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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20231107BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G06F3/041 520
G06F3/044 120
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020005857
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021114075
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】島津 賢二
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0050180(US,A1)
【文献】特表2012-533122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0103043(US,A1)
【文献】特開2018-206083(JP,A)
【文献】特開2017-215866(JP,A)
【文献】特開2016-157303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整列して配置された複数本の電極を有するタッチパネルと、
前記タッチパネルの表面から離れた位置にある指示体までの高さを検出するために用いる検出用信号を生成して前記複数本の電極に入力する検出用信号生成手段と、
前記検出用信号が前記複数本の電極に入力されたときに前記電極に現れる信号成分に基づいて、前記タッチパネルの表面に沿った前記指示体の位置を検出する位置検出手段と、
前記検出用信号が前記複数本の電極に入力されたときに前記電極に現れる信号成分に基づいて、前記タッチパネルの表面から離れた位置にある前記指示体の高さを検出する高さ検出手段と、
を備え、前記高さ検出手段は、前記指示体の高さ検出を行う際に、前記位置検出手段によって検出した前記指示体の位置が前記タッチパネルの周辺部に含まれるときに、非周辺部に含まれる場合に比べて高さを減じる補正を行うことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記高さ検出手段は、前記非周辺部において所定本数の前記電極に現れる信号成分に基づいて前記指示体の高さ検出を行い、
前記周辺部には、前記所定本数よりも少ない本数の前記電極が含まれることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記周辺部において、前記高さ検出手段は、周辺端部に近づくほど高さ補正の量を大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記電極に現れる信号成分に基づいて、前記指示体と前記電極との間に生じる静電容量に比例する信号強度を測定する信号測定手段をさらに備え、
前記高さ検出手段は、前記位置検出手段によって検出した前記指示体の位置を中心にした所定本数の前記電極に対応する信号強度を合算して前記指示体の高さ検出を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを用いて利用者の指等の位置を検出する入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タッチパネルから離れた位置での操作を可能とするホバー操作が可能なタッチパネルを備えた電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この電子機器では、表示部の表示面より所定の距離離れた所定の面を指示体が占める領域の扁平率がしきい値よりも大きい場合に、指示体がタッチパネルの周辺部にあるものとして、指示体の検出した座標を無効にする処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-178868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示されたタッチパネルでは、タッチパネルの周辺部に指示体が位置する場合の座標を無効にしているが、表示部の使い方によっては、表示部やタッチパネルの周辺部において指示体の位置の検出が必要な場合がある。
【0005】
