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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
G01N30/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019199923
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021071447
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】598133506
【氏名又は名称】株式会社 ユニフローズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】森川 秀行
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-105872(JP,A)
【文献】特開2002-333438(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157516(WO,A1)
【文献】特開平04-110656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0244985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 -37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶離液を送液する送液ポンプと、
前記送液ポンプに第1の配管を介して接続され、試料を一時的に保持する保持部を有し、前記送液ポンプによって送液される溶離液に対して前記保持部に保持された試料を注入するか否かを切り替え可能なインジェクタと、
前記インジェクタに第2の配管を介して接続され、前記インジェクタで注入された試料を各成分に分離するカラムと、
前記カラムに第3の配管を介して接続され、前記カラムによって分離された各成分を検出する検出器と、
前記送液ポンプおよび前記検出器を駆動する駆動回路と、
前記送液ポンプ、前記インジェクタの保持部、前記検出器、前記駆動回路および前記第1乃至第3の配管を少なくとも収容する筐体と、
を備えた液体クロマトグラフ装置であって、
前記筐体は、少なくとも1つの側面に透明な窓部を有し、内部に収容された構成要素が前記窓部を介して可視化されるように構成され
前記インジェクタの保持部および前記検出器は、前記筐体の前記窓部を有する側面に隣接する対向側面のうちの一方の側面の内側に取り付けられ、
前記駆動回路は、前記対向側面のうちの他方の側面の内側に取り付けられ、
前記送液ポンプは、前記インジェクタの保持部および前記検出器と前記駆動回路との間の空間に配置されている、液体クロマトグラフ装置。
【請求項2】
予め設定される分析条件および前記インジェクタの切り替え状態に応じて、前記駆動回路による前記送液ポンプおよび前記検出器の駆動動作を制御すると共に、前記検出器の検出結果に基づき試料の各成分に関する分析データを生成する制御器を備え、
前記送液ポンプは、前記駆動回路により駆動されるモータと、前記モータからの動力を受けて往復運動するプランジャと、前記プランジャの往復運動により溶離液が吸引および吐出されるポンプヘッドと、前記ポンプヘッドに対する溶離液の吸引時および吐出時の各流路を自動的に切り替える逆止弁と、を有し、
前記制御器は、前記送液ポンプの吐出動作中に前記検出器における前記各成分の検出処理が実行され、かつ、前記送液ポンプの吸引動作中に前記検出器における前記各成分の検出処理が中断されるように、前記駆動回路による前記モータおよび前記検出器の駆動動作を連動制御する、請求項に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記制御器は、前記インジェクタで試料を注入していない状態でも、前記送液ポンプの吐出動作中に前記検出器における前記各成分の検出処理が実行されるように、前記駆動回路による前記検出器の駆動動作を制御し、前記検出器の検出結果に基づき前記カラムの平衡状態に関するデータを生成する、請求項に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記制御器は、前記分析データが示す各成分のピークの時間間隔に応じて、前記送液ポンプにより送液される溶離液の流速が変化するように、前記駆動回路による前記送液ポンプの駆動動作を制御する、請求項またはに記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記送液ポンプは、前記ポンプヘッドが透明であり、前記モータおよび前記プランジャが前記筐体内に配置され、前記ポンプヘッドおよび前記逆止弁が前記筐体外に配置されている、請求項のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項6】
