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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】流体圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/512 20060101AFI20231107BHJP
   B60G 17/08 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
F16F9/512
B60G17/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022035295
(22)【出願日】2022-03-08
(65)【公開番号】P2023130796
(43)【公開日】2023-09-21
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一樹
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-096441(JP,A)
【文献】実開昭52-122414(JP,U)
【文献】特開2000-225823(JP,A)
【文献】特開2000-230596(JP,A)
【文献】特開2015-206374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/512
B60G 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される流体圧緩衝器であって、
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブに進退自在に挿入されるロッドと、
前記ロッドに連結され前記シリンダチューブ内をボトム側室とロッド側室とに区画するピストンと、
前記ボトム側室と前記ロッド側室との間の作動流体の流れに対して抵抗を付与し、パイロット圧に応じて減衰特性が変更可能な減衰弁と、
前記ボトム側室又は前記ロッド側室の作動流体をパイロット圧として前記減衰弁のパイロット室へ供給するパイロット弁と、を備え、
前記パイロット弁は、
前記ボトム側室から作動流体が導かれる第1パイロット室と、
前記第1パイロット室に対向して設けられ、前記ロッド側室から作動流体が導かれる第2パイロット室と、を有し、
流体圧緩衝器の非伸縮作動時には、前記パイロット弁は、前記減衰弁の前記パイロット室へパイロット圧を供給し、
流体圧緩衝器の伸縮作動時には、前記パイロット弁は、流体圧緩衝器の非伸縮作動時における前記減衰弁の前記パイロット室のパイロット圧を保持することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧緩衝器であって、
前記パイロット弁は、
流体圧緩衝器の非伸縮作動時に前記第1パイロット室と前記第2パイロット室が同圧となることにより切り換わる供給ポジションと、
流体圧緩衝器の伸縮作動時に前記第1パイロット室が高圧、前記第2パイロット室が低圧となることにより切り換わる第1遮断ポジションと、
流体圧緩衝器の伸縮作動時に前記第2パイロット室が高圧、前記第1パイロット室が低圧となることにより切り換わる第2遮断ポジションと、
を有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体圧緩衝器であって、
前記パイロット弁が設けられ、前記ボトム側室又は前記ロッド側室と前記減衰弁の前記パイロット室とを接続するパイロット通路と、
前記パイロット通路に設けられ、パイロット流体の流れに対して抵抗を付与する絞りと、
をさらに備えることを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の流体圧緩衝器であって、
前記パイロット圧として、前記ボトム側室の作動流体が用いられ、
前記ボトム側室には加圧ガスが封入されていることを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の流体圧緩衝器であって、
前記減衰弁として、互いに並列に設けられ作動流体の流れに対して抵抗を付与する第1減衰弁及び第2減衰弁を有し、
前記第1減衰弁は、前記ボトム側室及び前記ロッド側室の一方から他方に向かう作動流体の流れに対してのみ抵抗を付与することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の流体圧緩衝器であって、
前記減衰弁は、流体圧緩衝器の非伸縮作動時おいて前記パイロット室へ供給されるパイロット圧に応じて3段階以上又は無段階に減衰特性が変更可能であることを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の流体圧緩衝器であって、
前記ロッドは、
前記ピストンに連結され前記シリンダチューブに摺動自在に支持されるロッド本体と、
前記シリンダチューブの外部に露出するヘッド部と、
前記ロッド本体の内部に形成されるロッド内空間と、を有し、
前記ロッド内空間は、前記ボトム側室に連通する第1空間と、前記ロッド側室に連通する第2空間と、を有し、
前記減衰弁及び前記パイロット弁は、前記ヘッド部に設けられ、
前記減衰弁の前記パイロット室へ供給されるパイロット圧は、前記第1空間又は前記第2空間を通じて供給されることを特徴とする流体圧緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の流体圧緩衝器では、ピストンロッドは、シリンダの外部へと延出するロッド部と、ロッド部の端部に連結されてシリンダ内を摺動自在に移動し、シリンダ内をボトム側室とロッド側室に区画するピストンと、を有する。ロッド部は、ロッド部の内部に形成されてシリンダのボトム側室と連通するロッド内空間と、ロッド内空間とシリンダのロッド側室とを接続する第1連通路と、第1連通路に設けられ減衰力を発生するオリフィスプラグと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-206374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最大積載重量が大きい車両では、積載重量の大小によって車両全体の重量が大きく異なる。特許文献1に記載のようなオリフィスプラグで減衰力を発生する流体圧緩衝器では、積載重量の大小に応じて最適な減衰特性を実現することはできない。
