IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 筑波大学の特許一覧

特許7378769基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置
<>
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図1
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図2
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図3
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図4
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図5
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図6
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図7
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図8
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図9
  • 特許-基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】基板構造体、支持構造体、薄膜素子の応用デバイス、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/12 20230101AFI20231107BHJP
【FI】
H10N60/12 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019128660
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021015854
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柏木 隆成
(72)【発明者】
【氏名】門脇 和男
(72)【発明者】
【氏名】南 英俊
(72)【発明者】
【氏名】尾内 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】吉住 昭治
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-112274(JP,A)
【文献】特開2016-051871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0264312(US,A1)
【文献】ELARABI, Asem et al.,Circularly polarized terahertz radiation monolithically generated by cylindrical mesas of intrinsic Josephson junctions,APPLIED PHYSICS LETTERS,2018年07月30日,Vol. 113,pp. 052601-1-052601-4,https://doi.org/10.1063/1.5040159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導体を含む超伝導素子と、
第一の電極基板と、
第二の電極基板と、を積層してなる基板構造体であって、
前記第一の電極基板と前記第二の電極基板が重なり合った積層領域と、前記電極基板同士が互いに重なり合わない非積層領域とが形成されており、
前記積層領域に、前記超伝導素子を挟み込むように配置し、
前記非積層領域には、配線の接続箇所を設けることを特徴とする、基板構造体。
【請求項2】
前記超伝導素子は、多重積層型ジョセフソン接合を有する層状超伝導体BSCCOの単結晶を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載の基板構造体。
【請求項3】
前記超伝導素子は、アレイ構造を形成していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の基板構造体。
【請求項4】
前記アレイ構造は、前記超伝導素子から発振する電磁波の放射出力を互いに強め合う位置に、前記超伝導素子を複数配置するものであることを特徴とする、請求項3に記載の基板構造体。
【請求項5】
前記アレイ構造は、前記超伝導素子を10μm以上、1mm以下の間隔で複数配置するものであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の基板構造体。
【請求項6】
前記アレイ構造は、前記超伝導素子を縦列方向及び横列方向にそれぞれ2以上配置するものであることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の基板構造体。
【請求項7】
前記超伝導素子は、最大厚さが0.5μm以上、20μm以下であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の基板構造体。
【請求項8】
前記第一の電極基板と前記第二の電極基板を通じ、前記超伝導素子の厚さ方向に所定の電圧と電流を印加する電圧・電流印加手段と、前記超伝導素子の発熱を前記第一の電極基板と前記第二の電極基板を通じて排熱する排熱手段とを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の基板構造体。
【請求項9】
前記第一の電極基板及び前記第二の電極基板は、絶縁材料に電極パターンが描かれたものであることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の基板構造体。
【請求項10】
前記電極パターンの形状は、アンテナ特性を示すものであることを特徴とする、請求項に記載の基板構造体。
【請求項11】
前記配線は、前記第一の電極基板ないしは前記第二の電極基板の面に対して、同一方向から接続可能であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板構造体。
【請求項12】
複数の電極基板を積層した積層領域に薄膜素子を挟み込んでなる基板構造体を支持する支持構造体であって、
前記基板構造体の前記積層領域に挟み込んだ前記薄膜素子を一定の力で押圧する押圧部材とを備えることを特徴とする、支持構造体。
【請求項13】
電磁波が透過する電磁波透過口と、
前記基板構造体からの熱を排熱する排熱手段とをさらに備えることを特徴とする、請求項12に記載の支持構造体。
【請求項14】
前記電磁波透過口に、電磁波の集光レンズ部を設けることを特徴とする、請求項13に記載の支持構造体。
【請求項15】
前記集光レンズ部は、前記基板構造体における前記電極基板のうち、いずれか一つ以上を電磁波の集光レンズとして機能する形状に加工したものであることを特徴とする、請求項14に記載の支持構造体。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の基板構造体を、
請求項1215のいずれか一項に記載の支持構造体に支持してなることを特徴とする、薄膜素子の応用デバイス。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載の基板構造体を備え、
交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して動作することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振することを特徴とする、テラヘルツ帯域電磁波発振素子。