前記筐体に取り付けられる発光ダイオードを備え、該発光ダイオードの点灯色または点灯方法の少なくとも一方に応じて、装置の動作または状態の少なくとも一方を表示する、請求項のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合物中の特定物質を分析するための液体クロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体クロマトグラフ装置は、その代表的な構成要素として、脱気装置、送液ポンプ、圧力センサー、自動サンプルインジェクタ、カラム、カラムオーブン、検出器、ワークステーションなどを備えたものが周知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の液体クロマトグラフ装置では、溶離液の流速を一定にして試料の分析を行うアイソクラティック法、溶離液の濃度や成分を時間と共に変化させて試料の分析を行うグラジエント法、溶離液を分析途中で切り替える方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-242149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の液体クロマトグラフ装置は、構成要素が多く大型で高価であると共に、操作が複雑で専門的な知識や技術が必要となるという欠点がある。特に、前述したグラジエント法および溶離液を分析途中で切り替える方法では、装置の構成要素が増えるため大型化および高コスト化が避けられない。
【0006】
このような欠点が要因となり従来の液体クロマトグラフ装置は、例えば、大学や高校などの専門分野以外の教育現場や一般向けでは殆ど活用できていないことが一つの重要な課題である。近年、液体クロマトグラフィーに関する特別な教育訓練を受けなくとも、比較的簡単に装置を運転し分析をしたいという教育現場や一般のニーズが高まってきている。
【0007】
従来の液体クロマトグラフ装置における各構成要素は、筐体内に格納されてブラックボックス化しているため、液体クロマトグラフ装置の仕組みや構造、動作状態などを外部から把握することは困難である。このため、ユーザーの学習や教育を目的として従来の液体クロマトグラフ装置を利用することは必ずしも有効とは言えない。また、学習や教育の目的に限らず一般のユーザーが分析を行うときに、装置内部で生じた液漏れなどの不具合を早期に見つけることが難しいという課題もある。
【0008】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、装置の仕組みや構造、動作状態を容易に把握できる小型で安価な液体クロマトグラフ装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため本発明に係る液体クロマトグラフ装置の一態様は、溶離液を送液する送液ポンプと、前記送液ポンプに第1の配管を介して接続され、試料を一時的に保持する保持部を有し、前記送液ポンプによって送液される溶離液に対して前記保持部に保持された試料を注入するか否かを切り替え可能なインジェクタと、前記インジェクタに第2の配管を介して接続され、前記インジェクタで注入された試料を各成分に分離するカラムと、前記カラムに第3の配管を介して接続され、前記カラムによって分離された各成分を検出する検出器と、前記送液ポンプおよび前記検出器を駆動する駆動回路と、前記送液ポンプ、前記インジェクタの保持部、前記検出器、前記駆動回路および前記第1乃至第3の配管を少なくとも収容する筐体と、を備えた液体クロマトグラフ装置であって、前記筐体は、少なくとも1つの側面に透明な窓部を有し、内部に収容された構成要素が前記窓部を介して可視化されるように構成され、前記インジェクタの保持部および前記検出器は、前記筐体の前記窓部を有する側面に隣接する対向側面のうちの一方の側面の内側に取り付けられ、前記駆動回路は、前記対向側面のうちの他方の側面の内側に取り付けられ、前記送液ポンプは、前記インジェクタの保持部および前記検出器と前記駆動回路との間の空間に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
