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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】マイクロニードルシート
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20231107BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231107BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/60
A61K8/02
A61Q19/00
A61M37/00 530
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018235271
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097529
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユエンユエン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラヴ・アガルワル
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-535872(JP,A)
【文献】特開2018-196401(JP,A)
【文献】特表2018-501239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61F 2/82- 2/97
A61M 25/00-29/04
A61M 35/00-36/08
A61M 37/00
A61M 99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シート上の複数のマイクロニードルとを備え、
前記マイクロニードルが、
少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、
N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)又はその塩
を含む、マイクロニードルシート。
【請求項2】
N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)又はその塩の量が、前記マイクロニードルの総質量に対して、0.1質量%~30質量%である、請求項1に記載のマイクロニードルシート。
【請求項3】
前記マイクロニードルが、50~1000ミクロンの高さを有する、請求項1又は2に記載のマイクロニードルシート。
【請求項4】
前記マイクロニードルが円錐体の形状である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードルシート。
【請求項5】
前記マイクロニードルの前記円錐体の底部が、50~350ミクロンの直径を有する、請求項4に記載のマイクロニードルシート。
【請求項6】
前記マイクロニードルの(前記円錐体の高さ)/(前記円錐体の底部の直径)の比が1以上である、請求項4又は5に記載のマイクロニードルシート。
【請求項7】
前記水溶性又は水分散性ポリマーが、ヒアルロン酸、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、デキストリン、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそのエステル、ポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロニードルシート。
【請求項8】
前記水溶性又は水分散性ポリマーが、10,000~200,000ダルトンの分子量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロニードルシート。
【請求項9】
前記マイクロニードルが20N/mm以上のヤング率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロニードルシート。
【請求項10】
皮膚又は唇等のケラチン物質の美容方法であって、
前記ケラチン物質に、請求項1から9のいずれか一項に記載のマイクロニードルシートを適用する工程を含む、美容方法。
【請求項11】
前記ケラチン物質のアンチエイジング美容処理である、請求項10に記載の美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚や唇等のケラチン物質の美容処置法に使用できる複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
角質層(SC)は、低分子量材料を含む外因性物質に対する主な障壁を構成する。一般に、皮膚を透過する外因性物質は、角質層の高度に組織された細胞間脂質二重層を通って拡散する必要がある。親油性であるこの細胞間の微細経路は、外因性物質が、送達ビヒクルとSCの間の濃度勾配に沿った受動拡散によりSC障壁を通過する主要な経路である。一部の外因性物質は、皮膚に浸透することが困難である。
【0003】
外因性物質をより深く皮膚に供給するために、従来の針を使用して注射を行うことが可能である。ただし、このような注射は痛みを引き起こすため、医師等の専門家が行う必要がある。したがって、従来の針を使用した注射は、美容目的では一般的なものではない。
【0004】
角質層(SC)障壁を破るために複数のマイクロニードルを備えた微細構造装置を使用するという着想は、1970年代に初めて提案された。マイクロニードルアレイの製造は、当技術分野で、例えばWO2008/139786、WO2009/040548、WO2015/147040、及びWO2016/076442に記載されている。マイクロニードルは、注射用の従来の針の使用によって引き起こされる痛みを伴うことなく、潜在的にSCに浸透するという利点があり、自己投与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2008/139786
【文献】WO2009/040548
【文献】WO2015/147040
【文献】WO2016/076442
【文献】米国特許第6,219,574号
【文献】カナダ特許出願第2,226,718号
【文献】米国特許第6,652,478号
【文献】米国特許出願公開第2007/0202203(A)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)等のエラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤は、N-アシルアミノアミドのファミリーに属するアンチエイジングジペプチドである。このジペプチドは、時間生物学的又は光誘発性の皮膚の老化、特に皮膚弾性の低下及び/又は組織構造中のコラーゲンの分解によって生じる老化の解決策を提供することを目的としている。
【0007】
しかし、従来の局所製剤による受動拡散では、上記のジペプチドは皮膚を十分透過せず、最外皮層の角質層内に高度に集積するため、アンチエイジング効果を期待することは難しい。
【0008】
本発明の目的は、エラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤の皮膚浸透を改善又は増強することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、基材シートと、基材シート上の複数のマイクロニードルとを備え、マイクロニードルが、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、エラスターゼの少なくとも1種のN-アシルアミノアミド阻害剤とを含む、マイクロニードルシートによって達成することができる。
【0010】
エラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤は、式(I)
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、
- Y基はO又はSを表し、
- R1基は、以下のものを表し、
(i)水素原子、
