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特許7378857近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20231107BHJP
   C09K 11/58 20060101ALI20231107BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20231107BHJP
   C01G 5/00 20060101ALI20231107BHJP
   C01B 19/04 20060101ALI20231107BHJP
   C01G 7/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C09K11/08 A ZNM
C09K11/58
C09K11/88
C09K11/08 G
C01G5/00 Z
C01B19/04 A
C01B19/04 B
C01B19/04 G
C01G7/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022536547
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2021140056
(87)【国際公開番号】W WO2022156467
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】202110073230.0
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111243959.4
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516082763
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 強斌
(72)【発明者】
【氏名】楊 紅超
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112877062(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
C01G 5/00
C01B 19/04
C01G 7/00
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀源、セレン源、弱極性溶媒を含む第3の均一混合反応体系を溶媒熱反応させて、セレン化銀量子ドット前駆体を調製するステップと、
セレン化銀量子ドット前駆体、金源を含む第4の均一混合反応体系を0~200℃で10~72時間陽イオン交換反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを取得するステップと、を含むことを特徴とする近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの調製方法。
【請求項2】
まず銀源と弱極性溶媒を均一に混合し、次にセレン源を加えて、前記第3の均一混合反応体系を形成し、前記第3の均一混合反応体系を100~300℃で0.5~24時間、好ましくは1~6時間溶媒熱反応させて、前記セレン化銀量子ドット前駆体を調製するステップを含み、
かつ/または、前記銀源とセレン源の質量比は1~10:1~10である、ことを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【請求項3】
セレン化銀量子ドット前駆体、金源と弱極性溶媒を均一に混合して、前記第4の均一混合反応体系を形成するステップを含み、
かつ/または、前記セレン化銀量子ドット前駆体と金源の質量比は1~10:1~10である、ことを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【請求項4】
前記銀源は銀塩を含み、前記銀塩は塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀、硫化銀、トリフルオロ酢酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、
かつ/または、前記セレン源は二酸化セレン、セレン粉末、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、セレン化ナトリウム、ジフェニルジセレニドのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、
かつ/または、前記弱極性溶媒はオレイルアミン、オレイン酸、オクタデセン、オクタデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ドデカンチオール、オクタンチオ、オクタデカンチオールのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、
かつ/または、前記金源はクロロ金酸ナトリウム、クロロ金酸、硝酸金、塩化金、水酸化金、酸化金、金ナノロッド、金粒子のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年1月20日に出願された中国出願番号202110073230.0号、発明名称「近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットおよびその調製方法並びに用途」、および2021年10月25日に出願された中国出願番号202111243959.4号、発明名称「合金化蛍光量子ドットおよびその調製方法並びに用途」という2つの中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本出願は、蛍光量子ドットおよびその調製方法に関し、特に合金化蛍光量子ドットおよびその調製方法、高量子効率を有する近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットおよびその調製方法並びに用途に関し、材料科学技術の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
蛍光イメージング技術には、非接触で直感的な画像、リアルタイム、高感度、経済的で便利、そして放射線障害がないという利点があり、生物医学研究および臨床診療において、特に蛍光イメージングの外科的ナビゲーションにおいて、幅広い応用の見通しを持っている。蛍光イメージングの波長範囲によると、主に可視光蛍光イメージング(400-650nm)と近赤外蛍光イメージング(650-1700nm)が含まれる。生物学的イメージングでは、近赤外光を、近赤外線I区(650-900nm、NIR-I)と近赤外線(900-1700nm、NIR-II)という2つの光学ウィンドウに分割できる。NIR蛍光は、過去10年間のインビボ蛍光イメージング研究で発見された新しい蛍光ウィンドウであり、可視領域およびNIR-I領域と比較して、生体組織内のNIR-II光子の減衰係数が大幅に低減する(J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 14789-14804.)、したがって、NIR-II蛍光は、インビボイメージングでより高い組織侵入深さと空間分解能を備えている。
