(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】蒸気タービン静翼、蒸気タービンおよび蒸気タービン静翼の製造方法
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20231107BHJP
F01D 25/32 20060101ALI20231107BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
F01D9/02 103
F01D25/32 B
F01D25/00 X
(21)【出願番号】P 2019108080
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 泰洋
(72)【発明者】
【氏名】杼谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】田畑 創一朗
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-280801(JP,A)
【文献】特開昭63-117104(JP,A)
【文献】特開平04-140401(JP,A)
【文献】特開2019-044723(JP,A)
【文献】実開平02-064702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 25/32
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力面および負圧面を含む翼面を有する翼本体部と、
前記翼本体部の内部に設けられる水分除去流路と、
前記翼本体部の
蒸気タービン静翼を支持する環状部材に接続される基端部から先端部に向かう高さ方向に直交する方向において前記圧力面における中央よりも後縁側に開口して前記水分除去流路と連通するとともに、前記高さ方向に沿って延在する少なくとも一つのスリットと、
前記高さ方向に直交する方向において前記圧力面における中央よりも後縁側に設けられ、前記基端部から前記高さ方向に沿って延在する少なくとも一つの溝部であって、少なくとも一部が前記少なくとも一つのスリットに対して前記高さ方向に沿って重複している少なくとも一つの溝部と、を備える
蒸気タービン静翼。
【請求項2】
前記少なくとも一つの溝部は、前記先端部から前記基端部に向かって後縁側に傾斜するように構成された
請求項1に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項3】
前記少なくとも一つのスリットは、前記高さ方向において互いに離隔して設けられた複数のスリットを含む
請求項1又は2に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項4】
前記蒸気タービン静翼は、前記翼面に設けられる凹部であって、前記複数のスリットの夫々が開口する凹部をさらに備える
請求項3に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項5】
前記少なくとも一つのスリットは、前記少なくとも一つの溝部よりも前縁側に設けられる
請求項1乃至4の何れか1項に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項6】
前記少なくとも一つのスリットは、前記少なくとも一つの溝部よりも後縁側に設けられる
請求項1乃至4の何れか1項に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項7】
前記翼本体部は、前記水分除去流路の周囲を取り囲む湾曲板部であって、厚みの最大値と最小値との差分が前記厚みの平均値に対して40%以内となるように構成された湾曲板部を含む
請求項1乃至6の何れか1項に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項8】
前記湾曲板部は、前記圧力面の少なくとも一部を含む面を有する圧力面側湾曲板部と、前記負圧面の少なくとも一部を含む面を有する負圧面側湾曲板部と、を含み、
前記少なくとも一つのスリット又は前記少なくとも一つの溝部のうちの一方は、前記圧力面側湾曲板部の一端部と前記負圧面側湾曲板部の一端部とを溶接により接合した接合部を含むように構成された
請求項7に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項9】
前記翼本体部は、前記接合部よりも後縁側に設けられる後縁部であって、前記後縁に連なる後縁側圧力面と、前記後縁側圧力面の前端部から前記後縁側圧力面に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面と、を有する後縁部をさらに含み、
前記少なくとも一つの溝部は、前記接合部を含むとともに、前記後縁側壁面により一部が画定される
請求項8に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項10】
前記翼本体部は、前記接合部よりも後縁側に設けられる後縁部であって、前記後縁に連なる後縁側圧力面と、前記後縁側圧力面の前端部から前記後縁側圧力面に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面と、を有する後縁部をさらに含み、
前記少なくとも一つのスリットは、前記接合部を含むとともに、前記後縁側壁面により一部が画定される
請求項8に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項11】
前記負圧面側湾曲板部は、後縁から前縁に向かって延在する延在部であって、前記圧力面の少なくとも一部を含む面を有する延在部を含み、
前記負圧面側湾曲板部の前記一端部は、前記延在部の前縁側に位置する前端部を含み、
前記少なくとも一つの溝部は、前記接合部を含むとともに、前記延在部の前記前端部の端面により一部が画定される
請求項8に記載の蒸気タービン静翼。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の蒸気タービン静翼と、
前記蒸気タービン静翼を支持する
前記環状部材と、
前記環状部材の内部に設けられるキャビティであって、前記翼本体部の前記水分除去流路および前記少なくとも一つの溝部の夫々から液体が送られるように構成されたキャビティと、を備える
蒸気タービン。
【請求項13】
圧力面および負圧面を含む翼面を有する翼本体部の
蒸気タービン静翼を支持する環状部材に接続される基端部から先端部に向かう高さ方向に直交する方向において前記圧力面における中央よりも後縁側に開口して前記翼本体部の内部に設けられる水分除去流路と連通するとともに、前記高さ方向に沿って延在する少なくとも一つのスリットを形成するスリット形成ステップと、
前記高さ方向に直交する方向において前記圧力面における中央よりも後縁側に前記基端部から前記高さ方向に沿って延在する少なくとも一つの溝部であって、少なくとも一部が前記少なくとも一つのスリットに対して前記高さ方向に沿って重複している少なくとも一つの溝部を形成する溝部形成ステップと、を備える
蒸気タービン静翼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気タービン静翼、該蒸気タービン静翼を備える蒸気タービン、および蒸気タービン静翼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンの最終段付近では蒸気流の湿り度が8%以上となる。湿り蒸気流から発生する水滴により湿り損失が発生し、タービン効率が低下する。また、湿り蒸気流から発生した水滴は、静翼の表面に付着して水膜を形成する。上記水膜が静翼の表面で水膜流となって静翼の後縁側へ流れ、静翼の後縁にて千切れて粗大水滴が形成される。上記粗大水滴が高速で回転する動翼に衝突することが、動翼のエロージョンを引き起こす大きな原因のひとつとなっている。