【請求項18】
交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して動作することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振するテラヘルツ帯域電磁波発振素子を備え、
前記テラヘルツ帯域電磁波発振素子は、請求項1~11のいずれか一項に記載の基板構造体を含んでなることを特徴とする、テラヘルツ帯域電磁波発振装置。
【請求項19】
前記テラヘルツ帯域電磁波発振素子が、請求項1215のいずれか一項に記載の支持構造体に支持されていることを特徴とする、請求項18に記載のテラヘルツ帯域電磁波発振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板構造体、支持構造体及び薄膜素子の応用デバイスに関するものである。また、本発明は、特にテラヘルツ帯域電磁波を発振するテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電波と光の中間領域の波長をもつテラヘルツ波(0.1THz~10THz)が着目されている。このテラヘルツ波は、光のような直進性をもち、電波のように紙やプラスチックといった物質を透過する性質を持つ。また、テラヘルツ帯の周波数は、分子の回転や振動、結晶格子の振動、タンパク質などの高分子の振動などの周波数と等しい。そのためテラヘルツ波は、様々な物質の同定に利用できるのみならず、イメージングなどの非破壊検査、セキュリティ、高速通信、天文学、医療等の幅広い分野への利用が期待され、注目を集めている。
【0003】
このテラヘルツ波を発生する小型素子の1つとして、近年、高温超伝導体の単結晶を用いた発振素子が提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、高温超伝導体に積層された超伝導層と絶縁体層を利用したテラヘルツ波発振素子が提案されている。
【0004】
絶縁体層を超伝導層でサンドイッチした構造は、ジョセフソン接合として知られる。ここに電圧が発生すると、印加電圧に比例した、高周波電流が発生する。この効果は、交流ジョセフソン効果として知られている。高温超伝導体の単結晶には、ジョセフソン接合を自然に内包したものがあり、固有ジョセフソン接合として知られている。そのため、このような単結晶に電圧を印加することで、交流ジョセフソン効果を原理とする高周波電流の発生が可能になる。
【0005】
更に特許文献3では、この高温超伝導発振素子の発振特性を改善する技術が提案されている。この特許文献3では、超伝導素子を複数の基板で挟み込むことで、素子からの発熱を逃がす構造や、複数の発振素子を挟み込む形状などについて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-251863号公報
【文献】特開2009-43787号公報
【文献】特開2016-51871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~3に記載された超伝導素子は厚さが数μmと非常に薄い。このような薄膜状の超伝導素子を基板で挟み込むときに、超伝導素子を安定して支持することは困難である。しかしながら、特許文献1~3には超伝導素子の支持に係る技術については特に記載されていない。このため、超伝導素子を破壊することなく、複数の基板で確実に挟み込み、素子を支持する技術が求められている。
【0008】
また、超伝導素子を作動させるためには、厚さ方向に所定の電圧・電流を印加する必要がある。よって、そのための電極を、超伝導素子に密着させて設置する配線技術が求められている。
【0009】
さらに、超伝導素子と基板の密着性が不十分だと、素子からの発熱を基板を介して十分に逃がすことができない。そのため、素子と基板が高い密着性を有し、高い排熱性を実現する技術が求められている。
【0010】
上記のような超伝導素子の支持、配線、及び排熱等に関する技術的な課題は、特許文献1~3に記載された超伝導素子に限らず、広く薄膜素子に関わる課題として存在しており、その解決技術が求められている。
【0011】
そこで、本発明の課題は、超伝導素子などの薄膜素子における確実な支持、素子と電極との密着性を高めた配線、及び電極基板を介した効率的な排熱等を実現し、その薄膜素子をデバイスとして機能させるための、基板構造体、支持構造体及び薄膜素子の応用デバイスを提供することである。特に、テラヘルツ波を安定して発振することが可能となるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、超伝導素子などの薄膜素子において、積層時の配置に特徴を有する基板構造体や、基板構造体を支持する支持構造体を設けることで、超伝導素子などの薄膜素子の支持、配線、及び排熱等の技術課題が解決できることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するための、基板構造体、支持構造体及び薄膜素子の応用デバイスである。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の基板構造体は、超伝導体を含む超伝導素子と、第一の電極基板と、第二の電極基板と、を積層してなる基板構造体であって、第一の電極基板と第二の電極基板が重なり合った積層領域と、電極基板同士が互いに重なり合わない非積層領域とが形成されており、積層領域に、超伝導素子を挟み込むように配置し、非積層領域には、配線の接続箇所を設けることを特徴とする。
この基板構造体によれば、超伝導素子と電極基板の密着性を高くすることができる。これにより、素子の確実な支持、電極との密着性を高める配線が可能になる。また、超伝導素子の作動時に発生する熱を、電極基板を介して効率的に排熱することが可能となる。
【0014】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、超伝導素子は、多重積層型ジョセフソン接合を有する層状超伝導体BSCCOの単結晶を含むものであることを特徴とする。
この特徴によれば、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯の電磁波を安定して発生させることのできるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置の作製が可能になる。
【0015】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、超伝導素子は、アレイ構造を形成していることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子からの電磁波の放射出力を向上させることが可能となる。特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置において、高い出力の発振が可能になる。
【0016】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、アレイ構造は、超伝導素子から発振する電磁波の放射出力を互いに強め合う位置に、超伝導素子を複数配置するものであることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子からの電磁波の放射出力をより高めることが可能となる。特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置において、より高い出力の発振が可能になる。
