(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】スクロール流体機械
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
F04C18/02 311F
(21)【出願番号】P 2019001918
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-12-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 善彰
(72)【発明者】
【氏名】洞口 典久
(72)【発明者】
【氏名】石本 孝生
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-079983(JP,U)
【文献】特開2017-082842(JP,A)
【文献】実開昭57-159056(JP,U)
【文献】特開2017-133466(JP,A)
【文献】特開平04-358784(JP,A)
【文献】実開平04-040102(JP,U)
【文献】実開平1-157293(JP,U)
【文献】特開平11-173282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体側に固定された固定スクロールと、
前記固定スクロールに対して公転旋回される旋回スクロールと、
前記旋回スクロールを支持する軸受と、
前記旋回スクロールと前記軸受との間に設けられ、前記旋回スクロールの自転を防止しつつ公転旋回させるオルダムリンクと、
を備え、
前記オルダムリンクは、キー溝に対して往復動方向に往復動するキーを備え、
前記キー溝を形成する壁部には、該壁部に形成された凹所に収納されるとともに前記キーに対して摺動する摺動部材が設けられ、
前記摺動部材は、前記キーと摺動する摺動面が平面とされ、該摺動面と反対側の裏面が前記往復動方向にわたって連続して形成された転動面とされ、
前記転動面は、前記往復動方向にわたって連続して形成された前記凹所の被転動面に対して転動し、
前記キーが往復動することによって前記摺動部材が転動して最も傾斜した場合であっても、前記摺動面が前記壁部の前記キー側に最も近い面よりも該キー側に位置するように出っ張る
スクロール流体機械。
【請求項2】
前記転動面は、前記凹所の被転動面側に凸となる凸形状とされ、
前記被転動面は、平面、又は、前記凸形状の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する凹形状とされている請求項1に記載のスクロール流体機械。
【請求項3】
前記摺動部材の前記摺動面の前記往復動方向の長さは、キー長さよりも前記旋回スクロールの旋回半径の2倍以上長い寸法を有している請求項1又は2に記載のスクロール流体機械。
【請求項4】
前記摺動部材は、前記凹所内にて、前記往復動方向に変位可能とされている請求項1から3のいずれかに記載のスクロール流体機械。
【請求項5】
前記摺動部材は、前記摺動面に、前記キーとの摩擦係数を低減する摩擦係数低減層が形成されている請求項1から4のいずれかに記載のスクロール流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルダムリンクを備えたスクロール流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定スクロールと旋回スクロールとを備えたスクロール流体機械は、旋回スクロールの自転を防止しつつ公転旋回運動を行わせるためにオルダムリンクを備えている(例えば下記特許文献1参照)。オルダムリンクは、キーを備えており、キーは、旋回スクロールの背面や旋回スクロールを支持する軸受に形成されたキー溝内を往復動する。特許文献1に開示されたオルダムリンクは、キーが摺動するパッド部材をキー溝に設け、パッド部材のピボットを支点としてパッド部材が揺動して傾斜するようになっている。