【0005】
積載重量の大小に応じて最適な減衰特性を実現するために、電磁弁によって減衰特性を変更可能に構成することが考え得る。しかし、電磁弁を搭載する場合には、配線の取り回しや切換制御が必要になるため、コストの面で問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、積載重量に応じて減衰特性を変更可能な構成を低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に搭載される流体圧緩衝器であって、シリンダチューブと、シリンダチューブに進退自在に挿入されるロッドと、ロッドに連結されシリンダチューブ内をボトム側室とロッド側室とに区画するピストンと、ボトム側室とロッド側室との間の作動流体の流れに対して抵抗を付与し、パイロット圧に応じて減衰特性が変更可能な減衰弁と、ボトム側室又はロッド側室の作動流体をパイロット圧として減衰弁のパイロット室へ供給するパイロット弁と、を備え、パイロット弁は、ボトム側室から作動流体が導かれる第1パイロット室と、第1パイロット室に対向して設けられ、ロッド側室から作動流体が導かれる第2パイロット室と、を有し、流体圧緩衝器の非伸縮作動時には、パイロット弁は、減衰弁のパイロット室へパイロット圧を供給し、流体圧緩衝器の伸縮作動時には、パイロット弁は、流体圧緩衝器の非伸縮作動時における減衰弁のパイロット室のパイロット圧を保持することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、パイロット弁は、流体圧緩衝器の非伸縮作動時に第1パイロット室と第2パイロット室が同圧となることにより切り換わる供給ポジションと、流体圧緩衝器の伸縮作動時に第1パイロット室が高圧、第2パイロット室が低圧となることにより切り換わる第1遮断ポジションと、流体圧緩衝器の伸縮作動時に第2パイロット室が高圧、第1パイロット室が低圧となることにより切り換わる第2遮断ポジションと、を有することを特徴とする。
【0009】
これらの発明では、流体圧緩衝器の非伸縮作動時におけるボトム側室又はロッド側室の作動流体をパイロット圧として減衰弁の減衰特性が変更されるため、積載重量に応じた減衰特性が得られる。また、減衰弁へパイロット圧を供給するパイロット弁は、ボトム側室から導かれる作動流体とロッド側室から導かれる作動流体とによって作動する。よって、積載重量に応じて減衰特性を変更可能な構成を低コストで実現することができる。
【0010】
また、本発明は、流体圧緩衝器は、パイロット弁が設けられ、ボトム側室又はロッド側室と減衰弁のパイロット室とを接続するパイロット通路と、パイロット通路に設けられ、パイロット流体の流れに対して抵抗を付与する絞りと、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
この発明では、絞りにより、流体圧緩衝器の伸縮作動中に、ボトム側室又はロッド側室の圧力がパイロット弁を通じて減衰弁のパイロット室に伝わりに難くなるため、減衰弁が意図せずに切り換わることを防止することができる。
【0012】
また、本発明は、パイロット圧として、ボトム側室の作動流体が用いられ、ボトム側室には加圧ガスが封入されていることを特徴とする。
【0013】
この発明では、ボトム側室には加圧ガスが封入されているため、流体圧緩衝器の作動中にボトム側室が負圧になることはないため、減衰弁を安定して動作させることができる。
【0014】
また、本発明は、減衰弁として、互いに並列に設けられ作動流体の流れに対して抵抗を付与する第1減衰弁及び第2減衰弁を有し、第1減衰弁は、ボトム側室及びロッド側室の一方から他方に向かう作動流体の流れに対してのみ抵抗を付与することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、減衰弁は、流体圧緩衝器の非伸縮作動時おいてパイロット室へ供給されるパイロット圧に応じて3段階以上又は無段階に減衰特性が変更可能であることを特徴とする。
【0016】
これらの発明では、車両の状態に応じて最適な減衰特性を実現することができる。
【0017】
また、本発明は、ロッドは、ピストンに連結されシリンダチューブに摺動自在に支持されるロッド本体と、シリンダチューブの外部に露出するヘッド部と、ロッド本体の内部に形成されるロッド内空間と、を有し、ロッド内空間は、ボトム側室に連通する第1空間と、ロッド側室に連通する第2空間と、を有し、減衰弁及びパイロット弁は、ヘッド部に設けられ、減衰弁のパイロット室へ供給されるパイロット圧は、第1空間又は第2空間を通じて供給されることを特徴とする。
【0018】
この発明では、パイロット流体へのガスの混入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、積載重量に応じて減衰特性を変更可能な構成を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧緩衝器の流体圧回路図である。
図2】空荷状態での流体圧緩衝器の作動を説明する図である。
図3】積荷状態での流体圧緩衝器の作動を説明する図である。
図4】本発明の実施形態の変形例に係る流体圧緩衝器の流体圧回路図である。
図5】本発明の実施形態に係る流体圧緩衝器の断面図である。
