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▶ ストライカー・ユーロピアン・ホールディングス・I,リミテッド・ライアビリティ・カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】脊椎インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A61F2/44
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018175719
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2019055191
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】62/560,910
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514318275
【氏名又は名称】ストライカー・ユーロピアン・ホールディングス・I,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ディー・ミルズ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エイ・アルハイド
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・セトランゴル
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・カール・シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・スタインケ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ウィリス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・シポレッティ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド・ジャッチノー
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・エル・ブッシュ,ジュニア
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135243(JP,A)
【文献】国際公開第2010/021612(WO,A1)
【文献】特表2003-526458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側(ないそく)側に延びる内側壁厚又は第1の側壁厚を画定する内側(ないそく)壁又は第1の側壁と、外側(がいそく)側に延びる外側壁厚又は第2の側壁厚を画定する外側(がいそく)壁又は第2の側壁と、後方に延びる後壁厚を有する後壁と、前方に延びる前壁厚を有する前壁とを有する中実フレームと、
前記中実フレーム内に配置された多孔性内層であって、露出した上面及び露出した下面を有する多孔性内層と、
上-下方向に延在する第1の内部空洞であって、前記多孔性内層及び前記中実フレームによって画定される第1の内部空洞と、
を備える脊椎インプラントであって、
前記中実フレームは、前記上面及び前記下面を超えて前記内側壁から前記外側壁に延在する1つ又は複数のリブを有し、後方に延びる多孔性後壁厚及び前方に延びる多孔性前壁厚は、それぞれ、前記後壁厚及び前記前壁厚よりも小さくなっており、内側(ないそく)側に延びる多孔性内側壁厚及び外側(がいそく)側に延びる多孔性外側壁厚は、それぞれ、前記内側壁厚及び前記外側壁厚よりも大きくなっており、
前記前壁厚は、前記多孔内層の外側にある前記前壁の部分によって画定され、前記後壁厚は、前記多孔内層の外側にある前記後壁の部分によって画定される、
脊椎インプラント。
【請求項2】
前記脊椎インプラントは、2つ以上の内部空洞を有し、各空洞は、上-下方向に延在し、前記多孔性内層及び前記中実フレームによって画定されている、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項3】
前記脊椎インプラントは、上-下方向に延在して前記多孔性内層及び前記中実フレームによって画定される第2の内部空洞を有し、クロスバーが内側-外側に延在し、前記2つの空洞を分離しており、前記クロスバーは、前記中実フレームによって画定され、前記第1及び第2の空洞間に流体連通を可能にする窓を備えている、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項4】
前記窓は、前記多孔性内層によって画定されている、請求項3に記載の脊椎インプラント。
【請求項5】
前記外側壁厚及び前記内側壁厚は、少なくとも0.25mmである、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項6】
前記外側壁厚及び前記内側壁厚は、前-後方向に沿って変化しており、前記壁厚は、前端及び後端において最大値を有し、前記前端と前記後端との間において最小値を有している、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項7】
前記リブは、三角形断面を有し、前記三角形断面の頂点は、前記脊椎インプラントから離れる方に延在している、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項8】
前記リブは、第1及び第2の椎体の椎体終板に係合し、脊椎インプラントを前記椎体間に固定するようになっている、請求項7に記載の脊椎インプラント。
【請求項9】
前記脊椎インプラントは、内側-外側方向に延在する1つ又は複数の空洞を有している、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項10】
前記前壁及び前記後壁は、外科用挿入工具に係合する少なくとも1つの孔を備えている、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項11】
前記前壁及び前記後壁は、前記内部空洞と流体連通する少なくとも1つの孔を備えている、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項12】
