(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
B68G 11/03 20060101AFI20231107BHJP
A47C 27/12 20060101ALI20231107BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B68G11/03
A47C27/12 L
A61G5/12 701
(21)【出願番号】P 2019107506
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】野本 学
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 睦
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-141392(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213018(JP,U)
【文献】登録実用新案第3218974(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 11/03
A47C 27/12
A61G 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー内にクッション素材を収容したクッションであって、車椅子の座面に設けられて使用者を下側から弾性的に支持する車椅子用クッションにおいて、
前記クッション素材は、低反発クッション素材と、
当該低反発クッション素材の下側に設けられた高反発クッション素材と
から成り、当該各クッション素材は前後方向、左右方向のサイズが同じで、厚さが異なる略直方体状を成すものであって、
前記低反発クッション素材に対して、当該低反発クッション素材の厚さより厚くした前記高反発クッション素材を、互いに接着されていない状態で重なるように積層配置しており、
当該各クッション素材は、フィラメント同士が立体的に融着結合し、厚み方向の上下面が滑らかな表面となっているフィラメント3次元結合体であって、
前記低反発クッション素材と
前記高反発クッション素材との境界部は、前記滑らかな表面同士となっており、
前記カバーは、前
記低反発クッション素材と前
記高反発クッション素材
とが位置関係において上下に重なるように積層配置された状態に収容し、当該積層配置されたクッション素材の外周面に外接して、その状態を維持し、
且つ、前記使用者の着座時において、前記低反発クッション素材を前記高反発クッション素材に対して側方へスライド可能とする、伸縮可能な素材で形成されていることを特徴とする車椅子用クッション。
【請求項2】
前記低反発クッション素材のフィラメントは、前記高反発クッション素材のフィラメントに比べ、細いフィラメントにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車椅子用クッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者を弾性的に支持するクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者を弾性的に支持するクッションが、椅子、ソファー、或いは車椅子など各種用途に利用されている。このようなクッションについては、各種性能を向上させるための改良案が種々提案されている。例えば特許文献1によれば、体圧分散がより促進される体圧分散型クッション材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなクッションの使用感は、クッションに使われるクッション素材の反発力によって大きく左右される。一般的には、クッション素材の反発力が低いと臀部等が包み込まれるような柔らかい使用感が得られ、クッション素材の反発力が高いと臀部等がしっかりと支持されるような使用感が得られる。
【0005】
しかしながら、クッション素材の反発力が単に低いだけであると、臀部等がしっかりと支持されずに底突きしたような使用感となる虞がある。また、クッション素材の反発力が単に高いだけであると、臀部等が包み込まれるような使用感が得られず座り心地等において問題となる虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、より良い使用感を得ることが可能となるクッションの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るクッションは、使用者を下側から弾性的に支持するクッションであって、低反発クッション素材と、当該低反発クッション素材の下側に設けられる高反発クッション素材とを有し、前記高反発クッション素材は、前記低反発クッション素材よりも反発力が高くなるように形成された構成とする。
【0008】
