(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】複合材構造体におけるホールを封止するためのロックホールプラグ
(51)【国際特許分類】
F16J 13/12 20060101AFI20231107BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
F16J13/12 Z
B64C1/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019131550
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-06-24
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】メリッサ エイチ.ルイス
(72)【発明者】
【氏名】アルネ ケー.ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク エー.バートランド
(72)【発明者】
【氏名】プラディープ クリシュナスワミ
(72)【発明者】
【氏名】バリス ユクセロル
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183695(JP,A)
【文献】特表2009-503410(JP,A)
【文献】特開2014-114851(JP,A)
【文献】特開2012-225508(JP,A)
【文献】実開平06-082467(JP,U)
【文献】特開2013-146909(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1453214(KR,B1)
【文献】独国特許出願公開第102017127719(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 13/12
B64C 1/00
F16B 37/04
B23P 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合樹脂アセンブリにおいて再加工又は修理を受ける領域に形成された穴に挿入して、当該穴を封止するためのホールプラグであって、フランジと、ベベルと、シャンクと、複数の隆起部と、を含み、
前記フランジは、第1直径を有するとともに、前記ホールプラグの第1端に設けられており、
前記ベベルは、前記フランジから延びるとともに、前記フランジと角度をなして交差しており、
前記シャンクは、前記ベベルから延びるとともに、前記フランジから離れて、前記ホールプラグにおいて前記第1端とは反対側の第2端へと延びており、
前記シャンクは、前記穴に挿入するために、前記第1直径よりも小さい第2直径を有するとともに、接着剤を保持するために、前記シャンクの外面の周りに配向形成された複数の縦溝を含み、
前記複数の隆起部は、前記シャンクの前記外面に設けられるとともに、前記シャンクの外面から延びており、且つ、前記複数の縦溝の間に配置されており、
前記複数の隆起部の各々は、半径を含み、
前記ホールプラグの縦軸に平行な各半径の接線は、前記第1直径の範囲内で前記フランジと交差している、ホールプラグ。
【請求項2】
隣接する各2つの縦溝の間には1つの隆起部のみが形成されており、前記穴に前記シャンクを完全に挿入した場合に、前記フランジは前記複合樹脂アセンブリの一方の面に位置する一方、前記各隆起部は前記複合樹脂アセンブリにおける前記一方の面とは反対の面の外側に位置する、請求項1に記載のホールプラグ。
【請求項3】
前記シャンクにより画定される周回ノッチをさらに含み、前記周回ノッチは、前記複数の縦溝と前記フランジとの間に配置されている、請求項1又は2に記載のホールプラグ。
【請求項4】
前記複数の隆起部の各々は、前記ホールプラグの縦軸に平行な第1高さを有しており、
前記複数の縦溝の各々は、前記ホールプラグの前記縦軸に平行であって、且つ、前記第1高さよりも高い第2高さを有しており、
前記複数の縦溝は、前記複数の隆起部よりも、前記ホールプラグの前記第1端及び前記
第2端の近くに配置されている、請求項1~3のいずれかに記載のホールプラグ。
【請求項5】