前記中実フレームは、金属である、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項13】
前記金属は、チタンである、請求項12に記載の脊椎インプラント。
【請求項14】
前記多孔性内層は、400μmから500μmの間の平均孔径を有している、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項15】
内側(ないそく)壁、外側(がいそく)壁、後壁、及び前壁を有する中実フレームであって、前記後壁は前記後壁を横切って後方に延びる後壁厚を有し、前記前壁は前記前壁を横切って前方に延びる前壁厚を有し、前記前壁厚が前記後壁厚よりも小さい中実フレームと、
前記中実フレーム内に配置された多孔性内層であって、露出した上面及び露出した下面を有する多孔性内層と、
を備える脊椎インプラントであって、
前記中実フレームは、前記上面及び前記下面を超えて前記内側壁から前記外側壁に延在する1つ又は複数のリブを有しており、
前記前壁厚は、前記多孔内層の外側にある前記前壁の部分によって画定され、前記後壁厚は、前記多孔性内層の外側にある前記後壁の部分によって画定される、
脊椎インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2017年9月20日に出願された米国仮特許出願第62/560,910号の出願日の利得を主張し、その開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、一般的に、脊椎インプラント及び該脊椎インプラントを製造する方法に関し、詳細には、多孔構造及び中実構造を有する脊椎インプラント及び該脊椎インプラントを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背痛は、多くの異なる病弊によって生じるが、これらの病弊の少なからずいくつかは、脊椎の椎間板に直接影響を与え、この場合、困難な事態を招く。典型的な椎間板の課題として、とりわけ、変性、膨隆、ヘルニア、薄化、及び異常運動が挙げられる。外科手術の分野において広く利用されてきたこのような椎間板の課題を治療する1つの方法は、脊椎融合処置である。この処置では、羅患した椎間板が除去され、椎体スペーサ、インプラント、等を用いることによって、互いに隣接する椎体が一緒に融合される。場合によっては、椎体の全体を除去し、置換することが必要とされることもある。多くの場合、これは、除去された椎体に離接する椎体を一緒に融合するように作用するより大きいインプラントの使用によって達成される。
【0004】
前述のインプラントは、装置と既存の椎体の骨との間の係合を確実にするために機械的な特徴部に頼ることが多い。機械的な特徴部は、脊椎の垂直方向の圧縮荷重と連係し、骨が既存の椎体からインプラント内に成長するまで、該インプラントを適所に維持するように作用する。骨成長を促すために、多くの場合、骨成長促進材料が予め充填されたインプラントが脊椎内に配置される。骨成長促進材料の例として、生体骨、人工材料、等が挙げられる。
【0005】
強力なインプラントー骨接続をさらに確実なものとするために、いくつかの既存のインプラントは、多孔性材料から形成された領域を備えている。この多孔性材料は、骨が該材料内に成長することを可能にするものである。インプラント内に成長する骨が該インプラントを適所に維持する上で有益であることは、殆ど疑いの余地がない。しかし、これらのインプラントは、多くの場合、製造が極めて困難であり、(従って、高価である)。加えて、多孔性材料を組み入れる既存のインプラントは、その多孔性材料の組入れが制限されている。多くの場合、製造上又は強度上の問題によって、多孔性材料は、インプラントの上面及び下面を覆う薄層に制限されており、この場合、わずかな量の骨しかインプラント内に成長しないことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、十分な多孔性材料をもたらすと共に脊椎インプラントの必要な強度を維持する改良された脊椎インプラントが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されるのは、中実材料及び多孔性材料を有するインプラントである。
【0008】
本発明の第1の態様では、中実フレーム及び多孔性内層を有する脊椎インプラントが提示される。脊椎インプラントは、内側壁厚又は第1の側壁厚を画定する内側壁又は第1の側壁と、外側壁厚又は第2の側壁厚を画定する外側壁又は第2の側壁と、後壁厚を画定する後壁と、前壁厚を画定する前壁とを備えているとよい。多孔性内層が、中実フレーム内に配置されているとよい。多孔性内層は、露出した上面及び露出した下面を有しているとよい。第1の内部空洞が、上-下方向に延在しているとよく、多孔性内層及び中実フレームによって画定されているとよい。中実フレームは、上面及び下面を超えて内側壁から外側壁に延在する1つ又は複数のリブを有しているとよい。多孔性後壁厚及び多孔性前壁厚は、それぞれ、後壁厚及び前壁厚よりも小さくなっているとよい。多孔性内側壁厚及び多孔性外側壁厚は、それぞれ、内側壁厚及び外側壁厚よりも大きくなっているとよい。
【0009】
この第1の態様によれば、脊椎インプラントは、2つ以上の内部空洞を有していてもよい。各空洞は、上-下方向に延在し、多孔性内層及び中実フレームによって画定されていてもよい。脊椎インプラントは、上-下方向に延在して多孔性内層及び中実フレームによって画定される第2の内部空洞を有していてもよい。クロスバーが内側-外側方向に延在し、2つの空洞を分離していてもよい。クロスバーは、中実フレームによって画定されていてもよく、第1及び第2の空洞間に流体連通を可能にする窓を備えていてもよい。窓は、多孔性内層によって画定されていてもよい。
【0010】
さらに、第1の態様によれば、外側壁厚及び内側壁厚は、少なくとも0.25mmであってもよい。
【0011】
さらに、第1の態様によれば、外側壁厚及び内側壁厚は、前-後方向に沿って変化していてもよい。壁厚は、前端及び後端において最大値を有し、前端と後端との間において最小値を有していてもよい。
【0012】
さらに、第1の態様によれば、リブは、三角形断面を有していてもよく、三角形断面の頂点は、脊椎インプラントから離れる方に延在していてもよい。リブは、第1及び第2の椎体の椎体終板に係合し、脊椎インプラントを椎体間に固定するようになっていてもよい。脊椎インプラントは、内側-外側方向に延在する1つ又は複数の空洞を有していてもよい。前壁及び後壁は、外科用挿入工具に係合する少なくとも1つの孔を備えていてもよい。該孔の内壁は、中実フレームによって画定されていてもよい。
