(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
(21)【出願番号】P 2019083656
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隆志
(72)【発明者】
【氏名】小清水 謙之
(72)【発明者】
【氏名】山中 比呂史
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 幸満
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慎介
(72)【発明者】
【氏名】筒井 寛明
(72)【発明者】
【氏名】上田 卓臣
(72)【発明者】
【氏名】松本 涼
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043137(JP,A)
【文献】特開2015-158128(JP,A)
【文献】特開2019-049184(JP,A)
【文献】特開2019-056302(JP,A)
【文献】特開2001-295351(JP,A)
【文献】特開2011-236708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、
前記便鉢部の後方に拡がるとともに、上下方向に貫通して便座装置が取り付けられる取付孔が形成された上面部と、
前記便鉢部の下流側に連通して下方かつ後方に延びて形成された導入流路、及び前記導入流路の下流端に連続して上方に延びて形成された上昇流路を有するトラップ排水路と、
を備えており、
前記上昇流路の下流端の下端である前記トラップ排水路の頂部は、前記取付孔よりも前方に位置して
おり、
前記導入流路の内面の上面には、下方かつ後方に向けて傾斜する傾斜面部が設けられている水洗式便器。
【請求項2】
前記上昇流路の傾斜角度は、前記導入流路の傾斜角度よりも大きくされている請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記トラップ排水路は、前記上昇流路の下端から前記頂部までの前後方向の距離が、前記導入流路の下端から前記導入流路の前端までの前後方向の距離と略同等、又は前記導入流路の下端から前記導入流路の前端までの前後方向の距離よりも小さくなる形態で形成されている請求項1又は請求項2に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記トラップ排水路は、前記導入流路の入口から前記上昇流路の途中位置までの領域の流路断面において、左右方向の大きさが前記左右方向に直交する方向の大きさよりも大きく形成されている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記トラップ排水路は、前記上昇流路の下流端に連続して下方に延びて形成される下降流路を有しており、
前記トラップ排水路は、前記下降流路の排出口が下方を向いて開口したSトラップ、又は後方を向いて開口したPトラップを形成可能である請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記トラップ排水路は前記Sトラップを形成しており、
前記下降流路の排出口と、床面に引き出され、設置された際の前記便鉢部の下方に位置する排水管と連結する排水ソケットを備えている請求項5に記載の水洗式便器。
【請求項7】
前記トラップ排水路は、下端面が前記排水ソケットを収納できる高さである請求項6に記載の水洗式便器。
【請求項8】
前記トラップ排水路には、前記排水ソケットに対応する位置の前記下端面が露出する形態で開口して形成された凍結防止ヒータが取り付けられている請求項7に記載の水洗式便器。
【請求項9】
前記導入流路は、前記便鉢部の底壁部に形成された前記トラップ排水路の流入部に上流端が連続している請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の水洗式便器を示している。この水洗式便器は、便鉢及び排水路を備えている。便鉢の後方には便座を取り付けるための一対の取付孔が形成されている。この取付孔は、便器前端からの距離や孔の間隔、径等が規格化されている。排水路は、上流側のトラップ部と下流側の接続配管とを有して便鉢の下端部に連続している。トラップ部は、便鉢の下端部から下方に延びる流路と、その下流側に連続して設けられて上方に延びる流路とを組み合わせた略U字状に形成されている。これにより、トラップ部には洗浄水が溜水として貯留され、下水側からの空気の流れ等を遮断する。溜水の高さは、トラップ部の上方に延びる流路の上昇端下面の高さによって決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水洗式便器の小型化を検討する場合、便器における便座取付孔よりも前方の長さは規格化されているため大きさを変更することは困難である。このため小型化を図るには、便器後部についての検討に限定されてしまう。しかしながら、特許文献1の水洗式便器のように、排水路が便鉢下端から水洗式便器の後端近くまで延びて設けられ、排水路によって便器後部のスペースが占められていると、便器後部の小型化を検討することも困難である。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器後部のスペースの設計自由度の向上を図ることができる水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水洗式便器は、
