(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】リポソームの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20060101AFI20231107BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20231107BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20231107BHJP
A61K 51/12 20060101ALI20231107BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20231107BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20231107BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20231107BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20231107BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20231107BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20231107BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20231107BHJP
B01J 13/06 20060101ALI20231107BHJP
A61K 47/22 20060101ALN20231107BHJP
A61K 8/92 20060101ALN20231107BHJP
A61K 47/44 20170101ALN20231107BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K47/24
A61K31/7048
A61K51/12 100
A61K49/00
A61K47/28
A61K8/14
A61Q19/02
A61K8/55
A61K8/63
A61Q7/00
B01J13/06
A61K47/22
A61K8/92
A61K47/44
(21)【出願番号】P 2018244108
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-11-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓馬
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035179(JP,A)
【文献】特開2008-156322(JP,A)
【文献】特開2008-222653(JP,A)
【文献】特表2018-533628(JP,A)
【文献】特表2014-522816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
B01J 13/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶媒への分散時に難水溶性薬物を内包するリポソームとなる脂質混合物の製造方法であって、難水溶性薬物が、25℃における水への溶解度が2.0g/L以下である薬物であり、有機溶媒を含まない水性溶媒が加熱混合原料の全質量に対して20質量%以下となる条件で、リポソームを構成する脂質、糖類及び難水溶性薬物を加熱混合して溶融させる工程と、溶融した溶融物を冷却する工程を含み、
前記リポソームを構成する脂質が、リン脂質を含む脂質二重膜を形成する脂質と、脂質二重膜に取り込まれ
る脂溶性成分
としてコレステロールを含有し、
前記加熱温度が、脂質二重膜を形成する脂質の少なくとも1種のガラス転移温度以上又は融点温度以上である、脂質混合物の製造方法。
【請求項2】
加熱温度が、脂質二重膜を形成する脂質の少なくとも1種のガラス転移温度より4℃以上高い温度又は融点温度以上であり、かつ、難水溶性薬物の分解温度以下である請求項1記載の脂質混合物の製造方法。
【請求項3】
加熱温度が80~160℃である請求項1又は2記載の脂質混合物の製造方法。
【請求項4】
難水溶性薬物が、抗生物質製剤、中枢神経系用薬、末梢神経系用薬、感覚器官用薬、循環器官用薬、呼吸器官用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、泌尿生殖器官及び肛門用薬、歯科口腔用薬、ビタミン剤、滋養強壮薬、血液・体液用薬、細胞賦活用薬、腫瘍用薬、放射性医薬品、アレルギー用薬、化学療法剤、生物学的製剤、寄生動物に対する薬、アルカロイド系・非アルカロイド系麻薬、診断用薬、育毛剤、養毛剤、発毛剤、美白剤から選択される1種又は2種以上である請求項1~3のいずれか1項記載の脂質混合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の製造方法により得られる脂質混合物を水性溶媒へ分散する工程を含む、難水溶性薬物を内包するリポソームの製造方法。