図6】本発明の実施形態の変形例に係る流体圧緩衝器の流体圧回路図である。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る流体圧緩衝器の流体圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧緩衝器について説明する。
【0022】
以下では、流体圧緩衝器が車両に搭載される油圧緩衝器100である場合について説明する。油圧緩衝器100は、例えば、車両の車体と車軸との間に介装され、減衰力を発生させて車体の振動を抑制する装置である。
【0023】
図1に示すように、油圧緩衝器100は、筒状のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されシリンダチューブ10の外部へと延出するロッド12と、ロッド12の先端に連結されシリンダチューブ10の内周面に沿って摺動自在に移動するピストン14と、を備える。油圧緩衝器100は、シリンダチューブ10が上側、ロッド12が下側となる向きに車両に搭載される。
【0024】
シリンダチューブ10内は、ピストン14によってボトム側室1とロッド側室2とに区画される。ボトム側室1とロッド側室2には、それぞれ作動流体としての作動油が封入される。ボトム側室1には、シリンダチューブ10に対するロッド12の進入、退出に伴うシリンダチューブ10内の容積変化を補償すると共に、ばね作用を発揮するための加圧ガスGが作動油と共に封入される。このように、油圧緩衝器100は、ガスGによるばね作用によって車体を支持可能なエアサスペンションの機能を有する。この場合、車体を支持するばねを別途設けなくても、油圧緩衝器100によって減衰力の発生及び車体の支持が可能となる。
【0025】
なお、これに限らず、シリンダチューブ10内にガスが封入されなくてもよい。また、ボトム側室1の内部に移動自在に設けられ、ボトム側室1を作動油が封入される液室とガスGが封入される気室とに隔てるフリーピストンが設けられてもよい。また、シリンダチューブ10外に、ボトム側室1に接続されたアキュムレータを設け、アキュムレータに気室を設けてもよい。
【0026】
ボトム側室1とロッド側室2は、流路3を通じて接続される。油圧緩衝器100は、流路3に設けられ、ロッド側室2とボトム側室1との間の作動油の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰弁20を備える。
【0027】
流路3は、途中で枝分かれして形成され、互いに並列な第1流路21及び第2流路22を有する。減衰弁20として、第1流路21に設けられ作動油の流れに対して抵抗を付与する第1減衰弁20Aと、第2流路22に設けられ作動油の流れに対して抵抗を付与する第2減衰弁20Bと、を有する。第1減衰弁20Aと第2減衰弁20Bは互いに並列に設けられる。
【0028】
第1流路21には、ボトム側室1からロッド側室2への作動油の流れのみを許容する逆止弁23が設けられる。したがって、第1減衰弁20Aは、ボトム側室1からロッド側室2へ向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を付与する。本実施形態では、第1減衰弁20Aは、例えば、固定オリフィスである。
【0029】
第2減衰弁20Bは、ボトム側室1とロッド側室2との間の作動油の流れの双方向のいずれに対しても抵抗を付与する。第2減衰弁20Bは、パイロット圧に応じてポジションが切り換わり、各ポジションで通過する作動油の流れに付与する抵抗が異なる。つまり、第2減衰弁20Bは、パイロット圧に応じて減衰特性が変更可能である。
【0030】
本実施形態では、第2減衰弁20Bは、通過する作動油の流れに所定の抵抗を付与する第1絞りポジション25Aと、第1絞りポジション25Aによって付与される抵抗とは異なる大きさの抵抗を付与する第2絞りポジション25Bと、の2ポジションを有する。つまり、第1絞りポジション25Aと第2絞りポジション25Bとは、通過する作動油の流れに対する圧力損失特性が異なっている。
【0031】
第2減衰弁20Bは、ポジションを切り換える弁体(図示省略)と、弁体を付勢する付勢部材としてのスプリング26と、パイロット圧が供給されるパイロット室27と、を有する。第2減衰弁20Bは、第1絞りポジション25Aとなるように弁体がスプリング26によって付勢されている。第2減衰弁20Bは、パイロット室27に導かれるパイロット圧により弁体がスプリング26の付勢力に抗して移動することによって、第2絞りポジション25Bに切り換わる。
【0032】
油圧緩衝器100が収縮作動した際には、ボトム側室1の圧力が上昇し、ボトム側室1の作動油は、一部が逆止弁23を開弁し第1減衰弁20Aを通過してロッド側室2に導かれ、残りが第2減衰弁20Bを通過してロッド側室2に導かれる。このように、油圧緩衝器100の収縮作動時には、ボトム側室1の作動油は、第1減衰弁20A及び第2減衰弁20Bの両方を通過してロッド側室2に導かれる。このため、油圧緩衝器100は、収縮作動時には、第1減衰弁20A及び第2減衰弁20Bが全体として発揮する流路抵抗に応じた減衰力を発生する。
【0033】
油圧緩衝器100が伸長作動した際には、ロッド側室2の圧力が上昇し、ロッド側室2の作動油は、第2減衰弁20Bを通過してボトム側室1に導かれる。一方、ロッド側室2の圧力上昇によって逆止弁23は閉弁するため、ロッド側室2の作動油は、第1減衰弁20Aを通じてはボトム側室1に導かれない。このため、油圧緩衝器100は、伸長作動時には、第2減衰弁20Bが発揮する流路抵抗に応じた減衰力を発生する。したがって、収縮作動時には第1減衰弁20Aを通じたボトム側室1からロッド側室2への作動油の流れが許容される分、油圧緩衝器100は、伸長作動時の方が収縮作動時よりも大きな減衰力を発生する。これにより、車両が路面の突起を乗り上げたような場合には、油圧緩衝器100は比較的スムーズに収縮作動し、その後の伸長作動時に大きな減衰力を発生して、路面から車体に入力される振動を効果的に減衰させる。