便鉢部と、
前記便鉢部の後方に拡がるとともに、上下方向に貫通して便座装置が取り付けられる一対の取付孔が形成された上面部と、
便鉢部の下流側に連通して下方かつ後方に延びて形成された導入流路、及び前記導入流路の下流端に連続して上方に延びて形成された上昇流路を有するトラップ排水路と、
を備えており、
前記上昇流路の下流端の下端である前記トラップ排水路の頂部は、前記取付孔よりも前方に位置している。
【0007】
この水洗式便器は、上昇流路の下流端の下端であるトラップ排水路の頂部を、便座装置が取り付けられる一対の取付孔よりも前方に位置させている。すなわち、頂部を水洗式便器における前寄りの位置に設定している。これにより、トラップ排水路の前後方向の長さを抑えることができる。その結果、小型化の検討等、トラップ排水路の上昇流路よりも下流側の構成の設計の自由度を向上させることができる。
【0008】
したがって、本発明の水洗式便器は、便器後部のスペースの設計自由度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施例1に係る水洗式便器の左側面図である。
【
図3】実施例1に係る水洗式便器を備えた便器装置を示す図であって、
図1のIII-III線に相当する断面図である。
【
図4】実施例1に係る水洗式便器の斜視断面図である。
【
図5】実施例1に係る水洗式便器を示す図であって、
図3のV-V線に相当する断面図である。
【
図6】実施例1に係る水洗式便器の要部拡大断面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線断面における要部拡大図である。
【
図9】
図6のIX-IX線断面における要部拡大図である。
【
図12】実施例2に係る水洗式便器を示す側面断面図である。
【
図13】他の実施形態に係る水洗式便器を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0011】
本発明の水洗式便器において、上昇流路の傾斜角度は、導入流路の傾斜角度よりも大きくされ得る。この場合、トラップ排水路の前後方向の長さを抑えた水洗式便器を容易に実現することができる。
なお、上記「上昇流路の傾斜角度」、「導入流路の傾斜角度」は、上昇流路又は導入流路が湾曲して形成されている場合には、平均的に見た流路全体としての傾斜角度であることができる。また、流路に直線状の部位がある場合には、その直線状の部分のみの傾斜角度をそのまま流路の傾斜角度としてもよい。
【0012】
本発明の水洗式便器において、トラップ排水路は、上昇流路の下端からトラップ排水路の頂部までの前後方向の距離が、導入流路の下端から導入流路の前端までの前後方向の距離と略同等、又は導入流路の下端から導入流路の前端までの前後方向の距離よりも小さくなる形態で形成され得る。この場合、より容易に小型化を図ることができる。
【0013】
本発明の水洗式便器において、トラップ排水路は、導入流路の入口から上昇流路の途中位置までの領域の流路断面において、左右方向の大きさが左右方向に直交する方向の大きさよりも大きく形成され得る。この場合、トラップ排水路の前後方向の大きさのみならず、上下方向の大きさも抑えた水洗式便器を容易に実現することができる。
なお、上記「上昇流路の途中位置」とは、例えば、溜水面よりも下方の位置であることができる。また、上記「左右方向の大きさ」は、左右幅の最も大きい部分における大きさ、上記「左右方向に直交する方向の大きさ」は、左右方向の中心位置における直交方向の大きさをそれぞれ意図している。
【0014】
本発明の水洗式便器において、トラップ排水路は、上昇流路の下流端に連続して下方に延びて形成される下降流路を有し得る。そして、トラップ排水路は、下降流路の排出口が下方を向いて開口したSトラップ、又は後方を向いて開口したPトラップを形成し得る。この場合、前部の形状を同じにしてSトラップ又はPトラップを形成した場合であっても、設置した際の後方壁面から便器前端までの長さを抑えた水洗式便器を実現することができる。
【0015】
本発明の水洗式便器において、トラップ排水路がSトラップを形成しており、下降流路の排出口と、床面に引き出され、設置された際の前記便鉢部の下方に位置する排水管と連結する排水ソケットを備え得る。この場合、後方の壁から排水管の中心までの距離が遠く、排水管が便鉢の下方に位置する場合であっても、壁寄りの適切な位置に設置することができる。
【0016】
本発明の水洗式便器において、トラップ排水路は、下端面が排水ソケットを収納できる高さであり得る。この場合、床排水用の排水ソケットを無理なく配置することができる。
【0017】
本発明の水洗式便器において、トラップ排水路には、排水ソケットに対応する位置の下端面が露出する形態で開口して形成された凍結防止ヒータが取り付けられ得る。この場合、下端面を覆うようなヒータが取り付けられるトラップ排水路と比較して、トラップ排水路の下端面の位置をより床面に近づけて形成することができる。
