(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】微細パターン成形方法、インプリント用モールド製造方法およびインプリント用モールド並びに光学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20231107BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231107BHJP
B29C 33/40 20060101ALI20231107BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
G03F7/20 505
B29C33/40
B29C33/42
(21)【出願番号】P 2020553208
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040525
(87)【国際公開番号】W WO2020080372
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2018195214
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504097823
【氏名又は名称】SCIVAX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131657
【氏名又は名称】奥田 律次
(72)【発明者】
【氏名】田邊 大二
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 信義
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247022(JP,A)
【文献】特開2008-296579(JP,A)
【文献】特開2009-177146(JP,A)
【文献】特開2007-230229(JP,A)
【文献】YAMAZAKI, Tomohiro et al.,Four-Directional Pixel-Wise Polarization CMOS Image Sensor Using Air-Gap Wire Grid on 2.5-μm Back-I,2016 IEEE International Electron Devices Meeting (IEDM),IEEE,2017年02月02日,IEDM16-220-IEDM16-223,Electronic ISSN: 2156-017X
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20 -7/24
9/00 -9/02
B29C 33/38
33/40
33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細パターンを形成するための成形方法であって、
インプリント法によって、前記微細パターンを形成するための第1マスクパターンを被成形物の少なくとも前記微細パターンが形成されていない領域を含む表面に形成する第1マスクパターン形成工程と、
前記被成形物および前記第1マスクパターン上にレジスト膜を形成し、当該レジスト膜に光照射によって露光すると共に現像をして、前記微細パターンが形成されておらず前記第1マスクパターンが形成されている領域が露出する第2マスクパターンを形成する第2マスクパターン形成工程と、
前記第1マスクパターンおよび前記第2マスクパターンを利用してエッチングを行い、前記被成形物上に微細パターンを形成する微細パターン形成工程と、
を有し、前記第1マスクパターン形成工程、前記第2マスクパターン形成工程および前記微細パターン形成工程をこの順番で繰り返して微細パターンを形成することを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記第2マスクパターン形成工程における前記光照射は、レーザ描画を用いることを特徴とする請求項1記載の成形方法。
【請求項3】
前記第1マスクパターン形成工程、前記第2マスクパターン形成工程および前記微細パターン形成工程を3回繰り返すことを特徴とする請求項1又は2記載の成形方法。
【請求項4】
少なくとも2回目以降の
前記第2マスクパターン形成工程における前記光照射は、前記被成形物に形成されたアライメントマークを用いて行われることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の成形方法。
【請求項5】
前記被成形物上にレジスト膜を形成し、当該レジスト膜に光照射によって露光すると共に現像して、アライメントマーク用マスクパターンを形成し、当該アライメントマーク用マスクパターンを利用してエッチングを行い、前記被成形物上にアライメントマークを形成するアライメントマーク形成工程を有することを特徴とする請求項4記載の成形方法。
【請求項6】
前記アライメントマーク形成工程は、1回目の前記第2マスクパターン形成工程で形成したレジスト膜に光照射によって露光し、当該第2マスクパターン形成工程の現像によって前記第2マスクパターンの形成と同時に前記アライメントマーク用マスクパターンを形成し、1回目の前記微細パターン形成工程のエッチングによって前記アライメントマークを形成することを特徴とする請求項5記載の成形方法。