【0013】
さらに、第1の態様によれば、前壁及び後壁は、内部空洞と流体連通する少なくとも1つの孔を備えていてもよい。該孔の内壁は、多孔性内層及び中実フレームによって画定されていてもよい。中実フレームは、金属であってもよい。該金属は、チタンであってもよい
【0014】
さらに、第1の態様によれば、多孔性内層は、400μmから500μmの間の平均孔径を有していてもよい。脊椎インプラントは、付加製造プロセスによって作製されてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、中実フレーム及び多孔性内層を有する脊椎インプラントが提示される。脊椎インプラントは、内側壁、外側壁、後壁、及び前壁を有する中実フレームを有しているとよい。多孔性内層が、中実フレーム内に配置されているとよい。多孔性内層は、露出した上面及び露出した下面を有しているとよい。中実フレームは、上面及び下面を超えて内側壁から外側壁に延在する1つ又は複数のリブを有しているとよい。
【0016】
本発明の第3の態様では、インプラントアセンブリが提示される。インプラントアセンブリは、インプラント及び挿入具を備えているとよい。挿入具は、雄ネジ山を有する近位端及び遠位端を備えるシャフトと、挿入具の基部から遠位側に延在するポストとを有しているとよい。ポストは、シャフトと平行になっているとよい。インプラントは、第1及び第2の孔を有しているとよい。第2の孔は、ポストを受け入れるように構成されているとよく、第1の孔は、挿入具をインプラントに固定するために雄ネジ山に螺合する雌ネジ山を有しているとよい。
【0017】
本発明の第4の態様では、挿入具を用いて脊椎インプラントを配置する方法が提示される。この実施形態による方法は、挿入具のポストの遠位端を脊椎インプラントの第1の孔に配置するステップと、挿入具のシャフトの遠位先端を脊椎インプラントの第2の孔内に係合させることによって、脊椎インプラントを挿入具に固定するステップと、挿入具を用いて、脊椎インプラントを目標部位に配置するステップと、脊椎インプラントから挿入具のポスト及びシャフトを離脱させるステップと、を含んでいるとよい。
【0018】
本発明の主題及び本発明の種々の利点は、添付の図面に基づく以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による脊椎インプラントの前斜視図である。
図2図1の脊椎インプラントの前面図である。
図3図1の脊椎インプラントの上面図である。
図4図2の脊椎インプラントの線A-Aに沿った上面断面図である。
図5図3の脊椎インプラントの線B-Bに沿った斜視断面図である。
図6図1の脊椎インプラントの側面図である。
図7図4の脊椎インプラントの線C-Cに沿った部分側断面図である。
図8】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの前斜視図である。
図9図8の脊椎インプラントの線D-Dに沿った上面断面図である。
図10図8の脊椎インプラントの線E-Eに沿った側断面図である。
図11】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの前斜視図である。
図12図11の脊椎インプラントの上面図である。
図13図11の脊椎インプラントの前面図である。
図14図13の脊椎インプラントの線F-Fに沿った斜視断面図である。
図15図14の脊椎インプラントの線G-Gに沿った前断面図である。
図16図11の脊椎インプラントの詳細な断面図である。
図17】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの前面斜視図である。
図18図17の脊椎インプラントの分解斜視図である。
図19図17の脊椎インプラントのスペーサ部分の上面図である。
図20】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの前斜視図である。
図21図20の脊椎インプラントの上面図である。
図22】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの前斜視図である。
図23図22の脊椎インプラントの線H-Hに沿った斜視断面図である。
図24図22の脊椎インプラントの線I-Iに沿った上面断面図である。
図25図22の脊椎インプラントの中実体の前斜視図である。
図26A】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの前斜視図である。
図26B図26Aの脊椎インプラントの後斜視図である。
図27図26Bの脊椎インプラントの線J-Jに沿った上斜視図である。
図28】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの上斜視図である。
図29図28の脊椎インプラントの線K-Kに沿った側断面図である。
図30】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの上斜視図である。
図31図30の脊椎インプラントの線L-Lに沿った上面断面図である。
図32】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの上斜視図である。
図33図32の脊椎インプラントの線M-Mに沿った上面断面図である。
図34】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの上斜視図である。
図35図34の脊椎インプラントの線N-Nに沿った上面断面図である。
図36】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの上斜視図である。
図37図36の脊椎インプラントの線P-Pに沿った底面断面図である。
図38図36の脊椎インプラントの線Q-Qに沿った底面断面図である。
図39】本発明の他の実施形態による脊椎インプラントの上斜視図である。
図40図39の脊椎インプラントの線R-Rに沿った底面断面図である。
図41図39の脊椎インプラントの線S-Sに沿った底面断面図である。
図42】本発明の実施形態による挿入具の斜視図である。
