(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】散水ホース
(51)【国際特許分類】
E01H 3/04 20060101AFI20231107BHJP
E01C 11/26 20060101ALI20231107BHJP
B05B 1/20 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
E01H3/04 Z
E01C11/26 B
B05B1/20 101
(21)【出願番号】P 2023011488
(22)【出願日】2023-01-30
【審査請求日】2023-07-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513160545
【氏名又は名称】エクスト化成有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 幸一
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-037922(JP,U)
【文献】実開昭61-152015(JP,U)
【文献】実開平01-124817(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 3/04
5/10
E01C 11/26
B05B 1/20
E04D 1/30
E04H 9/16
A01G 25/02
F16L 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が水道の蛇口等の水の供給手段と接続できるように形成されて他端は閉塞した通水路を内包し、地面に接する底面と、前記通水路を介して供給される水が放出される少なくともひとつの散水面を有する長尺の散水ホースであって、
その短手方向の断面をみると前記底面と前記散水面のなす角が鋭角となるように形成されるとともに、
前記散水面の表面には、該散水ホースの長手方向に応じた凹条が設けられており、前記通水路と前記凹条を連通させる噴射孔が間隔をおいて複数穿たれ、前記凹条の開口部分が散水部となるように形成され
、
前記散水部を構成する凹条の開口部分は、前記凹条の開口の上方側端縁を開口の下方側端縁に向けて延伸させて噴射孔から噴射された水の方向を規制するための平板状の遮蔽部を備えており、前記遮蔽部の先端と前記凹条の開口の下方側端縁により水が外部に放出される散水部が形成されていることを特徴とする散水ホース。
【請求項2】
前記遮蔽部の表面が前記散水面の表面の一部をなすように段差なく設けられていることを特徴とする請求項1に記載の散水ホース。
【請求項3】
前記噴射孔は略水平に形成されて前記通水路と前記凹条を連通させることを特徴とする請求項2に記載の散水ホース。
【請求項4】
該散水ホースの短手方向の断面をみると、散水部を構成する前記凹条の下方側端縁の位置は、前記凹条の最も低い位置よりも高い位置になるように設定されて、凹条の地面に近い部分は凹条の開口の下方側端縁と凹条の最も低い位置を結ぶ斜め上方に向かって傾斜した平面になるように形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の散水ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に融雪、消雪に使用する散水ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、積雪地域における道路や駐車場などに配設される消雪用の水を噴射するノズルを備えた金属製パイプや、水を噴射する孔を有する樹脂製ホースが提案されている。
【0003】
特許文献1には、接地面に対して中央部が盛り上がり、その両端部がなだらかな曲線を描いて両端に終わる断面山形をなし、体内に通水路を設けた可撓性材料よりなるホース本体と、撒水孔を穿った散水ノズルとよりなり、該散水ノズル複数個を適宜間隔をおいて前記ホースの両側から通水路に貫通して固定した融雪用散水ホースが開示されている。
しかしながら、ホース本体に穿たれた撒水孔から噴射される水の噴射範囲は限定され、広角にはならず、通水路に供給される水の圧力が変わらなければ、積雪の一点のみに噴射され続けることになるので非効率である。そのため、積雪に対して広範囲に水を噴射させるためには、多くの撒水孔が必要となり、撒水孔同士の間隔を狭くする必要があるので、多くの水を使用することになる。
また、撒水孔は水平面に対して、斜め上方に穿たれているので、通水路に供給される水の水圧が高いと、高く噴射されて該ホースの近くを通行する人にかかってしまう問題も生じる。
【0004】