【請求項7】
前記微細パターンは、ピッチが200nm以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の成形方法。
【請求項8】
前記インプリント法は、
膜厚が200nm以下の樹脂からなる膜が形成されたスタンプ台に前記第1マスクパターンを反転させた反転パターンを有する型を接触させて、当該型の表面に前記樹脂を塗布する塗布工程と、
前記被成形物に前記型を押圧し、前記樹脂を硬化させた後に離型して、前記被成形物の表面に前記第1マスクパターンを形成する転写工程と、
を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の成形方法。
【請求項9】
基板上の前記被成形物に、前記請求項1ないし8のいずれかの記載の成形方法で第1の前記微細パターンを有するハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、
前記ハードマスクを利用してエッチングを行い、前記基板上に第2の微細パターンを形成する第2微細パターン形成工程と、
を有することを特徴とする成形方法。
【請求項10】
請求項9記載の成形方法によってインプリント用モールドを形成することを特徴とするインプリント用モールド製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターン成形方法、インプリント用モールド製造方法およびインプリント用モールド並びに光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
集光のためのレンズや反射防止のためのモスアイ、偏光を調節するためのワイヤグリッド等、光学特性の制御を目的として、微細な凹凸構造を表面にもつ光学部材が利用されている。この微細な凹凸構造を形成する方法としては、その凹凸構造の反転構造が表面に形成されたモールド(金型)を用い、当該モールドを被成形物に対し加圧し、熱や光を利用して当該パターンを被成形物の表面に転写するナノインプリントが注目されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、インプリントに用いるモールドは、まずレーザ加工によってマスターモールドを作成し、次に、当該マスターモールドから樹脂に直接インプリントしてモールドを作製している。また、マスターモールドから電鋳によりモールドを作製し、当該電鋳モールドから樹脂にインプリントしてモールドを作製する場合もある。
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、液晶ディスプレイに大面積のワイヤグリッド偏光子の要求が高まっている。しかし、液晶大画面の露光装置はワイヤグリッド偏光子に必要な200nmピッチ以下のパターン形成が難しい。また、ナノインプリントを用いることで微細パターンは形成できるが、マスターモールドの大きさは最大でも300mmであり、大面積基板にパターンを形成する場合、複数回のインプリントを行う必要がある。しかしながら、インプリントは、アライメント精度が十分でなく継ぎ目の無いパターンを形成することが困難である。
【0006】
また、例えば、イメージセンサ等の光学素子上に、偏光方向が90度異なるワイヤグリッドをそれぞれ形成する場合のように、基板上の所定の位置ごとに、方向や位置を制御したパターンを形成したい場合がある。また、光学レンズの分野では、モアレ等を防止するために、所定の位置ごとに、方向や位置を制御したパターンを形成したい場合もある。しかしながら、これらの場合も上述したように、インプリントは、アライメント精度が十分でなく方向や位置を制御してパターンを形成することは難しい。
【0007】
そこで本発明では、被成形物の所定の位置ごとに、方向や位置を制御した微細パターンを形成することができる成形方法およびこれを用いたインプリント用モールド製造方法およびインプリント用モールド並びに光学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の成形方法は、微細パターンを形成するための方法であって、インプリント法によって、前記微細パターンを形成するための第1マスクパターンを被成形物の少なくとも前記微細パターンが形成されていない領域を含む表面に形成する第1マスクパターン形成工程と、前記被成形物および前記第1マスクパターン上にレジスト膜を形成し、当該レジスト膜に光照射によって露光すると共に現像をして、前記微細パターンが形成されておらず前記第1マスクパターンが形成されている領域が露出する
【0009】
第2マスクパターンを形成する第2マスクパターン形成工程と、前記第1マスクパターンおよび前記第2マスクパターンを利用してエッチングを行い、前記被成形物上に微細パターンを形成する微細パターン形成工程と、を有し、前記第1マスクパターン形成工程、前記第2マスクパターン形成工程および前記微細パターン形成工程をこの順番で繰り返して微細パターンを形成することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記第2マスクパターン形成工程における前記光照射は、レーザ描画を用いることができる。