【請求項6】
脂質混合物を水性溶媒へ分散した後、リポソームをサイジングする工程を更に含む、請求項5記載の難水溶性薬物を内包するリポソームの製造方法。
【請求項7】
脂質混合物を水性溶媒へ分散した後、リポソームをサイジングし、次いで乾燥する工程を更に含む、請求項5又は6記載の難水溶性薬物を内包するリポソームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難水溶性薬物を内包するリポソームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、両親媒性脂質分子の二分子膜からなる微小胞体である。リポソームは、その内部の水相に水溶性物質を、二分子膜内に脂溶性物質を封入することができ、また、高い生体親和性を有する。そのため、リポソームは、薬物送達システム(DDS)のキャリアとして開発研究が盛んに行われている。
【0003】
難水溶性薬物を内包するリポソームの調製方法としては、有機溶媒法(バンガム法)が一般的である。例えば、特許文献1では、難水溶性のポリエン系抗生物質とホスファチジルグリセロールをクロロホルムとメタノールの等容量溶液に溶解した後、脱溶媒して乾燥し、次いで水和、剪断することでポリエン系抗生物質を封入したリポソームを調製する方法が報告されている。
一方、有機溶媒を使用しない無溶剤法として、リポソーム膜成分物質と水性溶液とを、粉末結晶としての膜成分の相転移温度以上でかつ低くても50℃にて撹拌する方法(特許文献2)、両親媒性物質と活性因子の水性溶媒分散液を高温加熱する方法(特許文献3)、超音波乳化機や高圧ホモジナイザー等による機械的な方法(非特許文献1)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-160915号公報
【文献】特公平4-36735号公報
【文献】特表2007-501213号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】高橋ら、オレオサイエンス8、4、2008年、p.151-157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のリポソームの調製方法のうち、有機溶媒を使用する方法は、リポソームへの有機溶媒の残留が避けられず、また、工程が煩雑で相当の時間を要するため、安全性、工業的生産性の点で問題がある。これに対して、特許文献2、3等の方法は有機溶媒の使用を回避できる手法であるが、リポソームに難水溶性薬物は取り込まれ難く、得られるリポソームの薬物内包率は低いという問題があった。また、攪拌の際の高剪断力により、不安定な薬物を封入する場合は分解や変性の問題が生じ得る。
したがって、本発明は、難水溶性薬物を内包するリポソームの新たな製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、難水溶性薬物のリポソーム化技術について種々検討したところ、リポソームを構成する脂質と難水溶性薬物を加熱溶融させた後、冷却して脂質混合物を得、得られた脂質混合物を水性溶媒に分散することで、有機溶媒を用いなくとも高い内包率で難水溶性薬物を内包したリポソームが得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、水性溶媒への分散時に難水溶性薬物を内包するリポソームとなる脂質混合物の製造方法であって、水性溶媒が加熱混合原料の全質量に対して20質量%以下となる条件で、リポソームを構成する脂質及び難水溶性薬物を加熱混合して溶融させる工程と、溶融した溶融物を冷却する工程を含む、脂質混合物の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記脂質混合物を水性溶媒へ分散する工程を含む、難水溶性薬物を内包するリポソームの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便な工程により、高い内包率で難水溶性薬物をリポソームに内包させることができ、難水溶性薬物を内包するリポソームを工業的に有利に製造することができる。本発明の難水溶性薬物を内包するリポソームは、製造工程中に有機溶媒を用いずに製造可能なため、安全面からも好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、水性溶媒への分散時に難水溶性薬物を内包するリポソームとなる脂質混合物の製造方法であって、水性溶媒が加熱混合原料の全質量に対して20質量%以下となる条件で、リポソームを構成する脂質及び難水溶性薬物を加熱混合して溶融させる工程と、溶融した溶融物を冷却する工程を含む、脂質混合物の製造方法、及び、前記脂質混合物を水性溶媒へ分散する工程を含む、難水溶性薬物を内包するリポソームの製造方法である。
