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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】汚泥脱水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/123 20190101AFI20231107BHJP
   B01D 33/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C02F11/123 ZAB
B01D33/04 A
B01D33/04 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023010688
(22)【出願日】2023-01-27
【審査請求日】2023-05-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516382663
【氏名又は名称】株式会社アクアトリム
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】廣上 敬一
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-061608(JP,A)
【文献】実開昭54-039667(JP,U)
【文献】実開昭61-127896(JP,U)
【文献】実開昭59-073097(JP,U)
【文献】実開昭62-155996(JP,U)
【文献】国際公開第2016/163955(WO,A1)
【文献】特開昭49-081966(JP,A)
【文献】中国実用新案第208151195(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
B01D 23/00-35/04
B01D 35/08-37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ布ベルト上に載置されて重力による脱水する重力脱水部と、テンションをかけられながら回転移動する1枚の無端帯状の前記ろ布ベルトと、テンションがかかった前記ろ布ベルトにより外周面に押圧をかけられる転写ローラとを備え、前記転写ローラの中心軸と前記転写ローラに押圧をかける前記ろ布ベルトの略半円状の部分の中心とは略同じ位置で、前記ろ布ベルトと前記転写ローラとの間に挟まれた、重力脱水後の汚泥を圧搾して脱水する汚泥脱水処理装置であって、
前記転写ローラの外郭形状が、内角が鈍角の正多角形状を有し、
回転移動する前記ろ布ベルト上に載置されて前記転写ローラ側に移動してくる前記汚泥が前記転写ローラの正多角形の直線状の1辺と前記ろ布ベルトとの間に挟まれながら進入する部位における、前記転写ローラの正多角形の直線状の1辺と前記ろ布ベルトとのなす角度が鋭角であることを特徴とする汚泥脱水処理装置。
【請求項2】
前記汚泥が前記転写ローラと前記ろ布ベルトとの間に挟入開始した部位から下流側の前記汚泥が挟まれている、前記転写ローラの正多角形の所定の一辺の部位に対して押圧方向の付勢力を有する付勢手段を備えた円形状の外部加圧ローラを備え、押圧をかけられた前記外部加圧ローラにより前記所定の一辺の部位と前記ろ布ベルトとの間に挟まれた前記汚泥を圧搾して脱水させることを特徴とする請求項1に記載の汚泥脱水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集スラリー等の水分を含んだ汚泥である被処理物を、無端帯状の1本のろ布ベルトを使用して脱水する汚泥脱水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンドレスな濾材シートを備えるとともに、その濾材シートを挟んで配設された転写ロールと駆動ロールを備え、この駆動ロールが前記転写ロールに向けて押しつけられており、両ロールがモータの駆動により回転するに従って前記濾材シートが周回走行するようになっていて、濾材シートが泥状固液混合物を載せて走行する一方、泥状固液混合物を濾材シートの下側から減圧吸引することにより脱液してのち濾材シートごと転写ロールへ押しつけることにより圧搾するとともに固形分を転写ロールに写し取るようにした固液分離装置であって、前記転写ロールには前記モータの回転が直接的に伝わる一方、前記駆動ロールにはふたつの環条動力伝達機構により前記モータの回転が順送りされて間接的に伝わるとともに、駆動ロール側に位置する環条駆動機構の送出側スプロケットは、同スプロケットの中心と駆動ロールの中心とを結ぶ直線が転写ロールと駆動ロールの接触点を通る接線と略平行となる位置に取り付けられている固液分離装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、固体を含有する液体を挟む二枚の濾布と、加圧ローラと、前記加圧ローラで加圧する際に、前記二枚の濾布の側端部を密着させる密着手段と、を備えたベルトプレス脱水機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-309115号公報
【文献】特開2015-167878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明は、円形の圧搾専用ロールで円形の転写ロールに対して前記転写ロールの外周に沿うように巻いている1枚の濾材シートを強く押すと、前記転写ロールと前記濾材シートとに挟まれている汚泥が上流側と下流側にそれぞれ押されて移動してサイドからはみ出るという問題があった。
【0006】
特許文献2の発明は、ろ布ベルトを2枚にした技術であり、2枚のろ布ベルトの間に汚泥を挟み前記2枚のろ布ベルトを引っ張って加圧ローラに押し付けて圧搾する技術である。ろ布ベルトを強く引っ張ると水分を多く含んだ汚泥がろ布ベルトからはみ出すので、最初の加圧ローラの直径を大きくして圧搾力を弱くし、下流側にいくほど加圧ローラの直径を小さくして圧搾力を高めていかざるを得ず、装置が複雑かつ大型化になるという問題があった。
【0007】
一般に使用されている円形状の転写ローラと1枚の無端帯状のろ布ベルトで圧搾し脱水する汚泥脱水処置装置の場合、テンションをかけられて走行するろ布ベルトに載せた水分を多く含んだ汚泥を、前記ろ布ベルトと転写ローラとの間に前記水分を多く含んだ汚泥を挟入させる方向に移動させていくと、前記転写ローラに前記汚泥の上層部が当接したときに挟入側である下流側に移動せず、あとから移動してくる水分を多く含んだ汚泥がぶつかって堆積するという問題があった。従来は、前記問題の解決方法として、円形状の転写ローラの直径を大きくすることで対応してきたが、円形状の転写ローラの直径を大きくすれば汚泥脱水処置装置が大型化し製作コストが高くなり設置に広いスペースが必要になるという問題があった。
【0008】
また、一般に使用されている円形状の転写ローラと1枚の無端帯状のろ布ベルトで圧搾し脱水する汚泥脱水処理装置の場合、転写ローラとろ布ベルトのテンションで挟むのみでは水分を含んだ汚泥からの脱水が不十分であるので、ろ布ベルトを転写ローラ側に強く押す円形状の外部加圧ローラを備えているが、挟入している汚泥が上流側に体積移動したり、ろ布ベルトのサイドから汚泥がはみ出してしまうという問題があった。
