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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/196 20220101AFI20231107BHJP
   F24H 15/246 20220101ALI20231107BHJP
【FI】
F24H15/196 301M
F24H15/246
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020108894
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006585
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 俊輝
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027725(JP,A)
【文献】特開2001-263790(JP,A)
【文献】特開2001-235226(JP,A)
【文献】特開平02-089950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から導入される水を通す通水管と、
燃焼ガスを燃焼させて排気ガスを生じさせるバーナと、
前記通水管の途中に設けられ、前記通水管の内部を通る水に対して前記排気ガスの熱を伝達する熱交換器と、
前記通水管を通って前記熱交換器で加熱された水を浴槽に導く連通管と、
前記連通管を介して前記浴槽内に設定値の水を供給する落とし込み制御を行う落とし込み制御部と、
前記浴槽内の水位を検出する水位検出部と、
前記浴槽内に水を落とし込んだときの前記水位検出部の検出結果に基づいて、高さレベルの異なる複数の水位領域の各々の面積値を算出する算出部と、
を備え、
前記落とし込み制御部は、
複数の前記面積値の関係が正常条件を満たさない場合において、前記落とし込み制御の開始条件が成立した場合に、前記浴槽内の残水の水位に基づいて各々の前記面積値の中から少なくとも1つの前記面積値を選択し、
選択した前記面積値と、前記残水の水位と、前記設定値とに基づいて、前記設定値に対して不足する不足量を算出する不足量算出部と、
を備えた給湯システム。
【請求項2】
前記算出部は、下限水位決定条件と上限水位決定条件とが規定された上昇水位計算方式が水位領域別に複数定められ、前記浴槽内に水を落とし込んだときに各々の前記上昇水位計算方式で算出される各上昇水位に基づいて、各々の前記上昇水位計算方式にそれぞれ対応する水位領域別の各々の前記面積値を算出する請求項1に記載の給湯システム。
【請求項3】
複数の前記水位領域として、空の前記浴槽に対して前記設定値の第1割合まで水を落とし込んだ状態から前記第1割合よりも大きい第2割合まで水を落とし込むまでの第1水位領域と、空の前記浴槽に対して前記第1割合よりも大きい第3割合まで水を落とし込んだ状態から前記設定値まで水を落とし込むまでの第2水位領域と、空の前記浴槽に対して前記設定値の前記第1割合まで水を落とし込んだ状態から前記設定値まで水を落とし込むまでの第3水位領域と、が定められ、
前記算出部は、前記第1水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて前記第1水位領域に対応する第1面積値を算出し、前記第2水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて前記第2水位領域に対応する第2面積値を算出し、前記第3水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて前記第3水位領域に対応する第3面積値を算出し、
前記落とし込み制御部は、
複数の前記面積値の関係が正常条件を満たさない場合において、前記開始条件が成立した場合に、前記浴槽内の前記残水の水位が閾値未満である場合には前記第3面積値を選択し、前記浴槽内の前記残水の水位が前記閾値以上である場合には前記第2面積値を選択する
請求項1又は請求項2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記落とし込み制御部は、前記第2面積値に対する前記第1面積値の割合が予め定められた正常範囲内でない場合に前記正常条件を満たさないと判定する
請求項3に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記第3割合は前記第2割合と同じ割合である
請求項3又は請求項4に記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給湯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動湯張りを行う給湯器が開示されている。この給湯器は、湯張りを開始する際、浴槽内の残湯の有無を判断し、残湯が無い場合には、設定湯量の湯を浴槽内に落とし込み、残湯が有る場合には、設定湯量に対して不足する湯量を浴槽内に落とし込む。不足する湯量は以下のように算出される。この給湯器は、浴槽への湯張りの試運転を行う際に、最小設定湯量を落とし込んだときの基準水位を記憶し、さらに、最小設定水位から60Lの湯水を落とし込んだときの水位の上昇幅から、浴槽の湯量と水位との関係式を設定する。そして、この給湯器は、実際に湯張りを行う際、浴槽内に残湯が有る場合には、上記関係式と水位センサの検出値とを比較して、設定湯量までの不足量を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-91169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴槽には様々な形状があり、浴槽の形状の違いを加味した不足量の算出が求められている。
【0005】
そこで、本開示では、浴槽の形状の違いを加味して不足量を算出し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである給湯システムは、外部から導入される水を通す通水管と、燃焼ガスを燃焼させて排気ガスを生じさせるバーナと、前記通水管の途中に設けられ、前記通水管の内部を通る水に対して前記排気ガスの熱を伝達する熱交換器と、前記通水管を通って前記熱交換器で加熱された水を浴槽に導く連通管と、前記連通管を介して前記浴槽内に設定値の水を供給する落とし込み制御を行う落とし込み制御部と、前記浴槽内の水位を検出する水位検出部と、前記浴槽内に水を落とし込んだときの前記水位検出部の検出結果に基づいて、高さレベルの異なる複数の水位領域の各々の面積値を算出する算出部と、を備え、前記落とし込み制御部は、複数の前記面積値の関係が正常条件を満たさない場合において、前記落とし込み制御の開始条件が成立した場合に、前記浴槽内の残水の水位に基づいて各々の前記面積値の中から少なくとも1つの前記面積値を選択し、選択した前記面積値と、前記残水の水位と、前記設定値とに基づいて、前記設定値に対して不足する不足量を算出する不足量算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る給湯システムは、浴槽の形状の違いを加味して不足量を算出し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る給湯システムを例示する概略回路図である。
