硬貨類合流装置の別の特徴構成は、前記送出機構は、複数の前記上流路の夫々に対応して設けられた複数の前記接触部を有しており、前記接触部は、前記回転体の周方向における一部の領域に設けられており、夫々の前記接触部は、前記硬貨類に接触するタイミングが互いに異なるように前記回転体に設けられている点にある。
【0013】
上記の特徴構成によれば、接触部が回転体の周方向における一部の領域に設けられているので、回転体を回転させることにより送出機構を作用状態と非作用状態とに切り替えることができ、送出機構を簡素に構成することができる。そして、複数の上流路の夫々に対応して設けられた複数の接触部は、互いに異なるタイミングで複数の上流路の硬貨類に接触するように回転体に設けられるので、簡素な構成により、送出機構を、1の上流路に対して作用状態となるときに他の上流路に対して非作用状態となるように構成することができる。
【0014】
〔構成
本発明に係る硬貨類合流装置の別の特徴構成は、複数の前記接触部は、前記回転体の回転方向に対して、1の前記接触部の後端部分と他の前記接触部の前端部分との周方向距離が前記硬貨類の直径の2倍よりも大きくなるように前記回転体に設けられている点にある。
【0015】
上記の特徴構成によれば、1の接触部の後端部分により合流部へ送り出される硬貨類と、他の接触部の前端部分により合流部へ送り出される硬貨類とが、合流部で接触する事態を避けることができ、硬貨類の詰まりを確実に抑制することができると共に硬貨類の更に高速な合流を実現することができる。
【0016】
〔構成
本発明に係る硬貨類合流装置の別の特徴構成は、前記回転体は、所定の回転速度にて回転駆動され、前記接触部が前記上流路を移動する前記硬貨類に接触可能となる時間周期は、前記上流路に前記硬貨類が供給される時間周期の最小値よりも小さい点にある。
【0017】
上記の特徴構成によれば、上流路への硬貨類の滞留や、複数の硬貨類が一度に合流部へ送り出される事態を避けることができるので、硬貨類の詰まりを確実に抑制することができると共に硬貨類の更に高速な合流を実現することができる。
【0018】
〔構成
本発明に係る硬貨類合流装置の別の特徴構成は、前記接触部は、前記硬貨類の中心からオフセットした位置にて前記硬貨類と接触する点にある。
【0019】
上記の特徴構成によれば、接触部が硬貨類の中心からオフセットした位置で硬貨類と接触するので、硬貨類の中心で接触する場合に比べて、送出機構が送出状態となる時間が短くなり、非送出状態となる時間が長くなる。送出機構は、合流部での硬貨類の接触を抑制するために複数の上流路において同時に送出状態とならないよう構成される。上記の特徴構成によれば、送出機構が送出状態となる時間を短くして、更に確実に硬貨類の接触を抑制することができる。従って、硬貨類の詰まりを確実に抑制し、硬貨類の更に高速な合流を実現することができる。
【0020】
〔構成
本発明に係る硬貨類合流装置の別の特徴構成は、前記送出機構は、複数の前記上流路の夫々に対応して設けられた複数の前記回転体を有しており、1つの前記回転体に少なくとも1つの前記接触部が設けられており、前記回転体は、前記上流路における硬貨類の厚さ方向と移動方向の両方に交差する方向に延びる軸心周りに回転駆動される点にある。
【0021】
上記の特徴構成によれば、接触部が硬貨類を送り出す方向を複数の上流路毎に最適に設定できるので、硬貨類の詰まりを確実に抑制し、硬貨類の更に高速な合流を実現できると共に、上流路のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0022】
〔構成
本発明に係る硬貨類合流装置の別の特徴構成は、2つの前記上流路を備え、2つの前記回転体が2つの前記上流路の各々に対応して1つずつ設けられており、2つの前記回転体における夫々の前記接触部の回転位相が180度ずれている点にある。
【0023】
上記の特徴構成によれば、簡素な構成により2つの上流路の合流を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】硬貨類合流装置の平面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】上流路と送出機構の構成を示す模式図である。
図4】送出機構により送出される硬貨類の位置関係を示す図である。
図5】送出機構により送出される硬貨類の位置関係を示す図である。
図6】2つの回転体に配置された接触部の位置関係を示す図である。
図7】他の実施形態に係る硬貨類合流装置の平面図及び側断面図である。
図8】他の実施形態に係る硬貨類合流装置の平面図及び側断面図である。
