(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20231107BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20231107BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B60N2/58
B68G7/05 A
A47C31/02 E
(21)【出願番号】P 2019111908
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】須本 勝美
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友治
(72)【発明者】
【氏名】向井 正志
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-059151(JP,U)
【文献】特開2007-037703(JP,A)
【文献】特開2013-151238(JP,A)
【文献】国際公開第2016/040734(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B68G 7/05
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面および背面を有するシートパッドと、
前記シートパッドの背面側に配置されたバックボードと、
前記シートパッドの前記前面を覆うトリムカバーと、
前記トリムカバーの縁部に沿って取り付けられた端末部材と、
前記バックボードの縁部に取り付けられて前記端末部材が連結される連結部材と
を備えており、
前記端末部材が前記連結部材と共に前記トリムカバーによって外部から覆われた状態で、前記連結部材に連結されることによって、前記トリムカバーの前記縁部が前記バックボードの前記縁部に固定さ
れ、
前記バックボードの前記縁部は、当該バックボードの本体部との間に段差部が形成されるように配置され、
前記連結部材は、前記バックボードの前記縁部に係合するボード側係合部を有し、
前記ボード側係合部は、前記バックボードの前記縁部と前記段差部とで形成されたコーナー部を覆って当該縁部の形状を保持するように構成されている、
ことを特徴とするシート。
【請求項2】
前記トリムカバーの前記縁部が前記端末部材と共に当該トリムカバーの内側に折り返されることによって、前記端末部材が前記トリムカバーによって外部から覆われ、かつ、前記トリムカバーのうち折返し部分より内側の領域によって前記連結部材が覆われた状態で、前記端末部材が前記連結部材に連結されている、
請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記トリムカバーの前記縁部は、少なくとも一部が曲線形状を有しており、
前記端末部材は、前記曲線形状に追従して変形可能な弾性を有する、
請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
前記ボード側係合部は、前記バックボードの前記縁部を挿入して当該縁部を保持可能なボード挿入溝を有する、
請求項
1に記載のシート。
【請求項5】
前記ボード側係合部は、前記ボード挿入溝に挿入された前記バックボードの前記縁部が当該ボード挿入溝から抜け出ることを防止する抜け止め部をさらに有する、
請求項
4に記載のシート。
【請求項6】
前面および背面を有するシートパッドと、
前記シートパッドの背面側に配置されたバックボードと、
前記シートパッドの前記前面を覆うトリムカバーと、
前記トリムカバーの縁部に沿って取り付けられた端末部材と、
前記バックボードの縁部に取り付けられて前記端末部材が連結される連結部材と
を備えており、
前記端末部材が前記連結部材と共に前記トリムカバーによって外部から覆われた状態で、前記連結部材に連結されることによって、前記トリムカバーの前記縁部が前記バックボードの前記縁部に固定され、
前記連結部材は、前記バックボードの前記縁部に係合するボード側係合部を有し、
前記ボード側係合部は、前記バックボードの前記縁部の少なくとも一部を覆って当該縁部の形状を保持する構成を有し、
前記ボード側係合部は、前記バックボードの前記縁部を挿入して当該縁部を保持可能なボード挿入溝を有し、
前記バックボードの前記縁部は、前記ボード側係合部を挿入可能な開口を有しており、
前記ボード側係合部が前記開口に挿入された状態で、前記バックボードの前記縁部は、前記ボード挿入溝に挿入される、
ことを特徴とするシート。
【請求項7】
前記連結部材は、前記ボード側係合部における前記バックボードの前記縁部との係合および当該係合の解除が可能な弾性を有する合成樹脂で製造されている、
請求項
1~6のいずれか1項に記載のシート。
【請求項8】
前記端末部材は、平板部を有しており、
前記連結部材は、前記平板部を挿入して前記端末部材を保持可能な端末挿入溝を有する、
請求項1~
7のいずれか1項に記載のシート。
【請求項9】
前記平板部は、前記トリムカバーの前記縁部に取り付けられ、
前記端末挿入溝の入口は、前記トリムカバーの前記縁部が当該トリムカバーの内側に折り返された状態で前記平板部が前記端末挿入溝に挿入されることが可能な向きを向くように配置されている、
請求項
8に記載のシート。
【請求項10】
前記端末部材は、前記平板部の縁に沿って設けられた柱状部をさらに有しており、
前記柱状部は、曲面で構成された周面を有し、
前記柱状部は、前記トリムカバーの前記縁部が折り返された部分の内側から当該縁部に当接して当該縁部の形状を保持する
請求項
9に記載のシート。
【請求項11】
前記端末部材および前記連結部材は、互いに着脱可能な構成を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリムカバーがシート背面側のバックボードに固定されたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用シートなどでは、特許文献1記載のシートのように、着座者の背中を支持するシートバックにおいて、シートパッドと、当該シートパッドの前面および側面を覆うトリムカバーと、シートパッドの背面を覆うバックボードとを備え、トリムカバーがバックボードに固定された構造が知られている。
【0003】