前記ホールプラグの前記第2端は、面取り面を含む、請求項1~4のいずれかに記載のホールプラグ。
【請求項6】
前記複数の縦溝は、前記面取り面内に延在している、請求項5に記載のホールプラグ。
【請求項7】
各隆起部が半径を規定することにより、前記複数の隆起部が複数の半径を規定しており、
各半径は、前記ホールプラグの縦軸に平行な接線を含み、各半径の各接線は、前記第1直径の範囲内で前記フランジと交差している、請求項1~6のいずれかに記載のホールプラグ。
【請求項8】
前記ホールプラグは、第1隆起部、前記シャンク、及び、前記第1隆起部の反対側の第2隆起部を通る第3直径を有し、
前記第3直径は、前記第1直径よりも小さく、且つ、前記第2直径よりも大きい、請求項1~7のいずれかに記載のホールプラグ。
【請求項9】
前記ホールプラグは、単一の材料から形成される、請求項1~8のいずれかに記載のホールプラグ。
【請求項10】
表面粗さを有しており、前記表面粗さの平均粗さ中心線「Ra」は、250ミクロン(μm)~400μmである、請求項1~9のいずれかに記載のホールプラグ。
【請求項11】
前記単一の材料は、マルエージング鋼である、請求項9に記載のホールプラグ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のホールプラグを用いて、複合積層材、及び、当該複合積層材を覆う外板を有する複合樹脂アセンブリの領域を再加工又は修理するための方法であって、
前記複合樹脂アセンブリの前記領域に穴を形成し、前記穴は、前記外板内に第1直径を有し、且つ、前記複合積層材内に第2直径を有し、前記第1直径は、前記第2直径よりも大きく、
ホールプラグのシャンクに形成された複数の溝に接着剤を塗布し、
前記ホールプラグを前記
穴に完全に挿入して前記外板に埋め込み、
前記接着剤を硬化させ、
前記接着剤の硬化後、前記領域の再加工を完了する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料で形成される複合材構造体の分野に関し、特に、複合材構造体の再加工及び修理に関する。
【背景技術】
【0002】
複合繊維強化ポリマーなどの複合材料は、他の材料と比較して、重量、強度、剛性、複雑な輪郭形状への成形性等の利点を有するため、様々な産業で一般に使用されている。航空宇宙産業においては、複合繊維強化ポリマー(ここでは、簡易化のためにまとめて「炭素複合材」と呼ぶ)は、胴体、翼、尾翼などの、様々な航空機用構造体、又は、構造体の一部を形成するために、一般に使用される。炭素複合材は、樹脂接着剤、マトリクス、又は、バインダを用いて積層された炭素繊維シートの複数の層を含みうる。炭素複合材を含む炭素繊維アセンブリを完成させるために、ファスナを用いて、外側シェル又は外板パネル(すなわち、外板)を、金属製ストリンガ及びリブを含みうる内側フレームに取り付ける場合がある。
【0003】
炭素複合材は、強度及び耐久性に優れているが、疲労や損傷などがみられる部位や領域に対しては、再加工及び/又は修理が必要になる場合がある。再加工が行われる領域は、例えば、他の物体との物理的接触、段階的な摩耗、材料における欠陥や製造上の欠陥、風による損傷、落雷、化学的損傷、疲労、又は、他の原因によって生じうる。他の場合においては、上記領域は、例えば、複合材層を支持する追加のフレームワークの取り付けなどの、構造体の再加工により生じる場合がある。この領域は、外板に対する表面損傷のみを含む場合もあれば、炭素複合材にまで広がっている場合もある。
【0004】
場合によっては、周囲の構造に応じて複合樹脂を再加工又は修理することがあるが、これは、損傷領域を除去し、硬化剤と共にファイバパッチとエポキシ樹脂を付着させ、樹脂を硬化させてから、当該ファイバパッチ及びその周りの領域のサンディング及び仕上げを行うことによって達成される。一般に、樹脂の硬化中、ファイバパッチに対して真空力を加えることにより、ファイバパッチを構成する複数のファイバ層を圧縮して、積層されたこれらの層の内部及び層の間から空気及び揮発性ガスを除去するとともに、余分な樹脂を除去することができる。
【0005】
複合材構造体を修理するために改良された構造体、方法、及び、キットは、当該技術に貢献するものとなるであろう。
【発明の概要】