【0017】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、アレイ構造は、超伝導素子を10μm以上、1mm以下の間隔で複数配置するものであることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子からの電磁波の放射出力をより一層高めることが可能となる。特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置において、より一層高い出力の発振が可能になる。
【0018】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、アレイ構造は、超伝導素子を縦列方向及び横列方向にそれぞれ2以上配置するものであることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子からの電磁波の放射出力をより一層高めることが可能となる。特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置において、より一層高い出力の発振が可能になる。
【0019】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、超伝導素子は、配置面積の1辺が1mm以上となることを特徴とする。
この特徴によれば、配置面積が比較的広い超伝導素子に対して、確実な支持、電極との密着性を高める配線、及び効率的な排熱等が可能となる。また、これにより、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯の電磁波を安定して発生させることのできるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置の作製が可能になる。
【0020】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、超伝導素子は、最大厚さが0.5μm以上、20μm以下であることを特徴とする。
この特徴によれば、厚さが非常に薄い超伝導素子に対して、確実な支持、電極との密着性を高める配線、及び効率的な排熱等が可能となる。また、これにより、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯の電磁波を安定して発生させることのできるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置の作製が可能になる。
【0021】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、第一の電極基板と第二の電極基板を通じ、超伝導素子の厚さ方向に所定の電圧を印加する電圧印加手段と、薄膜素子の発熱を第一の電極基板と第二の電極基板を通じて排熱する排熱手段とを有することを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子を作動させるために必要な所定の電圧・電流を確実に印加することができる。また、超伝導素子の作動時に発生する熱をより効率的に排熱することが可能となる。特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯の電磁波を発振するテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置において、効率的に排熱することで、素子への印加電圧を高めることができるため、交流ジョセフソン効果に従って、高い周波数の電磁波発振が可能になる。
【0022】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、第一の電極基板及び第二の電極基板は、絶縁材料に電極パターンが描かれたものであることを特徴とする。
この特徴によれば、所望する電磁波に対して適切な材料や電極形状を選定することが容易となる。また、適切な材料や電極形状を選定することで、超伝導素子に所望の電圧・電流を印加しつつ、超伝導素子への電磁波の入射及び超伝導素子からの電磁波の放射を行うデバイスとして機能させることができる。
【0023】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、電極パターンの形状は、アンテナ特性を示すものであることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子からの電磁波の放射、もしくは、超伝導素子への電磁波の入射を効率よく行うことができる。
【0024】
また、本発明の基板構造体の一実施態様としては、配線は、第一の電極基板ないしは第二の電極基板の面に対して、同一方向から接続可能であることを特徴とする。
この特徴によれば、簡便に配線作業を行うことができる。よって、大量生産時のライン設計などが簡単になる。
【0025】
上記課題を解決するための本発明の支持構造体は、複数の電極基板を積層した積層領域に薄膜素子を挟み込んでなる基板構造体を支持する支持構造体であって、基板構造体の積層領域に挟み込んだ薄膜素子を一定の力で押圧する押圧部材とを備えることを特徴とする。
この特徴によれば、基板構造体を安定に保持するとともに、所望の圧力を基板構造体に加えて保持することができる。
【0026】
また、本発明の支持構造体の一実施態様としては、電磁波が透過する電磁波透過口と、基板構造体からの熱を排熱する排熱手段とをさらに備えることを特徴とする。
この特徴によれば、基板構造体に含まれる薄膜素子を用いて、薄膜素子へ電磁波を入射させて動作させるデバイス、及び薄膜素子から電磁波を放射させて動作させるデバイスを製作することができる。
【0027】
また、本発明の支持構造体の一実施態様としては、電磁波透過口に、電磁波の集光レンズ部を設けることを特徴とする。
この特徴によれば、薄膜素子からの電磁波の放射、もしくは、薄膜素子への電磁波の入射を効率よく行うことができる。
【0028】
また、本発明の支持構造体の一実施態様としては、集光レンズ部は、基板構造体における電極基板のうち、いずれか一つ以上を電磁波の集光レンズとして機能する形状に加工したものであることを特徴とする。
この特徴によれば、集光レンズを別途設けることなく、薄膜素子からの電磁波の放射、もしくは、薄膜素子への電磁波の入射を効率よく行うことができる。また、集光レンズと電極基板間の屈折率などの物質定数の違いによって発生する電磁波の反射等を低減することができる。
【0029】
上記課題を解決するための本発明の薄膜素子の応用デバイスは 、上記した基板構造体のいずれか一つを、上記した支持構造体のいずれか一つに支持してなることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子などの薄膜素子における確実な支持、素子と電極との密着性を高めた配線、及び電極基板を介した効率的な排熱等ができるようになり、薄膜素子をデバイスとして効果的に機能させることができる。
【0030】
上記課題を解決するための本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、上記した基板構造体のいずれか一つを備え、交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して動作することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振することを特徴とする。
この特徴によれば、テラヘルツ帯域の電磁波を発振する素子を確実に支持し、素子と電極との密着性を高めた配線、及び電極基板を介した効率的な排熱等ができるようになり、テラヘルツ帯域電磁波発振素子として効果的に機能させることができる。
【0031】
上記課題を解決するための本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振装置は、交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して動作することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振するテラヘルツ帯域電磁波発振素子として、上記した基板構造体のいずれか一つを含んでなることを特徴とする。