特許文献1記載のシートでは、トリムカバーの縁部およびバックボードの縁部にファスナーが縫い付けられ、ファスナーによってこれらの縁部同士を連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1記載のシートでは、トリムカバーの縁部およびバックボードの縁部を連結するためにファスナーが用いられている。そのため、ファスナーを閉じてトリムカバーが組み付けられた状態では、シートの外側からファスナーが見えるので、シートの外観を向上することが難しい。また、トリムカバーの組付け時にトリムカバーの外部からファスナーを閉じる作業をする必要があるので、ファスナーを見えにくい位置に配置することも構造上難しい。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、トリムカバーをバックボードに取り付ける部分を外部から見えなくして外観を向上したシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るシートは、前面および背面を有するシートパッドと、前記シートパッドの背面側に配置されたバックボードと、前記シートパッドの前記前面を覆うトリムカバーと、前記トリムカバーの縁部に沿って取り付けられた端末部材と、前記バックボードの縁部に取り付けられて前記端末部材が連結される連結部材とを備えており、前記端末部材が前記連結部材と共に前記トリムカバーによって外部から覆われた状態で、前記連結部材に連結されることによって、前記トリムカバーの前記縁部が前記バックボードの前記縁部に固定され、前記バックボードの前記縁部は、当該バックボードの本体部との間に段差部が形成されるように配置され、前記連結部材は、前記バックボードの前記縁部に係合するボード側係合部を有し、前記ボード側係合部は、前記バックボードの前記縁部と前記段差部とで形成されたコーナー部を覆って当該縁部の形状を保持するように構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
かかる構成では、トリムカバーの縁部に沿って取り付けられた端末部材と、前記バックボードの縁部に取り付けられて前記端末部材が連結される連結部材とを備えている。端末部材が連結部材と共にトリムカバーによって外部から覆われた状態で、連結部材に連結されることによって、トリムカバーの縁部がバックボードの縁部に固定されている。このようにトリムカバーがバックボードに固定された状態では、トリムカバーをバックボードに取り付けるための取付部分である端末部材および連結部材が外部から見えなくなるので、シートの外観が向上する。
上記のシートにおいて、バックボードの縁部は、当該バックボードの本体部との間に段差部が形成されるように配置されている。連結部材は、バックボードの縁部に係合するボード側係合部を有している。ボード側係合部は、バックボードの縁部と段差部とで形成されたコーナー部を覆って当該縁部の形状を保持するように構成されている。
かかる構成では、連結部材のボード側係合部をバックボードの縁部に係合して連結部材をバックボードの縁部に固定しておくことが可能である。したがって、トリムカバーの縁部に取り付けられた端末部材を、当該連結部材を介してバックボードの縁部に連結する作業を容易に行うことが可能であり、作業性が向上する。
しかも、上記の構成では、ボード側係合部は、バックボードの縁部と段差部とで形成されたコーナー部を覆って当該縁部の形状を保持することが可能である。そのため、バックボードの本体部と縁部との間に段差部がある構成においても、トリムカバーをバックボードに取り付けた状態ではトリムカバーに引張力が作用したときにバックボードの縁部が変形するおそれが低減する。その結果、トリムカバーの組付けラインを美しく仕上げることが可能である。
【0009】
上記のシートにおいて、前記トリムカバーの前記縁部が前記端末部材と共に当該トリムカバーの内側に折り返されることによって、前記端末部材が前記トリムカバーによって外部から覆われ、かつ、前記トリムカバーのうち折返し部分より内側の領域によって前記連結部材が覆われた状態で、前記端末部材が前記連結部材に連結されているのが好ましい。
【0010】
かかる構成では、トリムカバーの縁部が端末部材と共に当該トリムカバーの内側に折り返されることによって、端末部材がトリムカバーによって外部から覆われる。そして、トリムカバーのうち折返し部分より内側の領域によって連結部材が覆われた状態で、端末部材が連結部材に連結されている。このようにトリムカバーを折り返すことによって端末部材および連結部材が外部から見えなくなるので、容易かつ確実にシートの外観を向上することが可能である。
【0011】
上記のシートにおいて、前記トリムカバーの前記縁部は、少なくとも一部が曲線形状を有しており、前記端末部材は、前記曲線形状に追従して変形可能な弾性を有するのが好ましい。
【0012】
かかる構成では、トリムカバーの縁部が曲線形状を有する場合においても、端末部材を前記曲線形状に追従して変形させることにより、端末部材をトリムカバーの縁部に沿って容易に取り付けることが可能である。また、端末部材の取付後では、トリムカバーの縁部の曲線形状を端末部材によって保持することが可能であり、当該縁部におけるしわの発生を防ぐことが可能である。
【0018】
上記のシートにおいて、前記ボード側係合部は、前記バックボードの前記縁部を挿入して当該縁部を保持可能なボード挿入溝を有するのが好ましい。
【0019】
かかる構成では、バックボードの縁部を連結部材におけるボード側係合部のボード挿入溝に挿入して当該縁部を保持することが可能である。それによって連結部材をバックボードの縁部に容易に取り付けることが可能である。
【0020】
上記のシートにおいて、前記ボード側係合部は、前記ボード挿入溝に挿入された前記バックボードの前記縁部が当該ボード挿入溝から抜け出ることを防止する抜け止め部をさらに有するのが好ましい。
【0021】
かかる構成では、抜け止め部によって、前記ボード挿入溝に挿入された前記バックボードの前記縁部が当該ボード挿入溝から抜け出ることを防止することが可能である。
【0022】
本発明の請求項6に係るシートは、前面および背面を有するシートパッドと、前記シートパッドの背面側に配置されたバックボードと、前記シートパッドの前記前面を覆うトリムカバーと、前記トリムカバーの縁部に沿って取り付けられた端末部材と、前記バックボードの縁部に取り付けられて前記端末部材が連結される連結部材とを備えており、前記端末部材が前記連結部材と共に前記トリムカバーによって外部から覆われた状態で、前記連結部材に連結されることによって、前記トリムカバーの前記縁部が前記バックボードの前記縁部に固定され、前記連結部材は、前記バックボードの前記縁部に係合するボード側係合部を有し、前記ボード側係合部は、前記バックボードの前記縁部の少なくとも一部を覆って当該縁部の形状を保持する構成を有し、前記ボード側係合部は、前記バックボードの前記縁部を挿入して当該縁部を保持可能なボード挿入溝を有し、前記バックボードの前記縁部は、前記ボード側係合部を挿入可能な開口を有しており、前記ボード側係合部が前記開口に挿入された状態で、前記バックボードの前記縁部は、前記ボード挿入溝に挿入されることを特徴とする。