【0018】
次に、本発明の水洗式便器を具体化した実施例1及び2について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、上下の方向は水洗式便器を設置した状態における上下(
図2、
図3、
図6、
図8、
図10~
図12の上下の方向)であり、前後の方向は、便鉢部が形成されている側が前、トラップ排水路が形成されている側が後(
図2及び
図3では、右方が前方、左方が後方)であり、左右の方向は、水洗式便器を設置した状態で、水洗式便器の前方(便鉢部側)から見た左右(
図1、
図5の左右)である。
【0019】
<実施例1>
実施例1の水洗式便器1は洗い落とし式の便器である。水洗式便器1は、
図1~
図4に示すように、便鉢部10、トラップ排水路20、周壁部30、導水部40、及びタンク設置部50を備えている。
【0020】
便鉢部10は、汚物を受けるとともに汚物を洗浄する洗浄水が流通する。
図1、
図3及び
図4に示すように、便鉢部10は、上壁部11、中間壁部15、下壁部17、及び底壁部19を有している。上壁部11は便鉢部10の上部周縁を形成している。この上壁部11は、上下方向に立ち上がった帯状であり、上方に向けて僅かに外側に傾斜している。また、上壁部11の上端周縁は上方から見た平面視で略楕円形状である。上壁部11は、後側の左右中央よりも左側に横方向を長手方向とする形態の吐水口11Aが形成されている。吐水口11Aは、導水部40から供給される洗浄水を便鉢部10内に吐水する。
【0021】
中間壁部15は、
図1、
図3及び
図4に示すように、上壁部11より下方において、便鉢部10の前後面及び左右側面を形成している。すなわち、中間壁部15は、上壁部11の前後側及び左右側の下端から内側に向かって緩やかに下方に傾斜して拡がっている。
【0022】
下壁部17及び底壁部19は便鉢部10の下部に凹部13を形成する。下壁部17は、
図1、
図3及び
図4に示すように、中間壁部15より内側且つ下側において、便鉢部10の前後面及び左右側面を形成している。下壁部17は、上下方向に立ち上がった筒状であり、中間壁部15の下端から下方に向けて僅かに内側に傾斜している。底壁部19は、
図3に示すように、下壁部17の内側且つ下側において、便鉢部10の底面を形成している。底壁部19は、下壁部17の下端から内側に向けて僅かに下側に傾斜している。底壁部19は後部にトラップ排水路20の流入部Xが形成されている。
図3に示すように、水洗式便器1において、溜水面Rは、底壁部19の上面よりも上方に形成される。
【0023】
トラップ排水路20は便鉢部10の下流側に連通して形成されている。トラップ排水路20は便鉢部10の下部に溜水を形成するために設けられている。便鉢部10内の溜水面Rの高さは、トラップ排水路20の頂部Cの高さで決定される。トラップ排水路20は便鉢部10よりも後方に延びている。
図3~
図11に示すように、トラップ排水路20は、導入流路21、上昇流路23、第1下降流路25、及び第2下降流路27を有している。トラップ排水路20は、第2下降流路27の排出口27Aが下方を向いて開口したSトラップを形成している。トラップ排水路20の下流側端部には後述する排水ソケット70が接続される。
【0024】
導入流路21は、便鉢部10の底壁部19に形成されたトラップ排水路20の流入部Xに上流端が連続している。すなわち、トラップ排水路20は便鉢部10の下流側に連通している。導入流路21は、便鉢部10の下端後部から下方に延びており、下流に向けて後方に湾曲している。
図3、
図4、
図6及び
図8に示すように、導入流路21の下流端は水平方向を向いて後方に向かって開口している。この導入流路21の下流端の下端Aはトラップ排水路20における最下端である。また、導入流路21の上流端の前端Bは流入部Xの前端であり、トラップ排水路20の最前端である。また、導入流路21の上流端は流入部Xであり、この流入部Xの前端は導入流路21の前端Bである。
【0025】
上昇流路23は導入流路21の下流端の開口に連続している。すなわち、この上昇流路23の上流端の下端は導入流路21の下流端の下端Aである。上昇流路23は上方に向けて斜め後方に傾斜している。上昇流路23の下流端は水平方向を向いて後方に向かって開口している。上昇流路23の下流端の下端は、トラップ排水路20における頂部Cである。
図10及び
図11に示すように、頂部Cは、左右方向に略水平に延びている。
【0026】
図6に示すように、本実施例において、上昇流路23の傾斜角度θ2は、導入流路21の傾斜角度θ1よりも大きくされている。具体的には、上昇流路23の水平面に対する傾斜角度θ2は70°程度であり、導入流路21の水平面に対する傾斜角度θ1は60°程度である。このように、本実施例では、導入流路21の傾斜角度θ1及び上昇流路23の傾斜角度θ2のいずれも45°以上の大きさとしている。
なお、本実施例の場合、傾斜角度θ1,θ2は、導入流路21及び上昇流路23の直線状の部位の傾斜角度である。傾斜角度θ1,θ2は、導入流路又は上昇流路が湾曲して形成されている場合には、湾曲部位を平均的に見て、湾曲部位全体としての傾斜角度としてもよい。
【0027】
また、
図7~
図11に示すように、本実施例において、トラップ排水路20は、導入流路21の入口である流入部Xから、上昇流路23の下流端である頂部Cまでの領域の流路断面において、左右方向の大きさが左右方向の直交方向の大きさよりも大きく形成されている。このように、流路の左右方向の大きさを左右方向の直交方向の大きさよりも大きくしたことで、トラップ排水路20の流路面積を確保しつつ、トラップ排水路20の前後方向の大きさが抑えられている。
なお、本実施例では、上昇流路23の途中位置としての溜水面Rよりも下方の領域から、上昇流路23の下流端である頂部Cまでの領域の流路断面においても、左右方向の大きさが左右方向の直交方向の大きさよりも大きく形成している。この上昇流路の下流端近傍の領域や、導入流路の下流端(上昇流路の上流端)近傍の領域については、左右方向に直交する方向の大きさを左右方向よりも大きく形成してもよい。これらの領域の流路断面は、左右方向の大きさよりも左右方向に直交する方向の大きさを大きくしたとしても、トラップ排水路の前後方向の大きさに与える影響は小さい。また、これらの領域の流路断面の左右方向に直交する方向の大きさを左右方向の大きさよりも小さくすることで、トラップ排水路の上下方向の大きさを抑制することに寄与できる。
【0028】
図3~
図5に示すように、第1下降流路25は上昇流路23の下流端の開口に連続している。すなわち、第1下降流路25の上流端の下端は上昇流路23の下流端の下端であり、トラップ排水路20の頂部Cである。第1下降流路25は略矩形状の断面形状を有する流路である。第1下降流路25は後方に向けて延びている。第1下降流路25は、内面の下面、すなわち底面25Aが、下流側(後方)に向けて僅かに下方に傾斜している。
図3~
図5に示すように、第1下降流路25の底面25Aは平坦な傾斜面で形成されている。詳細には、底面25Aは、
図10及び
図11に示すように、左右方向には略水平であり、また、
図3及び
図4に示すように、前後方向は略一定の勾配で後方に向かうにつれて下方に傾斜する平面状に形成されている。
【0029】
第1下降流路25の下流側端部は、後方に向けて閉鎖されている。
図5に示すように、第1下降流路25は、その内面の側面が上流端から下流側に向かって略一定の幅Wで形成されている。また、
図3に示すように、第1下降流路25の内面の上面25Bは、後方に向けて略一定の高さで延びている。すなわち、第1下降流路25は、上流端から下流側に向かって上下幅が徐々に大きくなる形態で形成されている。
【0030】
図3~
図5及び
図11に示すように、第2下降流路27は略円形状の断面形状を有する流路である。第2下降流路27は第1下降流路25の底面25Aの下流側端部に開口している。第2下降流路27は鉛直方向に延びており、その下流端は下方に向けて開口している。第2下降流路27の下流側端部には後述する排水ソケット70が接続される。
【0031】
図5に示すように、第1下降流路25の底面25Aにおける第2下降流路27の開口径Dは、底面25Aの幅方向の大きさよりも小さい。換言すると、第1下降流路25の底面25Aの幅Wは、第2下降流路27の開口径Dよりも大きい。また、第1下降流路25の流路面積は、第2下降流路27の流路面積よりも大きい。
また、第2下降流路27の開口径Dは、第2下降流路27の開口前端から第1下降流路25の底面25A前端まで(頂部Cまで)の前後の距離よりも小さい。換言すると、第1下降流路25の底面25Aの長さLは、第2下降流路27の開口径Dよりも大きい。
【0032】
図3に示すように、トラップ排水路20には凍結防止用のヒータH1が取り付けられている。ヒータH1は、通電により発熱するニクロム線とアルミシートからなる発熱体により構成されている。ヒータH1は上下に開口するテーパ筒状をなしており、導入流路21の前側外周面と、上昇流路23の後ろ側外周面とを巻き回すようにして取り付けられている。ヒータH1は、後述する排水ソケット70に対応する位置におけるトラップ排水路20の下端面20Aが露出する形態でトラップ排水路20に取り付けられている。なお、ヒータH1の外周面は耐火機能を有する緩衝材H2により覆われており、緩衝材H2の外周面及びトラップ排水路20の下端面20Aは、断熱機能を有する防露材H3により覆われている。緩衝材H2は、ヒータH1と同様に、上下に開口するテーパ筒状をなしている。このため、トラップ排水路20の下端面20Aは、トラップ排水路20の最も外側を覆う防露材H3の内面に臨む形態とされている。
【0033】
図3に示すように、トラップ排水路20は、水洗式便器1の左右方向の中心断面の形状において、導入流路21の下端A(上昇流路23の上流端の下端)から頂部Cまでの前後方向の距離が、導入流路21の下端Aから前端Bまでの前後方向の距離と略同等となる形態で形成されている。
【0034】
周壁部30は、
図2に示すように、便鉢部10及びトラップ排水路20の周囲に連なって設けられている。便鉢部10及びトラップ排水路20の下方の空間は、この周壁部30によって外部から視認不能に隠蔽されている。周壁部30は、便鉢部10の前方及び側方を囲む前部31と、トラップ排水路20の側方下部及び後方を囲む後部32と、を有している。前部31及び後部32は、設置された際に床面Fとの当接面となる下端面から上方に立ち上がって形成されている。前部31の上端は便鉢部10の上端まで延びている。