図43図1の脊椎インプラント及び脊椎プレートに係合している図42の挿入具の略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面に示される本発明の実施形態について説明する。図面の全体を通して、同一又は同様の特徴部を指すのに、同一又は同様の参照番号が可能な限り用いられる。図面は、簡素化されており、正確な縮尺によって描かれていないことに留意されたい。加えて、明細書に用いられる「a(ある1つの)」という用語は、「at least one(少なくとも1つの)」を意味する。専門用語は、特定された用語、その派生語、及び同様の意味の用語を含むものとする。
【0021】
本開示の好ましい実施形態を説明する上で、人体を記述するのに用いられる指向命名法が参照される。この指向命名法は、便宜のためにのみ用いられ、本発明の範囲を制限することを意図しないことに留意されたい。例えば、本明細書において人体の骨又は他の部分を参照する時に用いられる「anterior(前方)」という用語は、人体の正面に向かう方を意味し、「posterior(後方)」という用語は、人体の背面に向かう方を意味している。「medial (内側)」という用語は、人体の中線に向かう方を意味し、「lateral(外側)」という用語は、人体の中線から離れる方を意味している。場合によっては、本明細書に開示される実施形態は、人体の中線に配置されることがある。この場合、前-後方向から見た時、「medial」という用語は、該実施形態の左側を意味し、「lateral」という用語は、該実施形態の右側を意味することになる。「superior(上方)」という用語は、頭部に近い方を意味し、「inferior(下方)」という用語は、頭部から離れる方を意味している。
【0022】
図1図7は、本発明の第1の実施形態による脊椎インプラント100を示している。脊椎インプラント100は、図示されるように、中実及び多孔構造を有する頚椎体間装置である。インプラント100は、Howmedica Osteonics CorporationによるTritanium?を含む多孔性チタン合金のような多孔性金属から構成されていてもよいし、又は多孔性金属面を有していてもよい。しかし、他の実施形態に関連する以下の検討から容易に明らかになるように、本発明は、インプラント設計のどのような特定の形式にも制限されるものではない。むしろ、本発明のいくつかの特徴は、種々の形式のインプラントに実施可能であることが考慮されている。例えば、本発明によるインプラントは、以下に述べるように、患者の前方又は側方からの移植が行われる手術に用いられるように適合可能になっている。さらに、金属材料から構成されるものとして開示されているが、本発明によるインプラントは、必要な剛性を有するPEEK等のようなポリマー材料から構成されることも考慮されている。加えて、図示される実施形態の各々は、互いに隣接する椎体間に配置されるように設計されているが、本発明によるインプラントは、椎体置換体として用いられるように設計されることも考慮されている。
【0023】
図1図3に示されるように、脊椎インプラント100は、中実周辺壁及び多孔性内層を備えている。中実周辺壁は、中実前壁102、中実後壁104、中実内側壁又は第1の側壁106、及び中実外側壁又は第2の側壁108を備え、これらの壁は、相互接続され、一体壁を形成している。本明細書に開示されるインプラントのいくつかは、対称的であり、人体の中線を中心として対象的に配置されることが意図されているので、「内側(medial)」及び「外側(lateral)という用語は、特定の方位を指す必要がない。これらの壁は、いずれも、横方向に位置すると見なされるとよい。多孔性内層は、これらの中実周辺壁内に配置され、多孔性上面110及び多孔性下面112を有している。中心空洞118が、脊椎インプラント10内を上-下方向に貫通している。中心空洞118は、グラフト窓を形成する中実内面111及び多孔性内面114によって画定されている。また、グラフト窓の内面は、最適な骨成長のために最大量の多孔性材料を含んでいる。図1に最もよく示されるように、中心空洞118の内壁は、多孔性内面114によって実質的に画定されている。多孔性内面の大きな領域によって、脊椎インプラント100内への骨成長のための十分な内面が得られることになる。多孔性内面114は、中実内面111と交互に並び、これによって、空洞剛性が高められる共に、製造性及び製造品質が改良される。中心空洞118は、脊椎インプラント100の長さ及び高さに沿って延在し、例えば、(海綿骨グラフト及び/又は皮質海綿骨グラフトから構成される)自家及び/又は他家骨グラフト材料を該中心空洞内に埋め込むことが可能になっている。一連の鋸歯116が、双方向固定のためにかつケージに対する終板の接触表面積を最大化するために、内側-外側方向において中実周辺壁及び多孔性内面を横切って延在している。以下にさらに詳細に説明するように、鋸歯は、移植された脊椎インプラント100の移動を阻止又は軽減するために椎骨終板に係合して該椎骨終板を把持するように、構成されている。鋸歯は、多くの材料から構成されているとよく、中実先端、中実根本、及び多孔区域を備えているとよい。鋸歯の間隔は、融合を支援するために上下面における多孔性材料の量を最大化するように、設計されている。
【0024】
図3図5に最もよく示されているように、内側壁厚105及び外側壁厚107は、前-後方向に沿って変化している。この開示に記載される壁厚は、特定の壁を横切る表面厚みによって表され、例えば、内側壁の表面厚105が壁厚を指している。脊椎インプラント100は、強度を高めるために、前端及び後端において最大の中実周辺壁厚を有するように構成されている。中心壁領域は、薄くなっており、これによって、多孔層の厚み及びグラフト窓の面積を拡大させ、脊椎インプラント100内への骨成長を促進させることが可能になっている。好ましい実施形態では、単なる例にすぎないが、脊椎インプラント100の強度並びに多孔層及びグラフト窓に対する骨成長の潜在力を最適化させるために、中実前壁厚128は、0.0465インチであるとよく、後壁厚130は、0.0495インチであるとよい。他の実施形態では、中実前壁厚128は、0.465インチであってもよく、後壁厚は、0.495インチであってもよい。前後壁の壁厚の範囲は、約0.01インチから0.80インチの間であるとよい。しかし、他の値も考えられる。内外側壁厚は、少なくとも0.25mmであり、他の実施形態では、0.5mm、0.75mm及び1.0mmであるとよい。内外側壁の壁厚の範囲は、約0.1mmから2mmの間とすることができる。しかし、他の値も考えられる。中実周辺壁は、脊椎インプラントに対して滑らかな面をもたらすように構成されており、これによって、移植中の組織損傷を低減させ、かつ挿入力を軽減させることになる。他の実施形態では、滑らかな表面仕上げをもたらすために表面の一部から材料が機械加工されてもよく、これによって、移植中の組織損傷をさらに防ぐことができる。これは、特に、粗い表面仕上げを有する中実部分をもたらすことが多い3D印刷法又は付加製造プロセスによって形成されたインプラントに当てはまる。他の実施形態では、多孔性内面は、構造的完全性をもたらすために中実であってもよい。さらに、他の実施形態では、圧縮強度を追加するために、空洞内に垂直の中実I字状部分が設けられてもよい。
