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特許7378862ピアスポスト、ピアスおよびピアスポストの取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ピアスポスト、ピアスおよびピアスポストの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   A44C 7/00 20060101AFI20231107BHJP
   A44C 17/02 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A44C7/00 A
A44C17/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023068621
(22)【出願日】2023-04-19
【審査請求日】2023-04-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503175966
【氏名又は名称】株式会社クロスフォー
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】土橋 秀位
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-027318(JP,U)
【文献】実開平05-043907(JP,U)
【文献】特開2004-097329(JP,A)
【文献】特開2004-195161(JP,A)
【文献】特開2001-087016(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0810211(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 7/00
A44C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宝飾品を保持する保持枠に取り付けられるピアスポストであって、
前記保持枠より硬度の高い高硬度材料により形成されたポスト本体と、
前記ポスト本体の一端側に設けられ、前記保持枠に嵌入される嵌入部と、
前記ポスト本体における前記嵌入部よりも前記ポスト本体の他端側に設けられた拡径部と
を備え
前記嵌入部は、
前記ポスト本体の前記一端側に延在する嵌入部本体と、
前記嵌入部本体の先端側に設けられ、前記嵌入部本体の外形よりも径方向に突出した部分を有する突出部とを含み、
前記拡径部は、前記嵌入部本体及び前記ポスト本体よりも径が大きい、
ピアスポスト。
【請求項2】
前記嵌入部は、前記高硬度材料により前記ポスト本体と一体に形成される、
請求項1に記載のピアスポスト。
【請求項3】
前記突出部の先端面の中心部分に、前記宝飾品の尖端部分が嵌め込まれる凹部が設けられる、
請求項1または請求項2に記載のピアスポスト。
【請求項4】
前記凹部は半球形である、
請求項3に記載のピアスポスト。
【請求項5】
前記突出部の先端には、先端側へ凸形の曲面が構成されている、
請求項1または請求項2に記載のピアスポスト。
【請求項6】
宝飾品を保持する保持枠と、前記保持枠に取り付けられるピアスポストと、を備えるピアスであって、
前記ピアスポストは、
前記保持枠より硬度の高い高硬度材料により形成されたポスト本体と、
前記ポスト本体の一端側に設けられ、前記保持枠に嵌入される嵌入部と、
前記ポスト本体における前記嵌入部よりも前記ポスト本体の他端側に設けられた拡径部と
を有し、
前記嵌入部は、
前記ポスト本体の前記一端側に延在する嵌入部本体と、
前記嵌入部本体の先端側に設けられ、前記嵌入部本体の外形よりも径方向に突出した部分を有する突出部とを含み、
前記拡径部は、前記嵌入部本体及び前記ポスト本体よりも径が大きく、
前記ピアスポストは前記嵌入部の前記保持枠への嵌入によって前記保持枠に取り付けられる、
ピアス。
【請求項7】
前記嵌入部は、前記高硬度材料により前記ポスト本体と一体に形成される、
請求項6に記載のピアス。
【請求項8】
前記突出部の先端面の中心部分に、前記宝飾品の尖端部分が嵌め込まれる凹部が設けられる、
請求項6または請求項7に記載のピアス。
【請求項9】
前記凹部は半球形である、
請求項8記載のピアス。
【請求項10】
前記突出部の先端には、先端側へ凸形の曲面が構成されている、
請求項6または請求項7に記載のピアス。
【請求項11】
宝飾品を保持する保持枠にピアスポストを取り付ける方法であって、
前記ピアスポストは、
前記保持枠より硬度の高い高硬度材料により形成されたポスト本体と、