【0004】
優れた蛍光発光材料として、量子ドットは、高い生体適合性、高い量子効率、調整可能な励起および発光波長、および容易な表面機能化などの特徴を備え、インビボイメージング、発光ダイオード、光検出器、レーザー、太陽電池などに幅広い用途がある。しかしながら、硫化鉛、テルル化カドミウム、セレン化鉛、テルル化水銀、セレン化銀などの既存の蛍光量子ドットは、絶対蛍光量子収率が低いか、一部に有毒な重金属元素が含まれており、蛍光強度と毒性の両立が困難である。したがって、可視から近赤外のフルウィンドウ(500-1700nm)で、連続的に調整可能な単一発光、高い蛍光量子効率、および高い生体適合性を備えた新しい蛍光量子ドット材料を開発することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の主な目的は、従来の量子ドット特性の欠陥を克服するための高量子効率の蛍光量子ドットおよびその調製方法並びに用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の発明目的を達成するために、本出願は以下の技術的解決策を提供する。
【0007】
本出願の実施例は、合金化蛍光量子ドットの調製方法を提供し、この方法は、
銀源、陰イオン源、弱極性溶媒を含む第1の均一混合反応体系を溶媒熱反応させ、銀系量子ドット前駆体を調製するステップと、
銀系量子ドット前駆体、陰イオン源および/または金属陽イオン源を含む第2の均一混合反応体系を0~260℃で0.4~72時間イオン交換反応させて、合金化蛍光量子ドットを取得するステップと、を含む。
【0008】
いくつかの実施例では、前記陰イオン源は硫黄源、セレン源およびテルル源のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む。
【0009】
いくつかの実施例では、前記金属陽イオン源に含まれる金属元素は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Au、Pd、Pt、Inのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む。
【0010】
本出願の実施例は、前記方法によって調製された合金化蛍光量子ドットをさらに提供し、その蛍光発光ピーク波長が500~1700nmである。
【0011】
さらに、前記合金化蛍光量子ドットの絶対量子効率が85%を超える。
【0012】
さらに、前記合金化蛍光量子ドットは、AgAuSe、AgAuS、AgAuTe、CuAgS、CuAgSe、AgInTeのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む。
【0013】
さらに、前記合金化蛍光量子ドットはドープされた合金化蛍光量子ドットを含む。
【0014】
さらに、前記合金化蛍光量子ドットはコアシェル構造を有する。
【0015】
本出願の実施例は、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの調製方法をさらに提供し、この方法は、
銀源、セレン源、弱極性溶媒を含む第3の均一混合反応体系を溶媒熱反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体を調製するステップと、
セレン化銀量子ドット前駆体、金源を含む第4の均一混合反応体系を0~200℃で10~72時間陽イオン交換反応させて、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを取得するステップと、を含む。
【0016】
本出願の実施例は、前記方法によって調製された近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットをさらに提供し、前記近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの直径は2~20nmであり、サイズ分布が均一であり、その蛍光発光ピーク波長が800~1700nmであり、絶対蛍光量子収率が90%を超える。
【0017】
本出願の実施例は、生物学的画像化、生物医学または近赤外線デバイス(例えば近赤外線発光ダイオード、太陽電池、光検出器、レーザー)などの分野における、前記の合金化蛍光量子ドットまたは近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの用途をさらに提供する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比較すると、本出願は以下の有益な効果を有する。
【0019】
1)本出願はまず簡単な高温ソルボサーマル法によって銀系量子ドット(セレン化銀量子ドットを含む)を調製し、次にイオン交換法によって合金化量子ドットを取得し、その合成プロセスステップが簡単で、実験条件を制御しやすく、使用される試薬は簡単に入手でき、最終生成物の収率が高く、大規模生産に適している。
【0020】
2)本出願で調製された最終生成物である合金化蛍光量子ドットは、サイズ分布が均一で、蛍光発光が可視光から近赤外線まで調整可能であり、優れた光安定性を有すると同時に、有毒な重金属元素を含まないため、生物学的画像化、近赤外線デバイスなどの分野で幅広い用途の見通しを持っている。
【0021】
3)本出願の調製プロセスは、他の蛍光量子ドットの調製プロセスにも適用され得、収率が高く、反応規模を拡大することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本出願の技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明において使用される必要のある図面を簡単に説明するが、以下説明される図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者は、創造的な労働をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができるのは明らかである。
【0023】
図1】本出願の実施例1で調製された合金化蛍光量子ドットの透過電子顕微鏡写真である。
図2】本出願の実施例1で調製された合金化蛍光量子ドットの可視-近赤外線吸収スペクトル図である。
図3】本出願の実施例1で調製された合金化蛍光量子ドットの蛍光発光スペクトル図である。
図4】本出願の実施例1で調製された合金化蛍光量子ドットの量子効率測定スペクトル図である。
図5a】本出願の実施例13の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの透過電子顕微鏡写真である。
図5b】本出願の実施例13の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの高分解能の透過電子顕微鏡写真である。
