(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】異形断面条の製造方法、および製造装置
(51)【国際特許分類】
B21J 5/00 20060101AFI20231107BHJP
B21B 1/08 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B21J5/00 K
B21B1/08 Z
(21)【出願番号】P 2021078580
(22)【出願日】2021-05-06
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591275687
【氏名又は名称】ナミテイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村尾 耕一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 充則
(72)【発明者】
【氏名】中司 雄大
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-135731(JP,A)
【文献】特開昭63-295026(JP,A)
【文献】特開昭61-226134(JP,A)
【文献】米国特許第4528836(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/00
B21B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の中央部が外側縁部より厚肉に形成される異形断面条の製造方法であって、
条材を長さ方向に移動させつつ、押圧面に略錐状の凹部が設けられた押圧体を前記条材の厚さ方向に繰り返し往復動させ、前記押圧面によって前記条材の外側縁部を押圧することで、前記外側縁部を所定の厚さに圧延させる、異形断面条の製造方法。
【請求項2】
前記押圧体を、前記凹部の中心が前記条材の側端面より外側となる位置で往復動させる、請求項1に記載の異形断面条の製造方法。
【請求項3】
幅方向の中央部が外側縁部より厚肉に形成される異形断面条の製造装置であって、
条材を長さ方向に移動させる送り機構部と、
前記条材を押圧する押圧体と、
前記押圧体を前記条材の厚さ方向に往復動させる押圧機構部と、を備え、
前記押圧体は、押圧面に略錐状の凹部が設けられ、
前記条材を長さ方向に移動させつつ、前記押圧体を前記厚さ方向に繰り返し往復動させ、前記押圧面によって前記条材の外側縁部を押圧することで、前記外側縁部を所定の厚さに圧延させる構成とした、異形断面条の製造装置。
【請求項4】
前記押圧体は、前記凹部の中心が前記条材の側端面より外側となる位置に配された、請求項3に記載の異形断面条の製造装置。
【請求項5】
前記押圧体は、前記押圧面における前記凹部の外周に沿って、前記条材に面接触可能な平面部が設けられた、請求項3または4に記載の異形断面条の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅方向の中央部が外側縁部より厚肉に形成される異形断面条の製造方法、および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品のリードフレームなど他の機器に組み込んで用いられ、幅方向の中央部が外側縁部より厚肉に形成される長尺板状の異形断面条は、主に切削や圧延により形成される。特に、条材の外側縁部をより薄肉で且つ幅広に形成する場合は、材料ロスの面や生産性を考慮して、ローラーによって圧延する方法が広く用いられている。
【0003】
ところが、上記のような異形断面条を1つのローラーで形成しようとすると、厚肉部と薄肉部との加工率の差によって条材に割れや皺、歪みなどの成形不良が生じ易い。そこで従来、このような製造品質の問題を改善すべく、押圧面の幅が異なる複数のローラーを用いて、条材を小さい面積から段階的に大きく圧延させる方法が提案されている(例えば、特許文献1および2)。
【0004】
特許文献1および2に開示された異形断面条の製造装置は、平ロールと、外周面に所定の間隔を存して2つの凸部が設けられた凸付ロールとからなる圧延ロールを複数備えている。また、上記凸付ロールは、押圧面となる凸部周面の幅が圧延の進行方向に応じて大きくなるように並設されており、これら各凸付ロールの凸部によって条材の薄肉部を幅方向外側へ段階的に拡大形成する。これにより、上記成形不良を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-180389号