【0023】
かかる構成では、連結部材におけるボード側係合部をバックボードの縁部の開口に挿入することにより、連結部材をバックボードの縁部の所定の位置に固定することが可能である。しかも、ボード側係合部が当該開口に挿入された状態で、バックボードの縁部がボード挿入溝に挿入されるので、連結部材がバックボードの縁部から脱落するおそれが低減する。
また、上記の構成では、トリムカバーの縁部に沿って取り付けられた端末部材と、前記バックボードの縁部に取り付けられて前記端末部材が連結される連結部材とを備えている。端末部材が連結部材と共にトリムカバーによって外部から覆われた状態で、連結部材に連結されることによって、トリムカバーの縁部がバックボードの縁部に固定されている。このようにトリムカバーがバックボードに固定された状態では、トリムカバーをバックボードに取り付けるための取付部分である端末部材および連結部材が外部から見えなくなるので、シートの外観が向上する。
さらに、上記の構成では、ボード側係合部は、バックボードの前記縁部の少なくとも一部を覆って当該縁部の形状を保持する構成を有する。そのため、連結部材のボード側係合部をバックボードの縁部に係合して連結部材をバックボードの縁部に固定しておくことが可能である。したがって、トリムカバーの縁部に取り付けられた端末部材を、当該連結部材を介してバックボードの縁部に連結する作業を容易に行うことが可能であり、作業性が向上する。しかも、上記の構成では、ボード側係合部は、バックボードの縁部の少なくとも一部を覆って当該縁部の形状を保持することが可能である。そのため、トリムカバーをバックボードに取り付けた状態ではトリムカバーに引張力が作用してもバックボードの縁部が変形するおそれが低減する。その結果、トリムカバーの組付けラインを美しく仕上げることが可能である。
また、上記の構成では、ボード側係合部は、バックボードの縁部を挿入して当該縁部を保持可能なボード挿入溝を有する。そのため、バックボードの縁部を連結部材におけるボード側係合部のボード挿入溝に挿入して当該縁部を保持することが可能である。それによって連結部材をバックボードの縁部に容易に取り付けることが可能である。
【0024】
上記のシートにおいて、前記連結部材は、前記ボード側係合部における前記バックボードの前記縁部との係合および当該係合の解除が可能な弾性を有する合成樹脂で製造されているのが好ましい。
【0025】
かかる構成では、ボード側係合部におけるバックボードの縁部との係合および当該係合の解除が連結部材を構成する合成樹脂の弾性で可能であるので、連結部材の構造が簡単であるとともに連結部材を用いたトリムカバーの組付け作業が容易になる。
【0026】
上記のシートにおいて、前記端末部材は、平板部を有しており、前記連結部材は、前記平板部を挿入して前記端末部材を保持可能な端末挿入溝を有するのが好ましい。
【0027】
かかる構成では、端末部材の平板部を連結部材の端末挿入溝に挿入することにより、連結部材は端末部材を保持することが可能であり、端末部材および連結部材を用いたトリムカバーの組付け作業が容易になる。
【0028】
上記のシートにおいて、前記平板部は、前記トリムカバーの前記縁部に取り付けられ、前記端末挿入溝の入口は、前記トリムカバーの前記縁部が当該トリムカバーの内側に折り返された状態で前記平板部が前記端末挿入溝に挿入されることが可能な向きを向くように配置されているのが好ましい。
【0029】
かかる構成では、トリムカバーの縁部が当該トリムカバーの内側に折り返された状態で端末部材の平板部が連結部材の端末挿入溝に挿入される。これにより、トリムカバーはその縁部が内側に折り返された状態で組み付けられ、それとともに端末部材の平板部がトリムカバーの縁部に取り付けられている部分が外部から見えなくなる。その結果、トリムカバーの組付けラインを美しく仕上げることが可能である。
【0030】
上記のシートにおいて、前記端末部材は、前記平板部の縁に沿って設けられた柱状部をさらに有しており、前記柱状部は、曲面で構成された周面を有し、前記柱状部は、前記トリムカバーの前記縁部が折り返された部分の内側から当該縁部に当接して当該縁部の形状を保持するのが好ましい。
【0031】
かかる構成では、端末部材の柱状部は、曲面で構成された周面を有し、柱状部はトリムカバーの縁部が折り返された部分の内側から当該縁部に当接して当該縁部の形状を保持する。これにより、トリムカバーの縁部の折り返された部分を曲面が構成するようにきれいな外観を維持しながら、トリムカバーの縁部をバックボードの縁部に隙間なく固定することが可能になる。
【0032】
上記のシートにおいて、前記端末部材および前記連結部材は、互いに着脱可能な構成を有してもよい。
【0033】
かかる構成では、端末部材を連結部材に着脱可能に連結することによってトリムカバーの縁部をバックボードの縁部に容易に固定することが可能である。しかも、端末部材および連結部材の連結を解除することによってトリムカバーを容易に取り外すことが可能であるので、トリムカバーの交換も容易になる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のシートによれば、トリムカバーをバックボードに取り付ける部分を外部から見えなくして外観を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のバックボードの縁部および開口、ならびに当該開口に取り付けられるクリップを示すバックボードの要部拡大斜視図である。
【
図3】
図1のトリムカバーの要部拡大斜視図である。
【
図4】
図3のトリムカバーに取り付けられる端末部材の正面図であって、(a)はトリムカバーに取付前の状態を示す図、(b)はトリムカバーの縁部に沿って曲げられた状態で取り付けられた状態を示す図である。
【
図6】
図3のトリムカバーの縁部に
図4の端末部材が縫い付けられた状態を示す断面説明図である。
【
図8】
図1のシートにおけるトリムカバーの組付け作業の工程を示す説明図であって、(a)はクリップをバックボードの縁部に取り付ける前の状態を示す図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図9】
図1のシートにおけるトリムカバーの組付け作業の工程を示す説明図であって、(a)はクリップをバックボードの縁部に取り付けた後の状態を示す図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図10】
図1のシートにおけるトリムカバーの組付け作業の工程を示す説明図であって、トリムカバーの縁部を端末部材の柱状部に巻きかけ、端末部材をクリップの端末挿入溝に挿入する直前の状態を示す断面説明図である。