【0034】
なお、第1流路21、第1減衰弁20A、及び逆止弁23は、必須の構成ではなく、第2減衰弁20Bのみで減衰力が発生されるように構成してもよい。
【0035】
油圧緩衝器100は、ボトム側室1の作動油をパイロット圧として第2減衰弁20Bのパイロット室27へ供給するパイロット弁30を備える。パイロット弁30は、パイロット通路35に設けられる。パイロット通路35は、流路3から分岐して設けられ、ボトム側室1と第2減衰弁20Bのパイロット室27とを接続する。パイロット通路35は、ボトム側室1の作動油をパイロット圧として第2減衰弁20Bのパイロット室27へ導く構成であればよく、例えば、ボトム側室1に直接接続されてもよい。
【0036】
ここで、ダンプトラックのような大型の車両では、搭載される油圧緩衝器100も大型であるため、減衰弁20を通過する作動油の流量が多い。また、ダンプトラックのような最大積載重量が大きい車両では、車両全体の重量が大きいため、その重量を支える油圧緩衝器100内の作動油の圧力は高い。さらに、油圧緩衝器100は、シリンダチューブ10内にガスGが封入されておりエアサスペンションの機能も有するため、シリンダチューブ10内の作動油の圧力は高くなる。このように、油圧緩衝器100がダンプトラックのような大型の車両に搭載される場合には、減衰弁20には高圧大流量の作動油が流れる。これに対して、第2減衰弁20Bのパイロット室27へ供給されるパイロット流体は高圧大流量である必要はないため、パイロット通路35は、流路径が流路3と比較して細く形成される。
【0037】
本実施形態では、第2減衰弁20Bのポジションを切り換えるためのパイロット圧として、ボトム側室1の作動油が用いられる。これに代えて、第2減衰弁20Bのポジションを切り換えるためのパイロット圧として、ロッド側室2の作動油を用いてもよい。ただ、車両走行中に車輪が路面の窪みの底に着地した際や、車輪が路面の突起を乗り上げる際には、油圧緩衝器100は一時的に急激に収縮作動するため、ロッド側室2が負圧になる可能性がある。これに対して、ボトム側室1は、車体重量を支持しており、かつボトム側室1には加圧ガスGが封入されているため、油圧緩衝器100の作動中に負圧になることはない。したがって、パイロット圧として、ボトム側室1の作動油を用いる方が好ましい。
【0038】
パイロット弁30は、パイロット圧を供給する供給ポジション30Aと、パイロット圧の供給を遮断する第1遮断ポジション30Bと、パイロット圧の供給を遮断する第2遮断ポジション30Cと、の3ポジションを有する。
【0039】
パイロット弁30は、パイロット圧によりポジションが切り換えられるパイロット駆動型の弁である。パイロット弁30は、ポジションを切り換える弁体としてのスプール弁(図示省略)と、ボトム側室1から第1パイロット通路36を通じて作動油が導かれる第1パイロット室31と、弁体を挟んで第1パイロット室31に対向して設けられ、ロッド側室2から第2パイロット通路37を通じて作動油が導かれる第2パイロット室32と、第1パイロット室31のパイロット圧と同じ方向に弁体を付勢する第1付勢部材としての第1スプリング33と、第2パイロット室32のパイロット圧と同じ方向に弁体を付勢する第2付勢部材としての第2スプリング34と、を有する。
【0040】
第1パイロット室31のパイロット圧と第2パイロット室32のパイロット圧が作用するスプール弁の受圧面積は同等である。また、第1スプリング33と第2スプリング34の付勢力も同等である。パイロット弁30は、第1パイロット室31のパイロット圧と第2パイロット室32のパイロット圧が同等となった場合に、供給ポジション30Aとなる。また、パイロット弁30は、第1パイロット室31のパイロット圧が第2パイロット室32のパイロット圧よりも大きくなり、スプール弁が第2スプリング34の付勢力に抗して移動することによって、第1遮断ポジション30Bに切り換わる。また、パイロット弁30は、第2パイロット室32のパイロット圧が第1パイロット室31のパイロット圧よりも大きくなり、スプール弁が第1スプリング33の付勢力に抗して移動することによって、第2遮断ポジション30Cに切り換わる。
【0041】
第1パイロット通路36は、図1ではパイロット通路35から分岐して設けられる。しかし、第1パイロット通路36は、ボトム側室1の作動油をパイロット圧としてパイロット弁30の第1パイロット室31へ導く構成であればよく、例えば、流路3から分岐して設けられてもよく、また、ボトム側室1に直接接続されてもよい。
【0042】
第2パイロット通路37は、図1では流路3から分岐して設けられる。しかし、第2パイロット通路37は、ロッド側室2の作動油をパイロット圧としてパイロット弁30の第2パイロット室32へ導く構成であればよく、例えば、ロッド側室2に直接接続されてもよい。
【0043】
ここで、ダンプトラックのような最大積載重量が大きい車両では、積荷が空である空荷状態と、積荷が所定重量ある積荷状態とでは、積荷を含めた車両全体の重量が大きく異なるため、油圧緩衝器100で減衰するエネルギーも大きく異なる。そこで、本実施形態では、パイロット弁30により、車両の積載重量に応じて第2減衰弁20Bの減衰特性が変更される。以下に詳しく説明する。
【0044】
図2は、空荷状態での油圧緩衝器100の作動を説明する図であり、図3は積荷状態での油圧緩衝器100の作動を説明する図である。図2及び図3において、(a)は油圧緩衝器100の非伸縮作動時であり、(b)は油圧緩衝器100の収縮作動時であり、(c)は油圧緩衝器100の伸長作動時である。
【0045】