【文献】特開昭55-88943号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2の異形断面条の製造方法では、圧延の進行方向に圧延ロールを複数並設する必要があるため、製造装置が長大化する問題があった。
【0007】
一方で、上記凸部の径を小さくすれば、その分、圧延ロール間の距離を縮めることができるため、製造装置を幾分か短小化することは可能である。しかしその反面、条材表面に対する凸部周面の進入角度が大きくなるから、圧延部が条材の長さ方向に変形しやすく、上記成形不良を十分に抑制できない問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、異形断面条の製造方法、および製造装置であって、装置の短小化を図るとともに、品質の良好な異形断面条を安定して得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の異形断面条の製造方法、および製造装置は、以下の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の異形断面条の製造方法は、幅方向の中央部が外側縁部より厚肉に形成される異形断面条の製造方法であって、条材を長さ方向に移動させつつ、押圧面に略錐状の凹部が
設けられた押圧体を前記条材の厚さ方向に繰り返し往復動させ、前記押圧面によって前記条材の外側縁部を押圧することで、前記外側縁部を所定の厚さに圧延させることを特徴としている。
【0011】
好ましくは、前記押圧体を、前記凹部の中心が前記条材の側端面より外側となる位置で往復動させる。
【0012】
本発明の異形断面条の製造装置は、幅方向の中央部が外側縁部より厚肉に形成される異形断面条の製造装置であって、条材を長さ方向に移動させる送り機構部と、前記条材を押圧する押圧体と、前記押圧体を前記条材の厚さ方向に往復動させる押圧機構部と、を備え、前記押圧体は、押圧面に略錐状の凹部が設けられ、前記条材を長さ方向に移動させつつ、前記押圧体を前記厚さ方向に繰り返し往復動させ、前記押圧面によって前記条材の外側縁部を押圧することで、前記外側縁部を所定厚さに圧延させる構成としたことを特徴としている。
【0013】
好ましくは、前記押圧体は、前記凹部の中心が前記条材の側端面より外側となる位置に配される。
【0014】
好ましくは、前記押圧体は、前記押圧面における前記凹部の外周に沿って、前記条材に面接触可能な平面部が設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の異形断面条の製造方法、および製造装置によれば、1つの押圧体によって条材の外側縁部を長さ方向に沿って圧延させることができるから、装置全体の短小化を図ることが可能である。しかも、上記圧延の際、条材の外側縁部は、押圧体の押圧面に設けられた凹部の内側傾斜面に沿ってその中心方向に変形されるから、長さ方向には変形し難い。これにより、製造品質の安定化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の異形断面条の製造方法を実行可能な圧延装置の概略構成図である。
【
図2】条材の被押圧部周辺を示す概略斜視図である。
【
図3】条材の被押圧部周辺を示す概略断面図である。
【
図4】押圧体により条材が圧延されていく過程を示す図である。
【
図5】圧延装置の他の形態1を示す概略構成図である。
【
図6】圧延装置の他の形態2を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る異形断面条の製造方法、およびそれを実行可能な製造装置を、図面に基づき説明する。尚、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の異形断面条の製造装置(以下、「圧延装置」という)1は、長尺平板状の条材9を、その左右間の中央部93が外側縁部91より厚肉となるように圧延し、異形断面条を形成するものであって、条材9を支持する台座2と、条材9を長さ方向に移動させる送り機構部3と、条材9を厚さ方向から押圧する押圧体としての押圧金型4と、押圧金型4を条材9の厚さ方向に往復動させる押圧機構部5と、これら送り