(ii)1~18個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基であり、
-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR、-COR、-P(O)-(OR)2、及び-SO2-ORからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換され、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、-COR"、-C-Hal3(ハロゲン)からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す、
(iii)-OR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-COOR、-COR基からなる群から選択される基であり、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す、
- R2基は、-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR"、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR、及び-CORからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換された、1~18個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
- R3基は、式(II)又は(III):
-A-C6H(5-y)-By (II)
-C6H(5-y)-By' (III)
(式中、
・yは0から5の間に含まれる整数であり、
・y'は1から5の間に含まれる整数であり、
・Aは、-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR、-COR、-NO2、及び-SO2-ORからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換された、1~18個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基をし、
・Bは、-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-C-Hal3(ハロゲン)、-CN、-COOR、-COR、-NO2、及び-SO2-ORからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換された、1~18個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基であり、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す)のものからなる群から選択される基を表し、
- X基は、-OH、-OR4、-NH2、-NHR4、-NR4R5、-SR4、-COOR4、及び-COR4からなる群から選択される基を表し、
R4及びR5は、それぞれ独立して、-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR、及び-CORからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換された、1~6個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
前記R4及びR5基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す]
で表される化合物、その無機又は有機酸塩、その光学異性体から、単離された形態で又はラセミ混合物として、選択されうる。
【0013】
式(I)のY基はOを表し、及び/又はX基は-OHを表す。
【0014】
式(I)のR3基は、以下の式:
【0015】
【化2】
【0016】
[式中、
A及びBは上記の意味を有する]
から選択される基を表しうる。
【0017】
式(I)の化合物は、N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)、N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)誘導体、N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)のイオン、及びN-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)誘導体のイオンからなる群から選択され得る。
【0018】
式(I)の化合物の量は、マイクロニードルの総質量に対して、0.1質量%~30質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1.0質量%~10質量%であってよい。
【0019】
マイクロニードルは、50~1000ミクロン、好ましくは100~750ミクロン、より好ましくは150~500ミクロンの高さを有しうる。
【0020】
マイクロニードルは、円錐体の形状であってもよい。
【0021】
マイクロニードルの円錐体の底部は、50~350ミクロン、好ましくは100~300ミクロン、より好ましくは150~250ミクロンの直径を有してもよい。
【0022】
マイクロニードルの(円錐体の高さ)/(円錐体の底部の直径)の比が1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であってもよい。
【0023】
水溶性又は水分散性ポリマーは、ヒアルロン酸、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、デキストリン、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそのエステル、ポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0024】
水溶性又は水分散性ポリマーは、10,000~200,000ダルトン、好ましくは30,000~150,000ダルトン、より好ましくは50,000~100,000ダルトンの分子量を有してもよい。
【0025】
マイクロニードルは、20N/mm以上のヤング率を有することが好ましい。
【0026】
本発明はまた、皮膚又は唇等のケラチン物質の美容方法であって、ケラチン物質に、本発明によるマイクロニードルシートを適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【0027】
本発明による美容方法は、ケラチン物質のアンチエイジング美容処理であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1、実施例2、及び比較例1の場合のN-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)の皮膚浸透プロファイル(平均±SD)を示す図である。
図2】皮膚の異なる層(角質層(SC)及び表皮(Ep)/真皮(D))に浸透した、実施例1、実施例2、及び比較例1の場合のN-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)の量(平均±SD)を示す図である。レセプター液(RF)の量に関する情報、並びに表皮/真皮及びレセプター液の総量(Ep+D+RF)も共に表示される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
鋭意検討の結果、発明者らは、エラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤の皮膚浸透を改善又は増強することが可能であることを発見した。
【0030】
したがって、本発明の一態様は、基材シートと、基材シート上の複数のマイクロニードルとを備え、マイクロニードルが、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、エラスターゼの少なくとも1種のN-アシルアミノアミド阻害剤とを含む、マイクロニードルシートである。
【0031】