図2図2は、第1実施形態に係る給湯システムを構成するコントローラ及びリモートコントローラを概略的に例示するブロック図である。
図3図3(A)は、一般的な形状の浴槽を例示する概略断面図である。図3(B)は、特殊な形状の浴槽を例示する概略断面図である。
図4図4は、第1実施形態の給湯システムで行われる面積値設定処理の流れの前半部分を例示するフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態の給湯システムで行われる面積値設定処理の流れの後半部分を例示するフローチャートである。
図6図6(A)は、設定湯量の湯が落とし込まれた状態の一般的な形状の浴槽を例示する概略断面図である。図6(B)は、設定湯量の湯が落とし込まれた状態の特殊な形状の浴槽を例示する概略断面図である。
図7図7は、メモリに記憶される各種データを例示する説明図である。
図8図8は、第1実施形態の給湯システムで行われる自動湯張り制御の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明は、給湯システムの実施形態の一例に関する。なお、以下で示される〔1〕~〔3〕の特徴は、矛盾しない態様でどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕外部から導入される水を通す通水管と、燃焼ガスを燃焼させて排気ガスを生じさせるバーナと、前記通水管の途中に設けられ、前記通水管の内部を通る水に対して前記排気ガスの熱を伝達する熱交換器と、前記通水管を通って前記熱交換器で加熱された水を浴槽に導く連通管と、前記連通管を介して前記浴槽内に設定値の水を供給する落とし込み制御を行う落とし込み制御部と、前記浴槽内の水位を検出する水位検出部と、前記浴槽内に水を落とし込んだときの前記水位検出部の検出結果に基づいて、高さレベルの異なる複数の水位領域の各々の面積値を算出する算出部と、を備え、前記落とし込み制御部は、複数の前記面積値の関係が正常条件を満たさない場合において、前記落とし込み制御の開始条件が成立した場合に、前記浴槽内の残水の水位に基づいて各々の前記面積値の中から少なくとも1つの前記面積値を選択し、選択した前記面積値と、前記残水の水位と、前記設定値とに基づいて、前記設定値に対して不足する不足量を算出する不足量算出部と、を備えた給湯システム。
【0011】
上記〔1〕の給湯システムは、高さレベルの異なる複数の水位領域の各々の面積値の中から浴槽内の残水の水位に基づいて選択した面積値と、残水の水位と、設定値とに基づいて、設定値に対して不足する不足量を算出することができる。したがって、この給湯システムによれば、水位領域によって面積値が異なるような形状の浴槽に対して、不足量をより正確に算出することができる。
【0012】
なお、「高さレベルが異なる」とは、上限水位又は下限水位のうちの少なくともいずれかが異なっていればよい。例えば、いずれか一の水位領域と他の水位領域とを比較したとき、上限水位又は下限水位のうちの少なくともいずれかが異なっていれば、それらの水位領域は「高さレベルが異なる複数の水位領域」に該当する。
【0013】
〔2〕前記算出部は、下限水位決定条件と上限水位決定条件とが規定された上昇水位計算方式が水位領域別に複数定められ、前記浴槽内に水を落とし込んだときに各々の前記上昇水位計算方式で算出される各上昇水位に基づいて、各々の前記上昇水位計算方式にそれぞれ対応する水位領域別の各々の前記面積値を算出する〔1〕に記載の給湯システム。
【0014】
上記〔2〕の給湯システムによれば、上昇水位計算方式に従って水位領域別の各々の面積値を算出することで、水位領域別の各々の面積値を容易に算出することができる。
【0015】
〔3〕複数の前記水位領域として、空の前記浴槽に対して前記設定値の第1割合まで水を落とし込んだ状態から前記第1割合よりも大きい第2割合まで水を落とし込むまでの第1水位領域と、空の前記浴槽に対して前記第1割合よりも大きい第3割合まで水を落とし込んだ状態から前記設定値まで水を落とし込むまでの第2水位領域と、空の前記浴槽に対して前記設定値の前記第1割合まで水を落とし込んだ状態から前記設定値まで水を落とし込むまでの第3水位領域と、が定められ、前記算出部は、前記第1水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて前記第1水位領域に対応する第1面積値を算出し、前記第2水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて前記第2水位領域に対応する第2面積値を算出し、前記第3水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて前記第3水位領域に対応する第3面積値を算出し、前記落とし込み制御部は、複数の前記面積値の関係が正常条件を満たさない場合において、前記開始条件が成立した場合に、前記浴槽内の前記残水の水位が閾値未満である場合には前記第3面積値を選択し、前記浴槽内の前記残水の水位が前記閾値以上である場合には前記第2面積値を選択する〔1〕又は〔2〕に記載の給湯システム。
【0016】
上記〔3〕の給湯システムは、浴槽内の残水の水位が閾値未満となるような「不足分が広範囲にわたる場合」には、広範囲の第3水位領域に対応する第3面積値を選択し、「不足分が浴槽内の比較的上側の部分に限られる場合」には、第2水位領域に対応する第2面積値を選択する。したがって、この給湯システムによれば、水位領域によって面積値が異なるような形状の浴槽において、浴槽内の残水の水位が比較的上側の部分に限られる場合であっても、より正確に不足量を算出することができる。
【0017】
〔4〕前記落とし込み制御部は、前記第2面積値に対する前記第1面積値の割合が予め定められた正常範囲内でない場合に前記正常条件を満たさないと判定する〔3〕に記載の給湯システム。
【0018】
上記〔4〕の給湯システムによれば、第1面積値と第2面積値とが大きく異なるような形状の浴槽に対しても、より正確な不足量を算出することができる。
【0019】
〔5〕前記第3割合は前記第2割合と同じ割合である
〔3〕又は〔4〕に記載の給湯システム。
【0020】
上記〔5〕の給湯システムによれば、第3割合を第2割合とは別に記憶しておく必要がなく、第3割合に関連する情報(例えば、空の浴槽に対して第3割合まで水を落とし込んだときの水位など)を管理する必要もないので、記憶領域の増大化を抑制することができる。