機構部3や押圧機構部5の動作を制御する制御回路(図示省略)と、を備えている。
【0019】
尚、本実施形態では、加工時の向きで台座2に載置された状態の条材9の長さ方向を圧延装置1の前後方向、条材9の幅方向を圧延装置1の左右方向、条材9の厚さ方向を圧延装置1の上下方向とする。
【0020】
台座2は、送り機構部3の前方で且つ押圧金型4の下方対向位置に設けられており、条材9は、これら台座2の上面20と押圧金型4の下端面40との間隙に、後方から送り機構部3によって送り出される。
【0021】
尚、台座2は、圧延装置1の所定位置に固定されていてもよいし、手動又は電動で任意の高さや前後左右に位置調整可能としてもよい。また、条材9が台座2の上面20に送り出されるときの条材9の左右位置は、台座2や送り機構部3に設けられた図示しない条材位置調整機構によって任意に調整可能としてもよいし、台座2や送り機構部3に設けられた図示しないガイド機構にて特定の位置で保持されるものとしもよい。
【0022】
押圧金型4は、略円柱状に形成されており、下端面40が条材9を押圧する押圧面となり、上端面41が押圧機構部5に連結支持されている。より具体的には、押圧金型4は、押圧機構部5に連結支持されており、下端面40が条材9に接触しない上位置と、下端面40によって条材9を所定厚さまで押圧可能な下位置との間で上下に往復動可能に構成されている。
【0023】
図2および
図3に示すように、押圧金型4は、中心軸線L1が条材9の側端面92より外側となる位置、即ち、上方視において中心が条材9の側端面92より外側へオフセットされた位置に配されている。従って、押圧金型4は、下方へ移動させれば、下端面40の半面以下の範囲で条材9の外側縁部91を押圧する。
【0024】
尚、この押圧金型4と条材9との左右方向の位置関係は、上記のように条材9の左右位置を調整することによって保持されるようにしてもよいし、押圧金型4の左右位置を、押圧機構部5の図示しない金型位置調整部で任意に調整することによって保持されるようにしてもよい。
【0025】
押圧金型4の下端面40には、上方へ凹没する円錐状の凹部42が形成されている。凹部42は、その頂部を通る凹部中心線L2が押圧金型4の中心軸線L1と一致する位置に配されている。また、凹部42の直径は、下端面40の直径と略同一に形成されている。このように、凹部42は、下端面40の同心円上に設けられ、且つその外周縁は、押圧金型4の下端外周縁43と略一致している。即ち、押圧金型4の下端面40は、全体が円錐状に凹没形成されている。従って、押圧金型4は、下方へ移動させれば、まず、下端外周縁43のエッジ部が条材9の外側縁部91に圧接され、その後、凹部42の内側傾斜面(以下、「凹部周面」という)44が外側縁部91に圧接される。
【0026】
凹部周面44の傾斜角は、比較的緩やか(例えば、5度勾配)に形成されている。従って、押圧金型4を下方へ移動させれば、条材9の外側縁部91は、
図3および
図4に示すように、凹部周面44によって下方へ押圧されつつ、やや凹部中心線L2に向かって押圧される。即ち、条材9の下方やや斜め外向きに押圧される。その結果、外側縁部91は、その外側(幅方向)へ押し出されるように変形する。
【0027】
図示しないが、制御回路は、送り機構部3によって条材9を前進させる長さ(送り量)や速さ、タイミング等を調整する送り動作調整部、押圧機構部5によって押圧金型4を上下に移動させる距離(押圧深さ)や速さ、タイミングを調整する押圧動作調整部等の回路
構成を備えており、例えば次の方法により送り機構部3および押圧機構部5の動作を制御することで、左右間の中央部93が外側縁部91より厚肉の異形断面条を形成させる。
【0028】
台座2上に条材9が適切に設置され、圧延装置1の図示しない操作部により圧延加工開始の指示がなされると、送り機構部3は、上記条材9を所定時間毎に所定長さA1だけ前進移動させ、停止させる動作を開始する。即ち、
図4の(1)~(4)に示すように、条材9を所定長さA1ずつ一定の間隔で断続的に前進移動させる送り動作を実行する。
【0029】