本発明によるマイクロニードルシートにより、皮膚に浸透できるエラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤の量を増加させることができる。例えば、真皮/表皮等のより深いレベルの皮膚に送達できるエラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤の量を増やすことができる。
【0032】
以下、本発明によるマイクロニードルシートについて詳細に説明する。
【0033】
[マイクロニードルシート]
本発明によるマイクロニードルシートは、基材シートと、基材シート上の複数のマイクロニードルとを備え、マイクロニードルが、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーを含む。
【0034】
本発明によるマイクロニードルシートは、美容装置、好ましくはケラチン物質用の美容装置、より好ましくは皮膚、特に顔面の皮膚、並びに唇用の美容装置でありうる。
【0035】
(マイクロニードル)
本発明によるマイクロニードルシートは、複数のマイクロニードルを備える。
【0036】
マイクロニードルは、基材シートの表面に存在する。マイクロニードルは、基材シートの表面の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上に存在してもよい。
【0037】
マイクロニードルは、基材シートの表面のうちの一方に存在することが好ましい。
【0038】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルは、皮膚、特に顔面並びに唇の皮膚、の角質層に浸透又は侵入するように設計されることが好ましい。
【0039】
マイクロニードルは、角質層を穿刺するのに適した任意のサイズ及び形状でありうる。マイクロニードルは、角質層を貫いて通過するように設計されることが好ましい場合がある。マイクロニードルは、角質層に開口部を作り出すことができる場合がある。
【0040】
必要に応じて、皮膚の表皮及び/又は真皮、好ましくは表皮及び真皮の接合部、より好ましくは表皮、特に上表皮への浸透を可能にするように、マイクロニードルの高さを変更してもよい。
【0041】
マイクロニードルの形状は、その形状が「針」である限り限定されない。本発明のマイクロニードルとしては、円錐状、棒状及び/又は柱状が含まれるがこれらに限定されない任意の合理的な形状をとりうることが、当業者には明らかである。そのため、マイクロニードルは、先端部が底部と同一の直径を有していてもよく、又は直径が底部から先端部の方向に先細りしていてもよい。
【0042】
例えば、マイクロニードルの形状は、三角錐、四角錐又は五角錐の形態であってもよい。或いは、マイクロニードルは、好ましくは先端部を有する円柱の形態であってもよく、円柱を斜め切りして形成し得る。
【0043】
したがって、「マイクロニードル」を利用されている一種の微細突起又は微細突出として言及する。多くの場合、同一の発明原理が、皮膚に浸透するための他の微細突起又は微細突出の使用に適用されることが当業者には理解されよう。他の微細突起又は微細突出には、例えば、米国特許第6,219,574号及びカナダ特許出願第2,226,718号に記載されているマイクロブレード、並びに米国特許第6,652,478号に記載されているエッジ付きマイクロニードルが含まれる。
【0044】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルの高さ又は長さは、50~1000ミクロン、好ましくは100~750ミクロン、より好ましくは150~500ミクロンであってもよい。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、マイクロニードルは円錐体の形態である。
【0046】
円錐体は、先端部及び底部等の遠位端を備えてもよい。底部の形状は、円形でも楕円形であってもよい。
【0047】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルの円錐体の高さ又は長さは、50~1000ミクロン、好ましくは100~750ミクロン、より好ましくは150~500ミクロンであってもよい。
【0048】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルの円錐体の底部は、50~350ミクロン、好ましくは100~300ミクロン、より好ましくは150~250ミクロンの直径又は幅を有してもよい。本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルの円錐体の底部が楕円形又は長円の形状である場合、主軸の長さ又は楕円形の幅は、50~350ミクロン、好ましくは100~300ミクロン、より好ましくは150~250ミクロンであってもよい。
【0049】
マイクロニードルは、少なくとも約3:1、少なくとも約2:1、又は少なくとも約1:1のアスペクト比(底部における長さ/幅)を有しうる。マイクロニードルの(円錐体の高さ)/(円錐体の底部の直径)の比が1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であってもよい。
【0050】
好ましくは、マイクロニードルは、50.0N/cm2未満、例えば10N/cm2未満等の20.0N/cm2未満の挿入圧力がマイクロニードルの長さに沿ってかけられるとき、その力で破損しない。
【0051】
本発明によるマイクロニードルシート、特にマイクロニードルシートのマイクロニードルが、20N/mm以上、好ましくは30N/mm以上、より好ましくは40N/mm以上のヤング率を有することもまた好ましい。
【0052】
マイクロニードルは、皮膚又は唇等のケラチン物質に、200ミクロン以下、好ましくは180ミクロン以下、より好ましくは160ミクロン以下の深さまで浸透できることが好ましい場合がある。
【0053】
マイクロニードルは、溶解性又は非溶解性でありうる。マイクロニードルは溶解性であることが好ましい。
【0054】
「溶解性のマイクロニードル」とは、マイクロニードルが、例えば天然の保湿因子又は外部水分によって、皮膚又は唇等のケラチン物質の内部で壊れ得る又は崩壊し得ることを意味する。
【0055】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルは、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーを含みうる。ここで、用語「水溶性」及び「水分散性」は、水と接触しているときに、それぞれ可溶性及び分散性であることを意味する。単一の水溶性又は水分散性ポリマーを使用してもよい。2種以上の水溶性又は水分散性ポリマーを組み合わせて使用することができる。
【0056】
水溶性又は水分散性ポリマーは、皮膚又は唇で可溶性又は分散性であることが好ましい。そのため、本発明の一実施形態では、水溶性又は水分散性ポリマーは、皮膚又は唇等のケラチン物質への挿入後に溶解又は分散することができる。ポリマーの可溶性又は分散性に起因して、本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルは、マイクロニードル内のエラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤を効果的に放出することができる。マイクロニードルシートの適用と組み合わせた任意選択の外部の水を使用して、マイクロニードルの溶解又は分散を促進することができる。
【0057】
水溶性又は水分散性ポリマーは、皮膚又は唇等のケラチン物質の表面層において溶解性であることが好ましい。
【0058】
水溶性又は水分散性ポリマーは、ヒアルロン酸(特に低分子量ヒアルロン酸)、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖(その誘導体、例えばヒドロキシメチルセルロースを含む)、デキストリン、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそれらのエステル、ポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)、ポリビニルピロリドン、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0059】