【0009】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、1枚の無端帯状のろ布ベルトを使用して、汚泥などの水分を含んだ被処理物を小型の転写ローラで、ろ布ベルトのサイドから被処理物のはみ出しが生じないように脱水させる汚泥脱水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の汚泥脱水処理装置は、ろ布ベルト上に載置されて重力による脱水する重力脱水部と、テンションをかけられながら回転移動する1枚の無端帯状の前記ろ布ベルトと、テンションがかかった前記ろ布ベルトにより外周面に押圧をかけられる転写ローラとを備え、前記転写ローラの中心軸と前記転写ローラに押圧をかける前記ろ布ベルトの略半円状の部分の中心とは略同じ位置で、前記ろ布ベルトと前記転写ローラとの間に挟まれた、重力脱水後の汚泥を圧搾して脱水する汚泥脱水処理装置であって、前記転写ローラの外郭形状が、内角が鈍角の正多角形状を有し、回転移動する前記ろ布ベルト上に載置されて前記転写ローラ側に移動してくる前記汚泥が前記転写ローラの正多角形の直線状の1辺と前記ろ布ベルトとの間に挟まれながら進入する部位における、前記転写ローラの正多角形の直線状の1辺と前記ろ布ベルトとのなす角度が鋭角であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の汚泥脱水処理装置は、請求項1において、前記汚泥が前記転写ローラと前記ろ布ベルトとの間に挟入開始した部位から下流側の前記汚泥が挟まれている、前記転写ローラの正多角形の所定の一辺の部位に対して押圧方向の付勢力を有する付勢手段を備えた円形状の外部加圧ローラを備え、押圧をかけられた前記外部加圧ローラにより前記所定の一辺の部位と前記ろ布ベルトとの間に挟まれた前記汚泥を圧搾して脱水させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明の汚泥脱水処理装置は、1枚の無端帯状のろ布ベルトと小型の内角が鈍角で正多角形の転写ローラとの間に、搬送されてきた水分を多く含んだ汚泥を、前記ろ布ベルトと前記転写ローラとの間に挟入する直前の部位に堆積物を生じさせずに円滑に挟入させることができ、圧搾し脱水することができるという効果を奏する。
【0013】
請求項2に記載の汚泥脱水処理装置は、円形状の外部加圧ローラでろ布ベルトを内角が鈍角で正多角形の転写ローラ側に向けて強く押しても、水分を含んだ汚泥を体積移動させずに、かつろ布ベルトのサイドからの汚泥のはみ出しを生じさせずに前記水分を含んだ汚泥から脱水ができるという効果を奏する。
【0014】
本発明の汚泥脱水処理装置は、内角が鈍角の正多角形の転写ローラとテンションがかかった1枚の無端帯状のろ布ベルトとの間に、水分を含んだ汚泥を挟入させて前記水分を含んだ汚泥を圧搾する構成にしたことにより、前記転写ローラを小型化でき低コストで省スペース化を実現できたという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の汚泥脱水処理装置の全体構成の概要説明図である。
図2図1において汚泥を脱水する状況の説明図である。
図3図1において転写ローラを従来の円形状の場合の汚泥脱水処理装置の全体構成の概要説明図である。
図4】正多角形状の転写ローラ、テンションをかけられた1枚のろ布ベルト、外部加圧ローラ、及び、汚泥との関連を説明する説明図である。
図5図2において、回転するテンションをかけられたろ布ベルトにより、正多角形の転写ローラとろ布ベルトとの間に汚泥が進入する状況を説明する説明図である。
図6】円形状の転写ローラ、テンションをかけられた1枚のろ布ベルト、外部加圧ローラ、及び、汚泥との関連を説明する説明図である。
図7図3において、回転するテンションをかけられたろ布ベルトにより、正多角形の転写ローラとろ布ベルトとの間に汚泥が進入する状況を説明する説明図で、(a)は転写ローラのA点が図3のT1の位置のときの説明図で、(b)は転写ローラが回転して図3のA点がT2の位置のときの説明図である。
図8図4において、回転するテンションをかけられたろ布ベルトにより、円形状の転写ローラとろ布ベルトとの間に汚泥が進入する状況を説明する説明図で、(a)は転写ローラのB点が図4のT3の位置のときの説明図で、(b)は転写ローラが回転して図4のB点がT4の位置のときの説明図である。