上記のような液体クロマトグラフ装置によれば、液体クロマトグラフィーに必要な最小限の構成要素が筐体にまとめられており、ユーザーは筐体内部の各構成要素を窓部越しに各構成要素が重なり合うことなく確実に視認することが可能であるため、装置の仕組みや構造、不具合の発生を含めた動作の状態を容易に把握することができ、小型で持ち運びにも便利な液体クロマトグラフ装置を低コストで実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る液体クロマトグラフ装置の概略構成を示す正面図である。
図2】上記実施形態においてインジェクタを構成するステーターおよびローターシールの各形状の一例を模式的に示す断面図である。
図3】上記実施形態における溶離液および試料の流路を模式的に示す図である。
図4】上記実施形態においてインジェクタを切り替えたときの各状態を説明するための図である。
図5】上記実施形態において初期処理および試料の分析処理を実施している間に表示出力されるクロマトグラムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液体クロマトグラフ装置の概略構成を示す正面図である。図1において、本実施形態の液体クロマトグラフ装置1は、例えば、溶離液タンク11、送液ポンプ12、インジェクタ14、カラム15、検出器16、廃液タンク17、駆動回路18、筐体19、および制御器としてのコンピュータ20を備える。
【0013】
溶離液タンク11は、液体クロマトグラフィーにおける移動相としての溶離液を所定の容量貯留することが可能である。溶離液は、分析対象となる混合物の試料を固定相としてのカラム15に流し込むための媒体である。溶離液タンク11は、ここでは筐体19の上面に載置されている。
【0014】
送液ポンプ12は、溶離液タンク11に貯留された溶離液をカラム15に向けて送液するための単一のポンプである。溶離液タンク11および送液ポンプ12の間の流路には、3つのポート13A,13B,13Cを有する逆止弁13が配置されている。逆止弁13の第1ポート13Aには、接続チューブTを介して溶離液タンク11が接続され、第2ポート13Bには、接続チューブTを介して送液ポンプ12が接続され、第3ポート13Cには、接続チューブT(第1の配管)を介してインジェクタ14が接続されている。
【0015】
上記送液ポンプ12は、例えば、駆動回路18によって駆動されるステッピングモータ12Aからの動力を受けてプランジャ12Bがポンプヘッド12C内を上下方向に往復運動するように構成される。これにより、送液ポンプ12は、溶離液タンク11内の溶離液を逆止弁13経由でポンプヘッド12C内に吸引して一時的に溜めると共に、そのポンプヘッド12C内に溜められた溶離液を逆止弁13経由でインジェクタ14に吐出する。プランジャ12Bとポンプヘッド12Cとの間の隙間にはプランジャシール(図示省略)が設けられており、該プランジャシールによってポンプヘッド12C内の溶離液の液漏れが防止される。ポンプヘッド12Cは、所定の内容量を有し、例えば塩化ビニール等の透明な材料を用いて形成され、ポンプヘッド12Cの内部の状態をユーザーが視認できるようになっている。なお、ポンプヘッド12Cは、完全に透明である必要はない。
【0016】
上記送液ポンプ12は、ここではその一部分(ステッピングモータ12Aおよびプランジャ12Bのポンプヘッド12C外に位置する部分)が筐体19の内部に位置し、残りの部分(プランジャ12Bのポンプヘッド12C内に位置する部分およびポンプヘッド12C)が筐体19の上面から突出している。また、上記逆止弁13は、ポンプヘッド12Cに取り付けられた支持部材13Dを介してポンプヘッド12Cの側方に支持されている。
【0017】
インジェクタ14は、送液ポンプ12によって送液された溶離液に対して、分析対象となる混合物の試料を注入するか否かを手動で切り替え可能な構造を有する。具体的な一例として、インジェクタ14は、同心円上に配置された円柱形のステーター14Aおよびローターシール14Bと、ステーター14Aとは反対側のローターシール14Bの端面に取り付けられるレバー14Cと、を備えて構成される。インジェクタ14は、ここでは筐体19の左側面に取り付けられており、ステーター14Aおよびローターシール14Bが筐体19の内部に位置し、レバー14Cが筐体19の外側に配置されて、ユーザーが手動でレバー14Cを操作することにより試料注入の切り替えが行われる。
【0018】
図2は、ステーター14Aおよびローターシール14Bの各形状の一例を模式的に示した断面図である。図2の上段に示すようにステーター14Aには、3つのポート31,32,33および円弧状の溝部34が形成されている。ステーター14Aの第1ポート31は接続チューブTを介して逆止弁13の第3ポート13Cに接続され、第2ポート32は接続チューブT(第2の配管)を介してカラム15に接続され、第3ポート33は接続チューブTを介して試料排液受け21(図1参照)に接続されている。ステーター14Aの溝部34は、インジェクタ14内における溶離液および/または試料の流路の一部を形成する。