【0003】
蒸気タービンの湿り損失やエロージョンを防止するためには、静翼の表面に付着する液体(水滴)を除去することが効果的である。従来、静翼の表面に付着した液体を除去することを目的として、静翼の表面に溝やスリットを設けることが行われている(特許文献1、2参照)。静翼の表面に付着した液体は、溝やスリットに送り込まれ、溝やスリットから系外に排出される。特許文献1には、静翼の表面に一又は複数の溝を設けることが開示されている。特許文献1に記載の溝は、静翼の長手方向の一端部から他端部までに亘って、蒸気タービンの径方向に向かって延在している。特許文献2には、内部に空洞部を有する中空状の静翼の表面に、空洞部に連通する一又は複数のスリットを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6474942号明細書
【文献】特開平3-26802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静翼の表面に付着した液体の除去効率の向上を図るために、特許文献1に記載の溝を、静翼の表面に高さ方向に沿って並列に二つ設けることが考えられる。しかしながら、上記溝自体の除去効率が低いため、上記溝を並列に二つ設けても液体の除去量が少なく、液体の除去効率の向上を図れない虞がある。
【0006】
また、上記液体の除去効率の向上を図るために、特許文献2に記載のスリットを、静翼の表面に高さ方向に沿って並列に二つ設けることが考えられる。この場合には、軸方向の上流側に設けられた第1のスリットと、上記軸方向の下流側に設けられた第2のスリットと、の圧力差により、第1のスリットから空洞部に吸い込まれた液体が、第1スリットよりも圧力の低い第2スリットから噴出する(逆流する)虞がある。このため、液体の除去量を多くすることができず、液体の除去効率の向上を図れない虞がある。液体の逆流を防止するために、スリットの幅を広げてスリットの吸引圧を向上させると、スリットを通って空洞部に漏洩する駆動蒸気の量が増大するため、蒸気タービンの性能低下を招く虞がある。
【0007】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、蒸気タービンの性能低下を防止するとともに、静翼の表面に付着する液体の除去効率を向上させることができる蒸気タービン静翼、および該蒸気タービン静翼を備える蒸気タービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかる蒸気タービン静翼は、
圧力面および負圧面を含む翼面を有する翼本体部と、
上記翼本体部の内部に設けられる水分除去流路と、
上記翼面に開口して上記水分除去流路と連通するとともに、上記翼本体部の基端部から先端部に向かう高さ方向に沿って延在する少なくとも一つのスリットと、
上記翼面に設けられ、上記基端部から上記高さ方向に沿って延在する少なくとも一つの溝部であって、少なくとも一部が上記少なくとも一つのスリットに対して上記高さ方向に沿って重複している少なくとも一つの溝部と、を備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、蒸気タービン静翼は、静翼の表面である翼面にスリットと溝部が設けられており、スリットと溝部は、少なくとも一部が高さ方向に沿って重複している。このため、スリットと溝部のうちの、翼面の上流側に設けられたもの(上流側排水部)により、翼面に集積した液体を除去することができる。また、スリットと溝部のうちの、翼面の下流側に設けられたもの(下流側排水部)により、翼面の上流側排水部よりも下流側に集積した液体を除去することができる。つまり、上記蒸気タービン静翼は、溝部および該溝部よりも液体の除去効率の高いスリットにより、翼面に付着した液体を除去することができるので、翼面に付着する液体の除去効率を向上させることができる。
【0010】
また、上記蒸気タービン静翼は、上流側排水部又は下流側排水部の一方が、水分除去流路に連通しない溝部であるため、比較例にかかる蒸気タービン静翼のような、翼面に高さ方向に沿って重複している二つのスリットを設ける構成に比べて、スリットを通って水分除去流路に漏洩する駆動蒸気の量を少なくすることができる。また、上記蒸気タービン静翼は、比較例にかかる蒸気タービン静翼のような、翼面に高さ方向に沿って重複している二つのスリットを設ける構成とは異なり、スリットを介して水分除去流路から液体が逆流する虞がないので、スリット幅を広げてスリットの吸引圧を向上させる必要がない。スリットの吸引圧を抑えることで、スリットを通って水分除去流路に漏洩する駆動蒸気の量をさらに少なくすることができる。よって、上記蒸気タービン静翼は、スリットを通って水分除去流路に漏洩する駆動蒸気の量を少なくすることができるので、蒸気タービンの性能低下を防止することができる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の蒸気タービン静翼であって、上記少なくとも一つの溝部は、上記先端部から上記基端部に向かって後縁側に傾斜するように構成された。
【0012】
上記(2)の構成によれば、少なくとも一つの溝部は、先端部から基端部に向かって後縁側に傾斜するように構成されているので、溝部に貯留した液体は、蒸気タービン内を流れる蒸気の流れに押されて、液体の排出側である基端部に向かって流される。よって、上記溝部は、溝部に貯留する液体の除去効率を向上させることができる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の蒸気タービン静翼であって、上記少なくとも一つのスリットは、上記高さ方向において互いに離隔して設けられた複数のスリットを含む。
【0014】
上記(3)の構成によれば、複数のスリットの夫々は、高さ方向において互いに離隔して設けられているので、仮に単一のスリットが高さ方向に沿って延在している場合に比べて、蒸気タービン静翼のスリット近傍の強度を向上させることができる。蒸気タービン静翼のスリット近傍の強度を向上させることで、蒸気タービン静翼の厚さを薄くすることができるため、蒸気タービン静翼の製造コストを低減することができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の蒸気タービン静翼は、上記翼面に設けられる凹部であって、上記複数のスリットの夫々が開口する凹部をさらに備える。
【0016】
上記(4)の構成によれば、互いに離隔して設けられた複数のスリットの夫々は、翼面に設けられる凹部に開口しているので、翼面に付着した液体は凹部に貯留される。このため、上記凹部を備える蒸気タービン静翼は、翼面に付着した液体がスリット同士の間を通り、翼面のスリットよりも下流側に流れることを防止することができる。よって、上記凹部を備える蒸気タービン静翼は、翼面に付着する液体の除去効率を向上させることができる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の何れかに記載の蒸気タービン静翼であって、上記少なくとも一つのスリットは、上記少なくとも一つの溝部よりも前縁側に設けられる。
【0018】
上記(5)の構成によれば、スリットが翼面から除去することができなかった液体や、スリットよりも翼面の後縁側に付着した液体を、スリットよりも翼面の後縁側に設けられた溝部により除去することができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の何れかに記載の蒸気タービン静翼であって、上記少なくとも一つのスリットは、上記少なくとも一つの溝部よりも後縁側に設けられる。
【0020】
