(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】電力供給設備
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20231107BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231107BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J13/00 B
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2019064706
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】衣鳩 文彦
【審判官】丸山 高政
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195658(JP,A)
【文献】特開2018-85908(JP,A)
【文献】特開2014-166001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置される電力供給設備であって、
他のエネルギーを電気エネルギーに変換して電力を生成する発電部と、
外部と
無線通信を確立する通信部と、
前記通信部を通じて、電力系統からの受電点における受電電力を特定可能な受電電力情報を取得する情報取得部と、
前記受電電力情報に基づく受電電力が所定の値を維持するように、前記発電部の出力電力を制御する出力制御部と、
を
一体的に備え
、
前記通信部は、前記受電点に設置された電力メータと無線通信を確立し、
前記情報取得部は、前記電力メータで測定された電力情報に含まれる前記受電電力情報を取得する電力供給設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を供給する電力供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
需要者は、電力会社からの電気(商用電力)の供給を受けて構内の負荷設備(一般用電気工作物)で電気を使用する。また、需要者は、太陽光発電設備等、発電設備を構内に設け、負荷設備を動作させるとともに(例えば、特許文献1)、電力会社に余った電力を売電することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単相3線式100/200Vにおける単相3線式200V(R相とT相)に、太陽光発電設備や燃料電池といった電力供給設備を接続することがある。このような電力供給設備では、電圧線であるR相とT相とにそれぞれ電流計(変流器)を取り付け、各電流計で検出される電流値と、R-N相およびT-N相の線間電圧値と、電流、電圧の位相に基づく力率値とから受電電力を算出している。
【0005】
また、今後は、省エネルギー機器が普及し、構内の電力需要が減少すると、必ずしも単相3線式200Vへの接続を要さず、例えば、単相3線式100/200Vの一方の電圧線(R相またはT相、以下、連系相という場合がある)と中性線(N相)とに(以下、連系相とN相とを単相3線式100Vと呼ぶ場合がある)、小出力の電力供給設備を設置することが考えられる。
【0006】
このような小出力の電力供給設備を屋外に設置する場合、電力供給設備において受電電力を導出するために、屋内の電流計等から電流値等の情報を得るために、家屋の壁に貫通孔を施す必要が生じ、設置工事にコストを要してしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、コストの増大を回避しつつ、電力を適切に出力することが可能な電力供給設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、屋外に設置される本発明の電力供給設備は、他のエネルギーを電気エネルギーに変換して電力を生成する発電部と、外部と無線通信を確立する通信部と、通信部を通じて、電力系統からの受電点における受電電力を特定可能な受電電力情報を取得する情報取得部と、受電電力情報に基づく受電電力が所定の値を維持するように、発電部の出力電力を制御する出力制御部と、を一体的に備え、通信部は、受電点に設置された電力メータと無線通信を確立し、情報取得部は、電力メータで測定された電力情報に含まれる受電電力情報を取得する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コストの増大を回避しつつ、電力を適切に出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】電力システムの接続態様を示した説明図である。
【
図2】電力供給設備による受電電力一定制御の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図3】電力システムの接続態様を示した説明図である。
【
図4】電力システムの基本的な接続態様を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、電力システム100の接続態様を示した説明図である。電力システム100は、引き込み線10を通じて、電力系統12から電気(商用電力)の供給を受ける。なお、本実施形態においては、電力系統12から電力が供給される供給路において、各設備を基準に電力系統12側を一次側、その反対側を二次側として定義する。
【0017】
電力システム100は、低圧受電の需要者単位で構成され、その範囲としては、一般用電気工作物であれば、家屋等に限らず、病院、工場、ホテル、レジャー施設、商業施設、マンションといった建物単位や建物内の一部分であってもよい。
【0018】
また、電力システム100は、電力メータ112と、分電盤114と、電力供給設備116とを含んで構成される。
【0019】
電力メータ(電力量計)112は、電力系統12に引き込み線10を介して接続され、引き込み線10と電力システム100との間に流れる(消費および売電の)電流の電流値および電圧値を計測する。また、電力メータ112は、電圧線の電流値、電圧線と中性線との線間電圧値、ならびに、電圧の位相に基づく力率値とを乗じて受電電力を導出する。さらに、電力メータ112は、受電電力を積算し、例えば、1ヶ月分の電力使用量(kWh)を導出する。なお、電力メータ112は、分電盤114の一次側に契約容量を示すサービスブレーカ112aを含んで構成される。