【0025】
横方向窓120が、中実内側壁106及び中実外側壁108を横切って延在している。横方向窓120は、インプラント100の剛性を低減させると共にX線透視撮像におけるインプラントの横方向外観の視覚化を可能にするものである。横方向窓は、これらの機能を達成するためにテーパが付されていてもよいし、又はどのような形状に構成されていてもよい。第1の孔122及び第2の孔124が、中実前壁102及び中実後壁104に配置されている。他の実施形態では、これらの孔のいずれか又は両方にネジが切られていてもよいし、又は切られていなくてもよい。第1の孔122は、脊椎インプラントの正確な挿入を容易にする回転止め長孔である。第1の孔122は、インプラント100の剛性を低減すると共にX線透視撮像におけるインプラントの前方外観の視覚化を可能にするための第2の横方向窓であってもよい。第2のネジ孔124は、脊椎インプラント100を移植するために挿入工具(図示せず)に係合するように構成されている。図5に最もよく示されるように、横方向窓120、第1の孔122、及び第2のネジ孔124は、これらの孔の剛性を高めるために、中実周辺壁によって画定されており、具体的には、中実層が孔の内側に、すなわち、中心空洞に向かって延在している。脊椎インプラント100は、図6に最もよく示されるように、ノーズ109を備えている。ノーズ109は、第1の孔122及び第2のネジ孔124を備えると共に、椎間腔内への脊椎インプラントの挿入を支援し、場合によっては、椎体の拡張をもたらすために、滑らかな外面を有する楔状に略形作られている。
【0026】
図7は、鋸歯116の詳細図を示している。鋸歯116は、三角形断面領域を有している。他の断面領域、例えば、正方形、台形、1つ又は複数の湾曲壁等を有する同様の形状、等も考えられる。三角形断面領域の頂点は、椎骨終板と係合するために脊椎インプラント100から離れる方に延在している。鋸歯は、中実であり、中実周辺壁と一体化され、中実一体フレームを形成することができる。いくつかの実施形態では、鋸歯116の構成は、中実頂点及び多孔性基部を有するように変更されてもよい。多孔性上面110及び多孔性下面112を超える鋸歯の高さ及びこれらの面に対する角度AIは、椎間腔からの脊椎インプラント100の移動を阻止又は軽減するために鋸歯を椎骨終板にしっかりと接触させることを確実にするように、構成されている。好ましい実施形態では、単なる例にすぎないが、鋸歯の高さが0.014インチの場合、角度AIは、110°であるとよい。他の実施形態では、例えば、鋸歯116の互いに向き合う面が多孔性上下面110,112と直交する場合、(換言すれば、鋸歯116の頂点の内角が40-50°の場合)、鋸歯の高さが0.014-0.030インチであり、壁厚が0.25mmから0.5mmの間にある時、角度AIは、130-140°であるとよい。鋸歯116は、剛性及び製造性を高めるために、多孔性内層115内に延在する中実根本132を有している。横方向窓の周りの中実壁厚は、多孔性材料が損傷しないように保護するための追加的な剛性をもたらすことになる。多孔性区域は、インプラントの上下面に最適な表面領域をもたらすために最大化され、これによって、骨成長の領域が拡大される。全ての領域における中実材料に対する多孔性材料の割合は、装置性能に対する最小レベルの強度を維持するように設計されている。特徴部103は、装置の製造品質を改良すると共に、椎間腔内への挿入中に該領域内の多孔性材料を保護するように設計されている。中実外側壁厚の分布は、脊椎インプラントの周知の負荷軸に強度をもたらすように設計されている。多孔性上下面110,112は、前彎インプラントをもたらすために互いに傾斜し、中実前壁102の高さが中実後壁104の高さよりも大きくなっていてもよい。多孔性上下面110,112間の角度は、約4°とすることができ、他の実施形態では、0.5°から10°の範囲内の種々の値とすることができる。
【0027】
以下、図8図10を参照すると、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント200が示されている。脊椎インプラント200は、脊椎インプラント100と同様であり、それ故、同様の要素に200番台の同様の番号が付されている。例えば、脊椎インプラント200は、中実前壁202、中実後壁204、中実内側壁206、及び中実外側壁208を備え、これらの壁は、相互接続され、一体壁を形成している。しかし、脊椎インプラント200は、中心空洞を有していない。代わって、中実周辺壁によって画定された内部領域の全体が多孔性材料を含んでいる。その結果、脊椎インプラント200は、骨グラフト材料等を必要としない骨成長のために、より大きい表面積及び量の多孔性材料をもたらすことになる。中実鋸歯216が、この実施形態では、内側-外側方向の長さの全体にわたって跨っており、脊椎インプラント200の剛性をさらに高めるようになっている。脊椎インプラント200に存在する多数の鋸歯216によって、椎骨終板との接触及び固定も高められる。脊椎インプラント200は、第1の孔224及び第2のネジ孔222も備えている。脊椎インプラントの上面断面図(図9)に最もよく示されるように、第1の孔224及び第2のネジ孔222は、中実前壁202から多孔性内層215までしか延在していない。この実施形態における盲孔222,224によって、脊椎インプラント200内への多孔層の追加が可能になる。さらに、後壁204は、孔のない連続的な中実壁であり、それ故、脊椎インプラント200の強度が高められる。同様に、図8及び図10に示されるように、脊椎インプラント200は、中実内側壁206及び中実外側壁208に横方向窓を有していない。従って、中実材料は、中実内側壁206及び中実外側壁208において最大化され、これによって、この構造体の強度を高めることができる。横方向窓の大きさ及び位置は、変更可能である。中実部分は、構造の剛性を高めるために、上面から下面に延在しているとよい。
