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特許7378884風力タービンブレードの製作中の部品位置特定のための金型精密ピン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】風力タービンブレードの製作中の部品位置特定のための金型精密ピン
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/46 20060101AFI20231107BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20231107BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B29C70/46
B29C70/54
F03D1/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021572553
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2020036386
(87)【国際公開番号】W WO2020247795
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】62/858,733
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/858,723
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520005303
【氏名又は名称】ティーピーアイ コンポジッツ,インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】322011265
【氏名又は名称】サリミ,アミール
(73)【特許権者】
【識別番号】520489396
【氏名又は名称】ヴィラー,マイケル,ピー.
(73)【特許権者】
【識別番号】322011276
【氏名又は名称】レイン,クリストファー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サリミ,アミール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラー,マイケル,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】レイン,クリストファー
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0299084(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0073237(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの開口が配置されている第1の金型表面と、
第1の端部及び第2の端部を有する少なくとも一つのスタッドであって、前記第1の端部及び前記第2の端部は、それらの間にある長さを画定し、前記スタッドの前記第2の端部は、前記少なくとも一つの開口内に配設されている、少なくとも一つのスタッドと、
第1の端部及び第2の端部を有する少なくとも一つのピンであって、前記第1の端部及び前記第2の端部は、それらの間にある長さを画定し、前記少なくとも一つのピンの前記第2の端部は、前記少なくとも一つのスタッドの前記第1の端部に接続されている、少なくとも一つのピンと、
少なくとも一つのアクチュエータであって、前記少なくとも一つのピン上に配設されており、前記アクチュエータの一部は、風力タービンブレードの構造部品に係合するように構成されている、少なくとも一つのアクチュエータと、を備え
前記少なくとも一つのアクチュエータは、非対称なカムを含む、風力タービンブレード金型システム。
【請求項2】
前記ブレード金型の翼幅方向の中心軸線を中心にして非対称に配設されている複数の開口を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ブレード金型の長さに沿って配設されている複数の開口を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも一つのピンの前記第1の端部の周長は、前記少なくとも一つのピンの前記第2の端部の周長よりも大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも一つのピンは、非対称な幾何形状を有して構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
縮プレートを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも一つのピンの前記第2の端部は、ロック機構を含み、前記ロック機構は、前記圧縮プレートに係合するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも一つのスタッドの前記第1の端部は、前記第1の金型表面を越えて延在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも一つのピンは、前記少なくとも一つのスタッドに着脱可能に接続されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
記カムは、前記少なくとも一つのピンの中心軸線を中心に回転可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも一つの開口の上方に配設されているカバーを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記カバーは、脆弱な部分を含み、前記脆弱な部分は、前記少なくとも一つのピンが前記開口に挿入されるとき前記ピン内に保持される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも一つのピンの前記第2の端部は、平面状の頂面を含む、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年6月7日に出願された米国仮出願第62/858,723号、及び、2019年6月7日に出願された仮出願第62/858,733号の、米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張し、各々の全内容が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
開示される主題の分野