上記(6)の構成によれば、溝部が翼面から除去することができなかった液体や、溝部よりも翼面の後縁側に付着した液体を、溝部よりも翼面の後縁側に設けられたスリットにより除去することができる。溝部は、スリットへ到達する液体の量を低減させることができ、スリットは、溝部よりも翼面に付着した液体の除去効率が高いので、スリットに到達した液体を除去することができる。よって、上記の構成によれば、スリットを溝部よりも後縁側に設けることにより、翼面に付着した液体を効果的に除去することができる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)~(6)の何れかに記載の蒸気タービン静翼であって、上記翼本体部は、上記水分除去流路の周囲を取り囲む湾曲板部であって、厚みの最大値と最小値との差分が上記厚みの平均値に対して40%以内となるように構成された湾曲板部を含む。
【0022】
上記(7)の構成によれば、湾曲板部の厚みを均等にすることで、湾曲板部を構成する材料の無駄な消費を抑えて湾曲板部の材料費を低減することができるので、静翼の製造コストを低減することができる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の蒸気タービン静翼であって、上記湾曲板部は、上記圧力面の少なくとも一部を含む面を有する圧力面側湾曲板部と、上記負圧面の少なくとも一部を含む面を有する負圧面側湾曲板部と、を含み、上記少なくとも一つのスリット又は上記少なくとも一つの溝部のうちの一方は、上記圧力面側湾曲板部の一端部と上記負圧面側湾曲板部の一端部とを溶接により接合した接合部を含むように構成された。
【0024】
上記(8)の構成によれば、スリット又は溝部のうちの一方は、圧力面側湾曲板部の一端部と負圧面側湾曲板部の一端部とを溶接により接合した接合部を含む。つまり、スリット又は溝部のうちの一方は、圧力面側湾曲板部の一端部と負圧面側湾曲板部の一端部とを溶接して湾曲板部を形成する際に、その形状が形成されるようになっている。上記の構成によれば、スリット又は溝部のうちの一方を形成するために、別途、切削などの加工を必要としないため、加工費を低減することができ、ひいては静翼の製造コストを低減することができる。また、上記の構成によれば、切削などの加工を行わずに、スリット又は溝部のうちの一方を形成することができるため、スリット又は溝部のうちの一方の近傍の強度の低下を防止することができる。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の蒸気タービン静翼であって、上記翼本体部は、上記接合部よりも後縁側に設けられる後縁部であって、上記後縁に連なる後縁側圧力面と、上記後縁側圧力面の前端部から上記後縁側圧力面に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面と、を有する後縁部をさらに含み、上記少なくとも一つの溝部は、上記接合部を含むとともに、上記後縁側壁面により一部が画定される。
【0026】
上記(9)の構成によれば、少なくとも一つの溝部は、接合部を含むとともに、後縁側壁面により一部が画定される。つまり、溝部は、湾曲板部を溶接により形成する際に、後縁部の後縁側壁面を一部として、その形状が形成されるようになっている。上記溝部は、後縁側圧力面に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面により一部が画定されるため、翼面に付着した液体が後縁側壁面から後縁側圧力面に向かって流れるのを効果的に防止することができる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の蒸気タービン静翼であって、上記翼本体部は、上記接合部よりも後縁側に設けられる後縁部であって、上記後縁に連なる後縁側圧力面と、上記後縁側圧力面の前端部から上記後縁側圧力面に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面と、を有する後縁部をさらに含み、上記少なくとも一つのスリットは、上記接合部を含むとともに、上記後縁側壁面により一部が画定される。
【0028】
上記(10)の構成によれば、少なくとも一つのスリットは、接合部を含むとともに、後縁側壁面により一部が画定される。つまり、スリットは、湾曲板部を溶接により形成する際に、後縁部の後縁側壁面を一部として、その形状が形成されるようになっている。上記スリットは、後縁側圧力面に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面により一部が画定されるため、翼面に付着した液体は後縁側壁面にてスリットにより翼面から除去される。よって、上記の構成によれば、翼面に付着した液体が後縁側壁面から後縁側圧力面に向かって流れるのを効果的に防止することができる。
【0029】
(11)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の蒸気タービン静翼であって、上記負圧面側湾曲板部は、後縁から前縁に向かって延在する延在部であって、上記圧力面の少なくとも一部を含む面を有する延在部を含み、上記負圧面側湾曲板部の上記一端部は、上記延在部の前縁側に位置する前端部を含み、上記少なくとも一つの溝部は、上記接合部を含むとともに、上記延在部の上記前端部の端面により一部が画定される。
【0030】
上記(11)の構成によれば、少なくとも一つの溝部は、接合部を含むとともに、延在部の前端部の端面により一部が画定される。つまり、溝部は、圧力面側湾曲板部の一端部と延在部の前端部とを溶接して湾曲板部を形成する際に、上記前端部の端面を一部として、その形状が形成されるようになっている。上記溝部は、延在部の前縁側に位置する前端部の端面により一部が画定されるため、端面に付着した液体が延在部の圧力面に向かって流れるのを効果的に防止することができる。
【0031】
(12)本発明の少なくとも一実施形態にかかる蒸気タービンは、
上記(1)~(11)の何れかに記載の蒸気タービン静翼と、
上記蒸気タービン静翼を支持する環状部材と、
上記環状部材の内部に設けられるキャビティであって、上記翼本体部の上記水分除去流路および上記少なくとも一つの溝部の夫々から液体が送られるように構成されたキャビティと、を備える。
【0032】
上記(12)の構成によれば、蒸気タービンは、環状部材の内部に設けられるキャビティであって、翼本体部の水分除去流路および少なくとも一つの溝部の夫々から液体が送られるように構成されたキャビティを備えるので、スリットや溝部により翼面から除去された液体をキャビティに貯留することができる。スリットや溝部により翼面から除去された液体をキャビティに貯留することで、翼本体部のスリットや水分除去流路に液体が滞留し、スリットや溝部による翼面に付着した液体の除去効率が低下することを防止することができる。よって、上記蒸気タービンは、スリットや溝部により翼面に付着した液体を効果的に除去することができる。
【0033】
(13)本発明の少なくとも一実施形態にかかる蒸気タービン静翼の製造方法は、
圧力面および負圧面を含む翼面を有する翼本体部の上記翼面に開口して上記翼本体部の内部に設けられる水分除去流路と連通するとともに、上記翼本体部の基端部から先端部に向かう高さ方向に沿って延在する少なくとも一つのスリットを形成するスリット形成ステップと、
上記翼面に上記基端部から上記高さ方向に沿って延在する少なくとも一つの溝部であって、少なくとも一部が上記少なくとも一つのスリットに対して上記高さ方向に沿って重複している少なくとも一つの溝部を形成する溝部形成ステップと、を備える。
【0034】