【0019】
また、図2の下段に示すようにローターシール14Bには、ポート41および円弧状の2つの溝部42,43が形成されている。ローターシール14Bのポート41は、レバー14Cを貫通する試料供給口(図示省略)に連通している。試料供給口には、分析対象となる混合物の試料がユーザーによって供給される。ローターシール14Bの各溝部42,43は、インジェクタ14内における溶離液および/または試料の流路の一部を形成する。ここでは、ステーター14Aおよびローターシール14Bが本発明におけるインジェクタの保持部に相当する。なお、インジェクタ14の構造は上記一例に限定されるものではない。インジェクタ14による溶離液への試料注入の具体的な切り替え動作については後述する。
【0020】
図1に戻って、カラム15は、インジェクタ14の下流に配置され、送液される溶離液が一端に位置するカラム入口15Aから流入する。カラム15の内部には、基材および官能基を含む充填剤が高圧で詰められており、カラム入口15Aから流入された溶離液が充填剤の中を移動する過程で溶離液に含まれる試料が各成分に分離される。分離された各成分は溶離液と伴にカラム15の他端に位置するカラム出口15Bから流出する。カラム出口15Bには接続チューブT(第3の配管)を介して検出器16が接続されている。カラム15は、ここでは筐体19の上面に固定部材(図示省略)を介して着脱可能な状態で固定されている。
【0021】
検出器16は、カラム15によって分離された各成分を検出し、その検出結果を示す電気信号をコンピュータ20に出力する。この検出器16は、例えば、波長の異なる2種類の発光ダイオード(LED)を用い、カラム15で分離された各成分が通過するフローセルに各LEDの出力光を照射し、フローセルを通過した透過光を受光素子で検出して該透過光の光量の変化を基に各成分を検出するように構成される。各LEDの出力波長(検出波長)の一例としては、265nm(紫外線)および405nm(可視光線)の組み合わせなどを適用可能である。各LEDは、駆動回路18によりパルス点灯方式(点灯と消灯を繰り返す方式)で駆動されると共に、オートゲイン切換機能により点灯中の光量が一定に制御されるようにするのが好ましい。これにより安定した検出処理が可能になる。検出器16は、ここでは筐体19の左側面の内側に取り付けられている。なお、本発明における検出部の構成は上記のような具体例に限定されるものではなく、一般的な液体クロマトグラフィーに用いられる検出器を適用することができる。
【0022】
廃液タンク17は、検出器16の下流に配置され、検出器16で各成分の検出が行われた後の溶離液が接続チューブTを通って排出される。廃液タンク17は、前述した溶離液タンク11と同様にして筐体19の上面に載置されている。
駆動回路18は、コンピュータ20から出力される制御信号に従って、送液ポンプ12のステッピングモータ12A、並びに検出器16の各LEDおよび受光素子をそれぞれ駆動する。駆動回路18は、ここでは筐体19の右側面の内側に取り付けられている。
【0023】
筐体19は、略直方体のケースであって、少なくとも1つの側面(図1では前面)に透明な窓部19Aを有する。この窓部19Aは、筐体19の前面の側板に矩形の窓19Bが形成されており、その窓枠19Cに対して、例えばアクリル樹脂等の透明な材料からなるパネル19Dが取り付けられている。なお、パネル19Dは、完全に透明である必要はなく、実質的に透明であればよい。筐体19は、その内部に収容された各構成要素の状態が窓部19Aを介して可視化されている。
【0024】
ここでは、窓部19Aを有する前面に隣接する左側面の内側にインジェクタ14および検出器16が取り付けられ、右側面の内側に駆動回路18が取り付けられ、インジェクタ14および検出器16と駆動回路18との間に位置する筐体19内の中央付近の空間に送液ポンプ12が配置されている。このような配置により、ユーザーは、筐体19の内部の状態を窓部19A越しに各構成要素が重なり合うことなく確実に視認することができる。また、液体クロマトグラフ装置1の構成要素の中で最も重量のある送液ポンプ12が筐体19内の中央付近に配置されることで、重量バランスのとれた安定した液体クロマトグラフ装置1を実現することが可能である。
【0025】