【0021】
<第1実施形態>
以下の説明は、第1実施形態に関する。
(基本構成)
図1で示す給湯システム1は、浴槽60への給湯機能と浴槽内の水の加熱機能とを備えた風呂・給湯システムとして構成され、主として、給湯側回路2と風呂側回路3とを備える。給湯側回路2は、入水管12、出湯管10、ガスバーナ4(バーナ)、給湯側熱交換器6(熱交換器)などを備え、外部から供給された水道水を加熱し出湯させる経路として機能する。風呂側回路3は、ガスバーナ54(風呂側バーナ)、風呂側熱交換器56、配管66、循環ポンプ62、水位センサ63、サーミスタ64,65などを備え、自動湯張りの際の循環加熱、風呂の追い炊き等に利用される。
【0022】
給湯側回路2では、入水管12、伝熱管8a、配管20、伝熱管7a、出湯管10によって構成される管路が給湯側通水路として機能する。入水管12は、水入口16からの水が流れ込む経路として構成され、出湯管10は、出湯口18へ湯を送り出す経路として構成される。ガスバーナ4は、バーナの一例に相当し、燃焼ガスを燃焼させて燃焼排気を発生させる部分である。給湯側熱交換器6は、熱交換器の一例に相当し、給湯側通水路(入水管12、伝熱管8a、配管20、伝熱管7a、出湯管10によって構成される管路)を通る水にガスバーナ4で生じた熱を伝達して湯を沸かす部分であり、給湯側通水路の途中の位置に設けられ、給湯側通水路の内部を通る水に対してガスバーナ4での燃焼によって生じた熱を伝えるように機能する。給湯側熱交換器6は、一次熱交換器7及び二次熱交換器8を備える。一次熱交換器7は、給湯燃焼室90内においてガスバーナ4の燃焼排気経路の上流側に配置され、二次熱交換器8は、給湯燃焼室90内において燃焼排気経路の下流側に配置されている。
【0023】
給湯側回路2において、二次熱交換器8の入口には、水道水を供給する構成で入水管12が接続されている。入水管12には、入水管12を通る水の温度(即ち、通水管における熱交換器よりも上流側の位置の水温)を検出する水温検出部としてのサーミスタ25と、入水管12内の通水量(即ち、通水管を流れる水の量)を検出する水量検出部としての水量センサ34とが設けられている。入水管12の下流側には、二次熱交換器8の伝熱管8aが接続され、更にその下流側には、二次熱交換器8の伝熱管8aと一次熱交換器7の伝熱管7aとを連結する配管20が接続される。この配管20に連結された構成で一次熱交換器7の伝熱管7aが接続され、一次熱交換器7の出口には、一次熱交換器7で加熱された湯を出湯する構成で出湯管10が接続されている。出湯管10には、出湯管10内の水の温度を検出するサーミスタ26が設けられている。本構成では、入水管12、伝熱管8a、配管20、伝熱管7a、出湯管10が通水管の一例に相当し、給湯システム1の外部に設けられた図示しない水道から導入された水を通す流路として機能する。
【0024】
給湯側熱交換器6は、一次熱交換器7によって燃焼排気の顕熱を回収した後、二次熱交換器8によって潜熱を回収するように機能する。具体的には、一次熱交換器7は、一次熱交換器7内の通水経路となる伝熱管7aを備えており、伝熱管7a内を通る水に対してガスバーナ4で発生した燃焼排気に含まれる燃焼熱を伝熱し、顕熱の熱エネルギーを通水に伝達する形で熱交換する。また、二次熱交換器8は、二次熱交換器8内の通水経路となる伝熱管8aを備えており、伝熱管8a内を通る水に対し、ガスバーナ4で発生した燃焼排気が一次熱交換器7を通過した後の燃焼熱を伝熱し、潜熱の熱エネルギーを通水に伝達するように熱交換する。
【0025】
入水管12と出湯管10との間をバイパスする通水経路として、給湯側熱交換器6とは異なる通水経路として構成されたバイパス路14が設けられている。バイパス路14には、バイパス路14の通水を遮断した閉塞状態から開放状態(閉塞状態よりも開度を増大させた状態)に変化させ得る構成(例えば、無段階に変化させ得る構成)をなすバイパス弁32が設けられている。入水管12において、バイパス路14が連結する分岐位置よりも上流側には、通水量制御弁33が設けられている。通水量制御弁33は、コントローラ22からの指示を受けて駆動軸の回転角度が制御されるモータを備え、入水管12を閉塞状態と全開状態との間で様々な開度に連続的に変更できる構成となっている。本構成では、通水量制御弁33が、通水管を流れる水の量を調節するように機能する。
【0026】
ガスバーナ4へのガスの供給を行うガス管40には、上流側からガス元電磁弁42、給湯ガス比例制御弁44、各ガスバーナ4への分岐管ごとの給湯切替電磁弁46,46・・が夫々設けられている。また、給湯燃焼室90の下方には、燃焼用空気を各ガスバーナ4(バーナ)及びガスバーナ54(風呂側バーナ)へ供給するファン48が設けられている。ガスバーナ54(風呂側バーナ)に接続されるガス管からの分岐管には、切替電磁弁53が設けられている。給湯ガス比例制御弁44、給湯切替電磁弁46は、ガスバーナ4へのガス量を調整するように機能する。
【0027】
風呂側回路3において、配管66は、浴槽60側からの水を風呂側熱交換器56側へと導くための戻り配管67と、風呂側熱交換器56側からの水を浴槽60側へと導くための往き配管68と、戻り配管67と往き配管68とに連結される風呂側熱交換器56内の配管69とを備える。風呂側熱交換器56は、風呂一次熱交換器57と風呂二次熱交換器58とを備え、配管66を通る水にガスバーナ54(風呂側バーナ)で生じた熱を伝達するように機能する。
【0028】
戻り配管67は、浴槽60と風呂二次熱交換器58との間に配置されており、この戻り配管67には、循環ポンプ62と、水位センサ63と、戻り配管67を通る水の温度(即ち、浴槽60内の水温)を検出するサーミスタ64(風呂サーミスタ)とが設けられている。循環ポンプ62は、配管66内の水を流動させる装置である。水位センサ63は、水位検出部の一例に相当し、水圧によって浴槽31内の水位を検出するように機能する。
【0029】
往き配管68は、風呂一次熱交換器57と浴槽60との間に配置される。往き配管68には、出湯管10から分岐された落とし込み管70が接続され、落とし込み管70には、給湯用電磁弁72及び落とし込み水量センサ74が設けられている。そして、落とし込み管70に設けられた給湯用電磁弁72を開弁させることで、給湯側回路2で加熱された湯を浴槽60へ供給することが可能となっている。落とし込み水量センサ74は、落とし込み管70を介して浴槽60へと供給される供給水量を検出する機能を有する。落とし込み管70は、給湯側回路2の給湯側通水路から風呂側回路3の配管66(循環路)へと湯を通す経路となっている。具体的には、落とし込み管70及び配管66は、連通管の一例に相当し、通水管(具体的には、出湯管10)より分岐するとともに浴槽60に連通し、通水管を通って給湯側熱交換器6で加熱された水を浴槽60に導くように機能する。
【0030】