ところで、このタッチパネルを用いることにより、表示面に平行なX軸方向およびY軸方向に沿った位置だけでなく、表示面に対する垂直位置を検出することができるが、タッチパネルの周辺部において指示体の高さを検出する場合には、指示体の一部がタッチパネルの縁から外側に外れるため、周辺部では指示体に対向する電極の数がそれ以外の場所における数よりも少なくなる。このため、指示体の検出レベルが低くなり、この検出レベルに基づいて判定される指示体の高さが実際の値よりも高くなり、周辺部における検出精度が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、タッチパネルの周辺部における高さ方向の検出精度の悪化を防止することができる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の入力装置は、整列して配置された複数本の電極を有するタッチパネルと、タッチパネルの表面から離れた位置にある指示体までの高さを検出するために用いる検出用信号を生成して複数本の電極に入力する検出用信号生成手段と、検出用信号が複数本の電極に入力されたときに電極に現れる信号成分に基づいて、タッチパネルの表面に沿った指示体の位置を検出する位置検出手段と、検出用信号が複数本の電極に入力されたときに電極に現れる信号成分に基づいて、タッチパネルの表面から離れた位置にある指示体の高さを検出する高さ検出手段とを備え、高さ検出手段は、指示体の高さ検出を行う際に、位置検出手段によって検出した指示体の位置がタッチパネルの周辺部に含まれるときに、非周辺部に含まれる場合に比べて高さを減じる補正を行う。
【0008】
指示体がタッチパネルの周辺部にあって、高さ検出に必要な電極の数が足りない場合であっても、その分だけ高さ位置を低下させる補正を行っているため、指示体の位置に起因する高さ方向の検出精度の悪化を防止することができる。
【0009】
また、上述した高さ検出手段は、非周辺部において所定本数の電極に現れる信号成分に基づいて指示体の高さ検出を行い、周辺部には、所定本数よりも少ない本数の電極が含まれることが望ましい。これにより、指示体の高さ検出に必要な電極の数(所定本数)が足りない周辺部における高さ方向の検出精度を改善することが可能となる。
【0010】
また、上述した周辺部において、高さ検出手段は、周辺端部に近づくほど高さ補正の量を大きくすることが望ましい。これにより、指示体の位置が周辺端部に近づくにつれて悪化する高さ方向の検出精度を改善することが可能となる。
【0011】
また、上述した電極に現れる信号成分に基づいて、指示体と電極との間に生じる静電容量に比例する信号強度を測定する信号測定手段をさらに備え、高さ検出手段は、位置検出手段によって検出した指示体の位置を中心にした所定本数の電極に対応する信号強度を合算して指示体の高さ検出を行うことが望ましい。このように所定本数の電極に対応する信号強度を合算して高さ検出を行う場合には、周辺部において検出対象の電極数が所定本数に満たない場合に生じる合算値の低下を補正によって補うことができるため、周辺部における高さ方向の検出精度の悪化を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態の入力装置の構成を示す図である。
図2】タッチパネルに含まれる透明電極の概要を示す図である。
図3】透明電極の具体例を示す図である。
図4】信号測定部の出力信号を示す図である。
図5】(1)式が適用される非周辺部と(1)式が適用されない周辺部を示す図である。
図6】指示体の高さ検出を行う入力装置の動作手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態の入力装置について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一実施形態の入力装置の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の入力装置100は、タッチパネル110、ホバー信号生成部120、信号測定部130、XY位置検出部140、高さ検出部150を備えている。
【0015】
タッチパネル110は、LCD(液晶表示装置)などで構成された表示部200の表示面に重ねて配されており、指示体の位置を検出するために用いられる整列して配置された複数本の透明電極112、114を有する。指示体としては、例えば利用者の指先を想定している。
【0016】
図2は、タッチパネル110に含まれる透明電極112、114の概要を示す図である。図2に示すように、タッチパネル110には、X軸方向(横方向)に沿って等間隔で整列して配置されたm本の透明電極112と、Y軸方向(縦方向)に沿って等間隔で整列して配置されたn本の透明電極114とが、互いに直交した状態で形成されている。
【0017】
なお、図2では、2種類の透明電極112、114を単純な棒状の電極として図示したが、実際には、図3に示すような矩形を連続して配置したような形状にしたり、その他の形状としてもよい。
【0018】