開示される主題は、大型複合構造体、例えば風力タービンブレードを製造するシステム、及び対応する方法に関する。これら大型複合構造体は、典型的には二つの部分から成る金型から形成されるが、その場合、製作を完了するためには、ブレードの半体の成形後に、複雑な部品位置特定/据付け、及び後続の金型閉鎖の工程が必要になる。
【0003】
特に、本開示は、他の部品、例えばスパーキャップの設置及び組付けの双方を容易にする様々な特徴を有する構造要素、例えば細長いピンを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、位置決め要素、例えば細長いピン、スタッド、及びカムを提供する。スパーキャップについての位置決め許容差からの軽微な逸脱はどのような場合でも、曲げ剛性の低下に起因してブレードの構造完全性を損なうだけでなく、コア材料のシフトに起因する接合ギャップの許容差を超えるものでもある。本開示は、レイアップ工程全体にわたって、ブレード金型内でのスパーキャップの精確な位置決めを実現する。
【背景技術】
【0004】
風力タービンブレードは一般に、主としてガラス繊維強化プラスチックなどの複合材料から作製される、中空のブレードシェルを備える。ブレードシェルは典型的には、下側の正圧側シェル及び上側の負圧側シェルの二つの半体のシェルから構成され、これらは対応する雌型半型内で別個に成形されて、その後ブレードの前縁及び後縁にあるフランジに沿って一つに接合される。風力タービンブレード用の金型の半部の例示的な図が、図1A図1Cに概略的に例示されている。
【0005】
図1Aを参照すると、これには、上側の負圧側金型10a及び下側の正圧側金型10bの二つの半型に分割された風力タービンブレード用の金型10が、金型を開放した構成で横並びにして示されている。正圧側ブレードシェル12aは下側金型10aの金型表面14a上に支持され、負圧側ブレードシェル12bは上側金型10bの金型表面14b上に支持される。シェル12a、12bは各々、硬化した樹脂によって一つに接合される複数のガラス繊維織物層から構成されている。
【0006】
ぞれぞれの半型10a、10b内でシェル12a、12bを形成した後で、風上ブレードシェル12aの内側表面17の上に又は中に位置決めされたスパーキャップに、シアウェブ16が接合される。シアウェブ16は、ブレードの二つの半体シェル12a、12bを橋渡しし、ブレードから使用されている風力タービンハブへとせん断荷重を伝達する役割を果たす、長手方向に延在する構造体である。図1Aにおいて断面で示されている特定の実施形態では、シアウェブ16は各々、第1の長手方向に延在する装着フランジ20を任意選択的に備える下側縁部19と、第2の長手方向に延在する装着フランジ22を任意選択的に備える上側縁部21と、を有する、ウェブ18を備える。シアウェブ16を各半体シェル12a、12bのそれぞれのスパーキャップに接合するために、これら装着フランジ22に沿って、エポキシなどの接着剤が塗布される。
【0007】
図1Bに示されているように、シアウェブ16が上側ブレードシェル12aに接合されると、シアウェブ16の第2の(上側)装着フランジ22に沿って、並びにブレードシェル12a、12bの前縁24及び後縁26に沿って、接着剤が塗布される。次いで、二つのブレード半体シェル12a、12bを前縁24及び後縁26に沿って一つに接合するために、及びシアウェブ16を上側ブレードシェル12bの内側表面28に沿ってスパーキャップに接合するために、上側ブレードシェル12bを含む上側金型10bが持ち上げられ、回転され、下側ブレード金型10aの上に設置される。一方の半型を他方の上に設置するステップは、金型の閉鎖と呼ばれる。
【0008】
ここで図1Cを参照すると、金型10が閉鎖されるときに、シアウェブ16が上側シェル12bに対して僅かに移動し得るという問題が生じ得る。例えば、シアウェブ16は金型の閉鎖中にそれ自体の重量で僅かに移動する可能性があるか、又はそれらは、上側シェル12bとの接触によってずらされる可能性がある。加えて又は代替として、シアウェブ及びスパーキャップが開放した半型の中に閉鎖前に不正確に設置される可能性があり、結果的に妥協した又は欠陥のあるブレード建造となる。更に、上側シェル12bの凹型の湾曲には、図1Cに示されているように、シアウェブ16を一緒に僅かに押しやる傾向もある。金型の閉鎖中のシアウェブ16のそのような移動の結果、シアウェブ16がスパーキャップ及び/又は上側シェル12bに次善の位置で接合される。
【0009】
風力タービンの運用効率を改善するためにブレードのサイズが絶えず大きくなるにつれ、安全マージンが減少し、この結果、製造許容基準及び許容差がより厳しくなることが必要となる。このことにより、厳しい仕様及び要件を満たすために、高精度の工程チェックを可能にする製造ツールの設計及び実装が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、風力タービン装置の組立て段階中の内部部品、例えばスパーキャップの高精度の設置及び接合を実現するための、製品の構造に影響を及ぼさずに部品の適切な設置を保証する効率的かつ経済的な方法及びシステムの必要性が、依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示される主題の目的及び利点は、続く説明に記載されそこから明らかになるだけでなく、開示される主題の実施によっても理解されるであろう。開示される主題の追加の利点が、本明細書の書面による説明及び特許請求の範囲において具体的に指摘されている方法及びシステムによって、並びに付属の図面から、実現され達成されるであろう。
【0012】
これらの及び他の利点を達成するために、開示される主題の目的に従って、開示される主題は、具体化され広範に記載されているように、第1の金型表面と、第1の金型に配置されている少なくとも一つの開口であって、ピンを受け入れるように構成されている、少なくとも一つの開口と、少なくとも一つの開口の上方に配設されているカバーであって、その上に配設される複合材料の複数の層を受け入れるように構成されている、カバーと、側壁を画定する第1の端部及び第2の端部を有する少なくとも一つのピンであって、第1の端部と第2の端部との間に延びる長さを有しており、ピンの第2の端部は、少なくとも一つの開口内に配設されており、ピンの第1の端部は、第1の金型表面よりも上まで延在する、少なくとも一つのピンと、を備え、ピン側壁の一部は、風力タービンブレードの構造部品に係合するように構成されている、風力タービンブレード金型システムを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、複数の開口は、ブレード金型の翼幅方向の中心軸線を中心にして及び/又はブレード金型の長さに沿って、非対称に配設されている。ピンの第1の端部の周長は、ピンの第2の端部の周長よりも大きくすることができる、及び/又は、少なくとも一つのピンは、非対称な幾何形状を有して構成され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、少なくとも一つのピンは、金型の第1の表面に配設されている複合材料の上面を越えて延在する。いくつかの実施形態では、カバーは、脆弱な部分を含み、脆弱な部分は、ピンが開口に挿入されるときピン内に保持される。いくつかの実施形態では、ピンの第2の端部は、平面状の頂面を含み、平面状の頂面に当接して構造部品が配設されている。いくつかの実施形態では、ピンの第2の端部は、平面状の頂面を含み、ピンの平面状の頂面の上方に、複合材料の少なくとも一つの層が配設されている。いくつかの実施形態では、ブレードの構造部品に係合するための少なくとも一つのフランジを有する圧縮プレートが含まれている。いくつかの実施形態では、ピンの第2の端部は、ロック機構を含み、ロック機構は、圧縮プレートに係合するように構成されている。いくつかの実施形態では、風力タービンブレードの構造部品はスパーキャップである。