皮膚の細胞外マトリックスに自然に存在し、水分補給及びアンチエイジング効果に対するスキンケア剤としてよく知られているヒアルロン酸ナトリウム(SH)を使用することが好ましい。
【0060】
水溶性又は水分散性ポリマーは、10,000~200,000ダルトン、好ましくは30,000~150,000ダルトン、より好ましくは50,000~100,000ダルトンの分子量を有しうる。
【0061】
低分子量ヒアルロン酸は、100kDa以下、好ましくは70kDa以下、より好ましくは50kDa以下の分子量を有しうる。
【0062】
ポリビニルピロリドンは、1kDaから300kDaの間、好ましくは5kDaから200kDaの間、より好ましくは7kDaから100kDaの間の分子量を有しうる。
【0063】
ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそのエステル、並びにポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)は、Gantrez型ポリマーとして知られている。
【0064】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードル中の水溶性又は水分散性ポリマーの量(固体ベース)は、マイクロニードルの総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってもよい。本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードル中の水溶性又は水分散性ポリマーの量(固体ベース)は、マイクロニードルの総質量に対して、99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下であってもよい。このように、本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードル中の水溶性又は水分散性ポリマーの量(固体ベース)は、マイクロニードルの総質量に対して、50質量%~99質量%、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは70質量%~90質量%であってもよい。
【0065】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルは、膨潤性、より好ましくは水膨潤性、更により好ましくは皮膚又は唇等のケラチン物質内で膨潤性の、少なくとも1種の材料を含むことが可能な場合がある。上記の材料は、膨潤性、より好ましくは水膨潤性、更により好ましくはケラチン物質内で膨潤性のポリマーであってもよい。ここで、用語「水膨潤性」は、水と接触しているときに膨潤性であることを意味する。上記の膨潤性材料又はポリマーは、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水中、インビトロで、1時間のインキュベーションにおいて少なくとも10倍超、好ましくは1時間のインキュベーションにおいて少なくとも20倍、より好ましくは1時間のインキュベーションにおいて少なくとも30倍、更により好ましくは1時間のインキュベーションにおいて少なくとも40倍、最も好ましくは1時間のインキュベーションにおいて約45~55倍に膨潤できるような、高い膨潤性を有しうる。
【0066】
マイクロニードルの少なくとも遠位端部分が、ケラチン物質への挿入時に、より好ましくはケラチン物質への挿入後の1時間未満以内に、更により好ましくは24時間以内に、少なくとも2倍に膨潤することが好ましい場合がある。
【0067】
上記の膨潤性材料、好ましくは上記の膨潤性ポリマーは、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水中でのインビトロのインキュベーション後にゲルを形成できるように、高い粘弾性を有しうる。ゲルは、レオメータを用いる動的周波数掃引試験において、低周波数(0.01Hz)であっても高弾性係数G'、高粘性係数G"、1未満のタンジェント(δ)(タンジェント(δ)=G"/G')及び高稠度G*(G*2=G'2+G"2)を示す。
【0068】
一実施形態では、上記の膨潤性材料、好ましくは膨潤性ポリマーは、水溶性ではない又は水分散性ではない。
【0069】
別の実施形態では、上記の膨潤性材料、好ましくは膨潤性ポリマーは、ヒドロゲル形成性ポリマーでありうる。
【0070】
上記の膨潤性ポリマーは、高分子量ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、架橋ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール架橋ポリ乳酸又はポリグリコール酸又はポリ乳酸-co-グリコール酸又はポリジオキサノン、ポリ(スチレン)-ブロック-ポリ(アクリル酸)、ポリエチレングリコール架橋PMVE/MA、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム;セルロース;天然及び合成ゴム;アルギン酸塩;ポリアクリル酸ナトリウム、PEG架橋ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそのエステル、PEG架橋ポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)及びそのエステル、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0071】
高分子量ヒアルロン酸は、500kDa超、好ましくは1000kDa超、より好ましくは2100kDa超の分子量を、好ましくは10000kDa未満の分子量を有しうる。
【0072】
特に定義されない限り、本明細書における分子量は、数平均分子量を意味する。
【0073】
ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそのエステル、並びにポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)は、Gantrez型ポリマーとして知られている。
【0074】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルにおける膨潤性材料の量(固体ベース)は、マイクロニードルの総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であってもよい。本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルにおける膨潤性材料の量(固体ベース)は、マイクロニードルの総質量に対して、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であってもよい。このように、本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルにおける膨潤性材料の量(固体ベース)は、マイクロニードルの総質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは5質量%~25質量%、より好ましくは10質量%~20質量%であってもよい。
【0075】
本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルが少なくとも1種の膨潤性材料、好ましくは少なくとも1種の膨潤性ポリマーを含む場合、マイクロニードルは、皺の出現を低減させることによって、ケラチン物質、好ましくは皮膚、より好ましくは顔面の皮膚の、審美的外観を改善できるように膨潤性でありうる。
【0076】
換言すれば、マイクロニードルが膨潤性である場合、それは、皮膚内で膨潤して、例えば皮膚内の水分の吸収と共に、マイクロニードルの体積を更に増加させることができる。皺部位の皮膚表面下におけるそのような体積膨張は、皺を皮膚内部から効果的に押して、皺をより浅く、より幅広くすることができる。このようにして、皺は、低減されうる又は目立たなくなりうる。
【0077】
基材シート上の個々のマイクロニードルのそれぞれの間の尖端分離距離は、マイクロニードルによる皮膚又は唇への浸透を確保し、同時に高い経皮輸送速度を提供するのに十分短い分離距離を有するよう修正されうる。