前記ポスト本体の一端側に設けられ、前記保持枠に嵌入される嵌入部と、
前記嵌入部の先端側に設けられ、外方に突出する突出部と、
を有し、
前記保持枠に設けられた下孔に前記嵌入部を嵌入する工程と、
前記嵌入部の嵌入によって前記下孔の縁が嵌入方向に盛り上げられた部分を潰し、前記突出部よりも前記ポスト本体の後端側に押し込む工程と、
を備えるピアスポストの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアスの装飾体に取り付けられるピアスポスト、ピアスおよびピアスポストの取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピアスは、装飾体に取り付けられたピアスポストを耳たぶ等に設けた孔に挿入して固定する装身具である。特許文献1には、貴金属パイプに対して転造による絞り加工を施すことにより、貴金属パイプの先端を閉塞するとともに、貴金属パイプの長さ方向の適所に周溝を形成したことを特徴とするピアスポストが記載されている。このピアスポストは、貴金属パイプを用いて構成されるため、使用する貴金属の量が少なくなり原価を低減できる。また、装飾体をピアスポストに対してロウ付けする際に、貴金属パイプが薄肉であるためロウ材の溶解時間が短くなり、ロウ付け作業を素早く完了できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平3-116106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のピアスでは、上述した特許文献1に記載されるように、装飾体とピアスポストをロウ付けにより接合させているものが多い。しかしながら、装飾体とピアスポストとの接合部分は非常に小さいため、美観を損なわずにロウ付けを行うには熟練した技術が必要であり、経験の乏しい作業者ではロウ付け作業を行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装飾体へ取り付けるためのロウ付け作業が不要なピアスポスト、そのようなピアスポストを備えたピアス、および、そのようなピアスポストの取り付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、宝飾品を保持する保持枠に取り付けられるピアスポストであって、保持枠より硬度の高い高硬度材料により形成されたポスト本体と、ポスト本体の一端側に設けられ、保持枠に嵌入される嵌入部と、ポスト本体における嵌入部よりもポスト本体の他端側に設けられた拡径部とを備え、嵌入部は、ポスト本体の一端側に延在する嵌入部本体と、嵌入部本体の先端側に設けられ、嵌入部本体の外形よりも径方向に突出した部分を有する突出部とを含み、拡径部は、嵌入部本体及びポスト本体よりも径が大きい、ピアスポストである。
【0007】
このような構成によれば、ポスト本体が保持枠より硬度の高い高硬度材料により形成されるため、ポスト本体を保持枠に対して嵌入により取り付けることが可能であり、ロウ付け作業が不要になる。
【0008】
また、嵌入部を保持枠に嵌入した際、突出部が保持枠に引っ掛かるいわゆる「返し」としての役目を果たす。
【0009】
また、ポスト本体の嵌入部を保持枠に嵌入する際、拡径部が保持枠に当接することでストッパとなって嵌入の位置が安定する。
【0010】
好適には、嵌入部は、高硬度材料によりポスト本体と一体に形成される。これにより、ポスト本体と嵌入部とが高硬度材料により形成された一つの部品として構成される。
【0011】
好適には、突出部の先端面の中心部分に、宝飾品の尖端部分が嵌め込まれる凹部が設けられる。これにより、突出部の先端面の中心部分に設けられた凹部に宝飾品の尖端部分が嵌め込まれ、宝飾品を安定して固定することができる。
【0012】
好適には、凹部は半球形である。ブリリアントカットが施された宝飾品の場合には、その尖端部分の角度が98.5度付近の角度となる。凹部が半球形になっていると、凹部に宝飾品の尖端部分が嵌め込まれた際、ブリリアントカットの尖端が凹部の底面に当たる前に凹部の縁が宝飾品に接触する。これにより、凹部の縁において宝飾品が安定的に支持される。
【0013】
本発明の第2の態様は、宝飾品を保持する保持枠と、保持枠に取り付けられるピアスポストと、を備えるピアスであって、ピアスポストは、保持枠より硬度の高い高硬度材料により形成されたポスト本体と、ポスト本体の一端側に設けられ、保持枠に嵌入される嵌入部と、ポスト本体における嵌入部よりもポスト本体の他端側に設けられた拡径部とを有し、嵌入部は、ポスト本体の一端側に延在する嵌入部本体と、嵌入部本体の先端側に設けられ、嵌入部本体の外形よりも径方向に突出した部分を有する突出部とを含み、拡径部は、嵌入部本体及びポスト本体よりも径が大きく、ピアスポストは嵌入部の保持枠への嵌入によって保持枠と接続される、ピアスである。