特許文献2には、消雪ホースや消雪パイプなどの消雪水散水用管材の周面に形成される散水孔に外側から挿入して内側に係止する抜け止め係止部と、この抜け止め係止部の上部に設けられ、前記散水孔から噴出する散水を遮り、散水方向を横方向にて放射方向に規制する水規制部とからなる消雪水散水用管材に付設される散水具が開示されている。
しかしながら、消雪ホースから突出するように散水具の水規制部が設けられていると、消雪ホースの設置場所によっては、自動車のタイヤに踏まれて散水具が破損するおそれや、踏んだタイヤが傷ついてしまうおそれが生じる。
また、
図11に示されたような従来の散水ホースは、不使用時にはコンパクトに巻きまわすなどして収納しておくことが可能であるが、ホースから可撓性を有しないノズル(散水具)が突出した状態では、不使用時にコンパクトに巻きまわすなどして収納しておくことが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実全昭61-152015号公報
【文献】特開2004-76560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術に係る上述のような問題点を鑑み、本発明の目的は、散水量の抑制と広範囲の散水による効率の良い消雪を両立するとともに、従来の散水ホースのメリットである不使用時には小さくまとめて収納できる散水ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の散水ホースは、一端が水道の蛇口等の水の供給手段と接続できるように形成されて他端は閉塞した通水路を内包し、地面に接する底面と、前記通水路を介して供給される水が放出される少なくともひとつの散水面を有する長尺の散水ホースであって、その短手方向の断面をみると前記底面と前記散水面のなす角が鋭角となるように形成されるとともに、前記散水面の表面には、該散水ホースの長手方向に応じた凹条が設けられており、前記通水路と前記凹条を連通させる噴射孔が間隔をおいて複数穿たれ、前記凹条の開口部分が散水部となるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
そして、本発明の散水ホースの散水部を構成する凹条の開口部分は、前記凹条の開口の上方側端縁を開口の下方側端縁に向けて延伸させて噴射孔から噴射された水の方向を規制するための平板状の遮蔽部を備えており、前記遮蔽部の先端と前記凹条の開口の下方側端縁により水が外部に放出される散水部が形成されているとともに、前記遮蔽部の表面が前記散水面の表面の一部をなすように段差なく設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の散水ホースの噴射孔は略水平に形成されて前記通水路と前記凹条を連通させることを特徴とし、該散水ホースの短手方向の断面をみると、散水部を構成する前記凹条の下方側端縁の位置は、前記凹条の最も低い位置よりも高い位置になるように設定されて、凹条の地面に近い部分は凹条の開口の下方側端縁と凹条の最も低い位置を結ぶ斜め上方に向かって傾斜した平面になるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の散水ホースに比べ、通水路内の水圧が高くなっても、散水される水の高さを低く抑えたまま、噴射孔の噴射方向に対して広範囲で、散水ホースから離れた位置まで散水できるので、消雪に用いる場合、消雪速度の向上と散水量の抑制を両立するので効率のより消雪が可能になるとともに、近くを通行する人に水がかかってしまうような不具合を解消する。
また、先行技術のように、散水を広範囲にするための部材も不要で、表面に突起物もないので、自動車に踏まれるなど、大きな荷重が付与されて変形しても破損することなく、不使用時には小さくまとめて収納できる散水ホースを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態の散水ホースの概要を示す断面斜視図。
【
図2】本発明の実施の形態の散水ホースの概要を示す断面斜視図。
【
図3】本発明の実施の形態の散水ホースの概要を示す断面図。
【
図4】本発明の実施の形態の散水ホースの散水機構を示す断面図。
【
図5】本発明の実施の形態の散水ホースの散水機構を示す断面図。
【
図6】本発明の実施の形態の散水ホースと従来の散水ホースを比較した図。
【
図7】本発明の実施の形態の散水ホースと従来の散水ホースを比較した図。
【
図8】本発明の実施の形態の散水ホースと従来の散水ホースを比較した図。
【
図9】本発明の実施の形態の散水ホースの散水機構を示す断面図。
【
図10】本発明の実施の形態とは別の形態の散水ホースを示す図。
【
図11】本発明の実施の形態の一形態の概要を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施の形態における、散水ホース1(1a)の概要を示す断面を示す斜視図であり、