【0078】
一実施形態では、マイクロニードルの間の尖端分離距離の範囲は、30~800μm又は50~600μm等の10~1000μmの範囲でありうる。これにより、可能な限り多くのマイクロニードルによる角質層への効果的な浸透と、マイクロニードルが膨潤性である場合に、マイクロニードルの可能な膨潤に必要な余地との間に達成されるべき妥協点を可能としうる。
【0079】
一実施形態では、マイクロニードルの密度は、100~2000マイクロニードル/cm2、好ましくは200~1000マイクロニードル/cm2、更により好ましくは200~500マイクロニードル/cm2であってもよい。
【0080】
(エラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤)
本発明によれば、本発明によるマイクロニードルシートのマイクロニードルは、エラスターゼの少なくとも1種のN-アシルアミノアミド阻害剤を含む。エラスターゼの単一のN-アシルアミノアミド阻害剤を使用してもよい。2種以上のエラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
エラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤はエラスターゼ阻害剤であり、N-アシルアミノアミドのファミリーに属する。
【0082】
エラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤は、美容活性成分として使用される。
【0083】
エラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤は、式(I)
【0084】
【化3】
【0085】
[式中、
- Y基はO又はSを表し、
- R1基は、以下のものを表し、
(i)水素原子、
(ii)1~18個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基であり、
-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR、-COR、-P(O)-(OR)2、及び-SO2-ORからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換され、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、-COR"、-C-Hal3(ハロゲン)からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す、
(iii)-OR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-COOR、-COR基からなる群から選択される基であり、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す、
- R2基は、-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR"、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR、及び-CORからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換された、1~18個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
- R3基は、式(II)又は(III):
-A-C6H(5-y)-By (II)
-C6H(5-y)-By' (III)
(式中、
・yは0から5の間に含まれる整数であり、
・y'は1から5の間に含まれる整数であり、
・Aは、-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR、-COR、-NO2、及び-SO2-ORからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換された、1~18個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
・Bは、-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-C-Hal3(ハロゲン)、-CN、-COOR、-COR、-NO2、及び-SO2-ORからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換された、1~18個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基であり、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す)のものからなる群から選択される基を表し、
- X基は、-OH、-OR4、-NH2、-NHR4、-NR4R5、-SR4、-COOR4、及び-COR4からなる群から選択される基を表し、
R4及びR5は、それぞれ独立して、-OH、-OR、-O-COR、-SH、-SR、-S-COR、-NH2、-NHR、-NRR'、-NH-COR、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR、及び-CORからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の基により任意選択で置換された、1~6個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
R及びR'は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前記R及びR'基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、及び-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、
前記R4及びR5基は、5員又は6員の炭素環と一緒に形成することができ、5員又は6員の炭素環は、環中にO、N、及び/又はSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を更に含んでもよく、かつ/又は-OH、-OR"、-O-COR"、-SH、-SR"、-S-COR"、-NH2、-NHR"、-NH-COR"、-Hal(ハロゲン)、-CN、-COOR"、-COR"からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の基により置換されていてもよく、R"は1~6個の炭素原子を含有する、任意選択でハロゲン化された、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す]
で表される化合物、その無機又は有機酸塩、その光学異性体から、単離された形態で又はラセミ混合物として、選択されうる。
【0086】
好ましくは、式(I)のY基はOを表し、及び/又はX基は-OHを表す。
【0087】
好ましい実施形態によれば、Hal(ハロゲン)はフッ素である。
【0088】
直鎖状、環状、又は分枝状の炭化水素基とは、特にアルキル、アリール、アラルキル、アルキルアリール、アルケニル及びアルキニル型の基を意味する。
【0089】
R3基に存在するC6H5基は、環状芳香族基と理解しなければならない。
【0090】
好ましくは、Y基は酸素を表す。
【0091】
好ましくは、R1基は、水素、又は任意選択で置換された、1~12個、特に1、2、3、4、5若しくは6個の炭素原子を含有する、直鎖状若しくは分枝状、飽和若しくは不飽和の炭化水素基を表す。
【0092】
特に、置換基は、-OH、-OR及び/又は-P(O)-(OR)2から選択してもよく、Rは、任意選択でハロゲン化、更には過ハロゲン化された、1~6個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。
【0093】
好ましくは、R1基は、-OH又は-P(O)-(OR)2基により任意選択で置換された、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル基を表し、Rはメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを表す。