【0015】
本開示の別の態様によれば、第1の金型表面を提供することであって、第1の金型表面は、少なくとも一つの開口を含む、提供することと、少なくとも一つの開口を覆うようにカバーを位置決めすることと、複合材料の複数の層の第1のセクションをカバーを覆うように堆積させることと、少なくとも一つの開口に少なくとも一つのピンを挿入することであって、ピンは、側壁を画定する第1の端部及び第2の端部を有し、第1の端部と第2の端部との間に延びる長さを有しており、少なくとも一つのピンは、カバー及び複合材料の複数の層を貫通して延在する、挿入することと、スパーキャップを金型内に位置決めすることであって、スパーキャップは、側壁を画定する頂面及び底面を有し、頂面と底面との間に延びる長さを有する、位置決めすることと、ピン側壁の少なくとも一部をスパーキャップ側壁の少なくとも一部と係合させることと、を含む、風力タービンブレードを形成する方法が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、ピン及びスパーキャップを覆うように複合材料の複数の層の第2のセクションを堆積させることを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、バッグを金型の外周の周囲にシールするように取り付けることを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、複合材料の複数の層の少なくとも一部を樹脂で含浸することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、金型から、複合材料の複数の層の第1のセクション、少なくとも一つのピン、スパーキャップ、及び複合材料の複数の層の第2のセクションを含む、組み立てられた製品を取り出すことを更に含み、少なくとも一つのピンの第1の端部は、複合材料の複数の層の第1のセクションの外側表面を越えて延在する。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも一つのピンの第1の端部の少なくとも一部をトリミングすることを更に含む。いくつかの実施形態では、係合させることは、ピン側壁の少なくとも一部を第1のスパーキャップ側壁の少なくとも一部と係合させることと、ピン側壁の少なくとも一部を第2のスパーキャップ側壁の少なくとも一部と係合させることと、を含む。いくつかの実施形態では、係合させることは、少なくとも一つのピンの頂面を第1のスパーキャップの少なくとも一部と係合させることを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、開示される主題は、少なくとも一つの開口が配置されている第1の金型表面と、第1の端部及び第2の端部を有する少なくとも一つのスタッドであって、第1の端部及び第2の端部は、それらの間にある長さを画定し、ピンの第2の端部は少なくとも一つの開口内に配設されている、少なくとも一つのスタッドと、第1の端部及び第2の端部を有する少なくとも一つのピンであって、第1の端部及び第2の端部は、それらの間にある長さを画定し、ピンの第2の端部は、少なくとも一つのスタッドの第1の端部に接続されている、少なくとも一つのピンと、少なくとも一つのアクチュエータであって、少なくとも一つのピン上に配設されており、アクチュエータの一部は、風力タービンブレードの構造部品に係合するように構成されている、少なくとも一つのアクチュエータと、を備える、風力タービンブレード金型システムを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、ブレード金型の翼幅方向の中心軸線を中心にして、複数の開口が非対称に配設されている。いくつかの実施形態では、ブレード金型の長さに沿って複数の開口が配設されている。いくつかの実施形態では、スタッドの第1の端部は、金型の第1の表面を越えて延在する。いくつかの実施形態では、ピンは、スタッドに着脱可能に接続されている。いくつかの実施形態では、ピンの第1の端部は、金型の第1の表面に配設されている複合材料の上面を越えて延在する。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのアクチュエータはカムを含み、カムは、少なくとも一つのピンの中心軸線を中心に回転可能である。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのアクチュエータは、非対称なカムを含む。いくつかの実施形態では、構造部品は、二つのアクチュエータの間に配設され、これらのアクチュエータは、構造部品の中点の位置を示す。いくつかの実施形態では、風力タービンブレードの構造部品は、スパーキャップである。
【0019】
本開示の別の態様によれば、第1の金型表面を提供することであって、第1の金型表面は少なくとも一つの開口を含む、提供することと、少なくとも一つのスタッドを少なくとも一つの開口に挿入することと、ピンを少なくとも一つのスタッドに接続することと、複合材料の複数の層の第1のセクションを金型の中に堆積させることであって、少なくとも一つのピンの第2の端部は、複合材料の第1のセクションよりも上まで延在する、堆積させることと、スパーキャップを金型内に位置決めすることであって、スパーキャップは、側壁を画定する頂面及び底面を有し、頂面及び底面は、それらの間に延びる長さを有する、位置決めすることと、カムの少なくとも一部をスパーキャップ側壁の少なくとも一部と係合させるために少なくとも一つのカムを作動させることと、を含む、風力タービンブレードを形成する方法が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、ピンの第1の端部及びスパーキャップを覆うように複合材料の複数の層の第2のセクションを堆積させることを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、バッグを金型の外周の周囲にシールするように取り付けることを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、複合材料の複数の層の少なくとも一部を樹脂で含浸することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、金型から、複合材料の複数の層の第1のセクション、少なくとも一つのピン、スパーキャップ、及び複合材料の複数の層の第2のセクションを含む、組み立てられた製品を取り出すことを更に含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのカムを作動させることによって、スパーキャップの中点の測定が行われる。