上記(13)の方法によれば、蒸気タービン静翼の製造方法は、少なくとも一つのスリットを形成するスリット形成ステップと、少なくとも一つの溝部を形成する溝部形成ステップと、を備える。蒸気タービン静翼の製造方法により製造された蒸気タービン静翼は、静翼の表面である翼面にスリットと溝部が設けられており、スリットと溝部は、少なくとも一部が高さ方向に沿って重複している。よって、蒸気タービン静翼の製造方法により製造された蒸気タービン静翼は、翼面に付着する液体の除去効率を向上させることができるとともに、蒸気タービンの性能低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、蒸気タービンの性能低下を防止するとともに、静翼の表面に付着する液体の除去効率を向上させることができる蒸気タービン静翼、および該蒸気タービン静翼を備える蒸気タービンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼を備える蒸気タービンの軸方向に沿った概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼を備える蒸気タービンの軸方向に沿った概略部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
【
図4】比較例にかかる蒸気タービン静翼の軸方向に沿った概略図である。
【
図5】比較例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼および比較例にかかる蒸気タービン静翼のスリット幅と蒸気の吸引量との関係を説明するための説明図である。
【
図7】第1の変形例にかかる蒸気タービン静翼の軸方向に沿った概略図である。
【
図8】第2の変形例にかかる蒸気タービン静翼の軸方向に沿った概略図である。
【
図9】第2の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
【
図10】第3の変形例にかかる蒸気タービン静翼の軸方向に沿った概略図である。
【
図11】第3の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
【
図12】第4の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
【
図13】第5の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
【
図14】第6の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼の製造方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼を備える蒸気タービンの軸方向に沿った概略断面図である。
図1および後述する
図2~5、7~14に記載の矢印FSは、蒸気の流れる方向を概略的に示している。以下、蒸気タービン静翼を単に静翼と言うことがあり、蒸気タービン動翼を単に動翼と言うことがある。
図1に示されるように、蒸気タービン1は、軸線LAの回りに回転可能に構成されるロータ11と、ロータ11に機械的に連結される少なくとも一つの動翼12と、ロータ11及び動翼12を回転自在に収容する環状部材13と、動翼12に隙間を介して対向するように配置されるとともに、環状部材13に機械的に連結される少なくとも一つの静翼3と、を備える。ロータ11は、ベアリング14により回転可能に支持されている。
【0039】
環状部材13は、ロータ11との間に内側空間15を画定している。環状部材13や静翼3は、ロータ11や動翼12の回転に連動せずに静止している。静翼3は、環状部材13からロータ11に向かって内側空間15を横断するように、径方向(蒸気タービン1の軸線LAに直交する方向)に沿って延在している。動翼12は、ロータ11から環状部材13に向かって内側空間15を横断するように、径方向に沿って延在している。
【0040】
蒸気タービン1は、
図1に示されるように、環状部材13を支持するとともに、環状部材13を収容するケーシング16をさらに備える。ケーシング16は、内部に排気室17を画定している。また、ケーシング16は、内側空間15に蒸気を導入するための蒸気入口18と、蒸気を蒸気タービン1の外部に排出するための蒸気出口19と、が形成されている。
【0041】
図示される実施形態では、蒸気入口18は、
図1に示されるように、蒸気導入ライン20を介して、蒸気を発生させる蒸気発生装置21から排出された蒸気が流入可能に構成されている。蒸気発生装置21としては、ボイラなどが挙げられる。蒸気導入ライン20としては、蒸気入口18と蒸気発生装置21とを接続する蒸気供給管などが挙げられる。内側空間15には、蒸気発生装置21から排出されて、蒸気入口18を通過した蒸気が流入する。
【0042】
内側空間15に導入された蒸気は、主として軸方向(蒸気タービン1の軸線LAが延在する方向)に沿って流れる。以下、蒸気の流れ方向における上流側を単に上流側と言うことがあり、蒸気の流れ方向における下流側を単に下流側と言うことがある。
【0043】
蒸気タービン1は、内側空間15を軸方向に沿って流れる蒸気を作動流体とし、作動流体が有するエネルギーを、ロータ11の回転エネルギーに変換するように構成されている。図示される実施形態では、静翼3の翼列と動翼12の翼列との組み合わせを一段落としたときに、蒸気タービン1は、複数の段落を備えている。各段落の静翼3の夫々は、周方向に沿って所定の間隔をおいて配設されている。各段落の動翼12の夫々は、ロータ11の周方向に沿って所定の間隔をおいて配設されている。各段落の静翼3は、蒸気が該段落の静翼3間を通過する際に、蒸気を整流し、各段落の動翼12は、静翼3により整流された蒸気を受けて、蒸気から受ける力を回転力に変換し、ロータ11を回転させる。ロータ11の回転により、ロータ11に機械的に接続された不図示の発電機が駆動される。
【0044】
排気室17は、
図1に示されるように、内側空間15の下流側に位置している。内側空間15にて静翼3や動翼12を通過した蒸気は、蒸気の流れ方向の最も下流側に位置する動翼である最終段動翼12Aよりも、下流側に位置する排気室入口22から排気室17に流入し、排気室17を通った後に、上述した蒸気出口19から蒸気タービン1の外部に排出される。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼を備える蒸気タービンの軸方向に沿った概略部分拡大断面図である。
図3は、本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
静翼3は、
図2に示されるように、高さ方向(
図2中上下方向)に沿って延在する翼本体部4を含む。図示される実施形態では、翼本体部4は、高さ方向の一端に設けられる基端部41と、高さ方向の他端に設けられる先端部42と、を有している。基端部41は、上述した環状部材13に接続され、先端部42は、環状部材13よりも径が小さい環状のダイヤフラム23に接続されている。
【0046】
翼本体部4は、
図3に示されるように、前縁43と後縁44との間に延在する一面である圧力面45と、前縁43と後縁44との間に延在する他面である負圧面46と、を含む翼面47を有している。圧力面45は、凹状に湾曲する面を含み、負圧面46は、凸状に湾曲する面を含んでいる。
【0047】
静翼3は、内側空間15のうちの湿り蒸気流が流れる領域15Aに配置される。或る実施形態では、領域15Aは、蒸気タービン1の運転中に蒸気流の湿り度が5%以上の条件を満たす領域である。翼本体部4は、蒸気の流れ方向において、前縁43が上流側に後縁44が下流側に位置するように配置される。圧力面45は、蒸気を受けるように、蒸気の流れ方向に対して交差するように配置される。湿り蒸気流に含まれる水分は、翼面47(圧力面45および負圧面46)に水滴(液体)となって付着する。
【0048】
翼本体部4は、
図3に示されるように、その内部に水分除去流路5が形成されている。図示される実施形態では、翼本体部4は、水分除去流路5の周囲を取り囲む湾曲板部6を含む。水分除去流路5は、翼面47を有する湾曲板部6の翼面47とは反対に位置する内面61により画定される。なお、他の幾つかの実施形態では、中実状の翼本体部4に水分除去流路5を形成してもよい。