【
図11】
図1のシートにおけるトリムカバーの組付け作業の工程を示す説明図であって、端末部材の平板部をクリップの端末挿入溝に挿入した後の状態を示す断面説明図である。
【
図12】本発明の変形例におけるクリップがバックボードの縁部全体を覆う構成を示す説明図である。
【
図14】
図12の変形例におけるトリムカバーの組付け作業の工程を示す説明図であって、クリップをバックボードの縁部に取り付ける前の状態を示す断面説明図である。
【
図15】
図12の変形例におけるトリムカバーの組付け作業の工程を示す説明図であって、クリップをバックボードの縁部に取り付けた後の状態を示す断面説明図である。
【
図16】
図12の変形例におけるトリムカバーの組付け作業の工程を示す説明図であって、端末部材の平板部をクリップの端末挿入溝に挿入した後の状態を示す断面説明図である。
【
図17】本発明の他の変形例における貫通孔が重なり合うように端末部材がトリムカバーに縫着されている状態を示す断面説明図である。
【
図18】
図17の貫通孔が形成された端末部材の正面図である。
【
図19】
図17のトリムカバーおよび端末部材に雌ホックがかしめられた状態を示す断面説明図である。
【
図20】
図19のトリムカバーの縁部を端末部材の柱状部に巻きかけ、トリムカバー側の雌ホックをバックボード側の雄ホックに係合する直前の状態を示す断面説明図である。
【
図21】
図20のトリムカバー側の雌ホックをバックボード側の雄ホックに係合した状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0037】
本発明の一実施形態である自動車用のシート1は、
図1に示されるように、車両の前後方向Xにおける前方X1を向くように配置されている。シート1は、着座者の臀部を支持するシートクッション2と、シートクッション2の後方X2側において起立した状態で設けられ、着座者の背中を支持するシートバック3と、シートバック3の上部に設けられ、着座者の頭部を支持するヘッドレスト4とを備えている。
【0038】
図1に示されるシートバック3は、発泡樹脂などからなるシートパッド5と、シートパッド5の少なくとも前面5a(本実施形態では前面5aおよび両側面および上面)を覆うトリムカバー6と、シートパッド5の背面5b側に配置されたバックボード7とを備えている。
【0039】
バックボード7は、
図1~2に示されるように、シートパッド5の背面5b側に配置される板状の部材である。バックボード7は、合成樹脂などからなる軟質材料で形成されており、変形しやすく、とくに縁部7bは変形しやすい。
【0040】
バックボード7は、具体的には、略矩形板状の本体部7aと、当該本体部7aの外周に沿ってループ状に形成された縁部7bと、当該バックボード7の本体部7aとの間に形成された段差部7c(
図7参照)とを有している。
【0041】
バックボード7の縁部7bは、
図2および
図7に示されるように、後述のクリップ9のボード側係合部9a(
図5および
図7参照)を挿入可能な矩形形状の開口7dを複数有している。複数の開口7dは、バックボード7の周縁に沿って互いに離間して並ぶように配置されている。
【0042】
図3に示されるように、トリムカバー6は、皮革やビニールシートなどからなる可撓性を有するシート状の部材であり、シートパッド5の前面5aおよび両側面および上面を覆うことが可能な立体的な袋の形状を有している。トリムカバー6の縁部6aは、バックボード7の縁部7bの形状に対応するように、少なくとも一部が曲線形状を有している。
【0043】
上記のシートバック3は、トリムカバー6の縁部6aをバックボード7の縁部7bに固定するために、
図4~5に示されるように、端末部材8と、クリップ9とを備えている。端末部材8は、トリムカバー6の縁部6aに取り付けられ、バックボード7の縁部7bに取り付けられたクリップ9に連結される。
【0044】
端末部材8は、
図4(a)、(b)に示されるように、トリムカバー6の縁部6a(
図3参照)に沿って取り付けられる帯状の部材である。
【0045】
端末部材8は、トリムカバー6の縁部6aの曲線形状に追従して変形可能な弾性を有する。端末部材8は、合成樹脂などの軟質の材料からなり、押出成形などによって製造されている。
【0046】
端末部材8は、具体的には、複数の平板部8aと、当該複数の平板部8aのそれぞれの縁に沿って設けられ、縁同士を連結する柱状部8bとを有する。
【0047】
各平板部8aは、略台形形状を有している。これにより、端末部材8は、柱状部8bと反対側の縁において切れ込みが入ったギザギザ形状を有し、曲がりやすく構成しているため、当該端末部材8をバックボード7の外周の曲面に沿わせることが可能である(
図4(b)参照)。
【0048】
各平板部8aは、トリムカバー6の曲線形状の縁部6aに沿って取り付けられている。具体的には、
図6に示されるように、平板部8aのうち柱状部8bに近い部分は、縫着部10において、トリムカバー6の縁部6aに縫い付けられて固定されている。
【0049】
なお、本発明は、端末部材8をトリムカバー6の縁部6aに取り付ける方法について縫着に限定するものではなく、他の取付方法、例えば、接着や熱溶着などを採用してもよい。
【0050】
柱状部8bは、曲面で構成された周面、例えば、
図6に示されるような球面を有している。
【0051】
端末部材8を構成する平板部8aおよび柱状部8bは、以下のような特性を有することが好ましい。端末部材8の平板部8aは、好ましくは、ミシンでの縫製可能な厚さおよび柔らかさを有し、後述のクリップ9の端末挿入溝9fに係合するときに適度に曲がる程度の柔軟性を有するとともに、端末挿入溝9fに係合した後は端末挿入溝9fから抜けずに保持される程度の剛性を有する。一方、柱状部8bは、好ましくは、バックボード7の曲面に沿うように曲げることが可能な柔軟性を有し、クリップ9と係合した後には合わせ部(すなわち、トリムカバー6の縁部6aにおけるバックボード7の縁部7bとの重合部分)の形状を出す機能を有する。また、平板部8aが端末挿入溝9fから抜けずに保持されるように当該平板部8aを保持できる程度の剛性を有する。平板部8aおよびそれを含む端末部材8の全体は、例えば、ポリプロピレン等で構成される。
【0052】
クリップ9は、
図2、
図5および
図7に示されるように、本発明の連結部材の一例であって、バックボード7の縁部7bに取り付けられて端末部材8が連結されるように構成されている。具体的には、クリップ9は、バックボード7の縁部7bに係合するボード側係合部9aと、端末部材8の平板部8aに係合する端末側係合部9bとを有する。
【0053】
図5および
