(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】振動ローラー
(51)【国際特許分類】
F01N 13/02 20100101AFI20231107BHJP
E01C 19/28 20060101ALI20231107BHJP
F01N 13/04 20100101ALI20231107BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20231107BHJP
【FI】
F01N13/02
E01C19/28
F01N13/04
F01N13/14
(21)【出願番号】P 2018152010
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000175386
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】永澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 秀郎
(72)【発明者】
【氏名】堀口 数馬
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】山本 信平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152485(JP,A)
【文献】特開平6-80029(JP,A)
【文献】特開平4-283126(JP,A)
【文献】特開2005-335475(JP,A)
【文献】特開2016-53261(JP,A)
【文献】特開平10-8991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00 - 1/24
F01N 5/00 - 5/04
F01N 13/00 - 13/20
E01C 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機としてエンジンを搭載し、機体カバーによって機体が覆われたハンドガイド式の振動ローラーであって、
エンジンからの排気を消音する第一サイレンサー及び第二サイレンサーが、排気管の途中においてそれぞれ縦向きに配置されるとともに、直列的に接続され、
排気管が、基端部と、上昇部と、中間接続部と、下降部とを有し、
上昇部が、基端部の終端から上方へ向かって延在するように配置され、
下降部が、中間接続部の終端から下方へ向かって延在するように配置され、
中間接続部が、上昇部
の終端から延びて下降部
と接続
されるように配置され、
上昇部に第一サイレンサーが配置され、下降部に第二サイレンサーが配置され、
機体カバーが、機体の前面を覆うフロントカバーと、機体の側面を覆うサイドカバーと、機体の上面を覆うトップカバーとによって構成され、
中間接続部が、機体カバーの外側
の外気中に突出するように構成されていることを特徴とする振動ローラー。
【請求項2】
第一サイレンサーと第二サイレンサーとが、機体の前後方向及び/又は左右方向へ並列するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の振動ローラー。
【請求項3】
通気性を阻害しない材料によって形成したヒートプロテクタを、機体カバーの外側へ突出する中間接続部の外側に取り付けたことを特徴とする、請求項1に記載の振動ローラー。
【請求項4】
機体フレームの一部分、或いは、機体フレームに対して固定された部材を介して、排気管の下降部と第二サイレンサーとが接続されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の振動ローラー。
【請求項5】
フロントカバー、サイドカバー、及び、トップカバーには、通気口がそれぞれ形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の振動ローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤表面や舗装面の締め固めに用いられる振動ローラに関し、特にハンドガイド式の振動ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドガイド式の振動ローラーとして、例えば、特許文献1(特開2005-307475号公報)に記載されているように、機体フレームの下側に、地盤表面の締め固め作業に用いられる輾圧用ローラードラムを備え、動力装置(ガソリンエンジンなどの原動機、油圧ポンプ、油圧モータ等)、及び、起振機を機体フレーム上に搭載し、操作ハンドルを支持するハンドルバーを、機体フレームの後方側下部から後方側斜め上方へ向かって突出するように配置し、作業員が機体後方側を歩きながら、機体の前後進、舵取り、停止等の各操作を行えるようにした振動ローラーが知られている。
【0003】
原動機としてガソリンエンジン或いはディーゼルエンジンを搭載した振動ローラーにおいては、十分な騒音対策を施す必要があり、特に、騒音の原因の中で最も大きな割合を占める排気音を、可能な限り低減することが求められている。このため従来より、振動ローラーの排気騒音対策として様々な試みがなされている。例えば、特許文献3(特開2014-152485号公報)には、エンジンを含む機体の外側を、機体カバーやフードなどで全面的に覆うことにより、排気音が機体の外側へ漏れることを可及的に防止して、排気騒音を低減しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-307475号公報
【文献】特開2014-136890号公報
【文献】特開2014-152485号公報