さらに、上記筐体19には、送液ポンプ12の下方に位置する底面にファン22が設置されており、このファン22とパネル19Dに形成された複数の通気口19Eとにより筐体19内部の排熱を行うことが可能である。加えて、筐体19の右側面の外側には、液体クロマトグラフ装置1の主電源をオンオフするためのスイッチ23が取り付けられ、筐体19の左側面の外側には、発光ダイオード(LED)24が取り付けられている。該LED24は、その点灯色および/または点灯方法に応じて液体クロマトグラフ装置1の動作および/または状態を外部に表示することが可能である。
【0026】
コンピュータ20は、例えば、USB等の接続インターフェースによって液体クロマトグラフ装置1の駆動回路18に接続される。このコンピュータ20には、液体クロマトグラフ装置1を動作させるためのアプリケーションソフトがインストールされている。このアプリケーションソフトを起動することにより、コンピュータ20は、予め設定される分析条件およびインジェクタ14の切り替え状態に応じて、駆動回路18による送液ポンプ12および検出器16の駆動動作を制御すると共に、検出器16の検出結果に基づき試料の各成分に関する分析データを生成する。生成された分析データは、コンピュータ20のモニタ画面に表示出力等される。上記の分析条件としては、分析の目的物質、使用する溶離液およびカラム15内の充填剤等に応じて設定される、溶離液の流速の初期値などが挙げられる。
【0027】
図3は、液体クロマトグラフ装置1内の溶離液および試料の流路を模式的に示した図である。図3に示すように、溶離液タンク11に貯留された溶離液は、送液ポンプ12の吸引および吐出の各動作により、逆止弁13、インジェクタ14、カラム15、検出器16を順に通過して廃液タンク17に送液される。試料は、カラム15の上流に位置するインジェクタ14の切り替え状態に従って溶離液に注入され、溶離液と伴にカラム15内の充填剤の中を移動することで各成分に時間的に分離された後、それぞれの成分が検出器16のフローセルを通過する際に検出されて、廃液タンク17に排出される。
【0028】
次に、本実施形態の液体クロマトグラフ装置1の動作について説明する。
上述したような構成の液体クロマトグラフ装置1において、ユーザーは、試料の分析を行うための事前準備として、分析対象の試料に基づき選定したカラム15を筐体19の上面の固定部材に装着し、カラム入口15Aおよびカラム出口15Bに接続チューブTを取り付けて、溶離液タンク11から廃液タンク17に至る溶離液の流路が形成されていることを確認する。このときインジェクタ14はレバー14Cを下げた状態とし、インジェクタ14内にカラム15の平衡を保つための溶離液の流路が形成されようにする。また、ユーザーは、カラム15に適合した溶離液を溶離液タンク11に所定量供給する。
【0029】
そして、ユーザーがスイッチ23を操作して主電源をオンにすると、液体クロマトグラフ装置1の各部が起動される。主電源オンを示す信号がコンピュータ20に伝えられると、コンピュータ20は、アプリケーションソフトを実行し、試料の分析を行うたの初期処理として、カラム15の平衡を保つための制御信号を生成して駆動回路18に出力する。コンピュータ20からの制御信号を受けた駆動回路18は、送液ポンプ12のステッピングモータ12Aを駆動してプランジャ12Bを下方に移動させる。これにより、溶離液タンク11に貯留された溶離液が、接続チューブT、逆止弁13の第1ポート13Aおよび第2ポート13B、接続チューブTを通って、送液ポンプ12のポンプヘッド12C内に吸引される。なお、このとき逆止弁13の第3ポート13Cは閉弁されている。この送液ポンプ12の吸引動作中、駆動回路18は検出器16を駆動せず、検出器16による検出処理は実行されない。
【0030】
送液ポンプ12のプランジャ12Bがポンプヘッド12Cの下端付近まで移動して吸引動作が終わると、続けてプランジャ12Bを上方に移動させることで、ポンプヘッド12C内に吸引された溶離液がポンプヘッド12C外に吐出される。吐出された溶離液は、接続チューブT、逆止弁13の第2ポート13Bおよび第3ポート13C、接続チューブTを通ってインジェクタ14に向けて送液される。なお、このとき逆止弁13の第1ポート13Aは閉弁されている。この送液ポンプ12の吐出動作中、駆動回路18は検出器16の各LEDおよび受光素子を駆動して検出処理が実行可能な状態にする。
【0031】
送液ポンプ12の吐出動作によりインジェクタ14に達した溶離液は、図4上段の実線矢印に示すように、レバー14Cを下げた状態でインジェクタ14内に形成される流路、すなわち、ステーター14Aの第1ポート31、ローターシール14Bの溝部42、ステーター14Aの溝部34、ローターシール14Bの溝部43、ステーター14Aの第2ポート32により形成される流路を通過し、ここでは溶離液への試料の注入が行われることなく、カラム15に向けて送液される。