図7に示されるように、ボード側係合部9aは、バックボード7の縁部7bの少なくとも一部を覆って当該縁部7bの形状を保持する保持部9dを有する。本実施形態の保持部9dは、L字状に曲がった形状を有しており、バックボード7の縁部7bと段差部7cとで形成されたコーナー部7eを覆って当該縁部7bの形状を保持することが可能である。保持部9dの根元側端部は、ベース部9hにつながっている。
【0054】
図7に示されるように、ベース部9hは、バックボード7の縁部7bの開口7dの内部に挿入される。その状態では、L字状の保持部9dは、バックボード7のコーナー部7eを覆うとともに後述の抜け止め部9eを介して当該コーナー部7eに当接する。
【0055】
ボード側係合部9aでは、上記のL字状の保持部9dおよびベース部9hならびに仕切り板9iによって、ボード挿入溝9cが形成されている。ボード挿入溝9cは、バックボード7の縁部7bを挿入して当該縁部7bを保持することが可能な寸法で形成されている。
【0056】
ボード側係合部9aは、ボード挿入溝9cに挿入されたバックボード7の縁部7bが当該ボード挿入溝9cから抜け出ることを防止する抜け止め部9eを有する。抜け止め部9eは、保持部9dの端部におけるボード挿入溝9cの入口の縁に形成されている。
【0057】
端末側係合部9bは、端末部材8の平板部8aを挿入して端末部材8を保持可能な端末挿入溝9fを有する。端末挿入溝9fの入口9gは、
図7に示されるように、トリムカバー6の縁部6aが端末部材8の柱状部8bに巻き付けられるようにして当該トリムカバー6の内側に折り返された状態で平板部8aが端末挿入溝9fに挿入されることが可能な向きを向くように配置されている。
【0058】
クリップ9は、合成樹脂などによって一体成形によって製造される。合成樹脂は、ボード側係合部9aにおける前記バックボード7の縁部7bとの係合および当該係合の解除が可能な弾性を有していればよい。具体的には、クリップ9は、ミシンで縫製可能な程度の硬さであって、複数のクリップ9が連なった状態で成形された後に当該複数のクリップ9をロール状にして保管や輸送が可能な柔軟性を有する。互いにつながっている複数のクリップ9は、使用時には1個ずつ分離して用いられる。クリップ9は、例えば、加工性が高く、強度を有するポリプロピレン等で構成される。
【0059】
上記のように構成されたシート1では、以下のようにして、トリムカバー6の縁部6aをバックボード7の縁部7bに固定してトリムカバー6の組付け作業を行う。
【0060】
まず、トリムカバー6の組付け作業を行う前の準備段階として、
図6に示されるように、端末部材8の複数の平板部8aをトリムカバー6の縁部6aに縫い付けておく。具体的には、各平板部8aのうち柱状部8bに近い部分を縫着部10によってトリムカバー6の縁部6aに縫着する。
【0061】
トリムカバー6の組付け作業の最初の段階として、
図8~9に示されるように、クリップ9をシートパッド5の背面側に設置されたバックボード7の縁部7bに形成された複数の開口7dのそれぞれに取り付ける。具体的には、クリップ9のボード側係合部9aのL字状の保持部9dおよびベース部9hをバックボード7の縁部7bの開口7dに挿入する。それとともに、L字状の保持部9dをバックボード7のコーナー部7eの外側にかぶせるとともに抜け止め部9eを介して当該コーナー部7eに当接させる。このようにボード側係合部9a(とくにベース部9h)が開口7dに挿入された状態では、バックボード7の縁部7bは、ボード挿入溝9cに挿入される。
【0062】
図9(a)、(b)に示されるクリップ9をバックボード7の縁部7bに取り付けた状態では、クリップ9の端末挿入溝9fの入口9gは、バックボード7の段差部7cに対向した位置に配置される。入口9gと段差部7cとの間には、端末部材8を入口9gに挿入可能な隙間が確保されている。
【0063】
その後、トリムカバー6を
図1のようにシートパッド5の前面5a、両側面および上面にかぶせる。
【0064】
ついで、
図10に示されるように、トリムカバー6の縁部6aを端末部材8の柱状部8bに巻き付けるようにして内側(外部から見えない側)に折り返しながら、トリムカバー6を端末部材8の球状の曲面を有する柱状部8bに巻きかける。
【0065】
その後、
図11に示されるように、トリムカバー6の縁部6aが当該トリムカバー6の内側に折り返された状態(折返し部分6b参照)で、端末部材8の平板部8aをクリップ9の端末挿入溝9fの入口9gから当該端末挿入溝9fに挿入する。このとき、端末部材8の柱状部8bは、トリムカバー6の縁部6aが折り返された部分(折返し部分6b)の内側から当該縁部6aに当接して当該縁部6aの形状を保持する。
【0066】
トリムカバー6の縁部6aが端末部材8とともに当該トリムカバー6の内側に折り返されることによって、端末部材8およびクリップ9とともに当該端末部材8の当該縁部6aに対する取付部分である縫着部10は、トリムカバー6によって外部から覆われる。
【0067】
端末部材8およびクリップ9ならびに縫着部10が当該トリムカバー6のうち折返し部分6bより内側の領域によって覆われた状態で、端末部材8がクリップ9に連結され、それによって、トリムカバー6の縁部6aがバックボード7の縁部7bに固定される。これにより、トリムカバー6の組付け作業が完了する。
【0068】
図11に示されるように、トリムカバー6をバックボード7に取り付けた状態では、トリムカバー6の引張力F1によって軟質材料からなるバックボード7が引っ張られ、バックボード7のコーナー部7eが平らになろうとするが、クリップ9の保持部9dでバックボード7のコーナー部7eの外側を包み込むとともに内側を仕切り板9iで押さえることで、コーナー部7eが平らになる変形が抑制され、バックボード7の剛性アップ(形状維持)になる。これにより、バックボード7の変形によるトリムカバー6の端部の位置の蛇行を防ぐことが可能であり、トリムカバー6とバックボード7との境界部の見栄えを良好に保つことが可能である。
【0069】
しかも、トリムカバー6が引っ張られたときに端末部材8がクリップ9の抜ける方向(回転方向)に回転力F2がかかった際に、クリップ9の抜け止め部9eがバックボード7の段差部7cに引っ掛かって抜け防止となる。このように、クリップ9をバックボード7の開口7dに差し込むことで、トリムカバー6を差し込んだ際にかかる横方向の引張力F1(すなわち、トリムカバー6の縁部6aに連結された端末部材8がクリップ9から抜け出す方向の力)に対し、開口7dに差し込んだクリップ9が開口7dの縁に引っ掛かることで抜け防止となる。このとき、クリップ9のベース部9hが開口7dの内壁に当たって止まるため、バックボード7に対するクリップ9の位置を固定することが可能である。