図9】他の実施形態に係る硬貨類合流装置の平面図及び側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照しながら、本実施形態に係る硬貨類合流装置100について説明する。以下の説明では、下流路14における硬貨類Cの搬送面の向く方向が上となるように硬貨類合流装置100を配置したとして説明する。各図面において、上をUPで示し、下をDNで示す。図1に示されるように、下流路14において硬貨類Cが搬送される方向の下流側を前としてFRで示し、上流側を後としてBKで示す。下流路14に対して第1上流路11が位置する側を右としてRHで示し、第2上流路12が位置する側を左としてLHで示す。
【0026】
本実施形態では、硬貨類Cとは、貨幣としての硬貨や、遊技機等のメダル、及びそれらの製造途中の部材である円板状の部材(いわゆる「円形(えんぎょう)」)やリング状の部材を含み、更に円形状に限られず、多角形状のものも含むものとする。
【0027】
硬貨類合流装置100は、図1図2図3に示されるように、本体部10と、本体部10に設けられた第1上流路11(上流路の一例)、第2上流路12(上流路の一例)、合流部13、下流路14、及び送出機構Aと、を備えている。硬貨類合流装置100は、上流側の装置等から第1上流路11及び第2上流路12に供給される硬貨類Cを合流部13にて一列に合流させて下流路14に進入させ、下流路14から下流側の装置等へ送り出す装置である。以下、第1上流路11及び第2上流路12を総称して「上流路」と記載する場合がある。
【0028】
図1は、硬貨類合流装置100を上から見た平面図である。図2は、図1のII-II断面図であって、硬貨類合流装置100の横断断面を前から見た断面図である。図3の上段は、第1上流路11及び送出機構Aの第1回転体21を左から見た模式図であり、図3の下段は、第2上流路12及び送出機構Aの第2回転体31を左から見た模式図である。図3の上段と下段とは、同じタイミングの状態を示している。
【0029】
第1上流路11及び第2上流路12は、上流側から供給された硬貨類Cが一層一列状態で移動可能なように構成されている。本実施形態では、図2に示されるように、第1上流路11及び第2上流路12は、本体部10に形成された溝11a、12aと、当該溝の上方の一部を覆うカバー11b、12bと、により構成されている。溝11a、12aの幅は、硬貨類Cの直径よりも大きく、直径の2倍よりも小さい。溝11a、12aの深さは、硬貨類Cの厚さよりも大きく、厚さの2倍よりも小さい。カバー11bの開口部11cの幅、及びカバー12bの開口部12cの幅は、硬貨類Cの直径よりも小さい。
【0030】
また本実施形態では、第1上流路11と第2上流路12は左右方向に並んで配置されており、その下流側の端部が合流部13に接続されている。第2上流路12は、合流部13との接続部分を含め、全体が水平方向に設けられている。詳しくは、溝12aの底面(硬貨類Cの搬送面)の法線方向が鉛直方向と一致し、第2上流路12における硬貨類Cの移動方向が水平面と平行になるように、第2上流路12が設けられている。第1上流路11は、合流部13との接続部分が水平方向に設けられている。第1上流路11の上流側部分は、上流側へ進むほど溝11aの底面(硬貨類Cの搬送面)の法線方向が右下へ旋回し、第1上流路11が第2上流路12の下側へ回り込んでいる。硬貨類合流装置100の上流側の端部においては、第1上流路11と第2上流路12とが、硬貨類Cの搬送面の法線方向が平行且つ逆向きとなる状態で、上下に隣接して配置される。
【0031】
第1上流路11と第2上流路12とが以上の通り構成されることにより、硬貨類合流装置100の上流側に硬貨類Cの表裏を選別する選別装置を配置し、硬貨類Cの表裏取揃装置を構成することができる。選別装置は、硬貨類Cの表裏を検出して、裏向きの硬貨類Cを第1上流路11へ供給し、表向きの硬貨類Cを第2上流路12へ供給する。第1上流路11へ供給された裏向きの硬貨類Cは、第1上流路11を通過することにより表裏が反転され、表向きの状態にて第1上流路11の下流側の端部へ到達する。従って、合流部13へ送り出される硬貨類Cは全て表向きとなり、それら硬貨類Cが一列に合流され、下流路14から下流側へ送り出される。
【0032】
本実施形態では、硬貨類Cを下流側へ強制的に移動させる機構は第1上流路11及び第2上流路12に設けられていない。本実施形態では、上流側の装置から供給される硬貨類Cに押されることにより、硬貨類Cが第1上流路11及び第2上流路12を移動する。
【0033】
合流部13は、第1上流路11と第2上流路12とが1つに合流する部位であり、第1上流路11及び第2上流路12からの硬貨類Cを一層一列状態へ合流させる部位である。合流部13は、本体部10に形成された、下流側へ進むほど幅が狭くなる溝により構成されている。合流部13は、その全体が水平方向に設けられている。詳しくは、合流部13を構成する溝の底面(硬貨類Cの搬送面)の法線方向が鉛直方向と一致し、合流部13における硬貨類Cの移動方向が水平面と平行になるように、合流部13が設けられている。
【0034】
第1上流路11から合流部13へ送り出された硬貨類Cは、合流部13を構成する溝の右側の壁面に導かれて左斜め前へ進み、下流路14へ進入する。第2上流路12から合流部13へ送り出された硬貨類Cは、合流部13を構成する溝の左側の壁面に導かれて右斜め前へ進み、下流路14へ進入する。
【0035】
下流路14は、合流部13からの硬貨類Cが一層一列状態で移動可能なように構成されている。下流路14は、本体部10に形成された溝により構成されている。当該溝の幅は、硬貨類Cの直径よりも大きく、直径の2倍よりも小さい。下流路14は、合流部13との接続部分を含め、全体が水平方向に設けられている。詳しくは、下流路14を構成する溝の底面(硬貨類Cの搬送面)の法線方向が鉛直方向と一致し、下流路14における硬貨類Cの移動方向が水平面と平行になるように、下流路14が設けられている。下流路14には、下流搬送機構14aが設けられている。下流搬送機構14aは、無端ベルト式の搬送装置であって、硬貨類Cに上から接触して、合流部13から下流路14へ進入した硬貨類Cを下流側へ所定の速度で搬送する。
【0036】
送出機構Aは、第1上流路11及び第2上流路12にある最も下流側の硬貨類Cに作用して第1上流路11及び第2上流路12から合流部13へ一枚ずつ送り出す機構である。送出機構Aは、図1に示されるように、第1回転体21、第1接触部22、第1駆動軸23、第1駆動機構24、第2回転体31、第2接触部32、第2駆動軸33、及び第2駆動機構34を備えている。第1回転体21、第1接触部22、第1駆動軸23、及び第1駆動機構24は、第1上流路11に対応して設けられている。第2回転体31、第2接触部32、第2駆動軸33、及び第2駆動機構34は、第2上流路12に対応して設けられている。すなわち送出機構Aは、複数の上流路(第1上流路11、第2上流路12)の夫々に対応して設けられた複数の回転体(第1回転体21、第2回転体31)及び複数の接触部(第1接触部22、第2接触部32)を有している。
【0037】
以下の説明では、第1回転体21及び第2回転体31を総称して「回転体」と記載する場合がある。第1接触部22及び第2接触部32を総称して「接触部」と記載する場合がある。第1駆動軸23及び第2駆動軸33を総称して「駆動軸」と記載する場合がある。
【0038】
第1回転体21は、円筒状の部材であって、中心軸(軸心X1)が水平面内にて後斜め左を向く姿勢にて、第1上流路11の上方に配置されている。第1接触部22は、第1回転体21の外周面から径方向に突出する部位である。図1図3に示されるように、第1接触部22の外周形状は円筒形状の一部であって、その中心軸は第1回転体21の中心軸と一致している。第1接触部22は、第1回転体21の周方向における一部の領域に設けられている。
【0039】
第1駆動軸23は、軸状の部材である。第1駆動軸23は、その先端部において、その中心軸が第1回転体21の中心軸と一致する状態で、第1回転体21を支持している。第1駆動機構24は、第1駆動軸23を支持し、第1駆動軸23を軸心X1周りに回転駆動する機構である。第1駆動機構24は、左から見て時計回り、すなわち硬貨類Cを合流部13に送る方向に第1回転体21、第1接触部22、及び第1駆動軸23を回転駆動させる。第1回転体21は、第1上流路11における硬貨類Cの厚さ方向(鉛直方向)と、第1回転体21の近傍における硬貨類Cの移動方向(前斜め左)との両方に直交する方向に延びる軸心X1周りに回転駆動される。
【0040】
第2回転体31は、円筒状の部材であって、中心軸(軸心X2)が水平面内にて後斜め右を向く姿勢にて、第2上流路12の上方に配置されている。第2接触部32は、第2回転体31の外周面から径方向に突出する部位である。図1図3に示されるように、第2接触部32の外周形状は円筒形状の一部であって、その中心軸は第2回転体31の中心軸と一致している。第2接触部32は、第2回転体31の周方向における一部の領域に設けられている。
【0041】
第2駆動軸33は、軸状の部材である。第2駆動軸33は、その先端部において、その中心軸が第2回転体31の中心軸と一致する状態で、第2回転体31を支持している。第2駆動機構34は、第2駆動軸33を支持し、第2駆動軸33を軸心X2周りに回転駆動する機構である。第2駆動機構34は、右から見て反時計回り、すなわち硬貨類Cを合流部13に送る方向に第2回転体31、第2接触部32、及び第2駆動軸33を回転駆動させる。第2回転体31は、第2上流路12における硬貨類Cの厚さ方向(鉛直方向)と、第2回転体31の近傍における硬貨類Cの移動方向(前斜め右)との両方に直交する方向に延びる軸心X2周りに回転駆動される。
【0042】
第1駆動機構24及び第2駆動機構34は、第1回転体21及び第2回転体31を所定の回転速度で同期して回転させる。第1駆動機構24と第2駆動機構34との回転の同期は、第1駆動機構24及び第2駆動機構34に接続された動力伝達機構により機械的に実現されてもよいし、電気的な制御により実現されてもよい。
【0043】