【0032】
カラム15に達した溶離液は、カラム入口15Aから流入して充填剤の中を移動し、カラム出口15Bから流出して検出器16に向けて送液される。検出器16に達した溶離液は、検出器16内のフローセルを通過する。検出器16では、フローセルを通過する透過光の光量の変化が検出され、その検出結果がコンピュータ20に送られる。検出器16を通過した溶離液は、接続チューブTを通って廃液タンク17に排出される。コンピュータ20では、アプリケーションソフトにより上記透過光の光量の時間変化を記録したチャート(クロマトグラム)が生成されてモニタ画面に表示出力等される。ここでは、溶離液に対して試料がまだ注入されていないので、試料の各成分のピークが出現していないクロマトグラムが生成されることになる。図5の上段は、初期処理を実施している間に表示出力されるクロマトグラムの一例を示している。
【0033】
上記のような送液ポンプ12による溶離液の吸引動作および吐出動作が複数回繰り返されることにより、分析処理に必要なカラム15の平衡が保たれるようになる。本実施形態の液体クロマトグラフ装置1では、カラム15の平衡を保つための初期処理を実施している間も、送液ポンプ12の吐出動作中に検出器16の検出処理が実行され、その検出結果がコンピュータ20のモニタ画面に表示出力されるため、ユーザーはカラム15の平衡状態を確認した上で、試料の分析を開始することが可能である。
【0034】
上記のようにしてカラム15の平衡を保つための初期処理が終わると、次にインジェクタ14に試料を供給するための処理が実施される。この処理は、図4の中段に示すように、ユーザーがインジェクタ14のレバー14Cを上げた状態に切り替えることにより実施される。レバー14Cを上げた状態では、試料供給口から供給される試料が、ローターシール14Bのポート41、ステーター14Aの溝部34、ローターシール14Bの溝部43、ステーター14Aの第3ポート33をそれぞれ満たし、それらからオーバーフローした試料は試料排液受け21に排出される(図中の破線矢印を参照)。なお、このとき、ステーター14Aの第1ポート31、ローターシール14Bの溝部42、ステーター14Aの第2ポート32により形成される流路には、前述した初期処理のときと同様に、送液ポンプ12により送液される溶離液が与えられている(図中の実線矢印を参照)。
【0035】
インジェクタ14への試料の供給処理が完了することで試料の分析処理を開始可能な状態となる。ユーザーは、図4の下段に示すように、インジェクタ14のレバー14Cを下げた状態に切り替えることによって試料の分析処理を開始させる。このレバー14Cの切り替えに同期して試料の分析処理開始を示す信号がコンピュータ20に出力される。レバー14Cを下げた状態において、インジェクタ14内に形成される流路のうち、ステーター14Aの溝部34およびローターシール14Bの溝部43は試料で満たされており(破線部分)、この試料が当該流路を通過する溶離液に対して注入される。
【0036】
試料が注入された溶離液は、送液ポンプ12の吐出動作によってカラム15に向けて送液される。カラム15に達した試料を含む溶離液は、カラム入口15Aから流入して充填剤の中を移動することにより試料の各成分が時間的に分離される。分離された各成分は溶離液と伴にカラム出口15Bから流出して検出器16に送液され、検出器16内のフローセルを通過する。検出器16は、送液ポンプ12の吐出動作中、駆動回路18により各LEDおよび受光素子が駆動されているので、フローセルを透過する光のパワーの変化が検出器16により検出される。
【0037】
上記検出器16の検出結果は、コンピュータ20に送られ、アプリケーションソフトにより試料の各成分のピークが記録されたクロマトグラムが分析データとして生成されてモニタ画面に表示出力等される。図5の下段は、試料の分析処理を実施している間に表示出力されるクロマトグラムの一例を示している。この一例では、測定波長が265nmの紫外線と405nmの可視光線とについて試料および標準物質(目的物質)のそれぞれの検出結果が重ね書き表示されている。標準物質のクロマトグラムは、試料の分析処理を実施する前に取得しておいたものである。なお、アプリケーションソフトは、試料および標準物質のクロマトグラムを比較して、標準物質に対応する各成分の有無の判定や、各成分の量(濃度)の算出を行い、それらの結果を分析データとしてモニタ画面に表示出力等するようにしてもよい。
【0038】