このようにオルダムリンクのキーの往復動に応じてパッド部材が傾斜することで、キーの片当たりを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、パッド部材にピボットが設けられているため、ピボットを支点としてパッド部材が揺動する際にピボットに繰り返し応力や応力集中が生じ、パッド部材の耐久性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、オルダムリンクのキー及びキー溝の耐久性を向上させることができるスクロール流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るスクロール流体機械は、本体側に固定された固定スクロールと、前記固定スクロールに対して公転旋回される旋回スクロールと、前記旋回スクロールを支持する軸受と、前記旋回スクロールと前記軸受との間に設けられ、前記旋回スクロールの自転を防止しつつ公転旋回させるオルダムリンクと、を備え、前記オルダムリンクは、キー溝に対して往復動方向に往復動するキーを備え、前記キー溝を形成する壁部には、該壁部に形成された凹所に収納されるとともに前記キーに対して摺動する摺動部材が設けられ、前記摺動部材は、前記キーと摺動する摺動面が平面とされ、該摺動面と反対側の裏面が前記往復動方向にわたって連続して形成された転動面とされ、前記転動面は、前記往復動方向にわたって連続して形成された前記凹所の被転動面に対して転動し、前記キーが往復動することによって前記摺動部材が転動して最も傾斜した場合であっても、前記摺動面が前記壁部の前記キー側に最も近い面よりも該キー側に位置するように出っ張る。
【0007】
摺動部材の摺動面が平面とされているので、キーは往復動方向に摺動する際に摺動部材に対して面接触する。そして、摺動面と反対側の裏面が転動面とされているので、摺動部材が凹所の被転動面に対して転動する。摺動部材はキーの往復動に追随して転動することによって傾斜し、面接触を維持しつつ片当たりを防止して面圧を低下させることができる。さらに、往復動方向にわたって連続して形成された転動面を摺動部材に設けることで、摺動部材が傾斜する際に応力集中が生じる形状を回避することとした。これにより、摺動部材及びキーの耐久性を向上させることができる。
【0008】
さらに、本発明の一態様に係るスクロール流体機械では、前記転動面は、前記凹所の被転動面側に凸となる凸形状とされ、前記被転動面は、平面、又は、前記凸形状の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する凹形状とされている。
【0009】
転動面を凸形状とし、転動面が転動する被転動面を平面又は凹形状とすることとした。これにより、摺動部材を被転動面に対して円滑に転動させることができる。
【0010】
さらに、本発明の一態様に係るスクロール流体機械では、前記摺動部材の前記摺動面の往復動方向の長さは、キー長さよりも前記旋回スクロールの旋回半径の2倍以上長い。
【0011】
摺動面の往復動方向の長さを、キー長さよりも旋回スクロールの旋回半径の2倍以上長いので、旋回スクロールが旋回する全行程にわたってキーを摺動部材に接触させることができる。これにより、摺動部材を保持する凹所に隣接する壁面にキーが接触することを回避できるので、耐久性を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の一態様に係るスクロール流体機械では、前記摺動部材は、前記凹所内にて、前記往復動方向に変位可能とされている。
【0013】
摺動部材を凹所内にて往復動方向に変位可能とすることで、摺動部材と凹所との間に貯留された潤滑油を摺動部材の往復動方向の変位に伴い凹所の外部へと押し出すことができる。これにより、キーと摺動部材との潤滑を促し、さらに耐久性を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明の一態様に係るスクロール流体機械では、前記摺動部材は、前記摺動面に、前記キーとの摩擦係数を低減する摩擦係数低減層が形成されている。
【0015】
摺動部材の摺動面に摩擦係数低減層を形成することによって、摩擦損失の低減および耐摩耗性を向上させることができる。摩擦係数低減層は、コーティングによって形成しても良いし、摺動部材を摩擦係数低減材料で形成しても良い。摩擦係数低減層を構成する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)、芳香性ポリイミド等の樹脂や、炭素系膜(SP2やSP2とSP3混在)、二硫化モリブデン、油含浸銅合金などが挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