また、本実施形態では、ホバー操作を行うためにタッチパネル110に近づけた指示体について、タッチパネル110の表面に沿ったX座標位置(X位置)とY座標位置(Y位置)と、表面から離れるZ座標位置(高さ)とをタッチパネル110を用いて検出する。
【0019】
ホバー信号生成部120は、指示体のX位置、Y位置および高さを検出するために用いられる検出用信号としてのホバー信号を生成して、タッチパネル110に備わった透明電極112、114のそれぞれの一方端に入力する。ホバー信号としては、例えば正弦波信号が用いられる。
【0020】
信号測定部130は、透明電極112、114の他方端に現れる信号成分が入力されており、この信号成分に基づいて、指示体と各透明電極112、114との間に生じる静電容量に比例する信号強度を測定する。本実施形態では、自己容量方式が用いられ、指示体が近づいた透明電極112、114との間に近づいた距離に比例した大きさの静電容量が発生すると、この透明電極112、114の他方端から出力される信号成分のレベルがその分だけ減少する。信号測定部130は、この減少分に対応する強度の信号を測定結果として出力する。
【0021】
図4は、信号測定部130の出力信号を示す図である。図4では、一方の透明電極112の他方端から出力される信号の強度s1~s7が示されている。本実施形態では、指示体が最も近い透明電極112とその両側3本、全体で合計7本の透明電極112の信号の強度s1~s7が測定される。この中で、最も大きい強度s4に対応する透明電極112の位置が、指示体が最も接近して指示体との間の静電容量が最大となった透明電極112の位置であり、指示体のX位置となる。
【0022】
他方の透明電極114についても同様であり、指示体が最も近い透明電極114とその両側3本、全体で合計7本の透明電極114の信号の強度s1~s7が測定される。この中で、最も大きい強度s4に対応する透明電極114の位置が、指示体が最も接近して指示体との間の静電容量が最大となった透明電極114の位置であり、指示体のY位置となる。XY位置検出部140は、このようにして最大の強度s4が測定された一組の透明電極112、114の位置を、指示体のX位置とY位置として検出する。
【0023】
高さ検出部150は、指示体のX位置を中心とした合計7本の透明電極112(図4)の信号強度s1~s7と、指示体のY位置を中心とした合計7本の透明電極114の信号強度s1~s7を合算した値Sに基づいて、指示体の高さHを検出(算出)する。この検出を行うための算出式の一例を以下に示す。
【0024】
H=-ln(S/318.24)×(1/0.062) ・・・(1)
但し、この式に含まれるパラメータは、使用するホバー信号の振幅や周波数、透明電極112、114の抵抗値や形状などに応じて計算あるいは実測により定まる値であり、(1)式ではその一例が示されている。
【0025】
ところで、(1)式に含まれる合算値Sは、7本の透明電極112と7本の透明電極114のそれぞれから出力される信号の強度の合算値であり、これら14本の透明電極112、114から信号が得られない場所では(1)式をそのまま適用することはできない。
【0026】
図5は、(1)式が適用される非周辺部と(1)式が適用されない周辺部を示す図である。図5において、タッチパネル110の周辺部A1は、周辺端部から3本の透明電極112あるいは3本の透明電極114が含まれる範囲であり、非周辺部A2は周辺部A1の内側の範囲である。
【0027】
指示体のX位置およびY位置が非周辺部A2に含まれる場合には、7本の透明電極112と7本の透明電極114から出力される信号の強度を合算可能であり、(1)式を用いて指示体の高さを算出することができる。
【0028】
一方、指示体のX位置あるいはY位置のいずれかが周辺部A1に含まれる場合には、信号測定を行いたい7本の透明電極112、114の一部がタッチパネル110の端部から外れることになり、実際にはこの部分に対応する透明電極が存在せずに、一部の信号を測定することができない。この場合には、この欠落している透明電極に対応する信号強度を加味することができないため、信号強度の合算値Sがその分だけ小さくなり、(1)式をそのまま用いると、指示体の高さHが実際よりも大きくなってしまう。この傾向は、指示体のX位置、Y位置が周辺部A1の端部(外周部)に近づくほど大きくなる。
【0029】
このため、本実施形態では、高さ検出部150は、指示体のX位置、Y位置が周辺部A1に含まれる場合にはその位置に応じて補正(調整)を行っている。(1)式に対して補正を行う場合の算出式の一例を以下に示す。
【0030】
H=-ln(S/318.24)×(1/0.062)
×a/√(x2+y2) ・・・(2)
この式に含まれるa/√(x2+y2)が指示体が周辺部A1に含まれる場合の補正係数である。aは実測から求められる定数である。また、xは非周辺部A2の端部から指示体のX座標までの距離、yは非周辺部A2の端部から指示体のY座標までの距離である。