【0028】
図11図16は、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント300を示している。脊椎インプラント300は、脊椎インプラント100と同様であり、それ故、同様の要素に300番台の同様の番号が付されている。例えば、脊椎インプラント300は、中実前壁302、中実後壁304、中実内側壁306、及び中実外側壁308を備え、これらの壁は、相互接続され、一体壁を形成している。脊椎インプラント300は、米国特許第8,349,015号、第9,138,275号、及び第9,138,276号、並びに米国特許出願第14/857,062号に開示されているように、アンカーを受けるアンカー通路344,346によって分離された第1の空洞318及び第2の空洞219を備えている。なお、これらの文献の開示内容は、引用することによって、ここに記載されているかのように含まれるものとする。空洞318,319は、グラフト窓を形成する中実内面311及び多孔性内面314によって画定されている。図11に最もよく示されるように、空洞318、319の内壁は、多孔性内面314によって実質的に画定されている。より大きい多孔性内面314によって、脊椎インプラト300の両空洞内への骨成長のための十分な内面が得られることになる。多孔性内面314は、空洞剛性を高めるために、中実内面311と交互に配置されている。空洞は、脊椎インプラト300の長さに沿って延在し、骨グラフト材料を空洞内に埋め込むことが可能になっている
【0029】
図14及び図15は、脊椎インプラント300の中実周辺壁厚及び多孔層厚が変化している様子を示している。内側壁厚305及び外側壁厚307は、前-後方向に沿って変化しており、強度を高めるために前端及び後端において最大の中実周辺壁厚を有するように構成されている。中心壁領域は、薄くなっており、これによって、多孔層厚及びグラフト窓領域を拡大させ、脊椎インプラント30内への骨成長を促進させることができる。図15に最もよく示されるように、内部の内外側壁厚321,323は、外部の内外側壁厚305,307よりも薄くなっている。好ましい実施形態では、単なる例にすぎないが、脊椎インプラント300の強度並びに多孔層及びグラフト窓に対する骨成長の潜在力を最適化させるために、中実外側壁厚307は、0.020インチであるとよく、多孔性外側壁厚327は、0.046インチであるとよい。他の実施形態では、中実外側壁厚307は、0,20インチであるとよく、多孔性外側壁厚327は、0.46インチであるとよい。中実外側壁厚307の壁厚の範囲は、約0.01インチから0.08インチの間とすることができる。しかし、他の値も考えられる。多孔性外側壁厚327の壁厚の範囲は、約0.01インチから1.0インチの間とすることができる。しかし、他の値も考えられる。
【0030】
鋸歯316の詳細が、図16に示されている。鋸歯316は、三角形断面領域を有している。三角形断面領域の頂点は、椎骨終板と係合するために、脊椎インプラント300から離れる方に延在している。鋸歯は、中実であり、中実周辺壁と一体化され、中実一体フレームを形成している。多孔性上下面310,312を超える鋸歯の高さ及び角度A2は、椎間腔からの脊椎インプラント300の移動を阻止又は軽減するために鋸歯がしっかりと椎骨終板に接触することを確実にするように構成されている。好ましい実施形態では、単なる例にすぎないが、鋸歯の高さが0.025インチの場合、角度A2は、110°であるとよい。鋸歯316は、剛性及び製造性を高めるために、多孔性内層315内に延在する中実根本332を有している。
【0031】
以下、図17図19を参照すると、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント400が示されている。図20及び図21は、本発明のさらに他の実施形態による脊椎インプラント500を示している。脊椎インプラント400,500は、脊椎インプラント300と同様であり、それ故、同様の要素に、それぞれ、400番台及び500番台の同様の番号が付されている。例えば、脊椎インプラント400は、アンカー通路444,446によって分離された第1の空洞418及び第2の空洞419を備えている。同様に、脊椎インプラント500は、アンカー通路544,546によって分離された第1の空洞518及び第2の空洞519を備えている。しかし、脊椎インプラント400は、中実周辺壁に取付け可能なジャケット450を備えている。脊椎インプラント500は、一体化されたジャケット550を備えている。ジャケット450、550は、X線透視撮像におけるインプラントの横方向外観の視覚化を可能にし、かつ椎骨終板に対するインプラントの全高さを示すことができる。ジャケットは、インプラントの全体の強度を高めるために、チタン、他の適切な金属、又はポリマーから作製されているとよい。
【0032】
図22図25は、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント600を示している。脊椎インプラント600は、後方アプローチによる移植に適している。脊椎インプラント600は、脊椎インプラント100と同様であり、それ故、同様の要素に600番台の同様の番号が付されている。例えば、脊椎インプラント600は、中実前壁602、中実後壁604、中実内側壁606、及び中実外側壁608を備えている。しかし、脊椎インプラント600は、クロスバー623によって分離された2つの空洞618,619を有している。各空洞は、中実内側壁606及び中実外側壁608に横方向窓620,621を有している。脊椎インプラント600が後方アプローチによる移植用に構成されているので、挿入工具(図示せず)に係合する第2のネジ孔624は、中実後壁604に位置している。脊椎インプラント600の移植を支援するための回転止め長孔622も、中実後壁に位置している。図23に最もよく示されるように、クロスバー623を通る窓621が、第1の空洞618及び第2の空洞619を互いに連結している。窓621は、第1及び第2の空洞を超える骨成長を容易にするために、多孔性内層によって覆われている。図25に最もよく示されるように、脊椎インプラント600は、前述の実施形態において検討した鋸歯に代わって歯616を有している。歯616は、脊椎インプラント構造に強度を追加するために、中実周辺壁に略一体化されている。歯616は、クロスバー623に沿っても一体化されており、側壁から離れて位置する歯に付加的な支持を与えている。図25に示されるノーズ609は、椎間腔内への脊椎インプラントの移植中に椎体を拡張するために、滑らかな外面を有する楔状に略形作られている。好ましい実施形態では、単なる例にすぎないが、脊椎インプラント600の強度及び多孔性内層及びグラフト窓に対する骨成長の潜在力を最適化させるために、ノーズにおける中実壁厚は、1.5mmであるとよく、中実外側壁厚及び中実内側壁厚は、0.75mmであるとよい。