【0011】
また、前記第1マスクパターン形成工程、前記第2マスクパターン形成工程および前記微細パターン形成工程を3回繰り返すことで、最短で隙間のない微細パターンの領域を成形することができる。
【0012】
また、少なくとも2回目以降の前記第2マスクパターン形成工程における前記光照射は、前記被成形物に形成されたアライメントマークを用いて行われる方が好ましい。
【0013】
また、本発明の成形方法は、前記被成形物上にレジスト膜を形成し、当該レジスト膜に光照射によって露光すると共に現像して、アライメントマーク用マスクパターンを形成し、当該アライメントマーク用マスクパターンを利用してエッチングを行い、前記被成形物上にアライメントマークを形成するアライメントマーク形成工程を有していても良い。また、当該アライメントマーク形成工程は、1回目の前記第2マスクパターン形成工程で形成したレジスト膜に光照射によって露光し、当該第2マスクパターン形成工程の現像によって前記第2マスクパターンの形成と同時に前記アライメントマーク用マスクパターンを形成し、1回目の前記微細パターン形成工程のエッチングによって前記アライメントマークを形成するようにしても良い。
【0014】
また、前記微細パターンは、ピッチが200nm以下である方が好ましい。
【0015】
また、前記インプリント法は、膜厚が200nm以下の樹脂からなる膜が形成されたスタンプ台に前記第1マスクパターンを反転させた反転パターンを有する型を接触させて、当該型の表面に前記樹脂を塗布する塗布工程と、前記被成形物に前記型を押圧し、前記樹脂を硬化させた後に離型して、前記被成形物の表面に前記第1マスクパターンを形成する転写工程と、を有する方が好ましい。
【0016】
更に、本発明の別の成形方法は、基板上の前記被成形物に、上述した本発明の成形方法で第1の前記微細パターンを有するハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、前記ハードマスクを利用してエッチングを行い、前記基板上に第2の微細パターンを形成する第2微細パターン形成工程と、を有することを特徴とする。当該成形方法は、例えば、インプリント用モールドを形成するためのインプリントモールド製造方法に適用することができる。
【0017】
また、本発明のインプリント用モールドは、ラインアンドスペース状の微細バターンを複数繋いだものであり、当該微細パターンが形成された領域の周辺部にアライメントマークを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の光学デバイスは、基板に形成された複数の光学素子上に、複数種類のワイヤグリッドが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の成形方法は、被成形物の所定の位置ごとに、方向や位置を制御した微細パターンを形成することができる。また、本発明の成形方法を用いれば、大面積のインプリント用モールドや光学デバイス等を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】インプリント法を説明するための概略断面図である。
【
図2】本発明の被成形物を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図3】本発明の第1マスクパターンを示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図4】本発明のレジスト膜の成膜を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図5】本発明の第2マスクパターンを示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図6】本発明の微細パターン形成工程を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図7】本発明の樹脂およびレジスト膜の剥離工程を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図8】本発明の2回目の第1マスクパターンを示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図9】本発明の2回目の第2マスクパターンを示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図10】本発明の2回目の微細パターン形成工程を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図11】本発明の2回目の樹脂およびレジスト膜の剥離工程を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図12】本発明の3回目の第1マスクパターンを示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図13】本発明の3回目の第2マスクパターンを示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図14】本発明の3回目の微細パターン形成工程を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図15】本発明の3回目の樹脂およびレジスト膜の剥離工程を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図16】本発明の第2微細パターン形成工程を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図17】本発明のハードマスク剥離工程を示す(a)概略平面図および(b)~(d)概略断面図である。