【0094】
好ましくは、R2基は、任意選択で置換された、1~12個、特に1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含有する、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。
【0095】
特に、置換基は-OH及び-ORから選択されてもよく、Rは、任意選択でハロゲン化、更には過ハロゲン化された、1~6個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。
【0096】
好ましくは、R2基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル又はイソブチル基を表す。
【0097】
好ましくは、R3基は、式-C6H(5-y')-By'[式中、y'=1、2又は3である]の基、又は式-A-C6H(5-y)-By[式中、y=0、1又は2]の基を表す。好ましくは、Aは、任意選択で置換された、1~12個の炭素原子を含有する、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和の二価炭化水素基である。Aの置換基は、好ましくは、-Hal(ハロゲン、更には過ハロゲン)、-CN、-COOR、-NO2、-SO2-ORから選択され、Rは、任意選択でハロゲン化、更には過ハロゲン化された、1~6個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。
【0098】
好ましくは、R3基は、以下の式:
【0099】
【化4】
【0100】
[式中、
A及びBは上記の意味を有する]
から選択される基を表す。
【0101】
特に、二価のA基は、メチレン、エチレン、プロピレンでありうる。
【0102】
B基は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はイソプロピル基であり、1つ又は複数のハロゲン、特に塩素、臭素、ヨウ素、又はフッ素により置換された、好ましくは完全にハロゲン化された(過ハロゲン化された)、例えば過フッ化された基である。非常に特に好ましいものとして、ペルフルオロメチル基(-CF3)を特に挙げることができる。
【0103】
好ましくは、X基は、-OH又は-OR4から選択される基を表し、R4は、任意選択で置換された、1~6個の炭素原子を含有する、直鎖状、環状又は分枝状、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。置換基は、-OH及び-ORから選択されてもよく、Rは、任意選択でハロゲン化、更には過ハロゲン化された、1~6個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。好ましくは、X基は、-OH、-OCH3、-OC2H5、-O-C3H7、又は-OC4H9から選択される基を表す。
【0104】
本発明による化合物は、当業者により一般知識に基づいて容易に調製することができる。特に、Ugi反応により、カルボン酸、アルデヒド、アミノ化合物及びイソニトリルを反応させることが可能である。
【0105】
本発明による化合物の合成中、出発化合物に存在する異なる基の性質に応じて、当業者は、反応の進行中に特定の置換基が反応しないように、保護する配慮をすることになることは明確に理解される。
【0106】
式(I)の化合物は、N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)、N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)誘導体、N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)のイオン、及びN-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)誘導体のイオンからなる群から選択され得る。
【0107】
本発明の文脈において、用語「N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)」は、特に以下の式の基本単位及びその誘導体を包含する。
【0108】
【化5】
【0109】
用語「N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)又はその誘導体」は、本発明の文脈において、N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)塩、特にナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩も含む。
【0110】
式(I)の化合物のアンチエイジング効果は、米国特許出願公開第2007/0202203(A)号で実証されている。米国特許出願公開第2007/0202203(A)号では、N-アシルアミノアミドのファミリー、それらを含む組成物、及び使用を記載している。化合物は、エラスターゼ活性の阻害活性を示し、弾性繊維の分解を制限及び/又は抑制するために使用できることが証明されている。したがって、それらは組成物の調製において、又は調製のために使用することができ、化合物又は組成物は、皮膚の老化の徴候を予防的及び/又は治癒的に処置することを意図している。
【0111】
N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)は、アンチエイジング剤として使用できる。
【0112】
本発明で使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルにおけるエラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤の量は限定されず、マイクロニードルの総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であってもよい。
【0113】
本発明で使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルにおけるエラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤の量は限定されず、マイクロニードルの総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0114】
本発明で使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルにおけるエラスターゼのN-アシルアミノアミド阻害剤の量は限定されず、マイクロニードルの総質量に対して、0.1質量%~30質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1.0質量%~10質量%であってもよい。
【0115】
(基材シート)
本発明によるマイクロニードルシートは、その上にマイクロニードルが存在する又は配置されている基材シートを備える。
【0116】
本発明によるマイクロニードルシートの基材シートは、水中で溶解性であっても、水中で崩壊性であってもよい。
【0117】
本発明によるマイクロニードルシートの基材シートは、上記で説明したように、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーを含むことができる。言い換えれば、マイクロニードルシートのマイクロニードルに含まれうる水溶性又は水分散性ポリマーに関する上記の説明は、基材シートに含まれる水溶性又は水分散性ポリマーに適用できる。
【0118】
例えば、本発明によるマイクロニードルシートの基材シートにおける水溶性又は水分散性ポリマーの量(固体ベース)は、基材シートの総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%、より好ましくは70質量%以上であってもよい。本発明によるマイクロニードルシートの基材シートにおける水溶性又は水分散性ポリマーの量(固体ベース)は、基材シートの総質量に対して、100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってもよい。このように、本発明によるマイクロニードルシートの基材シートにおける水溶性又は水分散性ポリマーの量(固体ベース)は、基材シートの総質量に対して、50質量%~100質量%、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~80質量%であってもよい。