いくつかの実施形態では、スパーキャップを位置決めすることは、二つのカムの間にスパーキャップを配設することを含む。いくつかの実施形態では、第1のカムは第1の距離だけ回転され、第2のカムは第2の距離だけ回転される。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのカムは非対称な形状を有して構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのカムは少なくとも一つのピン取り外し可能に接続される。
【0021】
上記の一般的説明及び以下の詳細な説明の双方は例示的なものであり、特許請求される開示される主題の更なる説明の提供を意図していることを理解されたい。
【0022】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、開示される主題の方法及びシステムを例示し、その更なる理解が得られるようにするために含まれている。その説明と併せて、図面は開示される主題の原理を説明する役割を果たす。
【0023】
本明細書に記載する主題の様々な態様、特徴、及び実施形態の詳細な説明が、以下に簡潔に説明する添付の図面を参照して提供される。図面は例示的なものであり必ずしも正確な縮尺で描かれておらず、一部の構成要素及び特徴は明確にするために誇張されている。図面は本主題の様々な態様及び特徴を例示し、本主題の一つ以上の実施形態又は例を全体的又は部分的に例示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】従来の風力タービンブレード金型及び製造方法の断面図。
図1B】従来の風力タービンブレード金型及び製造方法の断面図。
図1C】従来の風力タービンブレード金型及び製造方法の断面図。
図2】本開示の一実施形態に係る、例示的なピン位置を有する半型の概略上面図。
図3】本開示の一実施形態に係る、ブレード製作及びピン据付けの様々な段階の断面図。
図4】本開示に係る、完成した金型内に含められるピンの様々な幾何学的構成の断面図。
図5】本開示に係る、圧縮力を提供するピンの様々な幾何学的構成の断面図。
図6】本開示の一実施形態に係る、ブレード製作並びにピン及びスパーキャップ据付けの様々な段階の断面図。
図6I】本開示の一実施形態に係る、ブレード製作並びにピン及びスパーキャップ据付けの様々な段階の断面図。
図7】本開示に係る、スパーキャップの正確な位置決めのためのピン及びカムの様々な幾何学的構成の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
開示される主題の例示的な実施形態を以下で詳細に参照するが、その例が付属の図面に例示されている。開示される主題の方法及び対応するステップを、システムの詳細な説明と関連させて記載する。
【0026】
本明細書に提示する方法及びシステムは、大規模構造物の構築に使用できる。開示される主題は、風力タービンブレードの構築に特に適している。限定ではなく説明及び例示の目的で、開示される主題に係るシステムの例示的な実施形態が図2図5に示されており、全体的に参照符号1000で指定されている。本明細書に提示される様々な図及び図面中で、機能的に対応しているが必ずしも同一ではない構造を表すために、同様の参照番号(先頭の数字によって区別される)が与えられる場合がある。
【0027】
ブレードは、ブレードの剛直性、耐座屈性、及び/又は強度の向上をもたらすように構成されている、一つ以上の構造部品を含み得る。例えば、ブレードは、ブレードの正圧側及び負圧側の対向する内側表面に対してそれぞれ係合するように構成されている、一対の長手方向に延在するスパーキャップを含み得る。また、梁状の構成を形成するように、スパーキャップの間に一つ以上のシアウェブが配設され得る。スパーキャップは一般に、風力タービンの動作中にブレードに概ね翼幅方向(ブレードの翼幅と平行な方向)に作用する曲げ応力及び/又は他の荷重を制御するように設計され得る。同様に、スパーキャップは、風力タービンの動作中に生じる翼幅方向の圧縮に耐えるようにも設計され得る。
【0028】
本開示のスパーキャップは、一つにまとめられてスパーキャップの第1の部分を形成する、複数の引抜成形部材から構築され得る。特定の実施形態では、引抜成形部材は、複数の繊維(例えばガラス繊維又は炭素繊維)を樹脂で含浸し、含浸された繊維を硬化させることによって形成され得る。樹脂による繊維の含浸は、当技術分野で知られている任意の好適な手段を使用して行うことができる。更に、樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ビニルエステル、エポキシ、又は類似のものを含むがこれらに限定されない、任意の好適な樹脂材料を挙げることができる。更に、示されているように、引抜成形部材は、スパーキャップがブレードの根元に近付くにつれて一つ以上の引抜成形部材束へと分かれて、スパーキャップの第2の部分を形成する。
【0029】
より詳細には、スパーキャップは、まとまって一つ以上の層を形成する、複数の引抜成形部材から構築される。この場合、層は互いに積み重ねられ、任意の好適な手段を使用して、例えば、真空注入で部材を一つにすることによって、又は部材を接着剤、セミプレグ材料、プリプレグ材料、若しくは類似のものを介して一つに接合することによって、一つに連結される。
【0030】
高精度設置ピン
本明細書に記載する方法及びシステムは、成形工程中の部品、例えばスパーキャップの、高精度の設置を容易にする。特に、本開示は、ブレード翼幅全体にわたって正確な幾何的基準点を提供し、いくつかの実施形態では、剛性の支持表面を必要とする部品に対する機械的停止部として使用できる正確な幾何的基準点を提供する、新規な装置及び方法を導入する。いくつかの実施形態では、本開示は、位置特定を支援するためのオーバーヘッド光学投影システム及びレーザトラッキングシステムと、レイアップ工程中に部品及び補強層を設置するための測定ツールと、を含み得る。
【0031】