図6】本出願の実施例13の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの粉末X線回折スペクトル図である。
図7】本出願の実施例13の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットのエネルギー分散X線スペクトル図である。
図8a】本出願の実施例13の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの蛍光発光スペクトル図である。
図8b】本出願の実施例13の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの量子効率測定スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記のように、例えば硫化鉛、テルル化カドミウム、セレン化鉛、テルル化水銀、セレン化銀などの従来の蛍光量子ドットは、その絶対蛍光量子収率が高くない同時に一部が有毒な重金属元素を含み、蛍光強度と毒性の両立が困難である。長期にわたる研究と多くの実践の結果、本件の発明者は、いくつかの元素と銀ベースの量子ドットとの間のイオン交換によって得られた合金化量子ドットが良好な光学特性を有することを発見した。以下、本出願の技術的解決策をより詳細に解釈および説明する。
【0025】
本出願の技術的解決策の一側面として、かかる合金化蛍光量子ドットの調製方法は、
銀源、陰イオン源、弱極性溶媒を含む第1の均一混合反応体系を溶媒熱反応させ、銀系量子ドット前駆体を調製するステップと、
銀系量子ドット前駆体、陰イオン源および/または金属陽イオン源を含む第2の均一混合反応体系を0~260℃で0.4~72時間イオン交換反応させて、合金化蛍光量子ドットを取得するステップと、を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記銀源は銀塩、前記銀塩包括塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀、酢酸銀、硫化銀、トリフルオロ酢酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀などのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記陰イオン源は硫黄源、セレン源およびテルル源などのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0028】
さらに、前記硫黄源は硫黄、チオ硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、チオ尿素などのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0029】
さらに、前記セレン源は二酸化セレン、セレン、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、セレン化ナトリウム、ジフェニルジセレニドなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0030】
さらに、前記テルル源はテルル、テルル酸ナトリウム、水素化テルルナトリウムなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0031】
さらに、前記弱極性溶媒はオレイルアミン、オレイン酸、オクタデセン、オクタデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ドデカンチオール、オクタンチオ、オクタデカンチオールなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記銀源と陰イオン源の質量比は1~10:1~10である。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記溶媒熱反応の温度は100~300℃で、時間は0.5~24時間である。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、前記銀系量子ドット前駆体はAgS、AgSe、AgTeなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0035】
さらに、より典型的な実施例では、前記調製方法は、まず硝酸銀をオレイルアミンに溶解し、硫黄源を加えて、200℃で1~6時間反応させた後洗浄して、標的生成物である銀系量子ドット前駆体を取得するステップを含み得る。
【0036】
いくつかのより好ましい実施形態では、前記調製方法は、質量0.1~1gの銀塩を取って弱極性溶媒に溶解するステップを含み得る。
【0037】
さらに、前記調製方法は、具体的に、前記硫化銀前駆体と金源を混合し、100℃で反応させて、銀金硫黄蛍光量子ドットを取得するステップを含む。
【0038】
さらに、前記調製方法は、反応が完了した後、得られた銀金硫黄蛍光量子ドットを洗浄するステップをさらに含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記銀系量子ドット前駆体と金属陽イオン源の質量比は1~10:1~10である。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態では、前記金属陽イオン源に含まれる金属元素は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Au、Pd、Pt、Inなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0041】
さらに、前記金属陽イオン源は、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硝酸鉄、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸銅、酢酸銅、硝酸銅、塩化第二銅、塩化第一銅、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、クロロ金酸ナトリウム、クロロ金酸、硝酸金、塩化金、水酸化金、酸化金、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、クロロ白金酸、クロロ白金酸ナトリウム、クロロ白金酸カリウム、酢酸インジウム、塩化インジウムなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0042】
その中で、前記銀塩、陰イオン源、弱極性溶媒と金属陽イオン源などは上記のものから選択できるが、それらに限定されない。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記調製方法は具体的に、
銀源と弱極性溶媒を均一に混合し陰イオン源を加え、溶媒熱反応を行って、銀系量子ドット前駆体(「銀ベース量子ドット前駆体」とも呼ばれる)を取得するステップと、