【0020】
また、本実施形態において、電力メータ112は、電力使用量をデジタルで計測するスマートメータであり、外部と無線または有線の通信を確立する通信部(図示せず)を有する。電力メータ112の通信部は、受電電力や電力使用量等の電力情報を外部に送信することができる。
【0021】
分電盤114は、電力メータ112の二次側に接続され、漏電ブレーカ114a、および、配線用(安全)ブレーカ114bを有する。漏電ブレーカ114aは、漏電の検出に応じて電気の供給を遮断する。ここで、漏電ブレーカ114aは、漏電遮断機能付き過電流遮断器、および、漏電遮断機能のみを有する漏電遮断器のいずれの概念も含んでいる。配線用ブレーカ114bは、内部配線(主幹バー)を介して漏電ブレーカ114aと接続され、構内配線120に流れる電流が定格遮断電流を超過すると電気の供給を遮断する。
【0022】
需要者は、構内配線120それぞれに1または複数の負荷設備14を接続し、上述した、漏電ブレーカ114a、配線用ブレーカ114b、および、構内配線120を通じて電力の供給を受ける。
【0023】
電力供給設備116は、分電盤114における複数の構内配線120のいずれか(単相3線式100V)に接続され、他のエネルギーを電気エネルギーに変換して電力を生成する。電力供給設備116は、出力電圧等を調整することで、生成した電力を電力系統12より優先して構内の負荷設備14に供給することができる。
【0024】
かかる電力供給設備116としては、例えば、太陽光発電機、風力発電機、水力発電機、地熱発電機、太陽熱発電機、大気中熱発電機等の再生可能エネルギー発電設備や、燃料電池、内燃力発電、蓄電池等を用いることができる。ここでは、電力供給設備116を屋外に設置する例を挙げて説明する。したがって、電力供給設備116は屋外(屋外防水)コンセント122を通じて構内配線120に接続することができる。
【0025】
電力供給設備116は、発電部116aと、設備電流計116bと、通信部116cと、制御部116dとを有している。発電部116aは、例えば、燃料電池等で構成され、他のエネルギーを電気エネルギーに変換して電力を生成する。設備電流計116bは、例えば、変流器(CT)と整流器とで構成され、発電部116aから出力される電流(以下、設備電流という)を測定する。通信部116cは、無線で外部と通信を確立し、様々な情報を受信することができる。
【0026】
制御部116dは、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、設備電流が所望の値になるように、発電部116aの出力(電流)を制御する。
【0027】
このような電力供給設備116を構内配線120に接続することで、電力系統だけでは不足する負荷設備14への電力を電力供給設備116で補うことができる。なお、ここでは、制御部116dが電力供給設備116と一体的に形成される例を挙げて説明しているが、別体として設けられてもよい。
【0028】
このような電力供給設備116では、電力供給設備116から離隔した受電点における受電電力が参照される。電力供給設備116は、参照した受電電力に基づいて、受電電力を所定の値に維持する受電電力一定制御、RPR(逆電力継電器)機能、UPR(不足電力継電器)機能を実現することが可能となる。
【0029】
しかし、電力供給設備116を屋外に設置する場合、電力供給設備116が受電電力を参照するために、分電盤114等において屋内で測定された電流値等の情報を屋外に伝達しなければならず、家屋の壁に貫通孔を施す必要が生じ、設置工事にコストを要してしまう。そこで、本実施形態では、家屋の壁に貫通孔を施さないことでコストの増大を回避しつつ、電力を適切に出力する。
【0030】
上述したように、電力メータ112は、計測した受電電力等の電力情報を、無線を通じて外部に送信することができる。ここでは、電力メータ112の電力情報を、無線を通じて電力供給設備116に送信する。電力供給設備116では、その電力情報に基づいて受電電力を参照する。
【0031】
このような無線による受電電力の参照を実現するため、電力供給設備116の制御部116dは、プログラムを動作させることで、情報取得部140、電力導出部142、出力制御部144としても機能する。
【0032】
図2は、電力供給設備116による受電電力一定制御の処理を説明するためのフローチャートである。ここでは、受電電力を用いた制御として受電電力一定制御を挙げて説明するが、本実施形態が、RPR(逆電力継電器)機能やUPR機能(不足電力継電器)にも対応するのは言うまでもない。
【0033】
まず、情報取得部140は、通信部116cによる無線通信を通じ、電力メータ112から、受電点Aにおける電力情報のうち、受電電力を特定可能な受電電力情報(例えば、受電電力自体や、電圧線の電流値、電圧線と中性線との線間電圧値、ならびに、電圧の位相に基づく力率値)を取得する(S200)。
【0034】
電力導出部142は、情報取得部140が取得した受電電力情報に基づいて(例えば、電圧線の電流値、電圧線と中性線との線間電圧値、ならびに、電圧の位相に基づく力率値とを乗じて)、受電点Aにおける受電電力を導出する(S202)。なお、情報取得部140が受電電力情報として受電電力自体を取得した場合、電力導出部142は、なんら処理を行わない。こうして、単相3線式100/200Vの受電電力を適切に参照することができる。
【0035】
出力制御部144は、電力導出部142が導出した受電電力が所定の値となるように、発電部116aの出力電力を制御する(S204)。例えば、出力制御部144は、受電電力が増加すると、発電部116aの出力電力を減少させ、受電電力が減少すると、発電部116aの出力電力を増加させる。このようなS200~S204の処理を繰り返すことで、受電電力一定制御を実現できる。
【0036】
かかる電力システム100では、分電盤114等において屋内で測定された電流値等の情報を屋外に伝達する線を設ける必要がないので、家屋の壁に貫通孔を施さなくて済み、コストの増大を回避しつつ、電力を適切に出力することが可能となる。