図9図6のときの転写ローラの直径より大きい直径の転写ローラに変えた場合における汚泥の進入状況を説明する説明図である。
図10】正多角形の転写ローラの所定の一辺と外部加圧ローラと汚泥の関係を説明する説明図である。
図11】円形状の転写ローラと外部加圧ローラと汚泥の関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、水分を多く含む汚泥を脱水する汚泥脱水処理装置である。前記汚泥は、廃液凝集汚泥であり、廃液に凝集剤を添加した、汚泥が混ざって水分を多く含む液体状の混合物である凝集スラリーである。
【0017】
本発明の汚泥脱水処理装置1の全体構成について説明する。本発明の汚泥脱水処理装置1は、図1又は図2に示すように、ろ布ベルト4が1枚で転写ローラ2が小型の汚泥脱水処理装置1である。
【0018】
まず、ろ布ベルト4について説明する。前記ろ布ベルト4は、無端帯状であり、図1に示すように、駆動ローラ13、従動ローラ14a、従動ローラ14b、従動ローラ14c、及び、従動ローラでもある転写ローラ2との間に巻き回され張架されている。そして、例えばシリンダー等の張力発生手段8によりテンションをかけられ、例えばモータ等の回転駆動手段7の駆動により駆動ローラ13を回転駆動することにより、従動ローラ14a、14b、14c、及び、転写ローラ2が従動回転するとともに、前記ろ布ベルト4がテンションをかけられた状態で走行する。前記従動ローラ14a、14b、14c、及び、前記転写ローラ2はそれぞれの回転中心軸に対して回転自在に設けられている。
【0019】
次に、汚泥の脱水処理の流れにそって構成を説明する。図1又は図2に示すように、凝集スラリー状態の汚泥51が、汚泥輸送管11から汚泥移載装置12内に落下される。前記汚泥移載装置12の底面は開口部が形成され、前記開口部のすぐ下に前記ろ布ベルト4が走行するように構成されている。これにより、落下された水分を多く含む汚泥51は前記ろ布ベルト4上に載せられて、前記ろ布ベルト4の走行により移動する。
【0020】
次に、重力脱水部31について説明する。前記重力脱水部31の範囲は、前記汚泥移載装置12の底面域と、前記汚泥移載装置12から転写ローラ2と前記ろ布ベルト4との間に汚泥51が挟入されるまでの前記ろ布ベルト4の範囲との合計の範囲をいう。前記重力脱水部31では、水分を多く含んだ汚泥51から重力により水分が前記ろ布ベルト4でろ過され自然に落下する。前記ろ布ベルト4でろ過されたろ液53はろ液回収受け台23に落下し、前記ろ液回収受け台23の底面に沿って流下して廃液容器24に回収される。前記重力脱水部31を通過した、水分を多く含んだ汚泥は、水分が減少したがまだ水分が含まれている汚泥である。
【0021】
次に、加圧脱水部32の説明をする。前記加圧脱水部32の範囲は、前記転写ローラ2に前記ろ布ベルト4が巻き回されている範囲である。テンションをかけられながら走行している前記ろ布ベルト4と前記転写ローラ2との間に、まだ水分が含まれている汚泥を挟入させて圧搾して脱水する。前記圧搾により脱水され、脱水により生じたろ液53はろ液回収受け台23に落下し、前記ろ液回収受け台23の底面に沿って流下して廃液容器24に回収される。
【0022】
そして、さらに圧搾をするために、前記転写ローラ2側に押圧をかけるように付勢力を有する付勢手段21を備えている外部加圧ローラ5によって、前記ろ布ベルト4の上から、テンションをかけられた前記ろ布ベルト4で圧搾され脱水された後の汚泥をさらに圧搾し脱水をする。前記外部加圧ローラ5による圧搾により脱水され、脱水により生じたろ液53はろ液回収受け台23に落下し、前記ろ液回収受け台23の底面に沿って流下して廃液容器24に回収される。
【0023】