前記銀系量子ドット前駆体と金属陽イオン源を0~260℃で混合し反応させて、合金化蛍光量子ドットを得、その蛍光発光ピーク波長が500~1700nmであるステップとを含む。
【0044】
その中で、前記金属陽イオンとして金源が選択され、陰イオン源として硫黄源がん選択されたとき、より具体的な実施形態の1つとして、前記合金化蛍光量子ドットの調製方法は、
I、銀塩と弱極性溶媒を混合した後超音波で均一に分散させるステップと、
II、ステップIで最終的に得られた混合溶液に硫黄源を加えて、均一に混合および分散させた後、100~300℃で0.5~24時間反応させるステップと、
III、ステップIIの溶媒熱反応によって得られた生成物を分離し、洗浄および乾燥するステップと、
IV、ステップIIIで得られた生成物と金源を0~200℃で10~72時間反応させて、近赤外線銀金硫黄蛍光量子ドットを得るステップと、を含む。
【0045】
本出願で調製された最終生成物である合金化蛍光量子ドットは、サイズ分布が均一であり、その蛍光発光ピーク波長が500~1700nm、好ましくは800~1350nmにあり、非常に高い絶対蛍光量子効率(85%を超える)を有すると同時に、有毒な重金属元素を含まない。そして、最終生成物の収率が高く、調製プロセスは反応規模を容易に拡大することができる。
【0046】
本出願の技術的解決策の別の側面として、前記方法によって調製された合金化蛍光量子ドットに関し、その形態サイズが均一で、絶対量子収率が高く、有毒な重金属元素を含まないため、生物学的画像化、生物医学または近赤外線デバイス分野などにおいて重要な応用見通しを持っている。
【0047】
さらに、前記合金化蛍光量子ドットは、好ましくはAgAuSe、AgAuS、AgAuTe、CuAgS、CuAgSe、AgInTeなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0048】
さらに、前記合金化蛍光量子ドットは、ドープされた合金化蛍光量子ドットを含み、例えば、好ましくはマンガンドープされたセレン化銀蛍光量子ドット、ニッケルドープされたテルル化銀蛍光量子ドット、インジウムドープされた硫化銀蛍光量子ドット、コバルトドープされた硫化銀蛍光量子ドットなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0049】
さらに、前記合金化蛍光量子ドットはコアシェル構造を有し、例えば、前記合金化蛍光量子ドットは好ましくはAgS@ZnS、AgTe@AgS、AgTe@AgSe、AgSe@AgS、AgSe@AgTe、AgS@AgSe、AgS@AgTe、AgSe@ZnS、AgSe@ZnSe、AgS@MnSなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0050】
本出願の実施例の別の側面は、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの調製方法をさらに提供し、この方法は、
銀源、セレン源、弱極性溶媒を含む第3の均一混合反応体系を溶媒熱反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体を調製するステップと、
セレン化銀量子ドット前駆体、金源を含む第4の均一混合反応体系を0~200℃で10~72時間陽イオン交換反応させて、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを取得するステップと、を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記調製方法は、主に、銀源とセレン源を弱極性溶媒に均一に混合して溶媒熱反応させ、セレン化銀量子ドットを得、上記のセレン化銀量子ドットと金源を混合し、室温で陽イオン交換反応させて、高量子効率の近赤外線銀金セレン量子ドットを得、その蛍光発光ピーク波長が800~1700nmであることを含む。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、前記高量子効率の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの調製方法は、具体的に、
銀源と弱極性溶媒を均一に混合しセレン源を加えて溶媒熱反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体を調製するステップと、
前記セレン化銀前駆体と金源を0~200℃で混合し反応させ、銀金セレン蛍光量子ドットを得、その蛍光発光ピーク波長が800~1700nmで、絶対蛍光量子収率が90%を超えるステップを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記調製方法は、まず銀源と弱極性溶媒を均一に混合し、次にセレン源を加え、前記第3の均一混合反応体系を形成するステップをさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記調製方法は具体的に、前記第3の均一混合反応体系を100~300℃で0.5~24時間溶媒熱反応させ、前記セレン化銀量子ドット前駆体を得るステップを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記銀源とセレン源の質量比は1~10:1~10である。つまり、前記調製方法は、質量比1~10:1~10の銀源とセレン源溶を弱極性溶媒に溶解するステップを含む。
【0056】
本出願によって提供されるセレン化銀前駆体の調製プロセスは溶媒熱反応であり、ステップが簡単で、実験条件を制御しやすく、使用される試薬を簡単に入手でき、最終生成物の収率が高く、大規模生産に適している。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記調製方法は、セレン化銀量子ドット前駆体、金源と弱極性溶媒を均一に混合し、前記第4の均一混合反応体系を形成するステップを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記セレン化銀量子ドット前駆体と金源の質量比は1~10:1~10である。つまり、前記調製方法は、質量比1~10:1~10のセレン化銀量子ドット前駆体と金源を弱極性溶媒に溶解するステップを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記銀塩は塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀、硫化銀、トリフルオロ酢酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀などのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記セレン源は二酸化セレン、セレン粉末、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、セレン化ナトリウム、ジフェニルジセレニドなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記弱極性溶媒はオレイルアミン、オレイン酸、オクタデセン、オクタデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ドデカンチオール、オクタンチオ、オクタデカンチオールなどのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記金源はクロロ金酸ナトリウム、クロロ金酸、硝酸金、塩化金、水酸化金、酸化金、金ナノロッド、金粒子などのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0063】