給湯システム1には、図1図2で示すコントローラ22が設けられる。図2で示すコントローラ22は、例えば、公知のマイクロコンピュータ等として構成される制御部22Aと、公知の半導体メモリ等(例えばEEPROM等の不揮発性メモリ)として構成されるメモリ22Bと、外部との通信を行うためのインタフェースとして構成される通信部22Cとを備える。コントローラ22は、給湯側回路2や風呂側回路3に設けられた様々なセンサからの信号を取得可能に構成され、給湯側回路2や風呂側回路3に設けられた様々なアクチュエータを制御し得る。
【0031】
図2のように、複数のリモートコントローラ80は、コントローラ22と通信し得る構成で配置される。図1図2の例では、複数のリモートコントローラ80として、浴室内に設けられる第1リモートコントローラ81と、浴室とは異なる場所(例えば台所等)に設けられる第2リモートコントローラ82とが設けられる。
【0032】
図2のように、第1リモートコントローラ81は、公知のマイクロコンピュータ等として構成される制御部81Aと、液晶表示装置等として構成される表示部81Bと、押圧ボタン等の公知のスイッチが複数設けられてなる操作部81Cと、コントローラ22や第2リモートコントローラ82と通信を行う通信部81Dと、音声を出力するスピーカなどからなる音声出力部81Eとを備える。操作部81Cは、複数の操作部によって構成されており、浴槽60への自動湯張りを指示する入力操作、自動湯張りを予約する入力操作、上述した付加機能のオンオフ状態を切り替える入力操作などに用いられる。
【0033】
第2リモートコントローラ82も同様であり、公知のマイクロコンピュータ等として構成される制御部82Aと、液晶表示装置等として構成される表示部82Bと、押圧ボタン等の公知のスイッチが複数設けられてなる操作部82Cと、第2リモートコントローラ82で生成された信号等をコントローラ22に伝達するための通信部82Dと、音声を出力するスピーカなどからなる音声出力部82Eとを備える。第2リモートコントローラ82は第1リモートコントローラ81と同様の構成、或いは簡略化された構成をなし、第1リモートコントローラ81と同様の設定が可能である。両リモートコントローラ80は、オンオフ状態が連動するようになっている。両リモートコントローラ80において、一方で設定された内容は、相互に反映される。
【0034】
上述したコントローラ22は、落とし込み制御部、算出部、不足量算出部の一例に相当する。コントローラ22は、落とし込み管70(連通管)を介して浴槽60内に設定湯量の湯水を供給する落とし込み制御を行いうる。設定湯量は、設定値の一例に相当する。設定湯量は、例えば初期値(例えば160L)が設定されており、例えばリモートコントローラ80を利用してユーザが任意の値を設定可能とされている。コントローラ22は、浴槽60内に水を落とし込んだときの水位センサ63の検出結果に基づいて、複数の水位領域の各々の面積値を算出しうる。より具体的には、コントローラ22は、下限水位決定条件と上限水位決定条件とが規定された上昇水位計算方式が水位領域別に複数定められ、浴槽60内に水を落とし込んだときに各々の上昇水位計算方式で算出される各上昇水位に基づいて、各々の上昇水位計算方式にそれぞれ対応する水位領域別の各々の面積値を算出しうる。コントローラ22は、算出した各々の面積値を記憶しうる。コントローラ22は、複数の面積値の関係が正常条件を満たさない場合において、上記落とし込み制御の開始条件が成立した場合に、浴槽60内の残水の水位に基づいて上記各々の面積値の中から少なくとも1つの面積値を選択しうる。コントローラ22は、選択した面積値と、残水の水位と、設定湯量とに基づいて、設定湯量に対して不足する不足量を算出しうる。
【0035】
本実施形態では、複数の上記水位領域として、第1水位領域と、第2水位領域と、第3水位領域とが定められる。第1水位領域は、コントローラ22が空の浴槽60に対して設定湯量の第1割合まで水を落とし込んだ状態から第1割合よりも大きい第2割合まで水を落とし込むまでの領域である。コントローラ22は、落とし込み水量センサ74からの信号に基づいて浴槽60へと供給される供給水量を検出することができ、検出した供給水量を積算することで浴槽60への落とし込み量を算出することができる。これにより、コントローラ22は、浴槽60内にどの程度水を落とし込んだ状態であるかを把握することができる。第1水位領域に対応する下限水位決定条件は、例えば空の浴槽60に対して設定湯量の第1割合まで水を落とし込んだ状態で水位センサ63によって検出される水位(以下、「第1水位」ともいう。)を下限水位として決定することである。第1水位領域に対応する上限水位決定条件は、例えば空の浴槽60に対して設定湯量の第2割合まで水を落とし込んだ状態で水位センサ63によって検出される水位(以下、「第2水位」ともいう。)を上限水位として決定することである。第1水位領域に対応する上昇水位計算方式は、例えば第1水位領域の上限水位(第2水位)から第1水位領域の下限水位(第1水位)を差し引く計算方式である。なお、第1割合は、0%よりも大きく且つ100%よりも小さい割合である。第2割合は、100%よりも小さい割合である。
【0036】
第2水位領域は、コントローラ22が空の浴槽60に対して設定湯量の第2割合まで水を落とし込んだ状態から設定湯量まで水を落とし込むまでの領域である。この第2水位領域に対応する下限水位決定条件は、例えば空の浴槽60に対して設定湯量の第2割合まで水を落とし込んだ状態で水位センサ63によって検出される水位(第2水位)を下限水位として決定することである。第2水位領域に対応する上限水位決定条件は、例えば空の浴槽60に対して設定湯量まで水を落とし込んだ状態で水位センサ63によって検出される水位(以下、「設定水位」ともいう。)を上限水位として決定することである。第2水位領域に対応する上昇水位計算方式は、例えば第2水位領域の上限水位(設定水位)から第2水位領域の下限水位(第2水位)を差し引く計算方式である。
【0037】
第3水位領域は、コントローラ22が空の浴槽60に対して設定湯量の第1割合まで水を落とし込んだ状態から設定湯量まで水を落とし込むまでの領域である。この第3水位領域に対応する下限水位決定条件は、例えば空の浴槽60に対して設定湯量の第1割合まで水を落とし込んだ状態で水位センサ63によって検出される水位(第1水位)を下限水位として決定することである。第3水位領域に対応する上限水位決定条件は、例えば空の浴槽60に対して設定湯量まで水を落とし込んだ状態で水位センサ63によって検出される水位(以下、「設定水位」ともいう。)を上限水位として決定することである。第3水位領域に対応する上昇水位計算方式は、例えば第3水位領域の上限水位(設定水位)から第3水位領域の下限水位(第1水位)を差し引く計算方式である。
【0038】