【0011】
本明細書において、脂質混合物とは、リポソームを構成する脂質と難水溶性薬物、及び必要に応じて含有されるその他の加熱混合原料を加熱混合して溶融させた後、冷却して得られる固体状もしくはペースト状の混合物を指す。当該脂質混合物は、水性溶媒への分散時に難水溶性薬物を内包するリポソームを形成する。
【0012】
本明細書において、難水溶性薬物とは、25℃における水への溶解度が2.0g/L以下の薬物を意味する。本発明は、25℃における水への溶解度が1.5g/L以下の薬物、更には25℃における水への溶解度が1.0g/L以下の薬物を好ましく適用できる。ここで溶解度は、溶液1L中に溶解している溶質のグラム数を表し、単位は[g/L]ある。
難水溶性薬物の性質として、リポソームを構成する脂質二重膜への内包のしやすさの観点から、脂溶性又は両親媒性の薬物が好ましく適用できる。
【0013】
難水溶性薬物としては、特に限定されず、医薬品や医薬部外品、化粧品、食品等に使用される化合物が挙げられる。例えば、中枢神経系用薬、末梢神経系用薬、感覚器官用薬、循環器官用薬、呼吸器官用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、泌尿生殖器官及び肛門用薬、歯科口腔用薬、ビタミン剤、滋養強壮薬、血液・体液用薬、細胞賦活用薬、腫瘍用薬、放射性医薬品、アレルギー用薬、抗生物質製剤、化学療法剤、生物学的製剤、寄生動物に対する薬、アルカロイド系・非アルカロイド系麻薬、診断用薬、育毛剤、養毛剤、発毛剤、美白剤等が挙げられる。難水溶性薬物は、1種であっても、2種以上の混合物であってもよい。
なかでも、抗真菌薬等の抗生物質製剤、腫瘍用薬等はリポソーム製剤として実用化されており、本発明を適用することが好ましい。
【0014】
本発明で用いられるリポソームを構成する脂質は、脂質二重膜を形成する脂質として、リン脂質又は糖脂質の少なくとも1種を含む。これらの脂質は、アミノ基、第4級アンモニウム基等が導入されたカチオン性脂質や、ポリアルキレングリコールが導入されたポリアルキレングリコール修飾脂質であっても良い。
【0015】
リン脂質は、動植物から抽出、精製した天然物であっても、化学合成したものであってもよく、水素添加、水酸化処理等の加工を施したものであってもよい。
例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール等のグリセロリン脂質;スフィンゴミエリン、セラミドシリアチン等のスフィンゴリン脂質;大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆レシチン水素添加物、卵黄レシチン水素添加物等が挙げられ、リポソームの安定性の観点から、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールが好ましい。
【0016】
糖脂質としては、例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等のグリセロ糖脂質;ガラクトシルセラミド、ラクトシルセラミド、ガングリオシド等のスフィンゴ糖脂質が挙げられ、リポソームの安定性の観点から、スルホキシリボシルグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガングリオシドが好ましい。
【0017】
これら脂質を構成する脂肪酸としては、飽和又は不飽和の直鎖炭化水素鎖が挙げられる。なかでも、リポソームの安定性の観点から、炭素数12~20の脂肪酸が好ましく、炭素数14~18の脂肪酸がより好ましく、飽和脂肪酸が更に好ましい。
【0018】
脂質二重膜を形成する脂質は、リポソームの安定性の観点から、リン脂質が好ましく、なかでも、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールがより好ましく、ホスファチジルコリンが更に好ましい。
【0019】
リポソームを構成する脂質には、上述の脂質二重膜を形成するリン脂質又は糖脂質の他、当該形成された脂質二重膜に取り込まれる脂溶性成分(但し、本発明の「難水溶性薬物」を除く)を用いるのが、リポソームの脂質二重膜の安定性の観点から、好ましい。
脂質二重膜に取り込まれる脂溶性成分としては、例えば、ステロール類、脂肪酸類、脂溶性の抗酸化剤、界面活性剤等が挙げられる。
ステロール類としては、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレス
テロールコハク酸、コレスタノール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール等の動物由来ステロール;シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等の植物由来ステロール;チモステロール、エルゴステロール等が挙げられる。なかでも、脂質二重膜の安定性の観点から、コレステロール、コレスタノールが好ましい。
ステロール類は、脂質二重膜の安定性の観点から、脂質二重膜を形成する脂質に対して、0.05~1.5モル用いることが好ましく、0.1~1.0モル用いることがより好ましく、0.2~0.8モル用いることが更に好ましい。
【0020】
脂肪酸類としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
脂肪酸類は、脂質二重膜の安定性の観点から、脂質二重膜を形成する脂質に対して、0.05~1.0モル用いることが好ましく、0.1~0.6モル用いることがより好ましく、0.1~0.4モル用いることが更に好ましい。
【0021】
なお、脂質二重膜に取り込まれる脂溶性成分として、20℃で液状の油性成分(大豆油、オリーブ油等)を用いてもよいが、脂質混合物を水性溶媒へ分散した後にリポソーム構造を安定化させる観点からは、使用量を少なくすることが望ましい。後述する加熱混合原料中の液状の油性成分は、リポソームの脂質二重膜を形成する脂質に対して、25質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、3質量%以下がより更に好ましく、1質量%以下がより更に好ましく、実質的に含まないことがより更に好ましい。
【0022】
脂溶性の抗酸化剤としては、トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等が挙げられる。
脂溶性の抗酸化剤は、脂質二重膜を形成する脂質及び難水溶性薬物の酸化安定性の観点から、脂質二重膜を形成する脂質に対して、0.001~0.1モル用いることが好ましく、0.002~0.05モル用いることがより好ましい。
【0023】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン付加ステロール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ジアルキルリン酸及びそれらの塩等の陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルアンモニウム及びそれらの塩等の陽イオン性界面活性剤;膜タンパク質等が挙げられる。
【0024】
本発明では、リポソームを構成する脂質及び難水溶性薬物を加熱混合して溶融させる際、リポソームを構成する脂質及び難水溶性薬物を含有する加熱混合原料を調製し、加熱混合処理を行う。リポソームを構成する脂質と難水溶性薬物は、固体状や粉末状、又は少量の水性溶媒へ分散させたスラリーの状態で当該処理に供することができる。
加熱混合原料中のリポソームを構成する脂質の含有量は特に限定されないが、生産性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、脂質混合物の水分散性の観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。なお、本発明において、リポソームを構成する脂質の含有量とは、脂質二重膜を形成する脂質と、当該形成された脂質二重膜に取り込まれる脂溶性成分(但し、本発明の「難水溶性薬物」を除く)との総量である。
【0025】
加熱混合原料中、難水溶性薬物に対するリポソームを構成する脂質の質量比[リポソームを構成する脂質/難水溶性薬物]は、その種類によって異なるが、リポソームへの難水溶性薬物の内包率の観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましく、5以上がより更に好ましく、6以上がより更に好ましい。また、生産性、薬効の観点から、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。
【0026】
更に、加熱混合原料には、糖類を用いることが、加熱混合原料の混合性を高める観点、得られた脂質混合物の水分散性を高める観点から、好ましい。
糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース等の単糖類;トレハロース、スクロース、マルトース等の二糖類;ソルビトール、イノシトール等の糖アルコール類が挙げられる。なかでも、脂質混合物の水分散性の観点から、二糖類が好ましい。
なお、加熱混合原料を加熱混合して溶融させる際、リポソームを構成する脂質及び難水溶性薬物は溶融するが、糖類は溶融しても、していなくてもよい。
【0027】