図3に示されるように、第1接触部22及び第2接触部32は、夫々が第1駆動軸23及び第2駆動軸33を中心として、互いが対向する位置に配置されている。換言すれば、第1接触部22と第2接触部32とは、夫々、第1駆動軸23及び第2駆動軸33を中心軸として、回転位相が180度異なる位置に配置されている。更に、第1回転体21及び第2回転体31は、夫々、第1駆動軸23及び第2駆動軸33を中心軸として、同じ速度で同期して回転するので、第1接触部22と第2接触部32は、常に回転位相が180度ずれた状態となる。
【0044】
第1接触部22及び第2接触部32は、硬貨類Cを厚さ方向から押圧しながら硬貨類Cに接触して、第1上流路11及び第2上流路12から合流部13に送り出す。図3に示される状態では、第1接触部22が第1上流路11にある最も下流側の硬貨類C31に接触して、硬貨類C31を第1上流路11から合流部13へ送り出している。すなわち、第1接触部22は、第1上流路11に対して硬貨類Cに作用する作用状態となっている。一方、このタイミングでは、第2接触部32は、第2駆動軸33の上方に位置しており、第2上流路12にある硬貨類Cに接触し得ない位置にある。すなわち、第2接触部32は、第2上流路12に対して硬貨類Cに作用しない非作用状態となっている。
【0045】
図3に示される状態から第1回転体21及び第2回転体31が180度回転すると、第2接触部32が第2上流路12にある最も下流側の硬貨類C32に接触し、硬貨類C32を第2上流路12から合流部13へ送り出す。すなわち、第2接触部32が、第2上流路12に対して硬貨類Cに作用する作用状態となる。一方、第1接触部22は、第1駆動軸23の上方に移動し、第1上流路11にある硬貨類Cに接触し得ない位置に位置する。すなわち、第1接触部22は、第1上流路11に対して硬貨類Cに作用しない非作用状態となる。
【0046】
第1回転体21及び第2回転体31が更に180度回転すると、第1接触部22及び第2接触部32は再び図3に示される状態となる。なお第1上流路11及び第2上流路12にある硬貨類Cは、硬貨類合流装置100の上流側の装置から供給される硬貨類Cに押されて下流側に移動する。従って、今度は第1接触部22が第1上流路11にある硬貨類C33に接触し、硬貨類C33を第1上流路11から合流部13へ送り出す。
【0047】
第1回転体21及び第2回転体31が更に180度回転すると、第2接触部32により第2上流路12にある硬貨類C34が第2上流路12から合流部13へ送り出される。その後は、第1回転体21及び第2回転体31の回転に伴って、硬貨類C35、C36、C37、C38が、この順に合流部13へ送り出される。このように、両方の上流路(第1上流路11、第2上流路12)に硬貨類Cが存在する場合には、第1上流路11及び第2上流路12から硬貨類Cが交互に合流部13へ送り出される。
【0048】
以上述べたように、送出機構Aは、複数の上流路(第1上流路11、第2上流路12)の夫々に対して、硬貨類Cに作用する作用状態及び硬貨類Cに作用しない非作用状態の何れかの状態となるように構成されると共に、1の上流路に対して作用状態となるときに他の上流路に対して非作用状態となるように構成されている。そして、第1接触部22及び第2接触部32は、硬貨類Cに接触するタイミングが互いに異なるように第1回転体21及び第2回転体31に設けられている。
【0049】
なお、硬貨類合流装置100の上流側の装置からの硬貨類Cの供給状況によっては、第1上流路11又は第2上流路12に硬貨類Cが存在しない場合や、第1回転体21又は第2回転体31の下方に硬貨類Cが到達していない場合がある。この場合は、第1接触部22、第2接触部32が第1駆動軸23、第2駆動軸33の下方に位置し、送出機構Aが作用状態になっても、硬貨類Cは合流部13へ送り出されない。
【0050】
図1に示されるように、第1回転体21は、第1上流路11の幅方向の中心に対して右に偏った位置に配置されている。すなわち、第1回転体21の第1接触部22は、第1上流路11にある硬貨類Cの中心からオフセットした位置にて硬貨類Cと接触する。同様に、第2回転体31は、第2上流路12の幅方向の中心に対して左に偏った位置に配置されている。すなわち、第2回転体31の第2接触部32は、第2上流路12にある硬貨類Cの中心からオフセットした位置にて硬貨類Cと接触する。
【0051】
ここで、上流路(第1上流路11及び第2上流路12)にある硬貨類Cは、硬貨類合流装置100の上流側の装置から供給される硬貨類Cに押されて下流側に移動する。そうすると、回転体(第1回転体21及び第2回転体31)の下方への硬貨類Cの到達の時間周期は、硬貨類Cが上流路に供給される時間周期に等しい。この時間周期よりも、回転体の回転周期の方が大きい場合、接触部(第1接触部22及び第2接触部32)による硬貨類Cの送り出しが間に合わず、接触部と接触すること無く硬貨類Cが合流部13へ(後続の硬貨類Cにより)押し出されてしまう可能性がある。そこで本実施形態では、接触部が上流路を移動する硬貨類Cに接触可能となる時間周期が、上流路に硬貨類Cが供給される時間周期の最小値よりも小さくなるように、回転体の回転周期が設定されている。