コントローラ22は、上記面積値として、面積値A、面積値B、面積値C(以下、面積値A~Cともいう。)を算出する。面積値Aは、第1面積値の一例に相当し、面積値Bは、第2面積値の一例に相当し、面積値Cは、第3面積値の一例に相当する。コントローラ22は、第1水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて第1水位領域に対応する面積値Aを算出し、第2水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて第2水位領域に対応する面積値Bを算出し、第3水位領域に対する水の落とし込み量に基づいて第3水位領域に対応する面積値Cを算出する。コントローラ22は、例えば以下の式1によって各面積値を算出する。
[面積値(cm)]=[対応する水位領域に対する水の落とし込み量(cm)]/[対応する水位領域における上昇水位(cm)]・・・式1
【0039】
例えば、コントローラ22は、面積値Aを以下のように算出する。コントローラ22は、メモリ22Bに記憶された設定湯量に基づいて、設定湯量の第1割合と、設定湯量の第2割合とを算出する。そして、コントローラ22は、設定湯量の第2割合から設定湯量の第1割合を差し引くことで、第1水位領域に対する水の落とし込み量を算出する。また、コントローラ22は、第2水位から第1水位を差し引くことで、第1水位領域における上昇水位を算出する。そして、コントローラ22は、「第1水位領域に対する水の落とし込み量」/「第1水位領域における上昇水位」を計算することで、面積値Aを算出する。
【0040】
また、コントローラ22は、例えば、面積値Bを以下のように算出する。コントローラ22は、メモリ22Bに記憶された設定湯量に基づいて、設定湯量の第2割合を算出する。そして、コントローラ22は、設定湯量から設定湯量の第2割合を差し引くことで、第2水位領域に対する水の落とし込み量を算出する。また、コントローラ22は、設定水位から第2水位を差し引くことで、第2水位領域における上昇水位を算出する。そして、コントローラ22は、「第2水位領域に対する水の落とし込み量」/「第2水位領域における上昇水位」を計算することで、面積値Bを算出する。
【0041】
また、コントローラ22は、例えば、面積値Cを以下のように算出する。コントローラ22は、メモリ22Bに記憶された設定湯量に基づいて、設定湯量の第1割合を算出する。そして、コントローラ22は、設定湯量から設定湯量の第1割合を差し引くことで、第3水位領域に対する水の落とし込み量を算出する。また、コントローラ22は、設定水位から第1水位を差し引くことで、第3水位領域における上昇水位を算出する。そして、コントローラ22は、「第3水位領域に対する水の落とし込み量」/「第3水位領域における上昇水位」を計算することで、面積値Cを算出する。コントローラ22は、算出した面積値A~Cをメモリ22Bに記憶する。
【0042】
コントローラ22は、複数の面積値の関係が正常条件を満たさない場合において、落とし込み制御の開始条件が成立した場合に、浴槽60内の残水の水位が閾値未満である場合には面積値Cを選択し、浴槽60内の残水の水位が閾値以上である場合には面積値Bを選択する。正常条件は、図3(A)に示す浴槽60Aのように、浴槽60内の形状が上下方向にほぼ一定あるいは上方に向かうにつれて徐々に広がるという一般的な形状であることを判定するための条件である。正常条件は、図3(B)に示す浴槽60Bのように、底面よりも一段高い座面などが形成されて浴槽60内の下側部分が上側部分と比較して大幅に狭くなっている形状の浴槽60が除外される条件とされている。
【0043】
コントローラ22は、例えば面積値Bに対する面積値Aの割合が予め定められた正常範囲内である場合に正常条件を満たすと判定し、面積値Bに対する面積値Aの割合が予め定められた正常範囲内でない場合に正常条件を満たさないと判定する。正常範囲は、例えば、「面積値A/面積値B」が以下の式2を満たす範囲である。
0.67<[面積値A(cm)/面積値B(cm)]<1.5・・・式2
閾値は、例えば第2水位である。
【0044】
(面積値設定処理)
次に、面積値を設定する面積値設定処理について説明する。コントローラ22は、例えば図4及び図5のような流れで面積値設定処理を行う。コントローラ22は、例えば電源投入後に面積値設定処理を実行し、図4のS11にて面積値設定条件が成立したか否かを判定する。面積値設定条件は、例えば「試運転を開始する試運転開始条件が成立したこと」であってもよいし、「浴槽60を設置してから最初の湯張り開始条件が成立したこと」であってもよいし、「設定湯量が設定されてから最初の湯張り開始条件が成立したこと」であってもよいし、別の条件であってもよい。また、面積値設定条件が成立したにもかかわらず面積値の設定に失敗した場合には、「次回の湯張り開始条件が成立したこと」を面積値設定条件としてもよい。
【0045】
なお、面積値設定条件は、浴槽60内が空の状態で成立することが好ましい。例えば、面積値設定条件は、ユーザによる所定の操作(例えば、操作部81C,82Cによる試運転開始操作、湯張り開始操作など)に応じて成立する条件とし、浴槽60内が空の状態であることを目視で確認したユーザが上記所定の操作を行うことで、浴槽60内が空の状態で成立するようにしてもよい。別の例として、コントローラ22自身が、面積値設定条件の成否の判定の際に、浴槽60内が空の状態であるか否かを判定するようにしてもよい。浴槽60内が空の状態であるか否かを判定する方法としては、例えば、コントローラ22が水位センサ63の検出結果に基づいて判定するようにしてもよい。より具体的には、水位センサ63の検出結果に基づいて浴槽60内の残水の水位がアダプタ水位以下と判定された場合に、浴槽60内が空の状態であると判定するようにしてもよい。
【0046】
コントローラ22は、面積値設定条件が成立していないと判定した場合(S11:No)、S11の処理に戻り、面積値設定条件が成立するまで待機状態となる。コントローラ22は、面積値設定条件が成立したと判定した場合(S11:Yes)、S12にて上述した落とし込み制御を開始する。つまり、コントローラ22は、落とし込み管70に設けられた給湯用電磁弁72を開弁させることで、落とし込み管70を介して浴槽60内への湯水の供給を開始する。コントローラ22は、落とし込み水量センサ74からの信号に基づいて浴槽60へと供給される供給水量を検出し、検出した供給水量を積算することで浴槽60への落とし込み量を算出することで、落とし込み制御を開始してからの落とし込み量を算出する。
【0047】
コントローラ22は、落とし込み制御を開始した後、S13にて浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量の第1割合(図6(A)(B)参照)に到達したか否かを判定する。設定湯量は、メモリ22Bに記憶されている。より具体的には、メモリ22Bの所定の記憶領域には、図7に例示するように、アドレスに対応付けて各種データが記憶されており、設定湯量はアドレス014に記憶されている。また、第1割合は、例えば50%であり、浴槽60内と戻り配管67及び往き配管68とを接続するアダプタ61(図3(A)(B)、図6(A)(B)参照)が水没する程度の落とし込み量に相当する。第1割合は、メモリ22Bに予め記憶されている。よって、コントローラ22は、メモリ22Bのアドレス014に記憶された設定湯量Qset及び第1割合を読み出し、読み出した設定湯量Qset及び第1割合に基づいて設定湯量Qsetの第1割合を算出する。コントローラ22は、こうして算出した設定湯量Qsetの第1割合に到達したか否かを判定する。なお、設定湯量Qsetは、例えば初期値(例えば160L)が予め設定されており、操作部81C,82Cの操作に応じて変更される。