また、コンピュータ20のアプリケーションソフトは、生成したクロマトグラムが示す各成分のピークが出現する時間間隔を求め、その時間間隔が予め設定した第1の閾値よりも短く複数のピークが重なっている場合に、送液ポンプ12により送液される溶離液の流速が遅くなるように、また、前記時間間隔が予め設定した第2の閾値よりも長くピークとピークの間の何も出現しない時間が続く場合に、送液ポンプ12により送液される溶離液の流速が速くなるように、駆動回路18による送液ポンプ12の駆動動作を制御するための制御信号を生成することが可能である。この制御信号がコンピュータ20から駆動回路18に送られることにより、送液ポンプ12のステッピングモータ12Aの駆動状態が調整されると共に、送液ポンプ12の吸引動作および吐出動作に合わせて検出器16の各LEDおよび受光素子を駆動するタイミングが調整される。これにより、送液される溶離液の流速が最適化されて試料の分析処理を効率的に行うことができるようになり、分析時間の短縮を図ることが可能になる。
【0039】
上述したような本実施形態の液体クロマトグラフ装置1によれば、カラム15の平衡を保つための初期処理から試料の分析処理に至る一連の動作において、ユーザーは、液体クロマトグラフ装置1の各構成要素の状態を、直接若しくは筐体19の窓部19Aを介して視認することができる。特に、筐体19の窓部19Aが形成された前面に隣接する左側面の内側にインジェクタ14および検出器16が取り付けられ、右側面の内側に駆動回路18が取り付けられ、インジェクタ14および検出器16と駆動回路18との間の空間に送液ポンプ12の一部分が配置されているので、ユーザーは、筐体19の内部の状態を窓部19A越しに各構成要素が重なり合うことなく確実に視認することができる。また、ユーザーは、筐体19に取り付けられたLED24の点灯色や点灯方法によっても液体クロマトグラフ装置1の動作や状態を確認することが可能である。
【0040】
これにより、ユーザーは、液体クロマトグラフ装置1の仕組みや構造、動作状態を外部から容易かつ確実に把握することが可能である。このような液体クロマトグラフ装置1は、ユーザーの学習を目的とした教育現場や一般向けの利用に好適である。また、窓部19Aを介して筐体19の内部で生じた液漏れなどの不具合を早期に見つけることができるので、液体クロマトグラフ装置1の運用面でも有利である。
【0041】
さらに、本実施形態の液体クロマトグラフ装置1は、逆止弁13を用いた単一の送液ポンプ12により溶離液の吸引および吐出の各動作を切り替えて行い、吐出動作中に検出器16の検出処理が実行され、その検出処理が吸引動作中には中断されるように送液ポンプ12および検出器16を連動させるようにしたことで、これまで検出処理を連続的に行うために必要であった吸引用と吐出用の2つの送液ポンプを1つにできるので、装置の小型化、軽量化および低コスト化を実現することが可能である。このような液体クロマトグラフ装置1は、必要最小限の構成要素が筐体19にまとめられており持ち運びにも便利である。
【0042】
加えて、本実施形態の液体クロマトグラフ装置1は、スイッチ23による主電源のオンオフおよびインジェクタ14のレバー14Cの切り替えという簡便な操作によって試料の分析処理を実現している。このため、液体クロマトグラフィーに関する特別な教育訓練を受けなくとも、比較的簡単に液体クロマトグラフ装置1の運用が可能である。
【0043】
なお、上述した実施形態では、液体クロマトグラフ装置1の筐体19の前面にだけ窓部19Aが設けられる一例を説明したが、本発明はこれに限らず、例えば筐体の前面と、それに対向する背面との双方に窓部を設けるようにしてもよい。このようにすれば、液体クロマトグラフ装置の前方だけでなく後方からも装置内部の状態を視認することができようになり、教育現場などにおいて複数の生徒が液体クロマトグラフ装置の周りを取り囲んで学習を行う場合などに好適である。
【0044】
また、上述した実施形態においては、通常、液体クロマトグラフ装置に設けられる脱気装置や圧力センサー、カラムオーブンなどを省略することで、装置構成の簡略化、小型化、低コスト化を図るようにしているが、ユーザーの要望などに応じてこれらを適宜追加することも勿論可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…液体クロマトグラフ装置
11…溶離液タンク
12…送液ポンプ
12A…ステッピングモータ
12B…プランジャ
12C…ポンプヘッド
13…逆止弁
14…インジェクタ
14A…ステーター
14B…ローターシール
14C…レバー
15…カラム
16…検出器
17…廃液タンク
18…駆動回路
19…筐体
19A…窓部
20…コンピュータ
21…試料排液受け
23…スイッチ
24…発光ダイオード(LED)
T…接続チューブ
図1
図2
図3
図4
図5