一方、押圧機構部5は、押圧金型4を上記所定時間毎に、押圧金型4を所定位置(下位置)まで下げ、再び上位置に戻す動作を開始する。即ち、条材9の送り動作に合わせて、押圧金型4を上位置と下位置との間で往復動させる押圧動作を実行する。この押圧動作は、条材9が停止している間に、押圧金型4の下端面40が条材9の外側縁部91に圧接されるタイミングで行われる。
【0030】
このように、圧延装置1は、条材9を所定長さA1ずつ一定の間隔で断続的に前進移動させつつ、そのタイミングに合わせて押圧金型4を繰り返し上下に往復動させる。これにより、条材9の外側縁部91は、押圧金型4の凹部周面44によってその中心方向、即ち、条材9の外側(幅方向)へ押し出されるように所定長さA1ずつ繰り返し変形される。その結果、外側縁部91は、
図4の(5)に示すように、長さ方向に沿って圧延が進行し、中央部93より薄肉に形成される。
【0031】
尚、上記押圧動作によって押圧金型4の外側縁部91が条材9の外側縁部91に最初に圧接された初回押圧時、外側縁部91の被押圧部には、
図2に示すように、凹部周面44に沿うようにして楔状の圧痕Fが形成されるが、その圧痕Fは、上記初回の押圧に続く2回目以降の押圧により、徐々に凹部周面44によって条材9の外側へ掻き出されるように延伸されて平滑化が進み、最終的には平らになる。
【0032】
条材9の他方の外側縁部91も同様に圧延する場合は、上記のように圧延加工された条材9を反転させて台座2上に設置し、押圧動作を行う。これにより、左右両外側縁部91が中央部93より薄肉の異形断面条が形成される。
【0033】
以上の方法によれば、1つの押圧金型4で条材9の外側縁部91を長さ方向に沿って圧延させることができるから、圧延装置1の全体の短小化を図ることが可能である。しかも圧延の際、条材9の外側縁部91は、押圧金型4の凹部周面44によってその中心方向に変形され、長さ方向や中央部93側には変形し難から、被押圧部の周辺にて割れや皺、歪みなどの成形不良が生じ難い。よって、製造品質の安定化を図ることもできる。
【0034】
しかも、上記のように押圧金型4をその中心(凹部42の中心)が条材9の側端面92より外側となる位置で上下に往復動させ、下端面40の半面以下の範囲で条材9を押圧するようにしたことで、下端面40の凹部周面44にて条材9の外側縁部91がその外側へより確実に押し出されるから、上記成形不良がより生じ難く、製造品質の一層の安定化を図ることができる。
【0035】
また、このものでは、押圧金型4の下端外周縁43の少なくとも一部に、条材9に嵌入可能なエッジ部が設けられるとともに、そのエッジ部から押圧金型4の中心方向に連続して傾斜部が設けられていることで、押圧金型4を条材9に押圧させたときに、条材9の外側縁部91が中央部93側へより押され難いから、製造品質のより一層の安定化を図ることができる。
【0036】
尚、条材9を所望の寸法精度で塑性変形させるのに十分な加圧力が得られれば、上記押
圧動作は、押圧金型4を比較的高速で上下動させ、条材9に対して押圧金型4をハンマーのように上から打ち付けて押圧させるようにしてもよいし、押圧金型4を比較的低速で上下動させ、条材9に対して押圧金型4を上からゆっくりと僅かずつ押圧させるようにしてもよい。或いは、押圧金型4を下げる際に、押圧金型4を高速で細かく上下動させ、その高周波振動によって条材9を押圧するようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、1つの押圧金型4で条材9の一方の外側縁部91を圧延させるものを説明したが、
図5に示すように、2つの押圧金型4が条材9の左右位置に並設され、これら2つの押圧金型4によって条材9の左右両側の外側縁部91を同時に圧延させるようにしてもよい。これにより、異形断面条の製造効率が格段に向上する。また、条材9の長さ方向に押圧金型4を複数並べて配置しないため、圧延装置1全体が長大化する問題も生じ難い。
【0038】
尚、圧延装置1の長大化が許容される場合は、条材9の一方の外側縁部91に沿って押圧金型4を複数並設し、これら複数の押圧金型4によって条材9の一方の外側縁部91を連続的に圧延させるようにしてもよいし、上記のように条材9の左右に並設された2つの押圧金型4を、さらに前後に複数列で配し、これら複数の押圧金型4によって条材9の左右両側の外側縁部91を連続的に圧延させるようにしてもよい。このようにすることで、異形断面条の製造効率が一層向上する。
【0039】