【0048】
コントローラ22は、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量Qsetの第1割合に到達していないと判定した場合(S13:No)、S13の処理に戻り、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量Qsetの第1割合に到達したと判定するまでS13の処理を繰り返す。コントローラ22は、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量Qsetの第1割合に到達したと判定した場合(S13:Yes)、S14にて水位センサ63の検出結果に基づき浴槽60内の水位を第1水位SUadp(図6(A)(B)参照)として検出する。つまり、第1水位SUadpは、空の浴槽60内に設定湯量の第1割合の湯水を落とし込んだときの浴槽60内の水位である。
【0049】
コントローラ22は、S14にて第1水位SUadpを検出した後、S15にて、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量の第2割合(図6(A)(B)参照)に到達したか否かを判定する。第2割合は、第1割合よりも高く且つ100%よりも低い割合であり、例えば80%である。第2割合は、メモリ22Bに予め記憶されている。設定湯量の第2割合は、メモリ22Bのアドレス014に記憶された設定湯量Qset及び第2割合に基づいて算出される。コントローラ22は、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量の第2割合に到達していないと判定した場合(S15:No)、S15の処理に戻り、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量の第2割合に到達したと判定するまでS15の処理を繰り返す。コントローラ22は、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量の第2割合に到達したと判定した場合(S15:Yes)、S16にて水位センサ63の検出結果に基づき浴槽60内の水位を第2水位SUhalf(図6(A)(B)参照)として検出する。つまり、第2水位SUhalfは、空の浴槽60内に設定湯量の第2割合の湯水を落とし込んだときの浴槽60内の水位である。
【0050】
コントローラ22は、S16にて第2水位SUhalfを検出した後、S17にて、浴槽60内への湯水の落とし込み量が、メモリ22Bのアドレス014に記憶された設定湯量に到達したか否かを判定する。コントローラ22は、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量に到達していないと判定した場合(S17:No)、S17の処理に戻り、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量に到達したと判定するまでS17の処理を繰り返す。コントローラ22は、浴槽60内への湯水の落とし込み量が設定湯量に到達したと判定した場合(S17:Yes)、S18にて水位センサ63の検出結果に基づき浴槽60内の水位を基準水位SUmemo(図6(A)(B)参照)として検出する。つまり、基準水位SUmemoは、空の浴槽60内に設定湯量の湯水を落とし込んだときの浴槽60内の水位である。
【0051】
コントローラ22は、S18にて基準水位SUmemoを検出した後、S19にて落とし込み制御を終了する。つまり、コントローラ22は、落とし込み管70に設けられた給湯用電磁弁72を閉弁させることで、浴槽60への湯水の供給を停止させる。コントローラ22は、S19にて落とし込み制御を終了した後、S20にて面積値A,B,Cを算出する。以下では、具体的な算出方法の一例について説明する。
【0052】
コントローラ22は、「第1水位領域に対する水の落とし込み量」を、下記式3によって算出する。
[第1水位領域に対する水の落とし込み量]=[設定湯量]×[第2割合]-[設定湯量]×[第1割合]・・・式3
コントローラ22は、「第1水位領域における上昇水位」を、下記式4によって算出する。
[第1水位領域における上昇水位]=[第2水位(cm)]-[第1水位(cm)]・・・式4
「設定湯量」「第2割合」「第1割合」はメモリ22Bに記憶された値である。「第2水位」は、S16で検出された値である。「第1水位」は、S14で検出された値である。コントローラ22は、式3によって算出した「第1水位領域に対する水の落とし込み量」、および式4によって算出した「第1水位領域における上昇水位」を上記式1に代入することで、面積値Aを算出する。
【0053】
コントローラ22は、「第2水位領域に対する水の落とし込み量」を、下記式5によって算出する。
[第2水位領域に対する水の落とし込み量(cm)]=[設定湯量(cm)]-[設定湯量(cm)]×[第2割合]・・・式5
コントローラ22は、「第2水位領域における上昇水位」を、下記式6によって算出する。
[第2水位領域における上昇水位(cm)]=[基準水位(cm)]-[第2水位(cm)]・・・式6
「設定湯量」「第2割合」はメモリ22Bに記憶された値である。「基準水位」は、S18で検出された値である。「第2水位」は、S16で検出された値である。コントローラ22は、式5によって算出した「第2水位領域に対する水の落とし込み量」、および式6によって算出した「第2水位領域における上昇水位」を上記式1に代入することで、面積値Bを算出する。
【0054】
コントローラ22は、「第3水位領域に対する水の落とし込み量」を、下記式7によって算出する。
[第3水位領域に対する水の落とし込み量(cm)]=[設定湯量(cm)]-[設定湯量(cm)]×[第1割合]・・・式7
コントローラ22は、「第3水位領域における上昇水位」を、下記式8によって算出する。
[第3水位領域における上昇水位(cm)]=[基準水位(cm)]-[第1水位(cm)]・・・式8
「設定湯量」「第1割合」はメモリ22Bに記憶された値である。「基準水位」は、S18で検出された値である。「第1水位」は、S14で検出された値である。コントローラ22は、式7によって算出した「第3水位領域に対する水の落とし込み量」、および式7によって算出した「第3水位領域における上昇水位」を上記式1に代入することで、面積値Cを算出する。