【0049】
水分除去流路5は、
図2に示されるように、基端部41に開口した基端側開口部51から高さ方向に沿って先端部42に向かって延在している。図示される実施形態では、水分除去流路5は、基端側開口部51から先端部42に開口した先端側開口部52までわたって延在している。
【0050】
静翼3は、
図3に示されるように、翼面47に開口して水分除去流路5と連通する少なくとも一つのスリット7と、翼面47に設けられる少なくとも一つの溝部8と、を備える。少なくとも一つの溝部8は、水分除去流路5に連通しないように構成されている。
図2に示されるように、少なくとも一つのスリット7は、翼本体部4の基端部41から先端部42に向かう高さ方向に沿って延在している。また、少なくとも一つの溝部8は、翼本体部4の基端部41から高さ方向に沿って延在しており、少なくとも一部が少なくとも一つのスリット7に対して高さ方向に沿って重複している。
【0051】
図2に示されるように、環状部材13の内部には、液体を貯留可能なキャビティ24が設けられている。キャビティ24は、翼本体部4の水分除去流路5および少なくとも一つの溝部8の夫々から液体Wが送られるように構成されている。図示される実施形態では、環状部材13の内部には、水分除去流路5とキャビティ24とを連通させる第1連通孔131と、溝部8とキャビティ24とを連通させる第2連通孔132と、キャビティ24と排気室17とを連通させる第3連通孔133と、が形成されている。蒸気タービン1の運転中に、排気室17は、キャビティ24よりも低圧になっており、キャビティ24は水分除去流路5よりも低圧になっている。そして、水分除去流路5は、領域15Aの翼面47に面する部分15Bよりも低圧になっている。
【0052】
翼面47のスリット7よりも前縁43側に付着した液体Wは、領域15Aの翼面47に面する部分15Bと水分除去流路5との間の差圧により、スリット7を介して水分除去流路5に吸引される。水分除去流路5に吸引された液体Wは、水分除去流路5とキャビティ24との間の差圧により、第1連通孔131を介してキャビティ24に吸引される。
【0053】
翼面47の溝部8よりも前縁43側に付着した液体Wは、領域15Aを流れる蒸気の流れに押されて、溝部8に入り込む。溝部8に入り込んだ液体Wは、溝部8とキャビティ24との間の差圧により、第2連通孔132を介してキャビティ24に吸引される。
【0054】
キャビティ24に貯留された液体Wは、キャビティ24と排気室17との間の差圧により、第3連通孔133を介して排気室17に排出される。他の幾つかの実施形態では、蒸気タービン1の外部に液体Wを排出してもよいし、例えば吸引ポンプなどの不図示の吸引装置により液体Wを吸引するように構成してもよい。
【0055】
図2に示される実施形態では、スリット7および溝部8の夫々は、高さ方向において中央よりも基端部41側に設けられる。他の幾つかの実施形態では、スリット7および溝部8の夫々は、高さ方向において中央よりも先端部42側まで延在してもよいし、高さ方向における全長にわたり延在してもよい。
【0056】
図3に示される実施形態では、スリット7および溝部8の夫々は、圧力面45における中央よりも後縁44側に設けられる。スリット7は、圧力面45に入口開口71が開口し、湾曲板部6の内面61に水分除去流路5の後縁側端部53に連通する出口開口72が開口している。溝部8は、スリット7よりも前縁43側に設けられる。
他の幾つかの実施形態では、スリット7および溝部8の夫々は、圧力面45における中央よりも前縁43側や、負圧面46に設けてもよいが、液体(水膜流)が集積するのは、圧力面45における後縁44側であるため、負圧面46よりも圧力面45が好ましく、圧力面45における後縁44に近くに設けることが好ましい。また、溝部8は、スリット7よりも後縁44側に設けてもよい。
【0057】
図4は、比較例にかかる蒸気タービン静翼の軸方向に沿った概略図である。
図5は、比較例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
比較例にかかる静翼30は、
図4、5に示されるように、圧力面45(翼面47)に溝部8の代わりに第2スリット70が設けられている点において、
図2、3に示されるような静翼3と異なるものである。
図5に示されるように、第2スリット70は、スリット7と同様に、水分除去流路5に連通している。スリット7は、第2スリット70よりも後縁44側に設けられており、第2スリット70よりも低圧になっている。この場合には、第2スリット70により翼面47に付着された液体Wが水分除去流路5に吸引されるが、スリット7と第2スリット70との間の差圧により、水分除去流路5に吸引された液体Wが、スリット7から噴出する(逆流する)虞がある。
【0058】
図6は、本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼および比較例にかかる蒸気タービン静翼のスリット幅と蒸気の吸引量との関係を説明するための説明図である。
図6では、スリット7や第2スリット70のスリット幅を横軸とし、スリット7や第2スリット70を介して、静翼3の外部から水分除去流路5に吸引される蒸気の吸引量を縦軸としている。
図6に示されるように、スリット幅を大きくすると、水分除去流路5に吸引される蒸気の吸引量が増大する。また、一つのスリット7が水分除去流路5に連通する静翼3は、二つのスリット(スリット7および第2スリット70)が水分除去流路5に連通する静翼30に比べて、任意のスリット幅に対応する蒸気の吸引量が小さくなっている。つまり、静翼3は、静翼30に比べて、水分除去流路5に吸引される蒸気の吸引量を低減することができる。水分除去流路5に吸引される蒸気の吸引量を低減することで、動翼12を回転させる駆動蒸気の量の低減を防止することができるため、蒸気タービン1の性能低下を防止することができる。
【0059】
上述したように、幾つかの実施形態にかかる静翼3は、例えば
図2、3に示されるように、上述した翼本体部4と、上述した水分除去流路5と、上述した少なくとも一つのスリット7と、少なくとも一部が少なくとも一つのスリット7に対して高さ方向に沿って重複している上述した少なくとも一つの溝部8と、を備える。
図示される実施形態では、
図2に示されるように、少なくとも一つのスリット7は、高さ方向に沿って延在している単一のスリット7Aを含む。少なくとも一つの溝部8は、その横断面形状がU字状に形成されており、基端部41に開口した開口端部81を有している。
【0060】
上記の構成によれば、静翼3は、静翼3の表面である翼面47にスリット7と溝部8が設けられており、スリット7と溝部8は、少なくとも一部が高さ方向に沿って重複している。このため、スリット7と溝部8のうちの、翼面47の上流側(前縁43側)に設けられたもの(上流側排水部)により、翼面47に集積した液体Wを除去することができる。また、スリット7と溝部8のうちの、翼面47の下流側(後縁44側)に設けられたもの(下流側排水部)により、翼面47の上記上流側排水部よりも下流側に集積した液体Wを除去することができる。つまり、静翼3は、溝部8および該溝部8よりも液体Wの除去効率の高いスリット7により、翼面47に付着した液体Wを除去することができるので、翼面47に付着する液体Wの除去効率を向上させることができる。
【0061】