前記銀塩、セレン源、弱極性溶媒と金源などは上記のものから選択できるが、それらに限定されない。
【0064】
さらに、典型的な実施例では、前記調製方法は、まず硝酸銀をオレイルアミンに溶解し、セレン源を加え、100~300℃で1~6時間反応させた後、洗浄して、標的生成物であるセレン化銀量子ドット前駆体を得るステップを含む。
【0065】
さらに、前記銀塩とセレン源の質量比は0.1~1g:0.1~1gである。
【0066】
いくつかのより好ましい実施形態では、前記調製方法は、質量0.1~1gの銀塩を弱極性溶媒に溶解するステップを含み得る。
【0067】
さらに、前記調製方法は具体的に、前記セレン化銀前駆体と金源を混合し、100~200℃で反応させて、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得るステップを含む。
【0068】
さらに、前記調製方法は、反応が完了した後、得られた銀金セレン蛍光量子ドットを洗浄するステップをさらに含む。
【0069】
その中で、より具体的な実施形態の1つとして、前記調製方法は、
I、銀塩と弱極性溶媒を混合した後超音波で均一に分散させるステップと、
II、ステップIで最終的に得られた混合溶液にセレン源を加え均一に混合および分散させた後、100~300℃で0.5~24時間反応させるステップと、
III、ステップIIの溶媒熱反応によって得られた生成物を分離し、洗浄および乾燥するステップと、
IV、ステップIIIで得られた生成物と金源を0~200℃で10~72時間反応させて、前記近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得るステップと、を含む。
【0070】
本出願は、まず簡単な高温ソルボサーマル法によってセレン化銀量子ドットを調製し、次に陽イオン交換法によって銀金セレン量子ドットを得、その合成プロセスステップは簡単で、実験条件を制御しやすく、使用される試薬を簡単に入手でき、最終生成物の収率が高く、大規模生産に適している。
【0071】
本出願で調製された最終生成物である近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットは、サイズ分布が均一で、その蛍光発光ピーク波長が800~1700nm、好ましくは800~1350nmにあり、非常に高い絶対蛍光量子効率(90%を超える)を有すると同時に、有毒な重金属元素を含まない。最終生成物の収率が高く、調製プロセスは反応規模を容易に拡大することができる。
【0072】
さらに、本出願の調製プロセスは、他の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの調製プロセスにも適用され得、収率が高く、反応規模を容易に拡大することができる。
【0073】
本出願の技術的解決策の別の側面は、前記方法によって調製された近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットに関する。
【0074】
さらに、前記近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの直径は2~20nmである。
【0075】
さらに、前記近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの蛍光発光ピーク波長が800~1700nm、好ましくは800~1350nmであり、絶対蛍光量子収率が90%を超える同時に、有毒な重金属元素を含まない。
【0076】
本出願の技術的解決策の別の側面として、本出願は、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットをさらに提供し、その形態サイズが均一であり、絶対量子収率が高く、有毒な重金属元素を含まないため、生物学的画像化、生物医学または近赤外線デバイス分野などにおいて重要な応用見通しを持っている。
【0077】
本出願の実施例の別の側面は、前記の任合金化蛍光量子ドットまたは近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの生物学的画像化、生物医学または近赤外線デバイス等分野中の用途に関する。
【0078】
さらに、前記近赤外線デバイスは可以是近赤外線発光ダイオード、太陽電池、光検出器、レーザー等、これらに限定されない。
【0079】
以上のように、上記の技術的解決策により、本出願はまず簡単な高温ソルボサーマル法によって銀系量子ドットを調製し、次にイオン交換法によって合金化量子ドットを得、その合成プロセスは簡単で制御しやすく、収率が高く、大規模に調製可能であり、蛍光発光が可視光から近赤外線までにあり調整可能であり、優れた光安定性を有すると同時に、有毒な重金属元素を含まないため、生物学的画像化、近赤外線デバイスなどの分野で幅広い用途の見通しを持っている。
【0080】
本出願の目的、技術的解決策および利点をより明確にするために、以下、いくつかの好ましい実施例と併せて本出願の技術的解決策をさらに具体的に説明するが、本出願は下記の実施例に限定されず、当業者は本出願の主な指導思想の下で加えた非本質的な改善および調整は、依然として本出願の保護範囲に含まれる。特に明記しない限り、下記の実施例で使用される様々な試薬は当業者に周知であり、市場購入などを通じて入手することができる。下記の実施例で提示しない具体的な条件の実験方法は通常、従来の通常条件または製造業者の推奨条件下で行われる。
【0081】
(実施例1)
0.06gの硝酸銀を20mLのオレイルアミンに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06の硫黄粉末を加え、200℃で5時間反応させ、硫化銀前駆体を得、そして0.06gのクロロ金酸を加え、100℃で48時間反応させ、銀金硫黄蛍光量子ドットを得る。
【0082】
図1から分かるように、本実施例で得られた近赤外線銀金硫黄蛍光量子ドット生成物の形態サイズは均一であり、サイズが約4.5nmである。
【0083】
上記銀金硫黄量子ドットをクロロホルムに分散させる。図2に示すように、可視-近赤外線吸収分光計を使用してその吸収スペクトルを測定したとこり、量子ドットが可視から近赤外線の領域まで強い吸収を示す。さらに近赤外線蛍光分光計を使用してその発光スペクトルおよび絶対蛍光量子収率を測定する。図3から分かるように、この銀金硫黄蛍光量子ドットの発光が800~1100nmにあり、図4から分かるようにその絶対量子効率が85.15%である。
【0084】
(実施例2)