前記外部加圧ローラ5の前記付勢手段21は、前記外部加圧ローラ5を前記転写ローラ2側に押圧をかける手段であればいずれでもよく、例えば、一端を前記外部加圧ローラ5と離隔した位置に設けた支点と回転自在に連結し他端を前記外部加圧ローラ5の中心軸と回転自在に連結した棒状体に対して押圧方向への付勢力を有するバネを備えた構成、又は、一端を前記外部加圧ローラ5と離隔した位置に設けた支点と回転自在に連結し他端を前記外部加圧ローラ5の中心軸と回転自在に連結した棒状体を備えて前記外部加圧ローラ5自体の重量を押圧をかけられるレベルまでの重量にするなどがある。
【0024】
一方、前記外部加圧ローラ5により脱水された汚泥は前記転写ローラ2の外周面に脱水汚泥52となって写し取られる。写し取られた脱水汚泥52は前記転写ローラ2の回転とともに移動する。そして、前記転写ローラ2に写し取られた脱水汚泥52は、前記ろ布ベルト4側に押し付ける付勢力を有するバネ等の付勢手段(図示なし)を備えたスクレーパー6aにより剥ぎ取られ、脱水汚泥容器22に回収される。一方、前記転写ローラ2の外周面に写し取られずに前記ろ布ベルト4に付着したまま移動している脱水汚泥52は、前記ろ布ベルト4側に押し付ける付勢力を有するバネ等の付勢手段(図示なし)を備えたスクレーパー6bにより剥ぎ取られ、脱水汚泥容器22に回収される。
【0025】
そして、前記ろ布ベルト4は、次の新たな水分を含む汚泥51を載せるために前記汚泥移載装置12に向けて走行する。前記汚泥移載装置12の上流側において、前記ろ布ベルト4に水54を噴射させて前記ろ布ベルト4を洗浄する洗浄手段9を設けている。前記洗浄手段9は、前記ろ布ベルト4の空隙などに付着している脱水汚泥52を洗い流す。洗い流した水54はろ液回収受け台23に落下し、前記ろ液回収受け台23の底面に沿って流下して廃液容器24に回収される。
【0026】
次に、本発明の汚泥脱水処理装置1の特徴である前記転写ローラ2について説明する。前記転写ローラ2は、図4に示すように、頂点Kにおける内角Dが鈍角の正多角形状を有する。一方、比較例として、従来の転写ローラ3は、図3図6図8図9及び図11に示すように円形状を有する。
【0027】
比較例として、従来の転写ローラ3と1枚の無端帯状のろ布ベルト4を備えた汚泥脱水処理装置60の場合は、図3又は図6に示すように、汚泥51を載置したろ布ベルト4は転写ローラ3側に走行してきて、汚泥51は前記転写ローラ3とろ布ベルト4との間に挟入する。円形状の転写ローラ3がテンションをかけられたろ布ベルト4により従動して回転すると、図6に示すように外周面の点Bは位置T3から位置T4に移動する。このように点Bの軌跡は前記転写ローラ3の外周に沿っており、この場合であると前記転写ローラ3の外周面は水分が多く含まれている前記汚泥51に対して前記転写ローラ3と前記ろ布ベルト4との間に挟入を強制させるのではなく、水分が多く含まれている前記汚泥51に対して回転する面を当接させている形態となる。すると、前記水分を多く含んだ汚泥は前記転写ローラ3にぶつかって、前記転写ローラ3の外周面の接線の方向が横方向の範囲に当接する前記汚泥51の部分は前記ろ布ベルト4の走行とともに移動するが、前記転写ローラ3の外周面の接線の方向が下向き向の範囲に当接する前記汚泥51の部分は下向きに移動しようとし前記ろ布ベルト4の走行に同期して移動しにくくなる。
【0028】
すると、汚泥脱水処理装置60を小型化しようと直径を小さくして前記転写ローラ3を小型にした場合は、図8(a)に示すように、水分を多く含んだ汚泥51の上層部が円形状の前記転写ローラ3の部位B1の接線方向S1の面にぶつかり、水分を多く含んだ汚泥51の下層部が円形状の前記転写ローラ3の部位B2の接線方向S2の面にぶつかる。前記ろ布ベルト4に近い下層部の前記水分を多く含んだ汚泥51は、図8(a)、(b)に示すように、接線方向S2の方向に移動し前記ろ布ベルト4の走行に引っ張られて前記転写ローラ3と前記ろ布ベルト4との間に挟入していくが、移動してきた前記汚泥51の上層部は、図8(a)、(b)に示すように、前記転写ローラ3にぶつかると斜め下向きの方向である前記接線方向S1の方向に移動するので、後続する上流側から移動してくる汚泥51の進行方向を遮るようになり、前記転写ローラ3と前記ろ布ベルト4との間に円滑に挟入できず、前記円滑に挟入できない汚泥に、上流側の汚泥移載装置12から新たな水分の多い汚泥51が到達して、かつ一部の汚泥51は方向Mである上流側に押し戻されて、矢印Zに示すように堆積状態になり、脱水ができないという問題があった。