【0006】
以下に、本開示の1つ以上の実施形態におけるいくつかの態様についての基本的な理解を目的として、本開示の概要を説明する。本概要は、本開示の包括的な概説ではなく、或いは、本開示において不可欠な要素又は重要な要素を特定するものでもなく、本開示の範囲を規定するものでもない。むしろ、その主な目的は、後に提示される詳細な説明の前置きとして、本開示の1つ以上の概念を簡略化した形で提示することである。
【0007】
本開示の実施形態においては、ホールプラグは、フランジと、ベベルと、シャンクと、を含み、前記フランジは、第1直径を有するとともに、前記ホールプラグの第1端に設けられており、前記ベベルは、前記フランジから延びるとともに、前記フランジと角度をなして交わっており、前記シャンクは、前記ベベルから延びるとともに、前記フランジから離れて、前記ホールプラグにおいて前記第1端とは反対側の第2端へと延びており、前記シャンクは、前記第1直径よりも小さい第2直径と、前記シャンクに形成されるとともに前記シャンクの外面の周りに配向された複数の縦溝と、を含む。前記ホールプラグは、複数の隆起部をさらに含み、前記複数の隆起部は、前記シャンクの前記外面に設けられるとともに、前記シャンクの外面から延びており、且つ、前記複数の縦溝の間に配置されている。
【0008】
任意ではあるが、前記複数の隆起部の各々は、半径を含み、前記ホールプラグの縦軸に平行な各半径の接線は、前記第1直径の範囲内で前記フランジと交わっている。前記ホールプラグは、前記シャンクにより画定される周回ノッチをさらに含んでもよく、前記周回ノッチは、前記複数の縦溝と前記フランジとの間に配置されている。前記複数の隆起部の各々は、前記ホールプラグの縦軸に平行な第1高さを有しうる。前記複数の縦溝の各々は、前記ホールプラグの前記縦軸に平行であって、且つ、前記第1高さよりも高い第2高さを有しており、前記複数の縦溝は、前記複数の隆起部よりも、前記ホールプラグの前記第1端及び前記第2端の近くに配置されていてもよい。前記ホールプラグの前記第2端は、面取り面を含んでもよく、前記複数の縦溝は、前記面取り面内に延在していてもよい。
【0009】
さらに、各隆起部が半径を規定することにより、前記複数の隆起部が複数の半径を規定するようにしてもよい。各半径は、前記ホールプラグの縦軸に平行な接線を含んでもよく、各半径の各接線は、前記第1直径の範囲内で前記フランジと交わっていてもよい。
【0010】
一実施形態においては、前記ホールプラグは、第1隆起部、前記シャンク、及び、前記第1隆起部の反対側の第2隆起部を通る第3直径を有してもよく、前記第3直径は、前記第1直径よりも小さく、且つ、前記第2直径よりも大きくてもよい。前記ホールプラグは、単一の材料から形成されてもよく、前記単一の材料は、マルエージング鋼であってもよい。前記ホールプラグは、表面粗さを有していてもよく、前記表面粗さの平均粗さ中心線「Ra」は、250ミクロン(μm)~400μmである。
【0011】
本開示の他の実施形態においては、複合繊維アセンブリは、複合積層材と、前記複合積層材を覆う外板と、を含み、前記複合積層材及び前記外板は、これらを貫通する穴を有しており、前記外板を貫通する前記穴の第1直径は、前記複合積層材を貫通する前記穴の第2直径よりも大きい。前記複合繊維アセンブリは、前記穴内に配置されたホールプラグをさらに含み、前記ホールプラグは、フランジと、ベベルと、シャンクと、を含み、前記フランジは、第3直径を有するとともに、前記ホールプラグの第1端に設けられており、前記ベベルは、前記フランジから延びるとともに、前記フランジと角度をなして交わっており、前記シャンクは、前記ベベルから延びるとともに、前記フランジから離れて、前記ホールプラグにおいて前記第1端とは反対側の第2端へと延びている。前記シャンクは、前記第3直径よりも小さい第4直径と、前記シャンクに形成されるとともに前記シャンクの外面の周りに配向された複数の縦溝と、を含む。前記ホールプラグは、複数の隆起部をさらに含み、前記複数の隆起部は、前記シャンクの前記外面に設けられるとともに、前記シャンクの外面から延びており、且つ、前記複数の縦溝の間に配置されており、前記複合積層材は、前記フランジと前記複数の隆起部との間で前記ホールプラグに物理的に接触している。