【
図18】光学素子が形成された基板の一部を示す(a)概略平面図および(b)概略断面図である。
【
図19】本発明の1回目の第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程、微細パターン形成工程を示す概略平面図である。
【
図20】本発明の2回目の第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程、微細パターン形成工程を示す概略平面図である。
【
図21】本発明の光学デバイスを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の微細パターン成形方法を、図を用いて以下に説明する。なお、
図2~
図17中で、(b)は(a)のI-I線矢印方向を示す断面図、(c)は(a)のII-II線矢印方向を示す断面図、(c)は(a)のIII-III線矢印方向を示す断面図である。本発明の微細パターン成形方法は、インプリント法によって、微細パターン21を形成するための第1マスクパターン31を被成形物2の少なくとも微細パターン21が形成されていない領域を含む表面に形成する第1マスクパターン形成工程と、被成形物2および第1マスクパターン31上にレジスト膜4を形成し、当該レジスト膜4に光照射によって露光すると共に現像をして、微細パターン21が形成されておらず第1マスクパターン31が形成されている領域が露出するように第2マスクパターン41を形成する第2マスクパターン形成工程と、第1マスクパターン31および第2マスクパターン41を利用してエッチングを行い、被成形物2上に微細パターン21を形成する微細パターン形成工程と、を有し、第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程および微細パターン形成工程をこの順番で繰り返して微細パターン21を形成するものである。
【0022】
第1マスクパターン形成工程は、微細なパターンの形成に強みのあるインプリント法により、第1マスクパターン31を被成形物2の表面に形成するものである。第1マスクパターン31は、被成形物2上の少なくとも微細パターン21が形成されていない領域を含むように形成する。また、大面積の被成形物にパターンを形成する場合には、第1マスクパターン31を被成形物2の表面に複数配列して形成すればよい。
【0023】
ここで、インプリント法について説明する。本発明のインプリント法は、樹脂に対して形成したい第1マスクパターン31の反転パターン36aを有する型36を加圧し、熱や光を利用して第1マスクパターン31を形成し、樹脂を硬化させて当該第1マスクパターン31を被成形物2に転写するものである。当該インプリント法には種々の方法があり、第1マスクパターン31を被成形物2の表面に形成することができればどのような方法でも良い。例えば、第1マスクパターン31の残膜を小さくできるインプリント法としては、
図1に示すように、膜厚が200nm以下の樹脂からなる樹脂膜3が形成されたスタンプ台35に第1マスクパターン31の反転パターン36aを有する型36を接触させて、当該型36の表面に樹脂を塗布する塗布工程と、被成形物2に型36を押圧し、樹脂を硬化させた後に離型して、被成形物2の表面に第1マスクパターン31を形成する転写工程とを有する方法がある。
【0024】
塗布工程は、まず、
図1(a)に示すように、スタンプ台35の上に樹脂膜3を形成しておく。次に、
図1(b)、(c)に示すように、スタンプ台35上の樹脂膜3に型36を接触させる。最後に、
図1(d)に示すように、型36をスタンプ台35から離して、当該型36の表面に樹脂を塗布する。なお、スタンプ台35の樹脂膜3は、
図1(a)に示す膜厚Aが大きいと、形成された第1マスクパターン31の凹部における樹脂(残膜)の厚みが大きくなるため好ましくない。したがって、スタンプ台35の樹脂膜3は、膜厚Aが200nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である方が良い。スタンプ台35に形成する樹脂膜3は、膜厚を200nm以下とすることができるものが好ましく、例えば、スピンコート法やスプレーコート法、スリットコート法等、従来から知られている方法を用いれば良い。
【0025】