【0014】
このような構成によれば、ポスト本体が保持枠より硬度の高い高硬度材料により形成されるため、ポスト本体を保持枠に対して嵌入により取り付けることが可能であり、ロウ付け作業が不要になる。
【0015】
また、嵌入部を保持枠に嵌入した際、突出部が保持枠に引っ掛かるいわゆる「返し」としての役目を果たす。
【0016】
また、ポスト本体の嵌入部を保持枠に嵌入する際、拡径部が保持枠に当接することでストッパとなって嵌入の位置が安定する。
【0017】
好適には、嵌入部は、高硬度材料によりポスト本体と一体に形成される。これにより、ポスト本体と嵌入部とが高硬度材料により形成された一つの部品として構成される。
【0018】
好適には、突出部の先端面の中心部分に、宝飾品の尖端部分が嵌め込まれる凹部が設けられる。これにより、突出部の先端面の中心部分に設けられた凹部に宝飾品の尖端部分が嵌め込まれ、宝飾品を安定して固定することができる。
【0019】
好適には、凹部は半球形である。ブリリアントカットが施された宝飾品の場合には、その尖端部分の角度が98.5度付近の角度となる。凹部が半球形になっていると、凹部に宝飾品の尖端部分が嵌め込まれた際、ブリリアントカットの尖端が凹部の底面に当たる前に凹部の縁が宝飾品に接触する。これにより、凹部の縁において宝飾品が安定的に支持される。
【0020】
本発明の第3の態様は、宝飾品を保持する保持枠にピアスポストを取り付ける方法であって、ピアスポストは、保持枠より硬度の高い高硬度材料により形成されたポスト本体と、ポスト本体の一端側に設けられ、保持枠に嵌入される嵌入部と、嵌入部の先端側に設けられ、外方に突出する突出部と、を有し、保持枠に設けられた下孔に嵌入部を嵌入する工程と、嵌入部の嵌入によって下孔の縁が嵌入方向に盛り上げられた部分を潰し、この潰した部分を突出部よりもポスト本体の後端側に押し込む工程と、を備えるピアスの取り付け方法である。
【0021】
この方法によれば、保持枠の下孔にポスト本体の嵌入部が嵌入された後、この嵌入によって形成された下孔の縁の盛り上がり部分が潰されて、突出部よりもポスト本体の後端側に押し込まれる。これにより、突出部よりも後端側に押し込まれた保持枠の一部が突出部に対して引っ掛かるようになるため、ピアスポストが保持枠から抜け難くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、装飾体へ取り付けるためのロウ付け作業が不要なピアスポスト、そのようなピアスポストを備えたピアス、および、そのようなピアスポストの取り付け方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態にかかるピアスポストおよびピアスを例示する正面図である。
図2図2は、本実施形態に係るピアスポストおよびピアスを例示する分解正面図である。
図3図3は、ピアスポストの取り付け方法を例示する拡大断面図(その1)である。
図4図4は、ピアスポストの取り付け方法を例示する拡大断面図(その2)である。
図5図5A及び図5Bは、ピアスポストの凹部を例示する図である。
図6図6A及び図6Bは、凹部と宝飾品との位置関係を説明する図である。
図7図7A及び図7Bは、ピアスポストの他の取り付け方法を例示する拡大断面図(その1)である。
図8図8は、ピアスポストの他の取り付け方法を例示する拡大断面図(その2)である。
図9図9A及び図9Bは、ピアスポストの他の取り付け方法を例示する拡大断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0025】
(ピアスポストおよびピアス)
図1は、本実施形態にかかるピアスポストおよびピアスを例示する正面図である。
図2は、本実施形態に係るピアスポストおよびピアスを例示する分解正面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係るピアス1は、宝飾品100を保持する保持枠10と、保持枠10に取り付けられるピアスポスト20と、を備える。宝飾品100としては、ダイヤモンドなどの宝石のほか、ガラスや金属などで装飾したものが挙げられる。宝飾品100と保持枠10は、装飾体の一例である。
【0026】