この特徴によれば、テラヘルツ帯域の電磁波を発振する素子を確実に支持し、素子と電極との密着性を高めた配線、及び電極基板を介した効率的な排熱等ができるようになり、テラヘルツ帯域電磁波発振素子を備えたテラヘルツ帯域電磁波発振装置として効果的に機能させることができる。
【0032】
また、本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振装置の一実施態様としては、上記した基板構造体のいずれか一つを含んでなるテラヘルツ帯域電磁波発振素子が、上記した支持構造体のいずれか一つに支持されていることを特徴とする。
この特徴によれば、テラヘルツ帯域の電磁波を発振する素子を確実に支持し、素子と電極との密着性を高めるとともに、電極基板や支持構造体を介した効率的な排熱等ができるようになり、テラヘルツ帯域電磁波発振素子を備えたテラヘルツ帯域電磁波発振装置として効果的に機能させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、超伝導素子などの薄膜素子における確実な支持、素子と電極との密着性を高めた配線、及び電極基板を介した効率的な排熱等を実現し、その薄膜素子をデバイスとして機能させるための、基板構造体、支持構造体及び薄膜素子の応用デバイスを提供することができる。特に、テラヘルツ波を安定して発振することが可能となるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1の実施態様に係る基板構造体の概略説明図(斜視図)である。
図2】本発明の第1の実施態様に係る基板構造体の概略説明図(平面図)である。
図3】本発明の第1の実施態様に係る電極パターン形状に関する概略説明図である。
図4】本発明の第1の実施態様に係る同一方向からの配線の接続位置に関する概略説明図である。
図5】本発明の第1の実施態様に係る同一方向からの配線の接続位置に関する他の実施態様を示す概略説明図である。
図6】本発明の第2の実施態様に係る支持構造体の概略説明図(断面図)である。
図7】本発明の第2の実施態様に係る電磁波透過口に関する他の実施態様を示す概略説明図である。
図8】本発明の第3の実施態様に係る薄膜素子の応用デバイスの概略説明図である。
図9】本発明の第3の実施態様に係る基板構造体の一部を集光レンズとして機能する形状に加工した場合における基板構造体の概略説明図である。
図10】本発明の第3の実施態様に係る基板構造体の一部を集光レンズとして機能する形状に加工した場合における薄膜素子の応用デバイスの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る基板構造体、支持構造体及び薄膜素子の応用デバイスの実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する内容と図面については、本発明に係る特徴をわかりやすく説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。また、図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際とは異なっていることがある。
【0036】
本発明の基板構造体、支持構造体及び薄膜素子の応用デバイスは、薄膜素子の実装、特に、超伝導素子の実装のために使用される。超伝導素子の使用に係る一例としては、例えば、テラヘルツ波を発振するテラヘルツ帯域電磁波発振素子等が挙げられる。また、超伝導素子の実装に係る一例としては、例えば、テラヘルツ帯域電磁波発振装置等が挙げられる。なお、本実施態様の支持構造体においては特に超伝導素子を備えた基板構造体を支持するものについて記載するが、これに限定されるものではなく、他の薄膜素子を備えた基板構造体を支持するものとしてもよい。
【0037】
〔第1の実施態様〕
図1及び図2は、本発明の第1の実施態様における基板構造体を示す概略説明図である。図1は基板構造体の斜視図であり、図2は基板構造体の平面図である。なお、図1においては、基板構造体の構造を理解しやすくするため、電極基板同士は離して図示してある。
【0038】
以下、基板構造体について説明する。
【0039】
図1及び図2に示すように、本実施態様の基板構造体15は、第一の電極基板1と、第二の電極基板2、薄膜素子4、配線5と、を備える。また、第一の電極基板1と、第二の電極基板2は、基板本体3aと電極部3bで構成される。また、本実施態様の基板構造体15は、第一の電極基板1と第二の電極基板2の間に薄膜素子4を挟み込む形とするものである。なお、基板構造体15の詳細な構造については後述する。
【0040】
薄膜素子4は、超伝導素子を用いる。超伝導素子とは、超伝導体の単結晶あるいは多結晶を用いた電子素子を指すものである。特に、2つの超伝導体を弱く結合させることで発現するジョセフソン効果を利用したジョセフソン接合を有するもの(ジョセフソン素子と呼ばれることもある)を含んでいる。なお、このようなジョセフソン素子の構造の一例としては、2つの超伝導体が金属や絶縁層で隔てられる構造や、2つの超伝導体の間に細いくびれや段差を形成する構造等が挙げられる。
【0041】
また、本実施態様における超伝導素子の具体的な例としては、例えば、多重積層型ジョセフソン接合を有する層状超伝導体BSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物)の単結晶に含まれる固有ジョセフソン接合を用いたもの等が挙げられる。なお、BSCCO単結晶としては、交流ジョセフソン効果を生じるものであればよく、このような化学式の一例としては、BiSrCuO6+δ(Bi2201)、BiSrCaCu8+δ(Bi2212)及びBiSrCaCu10+δ(Bi2223)などが挙げられる。
なお、本実施態様における薄膜素子4として、例示したBSCCO単結晶のような超伝導素子を用いた場合、交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合を協調して動作させることにより、テラヘルツ帯域電磁波を発振することが可能となる。
また、このとき、本実施態様における基板構造体15の具体的な利用例としては、例えば、テラヘルツ波の電磁波を発振するテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置や、その電磁波を利用した分光器や非破壊検査装置などが挙げられる。
【0042】
また、本実施態様で用いる薄膜素子4は、単体で使用するものであってもよく、後述するように複数個を用いるものであってもよい。特に、薄膜素子4を複数個使用することが好ましい。これにより、電磁波の発振源を複数とし、発振強度を高めることが可能となる。
【0043】
薄膜素子4は、アレイ構造を形成していることが好ましい。アレイ構造とは、薄膜素子4を平面に所定の間隔で複数個並べたものである。本実施態様におけるアレイ構造としては、例えば、薄膜素子4を基板本体3aの平面上に一定間隔で並べるものや、所定の規則性を有するように並べるもの等が挙げられる。特に、薄膜素子4から電磁波を発振させる場合、薄膜素子4を複数個並べるアレイ構造を形成させることによって、薄膜素子4から発振する電磁波が影響し合い、発振の出力に影響が生じる。このため、薄膜素子4から発振する電磁波の出力を互いに高め合い、薄膜素子4全体としての発振の高出力化に適したアレイ構造となるように薄膜素子4を配置することが好ましい。
【0044】