図7~
図11に示すように、後部32は、側部上端がトラップ排水路20の外側壁面に側方から突き当てられて接続されている。後部32の側部上端は、トラップ排水路20の導入流路21においては、
図2に示すように、側面視における導入流路21の上流端から下流端まで湾曲して形成されている。また、後部32の側部上端は、トラップ排水路20の上昇流路23においては、
図2に示すように、側面視における上昇流路23の上流端から下流端まで、上昇流路23の傾斜よりも緩やかに傾斜する形態で上昇して延びている。更に、後部32の側部上端は、トラップ排水路20の第1下降流路25においては、
図2に示すように、側面視における第1下降流路25の上流端から後方へ、略水平に延びている。
【0035】
導水部40は、
図1~
図4に示すように、便鉢部10の後方であってトラップ排水路20の上方に形成されている。導水部40は、便鉢部10の上壁部11の後部、底面部41、左右面部43、後面部45、及び上面部47に囲まれて形成されている。導水部40には洗浄水が流通する。導水部40は吐水口11Aに連通しており、便器洗浄が実行された際に、吐水口11Aを介して便鉢部10内に洗浄水を供給する。
【0036】
底面部41は、
図3及び
図4に示すように、便鉢部10の上壁部11の後部の下端に連続して後方に拡がっている。底面部41の上面が導水部40の下面40Aを形成している。底面部41は、上方から見た平面視において、中央前端縁、左右前端縁、左右両端縁、及び後端縁を有している。中央前端縁は便鉢部10の上端部の後部に沿って湾曲している。左右前端縁は中央前端縁の両端のそれぞれから左右の外方向に向けて後方に傾斜している。左右両端縁は、左右前端縁のそれぞれの外側の端部から後方に向けて平行に延びている。後端縁は左右両端縁のそれぞれの後端を直線状に延びて連結している。底面部41は左右両端縁から左右中央部41Aに向けて下り傾斜した平板状である。すなわち、導水部40の下面40Aは左右両端縁から左右中央部41Aに向けて下り傾斜している。また、底面部41は左右中央部41Aが前方に向けて僅かに下り傾斜している。すなわち、導水部40の下面40Aの左右中央部41Aは前方に向けて下り傾斜している。
【0037】
左右面部43は、
図1及び
図3に示すように、底面部41の左右前端縁及び左右両端縁から上下方向に立ち上がっており、上方に向けて僅かに外側に拡がっている。また、左右面部43は便鉢部10の上壁部11とほぼ同じ高さを有している。左右面部43の前端部は、便鉢部10の左右端よりも左右方向に拡がっている。後面部45は、底面部41の後端縁から上下方向に略垂直に立ち上がっている。後面部45は左右中央部に図示しない洗浄タンクの流出口に接続された分配菅が挿通される挿通孔45Aが形成されている。上面部47は、上方から見た平面視において、底面部41とほぼ同じ形状である。上面部47は、導水部40の上方を塞ぐように、便鉢部10の上壁部11の後部、左右面部43、及び後面部45のそれぞれの上端縁に連続している。上面部47は、便鉢部10の後方に拡がって形成されている。具体的には、上面部47は、水洗式便器1を設置した状態で、上面が便鉢部10の後方へ水平に拡がるように形成されている。
【0038】
図1~
図3に示すように、導水部40には一対の円筒部49が設けられている。一対の円筒部49は、上面部47と底面部41とを連結する形態で鉛直方向に延びて形成されている。一対の円筒部49は左右中央を対称にした位置に設けられている。一対の円筒部49には、上面部47の上面及び底面部41の下面に貫通する貫通孔49Aがそれぞれ形成されている。一対の貫通孔49Aは所定の間隔を有している。一対の貫通孔49Aは上面部47上に配置される便座装置を固定するための取付孔である。一対の貫通孔49Aは、水洗式便器1の前端からの距離が、日本工業規格(JIS)で定められた約470mmとされている。
【0039】
図3に示すように、一対の貫通孔49Aは、トラップ排水路20の頂部Cよりも後方に位置している。換言すると、トラップ排水路20は、上昇流路23の下流端の下端であるトラップ排水路20の頂部Cが、便座装置(図示せず)を固定するための一対の貫通孔49Aよりも前方に位置する形態で形成されている。より詳細には、
図3に示すように、頂部Cは、前後方向において、一対の貫通孔49Aと、便鉢部10の上壁部11後端との間に位置している。
【0040】
タンク設置部50は水洗式便器1の後部上面に設けられている。タンク設置部50には洗浄水が貯留される図示しない洗浄タンクが設置される。タンク設置部50は凹状に窪んで形成されている。タンク設置部50には、洗浄タンクの流出口に接続された分配管が後面部45の挿通孔45Aに挿通されて配置される。
【0041】
導水部40は、水抜き通路60によってトラップ排水路20に連通している。具体的には、水抜き通路60は、
図1及び