ここで型36(インプリント用モールド)は、例えば「ニッケル等の金属」、「セラミックス」、「石英ガラス」、「シリコン」、「ガラス状カーボン等の炭素素材」などから形成されており、その一端面(成形面)に形成したい第1マスクパターン31の反転パターン36aを有するものを指す。この反転パターン36aは、その成形面に精密機械加工を施すことで形成することができる。また、シリコン基板等にエッチング等の半導体微細加工技術によって形成したり、このシリコン基板等の表面に電気鋳造(エレクトロフォーミング)法、例えばニッケルメッキ法によって金属メッキを施し、この金属メッキ層を剥離して形成したりすることもできる。また、インプリント法を用いて作製した樹脂製の型を用いることも可能である。この場合、型36は、被成形物2の被成形面に対して可撓性のあるフィルム状に形成しても良い。もちろん型36は、第1マスクパターン31を転写できるものであれば材料やその製造方法が特に限定されるものではない。
【0026】
また、反転パターン36aは、平面方向の凸部の幅や凹部の幅の最小寸法が1μm以下、100nm以下、10nm以下等種々の大きさに形成される。また、深さ方向の寸法も、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上等種々の大きさに形成される。なお、例えば、液晶ディスプレイに用いられるワイヤグリッド偏光子に必要なパターンは、凹凸構造のピッチが50nm以上200nm以下、凸部の幅が25nm以上100nm以下、凸部のアスペクト比が1以上である。
【0027】
また、第1マスクパターン形成工程に用いられる樹脂は、インプリント法により第1マスクパターン31を形成できるものであると共に、当該第1マスクパターン31を利用して被成形物2にエッチングを行い、微細パターン21を形成できるものであればどのようなものでも良い。例えば、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0028】
光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、エポキシド含有化合物類、(メタ)アクリル酸エステル化合物類、ビニルエーテル化合物類、ビスアリルナジイミド化合物類のようにビニル基・アリル基等の不飽和炭化水素基含有化合物類等を用いることができる。この場合、熱的に重合するために重合反応性基含有化合物類を単独で使用することも可能であるし、熱硬化性を向上させるために熱反応性の開始剤を添加して使用することも可能である。更に光反応性の開始剤を添加して光照射により重合反応を進行させて第1マスクパターン31を形成できるものでもよい。熱反応性のラジカル開始剤としては有機過酸化物、アゾ化合物が好適に使用でき、光反応性のラジカル開始剤としてはアセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、キサントン誘導体等が好適に使用できる。また、反応性モノマーは無溶剤で使用しても良いし、溶媒に溶解して塗布後に脱溶媒して使用しても良い。
【0029】
また、熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン開環重合/水素添加体(COP)や環状オレフィン共重合体(COC)等の環状オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ビニルエーテル樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を用いることができる。
【0030】
ここで、
図1(c)に示すように、スタンプ台35と型36を接触させた後、
図1(d)に示すように、スタンプ台35と型36を離すと、型36の端部の樹脂は、樹脂の粘度等の条件によっては、樹脂が多く塗布されたり、逆に少なく塗布されたりする場合がある。このような場合には、スタンプ台35の端部側を中心部より高く形成したり、逆に低く形成したりして、型36に塗布される樹脂の膜厚を調節する方が好ましい。また通常は、スタンプ台35は型36よりも十分に大きく形成されるが、型36に塗布される樹脂の膜厚を調節するためには、スタンプ台35の平面形状を型36と同形に形成しても良い。
【0031】
転写工程は、
図1(e)~(g)に示すように、被成形物2に型36を押圧し、樹脂を硬化させた後に離型して、被成形物2の表面に第1マスクパターン31を形成するものである。
【0032】
ここで被成形物2とは、第1マスクパターン31を形成できる十分な広さを有する平板状のもので、微細パターン21を形成したい対象物を指す。当該被成形物2は、形成した第1マスクパターン31をエッチングすることにより微細パターン21が形成できるならどのようなものでもよく、例えば、樹脂、ガラス等の無機化合物、クロム等の金属などを用いることができる。また、被成形物2は、それ自体が基板又はフィルム状であっても良いし、
図2に示すように、基板1上に形成されるハードマスク等の薄膜であっても良い。
【0033】
被成形物2への型36の押圧は、型36の表面に塗布された樹脂を被成形物2に接触させて固着できれば良い。被成形物2に型36を押圧する圧力は、離型時に第1マスクパターン31を被成形物2に固着させることができれば良く、例えば、被成形物2に型36を0.5~2MPaで加圧すれば良い。
【0034】
樹脂の硬化は、当該樹脂が光硬化性樹脂の場合には、