本実施態様におけるアレイ構造としては、特に限定されず、薄膜素子4の使用用途に応じて適宜決定することが可能である。例えば、薄膜素子4を並べる間隔は、発振波長や電極基板材料を考慮して好ましい間隔を設計することができる。具体的には、薄膜素子4を並べる間隔の下限値としては、10μm以上とすることが好ましく、より好ましくは20μm以上とすることが挙げられる。また、薄膜素子4を並べる間隔の上限値としては、1mm以下とすることが好ましく、より好ましくは500μm以下、さらにより好ましくは150μm以下とすることが挙げられる。これにより、特に薄膜素子4を高温超伝導体のテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用いる場合において、テラヘルツ波の発振の高出力化が可能になる。
また、本実施態様におけるアレイ構造としては、例えば、薄膜素子4を縦列方向及び横列方向に2以上配置することが好ましく、より好ましくは3以上配置することが好ましい。これにより、薄膜素子4同士が協調して動作する効率を高め、極めて高い発振強度を実現することが可能となる。なお、このようなアレイ構造としては、2×2配列や3×3配列等のように縦列と横列の薄膜素子4の数が同一であるものであってもよく、2×3配列等のように縦列と横列の薄膜素子4の数が異なるものであってもよい。
【0045】
本実施態様の薄膜素子4において、薄膜素子4の配置面積や薄膜素子4単体のサイズ等、薄膜素子4の大きさに係るものについては特に限定されず、薄膜素子4の使用用途に応じて適宜決定することができる。
例えば、薄膜素子4として固有ジョセフソン接合素子を用い、電磁波を発振させる場合、発振素子の発振機構に基づくと、素子の面積は、発振周波数特性に影響を与え、素子の厚さは、発振出力に関係することが知られている。また、これらのディメンジョンに応じて、素子の発熱量が変化し、それに伴い発振周波数と発振強度が変化することも知られている。したがって、薄膜素子4に係るこれらの要件を鑑み、素子が安定して機能する範囲となるものを選択することが好ましい。
【0046】
薄膜素子4の配置面積としては、例えば、1辺が1mm以上となることが好ましく、より好ましくは5mm以上とすることが挙げられる。
通常、薄膜素子4の配置面積が広くなることにより、薄膜素子4全体を均一に電極基板間に保持することは困難となる。一方、本実施態様の基板構造体15においては、薄膜素子4の配置面積の1辺が1mm以上となるような比較的広いものについても、薄膜素子4全体を安定して確実に支持することが可能となる。また、薄膜素子4全体の面積を比較的広くできることにより、テラヘルツ帯域電磁波発振素子としての機能を有するものについても高出力で安定して作動させることができる。
【0047】
また、薄膜素子4のサイズとしては特に限定されないが、例えば、薄膜素子4の最大厚さの上限値は、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下とすることが挙げられる。
通常、薄膜素子4の最大厚さが薄くなることにより、薄膜素子4を電極基板間に安定して保持することは困難となる。一方、本実施態様の基板構造体15においては、薄膜素子4の厚さが20μm以下となるような非常に薄いものについても、安定して確実に支持することが可能となる。また、厚さが薄い薄膜素子4を用いることができることにより、テラヘルツ帯域電磁波発振素子としての機能を有するものについても安定して作動させることができる。
【0048】
一方、薄膜素子4の最大厚さは発振出力に影響するため、所望する電磁波放射の出力効率を鑑み、薄膜素子4の最大厚さの下限値を決定してもよい。例えば、薄膜素子4の最大厚さの下限値は、0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは1μm以上とすることが挙げられる。
【0049】
第一の電極基板1と第二の電極基板2は、薄膜素子4に電圧を印加する電極として用いるものである。第一の電極基板1と第二の電極基板2は、電極として機能するものであれば特に限定されない。例えば、それぞれの基板本体3aが導電性材料からなり、直接電極として用いることができるものであってもよく、それぞれの基板本体3aの表面に別の電極部3bを有するものとしてもよい。なお、電極として機能する箇所の設計・変更が容易であるという点では、第一の電極基板1と第二の電極基板2は、基板本体3aの表面に電極部3bを有するものとすることがより好ましい。
【0050】
本実施態様における電極部3bは、薄膜素子4へ通電を行うためのものである。また、電極部3bとしては、例えば、金、銀、銅など、抵抗率が低く、一般的な電極で用いられる金属等が挙げられる。
【0051】
電極部3bを有する第一の電極基板1及び第二の電極基板2としては、絶縁体材料にパターンを描いたものが挙げられる。このとき、絶縁体材料としては、例えば、サファイアやアルミナ等が挙げられ、これが基板本体3aに相当する。また、絶縁体材料の表面に描くパターンとしては、例えば、金、銀、銅などの金属からなるもので描くものが挙げられ、これが電極部3bに相当する。
【0052】
電極部3bのパターンの形状は特に限定されず、例えば、正方形、長方形、多角形、円形、またはこれらを組み合わせてなるものとすることが挙げられる。また、第一の電極基板1と第二の電極基板2における電極部3bのパターンの形状は、同一のものとしてもよく、異なるものとしてもよい。
図3は、電極部3bのパターンの形状の一例を示すものである。
図3に示すように、電極部3bのパターンとしては、パッチ型(図3A)、直線型(図3B)、ボウタイ型(図3C図3D)、十字型(図3E)などが挙げられる。特に、図3Aに示すパッチ型や図3Bに示す直線型となるようにパターンを描くことにより、パターン自体に、パッチアンテナや半波長アンテナのような共振型のアンテナ特性を付与することができる。また、図3C及び図3Dに示すボウタイ型は、第一の電極基板1と第二の電極基板2でそれぞれ異なるパターンを描くことにより、第一の電極基板1と第二の電極基板2を組み合わせて使うことで、ボウタイアンテナが形成され、パターン自体に、非共振型のアンテナ特性を付与することができる。電極部3bのパターンがアンテナ特性を有することにより、薄膜素子4で発生した電磁波を基板構造体15の外部へ取り出す場合や、逆に基板構造体15の外部から薄膜素子4へ入射させる場合に、それらの効率を高める効果を奏する。なお、電極部3bのパターンは、図3に示したものに限定されるものではない。また、電極部3bのパターン自体にアンテナ特性を付与するパターンの形状については、薄膜素子4の使用用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
【0053】
第一の電極基板1と第二の電極基板2を構成する基板本体3a及び電極部3bは、薄膜素子4の使用用途に応じたものを用いることが好ましい。例えば、電磁波を透過しやすいものを用いることなどが挙げられる。具体的には、例えば、テラヘルツ帯の電磁波を使用する用途であれば、基板本体3aには、サファイアやアルミナ基板等を用いることが挙げられる。また、基板本体3aの表面に真空蒸着等にて、数十nm程度の金属を蒸着することで、電極部3bを形成することなどが挙げられる。
【0054】
第一の電極基板1と第二の電極基板2は、熱伝導率が良い物質で構成されていることが好ましい。例えば、サファイア、ダイヤモンド、アルミナ、銅等が挙げられる。これにより、薄膜素子4で生じた熱を効率的に排除することができるという効果を奏する。
【0055】
以下、基板構造体15の詳細な構造について説明する。
図1及び図2に示すように、第一の電極基板1と第二の電極基板2は、お互いに重なりあった積層領域A1と、重なり合わない非積層領域A2とを形成するように配置される。
【0056】
本実施態様における基板構造体15は、図1及び図2に示すように、第一の電極基板1と第二の電極基板2の積層領域A1に、薄膜素子4を挟み込む。これにより、薄膜素子4は、二枚の電極基板で保持することができる。
【0057】