【0029】
この対応として、従来は、前記転写ローラ3の直径を大きくして汚泥脱水処理装置60を大型化している。この場合は、図9に示すように、汚泥移載装置12から移動してくる水分を多く含んだ汚泥51の高さを前記小型の汚泥脱水処理装置60の場合と略同じとすると、水分を多く含んだ汚泥51の上層部が、大きい直径の大型転写ローラ3aの下端近傍にぶつかるようになり、小型の転写ローラ3のときの接線方向S1より横向きになった接線方向S3の方向に移動することになり、汚泥移載装置12から移動してきた水分を多く含む汚泥51が円滑に前記大型転写ローラ3aと前記ろ布ベルト4との間に挟入するようになる。
【0030】
また、前記転写ローラ3の直径を大きくした前記大型転写ローラ3aにすると、前記ろ布ベルト4のテンションを小型の汚泥脱水処理装置60の場合と略同じになるようにするため、前記ろ布ベルト4にかけるテンションを大きくしなければならない等の大型化に伴う仕様変更が生ずる。このため、汚泥脱水処理装置60が大型化し高価格になるという問題があった。
【0031】
そこで、発明者は汚泥脱水処理装置1の小型化に取り組み、前記汚泥移載装置12から移動してくる汚泥51を小型の転写ローラ2ですべて挟入させることができれば小型化ができると考え、本発明を想到した。
【0032】
次に、本発明の汚泥脱水処理装置は、図1図2又は図4に示すように、テンションをかけられながら走行する1枚の無端帯状のろ布ベルト4と、テンションがかかった前記ろ布ベルト4により外周面に押圧をかけられる転写ローラ2とを備え、前記ろ布ベルト4と前記転写ローラ2との間に挟まれた汚泥51を圧搾して脱水する汚泥脱水処理装置1であって、前記転写ローラ2の外郭形状が、内角Dが鈍角の正多角形状を有し、回転移動する前記ろ布ベルト4上に載置されて前記転写ローラ2側に移動してくる前記汚泥51が前記転写ローラ2と前記ろ布ベルト4との間に進入する部位における、前記転写ローラ2の正多角形の1辺と前記ろ布ベルト4とのなす角度Eが鋭角である装置である。
【0033】
前記転写ローラ2の外郭形状は、図4又は図10に示すように、頂点K、頂点K1又は頂点K2における内角Dが90°超の鈍角である正多角形であり、内角が90°超の鈍角である正多角形であればいずれの正多角形でもよい。
【0034】
図4に示すように、前記ろ布ベルト4が方向Xに走行し従動ローラである前記転写ローラ2が方向Yに回転する場合に、前記汚泥移載装置12から移動してくる水分を多く含んだ汚泥51が前記転写ローラ2と前記ろ布ベルト4との間に挟入する部位Hまできたら、図5に示すように、前記転写ローラ2が回転すると、例えば点Aが位置T1から位置T2に移動すると、点Aが位置T1の時は、点Aが含まれる辺28の下方側の頂点Kが再下限の高さである位置T12にあるときを示した図7(a)に示すように、点Aが含まれる辺28で水分を多く含んだ汚泥51の、下面から上面までの全範囲を受けとめ、点Aが位置T2の時は図7(b)に示すように点Aが含まれる辺28で水分を多く含んだ汚泥51を前記ろ布ベルト4側に押さえながら下流側に押すように移動させることができる。これにより、前記転写ローラ2の辺28が前記水分を多く含んだ汚泥51を強引に押さえながら移動させる押し込み面の機能を有するので、前記大型転写ローラ3aの場合のように大型化する必要がないので、前記転写ローラ2を小型化でき、これにより汚泥脱水処理装置1を小型化できるという効果を奏する。
【0035】