【0052】
〔硬貨類の接触の抑制〕
図3に示されるように、接触部(第1接触部22、第2接触部32)は回転体の周方向に所定の長さを有しており、硬貨類Cは所定の直径を有する円盤形状である。そうすると、接触部により硬貨類Cが合流部13へ送り出される際の、接触部と硬貨類Cとが接触するタイミング、及び接触部と硬貨類Cとが接触する位置には、ある程度の幅がある。例えば、図4Aに示されるように硬貨類Cの後端部と接触部の前端部とが接触する場合や、硬貨類Cの中間部と接触部の中間部が接触する場合、図4Bに示されるように硬貨類Cの前端部と接触部の後端部とが接触する場合がある。従って、接触部から合流部13へ硬貨類Cが送り出されるタイミングも変化することになる。一方の接触部から最も遅いタイミングで送り出される硬貨類Cと、他の接触部から最も早いタイミングで送り出される硬貨類Cとが、合流部13、下流路14で接触しないように、回転部の直径、回転部の回転速度、接触部の周方向の長さ、複数の回転体の間の接触部の配置位相の関係(位相差)、下流路の搬送速度、等が決定される。以下、硬貨類C同士の接触を抑制する条件について検討する。
【0053】
図4A~Eに、送出機構Aにより合流部13へ送り出され下流路14を移動する硬貨類Cの位置の時間変化が示されている。各図面の上段が第1上流路11から送り出された硬貨類Cを示し、下段が第2上流路12から送り出された硬貨類Cを示す。なお図4A~Eでは、硬貨類Cの位置関係を分かりやすく示すため合流部13及び下流路14が上段と下段とに分けて描かれているが、実際には硬貨類Cは図1に示される合流部13及び下流路14を移動する。従って、各図の上段と下段とで硬貨類C同士が重なる位置にある場合は硬貨類C同士は衝突する。硬貨類C同士が重ならない位置にある場合は硬貨類C同士は衝突しない。
【0054】
図4A
図4Aには、第1回転体21の第1接触部22の前端部分22aが回転移動の最下点に達し、第1接触部22が硬貨類Cに接触し得る状態となった時点の状態が示されている。図4Aの状態を時刻0とし、このときの回転体(第1回転体21、第2回転体31)の回転位相を0°とする。第2回転体31の第2接触部32は、第1接触部22と位相が180度異なる位置にある。
【0055】
第1接触部22によって最も早いタイミングで硬貨類Cが送り出されるのは、図4Aに示されるように、第1接触部22の前端部分22aが硬貨類Cの後端部に接触して硬貨類Cを送り出す場合である。このようにして送り出された硬貨類Cの位置を、以下、仮想位置C41で示す。
【0056】
図4B
図4Bには、図4Aの状態から時間が経過して、回転体(第1回転体21及び第2回転体31)が60°回転した状態が示されている。図4Bの状態を時刻t1とする。回転体の回転位相は60°である。第1回転体21の第1接触部22の後端部分22bが回転移動の最下点に達している。この状態から時間が経過すると、第1回転体21が回転して第1接触部22が上昇し、第1接触部22が第1上流路11にある硬貨類Cと接触し得ない状態となる。
【0057】
第1接触部22によって最も遅いタイミングで硬貨類Cが送り出されるのは、図4Bに示されるように、第1接触部22の後端部分22bが硬貨類Cの前端部に接触して硬貨類Cを送り出す場合である。このようにして送り出された硬貨類Cの位置を、以下、仮想位置C42で示す。第1接触部22により送り出される1枚の硬貨類Cは、仮想位置C41から仮想位置C42までの間のいずれかの位置に位置することになる。
【0058】
図4Aの状態から図4Bの状態へ遷移する間(時刻0からt1の間、回転体が60°回転する間)に、接触部により送り出された硬貨類Cは、下流搬送機構14aに搬送されて下流路14を下流側へ移動する。その移動距離は、下流搬送機構14aの搬送速度をVとして、V(t1-0)と表される。図4A~Eでは、回転体が60°回転する間に硬貨類Cが図中で4コマ搬送されるものとして、移動後の硬貨類Cの位置が示されている。従って図4Bの状態では、仮想位置C41が、図4Aの位置から図中左に4コマ移動した位置に位置している。
【0059】
図4C
図4Cには、図4Bの状態から時間が経過して、回転体が更に120°回転した状態が示されている。図4Cの状態を時刻t2とする。回転体の回転位相は180°である。第2回転体31の第2接触部32の前端部分32aが回転移動の最下点に達し、第2接触部32が硬貨類に接触しうる状態となっている。
【0060】
第2接触部32によって最も早いタイミングで硬貨類Cが送り出されるのは、図4Cに示されるように、第2接触部32の前端部分32aが硬貨類Cの後端部に接触して硬貨類Cを送り出す場合である。このようにして送り出された硬貨類Cの位置を、以下、仮想位置C43で示す。
【0061】