図3に示すように、導水部40の下面40A(導水部40を形成する底面部41の上面)に開口する流入口61から、便鉢部10の溜水面Rより下方であって、トラップ排水路20の導入流路21の上部に開口する流出口63まで連なって形成されている。水抜き通路60は、導水部40内の洗浄水を、便鉢部10を介さずに、トラップ排水路20内に直接流出させる。水抜き通路60は、洗浄水を導水部40から排出するにあたり、便鉢洗浄終盤になって洗浄水の勢いがある程度弱くなった場合に便鉢部10に流出させないようにする。これにより、便鉢部10の表面を僅かな流量の洗浄水が流下することによって形成される筋状の水垢が生じるのを抑制する。
【0042】
図3に示すように、第2下降流路27の下端部には排水ソケット70が接続される。排水ソケット70は、周壁部30の内側空間に配置され、外部から視認不能とされる。排水ソケット70は、第2下降流路27の排出口27Aと、床面Fに引き出され、設置状態における便鉢部10の下方に位置する排水管Pとを連結している。上述のように、トラップ排水路20の下端面20Aは排水ソケット70を収納できる高さで形成されている。排水ソケット70は、このように形成されたトラップ排水路20の下方を通過して前方に延びている。
【0043】
図3に示すように、排水ソケット70は、パッキン71と、流入管部72と、流出管部73とを有している。パッキン71は、第2下降流路27の下端部が上方から嵌め込まれ、第2下降流路27の外周面を水密に封止する。流入管部72は、一端が上方に開口してパッキン71の下端に連結されている。流入管部72の他端には、床面Fに沿って前方に略水平に延びる水平部72Aが設けられている。流出管部73は、一端が後方に開口して流入管部72の水平部72Aが差し込まれており、他端が下方に延びて床面Fの排水管Pに差し込まれている。流入管部72の水平部72Aは一様な断面形状を有しており、所望の長さに切断して流出管部73に差し込んで連結することができる。排水ソケット70は、流入管部72の水平部72Aの長さを調整することによって、便器側の第2下降流路27と床面F側の排水管Pとの距離に対応させることができるようにされている。
【0044】
次に、水洗式便器1の設置作業について説明する。最初に、排水ソケット70を床面Fに引き出されている排水管Pに接続する(
図3参照)。具体的には、床面Fの排水管Pに排水ソケット70の流出管部73を嵌合して固定する。このとき、排水ソケット70のパッキン71の開口中心が水洗式便器1後方の壁面Yから所定の位置(壁面Yから約160mm)に配置されるように、水平部72Aの長さを調整する。そして、水洗式便器1の第2下降流路27を、排水ソケット70のパッキン71に接続する。具体的には、水洗式便器1を持ち上げておき、パッキン71の上方から第2下降流路27を差し込んで接続するように、水洗式便器1を床面Fに載置する。
なお、排水ソケット70は、水洗式便器1の後方の壁面Yから排水管Pの中心まで距離(排水芯)が、200mm~550mm程度まで対応可能である。水洗式便器1は、現在のように排水芯200mmで統一される以前に設置された既存の便器と交換して用いる便器として好適である。
【0045】
このような構成を有する水洗式便器1は、便器洗浄を実行した際には、洗浄水が導水部40から便鉢部10を経てトラップ排水路20内に流入する。トラップ排水路20において、洗浄水は、導入流路21を下降し、上昇流路23を上昇しつつ汚物を押し流して第1下降流路25、第2下降流路27の順に流下する。第2下降流路27の排出口27Aには、床面Fの排水管Pと連通する排水ソケット70が接続されており、この排水ソケット70を介して洗浄水が排水管Pに排出される。
【0046】
以上説明したように、実施例1の水洗式便器1は、便鉢部10、上面部47及びトラップ排水路20を備えている。便鉢部10は、その下流側にトラップ排水路20が連通している。上面部47は、便鉢部10の後方に拡がるとともに、上下方向に貫通して便座装置(図示せず)が取り付けられる一対の取付孔である一対の貫通孔49Aが形成されている。トラップ排水路20は導入流路21及び上昇流路23を有している。導入流路21は、便鉢部10の下流側に連通して下方に延びて形成されている。上昇流路23は、導入流路21の下流端に連続して上方に延びて形成されている。そして、上昇流路23の下流端の下端であるトラップ排水路20の頂部Cは、一対の貫通孔49Aよりも前方に位置している。
【0047】
このように、水洗式便器1は、トラップ排水路20の頂部Cを便座装置の取付孔である一対の貫通孔49Aよりも前方に位置させている。すなわち、頂部Cを水洗式便器1における前寄りの位置に設定している。これにより、トラップ排水路20の前後方向の長さを抑えることができる。その結果、トラップ排水路の上昇流路よりも下流側の構成の設計の自由度を向上させることができる。
【0048】
したがって、実施例1の水洗式便器1は、便器後部のスペースの設計自由度の向上を図ることができる。
【0049】
また、上昇流路23の傾斜角度θ2は、導入流路21の傾斜角度θ1よりも大きくされている。このため、トラップ排水路20の前後方向の長さを抑えた水洗式便器1を容易に実現することができる。
【0050】