図2には、ブレード翼幅に沿って分布させた複数の開口(100)を有するブレード半体の上面図が描かれている。開口(100)は、金型表面内の、(金型表面を完全に貫通して延在する)穴、(以下で記載するような、位置特定機構又は「ピン」を受け入れるのに十分な深さの)凹部、又は窪みとすることができ、便宜上、全体を通して「ピン穴」と呼ぶこととする。ピン穴(100)の位置は、ブレード金型の3D製造モデルにおいて指定される。金型(風力タービンブレードを製作するために利用されることになる)を製作するために、指定される幾何形状を金型に付与する構造体の役割を果たす雄型の「プラグ」が、最初に形成される。プラグ建造中に、プラグ表面に精密ピン穴が形成、例えばCNC機械加工される。ピン穴(100)はその後最終金型へと移され、任意のオーバーヘッドレーザ投影又はファロ(Faro)の測定システムの適切な位置決めを較正及び検証するための、基準点の役割を果たすことができる。複数のピン穴(100)が金型に永続的に形成されるが、以下で更に詳細に記載するように、ピンを受け入れるのに利用されない場合は、選択されたピン穴に栓をすることができるか、又はそれらを塞ぐことができる。
【0032】
ピン穴(100)の数及び位置は、ブレード設計の仕様、例えば、スパーキャップの数、位置、及びサイズ等に応じて異なり得る。図2に示すように、ピン穴(100)の分布は均一である必要はなく、代わりにブレードの選択されたエリアに集中している。ピン穴の数、分布、及び幾何形状はブレード翼幅に沿って異なる場合があり、例えば、大きい/重い内部部品が存在する及び/又はより複雑な幾何形状若しくは表面外形を有する位置において、ピン穴(100)がより高い密度で存在し得る、例えば、ブレードの先端と比較して、根元に近接してより多数のピン穴(100)が配置される。
【0033】
図3(a)には、例示的なピン穴(100)の断面図が描かれている。ピン穴(100)のこの例示的な実施形態には円筒形の穴が描かれているが、代替の幾何形状(例えば曲線状、非直線状)は本開示の範囲内である。また、ピン穴を画定する側壁の外周が、ピン穴に近接した金型表面の厚さ「t」よりも大きい厚さ「T」を有するように、ピン穴(100)は、ピンを受け入れるための補強された空洞を有することができる。この追加の厚さによって、ピンが中に挿入されるときに、これを受け入れ案内するためのピン穴(100)に強度及び剛性が与えられる。
【0034】
図3(b)には、ピン穴内への樹脂の進入を回避するためにブレード製造ステップ(例えばゲル適用)の前にピン穴(100)に被せることのできる、カバー又はマスク部材(200)が描かれている。
【0035】
図3(c)には、ピン穴(100)の上に配設されたカバー(200)の上に堆積され、カバー(200)によってピン穴に入るのを防止されている、(複合ブレードを形成する)複合繊維パネルの複数の層、又は「レイアップ部」(300)が描かれている。カバー(200)は、カバーの外周がピン穴(100)よりも大きくかつこれを取り囲むようなサイズとすることができる。レイアップ部は、レイアップセグメントの外周がカバー(200)及びピン穴(100)よりも大きくかつこれらを取り囲むようなサイズとすることができる。
【0036】
図3(d)には、ピン穴(100)に挿入される対応する雄型ピンの設置を容易にするための、レイアップ部(300)の頂面上での、下にあるピン穴(100)の識別について描かれている。認識は、レイアップ部表面(300)上にピン穴位置(220)を照明する又は重ね合わせる、オーバーヘッド光学(例えばレーザ)投影システムによって実現することができる。いくつかの実施形態では、カバー(200)は、操作者がピン穴(100)の位置(220)を金型の全体にわたって視覚的に検出するのを可能にするために、レイアップセグメントの層を通して/その下で検出可能な位置指示機構(例えばコントラストを成す色、放射線不透過性材料、等)を有して形成され得る。
【0037】
図3(e)には、ピン又は細長い部材(例えば壁)であり得る配置機構(400)の挿入について描かれているが、本開示では便宜上、全体を通して配置機構を「ピン」と呼称する(ただし代替の、例えば非円筒形の幾何形状は本開示の範囲内であることが企図されることを理解されたい)。示されているように、ピン(400)はレイアップセグメント(300)を貫通してその向こう側に出てカバー(200)を貫通して延在し、ピンの遠位端がピン穴(100)内に受け入れられる。示されている例示的な実施形態では、ピン(400)の遠位端はピン穴(100)内に留まる。カバー(200)は、ピン(400)の挿入時に破壊又は切断され得る(下にあるピン穴の直上にありサイズ/形状がそれに一致する)脆弱な部分を含み得る。いくつかの実施形態では、ピン(400)は、(ピン穴がカバー(200)の破棄される部分によって閉塞されないように)挿入時に切断される脆弱な部分を捕捉し保持するための機構を含み得る。例えば、レイアップセグメント(300)及びマスク(200)の層を貫通したピンの挿入時にこれらの穿通された各層を回収するために、ピン(400)は中空とすること、又は内部チャンバを含むことができる。このことにより、製造工程に対するどのような異物のデブリの干渉又は障害も防止することができる。
【0038】
図3(f)には、設置ピンを基準点として、及びいくつかの実施形態では荷重担持部材として利用する、構造部品(500)がブレード内に適正に位置決めされていることを保証するための、内部構造部品(例えばスパーキャップ)(500)の設置工程が描かれている。構造部品(500)は、ピン(400)の位置に対して位置決めされ得る。例えば、構造部品(500)は、部品(500)の変位を防止するようにピン(400)に対して当接して位置決めされ得る。
【0039】
図3(g)に示すように、いくつかの実施形態では、構造部品(520)がピン(400)の上に位置決めされる際に、ピン(400)が部分的に又は完全に受け入れられるように、構造部品(520)をその上方に位置決めすることができる。いくつかの実施形態では、選択されたピン(400)は構造部品(500)の外部に、例えば隣接して配設されて、構造部品(500)の側方位置をロック又は制約し、一方選択されたピン(400)は、構造部品(520)内に受け入れられて、構造部品(520)の垂直及び水平位置をロック又は制約する。
【0040】
また、オーバーヘッド光学(例えばレーザ)投影システムは、検証のために又はピン位置(100/400)と一致するときの適切な位置決めの二次的手段として、構造部品の場所取り(placement)を投影する(例えば構造部品の外周境界を重ね合わせる)ことができる。また、設置の正確度がより高いピンは、金型内でオーバーヘッド光学投影の較正基準点の役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、ピン(400)は内部構造部品の据付けを容易にするべくピン穴(100)に一時的に挿入され、その後取り出される。他の実施形態では、ピン(400)を最終的な組み立てられたブレード内に永続的に保持することができる。