また、静翼3は、上記上流側排水部又は上記下流側排水部の一方が、水分除去流路5に連通しない溝部8であるため、比較例にかかる静翼30のような、翼面47に高さ方向に沿って重複している二つのスリット(スリット7、第2スリット70)を設ける構成に比べて、スリットを通って水分除去流路5に漏洩する駆動蒸気の量を少なくすることができる。また、静翼3は、比較例にかかる静翼30のような、翼面47に高さ方向に沿って重複している二つのスリットを設ける構成とは異なり、スリット7を介して水分除去流路5から液体Wが逆流する虞がないので、スリット幅を広げてスリット7の吸引圧を向上させる必要がない。スリット7の吸引圧を抑えることで、スリット7を通って水分除去流路5に漏洩する駆動蒸気の量をさらに少なくすることができる。よって、静翼3は、スリット7を通って水分除去流路5に漏洩する駆動蒸気の量を少なくすることができるので、蒸気タービン1の性能低下を防止することができる。
【0062】
幾つかの実施形態では、例えば
図2に示されるように、上述した少なくとも一つの溝部8は、先端部42から基端部41に向かって後縁44側に傾斜するように構成されている。この場合には、少なくとも一つの溝部8は、先端部42から基端部41に向かって後縁44側に傾斜するように構成されているので、溝部8に貯留する液体Wは、蒸気流が流れる領域15A(蒸気タービン1内)を流れる蒸気の流れに押されて、液体Wの排出側である基端部41側に向かって流される。よって、上記溝部8は、溝部8に貯留する液体の除去効率を向上させることができる。
【0063】
図7は、第1の変形例にかかる蒸気タービン静翼の軸方向に沿った概略図である。
図8は、第2の変形例にかかる蒸気タービン静翼の軸方向に沿った概略図である。
図9は、第2の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
幾つかの実施形態では、例えば
図7、8に示されるように、少なくとも一つのスリット7は、高さ方向において互いに離隔して設けられた複数のスリット7Bを含む。図示される実施形態では、複数のスリット7Bの夫々は、高さ方向に沿って直列に配置され、高さ方向に沿って延在している。
【0064】
上記の構成によれば、複数のスリット7Bの夫々は、高さ方向において互いに離隔して設けられているので、仮に単一のスリット7Aが高さ方向に沿って延在している場合に比べて、静翼3のスリット7近傍の強度を向上させることができる。静翼3のスリット7近傍の強度を向上させることで、静翼3の厚さを薄くすることができるため、静翼3の製造コストを低減することができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、上述した静翼3は、例えば
図8、9に示されるように、翼面47に設けられる凹部9であって、複数のスリット7Bの夫々が開口する凹部9を備える。図示される実施形態では、凹部9は、翼本体部4の基端部41から高さ方向に沿って延在しており、少なくとも一部が少なくとも一つの溝部8に対して高さ方向に沿って重複している。凹部9は、その横断面形状がU字状に形成されており、基端部41に開口した開口端部91を有している。複数のスリット7Bの夫々は、凹部9の底部に入口開口71が開口している。
【0066】
図8に示される実施形態では、凹部9は、高さ方向において中央よりも基端部41側に設けられる。他の幾つかの実施形態では、凹部9は、高さ方向において中央よりも先端部42側まで延在してもよいし、高さ方向における全長にわたり延在してもよい。
【0067】
上記の構成によれば、互いに離隔して設けられた複数のスリット7Bの夫々は、翼面47に設けられる凹部9に開口しているので、翼面47に付着した液体Wは、領域15Aを流れる蒸気の流れに押されて、凹部9に入り込み、凹部9に貯留される。このため、凹部9を備える静翼3は、翼面47に付着した液体Wがスリット7B同士の間を通り、翼面47のスリット7Bよりも下流側に流れることを防止することができる。よって、凹部9を備える静翼3は、翼面47に付着する液体Wの除去効率を向上させることができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、
図8に示されるように、上述した凹部9は、先端部42から基端部41に向かって後縁44側に傾斜するように構成されている。この場合には、凹部9は、先端部42から基端部41に向かって後縁44側に傾斜するように構成されているので、凹部9に貯留する液体Wは、蒸気流が流れる領域15A(蒸気タービン1内)を流れる蒸気の流れに押されて、液体Wの排出側である基端部41側に向かって流される。基端部41側に向かって流れた液体Wは、基端部41側に位置するスリット7Bを通過したり、基端部41に開口した開口端部91から排出されたりして、キャビティ24に送られる。よって、上記凹部9は、凹部9に貯留する液体Wの除去効率を向上させることができる。
【0069】
図10は、第3の変形例にかかる蒸気タービン静翼の軸方向に沿った概略図である。
図11は、第3の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
図12は、第4の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
図13は、第5の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
図14は、第6の変形例にかかる蒸気タービン静翼の高さ方向に直交する方向に沿った概略断面図である。
幾つかの実施形態では、
図10~13に示されるように、上述したスリット7は、上述した溝部8よりも前縁43側に設けられる。この場合には、スリット7が翼面47から除去することができなかった液体Wや、スリット7よりも翼面47の後縁44側に付着した液体Wを、スリット7よりも翼面47の後縁44側に設けられた溝部8により除去することができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、
図2、3、7~9、14に示されるように、上述したスリット7は、上述した溝部8よりも後縁44側に設けられる。この場合には、溝部8が翼面47から除去することができなかった液体Wや、溝部8よりも翼面47の後縁44側に付着した液体Wを、溝部8よりも翼面47の後縁44側に設けられたスリット7により除去することができる。溝部8は、スリット7へ到達する液体Wの量を低減させることができ、スリット7は、溝部8よりも翼面47に付着した液体Wの除去効率が高いので、スリット7に到達した液体Wを除去することができる。よって、上記の構成によれば、スリット7を溝部8よりも後縁44側に設けることにより、翼面47に付着した液体Wを効果的に除去することができる。
【0071】
幾つかの実施形態では、
図3、9、11~14に示されるように、上述した翼本体部4は、水分除去流路5の周囲を取り囲む上述した湾曲板部6であって、厚みTの最大値と最小値との差分が厚みTの平均値に対して40%以内となるように構成された湾曲板部6を含む。この場合には、湾曲板部6の厚みTを均等にすることで、湾曲板部6を構成する材料の無駄な消費を抑えて湾曲板部6の材料費を低減することができるので、静翼3の製造コストを低減することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、上述した湾曲板部6を含む翼本体部4は、少なくとも一枚の板金を板金加工することにより、その形状が形成される板金部品である。この場合には、一枚又は複数枚の板金(例えば圧延などにより薄く平らな形状に形成された金属板材)を板金加工(切断加工、曲げ加工、溶接など)することにより、湾曲板部6を含む翼本体部4を形成することができるため、翼本体部4の材料費や加工費を低減することができる。よって、上記の構成によれば、翼本体部4の材料費や加工費を低減することができるので、静翼3の製造コストを低減することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、