このとき、基板構造体15全体の厚さについては特に限定されず、基板構造体15の使用用途に応じて適宜決定することが可能である。例えば、後述する支持構造体16内への保持に適した厚さとすることや、後述する薄膜素子の応用デバイス17等、基板構造体15を発振素子として利用する際の利用条件、利用環境に応じた厚さとすることなどが挙げられる。
また、薄膜素子4から発振する電磁波は、電極基板(第一の電極基板1及び第二の電極基板2)により減衰する。したがって、電極基板による電磁波の減衰を考慮して,基板構造体15全体の厚さを決めるものとしてもよい。このような基板構造体15の厚さとしては、例えば、1mm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1mm以下とすることが挙げられる。これにより、基板構造体15内の薄膜素子4から発振する電磁波の放射出力について、高出力を維持した状態で、安定して作動させることが可能となる。
【0058】
一方、図1及び図2に示すように、第一の電極基板1と第二の電極基板2の非積層領域A2には、基板本体3a表面の電極部3bの一部が露出する。そのため、非積層領域A2の電極部3bに配線5を接続することができる。
したがって、本実施態様における基板構造体15は、薄膜素子4を保持する箇所(積層領域A1)と、配線5を接続する箇所(非積層領域A2)とを分けることができる。これにより、薄膜素子4を確実に保持するとともに、電極部3bと薄膜素子4の密着性を高めることができる配線5の設置が可能となる。
【0059】
また、第一の電極基板1と第二の電極基板2の非積層領域A2に設置した配線5を介して、薄膜素子4の厚さ方向に電圧・電流が印加される。これにより、薄膜素子4を作動させるために必要な所定の電圧・電流を確実に印加することができるという効果を奏する。
【0060】
第一の電極基板1と第二の電極基板2で、サンドイッチされた薄膜素子4に、電圧・電流を印加した場合、素子にジュール熱が発生する。このとき、第一の電極基板1と第二の電極基板2を介して、直接素子から排熱することが可能である。さらに、第一の電極基板1と第二の電極基板2として、例えば、サファイア、ダイヤモンド、アルミナ、銅などを用いることにより、排熱効率をより向上させることが可能となる。
【0061】
配線5は、電極に電圧を印加することができるものであれば特に限定されない。例えば、金線や銅線などが挙げられる。また、配線5を接続する手段としては、特に限定されない。例えば、電極部3bと配線5をハンダづけすることや、導電性のテープ、導電性のペーストなどで固定すること等が挙げられる。また、配線5を基板本体3aに接続する際、基板本体3aに対して同一方向から配線5を接続することが好ましい。これにより、配線5の設置を簡単に行うことができる。
【0062】
図4は、本実施態様における基板構造体15の配線5の接続位置に係る概略説明図である。
図4に示すように、第一の電極基板1と第二の電極基板2の間に、上下金属接続材6を設置することで、同一方向から配線接続できるようにしてもよい。上下金属接続材6としては、例えば、銅や金などの金属薄膜等が挙げられる。また、上下金属接続材6の配置の一例としては、図4に示すように、第二の電極基板2上の電極部3bと平行に上下金属接続材6を配置し、第一の電極基板1を積層した際に、第一の電極基板1上の電極部3bと上下金属接続材6が接触するように配置すること等が挙げられる。これにより、配線5の設置が簡単になるという効果を奏する。
【0063】
図5は、本実施態様における基板構造体15の配線5の接続位置に係る別の態様を示す概略説明図である。なお、図5Aは、基板構造体15の平面図であり、図5Bは、導電性スルーホールを設けた電極基板を拡大した側面図である。
図5Aに示すように、電極部3bを両面に設けた第一の電極基板1(もしくは第二の電極基板2)に、導電性スルーホール7を設けることで、同一方向から配線接続できるようにしてもよい。導電性スルーホール7としては、例えば、図5Bに示したように、第一の電極基板1(もしくは第二の電極基板2)を貫通し、銅や金などの金属で被覆した孔などが挙げられる。図5に示すように、この導電性スルーホール7を介して、第一の電極基板1の両面に設けた電極部3b間での通電が可能となる。これにより、基板構造体15を反転することなく、配線5が設置できるという効果を奏する。
【0064】
以上のように、本実施態様の基板構造体15により、薄膜素子4を確実に保持しながら、素子の厚さ方向に電圧を印加することが可能であり、素子で発生したジュール熱も、電極基板を介して排熱することが可能である。
【0065】
また、本実施態様の基板構造体15は、例えば、薄膜素子4としてBSCCO単結晶の高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を用いることにより、テラヘルツ帯の電磁波放射を安定して行うことができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子として好適に利用することが可能となる。また、本実施態様の基板構造体15をテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用い、安定かつ高出力で作動させることができるテラヘルツ帯域電磁波発振装置を作製することが可能となる。
【0066】
ここで、本実施態様の基板構造体15をテラヘルツ帯域電磁波発振素子のように電磁波を発振する素子として動作させる際、温度調整機構や電流電圧調整機構を備えることが好ましい。なお、温度調整機構については、基板構造体15の温度を制御することができるものであればよく、具体的な構成については特に限定されない。また、電流電圧調整機構については、基板構造体15の薄膜素子4に対して印加する電流電圧を制御できるものであればよく、具体的な構成については特に限定されない。
【0067】
このとき、基板構造体15の動作に係る工程については、特に限定されないが、具体例について以下例示する。
基板構造体15の動作に係る工程の一例としては、温度調整機構により基板構造体15の温度を超伝導体の超伝導転移温度Tc以上とし、電流電圧調整機構により定電流・定電圧を薄膜素子4に印加した後、温度調整機構により基板構造体15の温度を超伝導転移温度Tc以下とすることが挙げられる。このとき、電圧の変化が生じるとともに、薄膜素子4から電磁波が発振し、基板構造体15が発振素子として動作する。
また、基板構造体15の動作に係る工程の他の例としては、温度調整機構により基板構造体15の温度を超伝導転移温度Tc以下とし、電流電圧調整機構により、薄膜素子4に対して電圧を増加させる方向に掃引した後、電圧を減少させる方向に掃引することが挙げられる。このとき、電流-電圧グラフがヒステリシス特性を示すとともに、薄膜素子4から電磁波が発振し、基板構造体15が発振素子として動作する。
なお、例示した工程は、薄膜素子4が固有ジョセフソン接合を用いた超伝導素子である場合に好適に用いられ、さらに、薄膜素子4がBSCCO単結晶を用いた超伝導素子である場合、特に好適に用いられる。
【0068】
なお、上述した実施態様は基板構造体の一例を示すものである。本発明に係る基板構造体は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る基板構造体を変形してもよい。
【0069】
例えば、本実施態様の薄膜素子4として、BSCCO単結晶以外の高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を用いてもよい。これにより、テラヘルツ帯の電磁波放射が可能となることで、テラヘルツ帯の電磁波放射を安定して行うことができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子として好適に利用することが可能となる。
【0070】