本構成によれば、より良い使用感を得ることが可能となる。なお本願での使用者を「支持する」とは、使用者を直接的に支持する形態に限られず、何らかの部材等を介在させて支持する形態も含む概念である。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記低反発クッション素材および前記高反発クッション素材は、何れもフィラメント3次元結合体である構成としてもよい。本構成によれば、通気性に優れる等、フィラメント3次元結合体の特性を活かしたクッションとすることが可能となる。
【0010】
また上記構成としてより具体的には、前記低反発クッション素材であるフィラメント3次元結合体は、前記高反発クッション素材であるフィラメント3次元結合体に比べ、細いフィラメントにより形成されている構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、車椅子の座面に設けられる車椅子用クッションである構成としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクッションによれば、より良い使用感を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る車椅子用クッションの概略的な外観図である。
【
図2】本実施形態に係る車椅子用クッションの配置形態に関する説明図である。
【
図3】本実施形態に係る車椅子用クッションの概略的な断面図である。
【
図4】本実施形態に係る車椅子用クッションのサンプルに関する説明図である。
【
図5】低反発クッション素材のスライドに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について車椅子用クッション(使用者を下側から弾性的に支持するクッションの一形態)を例に挙げ、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る車椅子用クッション1の概略的な外観を示しており、
図2は、車椅子用クッション1の配置形態を概略的に示している。なお以下の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、各図に示すとおりである。
【0015】
図1に示すように車椅子用クッション1は、上下方向を厚み方向とする略直方体に形成されており、後述する各クッション素材をカバー10の内部に収容した形態となっている。カバー10には不図示のファスナーが設けられており、当該ファスナーを開いてカバー10の内部を開口させ、各クッション素材を適宜出し入れすることが可能である。
【0016】
図2に示すように車椅子用クッション1は、車椅子Xの座面2に設けられる。なお座面2は金属等により形成されており、車椅子用クッション1に比べて非常に硬くなっている。車椅子Xは、左右一対の後輪3と左右一対の前輪4を有しており、概ね、左右の後輪3の間に座面2が配置されている。車椅子Xを使用する使用者(以下、単に「使用者」とする。)は、車椅子用クッション1の上に前方を向いて座ることになる。車椅子Xに着座した使用者は、自らハンドリム5を手で回転させたり、介助者等にハンドル6を押してもらったりして移動することが可能である。
【0017】
図3は、車椅子用クッション1の概略的な断面図(前後方向と直交する平面で切断した場合の断面図)である。なお
図3に示す破線αは、車椅子用クッション1に座る直前の使用者の臀部付近の大まかな位置を、参考までに示している。また
図4は、車椅子用クッション1のサンプルにおけるクッション部CSを、側方から見た様子(写真)を示している。なお
図4に示す破線βは、低反発クッション素材11と高反発クッション素材12の境界を示している。
【0018】
図3に示すように、車椅子用クッション1は、カバー10の内部にクッション部CSが設けられている。クッション部CSは、それぞれ直方体状の低反発クッション素材11および高反発クッション素材12により構成され、使用者の臀部付近を下側から弾性的に支持する役割を果たす。カバー10の内部の構成は基本的に前後方向では均一であり、前後方向のどの位置における断面図も
図3に示すとおりである。車椅子用クッション1のサイズは車椅子Xに合うように設定されており、前後方向および左右方向のサイズは座面2のサイズに合うように(例えば30~50cm程度に)設定されている。
【0019】
また
図3に示すように、高反発クッション素材12は低反発クッション素材11の下側に設けられており、これらのクッション素材11,12は上下方向へ積層した配置とされている。また、各クッション素材11,12の前後方向および左右方向のサイズは同じであり、低反発クッション素材11の下面は高反発クッション素材12の上面と接している。一例として、低反発クッション素材11の厚み(上下方向サイズ)は16mm程度に設定され、高反発クッション素材12の厚みは25~35mm程度に設定される。
【0020】
低反発クッション素材11および高反発クッション素材12は、何れも、熱可塑性樹脂のフィラメント同士が立体的に融着結合したフィラメント3次元結合体により形成されている。なおフィラメント3次元結合体の製造方法等については、例えば特開2017-160553号公報にも開示されているとおり公知であり、ここではその詳細な説明を省略する。フィラメント3次元結合体で形成された各クッション素材11,12は、通気性に非常に優れている。