【0070】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のシート1は、トリムカバー6の縁部6aに沿って取り付けられた端末部材8と、連結部材として、バックボード7の縁部7bに取り付けられて端末部材8が連結されるクリップ9とを備えている。端末部材8がクリップ9と共にトリムカバー6によって外部から覆われた状態で、クリップ9に連結されることによって、トリムカバー6の縁部6aがバックボード7の縁部7bに固定されている。このようにトリムカバー6がバックボード7に固定された状態では、トリムカバー6をバックボード7に取り付けるための取付部分である端末部材8およびクリップ9が外部から見えなくなるので、シート1の外観が向上する。
【0071】
これにより、軟質のバックボード7の形状を維持し、トリムカバー6を外観よく組み付けることが可能になる。
【0072】
また、本実施形態のシート1の構造では、トリムカバー6の縁部6aに取り付けられた端末部材8をバックボード7の縁部7bに取り付けられたクリップ9に連結するだけでよく、トリムカバー6の縁部6aをバックボード7の縁部7bに縫い付ける作業も不要になる。
【0073】
(2)
とくに本実施形態では、トリムカバー6の縁部6aが端末部材8と共に当該トリムカバー6の内側に折り返されることによって、端末部材8がトリムカバー6によって外部から覆われる。そして、トリムカバー6のうち折返し部分6bより内側の領域によってクリップ9が覆われた状態で、端末部材8がクリップ9に連結されている。このようにトリムカバー6を折り返すことによって端末部材8およびクリップ9が外部から見えなくなるので、容易かつ確実にシート1の外観を向上することが可能である。
【0074】
なお、トリムカバー6の縁部6aを当該トリムカバー6の内側に折り返さない場合でも、端末部材8がクリップ9と共にトリムカバー6によって外部から覆われた状態でトリムカバー6がバックボード7に固定されていれば、トリムカバー6をバックボード7に取り付けるための取付部分である端末部材8およびクリップ9が外部から見えなくなるので、シート1の外観が向上する。
【0075】
(3)
本実施形態のシート1では、トリムカバー6の縁部6aは、少なくとも一部がバックボード7の縁部7bの形状に沿うような曲線形状を有している。端末部材8は、曲線形状に追従して変形可能な弾性を有する。この構成では、トリムカバー6の縁部6aが曲線形状を有する場合においても、
図4(b)に示されるように、端末部材8を曲線形状に追従して変形させることにより、端末部材8をトリムカバー6の縁部6aに沿って容易に取り付けることが可能である。また、端末部材8の取付後では、トリムカバー6の縁部6aの曲線形状を端末部材8によって保持することが可能であり、当該縁部6aにおけるしわの発生を防ぐことが可能である。
【0076】
(4)
本実施形態のシート1では、クリップ9は、バックボード7の縁部7bに係合するボード側係合部9aを有する。この構成では、クリップ9のボード側係合部9aをバックボード7の縁部7bに係合してクリップ9をバックボード7の縁部7bに固定しておくことが可能である。したがって、トリムカバー6の縁部6aに取り付けられた端末部材8を、当該クリップ9を介してバックボード7の縁部7bに連結する作業を容易に行うことが可能であり、作業性が向上する。
【0077】
(5)
しかも、本実施形態のシート1では、ボード側係合部9aは、バックボード7の縁部7bの少なくとも一部を覆って当該縁部7bの形状を保持する構成である保持部9dを有する。この構成では、ボード側係合部9aは、バックボード7の縁部7bの少なくとも一部を覆って当該縁部7bの形状を保持することが可能である。そのため、トリムカバー6をバックボード7に取り付けた状態ではトリムカバー6に引張力が作用してもバックボード7の縁部7bが変形するおそれが低減する。その結果、バックボード7が軟質材料で形成されていても、トリムカバー6の組付けラインを美しく仕上げることが可能である。
【0078】
(6)
本実施形態のシート1では、バックボード7の縁部7bは、当該バックボード7の本体部7aとの間に段差部7cが形成されるように配置されている。ボード側係合部9aは、バックボード7の縁部7bと段差部7cとで形成されたコーナー部7eを覆って当該縁部7bの形状を保持するように構成されている。この構成では、バックボード7の縁部7bが当該バックボード7の本体部7aとの間に段差部7cが形成された場合においても、ボード側係合部9aがバックボード7の縁部7bと段差部7cとで形成されたコーナー部7eを覆って当該縁部7bの形状を保持することが可能である。その結果、バックボード7の本体部7aと縁部との間に段差部7cがあっても、バックボード7の縁部7bが変形するおそれが低減するので、トリムカバー6の組付けラインを美しく仕上げることが可能である。
【0079】
なお、段差部7cを有する場合に、本体部7aと、クリップ9に端末部材8を保持させた際のトリムカバー6の位置とを合わせることで、トリムカバー6とバックボード7との境界部に段差ができないように構成して、外観を向上することが可能である。
【0080】
(7)
本実施形態のシート1では、ボード側係合部9aは、バックボード7の縁部7bを挿入して当該縁部7bを保持可能なボード挿入溝9cを有する。この構成では、バックボード7の縁部7bをクリップ9におけるボード側係合部9aのボード挿入溝9cに挿入して当該縁部7bを保持することが可能である。それによってクリップ9をバックボード7の縁部7bに容易に取り付けることが可能である。
【0081】
(8)
本実施形態のシート1では、ボード側係合部9aは、ボード挿入溝9cに挿入されたバックボード7の縁部7bが当該ボード挿入溝9cから抜け出ることを防止する抜け止め部9eを有する。そのため、抜け止め部9eによって、ボード挿入溝9cに挿入されたバックボード7の縁部7bが当該ボード挿入溝9cから抜け出ることを防止することが可能である。
【0082】
なお、
図7に示される抜け止め部9eは、バックボード7の段差部7cの面に当接しているが、抜け止め部9eの係合力アップのために、段差部7cの面に突起または凹部などを設けて、クリップ9を抜けないようにする(いわゆる嵌め殺しにする)ようにしてもよい。
【0083】
(9)
本実施形態のシート1では、バックボード7の縁部7bは、ボード側係合部9aを挿入可能な開口7dを有している。ボード側係合部9aが開口7dに挿入された状態で、バックボード7の縁部7bは、ボード挿入溝9cに挿入される。この構成では、クリップ9におけるボード側係合部9aをバックボード7の縁部7bの開口7dに挿入することにより、クリップ9をバックボード7の縁部7bの所定の位置に固定することが可能である。しかも、ボード側係合部9aが当該開口7dに挿入された状態で、バックボード7の縁部7bがボード挿入溝9cに挿入されるので、クリップ9がバックボード7の縁部7bから脱落するおそれが低減する。