また、本実施形態では、押圧金型4の下方対向位置まで台座2が設けられており、台座2と押圧金型4とで条材9の外側縁部91を上下から挟んで押圧するように構成されたものを説明したが、
図6に示すように、台座2の側方で且つ押圧金型4の下方対向位置に、条材9の外側縁部91に下方から当接する支持金型6が設けられ、押圧金型4の下端面40と支持金型6の上端面60とで外側縁部91を上下から挟んで押圧するように構成されたものとしてもよい。このものにおいても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0040】
この場合、支持金型6は、台座2と同様、圧延装置1の所定位置に固定されていてもよいし、手動又は電動で任意の高さや前後左右に位置調整可能としてもよい。また、押圧金型4と同様、図示しない押圧機構部に連結支持され、上下に往復動可能に構成されたものとしてもよい。
【0041】
さらに、支持金型6は、上端面60に、押圧金型4の下端面40と上下対称に、下方へ凹没する略円錐状の凹部が形成されたものとしてもよい。このものでは、条材9の外側縁部91を上下両面からその外側へ押し出すように押圧することができるから、異形断面条の製造効率が格段に向上する。
【0042】
また、本実施形態では、押圧金型4の下端面40に、上方へ凹没する円錐状の凹部42が形成されたものを説明したが、条材9の外側縁部91をその外側へ押し出すように適切に押圧可能であれば、凹部42は、円錐状に限らず、底部が楕円形状や長円形状に形成された錐状、頂部が平面状に形成された円錐台状に形成されたものとしてもよいし、三角錐状や四角錐状、六角錐状など多角錐状に形成されたものとしてもよい。
【0043】
また、凹部周面44は、条材9の外側縁部91をその外側へ押し出すように適切に押圧可能であれば、その傾斜角(勾配)が全体に亘って一定であるものに限らず、例えば、傾斜が中心側から外周側に向かって徐々に緩やかになる凸曲面状に形成されたものであってもよいし、傾斜が中心側から外周側に向かって徐々に急になる凹曲面状に形成されたものであってもよい。
【0044】
尚、凹部42の底部が楕円形状や長円形状に形成されたものの場合、その長径方向を条
材9の長さ方向と平行になる向きで押圧金型4を配すれば、条材9の外側縁部91をより確実にその外側へ押し出すように変形させることができる。即ち、外側縁部91が中央部93側へ押されるのをより確実に抑制できる。これにより、製造品質の一層の安定化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、押圧金型4の下端面40の凹部42の外周縁が押圧金型4の下端外周縁43と略一致するように構成されたもの、即ち、下端外周縁43がエッジ状に形成されたものを説明したが、
図7に示すように、凹部42が下端面40より小径で、下端外周縁43に沿って平面部が設けられたものとしてもよい。このものでは、押圧金型4を上下に往復動させる間に、圧痕Fが下端外周縁43の平面部によって平面的に押圧されるから、外側縁部91の表面をより平滑に圧延することができる。
【0046】
また、本実施形態では、押圧金型4の下端面40の同心円上に凹部42が設けられたものを説明したが、
図8に示すように、凹部42が下端面40より小径で、且つ下端外周縁43と接するように条材9の中央部93側へ偏心して設けられたものとしてもよい。このものでは、凹部42の外周縁の上記中央部93側の縁部が下端外周縁43と略一致し、エッジ状に形成されているから、外側縁部91が中央部93側へ押されるのをより確実に抑制できる。
【0047】
また、押圧金型4は、条材9の外側縁部91をその外側に向けて適切に押圧可能であれば、円柱状に限らず、
図9に示すように、1/3円柱状に形成されたものとしてもよいし、1/4円柱状に形成されたものとしてもよい。また、押圧金型4が楕円柱状や長円形柱状に形成されたものとすれば、その長径方向を条材9の長さ方向と平行になるように配することで、1回の押圧動作で条材9の外側縁部91をより広範囲に押圧することができるから、異形断面条の製造効率が一層向上する。
【符号の説明】
【0048】
1 圧延装置(異形断面条の製造装置)
2 台座
3 送り機構部
4 押圧金型(押圧体)
5 押圧機構部
9 条材
40 下端面(押圧面)
41 上端面
42 凹部
43 下端外周縁
44 凹部周面
91 外側縁部
92 側端面
93 中央部