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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/44 20190101AFI20231107BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20231107BHJP
   F02M 37/50 20190101ALI20231107BHJP
【FI】
F02M37/44
F02M37/00 301T
F02M37/50
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018194226
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020063674
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 真志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 耕史
(72)【発明者】
【氏名】東 慎也
(72)【発明者】
【氏名】武村 盛博
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 崇
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053857(JP,A)
【文献】特開2012-132365(JP,A)
【文献】特開2013-104339(JP,A)
【文献】特開2009-047156(JP,A)
【文献】特開2017-145801(JP,A)
【文献】特開2013-163992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の燃料を内燃機関へ供給する燃料供給装置であって、
燃料ポンプと、
前記燃料タンク内の底部に配置されて前記燃料を貯留するサブタンクと、
前記燃料ポンプに吸入される前記燃料タンク内の燃料及び前記サブタンク内の燃料を濾過する中空袋状のフィルタ部材を有しかつ該フィルタ部材が前記サブタンクの下面開口部を閉鎖するように配置される燃料フィルタと、
を備えており、
前記サブタンク内のヘッド圧が前記燃料ポンプの駆動時における前記フィルタ部材の内部負圧の大きさよりも低くなるように、前記サブタンクの燃料を貯留可能な高さと、前記サブタンク内の燃料に対する前記フィルタ部材の接触面積と、が設定されており、
前記サブタンクの燃料を貯留可能な高さと、前記サブタンク内の燃料に対する前記フィルタ部材の接触面積と、は、前記サブタンク内のヘッド圧が前記フィルタ部材の内部負圧の大きさよりも低くなる範囲において、前記サブタンクの保持燃料量が最大値となるように設定されており、
前記内燃機関へ供給する燃料の圧力を調整し、余剰燃料を余剰燃料排出口から排出するプレッシャレギュレータを備えており、
前記プレッシャレギュレータは、前記サブタンク内の底部に配置されており、
前記燃料ポンプと前記プレッシャレギュレータとは、軸線を上下方向とする縦置き状でかつ前記フィルタ部材の上方近くにおいて並列的に配置されている、燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記サブタンクは、前記フィルタ部材を水平にした状態で前記燃料タンクの上面開口部を通過可能な外形を有する、燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、燃料供給装置に関する。詳しくは、燃料タンク内の燃料を内燃機関へ供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された燃料供給装置がある。この燃料供給装置は、燃料ポンプとサブタンクと燃料フィルタとを備える。燃料ポンプは、燃料タンク内の燃料を吸入しかつ昇圧した後に吐出する。サブタンクは燃料を貯留する。燃料フィルタは、燃料ポンプに吸入される燃料を濾過する袋状のフィルタ部材を有しかつフィルタ部材が前記サブタンクの下面開口部を閉鎖するように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-194005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料供給装置によると、サブタンク内のヘッド圧が燃料ポンプの駆動時におけるフィルタ部材の内部負圧の大きさよりも高くなり、サブタンク内の燃料がフィルタ部材を介して流出(詳しくは、フィルタ部材を下方へ通過して燃料タンク内へ流出)するおそれがある。
【0005】