図1(f)に示すように、当該樹脂を硬化させることができる所定波長の光、例えば紫外線を当該樹脂に照射することにより行えば良い。なお、
図1(f)では、光を型側から照射しているが、被成形物2が光を透過可能な材料である場合には、当該光を被成形物2側から照射しても良い。
【0035】
また、図示しないが、樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、当該樹脂を加熱することにより硬化させれば良く、熱可塑性樹脂の場合には、当該樹脂をガラス転移温度以下に冷却することにより硬化させれば良い。
【0036】
樹脂が十分に硬化したら、
図1(g)に示すように、被成形物2から型36を離型して、被成形物2の表面に第1マスクパターン31を形成する。
【0037】
上述した塗布工程と、転写工程は、この順番で複数繰り返して第1マスクパターン31を被成形物2の表面に複数配列してもよい(
図1(h)、(i)および
図3参照)。
【0038】
第2マスクパターン形成工程は、
図4に示すように、被成形物2および第1マスクパターン31上にレジスト膜4を形成し、
図5に示すように、当該レジスト膜4に光照射によって露光すると共に現像をして、微細パターン21が形成されておらず第1マスクパターン31が形成されている領域が露出するように第2マスクパターン41を形成するものである。これにより、第1マスクパターン31が形成されていない領域と、被成形物2上にすでに微細パターン21が形成されている領域をレジスト膜4で覆い、それ以外の領域が露出した状態にすることができる。したがって、後述する微細パターン形成工程でエッチング処理をすることにより、被成形物2の微細パターン21が未だ形成されていない領域に微細パターン21を形成することができる。
【0039】
ここで、光照射としては、第2マスクパターンを形成できればどのようなものでも良いが、アライメント精度に優れ、第2マスクパターンの形状を自由に設計することができるレーザ描画を用いることができる。レーザ描画にはどのように装置を用いても良いが、少なくとも微細パターン21に要求される精度以上のアライメント精度を有するものが望ましい。例えば、微細パターン21がワイヤグリッド用のラインアンドスペース状の凹凸構造である場合には、レーザ描画には、当該ラインアンドスペースのピッチ以上の精度を有する方が好ましい。なお、光照射としては、例えば、フォトリソグラフィ技術による露光等を用いることも可能である。
【0040】
また、第2マスクパターン形成工程に用いられるレジストは、レーザ描画によって描画および現像をして第2マスクパターン41を形成できるものであると共に、当該第2マスクパターン41を利用したエッチング中に、レジストの下の被成形物2を保護できるものであればどのようなものでも良い。例えば、ノボラック系フォトレジスト等を用いることができる。
【0041】
微細パターン形成工程は、
図6に示すように、まず、第1マスクパターン31および第2マスクパターン41を利用してエッチングを行い、被成形物2上に微細パターン21を形成するものである。ここでエッチングは、被成形物2に微細パターン21を形成できればどのようなものでも良いが、第1マスクパターン31を忠実にコピーできる異方性エッチングが望ましい。なお、
図7に示すように、残った樹脂やレジスト膜4があれば、アッシング等によって当該樹脂やレジスト膜4を除去する。
【0042】
上述した第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程および微細パターン形成工程をこの順番で繰り返して被成形物2上に微細パターン21を形成すれば、精度の高い微細パターン21を形成することができる。また、当該第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程および微細パターン形成工程をこの順番で繰り返して被成形物2上に隙間なく微細パターン21を形成すれば、精度の高い微細パターン21を大面積で形成することができる。ここで微細パターン21の隙間とは、微細パターン形成工程において形成された微細パターン21が形成された領域間の微細パターン21が形成されていない領域を意味する。
【0043】
具体的には、まず、
図3に示すように、1回目の第1マスクパターン形成工程において、まだ微細パターン21が形成されていない被成形物2の表面にインプリント法によって第1マスクパターン31を形成する。次に、1回目の第2マスクパターン形成工程において、
図4に示すように、被成形物2および第1マスクパターン31上にレジスト膜4を形成する。次に、光照射によって露光すると共に現像して、
図5に示すように、微細パターン21が形成されておらず、かつ第1マスクパターン31が形成されている領域が露出する第2マスクパターン41を形成する。そして、
図6に示すように、1回目の微細パターン形成工程において、第1マスクパターン31および第2マスクパターン41を利用してエッチングを行い被成形物2上に微細パターン21を形成する。その後、
図7に示すように、第1マスクパターン31やレジスト膜4の残膜を除去する。
【0044】
次に、