【0012】
任意ではあるが、前記複数の隆起部の各々は、半径を含み、前記ホールプラグの縦軸に平行な各半径の接線は、前記第3直径の範囲内で前記フランジと交わっている。前記ホールプラグは、前記シャンクにより画定される周回ノッチをさらに含んでもよく、前記周回ノッチは、前記複数の縦溝と前記フランジとの間に配置されている。前記複数の隆起部は、前記ホールプラグの縦軸に平行な第1高さを有していてもよく、前記複数の縦溝の各々は、前記ホールプラグの前記縦軸に平行であって、且つ、前記第1高さよりも高い第2高さを有していてもよく、前記複数の縦溝は、前記複数の隆起部よりも、前記ホールプラグの前記第1端及び前記第2端の近くに配置されてもよい。前記ホールプラグは、前記第2端において面取り面をさらに含んでもよく、前記複数の縦溝は、前記面取り面内に延在している。
【0013】
本開示の他の実施形態は、複合積層材、及び、当該複合積層材を覆う外板を有する複合樹脂アセンブリの領域を再加工するための方法を含む。前記方法においては、前記複合樹脂アセンブリの前記領域に穴を形成し、前記穴は、前記外板内に第1直径を有し、且つ、前記複合積層材内に第2直径を有し、前記第1直径は、前記第2直径よりも大きく、ホールプラグのシャンクに形成された複数の溝に接着剤を塗布し、前記ホールプラグを前記ホールに完全に挿入して前記外板に埋め込み、前記接着剤を硬化させ、前記接着剤の硬化後、前記領域の再加工を完了する。任意ではあるが、前記領域の再加工の完了は、前記接着剤の硬化後に前記領域に真空バッグを取り付けることと、前記領域及び前記ホールプラグに真空力を加えることと、を含みうる。前記領域に対して前記真空力を加えることにより、前記ホールプラグを覆う1つ以上の修理層をデバルクすることができる。前記方法は、前記複合積層材に勾配を形成することと、前記ホールプラグの前記シャンクから延びる隆起部が、前記勾配に保持された状態で、前記穴に前記ホールプラグを部分的に挿入することと、前記ホールプラグの前記シャンクを囲むノッチに前記接着剤を塗布することと、をさらに含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、明細書の記載とあわせて本開示の実施形態を説明するものであり、本開示の原理を説明することを目的とする。
【0015】
【
図1】本開示の実施形態によるホールプラグを示す側面図である。
【
図2】
図1のホールプラグを示す平面/上面図である。
【
図4】修理又は再加工の必要な領域を有する複合繊維アセンブリを示す断面図である。
【
図5】
図4に示す構造体に穴を形成した状態を示す図である。
【
図6】
図5に示す構造体の穴にホールプラグを部分的に挿入した状態を示す図である。
【
図7】
図6に示す構造体の穴にホールプラグを完全に挿入した状態を示す図である。
【
図8】
図7に示す構造体の修理又は再加工を行っている様子を示す図である。
【
図9】
図8に示す構造体の修理又は再加工が完了した様子を示す図である。
【
図10】
図9に示す構造体からホールプラグを抜き取り、得られた締結穴をライナで内張り(lining)した状態を示す図である。
【
図11】複合材積層体の穴に挿入されたホールプラグを示す機能ブロック図である。
【
図12】ワークピースを修理又は再加工するための方法を示すフローチャートである。
【0016】
なお、図面においては、厳密な構造上の精度、詳細、及び、縮尺を維持するのではなく、一部の詳細を簡易化したり、本開示の理解を容易にするように描いたりしている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本開示の例示的な実施形態を詳細に示し、その例を添付の図面に示す。便宜上、図面全体を通して、同じ又は同様の部品には同じ参照番号を用いる。本明細書で参照される構造体は、単純化のために示されていない追加の構成要素を含みうるが、図示した様々な構造体は、排除又は変形が可能である。
【0018】
上述のように、炭素複合材の修理中、表面領域に真空力を加えることができる。真空力により、複数のファイバ層の内部及び層の間から空気及び揮発性ガスを除去して、積層されたこれらのファイバ層をデバルク(debulks)するとともに、余分な樹脂を除去する。