本明細書が開示する技術の課題は、サブタンク内の燃料がフィルタ部材を介して流出することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、燃料タンク内の燃料を内燃機関へ供給する燃料供給装置であって、燃料ポンプと、燃料を貯留するサブタンクと、前記燃料ポンプに吸入される燃料を濾過する袋状のフィルタ部材を有しかつ該フィルタ部材が前記サブタンクの下面開口部を閉鎖するように配置される燃料フィルタと、を備えており、前記サブタンク内のヘッド圧が前記フィルタ部材の内部負圧よりも低くなるように、前記サブタンクの燃料を貯留可能な高さと、前記サブタンク内の燃料に対するフィルタ部材の接触面積と、が設定されている、燃料供給装置である。
【0008】
第1の手段によれば、サブタンク内のヘッド圧が燃料ポンプの駆動時におけるフィルタ部材の内部負圧の大きさよりも低いことにより、サブタンク内の燃料がフィルタ部材を介して流出(詳しくは、フィルタ部材を下方へ通過して燃料タンク内へ流出)することを抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の燃料供給装置であって、前記サブタンクは、前記フィルタ部材を水平にした状態で前記燃料タンクの上面開口部を通過可能な外形を有する、燃料供給装置である。
【0010】
第2の手段によれば、サブタンクの外形を小型化し、燃料タンク内へのサブタンクの挿入性を向上することができる。
【0011】
第3の手段は、第1又は2の手段の燃料供給装置であって、前記内燃機関へ供給する燃料の圧力を調整し、余剰燃料を余剰燃料排出口から排出するプレッシャレギュレータを備えており、前記プレッシャレギュレータは、前記サブタンク内の底部に配置されている、燃料供給装置である。
【0012】
第3の手段によれば、プレッシャレギュレータからの余剰燃料が全てサブタンク内に排出されることにより保持される。このため、サブタンク内へ燃料を自然流入させなくても済む。また、サブタンク内の燃料中の底部にプレッシャレギュレータが液没されることにより、プレッシャレギュレータの余剰燃料排出口からの余剰燃料の排出音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に開示の技術は、上記手段をとることにより、サブタンク内の燃料がフィルタ部材を介して流出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態にかかる燃料供給装置を示す斜視図である。
図2】燃料供給装置を示す側面図である。
図3】燃料供給装置を示す背面図である。
図4】燃料供給装置を示す底面図である。
図5図3のV-V線矢視断面図である。
図6】蓋部材とポンプユニットとを分解して示す斜視図である。
図7】ポンプユニットを示す断面図である。
図8】フィルタ部材の内部負圧とサブタンクのヘッド差との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態について図面を用いて説明する。燃料供給装置は、自動車等の車両に搭載されるものであり、燃料タンク内の液体燃料を内燃機関(エンジン)に送給するものである。図1は燃料供給装置を示す斜視図、図2は同じく側面図、図3は同じく背面図、図4は同じく底面図、図5図3のV-V線矢視断面図、図6は蓋部材とポンプユニットとを分解して示す斜視図である。燃料供給装置に係る方位を図に矢印で示すとおりに定める。上下方向は、車両の燃料タンクに搭載された状態での重力方向いわゆる天地方向に対応する。また、前後左右方向は特定するものではない。
【0016】
(燃料タンク)
図2に示すように、燃料タンク10は、上壁部11及び底壁部12を有する中空容器状に形成されている。燃料タンク10は、樹脂製であり、タンク内圧の変化によって変形、主に上下方向に膨張及び収縮する。上壁部11には、円形孔状の上面開口部13が形成されている。燃料タンク10内には、例えば、液体燃料としてのガソリンが貯留されている。
【0017】
(燃料供給装置)
図1に示すように、燃料供給装置20は、蓋部材22とポンプユニット24とを備えている(図6参照)。
【0018】
(蓋部材22)
蓋部材22は、円形板状の蓋板部26を主体として形成されている。蓋部材22は例えばポリアセタール樹脂(POM)からなる樹脂製である。図2に示すように、蓋板部26の下面には、短円筒状の嵌合筒部27が同心状に形成されている。蓋板部26の外周部には、嵌合筒部27よりも径方向外方へ張り出す円環板状のフランジ部28が形成されている。
【0019】
図1に示すように、蓋板部26には、燃料吐出ポート30及び電気コネクタ部32が設けられている。燃料吐出ポート30は、蓋板部26を上下方向に貫通している。燃料吐出ポート30は、燃料タンク10内外の燃料配管の接続に用いられる。また、電気コネクタ部32は、燃料タンク10内外の電気配線の接続に用いられる。
【0020】