【0084】
また、クリップ9がバックボード7の縁部7bの開口7dから脱落することを防止するために、開口7dの近傍、例えば、ベース部9hの角部に脱落防止用の突起9j(
図11参照)をさらに設けてもよい。
【0085】
(10)
本実施形態のシート1では、連結部材としてのクリップ9は、ボード側係合部9aにおけるバックボード7の縁部7bとの係合および当該係合の解除が可能な弾性を有する合成樹脂で製造されている。この構成では、ボード側係合部9aにおけるバックボード7の縁部7bとの係合および当該係合の解除がクリップ9を構成する合成樹脂の弾性で可能であるので、連結部材としてのクリップ9の構造が簡単であるとともに連結部材を用いたトリムカバー6の組付け作業が容易になる。また、本実施形態では、合成樹脂製のクリップ9をバックボード7の縁部7bに任意の配置および個数で設置することが可能である。
【0086】
(11)
本実施形態のシート1では、端末部材8は、平板部8aを有している。クリップ9は、平板部8aを挿入して端末部材8を保持可能な端末挿入溝9fを有する。この構成では、端末部材8の平板部8aをクリップ9の端末挿入溝9fに挿入することにより、クリップ9は端末部材8を保持することが可能であり、端末部材8およびクリップ9を用いたトリムカバー6の組付け作業が容易になる。
【0087】
(12)
本実施形態のシート1では、平板部8aは、トリムカバー6の縁部6aに取り付けられている。端末挿入溝9fの入口9gは、トリムカバー6の縁部6aが当該トリムカバー6の内側に折り返された状態で平板部8aが端末挿入溝9fに挿入されることが可能な向きを向くように配置されている。
【0088】
この構成では、トリムカバー6の縁部6aが当該トリムカバー6の内側に折り返された状態で端末部材8の平板部8aがクリップ9の端末挿入溝9fに挿入される。これにより、トリムカバー6はその縁部が内側に折り返された状態で組み付けられ、それとともに端末部材8の平板部8aがトリムカバー6の縁部6aに取り付けられている部分が外部から見えなくなる。その結果、トリムカバー6の組付けラインを美しく仕上げることが可能である。
【0089】
なお、トリムカバー6に引張力が作用し、端末部材8に抜ける方向(
図11における回転力F2と同一の方向)に力がかかった場合であっても、上述の通り、クリップ9が抜け止めされ、回転が止まることで、端末部材8の平板部8aがクリップ9の端末挿入溝9fとともに回転して抜けるおそれがない。また、バックボード7の段差部7cに端末部材8の柱状部8bが当接することでも、抜け防止となる。このように、端末部材8の平板部8aの抜けにくい構造なので、クリップ9の端末挿入溝9fには平板部8aの抜け止めのための「返し」または突起などが不要になり、それによって、平板部8aを端末挿入溝9fに挿入しやすくなる。
【0090】
(13)
本実施形態のシート1では、端末部材8は、平板部8aの縁に沿って設けられた柱状部8bをさらに有している。柱状部8bは、曲面で構成された周面を有している。柱状部8bは、トリムカバー6の縁部6aが折り返された部分の内側から当該縁部6aに当接して当該縁部6aの形状を保持する。
【0091】
この構成では、端末部材8の柱状部8bは、曲面で構成された周面を有し、柱状部8bはトリムカバー6の縁部6aが折り返された部分の内側から当該縁部6aに当接して当該縁部6aの形状を保持する。すなわち、トリムカバー6の縁部6aを柱状部8bに巻きかけた状態で保持することが可能である。これにより、トリムカバー6の縁部6aの折り返された部分を曲面が構成するようにきれいな外観を維持しながら、トリムカバー6の縁部6aをバックボード7の縁部7bに隙間なく固定することが可能になる。
【0092】
(14)
本実施形態のシート1では、端末部材8およびクリップ9は、互いに着脱可能な構成を有している。そのため、端末部材8をクリップ9に着脱可能に連結することによってトリムカバー6の縁部6aをバックボード7の縁部7bに容易に固定することが可能である。しかも、端末部材8およびクリップ9の連結を解除することによってトリムカバー6を容易に取り外すことが可能であるので、トリムカバー6の交換も容易になる。
【0093】
(変形例)
(A)
上記実施形態では、バックボード7の縁部7bに複数の開口7dが形成され、各開口7dに連結部材としてのクリップ9を挿入して取り付けている例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の変形例として、
図12~16に示されるように、クリップ9のボード側係合部9aがバックボード7の縁部7b全体を覆うような構成であってもよい。
【0094】
具体的には、
図12~16に示されるクリップ9は、上記の
図5のクリップ9と比較して、ボード挿入溝9cがバックボード7の縁部7b全体を収容可能な長さを有し、一方、当該長さを確保するためにベース部9hを無くした構成を有している。その他の点では、
図12~16に示されるクリップ9は、
図5のクリップ9と共通の構成を有しているので、説明を省略する。
【0095】
図12~16に示されるクリップ9では、ボード挿入溝9cがバックボード7の縁部7b全体を収容可能な長さを有しており、クリップ9のボード側係合部9aがバックボード7の縁部7b全体を覆うことが可能である。すなわち、ボード側係合部9aのボード挿入溝9cにバックボード7の縁部7b全体が収納され、その状態で、当該縁部7bおよび段差部7cによって形成されたコーナー部7eがL字状の保持部9dで保持される。そのため、クリップ9が縁部7b全体およびコーナー部7eを保持する効果が高く、バックボード7の形状保持効果が高い。また、この構成では、バックボード7に開口を形成する必要がなく、バックボード7の構成が簡単になる。それとともに、
図12に示されるように、クリップ9をバックボード7の全周の縁部7bうちの任意の位置に取り付けることが可能であり、トリムカバー6を最適な張り状態で組み付けることが可能になる。
【0096】
また、上記の
図12~16に示されるクリップ9においても、上記の開口7dに起因する効果を除けば、上記の
図1~11に示される実施形態の構成と同様の作用効果、すなわち、上記(本実施形態の特徴)の(6)を除く(1)~(12)に記載された作用効果を奏することが可能である。
【0097】
(B)
また、上記実施形態では、端末部材8およびクリップ9が互いに着脱可能な構成を有する例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、端末部材および連結部材が互いに着脱可能であれば他の構成であってもよい。
【0098】