【0031】
指示体が周辺部A1の端部に近づくほど、信号強度を合算する透明電極112、114の数が減少して合算値が小さくなるため、(1)式を用いると合算値が小さくなった分だけ高さHが高くなってしまうが、(2)式を用いることにより、補正係数a/√(x2+y2)分だけ高さHを減じて調整することで、高さHの誤差を補正することができる。
【0032】
上述したホバー信号生成部120が検出用信号生成手段に、XY位置検出部140が位置検出手段に、高さ検出部150が高さ検出手段に、信号測定部130が信号測定手段にそれぞれ対応する。
【0033】
本実施形態の入力装置100はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。
【0034】
図6は、指示体の高さ検出を行う入力装置100の動作手順を示す流れ図である。ホバー操作における検出動作が開始されると、ホバー信号生成部120は、ホバー信号を生成し、この生成したホバー信号を透明電極112、114の一方端に入力する(ステップ100)。
【0035】
次に、信号測定部130は、透明電極112、114の他方端に現れる信号成分に基づいて、指示体と各透明電極112、114との間に生じる静電容量に比例する信号強度を測定する(ステップ102)。また、信号測定部130は、測定した信号強度に基づいて、接近した指示体を検出した否かを判定する(ステップ104)。指示体が接近していない場合(指示体に対応する信号強度が検出されない場合)には否定判断が行われ、ステップ102に戻って信号強度測定が継続される。
【0036】
また、指示体が接近した場合(指示体に対応する信号強度が検出された場合)にはステップ104の判定において肯定判断が行われる。次に、XY位置検出部140は、信号測定部130によって測定された信号の強度に基づいて、指示体のX位置とY位置を検出する(ステップ106)。
【0037】
次に、高さ検出部150は、指示体のX位置とY位置とに基づいて、指示体が周辺部A1(図5)に含まれるか否かを判定する(ステップ108)。含まれない場合(指示体が非周辺部A2に含まれる場合)には否定判断が行われる。この場合は、高さ検出部150は、指示体のX位置とY位置を中心にした合計14本の透明電極112、114に対応する信号強度の合算値に基づいて、補正なしの(1)式を用いて高さHを算出する(ステップ110)。
【0038】
一方、指示体が周辺部A1に含まれる場合にはステップ108の判定において肯定判断が行われる。この場合は、高さ検出部150は、指示体のX位置とY位置を中心とした合計14本に満たない透明電極112、114に対応する信号強度の合算値に基づいて、補正ありの(2)式を用いて高さHを算出する(ステップ112)。
【0039】
このように、本実施形態の入力装置100では、指示体がタッチパネル110の周辺部A1にあって、高さ検出に必要な透明電極の数が足りない場合(合計14本未満)であっても、その分だけ高さ位置を低下させる補正を行っているため、指示体の位置に起因する高さ方向の検出精度の悪化を防止することができる。
【0040】
また、この補正では、周辺部A1の端部(外周部)に近づくほど高さ補正の量を大きくしており、指示体の位置が外周部に近づくにつれて悪化する高さ方向の検出精度を改善することが可能となる。
【0041】
特に、所定本数(X軸方向とY軸方向のそれぞれについて7本)の透明電極112、114に対応する信号強度を合算して高さ検出を行う場合には、周辺部A1において検出対象の透明電極数が所定本数に満たない場合に生じる合算値の低下を補正によって補うことができるため、周辺部A1における高さ方向の検出精度の悪化を確実に防止することが可能となる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、自己容量方式で指示体のX位置、Y位置や高さを検出するようにしたが、相互容量方式で指示体の位置や高さを検出する場合についても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述したように、本発明によれば、指示体がタッチパネルの周辺部にあって、高さ検出に必要な電極の数が足りなくなる場合であっても、その分だけ高さ位置を増加させる補正を行っているため、指示体の位置に起因する高さ方向の検出精度の悪化を防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 入力装置
110 タッチパネル
112、114 透明電極
120 ホバー信号生成部
130 信号測定部
140 XY位置検出部
150 高さ検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6