【0037】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、電力供給設備116が、電力メータ112の機能を利用して受電電力を参照する例を挙げて説明した。しかし、電力供給設備116と電力メータ112との位置関係(電波環境)や、セキュリティ上の問題から電力供給設備116と電力メータ112とが直接通信を行うことができない場合がある。第2の実施形態では、電力システム150を挙げ、このような場合であっても、電力メータ112の受電電力情報を利用する態様を説明する。
【0038】
図3は、電力システム150の接続態様を示した説明図である。電力メータ112は、計測した受電電力等の電力情報を、基地局152およびネットワーク網154を通じて管理サーバ156に送信する。そして、管理サーバ156では、複数の電力メータ112の電力情報を収集し、その電力情報に基づいて需要者の課金情報を生成したり、電力制御を実行したりする。
【0039】
電力供給設備116の通信部116cは、管理サーバ156と無線通信を確立する。そして、情報取得部140は、管理サーバ156から、受電点Aに設置された電力メータ112で測定された受電電力情報を取得する。
【0040】
また、電力導出部142は、受電電力情報が受電電力自体でなければ、情報取得部140が取得した受電電力情報に基づいて受電点Aにおける受電電力を導出する。出力制御部144は、情報取得部140が取得した受電電力または電力導出部142が導出した受電電力が所定の値となるように、発電部116aの出力電力を制御する。こうして、第1の実施形態同様、受電電力一定制御を実現できる。
【0041】
<第3の実施形態>
第1の実施形態および第2の実施形態では、電力供給設備116が、電力メータ112の受電電力情報を利用して受電電力を参照する例を挙げて説明した。しかし、電力メータ112が未だスマートメータとなっていない等、電力供給設備116が、電力メータ112や管理サーバ156と通信を確立できない場合がある。第3の実施形態では、電力システム160を挙げ、このような場合であっても、受電電力を参照する態様を説明する。
【0042】
図4は、電力システム160の基本的な接続態様を示した説明図である。HEMS(Home Energy Management System)162は、需要者の構内における電力の消費と、発電設備や蓄電設備をリアルタイムで統合的に管理し、快適さを保ちつつエネルギー消費の効率化を図る設備(エネルギー管理システム)である。したがって、HEMS162は、分電盤114内に設けられた電力計測器164から、電圧線の電流値、電圧線と中性線との線間電圧値、ならびに、電圧の位相に基づく力率値を検出し、受電電力を導出することもできる。
【0043】
また、HEMS162は、外部と無線または有線の通信を確立する通信部(図示せず)を有する。HEMS162の通信部は、受電電力等の電力情報を外部に送信することができる。
【0044】
電力供給設備116の通信部116cは、HEMS162と無線通信を確立する。そして、情報取得部140は、HEMS162から、受電点Aにおける受電電力情報を取得する。
【0045】
また、電力導出部142は、受電電力情報が受電電力自体でなければ、情報取得部140が取得した電圧線の電流値、電圧線と中性線との線間電圧値、ならびに、電圧の位相に基づく力率値とを乗じて、受電点Aにおける受電電力を導出する。出力制御部144は、情報取得部140が取得した受電電力または電力導出部142が導出した受電電力が所定の値となるように、発電部116aの出力電力を制御する。こうして、第1の実施形態および第2の実施形態同様、受電電力一定制御を実現できる。
【0046】
なお、ここでは、通信を確立する対象としてHEMS162を挙げて説明したが、その対象は、エネルギー管理システム(Energy Management System)であれば足り、管理態様に応じて、BEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)、CEMS(Cluster/Community Energy Management System)等、様々な設備に適用することができる。
【0047】
<第4の実施形態>
第1の実施形態~第3の実施形態では、電力供給設備116と、電力メータ112やHEMS162とが無線通信を確立する例を挙げて説明した。しかし、その位置関係や電波環境によっては無線通信を確立することができない場合がある。第4の実施形態では、電力供給設備116が、電力線を通信回線とするPLC(Power Line Communication:電力線搬送通信)を確立して、受電電力を参照する。この場合、電力システム100、150、160のいずれにおいても、通信部116cは、無線通信の代わりに、構内配線120を通じた有線通信を行う。
【0048】
電力供給設備116は、屋外コンセント122を通じて電力を供給するとともに、同屋外コンセント122を通じて受電電力情報を取得することが可能となる。こうして、電力供給設備116は、家屋の壁に貫通孔を施すことなく、構内配線120のみを通じて受電電力を容易に導出することが可能となる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、上述した実施形態においては、電力供給設備116を、単相3線式100/200Vのうち単相3線式100Vに接続する例を挙げて説明した。しかし、単相3線式100Vに限らず、単相3線式200Vに接続したとしても、電力供給設備116が外部と通信を確立し、確立した通信を通じて受電電力を参照できれば、コストの増大を回避しつつ、電力を適切に出力する効果を生じ得る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、電力を供給する電力供給設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100、150、160 電力システム
112 電力メータ
116 電力供給設備
116a 発電部
116c 通信部
140 情報取得部
144 出力制御部
162 HEMS(エネルギー管理システム)