【文献】特開2014-163087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に開示されているように、機体カバーやフードなどによって振動ローラーの機体を全面的に覆ってしまうと、発熱するエンジンや油圧機器等の冷却が難しくなり、機体カバーの内側領域の温度が限界を超えて、過熱状態となってしまう可能性がある。この問題への対応策として、エンジンの回転域を低く設定することにより、エンジンの発熱をなるべく抑えること等が考えられるが、この場合、振動ローラーの性能が犠牲になってしまうことになる。また、振動ローラーの機体を全面的に覆ってしまうと、メンテナンス時において機体カバーをいちいち取り外す必要が生じ、メンテナンス作業を円滑に行うことができないという問題もある。
【0006】
尚、排気騒音対策として、より消音機能の高い大型のサイレンサーを排気管に取り付けることも考えられるが、機種によっては(特に、小型の機種においては)、配置スペースを確保することが難しい場合があり、また、他の装置との関係においてレイアウトの自由度が小さくなり、設計が困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、機体の性能を維持しつつ、排気騒音を効果的に低減することができ、かつ、機体を好適に冷却することができる振動ローラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る振動ローラーは、原動機としてエンジンを搭載し、機体カバーによって機体が覆われたハンドガイド式の振動ローラーであって、エンジンからの排気を消音する第一サイレンサー及び第二サイレンサーが、排気管の途中においてそれぞれ縦向きに配置されるとともに、直列的に接続されていることを特徴としている。
【0009】
尚、この振動ローラーにおいては、第一サイレンサーと第二サイレンサーとが、機体の前後方向及び/又は左右方向へ並列するように配置されていることが好ましく、また、排気管が、基端部と、上昇部と、中間接続部と、下降部とを有し、上昇部が、基端部の終端から上方へ向かって延在するように配置され、下降部が、中間接続部の終端から下方へ向かって延在するように配置され、中間接続部が、上昇部と下降部を接続するように配置され、上昇部に第一サイレンサーが配置され、下降部に第二サイレンサーが配置されていることが好ましい。
【0010】
更に、中間接続部は、機体カバーの外側へ突出するように構成されていることが好ましく、この場合、通気性を阻害しない材料によって形成したヒートプロテクタを、その外側に取り付けることが好ましい。
【0011】
また、機体フレームの一部分、或いは、機体フレームに対して固定された部材を介して、排気管の下降部と第二サイレンサーとが接続されていることが好ましく、更に、機体カバーが、機体の前面を覆うフロントカバーと、機体の側面を覆うサイドカバーと、機体の上面を覆うトップカバーとによって構成され、フロントカバー、サイドカバー、及び、トップカバーには、通気口がそれぞれ形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る振動ローラーは、排気経路に二つのサイレンサーが配置され、これらが直列的に接続されているため、排気を二重に消音することができ、従来の振動ローラーと比較して、排気騒音を効果的に低減することができる。尚、第一サイレンサーと第二サイレンサーをそれぞれ縦向きに配置するとともに、機体の前後方向及び/又は左右方向へ並列するように配置した場合には、他の装置との関係においてレイアウトの自由度が大きくなり、二つのサイレンサーの配置スペースを容易に確保することができ、配置設計を容易に行うことができる。
【0013】
また、排気管の一部(特に、中間接続部)が、機体カバーの外側へ突出するように構成した場合、及び/又は、機体カバーに通気口を形成した場合には、排気管等を好適に冷却することができ、機体カバーの内側領域が過熱状態となることを回避することができる。その結果、機体の性能を犠牲にすることなく、二つのサイレンサーによる排気騒音の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る振動ローラー1の側面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る振動ローラー1のエンジン3から排気口4までの排気経路を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る振動ローラー1における第二サイレンサー72の接続方法(固定方法)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に沿って本発明「振動ローラー」の実施形態について説明する。本発明に係る振動ローラー1は、ハンドガイド式の振動ローラーであって、
図1に示すように、機体2のほぼ中央位置にエンジン3(ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン)が搭載され、このエンジン3からの排気が、機体2の前面部において開口する排気口4から、機体2の前方(
図1において右側)へ向かって放出されるように構成されている。
【0016】