図3に示すように、蓋板部26の下面の後側部には、スタンドオフ部34が形成されている。スタンドオフ部34は、筒柱部35と左右の両湾曲壁部36とを有する(図6参照)。筒柱部35は、上下方向に延在する筒状に形成されている。両湾曲壁部36は、筒柱部35の両側部に左右対称状に形成されている。両湾曲壁部36は、後面視において嵌合筒部27から下方に向かって収束する略三角形状に形成されている。
【0021】
(ポンプユニット24)
図7はポンプユニットを示す断面図である。図7に示すように、ポンプユニット24は、サブタンク38、燃料ポンプ40、及び、プレッシャレギュレータ42を備えている。ポンプユニット24は、センダゲージ44を備えている(図6参照)。
【0022】
サブタンク38は、サブタンク本体46、ロアカバー48及び燃料フィルタ50を備えている。サブタンク38は連結支柱52を備えている(図6参照)。サブタンク本体46は、タンク形成部54とポンプケース部55と配管部56とレギュレータ取付管部57とを有する。サブタンク本体46は、例えばポリアセタール樹脂(POM)からなる樹脂製である。
【0023】
タンク形成部54は、下面を開口する有天円筒状に形成されている。図5に示すように、タンク形成部54の後端部の上面には、上面を水平面とする支柱取付部59が形成されている。
【0024】
図7に示すように、ポンプケース部55は、タンク形成部54の上面部の中央部に一体成形により形成されている。ポンプケース部55は、下面を開口する有天円筒状に形成されている。ポンプケース部55の上下方向の中間部がタンク形成部54の上面部に接続されている。
【0025】
配管部56は、ポンプケース部55の上面部に一体成形により形成されている。配管部56は、ポンプケース部55の上面部から略左方へ延びる直管状に形成されている。配管部56は、一端部にポンプケース部55に連通する入口部56aを有し、他端部に出口部56bを有する。出口部56bは、ホース等の配管部材62を介して燃料吐出ポート30に接続されている(図1参照)。
【0026】
レギュレータ取付管部57は、タンク形成部54の上面部に一体成形により形成されている。レギュレータ取付管部57は、上下方向に延在する管状に形成されている。レギュレータ取付管部57の上下方向の中間部がタンク形成部54の上面部に接続されている。レギュレータ取付管部57は、ポンプケース部55の左側に並列的に配置されている。レギュレータ取付管部57の上部は、タンク形成部54の上面部から上方へ向かって通路断面積が徐々に小さくなっている。レギュレータ取付管部57の上端部は、配管部56の軸方向の中央部に連通されている。
【0027】
ロアカバー48は、円形浅皿状に形成されている。ロアカバー48の底板部66は、多数の開口を有する格子板状に形成されている(図4参照)。ロアカバー48は、タンク形成部54にサブタンク本体46の下面開口部を覆うようにスナップフィットにより取り付けられている。ロアカバー48は樹脂製である。
【0028】
燃料フィルタ50は、フィルタ部材68と接続部材72とを有する。フィルタ部材68は、樹脂製の不織布からなる濾材により中空袋状に形成されてなる。フィルタ部材68の外形は、略円盤状に形成されている。フィルタ部材68内には、フィルタ部材68の内部容積を確保する内骨部材が配置されている。接続部材72は、フィルタ部材68の上面部に配置されている。接続部材72は、内骨部材と結合されており、フィルタ部材68内外を連通している。接続部材72及び内骨部材は樹脂製である。
【0029】
フィルタ部材68は、タンク形成部54に対するロアカバー48の取り付けに先立って、タンク形成部54の下面を閉鎖するように略水平状に配置されている。接続部材72は、ポンプケース部55の下端部にスナップフィットにより取り付けられている。タンク形成部54と燃料フィルタ50の上面部との間には、燃料を貯留する燃料貯留空間74が形成されている。タンク形成部54に対するロアカバー48の取り付けによって、フィルタ部材68の周縁部がタンク形成部54とロアカバー48との間にシール状態で挟持されている。
【0030】
燃料ポンプ40は、略円柱状の電動式燃料ポンプからなる。燃料ポンプ40は、ポンプケース部55に対する接続部材72の取り付けに先立って、ポンプケース部55内に下方から挿入されている。これにともない、燃料ポンプ40の吐出口40aが配管部56の入口部56aに接続されている。ポンプケース部55に対する接続部材72の取り付けによって、燃料ポンプ40がポンプケース部55内に保持されている。これにともない、燃料ポンプ40の吸入口に接続部材72を介してフィルタ部材68の内部空間が連通されている。フィルタ部材68は、燃料ポンプ40に吸入される燃料を濾過する。
【0031】
燃料ポンプ40は、フィルタ部材68を通過した燃料を吸入口から吸入しかつ加圧した後、吐出口40aから配管部56内に吐出する。
【0032】