【0041】
図3(h)に示すように、構造部品(500、520)の位置がブレード金型内に正確に位置決めされていることが検証されると、追加のレイアップセグメントの第2のセクション(320)を構造部品(500、520)の上に位置決めすることができる。レイアップ工程が完了すると、金型の外周の周囲にバッグ(600)をシールして真空を作り出すことができ、またピン(400)が注入エリア内に含まれた状態で樹脂注入工程を実施することができる。図3(i)に示すように、ピン(400)とピン穴(100)の嵌合許容差によって、ピン穴(100)内への注入樹脂の進入が防止される。
【0042】
図3(j)に示すように、樹脂の注入及び硬化が終わると工程が完了し、レイアップ層の第1のセクション(300)、ピン(400)、構造部品(500、520)、及びレイアップ層の第2のセクション(320)を含む完成した成形部品が、金型(100)から取り出される。この実施形態では、ピン(400)は組み立てられた/成形された製品の一部を永続的に形成する。いくつかの実施形態では、ピン(400)は、図3(j)における(702として示す)距離だけ、成形部品の外側表面を越えて(例えば、レイアップ層の第1のセクション300の底面を越えて)延在する。外側表面を越えて延在するピン(400)のこれらの部分(702)をトリミングして、平滑で切れ目のない外側ブレード表面を得ることができ、この結果、図3(k)に示すような完成した製品となる。
【0043】
ピンのタイプ及び幾何形状
図4(A)~図4(F)には、本明細書で開示される実施形態内で採用され得る、追加の又は代替のピン構成が描かれている。図4(A)に示す例示的なピン実施形態では、ピンは、ピン穴(100)内に挿入される第2のセクション(402)よりも大きい断面積を有する、第1のセクション(401)を含み得る。面積の変化は、図4(A)に示すような急激な若しくは階段状の変化、又は図4(B)に示すような漸進的なテーパであり得る。加えて又は代替として、ピン(400)の遠位端は、図4(A)に示すようにピン穴(100)の底部から離間させること、又は、図4(B)に示すようにピン穴の底部に当接するように延在することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ピンはブレードと金型との接続部を形成しない。それどころか、ピンは金型内に留まり、形成中の複合部の中に延在することはない。そのような実施形態では、ピンを磁力によって所定位置に確実に維持することができる。例えば図4(C)に示す実施形態では、ピン(420)は、金型内の磁性基部(magnetic footing)(430)のある位置の上方に精確に配置されることによって、i)構造部品の適切な位置決めを、例えば構造部品のオーバーヘッド投影される境界と位置が一致することによって検証すること、及びii)図3(f)~図3(h)を参照して上記したように、ピン(420)に対して当接する様式で構造部品が位置決めされるときに荷重担持要素の役割を果たすこと、が可能である。
【0045】
図4(D)には図4(B)に示す実施形態と類似した例示的な実施形態が描かれているが、離型工程中に菱形形状のピンがブレードから出てきて、ピン頭部(例えば、菱形形状のピンの最も広い部分に近接した部分)だけがブレード内に留まる。したがって、この実施形態では、ピンの延長片(702)をトリミングする代わりに、離型されたブレードに生成された穴が充填又は施栓される。
【0046】
図4(E)には、図4(C)又は図4(D)の実施形態を採用するときにブレード内に残るピンの部分の例示的な図が描かれている。明確にするために、レイアップセグメント層(300)には穴が描かれておらず、また実際に、図4(C)の磁性ピンの実施形態を採用する場合には穴が存在しない。
【0047】
ピンはオーバーヘッドプロジェクタとは別個の装置によって、金型表面(100)に挿入/その上方に位置決めされ得る。また、ピン穴(100)はスパーキャップの単一の位置(例えば中央)に、又はスパーキャップ表面上の複数の位置に形成され得る。本明細書に記載する精密ピンシステムは、スパーキャップを設置する際に代替の技法が提供し得るよりも高い精度を可能にする点で有利である。また、本開示は、ブレードスキンセグメントのレイアップ中に、内側ブレードスキンに対するスパーキャップの迅速かつ正確な配置/位置合わせを実現する。このことにより、(不正確な場合があるとともに、異なった製造サイクル及びブレード幾何形状によって異なる場合がある)基準点として外側金型の固定具を利用する必要がなくなる。また、このスキン位置特定機構によって、スパーキャップ及びスキン上に直接特徴付けられた配置用の部分の迅速な認識が可能になり、誤差が低減され、適切な係合が目で即座に確認できる。
【0048】
本開示の別の態様によれば、精密ピンシステムはまた、ブレードスキンへの構造部品の接合を促進するための把持力又は締め付け力を提供することもでき、例示的な実施形態が図4(F)に示されている。ピンは、圧縮プレート(800)に着脱可能に取り付けられるロック機構(例えばねじ山450)を含み得る。図5(a)に示す例示的な実施形態では、ピンは、ねじ山部分(451)と、レイアップセグメント(350)の層を貫通して挿入され金型のピン穴(150)内に受け入れられる、遠位部分(452)と、を含む。次に、図5(b)に示すように、ピン(451)の上端部に近接又は当接する関係で配設されることによって、構造部品(550)がピン(450)に対して位置決めされ、このことにより側方への移動が制限/防止される。その後、圧縮性の締め付け力を提供するように、圧縮プレート(800)を、側方に延在するフランジ部分(810)が構造部品(550)の上面に係合している状態で位置決めすることができる。圧縮プレートが回転されるにつれ、ねじ式ロック機構(451)は圧縮プレートを下向きに変位させ、このことにより構造部品(550)に加わる圧力が高まる。一時的に締め付け力を加えることができるか、又は、最終的な成形製品の一部に圧縮プレートを形成して、圧縮力を永続的に維持するようにすることができる。
【0049】
示されているように、圧縮プレート(800)はピン軸部から側方へと対称に延在するフランジ(801、802)を含むが、代替の(例えば非対称の)構成を採用することができる。圧縮プレート(800)は構造部品(550)に力を加え、構造部品(550)はその力を、レイアップセグメント(350)の頂部層に係合する構造部品(550)の表面エリアにわたって均一に分布するように伝達する。また、ピン(451)のロック機構を受け入れる圧縮プレートの下向きに延在するカラーは、レイアップ材料の如何なる望まれない圧着(crimping)又は穿孔をも回避するように、図5(c)に示すように、レイアップセグメント(350)の頂部層から離間されたままとなる(すなわち接触を回避する)ようなサイズとすることができる。