【0055】
コントローラ22は、S20にて面積値A,B,Cを算出した後、面積値A,B,Cをメモリ22Bに記憶する。より具体的には、コントローラ22は、面積値Aをアドレス011に記憶し、面積値Bをアドレス012に記憶し、面積値Cをアドレス013に記憶する。また、コントローラ22は、面積値A,B,Cを記憶する際、S14にて検出した第1水位SUadpをアドレス004に記憶し、S16にて検出した第2水位SUhalfをアドレス006に記憶し、[設定湯量]×[第1割合]を「第1割合までの落とし込み量Qadp」としてアドレス005に記憶し、[設定湯量]×[第2割合]を「第2割合までの落とし込み量Qhalf」としてアドレス007に記憶する。
【0056】
コントローラ22は、面積値A,B,Cを記憶した後、図5のS31にて、前提条件を満たすか否かを判定する。前提条件は、例えば「水位センサ63が異常でないこと」且つ「水位検出が不良でないこと」且つ「面積値A,B,Cの計算が不良でないこと」である。コントローラ22は、前提条件を満たすと判定した場合(S31:Yes)、面積値Bに対する面積値Aの割合が予め定められた正常範囲内であるか否かを判定する(S32)。正常範囲は、例えば、「面積値A/面積値B」が上述した式2を満たす範囲である。
【0057】
コントローラ22は、面積値Bに対する面積値Aの割合が予め定められた正常範囲内であると判定した場合(S32:Yes)、面積値Cを設定浴槽面積としてメモリ22Bのアドレス001(図7参照)に記憶する。また、コントローラ22は、S18で検出した基準水位SUmemoをアドレス002(図7参照)に記憶し、アドレス014の設定湯量を「基準水位までの落とし込み量Qmemo」としてアドレス003(図7参照)に記憶する。また、コントローラ22は、後述する「失敗カウンタ」とアドレス015に記憶される「仮面積」とをリセットする。コントローラ22は、S33の処理の終了後、面積値設定処理を終了する。
【0058】
コントローラ22は、S31にて前提条件を満たさないと判定した場合(S31:No)、またはS32にて面積値Bに対する面積値Aの割合が予め定められた正常範囲内でないと判定した場合(S32:No)、面積値の設定に失敗したと判断して、S34にて失敗カウンタに1加算する。コントローラ22は、S34の後、S35にて失敗カウンタが3以上となったか否かを判定する。
【0059】
コントローラ22は、失敗カウンタが3未満であると判定した場合(S35:No)、S36にて仮面積設定処理を行う。コントローラ22は、仮面積設定処理において、アドレス011から013に記憶した面積値A,B,Cのうち最小の値を仮面積としてアドレス015(図7参照)に記憶する。ただし、コントローラ22は、すでにアドレス015に仮面積が記憶されており、すでに記憶されている仮面積がアドレス011から013に記憶した面積値A,B,Cのいずれよりも小さい場合、仮面積の更新はしない。コントローラ22は、仮面積設定処理(S36)の終了後、面積値設定処理を終了する。
【0060】
コントローラ22は、S35にて失敗カウンタが3以上であると判定した場合(S35:Yes)、S37にて前提条件を満たすか否かを判定する。この前提条件は、S31の処理で説明した前提条件と同じであってもよいし、異なっていてもよい。コントローラ22は、S37にて前提条件を満たすと判定した場合(S37:Yes)、S38にて特定条件を満たすか否かを判定する。特定条件は、図3(B)に示す浴槽60Bのように、底面よりも一段高い座面などが形成されて浴槽60内の下側部分が上側部分と比較して大幅に狭くなっている形状の浴槽60を特定するための条件である。
【0061】
コントローラ22は、例えば面積値Aに対する面積値Bの割合が予め定められた特定範囲内である場合に特定条件を満たすと判定し、面積値Aに対する面積値Bの割合が予め定められた特定範囲内でない場合に特定条件を満たさないと判定する。特定範囲は、例えば、「面積値B/面積値A」が以下の式9を満たす範囲である。
1.5<[面積値B(cm)/面積値A(cm)]<3.0・・・式9
【0062】
コントローラ22は、特定条件を満たすと判定した場合(S38:Yes)、S39にてアドレス013に記憶された面積値Cを、設定浴槽面積としてアドレス001に記憶する。また、コントローラ22は、特定条件を満たさないと判定した場合(S38:No)、予め定められた固定値を、設定浴槽面積としてアドレス001に記憶する(S40)。固定値は、例えば以下の式10によって定まる値である。
[固定値(cm)]=[設定湯量(cm)]/40・・・式10
【0063】
また、コントローラ22は、S39またはS40にて設定浴槽面積を記憶する際、S18で検出した基準水位SUmemoをアドレス002(図7参照)に記憶し、アドレス014の設定湯量を「基準水位までの落とし込み量Qmemo」としてアドレス003(図7参照)に記憶する。また、コントローラ22は、後述する「失敗カウンタ」とアドレス015に記憶される「仮面積」をリセットする。コントローラ22は、S39またはS40の処理の終了後、面積値設定処理を終了する。面積値設定処理は、終了すると再度実行され、これにより繰り返し実行される。
【0064】
(自動湯張り制御)
コントローラ22は、例えば図8のような流れで自動湯張り制御を行う。コントローラ22は、電源投入後に図8の自動湯張り制御を実行し、湯張り開始条件が成立したか否かを判断する(S51)。湯張り開始条件は、落とし込み制御の開始条件の一例に相当する。湯張り開始条件は、例えば、「第1リモートコントローラ81の操作部81Cによる湯張り開始操作が行われたこと(例えば、予め設けられた自動ボタンが押されたこと)」、「第2リモートコントローラ82の操作部82Cによる湯張り開始操作が行われたこと(例えば、予め設けられた自動ボタンが押されたこと)」、「予約による湯張り条件が成立したこと」などである。湯張り開始条件が成立するまでは待機状態となり、S51でNoの判断が繰り返される。
【0065】
コントローラ22は、湯張り開始条件が成立したと判断した場合(S51:Yes)、浴槽60内に残水があるか否かを判定する(S52)。浴槽60内が空の状態であるか否かを判定する方法としては、例えば、コントローラ22が水位センサ63の検出結果に基づいて判定するようにしてもよい。より具体的には、水位センサ63の検出結果に基づいて浴槽60内の残水の水位がアダプタ水位以下と判定された場合に、浴槽60内が空の状態であると判定するようにしてもよい。コントローラ22は、残水がないと判定した場合(S52:No)、アドレス014に記憶された設定湯量の湯水を浴槽60内に落とし込み(S53)、自動湯張り制御を終了する。
【0066】
コントローラ22は、残水ありと判定した場合(S52:Yes)、設定水位を算出する(S54)。設定水位SUsetは、以下の式11によって算出される。