宝飾品100は例えば金属(金、銀、プラチナなど)で形成された保持枠10に保持される。保持枠10は、石座部11と、石座部11から延出する爪部12とを有する。例えば、爪部12は複数本設けられており、石座部11の上に配置された宝飾品100の外周を掴むように配置される。爪部12の先端部分12aを宝飾品100の縁に向けて倒すように折り曲げることで、宝飾品100が上から押さえられ、保持枠10に固定される。爪部12の間に設けられた隙間から光が宝飾品100に差し込み、宝飾品100の輝きを得ることができる。
【0027】
ピアスポスト20は、保持枠10より硬度の高い材料(以下、「高硬度材料」と記す場合がある。)により形成されたポスト本体21と、ポスト本体21の一端側に設けられる嵌入部30とを備える。ピアスポスト20を形成する高硬度材料は、例えばセラミックなどの非金属の材料であってもよいし、保持枠10よりも高硬度の金属材料(合金等)であってもよい。ピアスポスト20がセラミックなどのアレルギーを起こしにくい高硬度材料によって形成されることにより、金属アレルギーなどのアレルギー体質を持つユーザでもピアス1を使用することが可能になる。
【0028】
ポスト本体21は、ピアス1を耳たぶなどに取り付ける際にピアス穴に差し込まれる円柱状の部材である。ポスト本体21の直径は、約0.6mmから約1.0mm(標準的には約0.8mm)である。ポスト本体21の他端側にはキャッチ(図示せず)を嵌める溝21a、21bが設けられる。本実施形態では2つの溝21a、21bが所定間隔で設けられており、耳たぶなどの取り付け部位の厚さに応じてキャッチの取り付け位置を調整できるようになっている。なお、溝21a、21bの個数は2つに限定されず、1つでも3以上でもよい。
【0029】
ポスト本体21は、嵌入部30によって保持枠10の石座部11に嵌入される。ポスト本体21は、嵌入部30による嵌入によって保持枠10に強固に取り付けられる。
【0030】
嵌入部30は、ポスト本体21の一端側に延在する嵌入部本体31を有する。嵌入部本体31の先端側には、外方(径方向)に突出する突出部32が設けられていることが好ましい。突出部32は嵌入部本体31の外形よりも径方向に僅かに突出した部分を有する。例えば、嵌入部本体31は円柱状の形状を持ち、突出部32は嵌入部本体31の直径よりも大きな直径を有する円柱状の形状を持つ。
【0031】
突出部32の先端には曲面(先端側に凸形)が構成されていてもよい。これにより、嵌入部30を保持枠10に嵌入する際、突出部32の先端を押し込みやすくなる。また、嵌入部30を保持枠10に嵌入する際、突出部32によって保持枠10の例えば下孔を押し拡げながら嵌入され、突出部32が下孔を通った後は突出部32がいわゆる「返し」としての役目を果たし、ピアスポスト20の抜けを防止することができる。
【0032】
なお、嵌入部本体31や突出部32の形状は円柱形状に限定されない。例えば、嵌入部本体31は角柱形状やテーパが付いた形状であってもよい。また、突出部32は、先端側に尖った円錐形状や角錐形状であってもよいし、嵌入部本体31の外周面に設けられた突起(周方向の一部が突起になっているもの、突起が複数あるものなど)でもよいし、嵌入部本体31の外周面を粗面加工した部分であってもよい。
【0033】
また、嵌入部30は、セラミックなどの高硬度材料によってポスト本体21と一体に形成されていることが好ましい。例えばポスト本体21と嵌入部30は、セラミックの焼成などによって一体成形されてもよい。これにより、ポスト本体21と嵌入部30とが高硬度材料により形成された一つの部品として構成されるため、部品の製造コストや組み立てコストを低減できる。
【0034】
嵌入部30よりもポスト本体21の他端側(嵌入部30が設けられた側とは反対側)には、嵌入部30よりも外側に拡がった拡径部40が設けられる。拡径部40は、嵌入部本体31よりも径が大きい。嵌入部本体31が例えば円柱形の場合、嵌入部本体31の直径はポスト本体21とほぼ等しく、突出部32の最大外径は嵌入部本体31の直径よりも僅かに大きい。拡径部40は、嵌入部30の突出部32よりも径が大きい。これにより、ポスト本体21の嵌入部30を保持枠10に嵌入する際、拡径部40までは貫通しない。拡径部40は石座部11の底面に当接してストッパとなり、ピアスポスト20を保持枠10に嵌入した際の押し込み位置が定まり易くなる。これにより、ピアスポスト20の保持枠10に対する無理な嵌入による石座部11の破損や、嵌入不足による取り付け不良を防止することができる。
【0035】
各部の具体的なサイズの一例として、ポスト本体21の直径は約0.8mm、嵌入部本体31の直径は約0.8mm、突出部32の直径は約0.9mm、拡径部40の直径は約1.5mmである。これらのサイズは上記に限定されない。
【0036】