更に、加熱混合原料には、必要に応じて、クエン酸、乳酸、コハク酸及びそれらの塩等のpH調整剤、親水性の抗酸化剤(アスコルビン酸、ポリフェノール類)、水溶性膜タンパク質等を用いてもよい。
【0028】
本発明では、リポソームを構成する脂質及び難水溶性薬物を加熱混合して溶融させる工程を、水性溶媒が加熱混合原料の全質量に対して20質量%以下となる条件で行う。加熱溶融時の水性溶媒を少なくすることで難水溶性薬物の分解を回避でき、製造された脂質混合物を水性溶媒へ分散させた際に、難水溶性薬物を高効率でリポソームに内包できる。
本明細書において、水性溶媒とは、水、又は水溶性の溶質もしくは有機溶媒を含む水溶液をいう。水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、精製水が例示される。水溶性の溶質は、塩類、糖類、多価アルコール類、pH調整剤、浸透圧調整剤、増粘剤等が例示される。
有機溶媒は、水と均一に混合するものであれば特に限定されないが、リポソームの安全性の観点より、使用量を少なくすることが望ましい。有機溶媒を含む水溶液中の有機溶媒の濃度は、25質量%以下が好ましく、更に10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下がより更に好ましい。本発明では、実質的に有機溶媒の濃度が0質量%、すなわち有機溶媒を含まないのが好ましい。
【0029】
水性溶媒は、難水溶性薬物の分解抑制の観点から、加熱混合原料の全質量に対して15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下がより更に好ましく、原料由来の水性媒体以外に含まないことが好ましい。
【0030】
リポソームを構成する脂質及び難水溶性薬物を加熱混合して溶融させる方法は、特に制限されず、公知の方法を適用できる。
例えば、温調ジャケット着きのミキサー(ハイスピードミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、レディゲミキサー、プラネタリミキサー、スパイラルミキサー)、エクストルーダー(1軸エクストルーダー、2軸エクストルーダー、リングエクストルーダー)等の装置によって実施できる。
【0031】
加熱温度は、加熱混合原料のうち脂質二重膜を形成する脂質の少なくとも1種が溶融する温度以上である。加熱により脂質二重膜を形成する脂質のうちの少なくとも1種が溶融すると、リポソームを構成する脂質、難水溶性薬物が溶融する。
加熱温度は、難水溶性薬物の内包率の観点から、脂質二重膜を形成する脂質の少なくとも1種のガラス転移温度以上であることが好ましく、脂質二重膜を形成する脂質の少なくとも1種のガラス転移温度より4℃以上高い温度がより好ましく、脂質二重膜を形成する脂質の少なくとも1種のガラス転移温度より8℃以上高い温度が更に好ましい。また、ガラス転移点を有さない脂質二重膜を形成する脂質の場合、加熱温度は、脂質二重膜を形成する脂質の少なくとも1種の融点温度以上であることが好ましい。
脂質二重膜を形成する脂質のガラス転移温度、融点は、例えば、示唆操作熱分析計を用いて測定することができる。示差走査熱量計として、例えば、STAR System(メトラートレド製)を用いることができる。
具体例を挙げると、リン脂質の相転移温度は、下記の手順により測定できる。
試料をアルミニウム製の試料容器に秤量し、アルミニウム製のカバーをした後、シーラーを用い、密封する。密封した試料容器を、電気炉内のホルダーユニットに乗せる。また、空気を密封したブランク容器を、ホルダーユニットのブランク側に乗せる。電気炉に蓋をし、窒素雰囲気下で1℃、5分間保持する。次いで、1℃から180℃まで、昇温速度0.5℃/分で加熱する(昇温工程)。この、昇温工程において、示差走査熱量計を用いて、DSC曲線を計測する。この際、昇温工程で1つめの吸熱ピークが見られた際の温度を、リン脂質のガラス相転移温度又は融点とする。昇温工程で2つ目の吸熱ピークが見られたリン脂質については、1つ目の吸熱ピークが見られた温度をガラス転移温度、2つ目の吸熱ピークが見られた温度を融点とする。
【0032】
また、加熱温度は、難水溶性薬物の熱安定性の観点から、難水溶性薬物の分解温度以下であることが好ましく、難水溶性薬物の分解温度より20℃以上低い温度がより好ましく、難水溶性薬物の分解温度より10℃以上低い温度が更に好ましく、難水溶性薬物の分解温度より5℃以上低い温度がより更に好ましい。
難水溶性薬物の分解温度は、MERCK INDEX(メルク・アンド・カンパニー)等のデータベースに記載の化合物情報を参照することができ、記載されていない化合物については所定温度の恒温槽で静置した際の濃度変化を測定する手法や、示唆操作熱分析計等を用いた既知の手法により測定することができる。
【0033】