図10~14に示されるように、上述した湾曲板部6は、上述した圧力面45の少なくとも一部を含む面621を有する圧力面側湾曲板部62と、上述した負圧面46の少なくとも一部を含む面631を有する負圧面側湾曲板部63と、を含む。上述した少なくとも一つのスリット7又は上述した少なくとも一つの溝部8のうちの一方は、圧力面側湾曲板部62の一端部622と負圧面側湾曲板部63の一端部632とを溶接により接合した接合部WPを含むように構成された。
【0074】
図示される実施形態では、
図10~14に示されるように、圧力面側湾曲板部62と負圧面側湾曲板部63は、一枚の板金を前縁43が形成されるようにV字状に折り曲げることにより、各々の形状が形成されている。その後、圧力面側湾曲板部62の一端部622(後端部)と負圧面側湾曲板部63の一端部632(後端部)とを溶接により接合することにより、上述した湾曲板部6と、スリット7又は溝部8のうちの一方と、が形成されている。なお、他の幾つかの実施形態では、湾曲板部6は、複数枚の板金を溶接により接合することにより、その形状が形成されるようにしてもよい。
【0075】
上記の構成によれば、スリット7又は溝部8のうちの一方は、圧力面側湾曲板部62の一端部622と負圧面側湾曲板部63の一端部632とを溶接により接合した接合部WPを含む。つまり、スリット7又は溝部8のうちの一方は、圧力面側湾曲板部62の一端部622と負圧面側湾曲板部63の一端部632とを溶接して湾曲板部6を形成する際に、その形状が形成されるようになっている。上記の構成によれば、スリット7又は溝部8のうちの一方を形成するために、別途、切削などの加工を必要としないため、加工費を低減することができ、ひいては静翼3の製造コストを低減することができる。また、上記の構成によれば、切削などの加工を行わずに、スリット7又は溝部8のうちの一方を形成することができるため、スリット7又は溝部8のうちの一方の近傍の強度の低下を防止することができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、
図10~12に示されるように、上述した翼本体部4は、圧力面側湾曲板部62と負圧面側湾曲板部63とを含む上述した湾曲板部6と、上述した接合部WPよりも後縁44側に設けられる後縁部64と、を含む。後縁部64は、後縁44に連なる後縁側圧力面642と、後縁側圧力面642の前端部643から後縁側圧力面642に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面644と、を有している。上述した少なくとも一つの溝部8は、上述した接合部WPを含むとともに、後縁側壁面644により一部が画定される。
【0077】
図10、11に示される実施形態では、後縁部64は、負圧面側湾曲板部63の一端部632に一体的に設けられており、後縁部64の後縁側負圧面641は、負圧面側湾曲板部63の面631に緩やかに連なる。後縁部64は、負圧面側湾曲板部63を構成する板金により構成されており、板金加工によりその形状が形成されている。溝部8は、圧力面側湾曲板部62の一端部622の端面623と、後縁側壁面644と、端面623と後縁側壁面644の負圧面46側端部同士を繋ぐ底面645と、によりU字状の横断面形状が画定される。上述した接合部WPは、端面623と底面645との間を接合している。スリット7(例えば7B)は、溝部8よりも前縁43側に位置する圧力面側湾曲板部62に設けられている。
【0078】
図10、11に示される実施形態では、翼本体部4の高さ方向における溝部8が延在しない部分では、上述した端面623よりも後縁44側に突出した突端面624と、後縁側壁面644と、が溶接により接合されている。
【0079】
図12に示される実施形態では、後縁部64は、負圧面側湾曲板部63の一端部632に一体的に設けられており、後縁部64の後縁側負圧面641は、負圧面側湾曲板部63の面631に緩やかに連なる。後縁部64は、負圧面側湾曲板部63を構成する板金により構成されており、板金加工によりその形状が形成されている。圧力面側湾曲板部62の一端部622には、圧力面45側縁部が負圧面46側縁部よりも後縁44側に傾斜した傾斜面625が形成されている。上記傾斜面625が負圧面側湾曲板部63の一端部632の内面633に当接した状態で、溶接により接合されている。溝部8は、後縁側壁面644と、後縁側壁面644の負圧面側端部646から後縁側壁面644に交差する方向に沿って延在する底面645と、圧力面側湾曲板部62の面621のうちの一端部622近傍の面621Aと、により画定される。上記面621Aは、底面645に緩やかに連なる。上述した接合部WPは、面621Aと底面645との間を接合している。スリット7は、溝部8よりも前縁43側に位置する圧力面側湾曲板部62に設けられている。
【0080】
図12に示される実施形態では、後縁側圧力面642は、圧力面側湾曲板部62の面621よりも周方向に隣接する静翼3の負圧面46側に突出するように設けられており、上記負圧面46との間の間隔が狭くなっている。ここで、静翼3は、その後縁44と、周方向に隣接する静翼3の負圧面46と、の間がスロート部THとなり、上記スロート部THにおいて、静翼3間の間隔が最小となるように構成されている。スロート部THよりも上流側は、蒸気の流速が遅いため、圧力損失が少ない。このため、上述した後縁側圧力面642は、蒸気の流れを阻害するものではない。
【0081】
上記の構成によれば、少なくとも一つの溝部8は、接合部WPを含むとともに、後縁側壁面644により一部が画定される。つまり、溝部8は、湾曲板部6を溶接により形成する際に、後縁部64の後縁側壁面644を一部として、その形状が形成されるようになっている。上記溝部8は、後縁側圧力面642に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面644により一部が画定されるため、翼面47に付着した液体Wが後縁側壁面644から後縁側圧力面642に向かって流れるのを効果的に防止することができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、
図13に示されるように、上述した翼本体部4は、圧力面側湾曲板部62と負圧面側湾曲板部63とを含む上述した湾曲板部6と、上述した接合部WPよりも後縁44側に設けられる後縁部64と、を含む。後縁部64は、後縁44に連なる後縁側圧力面642と、後縁側圧力面642の前端部643から後縁側圧力面642に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面644と、を有している。上述した少なくとも一つのスリット7は、上述した接合部WPを含むとともに、後縁側壁面644により一部が画定される。
【0083】
図13に示される実施形態では、後縁部64は、負圧面側湾曲板部63の一端部632に一体的に設けられている。後縁部64の後縁側負圧面641は、負圧面側湾曲板部63の面631に緩やかに連なる。また、後縁側壁面644は、内面61に連なる。後縁部64は、負圧面側湾曲板部63を構成する板金により構成されており、板金加工によりその形状が形成されている。上述した一端部632は、後縁部64を含んでいてもよい。後縁部64は、前縁43側に向かうに連れて徐々に厚さが厚くなるように構成された厚肉部64Aを含んでいる。
【0084】
スリット7は、圧力面側湾曲板部62の一端部622の端面623と、後縁側壁面644と、端面623と後縁側壁面644との間を接合する接合部WPにより、その形状が画定される。溝部8は、スリット7よりも後縁44側に位置する厚肉部64A(後縁部64)の後縁側圧力面642に設けられており、U字状の横断面形状を有している。このように溝部8をスリット7よりも後縁44側に位置する後縁部64に設けることにより、溝部8をスリット7よりも前縁43側に位置する圧力面側湾曲板部62に設ける場合に比べて、翼面47に付着した液体の除去効率を向上させることができる。また、溝部8を後縁部64に形成する加工は、溝部8を圧力面側湾曲板部62に形成する加工よりも容易に行うことができる。また、溝部8を圧力面側湾曲板部62に設けない構成にすることで、圧力面側湾曲板部62(湾曲板部6)の厚さを薄くすることができる。