まず、図2を参照して、空荷状態での油圧緩衝器100の作動について説明する。空荷状態では、車両全体の重量は小さいため、油圧緩衝器100の内部圧力は小さい。また、車両が停止状態であって油圧緩衝器100の非伸縮作動時、又は車両走行中であっても走行路面が平坦であり油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、ボトム側室1とロッド側室2の間で作動油の流れがないため、ボトム側室1とロッド側室2は同圧となる。このように、空荷状態であって油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、ボトム側室1とロッド側室2は低圧でかつ同圧となる。これにより、図2(a)に示すように、パイロット弁30は、第1パイロット室31のパイロット圧と第2パイロット室32のパイロット圧とが同圧となるため、供給ポジション30Aとなり、ボトム側室1の作動油がパイロット圧として第2減衰弁20Bのパイロット室27へ供給される。このとき、ボトム側室1の作動油は低圧であるため、第2減衰弁20Bは、スプリング26の付勢力により第1絞りポジション25Aとなる。このように、空荷状態であって油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、第2減衰弁20Bのパイロット室27には低圧のパイロット圧が供給され、第2減衰弁20Bは第1絞りポジション25Aとなる。換言すれば、空荷状態であって油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、パイロット室27のパイロット圧による荷重よりもスプリング26の付勢力が大きくなるように、スプリング26の付勢力が設定される。
【0046】
図2(b)に示すように、油圧緩衝器100の収縮作動時には、ボトム側室1が相対的に高圧、ロッド側室2が相対的に低圧となるため、パイロット弁30は、第1パイロット室31のパイロット圧が第2パイロット室32のパイロット圧よりも大きくなり、スプール弁が第2スプリング34の付勢力に抗して移動し、第1遮断ポジション30Bに切り換わる。これにより、ボトム側室1から第2減衰弁20Bのパイロット室27への高圧のパイロット圧の供給が遮断される。このとき、パイロット通路35のうちパイロット弁30と第2減衰弁20Bのパイロット室27との間であるパイロット弁30の下流部分35aは封止されるため、パイロット室27は、油圧緩衝器100の非伸縮作動時における低圧のパイロット圧に保持される。これにより、第2減衰弁20Bは第1絞りポジション25Aを維持する。
【0047】
図2(c)に示すように、油圧緩衝器100の伸長作動時には、ボトム側室1が相対的に低圧、ロッド側室2が相対的に高圧となるため、パイロット弁30は、第2パイロット室32のパイロット圧が第1パイロット室31のパイロット圧よりも大きくなり、スプール弁が第1スプリング33の付勢力に抗して移動し、第2遮断ポジション30Cに切り換わる。これにより、ボトム側室1から第2減衰弁20Bのパイロット室27への低圧のパイロット圧の供給が遮断される。このとき、パイロット通路35のうちパイロット弁30の下流部分35aは封止されるため、パイロット室27は、油圧緩衝器100の非伸縮作動時における低圧のパイロット圧に保持される。これにより、第2減衰弁20Bは第1絞りポジション25Aを維持する。
【0048】
次に、図3を参照して、積荷状態での油圧緩衝器100の作動について説明する。積荷状態では、車両全体の重量は大きいため、油圧緩衝器100の内部圧力は大きいため、ボトム側室1とロッド側室2の圧力は、空荷状態と比較して相対的に高い中圧となる。また、車両が停止状態であって油圧緩衝器100の非伸縮作動時、又は車両走行中であっても走行路面が平坦であり油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、ボトム側室1とロッド側室2の間で作動油の流れがないため、ボトム側室1とロッド側室2は同圧となる。このように、積荷状態であって油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、ボトム側室1とロッド側室2は、中圧でかつ同圧となる。これにより、図3(a)に示すように、パイロット弁30は、第1パイロット室31のパイロット圧と第2パイロット室32のパイロット圧とが同圧となるため、供給ポジション30Aとなり、ボトム側室1の作動油がパイロット圧として第2減衰弁20Bのパイロット室27へ供給される。このとき、ボトム側室1の作動油は中圧であるため、第2減衰弁20Bは、パイロット室27のパイロット圧により弁体がスプリング26の付勢力に抗して移動することによって、第2絞りポジション25Bに切り換わる。このように、積荷状態であって油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、第2減衰弁20Bのパイロット室27には中圧のパイロット圧が供給され、第2減衰弁20Bは第2絞りポジション25Bとなる。換言すれば、積荷状態であって油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、パイロット室27のパイロット圧による荷重がスプリング26の付勢力よりも大きくなるように、スプリング26の付勢力が設定される。つまり、スプリング26の付勢力により、第2減衰弁20Bが第1絞りポジション25Aから第2絞りポジション25Bに切り換わるタイミングが決まる。第2減衰弁20Bの切り換えタイミングは、車両の固体差や積荷の種類に応じて調節可能であることが好ましい。その場合、第2減衰弁20Bの切り換えタイミングは、ナット等によるスプリング26の初期荷重を変更することによって調節される。
【0049】
図3(b)に示すように、油圧緩衝器100の収縮作動時には、ボトム側室1が相対的に高圧、ロッド側室2が相対的に低圧となるため、パイロット弁30は、第1パイロット室31のパイロット圧が第2パイロット室32のパイロット圧よりも大きくなり、スプール弁が第2スプリング34の付勢力に抗して移動し、第1遮断ポジション30Bに切り換わる。これにより、ボトム側室1から第2減衰弁20Bのパイロット室27への高圧のパイロット圧の供給が遮断される。このとき、パイロット通路35のうちパイロット弁30の下流部分35aは封止されるため、パイロット室27は、油圧緩衝器100の非伸縮作動時における中圧のパイロット圧に保持される。これにより、第2減衰弁20Bは第2絞りポジション25Bを維持する。