本発明において、加熱の温度は、先述のとおりであるが、難水溶性薬物の内包率の観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましい。また、難水溶性薬物の分解抑制の観点から、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましく、140℃以下がより更に好ましく、130℃以下がより更に好ましい。
【0034】
加熱の手段は、例えば、水蒸気、電気が挙げられる。なお、本発明において、加熱温度とは、加熱混合原料の加熱部の温度をいう。
【0035】
加熱混合処理は、例えば、回分法、半回分法、流通法等いずれの方法によっても実施できる。なかでも、回分法、流通法は、加熱時間の制御が容易である点で好ましい。なお、本発明において、加熱時間とは、加熱混合原料を加熱部に接触開始した時点を起算点とし、加熱部よりも10℃以上低い冷却部に接触開始した時点を終点とする時間をいう。
加熱の時間は、適宜選択してよく、回分法の場合、難水溶性薬物の内包率の観点から、1.0分以上が好ましく、3.0分以上が更に好ましく、4.0分以上が更に好ましく、5.0分以上が更に好ましく、また、熱安定性の観点から、60分以下が好ましく、40分以下がより好ましく、20分以下が更に好ましい。
流通法で行う場合、加熱の時間は、反応器の高温高圧部の体積を加熱混合原料の供給速度で割ることにより算出される平均滞留時間を用いる。流通式の場合の加熱の時間は、難水溶性薬物の内包率の観点から、0.5分以上が好ましく、1分以上がより好ましく、3分以上が更に好ましい。また、難水溶性薬物の熱安定性の観点から、30分以下が好ましく、15分以下がより好ましく、10分以下が更に好ましい。
【0036】
加熱混合条件は使用する装置によって異なるが、例えば回分式2軸エクストルーダー(処理量7ml/回)の場合、混合性の観点から、スクリュー回転数は20r/min以上が好ましく、更に40r/min以上が好ましい。
【0037】
次いで、溶融した溶融物を冷却する。溶融物の冷却は多段階的に行っても良い。例えば、加熱温度より10℃低い温度まで冷却後、いったん冷却を中断し、更に冷却しても良い。冷却の方法は、空冷式、熱交換機との接触等により実施できる。
【0038】
溶融物の冷却は、冷却速度が大きいほど難水溶性薬物への熱負荷が少なく好ましい。このため、冷却速度の上限は特に定めないが、製造設備の制約等の観点から、例えば10℃/分以上、更に20℃/分以上が好ましい。
【0039】
本発明では、溶融物を冷却した後、脂質混合物が得られる。脂質混合物は、必要に応じて粉砕処理等を行っても良い。
【0040】
得られた脂質混合物を水性溶媒へ分散させることで、難水溶性薬物を内包するリポソームが形成される。難水溶性薬物を内包するリポソームは、単層又は多層であり得る。
本発明では、例えば、脂質混合物を注射用バイアルへ充填し、難水溶性薬物の使用時に水性溶媒と混合することでリポソーム分散させてもよく、また、脂質混合物の製造の後に続けて水性溶媒との接触を行ってもよい。
【0041】
脂質混合物を水性溶媒へ分散する方法は適宜選択することができる。例えば、水性溶媒を撹拌している所へ脂質混合物を投入してもよく、反対に脂質混合物へ水性溶媒を投入してもよい。分散性の観点からは、水性溶媒を撹拌している所へ脂質混合物を投入することが好ましい。撹拌の方法は特に限定されず、パドル翼撹拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を適宜選択できる。
脂質混合物と水性溶媒の混合比は利用目的によって適宜選定可能であるが、リポソーム分散性の観点から、脂質混合物に対する水性溶媒の質量比[水性溶媒/脂質混合物]が4g/g以上であることが好ましく、6g/g以上であることがより好ましく、8g/g以上であることが更に好ましい。また、有効性の観点から、400g/g以下であることが好ましく、300g/g以下であることがより好ましく、200g/g以下であることが更に好ましい。
【0042】
本発明では、水性溶媒へ分散したリポソームの粒子径を均一化にするためにリポソームをサイジングする工程を行ってもよい。リポソームのサイジングは、公知の方法を適用できる。例えば、超音波処理、高圧乳化処理、ポリカーボネートメンブレンフィルターを用いた処理等が挙げられ、水性溶媒との接触工程の後又は同時に実施できる。リポソームの平均粒子径は、適宜調節することができる。
【0043】
また、本発明では、保存性の観点から、リポソーム粒径を均一化した後、水分を除去して乾燥し、粉末状、顆粒状、固形状等の固体物の状態とすることもできる。水分を調整、除去する手段としては、凍結乾燥、蒸発乾固、噴霧乾燥等が挙げられる。乾燥方法は、特に制限されず、公知の方法を適用できる。
【0044】
かくして得られるリポソームは、高い内包率で難水溶性薬物を内包する。
リポソームの難水溶性薬物の内包率は、試料分散液中に存在する難水溶性薬物全量のうち、リポソームに内包された難水溶性薬物量の割合である。