本実施形態では、保持枠10より硬度の高い高硬度材料によってポスト本体21が形成されているため、ポスト本体21を変形させたり破損させたりすることなく保持枠10に対して取り付けることが可能であり、ロウ付け作業が不要になる。これにより、熟練したロウ付け技術を持つ作業者でなくても、ポスト本体21を保持枠10に対して容易に取り付けることが可能になる。
【0037】
また本実施形態によれば、ポスト本体21の一端側に設けられた嵌入部30を保持枠10へ嵌入させることによりポスト本体21が保持枠10に対して取り付けられるため、ポスト本体21を形成する高硬度材料には、ロウ付けや接着剤によって固定することができない様々な材料(セラミックなど)を用いることが可能である。特に本実施形態では、高行動材料としてセラミックなどのアレルギーを起こしにくい材料を用いてポスト本体21を形成することが可能であり、これにより、金属アレルギーなどのアレルギー体質を持つユーザでもピアス1を使用することが可能になる。
【0038】
次に、ピアスポスト20の取り付け方法について説明する。
図3は、ピアスポストの取り付け方法を例示する拡大断面図(その1)である。
図4は、ピアスポストの取り付け方法を例示する拡大断面図(その2)である。
図3に示すように、保持枠10の石座部11には下孔10hが設けられている。ピアスポスト20を取り付ける前の下孔10hの直径は、嵌入部30の突出部32の直径よりも小さくしておく。例えば、突出部32の直径が約0.9mmの場合、下孔10hの直径としては約0.5mmから0.6mm程度である。
【0039】
この下孔10hに保持枠10の外側(石座部11の下側)からポスト本体21の一端側に設けられた嵌入部30を押し込むように嵌入していく。これにより、突出部32で下孔10hを押し拡げながら嵌入部30が保持枠10に嵌入されていく。
【0040】
そして、図4に示すように、拡径部40が石座部11の裏面に当接する位置まで押し込まれる。拡径部40が石座部11の裏面に当接することでポスト本体21の嵌入のストッパとして機能し、それ以上の押し込みが防止される。嵌入部30が下孔10hに嵌入する際、下孔10hの縁が嵌入方向に僅かに盛り上げられる。突出部32が下孔10hを通った後、この盛り上げられた部分10bの一部は弾性変形によって僅かに戻され、この部分10bが突出部32に引っ掛かることになる。したがって、突出部32と拡径部40との間で石座部11を挟み込むように嵌入され、ピアスポスト20は保持枠10に確実に固定され、抜けてしまうことがなくなる。
【0041】
保持枠10にピアスポスト20が接続された状態で、石座部11の上に宝飾品100を配置し、爪部12の先端部分12aを折り曲げることで宝飾品100を固定する。これにより、ピアス1が完成する。
【0042】
図5は、本実施形態に係るピアスポストの凹部を例示する拡大断面図である。図5Aには突出部32の端面図が示され、図5Bには凹部35が設けられた嵌入部30の模式断面図が示される。
図6は、凹部と宝飾品との位置関係を説明する図である。図6Aには凹部35が設けられた嵌入部30の模式断面図が示され、図6Bには凹部35と宝飾品100の尖端部分101との位置関係を例示する模式断面図が示される。
【0043】
嵌入部30の先端側には宝飾品100の尖端部分101が嵌め込まれる凹部35を設けておくことが好ましい。凹部35は、円錐形であってもよいし、半球形などの凹みであってもよい。本実施形態では、半球形の凹部35が設けられる。図5Aに示すように、凹部35は突出部32の先端面の中心部分に設けられる。凹部35は半球形に設けられる。図5Bに示すように、断面で見た場合、凹部35は下半分の半円形に設けられる。一例として、突出部32の尖端面側から見た凹部35の直径は約0.2mmである。
【0044】
図6Aおよび図6Bに示すように、宝飾品100を保持枠10(図1参照)に配置した場合、宝飾品100の尖端部分が凹部35に嵌め込まれる。例えば、宝飾品100がブリリアントカットを施された宝石の場合、尖端部分101であるキューレットの部分の角度θ(図6B参照)は98.5度付近の角度となる。一方、凹部35が半球形(断面で見て半円形)になっている場合、凹部35の左右の縁P1、P2のそれぞれと凹部35の底の中心P3とを結ぶ線で構成される角度は90度になる。
【0045】
したがって、98.5度の尖端部分101が凹部35に嵌め込まれた際、尖端部分101の最先端101pが凹部35の底の中心P3に当接する前に宝飾品100は凹部35の縁P1、P2に当接することになる。この関係は凹部35の半球形(断面で見て半円形)になっていれば凹部35の径に関わらず同じである。したがって、ブリリアントカットを施された宝飾品100では、キューレットの最先端101pが凹部35の底面に当たる前に凹部35の縁P1、P2に接触し、キューレットの最先端101pに影響を与えることなく宝飾品100を支持できることになる。