0.06gの酢酸銀を20mLオレイン酸に溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.6の硫黄粉末を加え、250℃で0.5時間反応させ、硫化銀前駆体を得、そして0.6g塩化第一銅を加え、200℃で10時間反応させ、銀銅硫蛍光量子ドットを得る。
【0085】
(実施例3)
0.6gの硝酸銀を20mLのオクタデカンチオールに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.6g テルル粉末を加え、150℃で5時間反応させ、テルル化銀前駆体を得、そして0.6gセレン粉末を加え、100℃で24時間反応させ、銀セレンテルル蛍光量子ドットを得る。
【0086】
(実施例4)
0.06gのトリフルオロ酢酸銀を20mLのドデシルアミンに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのセレン粉末を加え、180℃で10時間反応させ、セレン化銀前駆体を得、そして0.06gのクロロ白金酸を加え、0℃で72時間反応させ、銀白金セレン蛍光量子ドットを得る。
【0087】
(実施例5)
0.06gの塩化銀を20mLのオクタンチオに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.6gの硫黄粉末を加え、200℃で12時間反応させ、硫化銀前駆体を得、そして0.06gの塩化第一鉄を加え、0℃で72時間反応させ、銀鉄セレン蛍光量子ドットを得る。
【0088】
(実施例6)
0.6gの硫化銀を20mLのヘキサデシルアミンに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのセレン粉末を加え、200℃で5時間反応させ、セレン化銀前駆体を得、そして0.06gの塩化パラジウムを加え、0℃で72時間反応させ、パラジウム銀セレン蛍光量子ドットを得る。
【0089】
(実施例7)
0.06gのヨウ化銀を20mLのオレイルアミンに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのセレン粉末を加え、200℃で5時間反応させ、セレン化銀前駆体を得、そして0.06gの塩化マンガンを加え、0℃で72時間反応させ、マンガンドープされたセレン化銀蛍光量子ドットを得る。
【0090】
(実施例8)
0.06gの酢酸銀を20mLのオレイルアミンに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのセレン粉末を加え、300℃で0.5時間反応させ、セレン化銀前駆体を得、そして0.06gの硫黄粉末を加え、100℃で72時間反応させ、AgSe@AgS蛍光量子ドットを得る。
【0091】
(実施例9)
0.6gの硫酸銀を20mLのオクタデカンチオールに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのテルル粉末を加え、150℃で1時間反応させ、テルル化銀前駆体を得、そして0.6gの硫黄粉末と0.06gの酢酸亜鉛を加え、260℃で0.4時間反応させ、AgTe@ZnS蛍光量子ドットを得る。
【0092】
(実施例10)
0.5gのジエチルジチオカルバミン酸銀を20mLのオクタデカンチオールに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのテルル粉末を加え、200℃で1時間反応させ、テルル化銀前駆体を得、そして0.06gの酢酸ニッケルを加え、150℃で2時間反応させ、ニッケルドープされたテルル化銀蛍光量子ドットを得る。
【0093】
(実施例11)
0.04gの酢酸銀を20mLのドデカンチオールに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gの硫黄粉末を加え、200℃で1時間反応させ、硫化銀前駆体を得、そして0.06gの酢酸インジウムを加え、150℃で2時間反応させ、インジウムドープされた硫化銀蛍光量子ドットを得る。
【0094】
(実施例12)
0.06gの炭酸銀を20mLのドデカンチオールに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06の硫黄粉末を加え、100℃で24時間反応させ、硫化銀前駆体を得、そして0.06gの塩化コバルトを加え、100℃で48時間反応させ、コバルトドープされた硫化銀蛍光量子ドットを得る。
【0095】
さらに、本願の発明者は前記の他の原料およびその他のプロセス条件などを用いて実施例1~12中の様々な原料および対応のプロセス条件を置換して対応の実験を行い、得られた合金化蛍光量子ドットの形態、性能なども理想的であり、実施例1~12の製品と基本的に同じである。
【0096】
(実施例13)
0.06gの硝酸銀を20mLのオレイルアミンに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのセレン粉末を加え、200℃で5時間反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体(0.6g)を得、そして0.06gのクロロ金酸を加え、100℃で48時間反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得る。
【0097】
図5a~図5bから分かるように、本実施例で得られた近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの生成物の形態サイズは均一であり、サイズが約4.8nmであり、図5aは近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの透過電子顕微鏡写真であり、図5bは高分解能透過電子顕微鏡写真である。図6および図7を参照すると、粉末X線回折およびエネルギー分散X線スペクトル図から分かるように、このナノ粒子材料は銀金セレン化合物である。
【0098】
上記銀金セレン量子ドットをクロロホルムに分散させる。近赤外線蛍光分光計を使用してその発光スペクトルと絶対蛍光量子収率を測定する。図8a~図8bから分かるように、この銀金セレン蛍光量子ドットの発光が800~1200nmにあり、絶対量子効率が90.3%である。
【0099】
(実施例14)
0.06gの炭酸銀を20mLのオクタンチオに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.8gの二酸化セレンを加え、250℃で2時間反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体(0.05g)を得、そして0.5gの硝酸金を加え、200℃で10時間反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得る。
【0100】
(実施例15)