摺動部材の転動面をキーの往復動方向にわたって連続して形成することとしたので、摺動部材が傾斜する際に摺動部材に応力集中が生じる形状を回避し、オルダムリンクのキー及びキー溝の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスクロール圧縮機を示した縦断面図である。
【
図2】
図1のオルダムリンクと上部軸受を示した平面図である。
【
図3】
図2オルダムリンクのキーの位置で切断した縦断面図である。
【
図4】キー溝に設けられた摺動板を示した横断面図である。
【
図5】摺動板が傾斜した状態を示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
<スクロール圧縮機1の全体構成>
スクロール圧縮機(スクロール流体機械)1は、空気調和装置の冷媒回路に設けられ、蒸発器から供給されたガス冷媒を圧縮して凝縮器へと高圧ガス冷媒を供給するものである。スクロール圧縮機は、
図1に示すように、ハウジング2内に、固定スクロール3と、固定スクロール3に対して公転旋回される旋回スクロール4とを備えている。
【0019】
固定スクロール3は、ハウジング2に対して固定されており、端板31上に立設されたスクロール形状の壁体33を備えている。旋回スクロール4は、端板41上に立設されたスクロール形状の壁体43を備えている。固定スクロール3の壁体33と旋回スクロール4の壁体43とは略同一形状となっている。固定スクロール3に対して旋回スクロール4を180°回転させて壁体33,43同士を噛み合わせることによって複数の密閉された圧縮空間R1が形成されるようになっている。
【0020】
旋回スクロール4は、オルダムリンク23により自転が規制された状態で、固定スクロール3に対して公転旋回運動するようになっている。
【0021】
旋回スクロール4は、駆動させるモータ6によって回転させられる。モータ6によって回転させられる回転軸5は、クランクピン27を介して旋回スクロール4に接続されている。クランクピン27は、回転軸5の中心軸線に対して偏心して設けられている。クランクピン27は、ドライブブッシュやニードルベアリング等のドライブ軸受52を介して、旋回スクロール4の端板41の裏面(図において下面)に形成されたボスに対して回転可能に接続されている。回転軸5は、ハウジング2に固定された上部軸受21と下部軸受24により回転可能に支持されている。
【0022】
ハウジング2の下部には、潤滑油Oを貯留する貯留領域26が設けられている。潤滑油Oは、回転軸5の下端に設けられたポンプ54により、回転軸5の内部の給油経路53を通じて汲み上げられ、上部軸受21、下部軸受24、クランクピン27周りに設けられたドライブ軸受52、旋回スクロール4、オルダムリンク23などの他の部品と摺動する箇所へと供給される。
【0023】
ハウジング2には、低圧ガス冷媒を吸入する吸入配管28と、圧縮後の高圧ガス冷媒を吐出する吐出配管29とが設けられている。吸入配管28及び吐出配管29は、図示しない空気調和機の冷媒回路に接続されている。
【0024】
上述したスクロール圧縮機1は、以下のように動作する。
図示しない電源よりモータ6のステータ61に駆動電流が供給されると、モータ6のロータ62が回転して、駆動力が回転軸5に出力される。
回転軸5が回転されると、回転軸5の上端に回転軸5の中心軸から径方向の外側の一方向(偏心方向)に偏心して設けられたクランクピン27を介して駆動力が旋回スクロール4に伝達される。これにより、旋回スクロール4は、オルダムリンク23の作用によって、固定スクロール3に対して自転を阻止されつつ公転旋回される。
【0025】
旋回スクロール4の旋回により、吸入配管28から流入した冷媒が旋回スクロール4と固定スクロール3の間に吸入される。そして、旋回スクロール4の旋回に伴い、旋回スクロール4と固定スクロール3の間の圧縮空間R1の容積が減少することにより、圧縮空間R1内で冷媒が圧縮される。
【0026】
圧縮された冷媒は、固定スクロール3の吐出ポート32及びディスチャージカバー37の吐出ポート38を経て、吐出配管29により冷媒回路へと吐出される。固定スクロール3にはマルチポート32Aが形成されており、マルチポート32Aには、固定スクロール3の端板31にリテーナ35を介して取り付けられたリード弁36が設けられている。ディスチャージカバー37の吐出ポート38にも、ディスチャージカバー37にリテーナ37Aを介して取り付けられたリード弁37Bが設けられている。圧縮された冷媒の圧力が所定値に達すると、リード弁36,37Bを押し開いた冷媒が冷媒回路の凝縮器側へと吐出される。