【0050】
図3(c)に示すように、油圧緩衝器100の伸長作動時には、ボトム側室1が相対的に低圧、ロッド側室2が相対的に高圧となるため、パイロット弁30は、第2パイロット室32のパイロット圧が第1パイロット室31のパイロット圧よりも大きくなり、スプール弁が第1スプリング33の付勢力に抗して移動し、第2遮断ポジション30Cに切り換わる。これにより、ボトム側室1から第2減衰弁20Bのパイロット室27への低圧のパイロット圧の供給が遮断される。このとき、パイロット通路35のうちパイロット弁30の下流部分35aは封止されるため、パイロット室27は、油圧緩衝器100の非伸縮作動時における中圧のパイロット圧に保持される。これにより、第2減衰弁20Bは第2絞りポジション25Bを維持する。
【0051】
積荷状態における第2減衰弁20Bのパイロット室27のパイロット圧は中圧となるが、この中圧は、空荷状態及び積荷状態の油圧緩衝器100の伸縮作動時におけるボトム側室1及びロッド側室2のうち高圧側の圧力よりも低く、低圧側の圧力よりも高い圧力である。
【0052】
以上のように、油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、パイロット弁30は、第2減衰弁20Bのパイロット室27へボトム側室1の作動油をパイロット圧として供給し、油圧緩衝器100の伸縮作動時には、パイロット弁30は、油圧緩衝器100の非伸縮作動時におけるパイロット室27のパイロット圧を保持する。このように、第2減衰弁20Bのパイロット室27のパイロット圧は、油圧緩衝器100の非伸縮作動時のボトム側室1の圧力となる。つまり、車両の積載重量に応じて第2減衰弁20Bのパイロット室27のパイロット圧が決まる。具体的には、積載重量が所定重量未満の場合には、第2減衰弁20Bのパイロット室27のパイロット圧は低圧となるため、第2減衰弁20Bは第1絞りポジション25Aとなり、積載重量が所定重量以上の場合には、第2減衰弁20Bのパイロット室27のパイロット圧は中圧となるため、第2減衰弁20Bは第2絞りポジション25Bとなる。したがって、油圧緩衝器100は、車両の積載重量に応じた最適な減衰特性を発揮することができる。
【0053】
油圧緩衝器100の伸縮作動中、油圧緩衝器100のボトム側室1とロッド側室2の圧力の高低は、伸縮の都度切り換わるため、その切り換わりの際、瞬間的にボトム側室1とロッド側室2が同圧となる。その際に、ボトム側室1の圧力がパイロット弁30を通じて第2減衰弁20Bのパイロット室27に導かれないように、図4に示すように、パイロット通路35に絞りとしてのオリフィス38を設けるのが好ましい。オリフィス38を設けることにより、油圧緩衝器100の伸縮作動中に、ボトム側室1の圧力がパイロット弁30を通じて第2減衰弁20Bのパイロット室27に伝わりに難くなるため、油圧緩衝器100の伸縮作動中に、第2減衰弁20Bが意図せずに切り換わることを防止することができる。なお、図4では、オリフィス38は、パイロット通路35のうちパイロット弁30の上流側に設けられる。しかし、オリフィス38は、パイロット通路35のうちパイロット弁30の下流側に設けられてもよい。
【0054】
次に、図5を参照して、油圧緩衝器100の構造、及び油圧緩衝器100への減衰弁20及びパイロット弁30の搭載例について説明する。図5は、油圧緩衝器100の断面図である。
【0055】
シリンダチューブ10は、有底筒状であり、その開口端にはロッド12が摺動自在に挿通するシリンダヘッド11が設けられる。シリンダチューブ10の閉塞端(シリンダヘッド11とは逆側の端部)には、油圧緩衝器100を車両に取り付けるための取付部10aが設けられる。
【0056】
ロッド12は、ピストン14に連結されシリンダチューブ10のシリンダヘッド11に摺動自在に支持されるロッド本体51と、シリンダチューブ10の外部に露出するヘッド部52と、を有する。
【0057】
ロッド本体51には、ピストン14側の端面に開口するロッド内空間40が形成される。ロッド本体51の端部は、ボルト(図示省略)によってピストン14に連結される。
【0058】
ヘッド部52は、ロッド本体51よりも大径に形成され、油圧緩衝器100のストローク位置に関わらず、シリンダチューブ10の外部に常時露出する。つまり、ヘッド部52は、ロッド12において、シリンダヘッド11に対して摺動しない部分である。ヘッド部52は、例えば、ロッド本体51とは別体に形成され、溶接等によりロッド本体51の端部に接続される。なお、ロッド本体51とヘッド部52は、一体に形成されてもよい。
【0059】
ヘッド部52には、油圧緩衝器100の収縮作動時のストロークエンドを規定するストッパ部52aと、油圧緩衝器100を車両に取り付けるための取付部52bと、が設けられる。ストッパ部52aには、油圧緩衝器100の収縮作動時にストロークエンドでのシリンダヘッド11とロッド12との衝突を防止する環状のクッションリング53が設けられる。
【0060】
ロッド内空間40には、円筒状のパイプ43が設けられる。パイプ43の一端は、ヘッド部52に形成された挿入穴52cに挿入され、他端はピストン14に形成された挿入穴14aに挿入される。このように、パイプ43は、ヘッド部52とピストン14によって挟まれて設けられる。
【0061】