【0119】
基材シート及びマイクロニードルは、分離されていても一体化されていてもよい。
【0120】
例えば、基材シート及びマイクロニードルは、少なくとも1種の共通の水溶性又は水分散性ポリマーを含んでもよい。したがって、一実施形態において、基材シート及びマイクロニードルは、少なくとも1種の共通の水溶性又は水分散性ポリマーを含む単一の要素でありうる。好ましくは、この単一の要素は、同じ水溶性又は水分散性ポリマーを使用して調製されうる。
【0121】
その一方で、基材シートは、マイクロニードルと異なっていてもよく、別個であってもよい。例えば、基材シート及びマイクロニードルは、異なる材料から作られてもよい。この場合、基材シートは、例えば、マスク、ワイプ、パッチ、及び一般に、全ての種類の多孔質基材シートから選択されてもよい。好ましくは、これらの基材シートは、長円構造、すなわち、それらが画定される平面の寸法よりも小さい厚みを有することができる。
【0122】
基材シートは、パッチ、ディスク、マスク、タオル、グローブ、プレカットロールの形態、又は美容用途に適した他の任意の形態であるように切断されてもよい。
【0123】
(調製)
本発明によるマイクロニードルシートをどのように調製するかに関して、制限はない。本発明によるマイクロニードルシートは、成形、3Dプリンティング、及びドロップレット・ボーン・エアー・ブローイング(droplet born air blowing)等の従来の技術に基づいて調製することが可能である。
【0124】
本発明によるマイクロニードルシートは、例えば、上記で説明した少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーを含む組成物を成形する工程を含む方法によって調製することができる。
【0125】
一実施形態において、本発明によるマイクロニードルシートは、
(a)マイクロニードルのネガに対応するキャビティを有する型を用意する工程と、
(b)上記で説明した少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、エラスターゼの少なくとも1種のN-アシルアミノアミド阻害剤とを含む組成物をキャビティに充填する工程と、
(c)組成物を、例えば、室温で(任意選択で加熱して)、数時間等の期間にわたり乾燥することによって凝固させて、マイクロニードルを形成する工程と、
(d)型からマイクロニードルシートを取り外す工程と、を含む方法によって調製することができる。
【0126】
型は、ポリアミドやシリコーン等の有機材料、及びアルミニウムや鉄等の無機材料から作ることができる。
【0127】
少なくとも1種の蒸発性液体成分を、必要な場合、組成物の流動性を増強するために上記の組成物に含めてもよい。蒸発性液体成分の例は限定されないが、水及びエタノール等のアルコールであることが好ましい。
【0128】
蒸発性液体成分の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であってもよい。蒸発性液体成分の量は、組成物の総質量に対して、98質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下であってもよい。したがって、蒸発性液体成分の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~98質量%、好ましくは20質量%~95質量%、より好ましくは30質量%~90質量%であってもよい。
【0129】
好ましくは流動可能であり、より好ましくは液体の形態である、上記の組成物中の水溶性又は水分散性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、2質量%~90質量%、好ましくは5質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%であってもよい。
【0130】
必要に応じて、上記の組成物は、上記で説明した膨潤性ポリマー等の少なくとも1種の追加のポリマー、及び/又は上記で説明した少なくとも1種の美容活性成分を含んでもよい。
【0131】
本発明によるマイクロニードルシートの形状は限定されず、マイクロニードルシートの適用対象に応じて、唇の形状や目の下に適用するのに適した形状等、いかなる形状であってもよい。
【0132】
[美容方法]
本発明の皮膚又は唇等のケラチン物質の美容方法は、
ケラチン物質に、本発明によるマイクロニードルシートを適用する工程を含む。
【0133】
本発明による美容方法は、皮膚又は唇、好ましくは皮膚、より好ましくは顔面の皮膚等の、ケラチン物質のアンチエイジング美容処理を対象とすることができる。
【0134】
本発明による美容方法は、例えば皺の出現を低減させることによって、ケラチン物質の審美的外観を改善するために使用されうる。
【0135】
皮膚における表皮等のマトリックスの量が減少すると、皮膚の厚さの減少及び皮膚弾性の劣化をもたらして、皺の形成を引き起こす傾向がある。マイクロニードルは、皮膚のマトリックスの量を増加させて皮膚弾性の増強を引き起こすことができ、このことが皮膚上の皺の低減をもたらす。
【0136】
マイクロニードル、特にその遠位端部分が膨潤性である場合、皮膚内で膨潤して、例えば皮膚内の水分のその吸収と共に、マイクロニードルの体積を更に増加させることができる。皺部位の皮膚表面下におけるそのような体積膨張は、皺を皮膚内部から効果的に押して、皺をより浅く、より幅広くすることができる。このようにして、皺は、低減する又は目立たなくすることができる。
【0137】
そのため、本発明による美容方法は、マイクロニードルシートをケラチン物質に押し付けて、マイクロニードルシートのマイクロニードルを、皮膚等のケラチン物質に確実に挿入する工程を含むことが好ましい。
【0138】
特定の実施形態において、本発明による美容方法を使用して、半永久的又は永久的な美容処置法を皮膚等のケラチン物質に適用することができる。
【実施例
【0139】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例は、本発明の分野における非限定的な例示として提示される。
【0140】
[マイクロニードルシート]
以下に示すように、平均分子量100,000ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムと、N-アセチル-3-トリフルオロメチル-フェニル-(バリン-グリシン)(以下「ジペプチド」と称する)を使用して、マイクロニードルシートを調製した。
【0141】
マイクロニードルシートを、標準的な注型成形法により調製した。ヒアルロン酸ナトリウムとジペプチドを水中に溶解させ、1質量%又は10質量%の濃度のジペプチドを含む水性溶液を得た。このようにして得られた水性溶液を、マイクロニードルの形状に対応する型のキャビティ内に注入した。室温で乾燥させて水を除去した後、キャビティ内のマイクロニードルを、基材シート上に複数のマイクロニードルを有するマイクロニードルシートとして型から取り外した。
【0142】
参照として、ジペプチドを含まないマイクロニードルシートも調製した。
【0143】
マイクロニードルシートのそれぞれを、6mmの幅を有するサンプル片に切断した。サンプル片を白色樹脂の正方形のブロック上に配置した。サンプル片の列を顕微鏡で観察した(倍率*80)。3列を観察した。列ごとに9本の針を確認した。針の長さも、27本のマイクロニードルの顕微鏡観察により、平均約208μmに決定した。
【0144】
[評価]
(安定性)
1質量%及び10質量%の濃度のジペプチドを含むマイクロニードルシートを、4℃の温度と75%の相対湿度で2か月間保管した。次に、10分間の超音波処理と10分間の振動振とうにより、マイクロニードルシートを精製水で溶解させることによって、ジペプチドをマイクロニードルシートのそれぞれから抽出した。12,000rpmで3分間、遠心分離した後、上澄み中のジペプチドをHPLCで測定した。ジペプチドの濃度(質量%)を、こうして収集したジペプチドの質量をマイクロニードルシートの質量で除算することにより求めた。