尚、この振動ローラー1は、エンジン3及び他の構成装置を保護するために、機体カバー5(フロントカバー51、サイドカバー52、及び、トップカバー53)等によって外側が覆われている。より具体的には、機体2の前面がフロントカバー51により、また、機体2の両側面がサイドカバー52、及び、フロントカバー51(の一部)により、更に、機体2の上面がトップカバー53、及び、フロントカバー51(の一部)により、それぞれ覆われる構造となっている。但し、フロントカバー51、サイドカバー52、及び、トップカバー53には、各所(機体2の前面、側面、及び、上面)に通気口8がそれぞれ形成されており、これらの通気口8を介して機体カバー5内外の空気の流通が可能となっており、機体カバー5の内側に熱が籠もってしまうという事態を回避し、エンジン3や他の構成装置を好適に冷却できるようになっている。
【0017】
図2は、機体2に搭載されているエンジン3から排気口4までの排気経路を模式的に示す図である。図示されているように、エンジン3からの排気は、エンジン3の前方(機体2の前方、
図2において右側)に配置された排気管6を通って、機体2の前面部21において開口する排気口4から、機体2の前方へ向かって放出される。
【0018】
排気管6は、エンジン3から機体2の前方へ向かって延在する基端部61と、基端部61の終端から上方へ向かって(縦方向に)延在する上昇部62と、上昇部62の上端から機体2の前方へ向かって延在し、上昇部62と下降部64とを接続する中間接続部63と、中間接続部63の終端から下方へ向かって(縦方向に)延在する下降部64と、下降部64の下端から前方へ向かって延在する先端部65とによって構成されている。
【0019】
そして、排気管6の途中には、二つのサイレンサー7(第一サイレンサー71、及び、第二サイレンサー72)が配置され、これらが直列的に、即ち、排気が、第一サイレンサー71を通過した後、第二サイレンサー72を通過するように接続されている。より詳細には、いずれも縦方向に延在する上昇部62及び下降部64に、第一サイレンサー71及び第二サイレンサー72がそれぞれ縦向きに(中心軸線が概ね垂直(垂直±20°)となる向きで)配置されている。このように本実施形態の振動ローラー1においては、二つのサイレンサー7(71,72)によって排気を二重に消音することができるため、従来の振動ローラーと比較して、排気騒音を効果的に低減することができる。
【0020】
尚、騒音対策として、消音機能の高い大型サイレンサーを一つだけ排気管に取り付ける場合、配置スペースを確保することが難しく、また、レイアウトの自由度が小さくなり、設計が困難になるという問題があるが、本実施形態の振動ローラー1のように、二つのサイレンサー7(71,72)をいずれも縦向きにして直列的に接続し、かつ、機体2の前後方向(又は、左右方向、又は、前後及び左右方向(つまり、斜め方向))へ並列するように配置する場合、他の装置との関係においてレイアウトの自由度が大きくなり、容易に設計することができ、また、配置スペースを容易に確保することができる。
【0021】
また、本実施形態の振動ローラー1においては、
図1及び
図2に示すように、排気管6の一部(より具体的には、中間接続部63)が、機体カバー5の外側(フロントカバー51及びトップカバー53の上方)へ突出するように構成されており、排気管6を効果的に冷却することができ、その結果、機体カバー5の内側領域が過熱状態となることを好適に回避することができる。
【0022】
この点について詳しく説明すると、本実施形態の振動ローラー1のように、エンジン3から排気口4までの排気経路上において二つのサイレンサー7(71,72)を直列的に接続した場合、排気経路(排気管6及びサイレンサー7)の距離が従来のものよりも必然的に長くなるため、内部を通過する高温の排気から排気管6及びサイレンサー7に移行する総熱量も、その分だけ多くなる。従って、排気管6及びサイレンサー7の全体を機体カバー5の内側に配置すると、熱が内側に籠もり、過熱状態に陥ってしまうことが懸念される。
【0023】
本実施形態の振動ローラー1は、上述の通り、排気管6の一部が機体カバー5の外側に突出するように構成されているため、排気に由来する熱を、この突出部分において外側へ放出することができ、その結果、排気管6を冷却し、機体カバー5の内側領域の過熱状態を好適に回避することができる。
【0024】
尚、排気管6は、内側を通過する排気によって非常に高温となるため、機体2の外側に突出している中間接続部63に作業者等が直接触れてしまう危険を防止するために、通気性を阻害しない材料(パンチングメタル等)によって形成したヒートプロテクタ9(
図1、
図2参照)を、中間接続部63の外側に(所定の間隔を置いて覆うように)取り付けることが好ましい。
【0025】
また、従来のサイレンサーは、腹部の外周に巻き付けたバンド等によって機体に固定されていたが、本実施形態の振動ローラー1は、上述の通り、排気経路(排気管6及びサイレンサー7)の距離が従来のものよりも長いため、十分な振動対策を施すことが重要となる。そこで本実施形態においては、機体フレームの一部分、或いは、機体フレームに対して固定された部材(例えば、
図3に示すような水平なブラケット10)を介して、排気管の下降部64と第二サイレンサー72とが接続される(例えば、排気管の下降部64に形成したフランジ64aをブラケット10の上面にボルト留めするとともに、第二サイレンサー72の上端部をブラケット10の下面にボルト留めする)構成となっており、十分な耐振性を期待することができる。
【符号の説明】
【0026】
1:振動ローラー、
2:機体、
3:エンジン、
4:排気口、
5:機体カバー、
6:排気管、
7:サイレンサー、
8:通気口、
9:ヒートプロテクタ、
10:ブラケット、
21:前面部、
51:フロントカバー、
52:サイドカバー、
53:トップカバー、
61:基端部、
62:上昇部、
63:中間接続部、
64:下降部、
64a:フランジ、
65:先端部、
71:第一サイレンサー、
72:第二サイレンサー