【0033】
以下、図26A図27を参照すると、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント700が示されている。脊椎インプラント700は、脊椎インプラント600と同様であり、それ故、同様の要素に700番台の同様の番号が付されている。例えば、脊椎インプラント700は、中実前壁702、中実後壁704、中実内側壁706、及び中実外側壁708を備えている。しかし、脊椎700は、中心空洞を有していない。代わって、中実周辺壁によって画定された内側領域の全体が、多孔性材料を含んでいる。その結果、脊椎インプラント700は、骨成長のためのより大きい面積及び量の多孔性材料をもたらすことになる。クロスバー723も、図27に最もよく示されるように、どのような開口も有しない完全な中実体である。
【0034】
図28及び図29は、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント800を示している。脊椎インプラント800は、脊椎インプラント200と同様であり、それ故、同様の要素に800番台の同様の番号が付されている。例えば、脊椎インプラント800は、中実前壁802、中実後壁804、中実内側壁806、及び中実外側壁808を備えている。脊椎インプラント800は、インプラント挿入を容易にするために、楔状ノーズを備えている。図29に最もよく示されるように、多孔層815を超えて内側-外側方向に延在する中実クロスバー857が構造体に剛性を与えるようになっている。X線透視撮像によるインプラトの可視化のために、X線透視マーカーが設けられてよい。
【0035】
以下、図30図31及び図32図33を参照すると、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント900及び脊椎インプラント1000がそれぞれ示されている。脊椎インプラント900及び脊椎インプラント1000は、脊椎インプラント100と同様であり、それ故、同様の要素に900番台及び1000番台の同様の番号が付されている。例えば、脊椎インプラント900は、中実前壁902、中実後壁904、中実内側壁906、及び中実外側壁908を備えている。しかし、脊椎インプラント900は、鋸歯を有していない。代わって、脊椎インプラント900は、内側-外側方向及び前側―後側方向に延在するリブ916を有している。これらのリブは、多孔性内層に対してより大きい被覆率を有している。リブ916は、歯616と同様の性質を有する歯である。リブ916は、前述の実施形態における鋸歯及び歯616と同じ目的を果たし、椎間腔内におけるインプラント900の移動に対抗し、かつインプラント900の上下面内への骨成長を容易にする最適な隙間を有している。脊椎インプラント1000は、同様のリブ1016を有しているが、中心空洞を有しておらず、代わって、多孔性材料によって完全に充填されている。
【0036】
図34及び図35は、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント1100を示している。脊椎インプラント1100は、脊椎インプラント300と同様であり、それ故、同様の要素に1100番台の部番が付されている。例えば、脊椎インプラント1100は、中実前壁1102、中実後壁1104、中実内側壁1106、及び中実外側壁1108を備えている。しかし、脊椎インプラント110は、中心空洞を備えておらず、代わって、多孔性材料によって充填され、図35に最もよく示されるように、通路1146によって分離された2つの多孔層1118,1119を有することになる。多孔層によって充填された空洞は、脊椎インプラント1100の剛性を高めると共に骨多孔性材料の成長を改良する。
【0037】
以下、図36図38及び図39図41を参照すると、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント1200及び脊椎インプラント1300がそれぞれ示されている。脊椎インプラント1200及び脊椎インプラント1300は、脊椎インプラント100と同様であり、それ故、同様の要素に1200番台及び1300番台の同様の部番が付されている。例えば、脊椎インプラント1200は、中実前壁1202、中実後壁1204、中実内側壁1206、及び中実外側壁1208を備えている。脊椎インプラント1200,1300は、前-後方向に移植されるように構成されており、図36及び図39に最もよく示されるように、前-後方向にテーパ形状を有している。脊椎インプラント1200は、インプラントを椎骨に固定するために略上-下方向に固定具(図示せず)を受け入れるように構成されたネジ孔1260を備えている。ネジ孔1260の両側の2つの追加的なネジ孔1262,1264は、図36に最もよく示されるように、下-上方向に固定具(図示せず)を受け入れるように構成されている。同様に、脊椎インプラント1300は、図39に最もよく示されるように、椎体への脊椎インプラント1300の確実な固定のために、ネジ孔1360,1362,1364を備えている。脊椎インプラント100に示される鋸歯に代わって、脊椎インプラント1200,1300のリブ1216,1316が、それぞれ、内側-外側方向及び前-後方向に延在し、多孔性内層に対してより大きい被覆率をもたらしている。脊椎インプラント1200は、中心空洞1218,1219を有しているが、脊椎インプラント1300は、図40及び図41に最もよく示されるように、多孔性材料によって完全に充填されている。
【0038】
前述のインプラントは、それぞれ、さまざまな患者の生体構造に適合する多数の設置面積、高さ及び前彎角を有するものとして提供される。