ロッド内空間40にパイプ43が設けられることによって、ロッド内空間40は、パイプ43の中空部である第1空間41と、パイプ43の外周面とロッド本体51の内周面によって区画された環状の第2空間42と、に区画される。第1空間41は、ピストン14に形成された貫通孔14bを通じてボトム側室1に連通する。第2空間42は、ロッド12のロッド本体51に形成された複数の貫通孔51aによってロッド側室2と連通する。このように、ロッド内空間40は、ボトム側室1に連通する第1空間41と、ロッド側室2に連通する第2空間42と、を有する。第1空間41及び第2空間42は、ボトム側室1とロッド側室2を接続する流路3の一部を構成する。
【0062】
流路3、第1減衰弁20A、第2減衰弁20B、及びパイロット弁30は、ロッド12のヘッド部52に設けられる。パイロット通路35、第1パイロット通路36、及び第2パイロット通路37もヘッド部52に設けられる。第2減衰弁20Bのパイロット室27には、ボトム側室1から第1空間41及びパイロット通路35を通じてパイロット圧が導かれる。また、パイロット弁30の第1パイロット室31には、ボトム側室1から第1空間41及び第1パイロット通路36を通じてパイロット圧が導かれる。また、パイロット弁30の第2パイロット室32には、ロッド側室2から第2空間42及び第2パイロット通路37を通じてパイロット圧が導かれる。このように、各パイロット圧は、ロッド内空間40及びヘッド部52に設けられる各パイロット通路35~37を通じて導かれる構成であって、油圧緩衝器100の鉛直上方側に溜まっているガスGに対して鉛直下方側から取り出される。したがって、パイロット流体にガスGが混入することが防止されるため、第2減衰弁20B及びパイロット弁30の作動が安定する。このように、ガスGが封入される気室をフリーピストンにより区画しない場合であっても、パイロット圧をガスGに対して鉛直下方側から取り出すことによって、パイロット流体へのガスGの混入を防ぐことができる。
【0063】
なお、第2減衰弁20Bの駆動用のパイロット圧としてロッド側室2の作動油を用いる場合には、第2空間42及びヘッド部52に設けられるパイロット通路を通じて第2減衰弁20Bのパイロット室27にパイロット圧を導くようにすればよい。
【0064】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0065】
油圧緩衝器100では、非伸縮作動時におけるボトム側室1の作動油をパイロット圧として第2減衰弁20Bの減衰特性が変更されるため、積載重量に応じた減衰特性が得られる。また、第2減衰弁20Bへパイロット圧を供給するパイロット弁30は、ボトム側室1から導かれる作動油とロッド側室2から導かれる作動油とによって作動する。このように、第2減衰弁20B及びパイロット弁30は、パイロット駆動型であるため、ソレノイド等の電子機器が不要である。よって、積載重量に応じて減衰特性を変更可能な構成を低コストで実現することができる。
【0066】
以下に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0067】
(1)図2及び図3では、空荷状態において第2減衰弁20Bは第1絞りポジション25Aとなり、積荷状態において第2減衰弁20Bは第2絞りポジション25Bとなる例について説明した。しかし、積載重量が所定重量未満の場合において第2減衰弁20Bが第1絞りポジション25Aとなり、積載重量が所定重量以上の場合において第2減衰弁20Bが第2絞りポジション25Bとなるようにしてもよい。
【0068】
(2)図6に示す油圧緩衝器101では、第1減衰弁20Aも、パイロット圧に応じて減衰特性が変更可能である。つまり、第1減衰弁20Aは、上記実施形態に係る油圧緩衝器100の第2減衰弁20Bと同一の構成である。第1減衰弁20A及び第2減衰弁20Bの双方へパイロット弁30からパイロット圧が供給される。本変形例では、車両の積載重量に応じて、より最適な減衰特性を実現することができる。
【0069】
なお、油圧緩衝器101において、第1流路21に設けられる逆止弁23を逆向きに設けてもよい。つまり、第1減衰弁20Aは、ボトム側室1及びロッド側室2の一方から他方に向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を付与するように構成してもよい。さらに、第2減衰弁20Bが設けられる第2流路22に、ロッド側室2からボトム側室1への作動油の流れのみを許容する逆止弁を設けてもよい。その場合には、第2減衰弁20Bは、ロッド側室2からボトム側室1へ向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を付与する。
【0070】
(3)図7に示す油圧緩衝器102では、第2減衰弁20Bは、第1絞りポジション25A及び第2絞りポジション25Bに加えて、第1絞りポジション25A及び第2絞りポジション25Bによって付与される抵抗とは異なる大きさの抵抗を付与する第3絞りポジション25Cを有する。この場合には、第2減衰弁20Bは、油圧緩衝器100の非伸縮作動時おいてパイロット室27へ供給されるパイロット圧に応じて、3段階に減衰特性が変更される。例えば、空荷状態、積載重量が所定重量未満の積荷状態、及び積載重量が所定重量以上の積荷状態において、第2減衰弁20Bがそれぞれ第1絞りポジション25A、第2絞りポジション25B、及び第3絞りポジション25Cに設定されるようにすればよい。このように、第2減衰弁20Bは、油圧緩衝器100の非伸縮作動時おいてパイロット室27へ供給されるパイロット圧に応じて、3段階以上又は無段階に減衰特性が変更可能に構成されてもよい。本変形例でも、車両の積載重量に応じて、より最適な減衰特性を実現することができる。
【0071】
(4)上記実施形態では、油圧緩衝器100は、シリンダチューブ10が上側、ロッド12が下側となる向きに車両に搭載される形態について説明した。しかし、これとは反対に、油圧緩衝器100は、シリンダチューブ10が下側、ロッド12が上側となる向きに車両に搭載されてもよい。この場合、ボトム側室1のガスGが上方へ移動しないように、作動油が封入される液室とガスが封入される気室とに隔てるフリーピストンをボトム側室1内に設ける必要がある。または、シリンダチューブ10外に、ボトム側室1に接続されたアキュムレータを設け、アキュムレータに気室を設けてもよい。