本明細書において、難水溶性薬物のリポソーム内包率は、後述する実施例に記載の方法で算出できる。
【0045】
本発明の難水溶性薬物を内包するリポソームは、治療や診断等の様々な分野に使用可能である。とりわけ、薬物送達システム(DDS)に好適に利用することができる。
【実施例】
【0046】
[加熱混合原材]
水添大豆リン脂質(HSPC):商品名NC21、日油(株)製、ガラス転移温度 102℃
ジステアロイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DSPG-Na):商品名MG8080LS、日油(株)製、ガラス転移温度 67℃、融点 125℃
コレステロール:富士フイルム和光純薬(株)製、融点 148℃
アムホテリシンB(AmpB):富士フイルム和光純薬(株)製、25℃での水溶解度 0.75g/L、融点 158℃、分解温度 170℃
スクロース:富士フイルム和光純薬(株)製
コハク酸二ナトリウム六水和物:関東化学(株)製
トコフェロール:富士フイルム和光純薬(株)製
塩酸:富士フイルム和光純薬(株)製
水酸化ナトリウム:富士フイルム和光純薬(株)製
【0047】
[アムホテリシン濃度の測定]
試料分散液を、0.15g/Lの酢酸/ジメチルスルホキシドで溶解し、分光光度計にて405nmの吸光度を測定した。
【0048】
[アムホテリシンBのリポソーム内包率の算出]
リポソーム分散液中から下記の操作により未溶解のアムホテリシンBを除去した。
AVESTIN製 LF-STB リポソファストにポリカーボネート製フィルター(孔径1000nm)を設置し、65℃に加温したリポソーム分散液をリポソファストのシリンジに1mL仕込んだ。次いで、シリンジを押して分散液を孔径1000nmのポリカーボネートフィルターを透過させた。この操作を往復11回行い、リポソーム分散液を仕込んだシリンジと逆側のシリンジからリポソーム溶液を回収した。シリンジ操作の間、回収液が冷えないように、リポソファストをドライヤーで加温した。
ポリカーボネートフィルター透過前のアムホテリシンB濃度と、透過後のアムホテリシンB濃度(リポソーム内包アムホテリシンB濃度)をそれぞれ測定し、アムホテリシンBのリポソーム内包率を下記の式から算出した。
アムホテリシンBのリポソーム内包率(%)=[1000nmポリカーボネートフィルター透過後のアムホテリシンB濃度/1000nmポリカーボネートフィルター透過前のアムホテリシンB濃度]×100
【0049】
実施例1
50mLのPP容器に、水添大豆リン脂質3.37g、ジステアロイルホスファチジルグリセロールナトリウム1.34g、コレステロール0.82g、トコフェロール0.011g、アムホテリシンB 0.79g、スクロース14.25g、コハク酸二ナトリウム六水和物0.43gを計量し、スパーテルで混合した。これら成分のうち、リポソームを構成する脂質は、水添大豆リン脂質、ジステアロイルホスファチジルグリセロールナトリウム、コレステロール、及びトコフェロールである。また、スクロースは事前に乳鉢で粉砕後に計量した。
【0050】
次いで、90℃に加熱した2軸エクストルーダー(HAAKE製、miniCTW)を50r/minで回転させ、計量、混合した原料を約7mL投入した。投入後、回転数を80r/minにし10分間処理した。10分間の加熱混合完了後、エクストルーダー排出口を開放して溶融物を排出し、直ちにファン(アイリスオーヤマ製)で送風し空冷を行って脂質混合物を得た。空冷は5分間行い、室温まで冷却したことを確認した。この時点で、脂質混合物はアムホテリシンB由来の黄色を有する棒状の固体であった。
【0051】
得られた脂質混合物を乳鉢で粉砕した。次いで、容量13.5mLのガラスビーカーに10.8gのイオン交換水を計量し、65℃に加温しつつ1.5cmのマグネチックスターラーで600r/minで撹拌している所へ、粉砕した脂質混合物を1.20g投入した。5分間撹拌した後、分散液を採取し、流水で室温に冷却してリポソーム分散液を得た。リポソーム分散液のアムホテリシン濃度の測定を行い、また、アムホテリシンBのリポソーム内包率を求めた。
【0052】
実施例2~4
2軸エクストルーダーの加熱温度を110℃、130℃又は150℃とした以外は実施例1と同様の処理を行い、脂質混合物を得た後、リポソーム分散液を得た。実施例1と同様にしてリポソーム分散液のアムホテリシン濃度の測定を行い、また、アムホテリシンBのリポソーム内包率を求めた。
【0053】
比較例1
2軸エクストルーダーの加熱を行わず、室温(25℃)とした以外は実施例1と同様の処理を行い、混合物を得た後、リポソーム分散液を得た。実施例1と同様にしてリポソーム分散液のアムホテリシン濃度の測定を行い、また、アムホテリシンBのリポソーム内包率を求めた。
【0054】
比較例2(ホモミキサー法)