【0050】
本開示の別の態様によれば、図6(a)には、例示的なピン穴(1000)の断面図(図2に示す視点A-A)が描かれている。ピン穴(1000)のこの例示的な実施形態には円筒形の穴が描かれているが、代替の幾何形状(例えば曲線状、非直線状)は本開示の範囲内である。また、ピン穴を画定する側壁の外周が、ピン穴に近接した金型表面の厚さ「t」よりも大きい厚さ「T」を有するように、ピン穴(1000)はピンを受け入れるための補強された空洞を有することができる。この追加の厚さによって、スタッド又はピンが中に挿入されるときに、これを受け入れ案内するためのピン穴(1000)に強度及び剛性が与えられる。
図6(b)には、ピン穴内への樹脂の進入を回避するためにブレード製造ステップ(例えばゲル適用)の前にピン穴(1000)の中に少なくとも部分的に挿入することのできる、スタッド部材(2000)が描かれている。いくつかの実施形態では、スタッド(2000)はブレード金型表面よりも上まで延在するようなサイズとなっており、穴(1000)の中に(例えば、摩擦嵌めを介して、又はねじ式固定具、さねはぎ継ぎ等を介してのいずれかで)永続的に又は着脱可能に固定され得る。
【0051】
図6(c)には、ピン又は細長い部材(例えば壁)であり得る配置機構(4000)の挿入について描かれているが、本開示では便宜上、全体を通して配置機構を「ピン」と呼称する(ただし代替の、例えば非円筒形の幾何形状は本開示の範囲内であることが企図されることを理解されたい)。示されているように、ピン(4000)は、金型ピン穴(1000)に事前に挿入されているスタッド(2000)の頂端部に取り付けられる。ピン(4000)は、(示されている例示的な実施形態では、金型表面よりも上に突出している)スタッドの上端部に、機械的結合、例えば雄型/雌型部材間の摩擦嵌め、ねじ式固定具、さねはぎ継ぎ等を介して、着脱可能に固定され得る。加えて又は代替として、ピン(4000)は、磁気接合又は接着剤接合を介してスタッド(2000)に接続され得る。いくつかの実施形態では、ピン(4000)とスタッド(2000)との間の接続は脆弱であり、これにより、離型工程(すなわち金型からのブレードの取り出し)中、ピン(4000)は成形されたブレードと一緒のままであり、一方でスタッド(2000)は金型(1000)内に留まるようになっている。
【0052】
図6(d)には、ピン穴(1000)の上に配設されたピン(4000)とスタッド(2000)の組立体の上に堆積された、複合繊維パネルの複数の層、又は「レイアップ部」(3000)が描かれている。示されているように、ピン(4000)はレイアップ層(3000)を貫通して、レイアップ層の頂面よりも上まで延在する。レイアップ工程の完了時、ピン(4000)の先端は複合ガラス層(3000)の上にまだ見えている。ピン頭部(4000)のこれらの基準マークは、スパーキャップの設置のための視覚的基礎の役割を果たす。いくつかの実施形態では、ピン(4000)は、操作者に所定の数/高さのレイアップセグメントが据え付けられたことを確認する視覚的補助を提供するために、及び/又は、別の位置に対するブレードの所与の位置(例えば根元対先端)におけるレイアップセグメントの状態を比較する基準の役割を果たすために、レイアップセグメント(3000)の積層体の高さを示すための、マーキングを含み得る。
【0053】
図7Aには、レイアップセグメントの層を堆積させた後の金型の上面図が描かれている。内部構造部品(例えばスパーキャップ)(5000)の設置工程では基準点として、及びいくつかの実施形態では荷重担持部材として、設置ピンが利用される。構造部品(5000)は、ピン(4000)の位置に対して位置決めされ得る。例えば、構造部品(5000)は、金型内でピン(4000)の間の空間内に位置決めされ得る。示されているように、スパーキャップ(5000)の公称の中心線(短い方の縦線)と実際の中心線(長い方の縦線)との間には、設置誤差(E)が存在しており、参考のためにスパーキャップ(5000)の側縁部が仮想線で示されている。
【0054】
スパーキャップ(5000)がピン(4000)の間の所定位置に位置決めされると、アクチュエータ、例えばカム頭部(6000)がピン(4000)の頂部に据え付けられ、部品(5000)の変位を実行又は防止するべくそこに対して当接するように動作可能となる。カム頭部の回転中、ピンは不動のままであり得る。偏心した、長円形の、楕円形の、又は巻貝形状の幾何形状を有する、様々なアクチュエータ、例えばカム頭部(6000)を利用することができる。(図6(f)及び図7Bを参照されたい)。
【0055】
本開示の態様によれば、アクチュエータ(6000)は、スパーキャップの位置決めの誤差(E)を精確に評価できる。例えば、図6(g)及び図7Cに示されているように、スパーキャップ(5000)の側部に係合するように、カム頭部(6000)を回転させることができる。アクチュエータ(6000)を互いに独立して及び/又は同時に移動させることができる。また、各アクチュエータ(6000)は360度範囲の動きを呈することができ、各アクチュエータはスパーキャップ(5000)に係合するために、必要に応じて異なる角度に方向付けられる。図7C図7Dに示されているように、位置6000と位置6000'との間の回転の角度(a)は相対距離(d)と相関していてもよく、それに応じてスパーキャップ(5000)の設置誤差が評価される(参考のためにスパーキャップの側縁部が仮想線で示されている)。誤差が所定の許容差を上回る場合、例えばカム頭部(6000)を回転させることによって、スパーキャップ(5000)を側方にシフトさせるための力を付与するのに適切な度数「a」又は距離だけ、スパーキャップ(5000)を側方に移動させることができる。いくつかの実施形態では、回転(及びしたがってスパーキャップの変位)を支援するために、例えば電気式、液圧式、又は空圧式の電源を介して、カムに動力供給することができる。いくつかの実施形態では、外部ツール、例えばハンマー又は千枚通しを利用して、タッピング又は他の方法を介してスパーキャップ(5000)に力を及ぼし、必要な変位を生じさせることができる。そして評価工程が繰り返される。
【0056】
スパーキャップ(5000)をシフトさせるとき、スパーキャップから係脱するように第1のカムが移動され(そのことによりその第1のカムの方向へのスパーキャップの移動が許容されることになる)、その間第2のカム(6002)はスパーキャップと係合したままである(これにより「誤った」方向へのスパーキャップの望まれない移動が防止される)。したがって、カム6001がカム6002よりも大きい距離を回転されている(したがってより大きい断面プロファイルが示されている)図6(g)及び図7Cに示されているように、第1のカムの回転の度数又は量を、第2のカムと異ならせることができる。加えて又は代替として、カム6000を、垂直平面内で回転してスパーキャップ5000の頂面に係合してスパーキャップを押し下げる又は「サンドイッチする」ように方向付けることができる。