【0027】
<オルダムリンク23>
図2及び
図3には、
図1に示したオルダムリンク23が示されている。オルダムリンク23は、上部軸受21の上方に設けられている。また、
図1に示したように、オルダムリンク23は、旋回スクロール4の端板41の裏面側に設けられている。
【0028】
図2に示したように、オルダムリンク23は、平面視した場合に略リング形状とされている。
図2のように平面視した場合に、左右の両側すなわち3時と9時の位置には、下方(上部軸受21側)に突出するキー23Aが設けられている。また、
図2のように平面視した場合に、上下の両側すなわち6時と12時の位置には、上方(旋回スクロール4側)に突出するキー23Bが設けられている。すなわち、2つのキー23Aが設けられた方向と、2つのキー23Bが設けられた方向は、直交するように設けられている。下方へ突出する各キー23Aは、
図3に示すように、上部軸受21に形成されたキー溝21Aに挿入されている。上方へ突出する各キー23Bは、図示しないが、旋回スクロール4の端板41に形成されたキー溝に挿入されている。
【0029】
キー溝21Aには、摺動板(摺動部材)30が設けられている。摺動板30は、キー23Aの側面に対して接触する位置に設けられている。なお、
図2では、キー溝21Aの両側に摺動板30が設けられているが、旋回スクロール4の回転方向を考慮した場合にキー23Aが接触する一方の側面のみに設けることとしても良い。また、ここでは下方に突出するキー23Aに対して摺動する摺動板30について説明するが、上方に突出するキー23Bに対応する旋回スクロール4のキー溝にも同様に摺動板30を設けることができる。
【0030】
摺動板30は、キー23Aとの摩擦係数を低減する材料で形成されている。摩擦係数を低減する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)、芳香性ポリイミド等の樹脂や、炭素系膜(SP2やSP2とSP3混在)、二硫化モリブデン、油含浸銅合金などが挙げられる。なお、摺動板30の摺動面30Aに摩擦低減層として、摩擦係数を低減する材料をコーティングすることとしても良い。
【0031】
図4に示すように、摺動板30は、キー溝21Aを形成する壁部21Bに形成した凹所40に収容されている。凹所40は、壁部21Bのキー23A側に最も近い面から退避する方向に形成された凹所側面40Aと、両側の凹所側面40Aを接続する凹所底面40Bとによって形成されている。凹所側面40A及び凹所底面40Bとは平面とされている。各凹所側面40Aと凹所底面40Bとは互いに直交している。
【0032】
摺動板30は、キー23A側に摺動面30Aが形成されている。摺動面30Aは、平面とされたキー23Aの側面に対応するように平面とされている。
【0033】
摺動板30の摺動面30Aと反対側の裏面には転動面30Bが設けられている。転動面30Bは、往復動方向D1にわたって連続して形成されている。すなわち、転動面30Bには、往復動方向D1にわたって突出部が存在していない。ここで、往復動方向D1は、旋回スクロール4の公転旋回運動に伴いオルダムリンク23が往復動する方向を意味する。
【0034】
摺動板30の転動面30Bは、凹所底面40B側に向かって凸となるように形成されている。転動面30Bは、好ましくは、
図4に示すように断面視した場合に円弧状に形成され、往復動方向D1に対象となる形状とされている。すなわち、転動面30Bの凸形状の頂点が往復動方向D1の中央位置となるようになっている。
【0035】
摺動板30の往復動方向D1の寸法は、キー23Aが往復動方向D1に往復動した場合であってもキー23Aの側面の全体に対して常に接触することができる寸法とされている。より具体的には、摺動板30の往復動方向D1の寸法は、少なくとも、キー長さよりも旋回スクロール4の旋回半径の2倍以上長い寸法とされている。
【0036】