【0046】
また、凹部35を設けることで宝飾品100の取り付け高さを凹部35が設けられていない場合に比べて低くすることができる。これにより、保持枠10の高さを抑制することができ、保持枠10の材料消費を抑えることができる。
【0047】
次に、本実施形態にかかるピアスポストの他の取り付け方法について説明する。
図7から図9は、ピアスポストの他の取り付け方法を例示する拡大断面図である。
先ず、図7Aに示すように、保持枠10に下孔10hを形成し、この下孔10hにポスト本体21の一端側に設けられた嵌入部30を押し込むように嵌入していく。これにより、突出部32で下孔10hを押し拡げながら嵌入部30が保持枠10に嵌入されていく。
【0048】
そして、図7Bに示すように、拡径部40が石座部11の裏面に当接する位置まで押し込まれる。拡径部40が石座部11の裏面に当接することでポスト本体21の嵌入のストッパとして機能し、それ以上の押し込みが防止される。嵌入部30が下孔10hに嵌入する際、下孔10hの縁が嵌入方向に僅かに盛り上げられる。この盛り上げられた部分10bは、嵌入部30(突出部32)の嵌入によって下孔10hの縁の一部が嵌入方向へめくり上がって変形した部分である。
【0049】
次に、図8に示すように、保持枠10の上から内部に向けて押さえ具200を当てる。押さえ具200は、凸部210と、凸部210の内側に設けられる凹部220とを有する。押さえ具200は保持枠10よりも固い材料で形成された珠グリ型の工具である。凹部220は嵌入部30の突出部32の外形よりも僅かに大きく設けられる。
【0050】
次に、図9Aに示すように、押さえ具200を突出部32の上に被せるようにして上から保持枠10の内側を押圧する。この際、突出部32の上に凹部220が被せられ、突出部32と押さえ具200とは干渉せず、押さえ具200の凸部210が、突出部32の周囲の位置で盛り上がった部分10bに当接する状態となる。この状態で押さえ具200を押さえ込むことで、この部分10bが拡径部40と凸部210との間で挟持され押さえ具200から押圧力によって潰されることになる。
【0051】
潰された部分10bは突出部32の下側(突出部32よりもポスト本体21の後端側に設けられたくびれ部分31a)に押し込まれる。その後、図9Bに示すように、押さえ具200を外す。これにより、くびれ部分31aに押し込まれた部分10bが引っ掛かりとなって抜け止めとなり、嵌入したピアスポスト20が保持枠10に強固に接続されることになる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、保持枠10へ取り付けるためのロウ付け作業が不要なピアスポスト20、そのようなピアスポスト20を備えたピアス1、及び、保持枠10へのピアスポスト20の取り付け方法を提供することができる
【0053】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、ポスト本体21は、セラミックなどの高硬度材料以外の材料によって被覆されていてもよい。また、前述の実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0054】
1…ピアス,10…保持枠,10b…部分,10h…下孔,11…石座部,12…爪部,12a…先端部分,20…ピアスポスト,21…ポスト本体,21a、21b…溝,30…嵌入部,31…嵌入部本体,31a…くびれ部分,32…突出部,40…拡径部,35…凹部,40…拡径部,100…宝飾品,101…尖端部分,101p…最先端,200…押さえ具,210…凸部,220…凹部,P1、P2…縁,P3…中心
【要約】
【課題】装飾体へ取り付けるためのロウ付け作業が不要なピアスポスト、ピアスおよびピアスポストの取り付け方法を提供すること。
【解決手段】ピアス1において宝飾品100を保持する保持枠10に取り付けられるピアスポスト20は、保持枠10より硬度の高い高硬度材料により形成されたポスト本体21と、ポスト本体21の一端側に設けられ、保持枠10に嵌入される嵌入部30とを備える。嵌入部30の先端側には、外方に突出する突出部32が設けられる。ポスト本体21における嵌入部30よりもポスト本体21の他端側には、嵌入部30よりも外側に拡がった拡径部40が設けられる。
【選択図】図1

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図9