【0072】
(5)上記実施形態では、油圧緩衝器100は、ロッド12の先端がシリンダチューブ10の外部に突出する片ロッド型であるが、ロッド12の両端がシリンダチューブ10の外部に突出する両ロッド型でもよい。
【0073】
以下、本発明の各実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0074】
車両に搭載される油圧緩衝器100(流体圧緩衝器)は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されるロッド12と、ロッド12に連結されシリンダチューブ10内をボトム側室1とロッド側室2とに区画するピストン14と、ボトム側室1とロッド側室2との間の作動油(作動流体)の流れに対して抵抗を付与し、パイロット圧に応じて減衰特性が変更可能な減衰弁20と、ボトム側室1又はロッド側室2の作動油をパイロット圧として減衰弁20のパイロット室27へ供給するパイロット弁30と、を備え、パイロット弁30は、ボトム側室1から作動油が導かれる第1パイロット室31と、第1パイロット室31に対向して設けられ、ロッド側室2から作動油が導かれる第2パイロット室32と、を有し、油圧緩衝器100の非伸縮作動時には、パイロット弁30は、減衰弁20のパイロット室27へパイロット圧を供給し、油圧緩衝器100の伸縮作動時には、パイロット弁30は、油圧緩衝器100の非伸縮作動時における減衰弁20のパイロット室27のパイロット圧を保持する。
【0075】
また、パイロット弁30は、油圧緩衝器100の非伸縮作動時に第1パイロット室31と第2パイロット室32が同圧となることにより切り換わる供給ポジション30Aと、油圧緩衝器100の伸縮作動時に第1パイロット室31が高圧、第2パイロット室32が低圧となることにより切り換わる第1遮断ポジション30Bと、油圧緩衝器100の伸縮作動時に第2パイロット室32が高圧、第1パイロット室31が低圧となることにより切り換わる第2遮断ポジション30Cと、を有する。
【0076】
これらの構成では、油圧緩衝器100の非伸縮作動時におけるボトム側室1又はロッド側室2の作動油をパイロット圧として減衰弁20の減衰特性が変更されるため、積載重量に応じた減衰特性が得られる。また、減衰弁20へパイロット圧を供給するパイロット弁30は、ボトム側室1から導かれる作動油とロッド側室2から導かれる作動油とによって作動する。よって、積載重量に応じて減衰特性を変更可能な構成を低コストで実現することができる。
【0077】
また、油圧緩衝器100は、パイロット弁30が設けられ、ボトム側室1又はロッド側室2と減衰弁20のパイロット室27とを接続するパイロット通路35と、パイロット通路35に設けられ、パイロット流体の流れに対して抵抗を付与するオリフィス38(絞り)と、をさらに備える。
【0078】
この構成では、オリフィス38により、油圧緩衝器100の伸縮作動中に、ボトム側室1又はロッド側室2の圧力がパイロット弁30を通じて減衰弁20のパイロット室27に伝わりに難くなるため、減衰弁20が意図せずに切り換わることを防止することができる。
【0079】
また、パイロット圧として、ボトム側室1の作動油が用いられ、ボトム側室1には加圧ガスGが封入されている。
【0080】
この構成では、ボトム側室1には加圧ガスGが封入されているため、油圧緩衝器100の作動中にボトム側室1が負圧になることはないため、減衰弁20を安定して動作させることができる。
【0081】
また、減衰弁20として、互いに並列に設けられ作動油の流れに対して抵抗を付与する第1減衰弁20A及び第2減衰弁20Bを有し、第1減衰弁20Aは、ボトム側室1及びロッド側室2の一方から他方に向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を付与する。
【0082】
また、減衰弁20は、油圧緩衝器102の非伸縮作動時おいてパイロット室27へ供給されるパイロット圧に応じて3段階以上又は無段階に減衰特性が変更可能である。
【0083】
これらの構成では、車両の状態に応じて最適な減衰特性を実現することができる。
【0084】
また、ロッド12は、ピストン14に連結されシリンダチューブ10に摺動自在に支持されるロッド本体51と、シリンダチューブ10の外部に露出するヘッド部52と、ロッド本体51の内部に形成されるロッド内空間40と、を有し、ロッド内空間40は、ボトム側室1に連通する第1空間41と、ロッド側室2に連通する第2空間42と、を有し、減衰弁20及びパイロット弁30は、ヘッド部52に設けられ、減衰弁20のパイロット室27へ供給されるパイロット圧は、第1空間41又は第2空間42を通じて供給される。
【0085】
この構成では、パイロット流体へのガスの混入を防ぐことができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0087】
100,101,102…油圧緩衝器(流体圧緩衝器)、1…ボトム側室、2…ロッド側室、10…シリンダチューブ、12…ロッド、14・・・ピストン、20…減衰弁、20A…第1減衰弁、20B…第2減衰弁、25A…第1絞りポジション、25B…第2絞りポジション、27…パイロット室、30…パイロット弁、30A…供給ポジション、30B…第1遮断ポジション、30C…第2遮断ポジション、31…第1パイロット室、32…第2パイロット室、35…パイロット通路、36…第1パイロット通路、37…第2パイロット通路、38…オリフィス(絞り)、40…ロッド内空間、41…第1空間、42…第2空間、51…ロッド本体、52…ヘッド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7