図4Bの状態から図4Cの状態へ遷移する間(時刻t1からt2の間、あるいは回転体が120°回転する間)に、接触部により送り出された硬貨類Cは、下流搬送機構14aに搬送されて下流路14を下流側へ移動する。その移動距離は、下流搬送機構14aの搬送速度をVとして、V(t2-t1)と表される。なお回転体が120°回転しているので、図中の移動距離は8コマである。これと同じ距離だけ下流側に移動した仮想位置C41及び仮想位置C42が、図4Cに示されている。
【0062】
図4Cに示される状態では、仮想位置C42に硬貨類Cがあり仮想位置C43に硬貨類Cがあったとしても、硬貨類C同士は重ならず、硬貨類C同士が合流部13で衝突することはない。一方、図5は、図4Cと同様の状態で、硬貨類Cの直径が大きい場合を示している。この場合、仮想位置C42にある硬貨類Cの後端部は図4Cの状態に比べて第1回転体21に近く、仮想位置C43にある硬貨類Cの前端部は図4Cの状態に比べて第2回転体31から遠い。これにより、仮想位置C42にある硬貨類Cの後端部と仮想位置C43にある硬貨類Cの前端部とが上段・下段で重なる位置にある。従って、図5に示される状態では、仮想位置C42にある硬貨類Cと仮想位置C43にある硬貨類Cとが合流部13で衝突してしまう。
【0063】
硬貨類C同士の衝突が発生しない条件を検討する。時刻t1(図4B)から時刻t2(図4C)までの間に仮想位置C42にある硬貨類Cが進む距離L1(図4C参照)は、下流搬送機構14aの搬送速度をVとして、V(t2-t1)と表される。図4Cに示される状態のように、硬貨類Cの直径が比較的小さく、距離L1が硬貨類Cの2枚分の長さ(すなわち硬貨類Cの直径Rの2倍)よりも大きい場合には、硬貨類C同士の衝突は発生しない。一方、図5に示される状態のように、硬貨類Cの直径が比較的大きく、距離L1が硬貨類Cの2枚分の長さよりも小さい場合には、硬貨類C同士の衝突が発生する。従って、硬貨類C同士の衝突が発生しない条件は次式で表される。

L1>2R ・・・(1)

V(t2-t1)>2R ・・・(2)

なお、L1=V(t2-t1)であるから、式(1)と式(2)とは同等の条件を示している。
【0064】
これらの条件式から、硬貨類Cの直径Rが大きい場合には、式(1)及び式(2)の左辺を大きくする必要があることが分かる。左辺を大きくするには、下流搬送機構14aの搬送速度をVを大きくするか、(t2-t1)を大きくすればよい。時刻t1は、第1回転体21の第1接触部22の後端部分22bが回転移動の最下点に達する瞬間であるから、第1回転体21の第1接触部22の周方向の長さを小さくすることにより、t1を小さくし、(t2-t1)を大きくすることができる。また、第1回転体21の回転速度を小さくすることにより、t2を大きくし、(t2-t1)を大きくすることができる。逆に、硬貨類Cの直径Rが小さい場合には、下流搬送機構14aの搬送速度Vを小さく、又は、第1回転体21の第1接触部22の周方向の長さを大きく、又は、第1回転体21の直径を小さくすることができる。
【0065】
別の観点から式(1)について検討するに、距離L1は、時刻t1(図4B)から時刻t2(図4C)までの間に仮想位置C42にある硬貨類Cが進む距離である。ここで時刻t1は、「第1接触部22が第1上流路11にある硬貨類Cと接触しうる最も遅いタイミング」、又は、「第1接触部22が第1上流路11にある硬貨類Cと接触し得なくなるタイミング」といえる。時刻t2は、「第2接触部32が第2上流路12にある硬貨類Cと接触しうる最も早いタイミング」といえる。従って、硬貨類C同士の衝突が発生しない条件を、次のように表現することができる。
「複数の接触部のうちの1の接触部が上流路にある硬貨類に接触し得る最も遅いタイミングから、複数の接触部のうちの他の接触部が上流路にある硬貨類に次に接触し得る最も早いタイミングまでの間に1の接触部に送り出された硬貨類が移動する距離が硬貨類の直径の2倍よりも大きい。」
又は、
「複数の接触部のうちの1の接触部が上流路にある硬貨類に接触し得ない状態となってから、複数の接触部のうちの他の接触部が上流路にある硬貨類に次に接触し得る状態となるまでの間に1の接触部に送り出された硬貨類が移動する距離が硬貨類の直径の2倍よりも大きい。」
【0066】
図4D
図4Dには、図4Cの状態から時間が経過して、回転体(第1回転体21及び第2回転体31)が60°回転した状態が示されている。図4Dの状態を時刻t3とする。回転体の回転位相は240°である。第2回転体31の第2接触部32の後端部分32bが回転移動の最下点に達している。この状態から時間が経過すると、第2回転体31が回転して第2接触部32が上昇し、第2接触部32が第2上流路12にある硬貨類Cと接触し得ない状態となる。
【0067】
第2接触部32によって最も遅いタイミングで硬貨類Cが送り出されるのは、図4Dに示されるように、第2接触部32の後端部分32bが硬貨類Cの前端部に接触して硬貨類Cを送り出す場合である。このようにして送り出された硬貨類Cの位置を、以下、仮想位置C44で示す。第2接触部32により送り出される1枚の硬貨類Cは、仮想位置C43から仮想位置C44までの間のいずれかの位置に位置することになる。