【0085】
また、後縁側壁面644における接合部WPを前端部643から負圧面46側に向かって離れた部分644Aにすることで、後縁側壁面644における上記部分644Aよりも前端部643側の部分644Bと、圧力面側湾曲板部62の面621と、により、上述した凹部9を形成することができる。つまり、凹部9は、湾曲板部6を溶接により形成する際に、後縁部64の後縁側壁面644を一部として、その形状が形成されるようになっている。
【0086】
上記の構成によれば、少なくとも一つのスリット7は、接合部WPを含むとともに、後縁側壁面644により一部が画定される。つまり、スリット7は、湾曲板部6を溶接により形成する際に、後縁部64の後縁側壁面644を一部として、その形状が形成されるようになっている。上記スリット7は、後縁側圧力面642に交差する方向に沿って延在する後縁側壁面644により一部が画定されるため、翼面47に付着した液体Wは、後縁側壁面644にてスリット7により翼面47から除去される。よって、上記の構成によれば、翼面47に付着した液体Wが後縁側壁面644から後縁側圧力面642に向かって流れるのを効果的に防止することができる。
【0087】
幾つかの実施形態では、
図14に示されるように、上述した翼本体部4は、圧力面側湾曲板部62と負圧面側湾曲板部63とを含む上述した湾曲板部6を含む。上述した負圧面側湾曲板部63は、後縁44から前縁43に向かって延在する延在部65であって、圧力面45の少なくとも一部を含む面651を有する延在部65を含み、負圧面側湾曲板部63の一端部632は、延在部65の前縁43側に位置する前端部652を含む。上述した少なくとも一つの溝部8は、上述した接合部WPを含むとともに、延在部65の前端部652の端面653により一部が画定される。
【0088】
図14に示される実施形態では、負圧面側湾曲板部63と延在部65は、一枚の板金を後縁44が形成されるようにV字状に折り曲げることにより、各々の形状が形成されている。前端部652の端面653は、圧力面側湾曲板部62の面621および面651の夫々に対して交差する方向に沿って延在しており、面621と面651とを繋ぐ段差面となっている。溝部8は、端面653と、圧力面側湾曲板部62の面621のうちの一端部622近傍の面621Aと、により画定される。上述した接合部WPは、端面653と面621Aとの間を接合している。スリット7は、溝部8よりも後縁44側に位置する延在部65に設けられており、入口開口71は、面651に開口している。
【0089】
上記の構成によれば、少なくとも一つの溝部8は、接合部WPを含むとともに、延在部65の前端部652の端面653により一部が画定される。つまり、溝部8は、圧力面側湾曲板部62の一端部622と延在部65の前端部652とを溶接して湾曲板部6を形成する際に、前端部652の端面653を一部として、その形状が形成されるようになっている。上記溝部8は、延在部65の前縁43側に位置する前端部652の端面653により一部が画定されるため、端面653に付着した液体Wが延在部65の面651(圧力面)に向かって流れるのを効果的に防止することができる。
【0090】
幾つかの実施形態にかかる蒸気タービン1は、
図2に示されるように、上述した静翼3と、静翼3を支持する上述した環状部材13と、環状部材13の内部に設けられる上述したキャビティ24であって、翼本体部4の水分除去流路5および少なくとも一つの溝部8の夫々から液体Wが送られるように構成された上述したキャビティ24と、を備える。
【0091】
上記の構成によれば、蒸気タービン1は、環状部材13の内部に設けられるキャビティ24であって、翼本体部4の水分除去流路5および少なくとも一つの溝部8の夫々から液体が送られるように構成されたキャビティ24を備えるので、スリット7や溝部8により翼面47から除去された液体Wをキャビティ24に貯留することができる。スリット7や溝部8により翼面47から除去された液体Wをキャビティ24に貯留することで、翼本体部4のスリット7や水分除去流路5に液体Wが滞留し、スリット7や溝部8による翼面47に付着した液体Wの除去効率が低下することを防止することができる。よって、上記蒸気タービン1は、スリット7や溝部8により翼面47に付着した液体Wを効果的に除去することができる。
【0092】
図15は、本発明の一実施形態にかかる蒸気タービン静翼の製造方法の一例を示すフロー図である。
幾つかの実施形態にかかる蒸気タービン静翼の製造方法100は、
図15に示されるように、上述した少なくとも一つのスリット7を形成するスリット形成ステップS102と、上述した少なくとも一つの溝部8を形成する溝部形成ステップS103と、を備える。図示される実施形態では、蒸気タービン静翼の製造方法100は、
図15に示されるように、上述した湾曲板部6を形成する湾曲板部形成ステップS101をさらに備える。湾曲板部形成ステップS101にて、一枚又は複数枚の板金から板金加工により上述した湾曲板部6が形成される。
【0093】
スリット形成ステップS102にて、圧力面45および負圧面46を含む翼面47を有する翼本体部4の翼面47に開口して翼本体部4の内部に設けられる水分除去流路5と連通するとともに、翼本体部4の基端部41から先端部42に向かう高さ方向に沿って延在する少なくとも一つのスリット7(7A、7B)が形成される。
溝部形成ステップS103にて、翼面47に基端部41から高さ方向に沿って延在する少なくとも一つの溝部8であって、少なくとも一部が少なくとも一つのスリット7に対して高さ方向に沿って重複している少なくとも一つの溝部8が形成される。
スリット7や溝部8の夫々は、切削加工により形成してもよいし、上述したように湾曲板部6を形成する際に、その形状が形成されてもよい。
【0094】
上記の方法によれば、蒸気タービン静翼の製造方法100は、少なくとも一つのスリット7を形成するスリット形成ステップS102と、少なくとも一つの溝部8を形成する溝部形成ステップS103と、を備える。蒸気タービン静翼の製造方法100により製造された静翼3は、静翼3の表面である翼面47にスリット7と溝部8が設けられており、スリット7と溝部8は、少なくとも一部が高さ方向に沿って重複している。よって、蒸気タービン静翼の製造方法100により製造された静翼3は、翼面47に付着する液体Wの除去効率を向上させることができるとともに、蒸気タービン1の性能低下を防止することができる。
【0095】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0096】
1 蒸気タービン
3 静翼
30 比較例にかかる静翼
4 翼本体部
41 基端部
42 先端部
43 前縁
44 後縁
45 圧力面
46 負圧面
47 翼面
5 水分除去流路
51 基端側開口部
52 先端側開口部
53 後縁側端部
6 湾曲板部
61 内面
62 圧力面側湾曲板部
63 負圧面側湾曲板部
64 後縁部
64A 厚肉部
65 延在部
7,7A,7B スリット
70 第2スリット
71 入口開口
72 出口開口
8 溝部
81 開口端部
9 凹部
91 開口端部
11 ロータ
12 動翼
12A 最終段動翼
13 環状部材
131 第1連通孔
132 第2連通孔
133 第3連通孔
14 ベアリング
15 内側空間
15A 領域
15B 部分
16 ケーシング
17 排気室
18 蒸気入口
19 蒸気出口
20 蒸気導入ライン
21 蒸気発生装置
22 排気室入口
23 ダイヤフラム
24 キャビティ
100 静翼の製造方法
LA 軸線
S101 湾曲板部形成ステップ
S102 スリット形成ステップ
S103 溝部形成ステップ
T 厚み
TH スロート部
W 液体
WP 接合部