例えば、本実施態様の薄膜素子4として、BSCCO単結晶以外の高温超伝導体の固有ジョセフソン接合のアレイ構造を備えるものとしてもよい。これにより、高強度なテラヘルツ波の発生が可能となることで、高強度なテラヘルツ帯の電磁波放射を安定して行うことができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置として好適に利用することが可能となる。
【0071】
〔第2の実施態様〕
図6は、本発明の第2の実施態様における支持構造体を示す概略説明図である。
【0072】
以下、支持構造体の詳細な構造について説明する。
【0073】
図6に示すように、支持構造体16は、第一の支持構造体8、第二の支持構造体9、電磁波透過口10、弾性部材11、押圧部材12とを、備える。また、支持構造体16は、内部に基板構造体を支持するための空間Sを備えるものである。支持構造体16内部に支持する基板構造体としては、薄膜素子が電極基板間に積層されているものであればよく、特に限定されないが、例えば、第1の実施態様における基板構造体15を用いることが挙げられる。
【0074】
第一の支持構造体8、第二の支持構造体9、弾性部材11、押圧部材12は熱伝導が良い材料を使うことが好ましい。このような材料としては、例えば、銅などが挙げられる。これにより、支持構造体16内部に基板構造体15を支持した際に、基板構造体15から発生する熱について、支持構造体16を介して効率的に外部に排熱することが可能となる。
【0075】
第一の支持構造体8と第二の支持構造体9は、基板構造体15を支持するためのものである。第一の支持構造体8と第二の支持構造体9の形状としては、基板構造体15を上下方向から高い平行度で挟み込み、支持することができるものであればよく、特に限定されない。また、第一の支持構造体8と第二の支持構造体9は、図6に示すように、互いをはめ込むことができる嵌合式にすることが好ましい。これにより、基板構造体15を高い平行度で支持することができる。
【0076】
また、図6に示すように、第一の支持構造体8と第二の支持構造体9により形成される空間Sの形状は、基板構造体15を支持できるものであれば、特に限定されない。第一の支持構造体8と第二の支持構造体9によって形成される空間Sの形状については、例えば、第一の支持構造体8と第二の支持構造体9の形状を、基板構造体15の形状に合わせて設計すること等が挙げられる。特に、第一の電極基板1と第二の電極基板2の形状及び配置に合わせ、空間Sの形状を設計することが好ましい。これにより、基板構造体15の確実な支持が可能となる。
【0077】
なお、第一の支持構造体8と第二の支持構造体9は、基板構造体15を挟み込んだ後、互いが外れないように固定する必要がある。例えば、上記した嵌合式とすることで互いが嵌合して固定させることや、第一の支持構造体8と第二の支持構造体9を係止する係止手段を設けて固定すること等が挙げられる。係止手段としては、例えば、第一の支持構造体8と第二の支持構造体9を貫通して係止するためのねじ、ボルト・ナットなどを用いることや、第一の支持構造体8と第二の支持構造体9の外側から押さえ込むものを用いることなどが挙げられる。
【0078】
弾性部材11は、押圧部材12に一定の反発力を与えるためのものである。弾性部材11としては、例えば、板状のばね構造やらせん状のばね構造を有するスプリング等が挙げられる。
押圧部材12は、基板構造体15を一定の圧力で支持するためのものである。押圧部材12としては、例えば、銅やサファイアのロッドなどが挙げられる。
支持構造体16において、弾性部材11と押圧部材12を用いることで、支持構造体16内部に配設した基板構造体15に適度な圧力を加えて、支持することができる。このとき、押圧部材12は、基板構造体15の積層領域A1全体に対して均等に圧力がかかるように配置することが好ましい。これにより、支持構造体16に基板構造体15を支持させた際、基板構造体15を確実に支持できるとともに、薄膜素子4と電極部3bの密着性を高め、薄膜素子4を安定して作動させることが可能となる。
なお、図6において、弾性部材11及び押圧部材12は、第二の支持構造体9に設けられているものを示しているが、基板構造体15に対して適度な圧力を加えることができるように設けるものであればよく、これに限定されるものではない。
【0079】
弾性部材11は、必要な固定圧に応じて硬さが変更可能であることが好ましい。例えば、スプリング等の反発係数を調整することなどが挙げられる。これにより、固定圧の微調整が可能になり、基板構造体15内部の薄膜素子4などを破壊することなく、支持ができる。
【0080】
図6に示すように、第一の支持構造体8には、電磁波透過口10を設けるものとしてもよい。電磁波透過口10は、基板構造体15に含まれる薄膜素子4からの電磁波の出射及び素子への電磁波の入射を行うためのものである。電磁波透過口10としては、例えば、円柱状の孔が挙げられる。これにより、薄膜素子4への電磁波の入出力ができるという効果を奏する。なお、図6には、第一の支持構造体8に一つの電磁波透過口10を設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。他の例としては、例えば、第一の支持構造体8に複数の電磁波透過口10を設けるものや、第二の支持構造体9側に電磁波透過口10を設けるものなどが挙げられる。また、第一の支持構造体8及び第二の支持構造体9の両方に電磁波透過口10を設けるものとしてもよい。これにより、複数の方向から電磁波の出入射を行うことが可能となる。
【0081】
図7は、電磁波透過口10の別の態様を示す概略説明図である。なお、図7Aは、支持構造体16の断面図であり、図7B及び図7Cは支持構造体16を第二の支持構造体9側から見た拡大平面図である。
【0082】
図7Aには、電磁波透過口10として、第一の支持構造体8及び第二の支持構造体9の両方に、同一中心軸Lを有する円柱状の孔を設けるものを示している。なお、図7Aでは、第一の支持構造体8に設けたものを電磁波透過口10a、第二の支持構造体9に設けたものを電磁波透過口10bとして示している。これにより、支持構造体16内に基板構造体15を支持した際に、基板構造体15から発振する電磁波を、電磁波透過口10a及び10bを介して、中心軸Lの上下方向に出射することが可能となる。また、一方の電磁波透過口10aから基板構造体15へ入射した電磁波を他方の電磁波透過口10bへと直線的に透過させることが可能となる。
このとき、第二の支持構造体9に設けた押圧部材12は、図7Aに示すように、電磁波透過口10bと同一の中心軸Lを有する中空円筒状のロッドとすることが好ましい。これにより、電磁波透過口10bと押圧部材12を介して電磁波の出入射が可能となる。
【0083】
また、このとき、弾性部材11としては、中空円筒状の押圧部材12に一定の反発力を与えることができるものであれば特に限定されない。例えば、図7Bに示すように、押圧部材12である中空円筒状のロッド断面全体に対し、弾性部材11として一つのらせん状のスプリングを設けることや、図7Cに示すように、押圧部材12である中空円筒状のロッド断面に対し、弾性部材11として複数のスプリングを設けること等が挙げられる。これにより、電磁波透過口10bを介した電磁波の出入射を妨げることなく、押圧部材12による基板構造体15の確実な支持が可能となる。
【0084】
また、電磁波透過口10には、電磁波の出射あるいは入射効率を高める構造を設けるものとしてもよい。このような構造としては、例えば、集光レンズなどが挙げられる。なお、集光レンズの詳細については後述する。
【0085】
さらに、基板構造体15の配線5を支持構造体16の外側に向けて引き出すための配線引き出し口を、第一の支持構造体8及び/又は第二の支持構造体9に設けるものとしてもよい。また、空間Sの形状として、基板構造体15の配線5を支持することができる形状としてもよい。これにより、支持構造体16内部において、基板構造体15の薄膜素子4だけではなく、基板構造体15の配線5も安定して保持することが可能となり、薄膜素子4の安定した作動に適した状態を維持することが可能となる。