また、トラップ排水路20は、導入流路21の下端Aから頂部Cまでの前後方向の距離が、導入流路21の下端Aから前端Bまでの前後方向の距離と略同等となる形態で形成されている。このようにしたことで、トラップ排水路20は、上昇流路23の上昇勾配がより大きくされている。これにより、水洗式便器1は、トラップ排水路20の頂部Cの位置が前方寄りに設定される。その結果、水洗式便器1は、トラップ排水路20の前後方向の大きさが抑えられ、トラップ排水路20の上昇流路23よりも下流側における設計自由度の向上が図られている。したがって、水洗式便器1は、より容易に小型化を図ることができる。
なお、トラップ排水路は、導入流路の下端(上昇流路の上流端の下端)から頂部までの前後方向の距離が、導入流路の下端から前端までの前後方向の距離よりも小さくなる形態で形成されていてもよい。この場合、トラップ排水路の前後方向の大きさをより抑えることができる。
【0051】
また、トラップ排水路20は、導入流路21の入口である流入部Xから、上昇流路23の溜水面Rよりも下方の位置を含む頂部Cまでの領域の流路断面において、左右方向の大きさが左右方向に直交する方向の大きさよりも大きく形成されている。このため、トラップ排水路の前後方向の大きさのみならず、上下方向の大きさも抑えた水洗式便器を容易に実現することができる。
【0052】
また、トラップ排水路20は、上昇流路23の下流端に連続して下方に延びて形成される下降流路としての第1及び第2下降流路25,27を有している。トラップ排水路20は、第2下降流路27の排出口27Aが下方を向いて開口してSトラップを形成している。水洗式便器1は、この第2下降流路27の排出口27Aと、床面Fに引き出され、設置された際の便鉢部10の下方に位置する排水管Pと連結する排水ソケット70を備えている。このように、便鉢部の下方に排水管が位置するような、水洗式便器の後方の壁から排水芯までの距離が遠い場合であっても、水洗式便器を壁寄りの適切な位置に設置することができる。
【0053】
また、トラップ排水路20は、下端面20Aが排水ソケット70を収納できる高さである。このため、水洗式便器1後部の第2下降流路27と、水洗式便器1の前部である便鉢部10の下方に位置する排水管Pとを接続する排水ソケット70を、無理なく配置することができる。
【0054】
また、トラップ排水路20には、トラップ排水路20の排水ソケット70に対応する位置の下端面20Aが露出する形態で開口して形成された凍結防止用のヒータH1が取り付けられている。このため、下端面を覆うようなヒータが取り付けられるトラップ排水路と比較して、トラップ排水路20の下端面20Aの位置をより床面Fに近づけて形成することができる。
【0055】
また、トラップ排水路20は、頂部Cが、前後方向において一対の貫通孔49Aと便鉢部10の上壁部11後端との間に位置している。これにより、便鉢部10の鉢面形状に影響を及ぼすことなく便器後部の設計自由度を向上させることができ、容易に小型化を図ることができる。例えば、
図3における頂部Cが便鉢部10の上壁部11後端より前方に位置した場合、トラップ排水路20の上昇流路23が便鉢部10の中間壁部15及び下壁部17の後部に干渉してしまう。この場合、便鉢部10後部の傾斜角度に影響を及ぼしてしまったり、上昇流路23の流路面積を十分に確保できなかったりしてしまう。しかし、頂部Cが便鉢部10の上壁部11後端よりも後方に位置することで、便鉢部10の鉢面形状に影響を及ぼしたり、十分な流路面積を確保できなかったりすることなく小型化を図ることができる。
【0056】
<実施例2>
次に、
図12等を参照し、実施例2について説明する。
図12に示す実施例2の水洗式便器201は、便鉢部10、導入流路21、及び上昇流路23の形状が実施例1の水洗式便器1と同じである。換言すると、水洗式便器201は、トラップ排水路220の頂部Cよりも前方の形状が実施例1の水洗式便器1と同じである。また、水洗式便器201は、実施例1と同様の上面部47を備えており、トラップ排水路220の頂部Cは一対の貫通孔49Aよりも前方に位置している。しかし、水洗式便器201は、実施例1の第1下降流路25及び第2下降流路27に替えて、上昇流路23の下流端に連なる下降流路229を有するトラップ排水路220を備えている点で実施例1と相違する。その他の構成において、実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0057】
図12に示すように、下降流路229は、上昇流路23の下流端に連なり湾曲しつつ下降している。下降流路229の下流端である排出口229Aは、後方斜め下方を向いて開口している。すなわち、水洗式便器201は、トラップ排水路220が、下降流路229の排出口229Aが後方斜め下方を向いて開口したPトラップを形成している。トラップ排水路220の下流端は、水洗式便器201の後方の壁面Yから前方斜め上方に突出して設けられた床上排水管P2に接続される。
【0058】
床上排水管P2は、その長さや高さ、傾斜角度等が規格により定められている。具体的には、床上排水管P2は、床面Fから高さ148mmの位置において前方に水平に突出するとともに、その前端部が水平面に対して約10度の角度をなして斜め上方に延びている。床上排水管P2の壁面Yからの長さは、約175mmであり、傾斜して延びる前端部の床面Fからの高さは約170mmである。