【0068】
図4Cの状態から図4Dの状態へ遷移する間(時刻t2からt3の間、回転体が60°回転する間)に、接触部により送り出された硬貨類Cは、下流搬送機構14aに搬送されて下流路14を下流側へ移動する。その移動距離は、下流搬送機構14aの搬送速度をVとして、V(t3-t2)と表される。回転体が60°回転しているので、図中の移動距離は4コマである。これと同じ距離だけ下流側へ移動した仮想位置C41、C42、C43が、図4Dに示されている。
【0069】
図4E
図4Eには、図4Dの状態から時間が経過して、回転体が更に120°回転した状態が示されている。図4Eの状態を時刻t4とする。回転体の回転位相は360°である。すなわち、回転体が一回転して図4Aの位置に戻った状態である。第1回転体21の第1接触部22の前端部分22aが再び回転移動の最下点に達し、第1接触部22が硬貨類Cに接触しうる状態となっている。この状態で送り出された硬貨類Cの位置を、以下、仮想位置C45で示す。
【0070】
図4Dの状態から図4Eの状態へ遷移する間(時刻t3からt4の間、あるいは回転体が120°回転する間)に、接触部により送り出された硬貨類Cは、下流搬送機構14aに搬送されて下流路14を下流側へ移動する。その移動距離は、下流搬送機構14aの搬送速度をVとして、V(t4-t3)と表される。回転体が120°回転しているので、図中の移動距離は8コマである。これと同じ距離だけ下流側に移動した仮想位置C41、C42、C43、C44が、図4Eに示されている。
【0071】
図4Eに示される状態においても、硬貨類C同士の衝突(仮想位置C44にある硬貨類Cと仮想位置C45にある硬貨類Cの衝突)が発生する可能性がある。図4Cの状態と同様の検討から、硬貨類C同士の衝突が発生しない条件は次式で表される。

L2>2R ・・・(3)

V(t4-t3)>2R ・・・(4)

距離L2は、時刻t3(図4D)から時刻t4(図4E)までの間に仮想位置C44にある硬貨類Cが進む距離であり、下流搬送機構14aの搬送速度をVとしてV(t4-t3)で表される。すなわちL2=V(t4-t3)であり、式(3)と式(4)とは同等の条件を示している。
【0072】
硬貨類C同士の衝突が発生しない条件(式(3),式(4))について更に検討する。硬貨類合流装置100の下流路14に下流搬送機構14aが設けられず、接触部から送り出された硬貨類Cが接触部の移動速度、すなわち接触部の周速度で移動する場合を考える。この場合、図4Dの状態から図4Eの状態へ遷移する間(時刻t3からt4の間、あるいは回転体が120°回転する間)に硬貨類Cが移動する距離L2は、その間に回転部が回転した周長、換言すれば、回転部の回転角度に対応する外周長と等しくなる。
【0073】
第1回転体21の外周S1及び第2回転体31の外周S2を平面展開した状態が図6に示されている。図6には、第1接触部22及び第2接触部32に送り出された硬貨類Cの仮想位置C41、C42、C43、C44、C45が、外周S1及び外周S2に重ねて示されている。時刻t3(図4D)においては第2接触部32の後端部分32bが回転移動の最下点に位置し、時刻t4(図4E)においては第1接触部22の前端部分22aが回転移動の最下点に位置している。従って、時刻t3から時刻t4の間に硬貨類Cが移動する距離L2は、図6に示されるように、第2接触部32の後端部分32bと第1接触部22の前端部分22aとの距離である。従って、硬貨類C同士の衝突が発生しない条件を、次のように表現することができる。
「複数の接触部(22、32)が、回転体の回転方向に対して、1の接触部(32)の後端部分(32b)と他の接触部(22)の前端部分(22a)との周方向距離(L2)が硬貨類Cの直径の2倍よりも大きくなるように回転体に設けられている。」
【0074】
〔他の実施形態〕
〔1〕送出機構Aの形態は、上記の実施形態の記載例に限られない。以下の説明では、本実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。図7に示される硬貨類合流装置100の送出機構Aは、複数の上流路(第1上流路11、第2上流路12)に共通して設けられた1つの回転体101と、複数の上流路の夫々に対応して設けられた接触部102、103を有している。回転体101は、図示されない駆動機構により軸心X3周りに回転駆動される。接触部102は、第1上流路11の上方において、回転体101の外周面から径方向に突出して設けられている。接触部103は、第2上流路12の上方において、回転体101の外周面から径方向に突出して設けられている。接触部102、接触部103の外周形状は、円筒形状の一部であって、その中心軸は回転体101の中心軸(軸心X3)と一致している。接触部102、103は、上流路にある硬貨類Cに接触して、硬貨類Cを上流路から合流部13に送り出す。
【0075】