プレッシャレギュレータ42は、レギュレータ取付管部57の下端部内に設けられている。プレッシャレギュレータ42は、配管部56内の圧力すなわち燃料ポンプ40からエンジンに供給される燃料の圧力を所定の圧力に調整し、余剰燃料を余剰燃料排出口42aから噴出する。プレッシャレギュレータ42は、通常、燃料貯留空間74に貯留される燃料中に液没される。レギュレータ取付管部57の下端部には、プレッシャレギュレータ42を抜け止めする樹脂製の抜け止め部材43がスナップフィットにより取り付けられている。プレッシャレギュレータ42の余剰燃料排出口42aから噴出された加圧燃料は、抜け止め部材43に設けられた開口孔43aを通じて燃料貯留空間74へ噴出される。プレッシャレギュレータ42は、サブタンク38内の燃料貯留空間74の底部に配置されている。抜け止め部材43は、燃料フィルタ50のフィルタ部材68の上方近くに配置されている。
【0033】
図6に示すように、センダゲージ44は、ゲージボデー76とアーム78とフロート80とを有する。ゲージボデー76は、サブタンク本体46のタンク形成部54の外側面に取り付けられている。ゲージボデー76には回路基板等が設けられている。ゲージボデー76の表面側にはアームホルダ77が水平軸回りに回動可能に設けられている。アーム78の基端部は、アームホルダ77に取り付けられている。フロート80は、アーム78の先端部に取り付けられている。センダゲージ44は、燃料タンク10内の燃料の残量すなわち液面の位置を検出する液面検出装置である。ゲージボデー76及びフロート80は樹脂製である。アーム78は金属製である。
【0034】
図5に示すように、連結支柱52は中空筒状に形成されている。連結支柱52の下端部には台座部83が形成されている。連結支柱52は、サブタンク本体46の支柱取付部59上に台座部83が支持された状態で垂直状に立設されている(図3参照)。連結支柱52は、例えばガラス繊維が混合されたナイロン樹脂(PA66)からなる樹脂製である。
【0035】
連結支柱52は、蓋部材22のスタンドオフ部34の筒柱部35内に軸方向すなわち上下方向にスライド可能に挿入されている。連結支柱52と筒柱部35とは、スナップフィットにより相互に軸方向に所定の範囲内で移動可能に連結されている。これにより、蓋部材22とポンプユニット24のサブタンク本体46とが上下方向に所定の範囲内で移動可能に連結されている。
【0036】
連結支柱52内には、金属製のコイルスプリング85が挿入されている。コイルスプリング85は、蓋部材22とサブタンク本体46とを相反方向すなわち離間方向へ付勢している。連結支柱52はスプリングガイドを兼ねている。
【0037】
図1に示すように、配管部56の出口部56b(図7参照)は、ホース等の配管部材62を介して燃料吐出ポート30に接続されている。燃料ポンプ40の電気コネクタ40c(図6参照)は、電気配線75を介して蓋部材22の電気コネクタ部32に電気的に接続されている(図5参照)。ゲージボデー76の電気コネクタは、電気コネクタ部32に電気配線82を介して電気的に接続されている(図1参照)。
【0038】
(燃料供給装置20の設置)
燃料供給装置20は、燃料タンク10への設置に際して蓋部材22にポンプユニット24が懸吊された伸長状態とされる。すなわち、蓋部材22とポンプユニット24とが最離間状態に配置される。続いて、燃料供給装置20の伸長状態のまま、ポンプユニット24を燃料タンク10内に上面開口部13から挿入させて燃料タンク10の底壁部12上に載置する。このとき、サブタンク本体46の下端面が底壁部12の上面に当接される。
【0039】
続いて、蓋部材22がコイルスプリング85の付勢力に抗して押し下げられ、蓋部材22のフランジ部28が燃料タンク10の上壁部11に固定金具、ボルト等の固定手段を介して固定される。上記のようにして、燃料供給装置20の設置が完了する(図2及び図3参照)。蓋部材22は、燃料タンク10の上面開口部13を閉鎖する。
【0040】
燃料供給装置20の設置状態(図2及び図3参照)において、ポンプユニット24は、コイルスプリング85の付勢力によって燃料タンク10の底壁部12に押し付けられた状態に保持される。また、蓋部材22の燃料吐出ポート30には、エンジンにつながる燃料供給配管が接続される。また、電気コネクタ部32には、それぞれ外部コネクタが接続される。
【0041】
(燃料供給装置20の作動)
外部からの駆動電力により燃料ポンプ40が駆動される。すると、燃料タンク10内の燃料、及び/又は、サブタンク38の燃料貯留空間74内の燃料が、燃料フィルタ50を介して燃料ポンプ40に吸入されて加圧される。燃料ポンプ40からサブタンク本体46の配管部56内に吐出された加圧燃料は、プレッシャレギュレータ42により調圧される。調圧された加圧燃料は、配管部材62を経て蓋部材22の燃料吐出ポート30からエンジンへ供給される。
【0042】