【0021】
何れのクッション素材11,12もフィラメント3次元結合体により形成されているが、高反発クッション素材12は、低反発クッション素材11よりも反発力が高くなるように形成されている。より詳細に説明すると、フィラメント3次元結合体は、それを構成するフィラメント(熱可塑性樹脂繊維)の太さやフィラメント密度(フィラメントの密集度合)等によって反発力が変化する。
【0022】
このことを利用して、高反発クッション素材12は、低反発クッション素材11よりも反発力が高くなるように形成することが可能である。本実施形態の場合は
図4からも明らかであるように、低反発クッション素材11であるフィラメント3次元結合体は、高反発クッション素材12であるフィラメント3次元結合体に比べ、細いフィラメントにより形成されている。
【0023】
これにより、高反発クッション素材12は、低反発クッション素材11よりも反発力が高い素材となっており、低反発クッション素材11は、高反発クッション素材12よりも反発力が低く柔らかめの素材となっている。各クッション素材11,12の具体的な反発力等については、使用者の座り心地などを考慮して適切に設定されることが望ましい。なおフィラメント3次元結合体を構成するフィラメントの太さを変える手法としては、例えば特開2017-160553号公報に開示された製造装置を用いてフィラメント3次元結合体を製造する場合、ノズル部における各開口部の内径を変えること等が挙げられる。
【0024】
上述したようにクッション部CSでは、反発力が低く柔らか目の低反発クッション素材11を使用者に近い側の上層に用いたため、使用者は、柔らかく臀部が包み込まれるような心地よい使用感を得ることができる。また更に、反発力の高い高反発クッション素材12を下層に用いたため、この層が臀部をしっかりと支持する役割を果たし、使用者はしっかりと自分の体重が支えられるような使用感を得ることができる。また高反発クッション部材12は、臀部をしっかりと支えることで体圧を分散し、仙骨への圧力を低減させて臀部の痺れを抑制する役割をも果たす。
【0025】
なお、車椅子競技用の車椅子のクッションでは、あえて臀部を底突きさせることで競技者の踏ん張りがきく構成であることが望まれる場合があるが、介護用などの一般的な用途の車椅子において底突きを重視すると、着座時に仙骨を圧迫され易くなり、血流悪化による痺れが生じ、長時間の使用に耐えられないという問題がある。この点、本実施形態に係る車椅子用クッション1によれば、上記のとおり体圧分散性が向上し、仙骨への圧力を低減させて臀部の痺れを抑制することが可能である。
【0026】
また各クッション11,12は、互いに接着されていない状態(分離した状態)で積層配置され、クッション部CSのサイズに合うように形成されたカバー10内へ収納されることによってその位置関係(ちょうど重なるように積層配置された状態)が維持される。そのためカバー10を伸縮可能な素材で形成することにより、
図5に例示するように、高反発クッション素材12に対して低反発クッション素材11を側方へスライドさせることができる。
【0027】
このようにすれば、例えば、使用者が車椅子クッション1に着座したまま
図5に着色矢印で示す方向へ臀部を動かそうとする場合、この動きを妨げないように低反発クッション素材11がスライドし、使用者の動きの自由度が高まるという効果を得ることが可能である。特に本実施形態の場合は、各クッション素材11,12は何れもフィラメント3次元結合体であり、各クッション素材11,12の境界部(滑らかなフィラメント3次元結合体の表面同士)は比較的滑り易くなっていることから、当該効果をより十分に得ることが可能である。但し、本発明に係る各クッション素材の形態はこのようなものに限られず、各クッション素材同士は接着等により位置関係が固定されていてもよい。
【0028】
なお本実施形態では、各クッション素材11,12としてフィラメント3次元結合体を採用したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の素材を採用することも可能である。例えば、低反発クッション素材11としては、ゴム(ラテックス)或いはウレタン等を採用することが可能である。また本実施形態では、本発明の実施形態として車椅子用クッションを例に挙げて説明したが、本発明に係るクッションはこの形態に限られず、椅子、ソファー、或いは寝具用等のクッションにも利用可能である。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、各種のクッションに利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 車椅子用クッション
2 座面
3 後輪
4 前輪
5 ハンドリム
6 ハンドル
10 カバー
11 低反発クッション素材
12 高反発クッション素材
CS クッション部
X 車椅子