図8に示すように、2回目の第1マスクパターン形成工程において、少なくとも1回目の微細パターン形成工程で微細パターン21が形成されていない領域を含む被成形物2の表面にインプリント法によって第1マスクパターン31を形成する。次に、
図9に示すように、2回目の第2マスクパターン形成工程において、1回目の微細パターン形成工程で微細パターン21が形成されておらず、かつ2回目の第1マスクパターン形成工程で第1マスクパターン31が形成されている領域が露出する第2マスクパターン41を形成する。続いて、
図10、
図11に示すように、2回目の微細パターン形成工程を施して、1回目に形成された微細パターン21の隙間に微細パターン21を形成する。
【0045】
更に、
図12に示すように、3回目の第1マスクパターン形成工程において、少なくとも1回目および2回目の微細パターン形成工程で微細パターン21が形成されていない領域を含む被成形物2の表面にインプリント法によって第1マスクパターン31を形成する。次に、
図13に示すように、3回目の第2マスクパターン形成工程において、1回目および2回目の微細パターン形成工程で微細パターン21が形成されておらず、かつ3回目の第1マスクパターン形成工程で第1マスクパターン31が形成されている領域が露出する第2マスクパターン41を形成する。続いて、
図14、
図15に示すように、3回目の微細パターン形成工程を施して、1回目および2回目に形成された微細パターン21の隙間に微細パターン21を形成する。
【0046】
このように、第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程および微細パターン形成工程をこの順番で、最低3回繰り返せば、
図15に示すように、被成形物2上に隙間なく大面積の微細パターン21を形成することができる。
【0047】
なお、第2マスクパターン形成工程においては、微細パターン21が形成されておらず第1マスクパターン31が形成されている領域が露出するように、第2マスクパターンを精密に形成する必要がある。したがって、少なくとも2回目以降の第2マスクパターン形成工程における光照射は、被成形物に形成されたアライメントマーク5を用いて行われる方が好ましい。
【0048】
この場合、本発明の被成形物2には、予め光照射用のアライメントマーク5が形成されているものを用いても良いが、アライメントマーク5が形成されていない場合にはアライメントマーク形成工程によって、被成形物2上にアライメントマーク5を形成しても良い。アライメントマーク形成工程では、被成形物2上にレジスト膜4を形成し、当該レジスト膜4にレーザ等の光照射によって露光すると共に現像して、アライメントマーク用マスクパターンを形成し、当該アライメントマーク用マスクパターンを利用してエッチングを行い、被成形物2上にアライメントマーク5を形成する。アライメントマーク5の形状はクロス、ライン、矩形およびL字等、使用するレーザ描画装置に適用できるものならどのようなものでもよい。
【0049】
また、アライメントマーク形成工程は、1回目の第1マスクパターン形成工程前に予め行っても良いが、工程を簡略化するために、1回目の第1マスクパターン形成工程と同時に行ってもよい。具体的には、1回目の第2マスクパターン形成工程において、レジスト膜4にレーザ等の光照射によって露光し、現像によって第2マスクパターン41の形成と同時にアライメントマーク用マスクパターンを形成すれば良い。
【0050】
また、上述のように微細パターン21を形成した被成形物2をハードマスクとして基板1上に第2の微細パターン11を形成することも可能である。すなわち、基板1上の被成形物2に、上述した本発明の成形方法で第1の微細パターン21を有するハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、ハードマスクを利用してエッチングを行い、基板1上に第2の微細パターン11を形成する第2微細パターン形成工程と、で基板1上に微細パターン11を形成すれば良い。当該成形方法は、インプリント用モールドを形成するためのインプリント用モールド製造方法として適用することができる。インプリント用モールドの材料や形状等は、上述した型36と同じである。
【0051】
なお、ハードマスクを形成するための被成形物2は、
図2に示すように、1回目の第1マスクパターン形成工程前に基板1上に形成しておけば良い。ハードマスク(被成形物2)の材料は、基板1に対して相対的に、エッチングの選択性が良好な材料であれば良い。例えば、上述した成形方法を石英ガラスからなるインプリント用モールドを形成するためのインプリント用モールド製造方法として適用する場合、クロム等の金属を用いればよい。また、ハードマスク用の被成形物2の形成には基板1の表面にメッキ法やCVD法等で形成すればよい。
【0052】
第2微細パターン形成工程は、
図16に示すように、ハードマスクを利用してエッチングを行い、基板1上に第2の微細パターン11を形成するものである。エッチングには、基板1に第2の微細パターン11を形成できればどのようなものでも良いが、第1の微細パターン21を忠実にコピーできる異方性エッチングが望ましい。この後、
図17に示すように、ハードマスクを除去することも可能である。
【0053】