500mLビーカーに、イオン交換水300.00g、水添大豆リン脂質6.39g、ジステアロイルホスファチジルグリセロールナトリウム2.52g、コレステロール1.56g、トコフェロール0.02g、アムホテリシンB 1.50g、スクロース27.00g、コハク酸二ナトリウム六水和物0.81gを計量し、2.5モル/Lの塩酸水溶液を1.5g添加しpHを1.5に調整した。
この時点で、試薬分散水は懸濁状態であった。
次いで、90℃に温調したウォーターバス中に、容器を投入し加熱した。90℃への達温を確認後、ホモミキサー(IKA社製T25digital ULTRA-TURAX)にて17000r/minで2分間分散処理を行った。その後、容器を氷水中に移し2分間混合し、5℃まで冷却した。加熱から冷却工程までは、およそ10分で完了した。冷却後、流水で室温25℃にし、2.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を0.7g添加しpHを4.5に調整した。この時点で、容器内の試薬水は懸濁状態であった。1時間静置し、リポソーム分散液を回収した。実施例1と同様にしてリポソーム分散液のアムホテリシン濃度の測定を行い、また、アムホテリシンBのリポソーム内包率を求めた。
【0055】
比較例3(高圧ホモジナイザー法)
500mLビーカーに、イオン交換水300.00g、水添大豆リン脂質6.39g、ジステアロイルホスファチジルグリセロールナトリウム2.52g、コレステロール1.56g、トコフェロール0.02g、アムホテリシンB 1.50g、スクロース27.00g、コハク酸二ナトリウム六水和物0.81gを計量し、2.5モル/Lの塩酸水溶液を1.5g添加しpHを1.5に調整した。
この時点で、試薬分散水は懸濁状態であった。
次いで、90℃に温調したウォーターバス中に、容器を投入し加熱した。90℃への達温を確認後、高圧ホモジナイザー(SMT社製LAB2000)にて100MPa、5Passの分散処理を行った。その後、容器を氷水中に移し2分間混合し、5℃まで冷却した。加熱から冷却工程までは、およそ45分で完了した。冷却後、流水で室温25℃にし、2.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を0.7g添加しpHを4.5に調整した。この時点で、容器内の試薬水は懸濁状態であった。1時間静置し、リポソーム分散液を回収した。実施例1と同様にしてリポソーム分散液のアムホテリシン濃度の測定を行い、また、アムホテリシンBのリポソーム内包率を求めた。
【0056】
比較例4(水系加熱)
15mL容量のガラス製の耐熱圧容器に、イオン交換水10.590g、水添大豆リン脂質0.228g、ジステアロイルホスファチジルグリセロールナトリウム0.089g、コレステロール0.055g、トコフェロール0.001g、アムホテリシンB 0.053g、スクロース0.955g、コハク酸二ナトリウム六水和物0.029gを計量し、2.5モル/Lの塩酸水溶液を0.05g添加しpHを1.5に調整した。前記試薬を計量したガラス製耐熱圧容器に蓋をし、密閉した。
この時点で、試薬分散水は懸濁状態であった。
次いで、90℃に温調したオイルバス中に、密閉したガラス製耐熱圧容器を投入し、7分間加熱した。この時、容器内の温度が均一になるように、適時、耐熱圧容器を手で振った。密閉されていたことから、加熱時に系内は飽和蒸気圧であった。7分間の加熱完了後、ガラス製耐熱圧容器を氷水中に移し3分間混合し、5℃まで冷却した。加熱から冷却工程までは、およそ10分で完了した。冷却後、流水で室温25℃にし、2.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を0.7g添加しpHを4.5に調整した。この時点で、容器内の試薬水は懸濁状態であった。1時間静置し、耐熱圧容器の蓋をあけ、リポソーム分散液を回収した。実施例1と同様にしてリポソーム分散液のアムホテリシン濃度の測定を行い、また、アムホテリシンBのリポソーム内包率を求めた。
【0057】
比較例5及び6(水系加熱)
オイルバスの加熱温度を130℃又は160℃とした以外は比較例4と同様の処理を行い、リポソーム分散液を回収した。実施例1と同様にしてリポソーム分散液のアムホテリシン濃度の測定を行い、また、アムホテリシンBのリポソーム内包率を求めた。
実施例1~4及び比較例1~6の配合組成、処理条件及び結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
表1より明らかなように、実施例1~4のリポソームは、比較例1の加熱を行わずに混合処理のみを行ったリポソーム、及び比較例2~6の他の水を用いたリポソーム製造方法に比べてアムホテリシンBの内包率が高く、さらにリン脂質のガラス転移点温度以上に加熱することにより難水溶性薬物の内包率をさらに高められることが確認された。