0.6gの臭化銀を20mLのオレイン酸に溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.6gのセレン酸ナトリウムを加え、200℃で1時間反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体(0.1g)を得、そして0.1gのクロロ金酸ナトリウムを加え、100℃で48時間反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得る。
【0101】
(実施例16)
0.06gの塩化銀を20mLのドデカンチオールに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのセレン化ナトリウムを加え、100℃で5時間反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体(0.06g)を得、そして0.06gの塩化金を加え、0℃で72時間反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得る。
【0102】
(実施例17)
0.06gのヨウ化銀を20gオクタデシルアミンに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのジフェニルジセレニドを加え、200℃で24時間反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体(0.03g)を得、そして0.05gの水酸化金を加え、0℃で72時間反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得る。
【0103】
(実施例18)
0.06gのジエチルジチオカルバミン酸銀を20mLのオクタデカンチオールに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのセレン粉末を加え、300℃で0.5時間反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体(0.06g)を得、そして0.06gの酸化金を加え、0℃で72時間反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得る。
【0104】
(実施例19)
0.06gのトリフルオロ酢酸銀を20mLのオクタデセンに溶解し、超音波で均一に分散し、次に0.06gのセレン粉末を加え、200℃で24時間反応させ、セレン化銀量子ドット前駆体(0.06g)を得、そして0.06gの金ナノロッドを加え、0℃で72時間反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを得る。
【0105】
さらに、本願の発明者は上記の他の原料およびその他のプロセス条件などを用いて実施例13~19中の様々な原料および対応のプロセス条件を置換して対応の実験を行い、得られた近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの形態、性能なども理想的であり、実施例13~19の製品と基本的に同じである。
【0106】
以上のように、本出願はまず簡単な高温ソルボサーマル法によって銀系量子ドットを調製し、次にイオン交換法によって合金化量子ドットを得、その合成プロセスは簡単で制御しやすく、収率が高く、大規模に調製可能であり、蛍光発光が可視光から近赤外線までにあり調整可能であり、優れた光安定性を有すると同時に、有毒な重金属元素を含まないため、生物学的画像化、近赤外線デバイスなどの分野で幅広い用途の見通しを持っている。
【0107】
以上の実施例を使用して本出願の技術的解決策を詳細に説明したが、上記は本出願の具体的な実施例に過ぎず、本出願を制限するものではなく、本出願の原則範囲内に加えられた修正、補充や同等置換などは、すべて本出願の保護範囲に含まれるべきである。
【0108】
例示的な実施例を参照して本出願を説明したが、当業者は本出願の精神および範囲から逸脱しない限り、他の変更、省略および/または追加を加え、実質的等価物を前記実施例の要素を置換することができることは明らかである。なお、本出願の範囲から逸脱することなく、特定の場合または材料を本出願の教示に適合させるために、様々な修正を加えることができる。したがって、本明細書では、本出願を、出願を実施するために開示された特定の実施形態に限定することを意図するものではなく、本出願は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことを意図している。さらに、特に明記しない限り、第1、第2などの用語の使用は、順序や重要性を示すものではなく、第1、第2などの用語を使用して、ある要素を別の要素と区別するためである。
【0109】
(付記)
(付記1)
銀源、陰イオン源、弱極性溶媒を含む第1の均一混合反応体系を溶媒熱反応させ、銀系量子ドット前駆体を調製するステップと、
銀系量子ドット前駆体、陰イオン源および/または金属陽イオン源を含む第2の均一混合反応体系を0~260℃で0.4~72時間イオン交換反応させて、合金化蛍光量子ドットを取得するステップと、を含むことを特徴とする合金化蛍光量子ドットの調製方法。
【0110】
(付記2)
前記銀源は銀塩を含み、前記銀塩は、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀、酢酸銀、硫化銀、トリフルオロ酢酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、ことを特徴とする付記1に記載の調製方法。
【0111】
(付記3)
前記陰イオン源は硫黄源、セレン源およびテルル源のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、好ましくは、前記硫黄源は硫黄、チオ硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、チオ尿素のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、好ましくは、前記セレン源は二酸化セレン、セレン、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、セレン化ナトリウム、ジフェニルジセレニドのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、好ましくは、前記テルル源はテルル、テルル酸ナトリウム、水素化テルルナトリウムのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、ことを特徴とする付記1に記載の調製方法。
【0112】
(付記4)
前記弱極性溶媒は、オレイルアミン、オレイン酸、オクタデセン、オクタデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ドデカンチオール、オクタンチオ、オクタデカンチオールのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、ことを特徴とする付記1に記載の調製方法。
【0113】
(付記5)
前記銀源と陰イオン源の質量比は1~10:1~10である、ことを特徴とする付記1に記載の調製方法。
【0114】
(付記6)