〔2〕図8に示される硬貨類合流装置100の送出機構Aは、複数の上流路(第1上流路11、第2上流路12)に共通して設けられた1つの回転体201と、複数の上流路の夫々に対応して設けられた接触部202、203を有している。回転体201は、図示されない駆動機構により軸心X4周りに回転駆動される。接触部202、203は、回転体201の外周面から径方向に突出するレバー状(あるいはカム状)の部位である。接触部202は、第1上流路11の上方に設けられている。接触部203は、第2上流路12の上方に設けられている。接触部202、203は、上流路にある硬貨類Cに接触して、硬貨類Cを上流路から合流部13に送り出す。
【0076】
〔3〕図9に示される硬貨類合流装置100の送出機構Aは、複数の上流路(第1上流路11、第2上流路12)に共通して設けられた1つの回転体301と、複数の上流路の夫々に対応して設けられた接触部302、303を有している。回転体301は、図示されない駆動機構により軸心X5周りに回転駆動される。接触部302、303は、円盤状の部材であって、その中心軸が軸心X5に一致せず偏心した状態で、回転体301に設けられている。接触部302は、第1上流路11の上方に設けられている。接触部303は、第2上流路12の上方に設けられている。接触部302、303は、上流路にある硬貨類Cに接触して、硬貨類Cを上流路から合流部13に送り出す。
【0077】
〔4〕以上述べたように、回転体は複数の上流路の各々に対応して1ずつ設けられてもよいし、複数の上流路に共通して1つ設けられてもよい。また、1つの上流路に複数の回転体が設けられてもよい。
【0078】
〔5〕上記の実施形態では、接触部が複数の上流路の各々に対応して1ずつ設けられたが、1つの上流路に対応して複数の接触部が設けられてもよい。例えば、回転体の周方向に離間した状態で複数の接触部が回転体に設けられてもよい。
【0079】
〔6〕上記の実施形態では、回転体の周方向における一部の領域に接触部が設けられ、回転体が所定の回転速度で回転駆動されることにより、間欠的に接触部が上流路の硬貨類Cに接触可能な状態になる。接触部が直線往復運動や揺動運動するように送出機構Aが構成されてもよい。接触部を含む機構が上下移動することにより、間欠的に接触部が上流路の硬貨類Cに接触可能な状態になるよう、送出機構Aが構成されてもよい。回転体が電気的な制御により間欠的に回転駆動されることにより、間欠的に接触部が上流路の硬貨類Cに接触可能な状態になるよう、送出機構Aが構成されてもよい。
【0080】
〔7〕上記の実施形態では、回転体が硬貨類Cの中心からオフセットした位置にて硬貨類Cと接触するように送出機構Aが構成されたが、回転体が硬貨類Cの中心にて硬貨類Cと接触するように送出機構Aが構成されてもよい。
【0081】
〔8〕上記の実施形態では、第1上流路11における合流部13との接続部分、第2上流路12、合流部13、及び下流路14が水平方向に設けられ、単一の平面上(水平面上)に設けられたが、水平方向に対して傾斜して設けられてもよいし、交差する平面上に設けられてもよいし、曲面上に設けられてもよい。
【0082】
〔9〕上記の実施形態では、第1上流路11の下流側部分、第2上流路12、及び下流路14は、直線状であり、前後方向に沿って平行に設けられたが、曲線状であってもよいし、互いに交差する方向に延びていてもよい。
【0083】
〔10〕上流路の数は3つ以上であってもよい。
【0084】
〔11〕上流路の上流側、及び下流路の下流側には任意の装置が接続可能であり、例えば、硬貨類Cの表裏を取揃える装置や、硬貨類Cの製造装置、硬貨類Cに処理(加工、検査、洗浄、梱包等)を施す装置等が接続可能である。
【0085】
〔12〕硬貨類合流装置100に供給され処理される硬貨類Cは単一の種類に限られない。硬貨類合流装置100は、異なる外径、形状、及び厚さを有する複数種類の硬貨類Cを一層一列に合流させることができる。
【0086】
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
硬貨類合流装置は、硬貨類の製造ライン、硬貨処理機、遊戯施設等、硬貨類を取り扱う装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
11 :第1上流路(上流路)
12 :第2上流路(上流路)
13 :合流部
14 :下流路
21 :第1回転体(回転体)
22 :第1接触部(接触部)
22a :前端部分
22b :後端部分
31 :第2回転体(回転体)
32 :第2接触部(接触部)
32a :前端部分
32b :後端部分
100 :硬貨類合流装置
101 :回転体
102 :接触部
103 :接触部
201 :回転体
202 :接触部
203 :接触部
301 :回転体
302 :接触部
303 :接触部
A :送出機構
C、C31等:硬貨類
X1 :軸心
X2 :軸心
X3 :軸心
X4 :軸心
X5 :軸心
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9