【0086】
以上のように、本実施態様の支持構造体により、薄膜素子4を支持した基板構造体を安定に保持することができる。
【0087】
なお、上述した実施態様は支持構造体の一例を示すものである。本発明に係る支持構造体は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る支持構造体を変形してもよい。
【0088】
〔第3の実施態様〕
図8は、本発明の第3の実施態様における薄膜素子の応用デバイスを示す概略説明図である。
【0089】
以下、薄膜素子の応用デバイスの詳細な構造について説明する。
【0090】
図8に示すように、本実施態様の薄膜素子の応用デバイス17は、基板構造体15と、支持構造体16とを備える。ここで、基板構造体15は、第1の実施態様で説明した構成を用いることが挙げられる。基板構造体15としては、例えば、第一の電極基板1と、第二の電極基板2、薄膜素子4、配線5とを備えるものが挙げられる。また、支持構造体16は、第2の実施態様で説明した構成を用いることが挙げられる。支持構造体16としては、例えば、第一の支持構造体8、第二の支持構造体9、電磁波透過口10、弾性部材11、押圧部材12、集光レンズ13とを備えるものが挙げられる。
なお、図8においては、支持構造体16の電磁波透過口10に集光レンズ13を設置した様子を示している。また、基板構造体15及び支持構造体16のうち、第1及び第2の実施態様で示した構成については、説明を省略する。
【0091】
図8に示すように、基板構造体15は、支持構造体16に挟み込まれることで、安定に保持される。これにより、基板構造体15内部の薄膜素子4の確実な支持ができるようになり、薄膜素子4をデバイスとして効果的に機能させることができる。
【0092】
また、図8に示すように、基板構造体15内部の薄膜素子4を作動させた場合、支持構造体16を介して排熱することができる。これにより、基板構造体15内部の薄膜素子4から発生するジュール熱を効率的に排熱し、薄膜素子4をデバイスとして効果的に機能させることができる。
【0093】
本実施態様における薄膜素子の応用デバイス17は、温度制御可能な装置(温度調整機構)を設けるものとしてもよい(不図示)。温度調整機構は、薄膜素子の応用デバイス17の温度を制御することができるものであれば特に限定されず、公知の構成を用いることができる。温度調整機構としては、例えば、支持構造体16の第一の支持構造体8ないしは第二の支持構造体9、もしくはその両方を、接触ないしは接続させることで、支持構造体16内部の基板構造体15及び基板構造体15内部の薄膜素子4の温度調整が可能であるもの等が挙げられる。これにより、薄膜素子4の作動に必要な温度を適切に保持することができる。特に、超伝導素子では、超伝導転移温度Tc以下の温度に素子の温度を調整することで、素子を安定して作動させることができる。また、固有ジョセフソン接合を用いたテラヘルツ波発振器では、素子の温度と発生する電磁波の周波数が直接関係している。このため、本実施態様の薄膜素子の応用デバイス17において素子の温度を制御することで、本実施態様の基板構造体15をテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用いた場合、素子を安定かつ効率的に作動させることが可能なテラヘルツ帯域電磁波発振装置を作製することができる。
【0094】
また、本実施態様における薄膜素子の応用デバイス17は、図8に示すように、支持構造体16の電磁波透過口10に、集光レンズ13を設置するものとしてもよい。集光レンズ13としては、例えば、シリコンの半球レンズを用いること等が挙げられる。これにより、基板構造体15内部の薄膜素子4からの電磁波の出射や、基板構造体15内部の薄膜素子4への電磁波の入射を効率的に行うことができる。
【0095】
また、集光レンズ13については、図8に示したように、シリコンの半球レンズなどを別途設置するものに限定されない。例えば、基板構造体15の第一の電極基板1もしくは第二の電極基板2の一部を加工してなる集光レンズ加工部14を備えるものを利用することとしてもよい。
【0096】
図9は、集光レンズ加工部14を備える電極基板の概略説明図である。なお、図9Aは集光レンズ加工部14を備える電極基板(第一の電極基板1ないしは第二の電極基板2)の平面図、図9Bは集光レンズ加工部14を備える電極基板(第一の電極基板1ないしは第二の電極基板2)の正面図、図9Cは集光レンズ加工部14を備える電極基板(第一の電極基板1ないしは第二の電極基板2)の側面図を示している。
また、図10は、集光レンズ加工部14を用いた場合の薄膜素子の応用デバイス17の概略説明図(正面図)である。
【0097】
図9に示すように、集光レンズ加工部14としては、基板本体3aの中央を半球レンズ状に加工したものが挙げられる。基板本体3aの加工手段については特に限定されず、公知の技術によるものとすることができる。
また、図10に示すように、集光レンズ加工部14を備える電極基板(第一の電極基板1ないしは第二の電極基板2)を、支持構造体16で支持することで、集光レンズ13を別途乗せた場合と同様に基板構造体15内部の薄膜素子4から電磁波を取り出すことや、基板構造体15内部の薄膜素子4に電磁波を入射させることを効率的に行うことができる。また、これにより、別途集光レンズを設置する場合に比べ、集光レンズと電極基板の間で生じる電磁波の反射などを減らすことができる。
【0098】
なお、上述した実施態様は薄膜素子の応用デバイスの一例を示すものである。本発明に係る薄膜素子の応用デバイスは、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る薄膜素子の応用デバイスを変形してもよい。
【0099】
例えば、本実施態様の薄膜素子の応用デバイス17における基板構造体15として、テラヘルツ帯の電磁波放射を安定して行うことができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子として機能するものを用いるものとしてもよい。これにより、本実施態様の薄膜素子の応用デバイス17は、安定かつ高出力で作動させることができるテラヘルツ帯域電磁波発振装置として好適に利用することが可能となる。
【0100】
また、本実施態様の薄膜素子の応用デバイス17をテラヘルツ帯域電磁波発振装置のように電磁波を発振する装置として動作させる際、上述した温度制御可能な装置(温度調整機構)や電流電圧調整機構を備えることが好ましい。
このとき、薄膜素子の応用デバイス17の動作に係る工程については、特に限定されない。例えば、第1の実施態様で示した基板構造体の動作に係る工程と同様に実施することなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の基板構造体、支持構造体及び薄膜素子の応用デバイスは、超伝導素子の実装に適用することができる。より具体的には、安定かつ高出力発振が可能な高温超伝導体を用いたテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 第一の電極基板、2 第二の電極基板、3a 基板本体、3b 電極部、4 薄膜素子、5 配線、6 上下金属接続材、7 導電性スルーホール、8 第一の支持構造体、9 第二の支持構造体、10,10a,10b 電磁波透過口、11 弾性部材、12 押圧部材、13 集光レンズ、14 集光レンズ加工部、15 基板構造体、16 支持構造体、17 薄膜素子の応用デバイス、A1 積層領域、A2 非積層領域、L 中心軸、S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10