図2は散水ホース1(1b)の断面を示す斜視図であり、
図3は散水ホース1aの断面図である。
【0013】
(散水ホースの概要)
本実施の形態の散水ホース1は、可撓性を有する軟質のポリ塩化ビニール(PVC)による押出成形によって形成されており、不使用時には巻きまわして小さくまとめて収納することができるとともに、自動車に踏まれるなど、大きな荷重が付与されて変形しても、元の形状に戻るので破損を生じない。
ここで、本実施の形態の散水ホース1は、加工の容易性とコストを鑑みて素材に軟質のポリ塩化ビニール(PVC)を採用しているが、ABS樹脂等、その他の熱可塑性樹脂でも成形は可能で、素材の選択は適宜選択可能である。
【0014】
本実施の形態の散水ホース1は、短手方向の断面(以下、断面と記載する)が略三角形を呈する長尺物であり、その長さに応じた通水路10を内包している。散水ホース1が内包する通水路10の一端は、従来の消雪用の散水ホース(
図12参照)と同様に水道の蛇口等と接続して通水路10に水を供給できるように形成されており、他端は閉塞されている。
散水ホース1の断面略三角形を構成する三面のうち、一つの面を底面Bとし、地面に接するように配設して他の二面(傾斜面)のうち、少なくとも一方から通水路10に供給される水が散水される散水面S(S1、及び又は、S2)を構成することとなる。
散水ホースの断面を略三角形とすることにより、断面が略円形となるような一般的なホースと異なり、安定した設置と散水方向を一定にすることが可能となる。
図1及び
図3に示した散水ホース1aは、二面が散水面S(S1、S2)として形成され、
図2に示した散水ホース1bは、一面が散水面S1として形成されている。
【0015】
(散水機構について)
図4は、本実施形態の散水ホース1における散水機構Mを示す図である。散水機構Mは、散水用の水をホースの長手方向に供給する通水路10と、散水ホース1の断面をみると散水面S(S1)から通水路10の方向に向けて凹条11が形成されている。そして、通水路10と凹条11を連通するように噴射孔12が穿たれており、該噴射孔12は、散水ホース1の長手方向に適宜間隔をおいて複数設けられている。
なお、本実施の形態の散水ホース1では隣り合う噴射孔12同士の間隔は約50cmに設定されており、従来の散水ホースに比較して間隔が広くとられていることが特徴である。
そして、水が供給されて通水路10内の圧力が上昇すると、水が噴射孔12を介して凹条12に向けて噴射されるが、ここで、本実施の形態の散水ホース1における散水機構Mでは、水の噴射方向(
図4(b)における一点鎖線参照)を遮るように遮蔽部13が設けられており、遮蔽部13によって凹条11の開口が狭められることにより、噴射孔12から噴射された水は放出方向が規制されるとともに勢いよく放出されるように形成されている。
【0016】
(散水を低く抑えるしくみ)
本実施の形態における散水機構Mを構成する遮蔽部13は、凹条11の開口の上方側端縁11euを開口の下方側端縁に向けて延伸させたように形成された平板状を呈しており、その表面は散水面S(S1)の表面の一部をなして段差なく形成されるとともに、遮蔽部13の先端と凹条の開口の下方側端縁11elにより噴射孔12噴射された水を外部に放出するための開口である散水部Oを形成するように設けられている(
図5)。
本実施の形態における散水機構Mの散水部Oの開口幅Ow(遮蔽部13の先端と凹条の開口の下方側端縁11elとの距離)は2mmに設定されている(
図6参照)。
ここで、本実施の形態の散水機構Mの噴射孔12の径は3mmに設定されている。これは、本発明の発明者がテストを繰り返すことにより見出したものであり、散水部Oの開口幅Owとの関係で、Ow<噴射孔の径≦(2×Ow)の範囲に収まる構成となっており、通水路10に供給される水の勢い(通水路10内の圧力)が低い状態から高い状態まで所望する散水が可能となる。
【0017】
また、本実施の形態の散水ホース1の散水機構Mの噴射孔12(通水路10からの水の噴射方向)は、略水平に設定されている。これは、
図5に示すように、噴射孔12を介して噴射された水を、表面は散水面S(S1)の表面の一部をなして段差なく形成される遮蔽部13(の裏面)に衝突したあと、スムーズに下方へ導く効果を目的としたものである。
散水面Sの表面の一部をなすように設けられた平板である遮蔽部13と略水平に設けられた噴射孔12により、通水路内の圧力を上昇させても散水の上下方向の角度を低く抑えることが可能となる。
従来の通水路と散水面に連通した噴射孔を有するのみの散水ホース(
図12参照)では、通水路内の圧力を高めていくと、地面から高く、散水ホースから遠くに噴射されることになり、噴射された水が通行人にかかるような問題が生じるが、本実施の形態の散水ホース1では、散水方向が低く抑えられるのでそのような問題は生じない。