燃料タンク10は、気温の変化や燃料量の変化等によるタンク内圧の変化によって変形すなわち膨張及び収縮する。これにともない、燃料タンク10の上壁部11と底壁部12との間の間隔が変化(増減)する。この場合、蓋部材22とポンプユニット24とが相対的に上下方向に移動することにより燃料タンク10の高さの変化に追従する。
【0043】
燃料タンク10が過剰に収縮しようとするときは、蓋部材22のスタンドオフ部34がポンプユニット24の連結支柱52の台座部83と当接することにより突っ張り棒として作用する。これによって、蓋部材22とサブタンク本体46との間の間隔が最小間隔に規制される。すなわち、燃料供給装置20が最低高さ状態に規制される。
【0044】
(実施形態の特徴的構成)
サブタンク38の貯留可能な燃料の高さをhとし、サブタンク38内の燃料に対するフィルタ部材68の接触面積をSとし、サブタンク38内のヘッド圧をP3とし、フィルタ部材68の内部負圧をP1とする。このとき、ヘッド圧P3が内部負圧P1よりも低くなるように、高さhと接触面積Sとが設定されている。なお、本明細書でいう「内部負圧P 1 」とは、燃料ポンプ40の駆動時におけるフィルタ部材68の内部負圧の大きさを意味する。
【0045】
ヘッド圧Pは数式1により求めることができる。
【数1】

ρ:燃料密度
g:重力加速度
【0046】
内部負圧Pは数式2により求めることができる。
【数2】

v:流速
Q:流量
【0047】
図8はフィルタ部材68の内部負圧とサブタンク38のヘッド差との関係を示すグラフである。図8は、ヘッド差が特性線A以下でかつフィルタ部材68の液膜圧Pf以下の領域Rにおいて、サブタンク38内の燃料を保持可能でありかつ燃料ポンプ40がサブタンク38内の燃料を吸入可能であることを示している。
【0048】
また、接触面積Sを縮小し、内部負圧Pを増大することにより、サブタンク38の保持燃料量を増加することができる。また、接触面積Sの縮小化により、フィルタ部材68を小型化することができる。
【0049】
また、高さhと接触面積Sとは、サブタンク38内のヘッド圧Pがフィルタ部材68の内部負圧Pよりも低くなる範囲において、サブタンク38の保持燃料量が最大値となるように設定されている。
【0050】
サブタンク38は、フィルタ部材68を水平にした状態で燃料タンク10の上面開口部13を通過可能な外形を有する。また、プレッシャレギュレータ42は、サブタンク38の燃料貯留空間74内の底部に配置されている。
【0051】
(実施形態の利点)
本実施形態によれば、サブタンク38内のヘッド圧Pがフィルタ部材68の内部負圧Pよりも低いことにより、サブタンク38内の燃料がフィルタ部材68を介して流出することを抑制することができる。
【0052】
また、サブタンク38の貯留可能な燃料の高さhと、サブタンク38内の燃料に対するフィルタ部材68の接触面積Sと、は、サブタンク38内のヘッド圧Pがフィルタ部材68の内部負圧Pよりも低くなる範囲において、サブタンク38の保持燃料量が最大値となるように設定されている。したがって、サブタンク38の燃料保持量が最大値となることで、燃料切れを効果的に抑制することができる。
【0053】
また、サブタンク38は、フィルタ部材68を水平にした状態で燃料タンク10の上面開口部13を通過可能な外形を有する。したがって、サブタンク38の外形を小型化し、燃料タンク10内へのサブタンク38の挿入性を向上することができる。この点について説明すると、例えば、特許文献1に記載のサブタンクによると、水平状態での外形が大きく、燃料タンクの上面開口部を水平状態で通過できないため、燃料タンク内へのサブタンクの挿入性が低い。これに対し、本実施形態のサブタンク38によると、燃料タンク10の上面開口部13を水平状態で通過可能であるため、特許文献1に比べて、サブタンク38の外形を小型化し、燃料タンク10内へのサブタンク38の挿入性を向上することができる。
【0054】
また、プレッシャレギュレータ42がサブタンク38内の底部に配置されている。したがって、プレッシャレギュレータ42からの余剰燃料が全てサブタンク38内に排出されることにより保持される。このため、サブタンク38内へ燃料を自然流入させなくても済む。また、サブタンク38内の燃料中の底部にプレッシャレギュレータ42が液没されることにより、プレッシャレギュレータ42の余剰燃料排出口42aからの余剰燃料の排出音を抑制することができる。
【0055】
[他の実施形態]
以上、本明細書に開示の技術を特定の実施形態について説明したが、その他各種の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 燃料タンク
13 上面開口部
20 燃料供給装置
38 サブタンク
40 燃料ポンプ
42 プレッシャレギュレータ
42a 余剰燃料排出口
50 燃料フィルタ
68 フィルタ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8