【0059】
水洗式便器201を床上排水管P2に接続するには、水洗式便器201をやや上方に持ち上げつつ、下降流路229の排出口229Aを床上排水管P2の先端に差し込んで接続し、水洗式便器201を床面Fに載置する。このようにして設置した水洗式便器201は、前端から後方壁面Yまでの距離が上述の実施例1の水洗式便器1と同等の距離で設置することができる。
【0060】
このように、水洗式便器201は、実施例1と同様に、トラップ排水路220のトラップ排水路220の頂部Cを便座装置の取付孔である一対の貫通孔49Aよりも前方に位置させている。その一方、水洗式便器201は、上昇流路23よりも下流側の構成を実施例1の水洗式便器1とは異なる構成として床上排水管P2への接続を実現しつつ、水洗式便器201の後方壁面Yから前端までの距離を実施例1の水洗式便器1と同様の距離とすることを実現している。すなわち、実施例1の水洗式便器1及び実施例2の水洗式便器201は、頂部Cを一対の貫通孔49Aよりも前方に配置したことにより、頂部Cよりも前部の構成は共通化しつつ頂部Cよりも下流側の構成は設計の自由度が確保されているため、Sトラップ又はPトラップをそれぞれ構成することが可能となっている。
【0061】
また、水洗式便器201は、トラップ排水路220が、導入流路21の下端Aから前端Bまでの前後方向の距離よりも、導入流路21の下端Aから頂部Cまでの前後方向の距離のほうが小さく形成されている。このように、トラップ排水路220の頂部Cをより前寄りの位置に設定したことにより、より容易に小型化を図ることができる。
【0062】
また、トラップ排水路220は、上昇流路23の下流端に連続して後方斜め下方に延びて形成された下降流路229を有している。トラップ排水路220は、下降流路229の排出口229Aが後方を向いて開口してPトラップを形成している。水洗式便器201は、この下降流路229の排出口229Aと、後方壁面Yから突出して設けられた床上排水管P2とが接続される。このように、水洗式便器201は、床上排水管P2に接続して後方壁面Yから適切な位置に設置することができる。
【0063】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、洗い落とし式の水洗式便器を例示したが、本発明に係る水洗式便器はサイフォン式であってもよい。また、本発明に係る水洗式便器は、床置き便器に限定されず、壁掛け便器であってもよい。
(2)実施例1及び2では、洗浄タンクが設置されるタンク設置部を備える形態を例示したが、本発明に係る水洗式便器において、タンク設置部を備えることは必須ではない。すなわち、本発明に係る水洗式便器は、フラッシュバルブや開閉弁等の開閉により給水配管から直接的に洗浄水が供給される構成等、いわゆるタンクレス式であってもよく、この場合、タンク設置部は必須ではない。
(3)実施例1及び2では、特定構成の導水部を備える形態を例示したが、導水部の構成は実施例1又は2の構成に限定されない。
(4)実施例1及び2では、水抜き通路を備える形態を例示したが、本発明に係る水洗式便器において、水抜き通路は必須の構成ではない。
(5)実施例1及び2では、周壁部を備える形態を例示したが、本発明に係る水洗式便器において周壁部は必須の構成ではない。周壁部を備える場合には、実施例1又は2の形態に限定されず、例えば、水洗式便器の上端まで全体的に覆う形態等の他の形態であってもよい。
(6)実施例1及び2では、第1下降流路の底面の幅が第2下降流路の開口径よりも大きく形成されている形態を例示したが、これは必須ではない。本発明に係る水洗式便器は、第1下降流路の底面の幅と第2下降流路の開口径とが略同等の大きさで形成されていてもよい。
(7)実施例1及び2では、第1下降流路の底面の長さが第2下降流路の開口径よりも大きく形成されている形態を例示したが、これは必須ではない。本発明に係る水洗式便器は、第1下降流路の底面の長さが第2下降流路の開口径よりも小さく形成されていてもよいし、第1下降流路の底面の長さと第2下降流路の開口径とが略同等の大きさで形成されていてもよい。
(8)実施例1では、下降流路の排出口と、床面に引き出され、設置された際の便鉢部の下方に位置する排水管と連結する排水ソケットを備えている形態を例示したが、排水ソケットを備える場合、その形態は実施例1の形態に限定されない。例えば、
図13に示すように、水洗式便器301が設置された際に下降流路(第2下降流路27)の下方に位置する排水管P3と下降流路の排出口(第2下降流路27の排出口27A)とを連結する排水ソケット370等、他の形態の排水ソケットであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,201,301…水洗式便器
10…便鉢部
20,220…トラップ排水路
20A…トラップ排水路の下端面
21…導入流路
23…上昇流路
25,27,229…下降流路(25…第1下降流路、27…第2下降流路)
27A,229A…下降流路の排出口
47…上面部
49A…貫通孔(便座装置の取付孔)
70,370…排水ソケット
A…導入流路の下端
B…導入流路の前端
C…トラップ排水路の頂部
F…床面
H1…ヒータ
P,P3…排水管