例えば、本発明の他の変形例として、
図19~21に示されるように、互いに着脱可能な雌ホック11および雄ホック12からなるボタン式ホックを用いて、端末部材および連結部材が互いに着脱可能な構成にしてもよい。
【0099】
すなわち、この変形例では、端末部材として、上記の端末部材8に雌ホック11が取り付けられたものが用いられ、連結部材として、バックボード7の縁部7bに取り付けられた雄ホック12が用いられる。なお、雌ホック11および雄ホック12を逆の配置にしてもよい。なお、上記の構成に対応して、
図18に示されるように、端末部材8の平板部8aには、貫通孔8cが形成されている。
【0100】
この変形例では、端末部材8の平板部8aは、
図17および
図19に示されるように、柱状部8bと反対側の端部でトリムカバー6の縁部6aに対して縫着部10で縫い付けられている。この状態では、平板部8aは、貫通孔8cとトリムカバー6に形成された貫通孔6cとが重なり合うように配置されている。雌ホック11は、受け部11aと、軸部11bとを有する。雌ホック11は、軸部11bが平板部8aおよびトリムカバー6の貫通孔8c、6cに挿入された状態でかしめによって当該平板部8aおよびトリムカバー6に固定される。このとき、受け部11aは、トリムカバー6において平板部8aと反対側に配置される。
【0101】
一方、バックボード7の縁部7bには、凹部7fが形成されている。さらに、凹部7fの底面には、貫通孔7gが形成されている。雄ホック12は、凸部12aと、軸部12bとを有する。雄ホック12は、軸部12bがバックボード7の凹部7fの底面の貫通孔7gに挿入された状態でかしめによって当該底面に固定される。このとき、凸部12aは、バックボード7において凹部7fの内側に配置される。
【0102】
この変形例では、トリムカバー6をバックボード7に固定する場合、
図20~21に示されるように、トリムカバー6の縁部6aを、端末部材8の球面を有する柱状部8bを起点に折返し、雌ホック11を、取付後に外部から見えない位置になるようにバックボード7側の雄ホック12に係止させる。具体的には、雌ホック11の受け部11aと雄ホック12の凸部12aとを係合することによって、トリムカバー6の縁部6aはバックボード7の縁部7bに固定することが可能である。
【0103】
図21に示されるトリムカバー6の組付後の状態では、トリムカバー6および端末部材8が雌ホック11および雄ホック12を介してバックボード7に拘束されているので、トリムカバー6が引っ張られても、トリムカバー6がバックボード7に対してずれるおそれが低減する。そのため、バックボード7とトリムカバー6との合わせ目(具体的には、バックボード7の段差部7cとトリムカバー6の折返し部分6bの合わせ目)を隙間なくきれいに処理することが可能になる。しかも、雌ホック11および雄ホック12がトリムカバー6の内側に位置するので、外部から視認できない。
【0104】
以上のように、
図19~21に示される変形例では、端末部材として、上記の端末部材8に雌ホック11が取り付けられたものが用いられ、連結部材として、バックボード7の縁部7bに取り付けられた雄ホック12が用いられ、端末部材(端末部材8および雌ホック11)および連結部材(雄ホック12)が互いに着脱可能な構成を有する。この構成により、端末部材を構成する雌ホック11および連結部材を構成する雄ホック12を着脱可能に連結することによってトリムカバー6の縁部6aをバックボード7の縁部7bに容易に固定することが可能である。しかも、当該雌ホック11および雄ホック12の連結を解除することによってトリムカバー6を容易に取り外すことが可能であるので、トリムカバー6の交換も容易になる。
【0105】
また、上記の
図18~21に示される変形例においても、上記(本実施形態の特徴)の(1)に記載された作用効果と同様の作用効果を奏することが可能である。すなわち、
図18~21に示される変形例においても、端末部材8が雌ホック11および雄ホック12と共にトリムカバー6によって外部から覆われた状態で、雌ホック11が雄ホック12に連結されることによって、トリムカバー6の縁部6aがバックボード7の縁部7bに固定されている。このようにトリムカバー6がバックボード7に固定された状態では、トリムカバー6をバックボード7に取り付けるための取付部分である端末部材(端末部材8、雌ホック11)および連結部材(雄ホック12)が外部から見えなくなるので、シート1の外観が向上する。これにより、軟質のバックボード7の形状を維持し、トリムカバー6を外観よく組み付けることが可能になる。また、トリムカバー6の縁部6aに取り付けられた端末部材8に固定された雌ホック11を雄ホック12に連結するだけでよいので、トリムカバー6の縁部6aをバックボード7の縁部7bに縫い付ける作業も不要になる。
【0106】
(C)
なお、端末部材および連結部材が互いに着脱可能な構成を実現するその他の構成としては、上記(B)のボタン式のホック(雌ホック11および雄ホック12)の構成以外にも、面ファスナーや磁石などを有する構成も採用可能である。
【0107】
(D)
上記実施形態では、
図5に示されるように連結部材としてのクリップ9のボード側係合部9aは、バックボード7の縁部7bを挿入して当該縁部7bを保持可能なボード挿入溝9cを有するが、本発明はこれに限定されるものではなく、これと逆の構成、すなわち、ボード側係合部9aに突起が設けられ、バックボード7の縁部7bに当該突起が挿入される溝または凹部が形成されてもよい。この場合も、クリップ9のボード側係合部9aはバックボード7の縁部7bに着脱自在に係合することが可能である。
【0108】
(E)
上記実施形態では、
図5に示されるように連結部材としてのクリップ9は、端末挿入溝9fを有し、端末部材8の平板部8aが端末挿入溝9fに挿入することによって端末部材8を保持可能な構成を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これと逆の構成、すなわち、クリップ9に平板部または突起が設けられ、端末部材8に当該平板部または突起が挿入される凹部または溝が形成されてもよい。この場合も、クリップ9は、端末部材8を保持することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 シート
2 シートクッション
3 シートバック
5 シートパッド
6 トリムカバー
6a 縁部
7 バックボード
7a 本体部
7b 縁部
7c 段差部
7d 開口
7e コーナー部
8 端末部材
9 クリップ(連結部材)
9a ボード側係合部
9b 端末側係合部
9c ボード挿入溝
9d 保持部
9e 抜け止め部
9f 端末挿入溝
9g 入口
10 縫着部
11 雌ホック
12 雄ホック