【0018】
(噴射孔からの噴射方向に対して広角に散水するしくみ)
つぎに、本実施の形態における散水ホース1の散水機構Mは、
図6に示すように、断面をみると遮蔽部13の存在により凹条11の上下長が最も長い部分の長さ11v(凹条11の最大上下長11v)よりも散水部Oの開口幅Owが狭く形成されており、噴射孔12から噴射された水は狭められた開口となった散水部Oの形状に対応して鉛直方向に薄く、散水方向に対して広角に(広範囲に)散水面Sから勢いよく放出される(
図7参照)。
これは、断面が円形の一般的な軟質の塩化ビニールで製造されたホースの先端を指で上下方向に潰して開口を狭めるように持つと、噴射方向が略水平の場合、水が鉛直方向に薄く、横方向に広がるように噴射される構造と類似する。
図7と
図8は、本実施の形態の散水ホース1と、従来の散水ホースによる散水状況の違いを示しており、
図7は、散水中の散水ホースを上方から地面に向けて鉛直方向にみた図であり、
図8は、散水中のホースの断面を水平方向にみた図である。
これらの図から分かるように、散水方向に対して広角に散水される本実施の形態の散水ホース1は、噴射孔12同士の間隔を従来の散水ホースよりも広く設定することができるので、散水孔の数を少なくするとともに、消雪を目的とした場合には広い範囲の雪を消雪することができるので、散水量・散水時間の抑制に奏功する。
【0019】
(散水ホースから離れた位置まで散水するためのしくみ)
図9は、本実施の形態の散水ホース1の散水機構Mの断面を示す図であり、散水部Oを構成する凹条の開口の下方側端縁11elと、凹条の最も低い位置11bとの高さの関係を示しており、凹条の開口の下方側端縁11elは、凹条の最も低い位置11bよりも高い位置に設定され、凹条11の地面に近い部分は凹条の開口の下方側端縁11elと凹条の最も低い位置11bを結ぶ斜め上方に向かって傾斜した平面になるように形成されている。
これは、散水面Sから水が放出される方向を制御する作用があり、遮蔽部13により散水される高さを抑制した状態を維持しながら、散水部O(散水部開口)の断面積を小さくすることで放出される勢いが強くなった水が散水ホースから離れた位置まで届く効果を有する。(
図9中の一点鎖線が、水が放出される方向を示している)。
【0020】
(第1の実施の形態とは別の外観形状を有する散水ホース)
ここで、本発明の第1の実施の形態は、断面が略三角形となるような散水ホース1であったが、
図10に示すように断面をみると地面側に配される下底の長さよりも上底の長さが短い略台形を呈していてもよい。
その他の構成は、上述の断面略三角形の散水ホース1と同様であり、詳しい説明は省略する。
図10に例示したように本発明の散水ホースは、通水路を内包しており、地面に接する底面と、通水路から供給される水が放出される少なくとも一つの散水面有する長尺であり、外観はその断面をみると、底面と散水面のなす角が鋭角となるように形成されていればよく、断面の形状は略三角形や略台形に限定されるものではない。
【0021】
本発明の散水ホース1の遮蔽部13は、散水ホース1の本体部分と同一の色・硬度・素材により押出成形により形成されるだけでなく、共押出成形法により散水ホース1の本体とは異なる色・硬度・素材により形成することも可能であり、その成形方法は適宜選択可能である。そのため、
図11に示すように、押出用の金型の形状に微調整を行うことにより、遮蔽部13の先端を凹条11の開口の下方側端縁11elよりも外側に広げるなど、所望する散水状態を創出することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1,1a,1b 本発明の散水ホース、
10 通水路、
11 凹条、
11b 凹条の最も低い位置、
11el 凹条の開口の下方側端縁、
11eu 凹条の開口の上方側端縁、
11v 凹条の最大上下長、
12 噴射孔、
13 遮蔽部、
B 底面、
M 散水機構、
O 散水部、
Ow 散水部の開口幅、
S,S1,S2 散水面
【要約】
【課題】 散水量の抑制と広範囲の散水による効率の良い消雪を両立するとともに、従来の散水ホースのように不使用時には小さくまとめて収納できる散水ホースを提供する。
【解決手段】 一端が水道の蛇口等の水の供給手段と接続できるように形成されて他端は閉塞した通水路10を内包し、地面に接する底面Bと、通水路10を介して供給される水が放出される少なくともひとつの散水面Sを有する長尺の散水ホース1であって、その断面をみると底面Bと散水面Sのなす角が鋭角となるように形成されるとともに、散水面Sの表面には、該散水ホース1の長手方向に応じた凹条11が設けられており、通水路10と凹条11を連通させる噴射孔12が間隔をおいて複数穿たれている。
【選択図】
図1