前記溶媒熱反応の温度は100~300℃であり、時間は0.5~24時間である、ことを特徴とする付記1に記載の調製方法。
【0115】
(付記7)
前記銀系量子ドット前駆体は、AgS、AgSe、AgTeのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、および/または、前記銀系量子ドット前駆体と金属陽イオン源の質量比は1~10:1~10である、ことを特徴とする付記1に記載の調製方法。
【0116】
(付記8)
前記金属陽イオン源に含まれる金属元素は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Au、Pd、Pt、Inのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、好ましくは、前記金属陽イオン源は塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硝酸鉄、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸銅、酢酸銅、硝酸銅、塩化第二銅、塩化第一銅、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、クロロ金酸ナトリウム、クロロ金酸、硝酸金、塩化金、水酸化金、酸化金、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、クロロ白金酸、クロロ白金酸ナトリウム、クロロ白金酸カリウム、酢酸インジウム、塩化インジウムのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、ことを特徴とする付記1に記載の調製方法。
【0117】
(付記9)
付記1~8のいずれか1項に記載の調整方法によって調製された合金化蛍光量子ドットであって、
蛍光発光ピーク波長が500~1700nm、好ましくは800~1350nmにあり、前記合金化蛍光量子ドットの絶対量子効率が85%を超え、好ましくは、前記合金化蛍光量子ドットはAgAuSe、AgAuS、AgAuTe、CuAgS、CuAgSe、AgInTeのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、
好ましくは、前記合金化蛍光量子ドットはドープされた合金化蛍光量子ドットを含み、好ましくはマンガンドープされたセレン化銀蛍光量子ドット、ニッケルドープされたテルル化銀蛍光量子ドット、インジウムドープされた硫化銀蛍光量子ドット、コバルトドープされた硫化銀蛍光量子ドットのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、
好ましくは、前記合金化蛍光量子ドットはコアシェル構造を有し、特に好ましくは、前記合金化蛍光量子ドットはAgS@ZnS、AgTe@AgS、AgTe@AgSe、AgSe@AgS、AgSe@AgTe、AgS@AgSe、AgS@AgTe、AgSe@ZnS、AgSe@ZnSe、AgS@MnSのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、合金化蛍光量子ドット。
【0118】
(付記10)
銀源、セレン源、弱極性溶媒を含む第3の均一混合反応体系を溶媒熱反応させて、セレン化銀量子ドット前駆体を調製するステップと、
セレン化銀量子ドット前駆体、金源を含む第4の均一混合反応体系を0~200℃で10~72時間陽イオン交換反応させ、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットを取得するステップと、を含むことを特徴とする近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの調製方法。
【0119】
(付記11)
まず銀源と弱極性溶媒を均一に混合し、次にセレン源を加えて、前記第3の均一混合反応体系を形成し、前記第3の均一混合反応体系を100~300℃で0.5~24時間、好ましくは1~6時間溶媒熱反応させて、前記セレン化銀量子ドット前駆体を調製するステップを含み、
かつ/または、前記銀源とセレン源の質量比は1~10:1~10である、ことを特徴とする付記10に記載の調製方法。
【0120】
(付記12)
セレン化銀量子ドット前駆体、金源と弱極性溶媒を均一に混合して、前記第4の均一混合反応体系を形成するステップを含み、
かつ/または、前記セレン化銀量子ドット前駆体と金源の質量比は1~10:1~10である、ことを特徴とする付記10に記載の調製方法。
【0121】
(付記13)
前記銀塩は塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀、硫化銀、トリフルオロ酢酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、
かつ/または、前記セレン源は二酸化セレン、セレン粉末、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、セレン化ナトリウム、ジフェニルジセレニドのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、
かつ/または、前記弱極性溶媒はオレイルアミン、オレイン酸、オクタデセン、オクタデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ドデカンチオール、オクタンチオ、オクタデカンチオールのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含み、
かつ/または、前記金源はクロロ金酸ナトリウム、クロロ金酸、硝酸金、塩化金、水酸化金、酸化金、金ナノロッド、金粒子のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、ことを特徴とする付記10に記載の調製方法。
【0122】
(付記14)
付記10~13のいずれか1つに記載の方法によって調製された近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットであって、前記近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの直径は2~20nmであり、サイズ分布が均一であり、その蛍光発光ピーク波長が800~1700nm、好ましくは800~1350nmであり、絶対蛍光量子収率が90%を超える、近赤外線銀金セレン蛍光量子ドット。
【0123】
(付記15)
生物学的画像化、生物医学または近赤外線デバイス分野における付記9に記載の合金化蛍光量子ドットまたは付記14に記載の近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの用途であって、好ましくは、前記近赤外線デバイスは近赤外線発光ダイオード、太陽電池、光検出器またはレーザーを含む、合金化蛍光量子ドットまたは近赤外線銀金セレン蛍光量子ドットの用途。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b