また、本発明の汚泥脱水処理装置1は、前記汚泥51が前記転写ローラ2と前記ろ布ベルト4との間に挟入開始した部位から下流側の前記汚泥51が挟まれている、前記転写ローラ2の正多角形の所定の一辺の部位に対して押圧方向の付勢力を有する付勢手段21を備えた円形状の外部加圧ローラ5を備え、押圧をかけられた前記外部加圧ローラ5により前記所定の一辺の部位と前記ろ布ベルト4との間に挟まれた前記汚泥51を圧搾して脱水させる装置である。
【0036】
ここで、従来の外郭形状が円形状の前記転写ローラ3の場合、図11に示すように、円形状の前記転写ローラ3の外周面を巻き回すろ布ベルト4との間に挟入されている汚泥51は、外部加圧ローラ5で押圧をかけられると前記転写ローラ3の外周面と前記ろ布ベルト4との間で前記外部加圧ローラ5が押圧をかけていない圧力の弱い方に移動するため、移動した汚泥51が回転する前記転写ローラ3と前記ろ布ベルト4に挟入されながら移動してきた汚泥51に合流して体積が大きくなり、矢印Qに示すように、前記転写ローラ3のサイドから前記汚泥51がはみ出て脱水ができないという問題があった。
【0037】
本発明の外郭形状が正多角形状の前記転写ローラ2の場合は、図10に示すように、頂点K1又は頂点K2における内角が鈍角の正多角形状を有する前記転写ローラ2の外周面を巻き回す前記ろ布ベルト4との間に挟入されている水分を含んだ汚泥51は、前記外部加圧ローラ5で押圧をかけられたときに、前記転写ローラ2の外周面の一辺の両側の頂点K1と頂点K2における前記ろ布ベルト4との間隔が極めて狭くなるので挟入されている前記水分を含む汚泥51の隣の辺への移動を阻止できるため、あとから移動してくる水分を含む汚泥51と合流することがなく、前記頂点K1と頂点K2を有する辺の間に存する、小さい体積の水分を含む汚泥51をしっかりと圧搾して脱水でき、水分を含んだ汚泥51から水分をさらに減じた脱水汚泥52を分離できるという効果を奏する。
【0038】
よって、本発明の内角Dが鈍角の正多角形状を有する前記転写ローラ2を備えた汚泥脱水処理装置1は、前記転写ローラ2を小型化できるので装置全体を小型化でき、汚泥51の脱水をしっかりとできる。
【符号の説明】
【0039】
1 汚泥脱水処理装置
2 転写ローラ
3 転写ローラ
3a 大型転写ローラ
4 ろ布ベルト
5 外部加圧ローラ
6 スクレーパー
7 回転駆動手段
8 張力発生手段
9 洗浄手段
11 汚泥移送管
12 汚泥移載装置
13 駆動ローラ
14 従動ローラ
21 付勢手段
22 脱水汚泥容器
23 ろ液回収受け台
24 廃液容器
28 辺
31 重力脱水部
32 加圧脱水部
51 汚泥
52 脱水汚泥
53 ろ液
54 水
60 汚泥脱水処理装置
K 頂点
【要約】
【課題】1枚の無端帯状のろ布を使用して、汚泥などの水分を含んだ被処理物を大きさが小さい転写ローラで脱水させる汚泥脱水処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】テンションをかけられながら回転移動する1枚の無端帯状のろ布ベルトと、テンションがかかったろ布ベルトにより外周面に押圧をかけられる転写ローラとを備え、ろ布ベルトと転写ローラとの間に挟まれた汚泥を圧搾して脱水する汚泥脱水処理装置であって、転写ローラの外郭形状が、内角が鈍角の正多角形状を有し、回転移動する前記ろ布ベルト上に載置されて転写ローラ側に移動してくる汚泥が転写ローラとろ布ベルトとの間に進入する部位における、転写ローラの正多角形の1辺とろ布ベルトとのなす角度が鋭角である汚泥脱水処理装置により課題解決ができた。
【選択図】 図2
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
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図9
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図11