【0039】
前述のインプラントは、3D印刷法又は付加製造プロセスによって製造することが可能である。
【0040】
前述のインプラントの中実部分及び多孔部分は、好ましくは、患者内への移植に適すると共にこのような用途に必要な強度及び寿命をもたらすことができる材料から構成される。例えば、いくつかの実施形態では、中実部分及び多孔部分は、チタンから構成されている。しかし、どのような他の適切な金属又は非金属が用いられてもよく、中実部分及び多孔部分に対して別の材料を利用することも考えられる。多孔面は、100-1000μmの平均孔径を有し、30-80%の多孔率を有するとよく、好ましい実施形態では、50-70%の多孔率を有しているとよい。また、多孔面は、例えば、500-4500μm、好ましくは、500-1500μmの厚みを有しているとよい。その結果、脊椎インプラントに用いられるのに十分な強度を有し、かつ骨成長潜在力を最大化させる面が得られることになる。インプラント10の多孔部分及び中実部分は、米国特許第7,537,664号及び第8,147,861号、米国特許出願公開第2006/0147332号、第2007/0142914号、及び第2008/0004709号、並びに米国特許出願第13/441,154号及び第13/618,218号に開示されているような3D印刷プロセスを用いることによって、作製することができる。これらの開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。また、他の周知の処置又は今後開発される処置、例えば、レーザーエッチングによって、多孔部分を形成することも考慮されている。
【0041】
図42は、本発明の他の実施形態による脊椎インプラント挿入具1400の斜視図を示している。挿入具1400は、外側スリーブ1404を貫通するシャフト1402を備えている。基部1406が、外側スリーブ1404の遠位端に接続されている。基部1406は、シャフト1402が基部を貫通することを可能にする開口を備えている。基部1406は、シャフト1402と平行に遠位側に延在する位置合せポスト1410を備えている。シャフト1402の近位端は、ノブ1412に接続されている。ノブ1412は、オペレータがノブ1412を好都合に把持して回転させるのを可能にする溝を備えている。外側スリーブ1404に沿って配置された窓は、ノブ1412がオペレータによって操作される時にシャフト1402の回転を視覚的に示すためのものである。シャフト1402の遠位端は、脊椎インプラントのネジ孔に係合するように寸法決めされたネジ山付きチップ1408を備えている。同様に、位置合せポスト1410は、脊椎インプラントの貫通孔と係合するように寸法決めされており、これによって、位置合せポスト1410及びネジ山付きチップ1408が脊椎インプラントに係合した時、脊椎インプラトの回転を阻止することによって、位置合せガイドとして機能する。ノブ1402を回転させることによって、ネジ山付きチップ1408を脊椎インプラントに係合させ、かつ脊椎インプラントから離脱させることができる。挿入具1400は、この実施形態では、脊椎インプラント100に係合するネジ山付きチップを有しているが、他の実施形態では、脊椎インプラントに対して係合/脱係合させるための挿入具の遠位端にスナップ嵌合、ボール戻り止め、摩擦嵌合、又は他の機構を有していてもよい。位置合せポストは、脊椎インプラントに対する係合/脱係合を容易にするためのバネ付勢された後退可能な要素であってもよい。
【0042】
図43を参照すると、本発明の他の実施形態による挿入具1400を利用することによって脊椎インプラントを配置するための方法が示されている。図43に最もよく示されるように、脊椎インプラントの配置前に、前側頚椎プレート1500が挿入具1400と脊椎インプラント100との間に同時に固定されるとよい。前側頚椎プレート1500は、骨ネジを受け入れるための複数のネジ孔1504と、ブロッカー1502を受け入れるための複数のブロッカー孔とを備えている。ブロッカー1502は、ワッシャ及び保持ネジの組合せを備えている。挿入具1400と共に用いられる骨プレートの例は、米国仮特許出願第62/653,877号に開示されている。この開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。ネジ山付きチップ1408及び位置合せポスト1410は、図43に最もよく示されるように、前側頚椎プレート1500のネジ孔内に貫通して配置される。次いで、位置合せポスト1410を回転止め長孔122に挿入し、ノブ1412の回転によってネジ山付きチップ1410をネジ孔124に螺合させることによって、挿入具1400を脊椎インプラント100に係合させることができる。脊椎インプラント100及び前側頚椎プレート1500を挿入具1400に固定した後、オペレータは、挿入具1400を利用することによって、このアセンブリを目標とする外科部位に正確に配置し、これによって、外科部位に対する脊椎インプラント100及び前側頚椎プレート1500の正確な位置合せを確実なものとすることができる。脊椎インプラント100及び頚椎前プレート1500がこの実施形態に示されているが、どのような他の脊椎インプラント及び/又はプレートが、ここに開示される挿入具と共に用いられてもよい。他の実施形態では、脊椎プレートを必要とすることなく、挿入具が脊椎インプラントに直接接触し、該脊椎インプラントを配置するようになっていてもよい。
【0043】
さらに、本明細書に開示された本発明を特定の特徴部を参照して説明してきたが、これらの特徴部は、本発明の原理及び用途の単なる例示にすぎないことを理解されたい。それ故、本明細書に記載された種々の特徴部の大きさの変更を含む種々の修正が例示的な実施形態に対してなされてもよいこと、及び本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。これに関し、本発明は、上記の段落において記載した特定の特徴部に加え、多数の追加的な特徴部を含むことになる。さらに、前述の開示は、本発明の制限というよりもむしろ本発明の例示とみなされるべきである。何故なら、本発明は、本発明の種々の実施形態によって特徴部を記載する番号が付された段落の例において明確にされ、以下の請求項において規定されるからである。
図1
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