以上のように形成された大面積の微細パターンを有する被成形物や基板は、インプリント用モールドや、樹脂製のインプリント用モールドを形成するためのマスターモールドとして使用することができる。この場合、第2マスクパターン形成工程の光照射に用いたアライメントマークを、そのまま当該モールド用のアライメントマークに利用することが可能である。
【0054】
次に、本発明の成形方法によって、基板1Aに形成された複数の光学素子6上に、複数種類の微細パターンが形成されている光学デバイスを製造する方法について説明する。ここでは、イメージセンサ等の光学素子6上に、偏光方向が90度異なるワイヤグリッド(微細パターン21A、21B)をそれぞれ形成する場合について説明する。
【0055】
まず、
図18に示すように、イメージセンサ等の光学素子6が形成された基板1Aを用意する。そして、
図19(a)に示すように、基板1A上にワイヤグリッドの元となる材料からなる被成形物2Aを成膜する。被成形物2Aの材料としてはワイヤグリッドとしてのパターンが形成された後に偏光を調整できるものであればどのようなものでも良いが、例えばアルミニウム(Al)や銀(Ag)、タングステン(W)、アモルファスシリコン、酸化チタン(TiO2)等の金属又は金属酸化物を使用することができる。成膜方法はどのようなものでもよいが、例えば、スパッタリング等を用いることができる。
【0056】
次に、
図19(b)に示すように、1回目の第1マスクパターン形成工程において、被成形物2Aの表面にインプリント法によって、微細パターン21A(ワイヤグリッド)を形成するための第1マスクパターン31Aを形成する。当該インプリント法に用いるモールドには、第1マスクパターン31Aを反転させたパターンが用いられる。
【0057】
次に、1回目の第2マスクパターン形成工程において、
図19(c)に示すように、被成形物2Aおよび第1マスクパターン31A上にレジスト膜4Aを形成する。そして、光照射によって露光すると共に現像して、
図19(d)に示すように、所定の光学素子6上の第1マスクパターン31Aが露出するように第2マスクパターン41Aを形成する。
【0058】
次に、
図19(e)(
図20(a))に示すように、1回目の微細パターン形成工程において、第1マスクパターン31Aおよび第2マスクパターン41Aを利用してエッチングを行い、続いて第1マスクパターン31Aやレジスト膜4Aの残膜を除去し、微細パターン21Aを形成する。
【0059】
次に、
図20(b)に示すように、2回目の第1マスクパターン形成工程において、被成形物2Aの表面にインプリント法によって、微細パターン21B(ワイヤグリッド)を形成するための第1マスクパターン31Bを形成する。当該第1マスクパターン31Bは、第1マスクパターン31Aを90度回転させたパターンである。インプリント法に用いるモールドには、第1マスクパターン31Bを反転させたパターンが用いられるが、1回目の第1マスクパターン形成工程において用いたモールドを90度回転させて用いればよい。
【0060】
次に、2回目の第2マスクパターン形成工程において、
図20(c)に示すように、被成形物2Aおよび第1マスクパターン31B上にレジスト膜4Bを形成する。そして、光照射によって露光すると共に現像して、
図20(d)に示すように、2回目の第2マスクパターン形成工程において、1回目の微細パターン形成工程で微細パターン21が形成されていない光学素子6上の第1マスクパターン31Bが露出するように第2マスクパターン41Bを形成する。
【0061】
最後に、
図20(e)に示すように、2回目の微細パターン形成工程において、第1マスクパターン31Bおよび第2マスクパターン41Bを利用してエッチングを行い、第1マスクパターン31Bやレジスト膜4Bの残膜を除去し、微細パターン21Bを形成する。
【0062】
このように、第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程をこの順番で繰り返せば、
図20(e)に示すように、光学素子6上の所定の位置ごとに、方向や位置を制御した微細パターンを形成することができる。
【0063】
なお、上記実施例では、第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程および微細パターン形成工程をこの順番で2回繰り返してイメージセンサ等の光学素子6上に、偏光方向が90度異なる2種類の微細パターン21A、21B(ワイヤグリッド)をそれぞれ形成する場合について説明した。しかし、形成するパターンの種類はこれに限られるものではない。例えば、イメージセンサ等の光学素子6上に、
図21に示すように、偏光方向が45度異なる4種類の微細パターン21A、21B、21C、21D(ワイヤグリッド)をそれぞれ形成することも可能である。この場合には、上述した第1マスクパターン形成工程、第2マスクパターン形成工程および微細パターン形成工程をこの順番で4回繰り返せばよい。
【符号の説明】
【0064】
1,1A 基板
2,2A 被成形物
3 樹脂膜
4,4A,4B レジスト膜
5 アライメントマーク
6 光学素子
11 微細パターン
21,21A,21B 微細パターン
31,31A,31B 第1マスクパターン
41,41A,41B 第2マスクパターン