【0057】
スパーキャップの境界の最終位置が金型内に正確に位置決めされたことが確認されると、アクチュエータ(6000)をピン(4000)から脱離させることができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータ(6000)はピン(4000)の頂部部分を受け入れるための凹部又はスロットを有し、垂直方向に結合され得る(すなわち、ピンによって入れ子式に受けられ得る)。アクチュエータは、図6(h)に示されているように、カムの回転によって測定される距離に応じたサイズのコア材料(7000)(例えばバルサ材)で置き換えることができる。
【0058】
図3(h)に示すように、構造部品(5000)の位置がブレード金型内に正確に位置決めされていることが検証されると、構造部品(5000)、ピン(4000)、及びレイアップセグメントの第1のセクション(3000)の上に、追加のレイアップセグメントの第2のセクションを位置決めすることができる。上で既に記載したように、レイアップ工程が完了すると、金型の外周の周囲にバッグをシールして真空を作り出すことができ、ピン(4000)が注入エリア内に含まれた状態で樹脂注入工程を実施することができる。スタッド(2000)とピン穴(1000)の嵌合許容差によって、ピン穴(1000)内への注入樹脂の進入が防止される。有利には、これら後続の処理中にピン(4000)がスパーキャップ(5000)と一緒に存在することによって、注入及び硬化工程中に変位が生じない。
【0059】
図6Iに示すように、樹脂の注入及び硬化が終わると工程が完了し、スタッド(2000)からピン(4000)を係脱することによって、レイアップ層の第1のセクション(3000)、ピン(4000)、構造部品(5000)、コア材料(7000)、及びレイアップ層の第2のセクションを含む完成した成形部品が、金型(1000)から取り出される。ピン(4000)とスタッド(2000)との間の機械的接続は、相対的な垂直方向の動きを受けてピン(4000)がスタッドから係脱又は分離するように構成される。この結果、ピンはブレードと一緒に留まり、スタッドは金型と一緒に留まる。(金型から出て来るスタッドの形状に等しい)小さいピン穴が残る。この実施形態では、ピン(4000)は組み立てられた/成形された製品の一部を永続的に形成し、スパーキャップ(5000)の横滑りを防止する硬質の停止部として残される。スタッド(2000)は金型(1000)の頂面よりも上まで延在するようなサイズとすることができ、この結果、ピン(4000)からスタッド(2000)を分離した後で、成形された製品においてスタッド(2000)の位置に凹部が残るようになっている。
【0060】
加えて又は代替として、スタッド(2000)は金型(1000)の頂面よりも上までは延在しないようなサイズとすることができ、この場合ピン(4000)は金型表面を越えてピン穴(1000)内に入るように延在し、結果的に、成形された部分の外側表面を越えて(例えばレイアップ層の第1のセクション3000の底面を越えて)延在するピン(4000)となる。外側表面を越えて延在するピン(4000)のこの部分をトリミングして、平滑で切れ目のない外側ブレード表面を得ることができ、この結果完成した製品となる。
【0061】
ピンのタイプ及び幾何形状
上で言及したように、本明細書で開示される実施形態内で、様々なピン構成が採用され得る。図6(b)に示す例示的なピン実施形態では、ピンは、ピン穴(1000)内のスタッド(2000)に挿入され、これを受け入れ、又はこれに取り付けられる第2のセクション(4002)よりも小さい断面積を有する、第1のセクション(4001)を含み得る。面積の変化は、急激な若しくは階段状の変化、又は漸進的なテーパであり得る。加えて又は代替として、スタッド(2000)の遠位端は、ピン穴(1000)の底部から離間すること、又はピン穴の底部に当接するように延在することができる。
【0062】
したがって、本開示は従来のブレード構造及び製造技法を超えて多数の利点及び改善をもたらし、これらには、外部の金型フレームよりむしろ内部のブレード部品に関する高精度の基準点を提供し、このことにより基準機構を真空バギング(vacuum bagging)の内側に留めることのできることが含まれる。
【0063】
本明細書における「上方」、「下方」、「頂部」、「底部」等への言及は相対的かつ非限定的なものであるが、その理由は、本明細書に記載する構造及び技法を、ブレードの負圧側及び正圧側に形成されるスパーキャップに等しく適用できるからであることに留意すべきである。
【0064】
開示される主題は本明細書において特定の好ましい実施形態の観点から記載されているが、開示される主題に対してその範囲から逸脱することなく様々な修正及び改善を行えることを当業者は認識するであろう。更に、開示される主題のある実施形態の個々の特徴が、本明細書において検討されているか又はそのある実施形態の図面に図示されていて、他の実施形態では検討又は図示されてない場合があるが、ある実施形態の個々の特徴を別の実施形態の一つ以上の特徴又は複数の実施形態からの特徴と組み合わせてもよいことは、明らかであろう。
【0065】
以下で特許請求される特定の実施形態に加えて、開示される主題はまた、以下で特許請求される従属的な特徴及び上で開示されている特徴の任意の他の可能な組合せを有する実施形態にも向けられている。したがって、従属請求項に提示されている及び上で開示されている特定の特徴を、開示される主題が任意の他の可能な組合せを有する他の実施形態にも特定的に向けられているものとして認識されるように、開示される主題の範囲内にある他の様式で、互いに組み合わせることができる。したがって、開示される主題の特定の実施形態の前出の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。網羅的であること、又は開示される主題を開示されるこれらの実施形態に限定することは意図していない。
【0066】
開示される主題の方法及びシステムにおいて、開示される主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、開示される主題には、付属の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にある修正及び変更が含まれることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図6I
図7