「設定水位(cm)」=基準水位(cm)+(「設定湯量(cm)」-「基準水位までの落とし込み量(cm)」)/「設定水位算出面積(cm)」 ・・・式11
「基準水位」は、アドレス002に記憶された値であり、「設定湯量」は、アドレス014に記憶された値であり、「基準水位までの落とし込み量」は、アドレス003に記憶された値である。「設定水位算出面積」は、失敗カウンタの値が3未満である場合には、アドレス001に記憶された「設定浴槽面積」であり、失敗カウンタの値が3以上である場合には、「設定湯量Qset」≧「第2割合までの落とし込み量Qhalf」、且つ「第2割合までの落とし込み量Qmemo」≧「第2割合までの落とし込み量Qhalf」であればアドレス012に記憶された面積値Bであり、これ以外であればアドレス001に記憶された「設定浴槽面積」である。
【0067】
コントローラ22は、設定水位を算出(S54)後、正常条件を満たすか否かを判定する(S55)。コントローラ22は、失敗カウンタの値が3未満である場合に正常条件を満たすと判定し、失敗カウンタの値が3以上である場合に正常条件を満たさないと判定する。つまり、コントローラ22は、面積値設定処理において、S32の処理を3回行う間に面積値Bに対する面積値Aの割合が正常範囲内であると判定した場合には正常条件を満たすと判定し、S32の処理で面積値Bに対する面積値Aの割合が正常範囲内でないと3回連続で判定した場合には正常条件を満たさないと判定する。コントローラ22は、正常条件を満たすと判定した場合(S55:Yes)、アドレス001に記憶された設定浴槽面積を選択する(S56)。コントローラ22は、正常条件を満たさないと判定した場合(S55:No)、浴槽60内の残水の水位が閾値以上であるか否かを判定する(S57)。閾値は、例えばアドレス006に記憶された第2水位SUhalfである。コントローラ22は、残水の水位が閾値以上であると判定した場合(S57:Yes)、アドレス012の面積値Bを選択し(S58)、残水の水位が閾値未満であると判定した場合(S57:No)、アドレス013の面積値Cを選択する(S59)。
【0068】
コントローラ22は、S56、S58、またはS59で選択した面積値に基づいて、設定湯量に対して不足する不足量を算出する(S60)。不足量は、例えば以下の式12によって算出される。
「不足量(cm)」=(「設定水位(cm)」-「残水の水位(cm)」)×「不足湯量算出面積(cm)」 ・・・式12
「設定水位」は、式11に算出された値である。「残水の水位」は、水位センサ63で検出された値である。「不足湯量算出面積」は、S56、S58、またはS59で選択された面積値である。なお、コントローラ22は、「不足量」が下記式13を満たさない場合には異常と判定する。
「不足量(cm)」≦「設定湯量(cm)」-「所定値(cm)」 ・・・式13
「不足量」は、式12で算出された値である。「設定湯量」はアドレス014に記憶された値である。「所定値」は、例えば15000(cm)である。
【0069】
コントローラ22は、不足量を算出した後、算出した不足量の湯水を浴槽60内に落とし込む(S61)。コントローラ22は、不足量の湯水を浴槽60内に落とし込んだ後、自動湯張り制御を終了する。自動湯張り制御は、終了すると再度実行され、これにより繰り返し実行される。
【0070】
次の説明は、本構成の効果の一例に関する。
給湯システム1は、水位センサ63の検出結果に基づいて算出された複数の水位領域の各々の面積値(具体的には、各水位領域の体積を各水位領域の水位(高さ)で割った値)の中から浴槽60内の残水の水位に基づいて選択した面積値と、残水の水位と、設定湯量とに基づいて、設定湯量に対して不足する不足量を算出することができる。したがって、この給湯システムによれば、水位領域によって面積値が異なるような形状の浴槽に対して、不足量をより正確に算出することができる。
【0071】
給湯システム1によれば、上昇水位計算方式に従って水位領域別の各々の面積値を算出することで、水位領域別の各々の面積値を容易に算出することができる。
【0072】
給湯システム1は、浴槽60内の残水の水位が閾値未満となるような不足分が広範囲にわたる場合には、広範囲の第3水位領域に対応する面積値Cを選択し、不足分が浴槽60内の比較的上側の部分に限られる場合には、第2水位領域に対応する面積値Bを選択する。したがって、この給湯システム1によれば、水位領域によって面積値が異なるような形状の浴槽60において、浴槽60内の残水の水位が比較的上側の部分に限られる場合であっても、より正確に不足量を算出することができる。
【0073】
給湯システム1によれば、面積値Aと面積値Bとが大きく異なるような形状の浴槽に対しても、より正確な不足量を算出することができる。
【0074】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更してもよい。
【0075】
上述した実施形態では、空の浴槽60に対して第2割合まで水を落とし込んだ状態から設定湯量まで水を落とし込むまでの領域を第2水位領域とした。しかし、第2水位領域は、空の浴槽60に対して第1割合よりも大きい第3割合まで水を落とし込んだ状態から設定湯量まで水を落とし込むまでの領域であればよく、第3割合は、上述した実施形態のように第2割合と同じ割合であってもよいし、第2割合とは異なる割合であってもよい。より具体的には、第3割合は、第2割合よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。つまり、第1水位領域と第2水位領域が、一部重なるようにしてもよいし、互いに離れるようにしてもよい。なお、第3割合は、100%よりも小さい割合である。
【0076】
上述した実施形態では、第1水位と基準水位との間の領域を2つの水位領域に分ける構成としたが、3つ以上の水位領域を分ける構成としてもよい。そして、コントローラ22が、3つ以上に分けられた水位領域ごとに面積値を算出し、これらの算出した面積値に基づいて不足量を算出するようにしてもよい。
上述した実施形態では、不足量の算出に用いる面積値を1つだけ選択するようにしたが、2つ以上選択する構成としてもよい。
上述した実施形態では、面積値の計算を3回失敗した場合に最終的に正常条件を満たさないと判定する構成としたが、1回、2回もしくは4回以上失敗した場合に正常条件を満たさないと判定する構成としてもよい。
【0077】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0078】
1…給湯システム
4…ガスバーナ(バーナ)
6…給湯側熱交換器(熱交換器)
10…出湯管(通水管)
12…入水管(通水管)
20…配管(通水管)
22…コントローラ(落とし込み制御部、算出部、不足量算出部)
60…浴槽
63…水位センサ(水位検出部)
66…配管(連通管)
70…落とし込み管(連通管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8