【0145】
マイクロニードルシートのそれぞれにおけるジペプチドの濃度は、元の濃度(1質量%又は10質量%)とほぼ同じであることが確認された。
【0146】
したがって、本発明によるマイクロニードルシート中のジペプチドは安定である。
【0147】
(機械的特性)
マイクロニードルシートのそれぞれの圧縮試験は、引張試験機EZ-SX(島津製作所)で実施した。応力-ひずみ曲線(S-S曲線)を得るために、2枚のステンレス鋼平板を使用して、マイクロニードルシートのそれぞれを圧縮速度1.0mm/分で圧縮した。0~0.1mmのひずみの間におけるS-S曲線の勾配を、ヤング率とみなした。結果を表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
ジペプチドを含むマイクロニードルシートのヤング率に反映される剛性は、ジペプチドを含まない参照マイクロニードルシートの剛性よりも低いことが確認された。しかし、ジペプチドを含むマイクロニードルシートの剛性は、皮膚に挿入するのに十分であった。
【0150】
(挿入試験)
ジペプチドを含むマイクロニードルシートを挿入試験に使用した。マイクロニードルシートのそれぞれを、アプリケータでヒトの皮膚片(厚さ700μm、Science Care社、USA)に適用した。2分後、マイクロニードルシートを取り外し、ヒトの皮膚片の表面を1%のゲンチアナバイオレットB溶液で染色した。ヒトの皮膚片の表面の写真を、マイクロニードルの挿入又はマイクロニードルシートにより作り出された細孔を確認するために、高速カメラを使用して撮影し、顕微鏡を使用して観察した。
【0151】
紫色の点がヒトの皮膚片の表面にはっきりと確認された。したがって、1質量%及び10質量%の濃度でジペプチドを含むマイクロニードルシートの両方は、ヒトの皮膚上に細孔を作り出すことができることが発見されたが、これらの細孔は、ヒトの皮膚片の表面にある紫色の点によって確認された。
【0152】
また、ヒトの皮膚片に適用する前後において、マイクロニードルの針形状の変化を観察することにより、マイクロニードルシートにおけるマイクロニードルの溶解を詳細に調べた。マイクロニードルシートのそれぞれを、アプリケータを使用してヒトの皮膚片(厚さ700μm、Science Care社、USA)に適用した。60分後、マイクロニードルシートを皮膚表面から取り外し、マイクロニードルシートのマイクロニードルを顕微鏡を使用して観察した。
【0153】
1質量%及び10質量%の濃度で、ジペプチドを含むマイクロニードルシートの両方は、ヒトの皮膚によく溶解することが発見された。
【0154】
(インビトロ皮膚吸着試験)
実施例1: 1%ジペプチドを含むマイクロニードルシート
実施例2: 10%ジペプチドを含むマイクロニードルシート
比較例1: W/Oエマルション(1%ジペプチドを含む)
【0155】
(1)標準溶液の調製
10mgのジペプチドを超純水に溶解し、100mlのメスフラスコに移した。次に、超純水を加えてフラスコを較正ラインまで満たし、標準ストック溶液を調製した。標準ストック溶液を超純水で希釈することにより、最終濃度がそれぞれ5.00、1.25、0.313、0.1560、0.078、0.039、0.0195、0.0097、0.0048、及び0.0024μg/mlの標準溶液を得た。
【0156】
(2)インビトロ透過実験
ヒトの皮膚片(厚さ700μm、Science Care社、USA)を使用した。12個のフランツ拡散セルは、インビトロ透過実験に使用する。
【0157】
実験の前に、ヒトの皮膚片の完全性を、電気抵抗を測定することにより確認した。
【0158】
ヒトの皮膚片を、直径30mmの円形に切断し、同じサイズの円形の濾紙(Whatman CAT No. 1450150)の上に(最上部の角質層)設置した。ヒトの皮膚片及び濾紙を、セルのレセプターチャンバーとドナーチャンバーとの間に載せ、そのときにヒトの皮膚片の角質層がドナーチャンバーに向くようにした。レセプターチャンバーに2.4mlのPBS水性溶液(pH7.4)を満たし、温度を32℃に維持した。このように、実験を24時間実施した。レセプター溶液(500μl)を特定のタイミング(0.5、1、3、6、22、及び24時間)で抜き取り、同量の新鮮なレセプター溶液で置き換えた。
【0159】
12のヒトの皮膚片を3つの群に分け、各群に4人のドナーを提供した。実施例1及び2について、マイクロニードルシートで投与された有効面積は、0.785cm2(円形の直径10mm)であった。実施例1では、アプリケータを使用してヒトの皮膚片に、1質量%のジペプチドを含むマイクロニードルシート(マイクロニードルシートの平均質量は5.5mgであった)を適用した。実施例2では、アプリケータを使用してヒトの皮膚片に、10質量%のジペプチドを含むマイクロニードルシート(マイクロニードルシートの平均質量は5.5mgであった)を適用した。比較例1では、ヒトの皮膚片に、1質量%のジペプチドを含む水性溶液を投与した(この実験における拡散セルの有効面積は3.14cm2であった)。
【0160】
レセプター液(RF)のジペプチドをLC/MS/MSで分析した。結果を図1に示す。
【0161】
ヒトの皮膚を通るジペプチドの透過量の順位付けは次のとおりであった。
実施例2>>実施例1>>比較例1
【0162】
実施例1及び2によるマイクロニードルシートは、比較例1によるW/Oエマルションよりも、ヒトの皮膚を通るジペプチドの透過量がそれぞれ44倍及び839倍高いことを示した。また、ジペプチドの透過量は、マイクロニードルシート中におけるジペプチドの濃度の増加に応じて増加した。
【0163】
次に、ヒトの皮膚片の角質層(SC)に浸透したジペプチドの量を、上記の透過実験後に求めた。ヒトの皮膚片の表面に残った試験材料を慎重に除去した。次いで、スコッチテープを使用して、20回剥離することによりSCをストリッピングした。SCの表面に残留物が残っているため、剥離したテープの1番目と2番目のストリップを別々に収集した。3回から20回連続してテープストリップを収集し、遠心分離管に入れた。収集されたストリップを、1番目のストリップ(G1)、2番目のストリップ(G2)、3番目から20番目のストリップ(G3)の3つの群に分けた。ジペプチドを、2ml、2ml、及び12mlのPBS水性溶液(pH7.4)、並びにエタノール(v/v、1:5)又はメタノール(v/v、1:5)で、それぞれ10分間の超音波と3時間の強い振動により、G1、G2及びG3から個別に抽出した。
【0164】
このようにして得られた懸濁溶液1mlをマイクロチューブに入れ、12,000rpmで5分間遠心分離した。上澄み液中のジペプチドをLC/MS/MSで分析した。結果を図2に示す。
【0165】
SCへのジペプチド量の順位付けは次のとおりであった。
実施例2>>実施例1≒比較例1
【0166】
ヒトの皮膚片の表皮及び真皮に浸透したジペプチドの量も求めた。上記のテープをストリップした後、ヒトの皮膚片を5mlのPBS(pH7.4)及びエタノール(v/v、1:5)又はメタノール(v/v、1:5)で、10分間の超音波及び3時間の強い振動により、より小さな片に切断した。このようにして得られた懸濁溶液を5,000rpmで5分間遠心分離した。その1mlをマイクロチューブに入れ、12,000rpmで3分間遠心分離した。上澄み液中のジペプチドをLC/MS/MSで分析した。結果を図2に示す。
【0167】
表皮/真皮へのジペプチド量の順位付けは次のとおりである。
実施例2>>実施例1>比較例1
【0168】
実施例1及び2によるマイクロニードルシートは、比較例1によるW/Oエマルションよりも表皮/真皮への量がそれぞれ4倍及び59倍高いことを示した。ジペプチドの量も用量依存的に増加した。
【0169】
皮膚吸収(Ep+D+RF)の局面では、表皮/真皮へ入り、皮膚を通ったジペプチドの総量の順位は、次のとおりであった。
実施例2>>実施例1>>比較例1
【0170】
実験の概要を表2に示す。
【0171】
【表2】
【0172】
要約すると、局所適用と比較して、マイクロニードルシートで表皮/真皮の中へ及びヒトの皮膚を通してジペプチドを送達する利点が実証された。同時に、各皮膚区画及びレセプター液(RF)において、ジペプチド添加マイクロニードルシートについて用量依存効果が認められた。
図1
図2