摺動板30の往復動方向D1の寸法は、凹所40の往復動方向D1の寸法(両側の凹所側面40A間の距離)よりも小さくされている。より好ましくは、摺動板30の側部と凹所側面40Aとの間には、キー23Aの往復動に伴って摺動板30が凹所40内で往復動方向D1に変位して所定距離移動することができる程度の隙間が形成されている。
【0037】
摺動板30の摺動面30Aは、壁部21Bのキー23A側に最も近い面よりもキー23A側に位置するように凹所40内に出っ張るように設けられている。より具体的には、
図5に示すように、キー23Aが往復動することによって摺動板30が転動して最も傾斜した場合であっても、壁部21Bのキー23A側に最も近い面(摺動板30に隣接する壁部21B)よりもキー23A側に位置するように設けられている。これにより、キー23Aが摺動板30の側方の壁部21Bに衝突しないようになっている。
【0038】
上述した摺動板30は、以下のように動作する。
キー23Aが旋回スクロール4の公転旋回運動に伴い往復動方向D1に往復動すると、摺動板30の摺動面30Aがキー23Aの側面に面接触した状態でキー23Aが摺動することになる。キー23Aと摺動板30との相対位置に応じて、摺動板30の転動面30Bが凹所底面40B上を転動する。これにより、摺動板30の摺動面30Aがキー23Aの側面に常に面接触することになる。
【0039】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
摺動板30の摺動面30Aが平面とされているので、キー23Aは往復動方向D1に摺動する際に摺動板30に対して面接触する。そして、摺動面30Aと反対側の裏面が転動面30Bとされているので、摺動板30が凹所40の被転動面である凹所底面40Bに対して転動する。摺動板30はキー23Aの往復動に追随して転動することによって傾斜し、面接触を維持しつつ片当たりを防止して面圧を低下させることができる。さらに、往復動方向D1にわたって連続して形成された転動面30Bを摺動板30に設けることで、摺動板30が傾斜する際に応力集中が生じる形状を回避することとした。これにより、摺動板30及びキー23Aの耐久性を向上させることができる。
【0040】
摺動板30の摺動面30Aの往復動方向D1の長さを、キー長さよりも旋回スクロール4の旋回半径の2倍以上長くしたので、旋回スクロール4が旋回する全行程にわたってキー23Aを摺動板30に接触させることができる。これにより、摺動板30を保持する凹所40に隣接する壁部21Bにキー23Aが接触することを回避できるので、耐久性を向上させることができる。
【0041】
摺動板30を凹所40内にて往復動方向D1に変位可能とすることで、摺動板30の側部と凹所側面40Aとの間に貯留された潤滑油を摺動板30の往復動方向D1の変位に伴い凹所40の外部へと押し出すことができる。これにより、キー23Aと摺動板30との潤滑を促し、さらに耐久性を向上させることができる。
【0042】
摺動板30として摩擦係数を低減する材料を用いることとした。これにより、耐摩耗性を向上させることができる。
【0043】
<変形例>
図6に示すように、凹所40の凹所底面40B’を凹形状としてもよい。凹所底面40B’の曲率半径は、摺動板30の転動面30Bの凸形状の曲率半径よりも大きくされている。これにより、摺動板30が円滑に凹所底面40B’上を転動できるようになっている。
【0044】
なお、本実施形態では、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機として説明したが、冷媒以外の流体を圧縮する圧縮機であってもよい。また、圧縮機に代えて膨張機としても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 スクロール圧縮機(スクロール流体機械)
2 ハウジング
3 固定スクロール
4 旋回スクロール
21 上部軸受
21A キー溝
21B 壁部
23 オルダムリンク
23A キー
23B キー
24 下部軸受
26 貯留領域
27 クランクピン
28 吸入配管
29 吐出配管
30 摺動板(摺動部材)
30A 摺動面
30B 転動面
31 端板
33 壁体
35 リテーナ
36 リード弁
37 ディスチャージカバー
37A リテーナ
37B リード弁
38 吐出ポート
40 凹所
40A 凹所側面
40B 凹所底面
40B’ 凹所底面
41 端板
43 壁体
52 ドライブ軸受
D1 往復動方向
R1 圧縮空間