【0019】
上述したように、いくつかの構造体は、複合繊維アセンブリを形成するために、硬質の外板パネルで覆われた炭素複合材を含みうる。複合繊維アセンブリは、一対の隣接又は平行する表面を含み、これらの隣接する表面間においては中空領域、又は、隙間が形成されている。この構造により、修理又は再加工が行われる表面(すなわち、修理面)の裏側へのアクセスを抑止又は阻止することができる。この中空領域の体積が大きいか、或いは、当該領域への空気や他のガスの流入が可能である場合、修理パッチの硬化中における修理面への真空力を得ることが困難又は不可能であり、仮に真空力を加えたとしても、修理パッチが修理面から浮いてしまう場合がある。
【0020】
したがって、本開示は、積層された炭素複合材の層に挿通配置されるホールプラグを含む。このホールプラグは、炭素複合材を通る開口を埋めて、構造体の修理を単純化することができる。
【0021】
図1は、本開示の例示的な実施形態によるホールプラグ100を示す側面図であり、
図2は、底面図であり、
図3は上面図である。ホールプラグの設計には、以下に説明する多層炭素繊維樹脂の構造体などの、炭素複合材とともに用いるための様々な構成要素が含まれうる。なお、図示されたホールプラグ100は1つの例示的な実施形態であって、他の実施形態は、簡易化のために図示されていない他の構成要素を含んでもよい。また、図示した様々な構成要素は、排除又は変形が可能である。
【0022】
図1に示す実施形態におけるホールプラグ100は、ホールプラグ100の第1端における第1面すなわち上面102と、ホールプラグ100の第2端における第2面すなわち下面104と、上面102と下面104との間(すなわち、第1端と第2端との間)に設けられたボディ106と、を含む。上面102及び下面104は、平面又は略平面であって、互いに平行又は略平行である。ボディ106は、フランジ108を含み、当該フランジは、約90°±5°の角度で上面102と交わっており、厚さ110を有する。ボディ106は、フランジ108と交じわるベベル(bevel)112と、当該ベベル112と交じわるシャンク114とを、さらに含む。ベベル112は、ホールプラグ100の中心を通って延びる縦軸Aに対して約100°±5°の角度、又は、以下に詳細に説明するように、充填するための穴の皿穴に一致する他の角度を有する。ベベル112の角度が95°未満、又は、105°を超える場合、炭素繊維積層体との接着結合が弱くなり、使用中に真空を印加したときにホールプラグ100の周囲で空気漏れが発生しうる。シャンク114は、縦軸Aと略平行であってもよい。
【0023】
シャンク114は、縦軸Aの周囲でシャンク114の全体を取り囲むことができるノッチ116を有しており、これによって周回ノッチが形成されている。ノッチ116の2つの直線エッジは、約45°±5°の角度シータ1(θ
1)を形成するように交わっていてもよい。シャンク114は、少なくとも部分的に、複数の溝118をさらに有する。各溝118は、縦軸Aと平行な高さと、縦軸Aに垂直な幅とを有し、高さは、幅よりも大きいため、溝118は縦方向の溝を形成している。複数の溝118は、縦軸Aと平行なシャンク114の大部分に沿って延びている。さらに、複数の溝118は、面取り面120すなわち面取り部120内に延在している。したがって、面取り部120は、複数の溝118の各々の一部を画定している。
図3は、ホールプラグ100の周囲にほぼ等間隔で配置された8つの溝118を示しており、したがって、各溝118の中心は、2つの隣接する溝の各々から、ホールプラグ100の周囲に45°離間している。各溝118の2つの直線エッジは、約97.2°±5°の角度シータ2(θ
2)を形成するように交わっていてもよい。
【0024】
ホールプラグ100は、シャンク114から延びる複数のロック止め、突起、保持部材、又は、隆起部(nubs)122(以下、集合的に「隆起部」)をさらに含む。
図1及び3は、隣接する溝118の各対の間に設けられた1つの隆起部122を示す。隆起部122は、ホールプラグ100の周囲にほぼ等間隔で配置されているため、各隆起部122の中心は、2つの隣接する隆起部の各々から、ホールプラグ100の周囲に45°離間している。各隆起部122は、例えば、半径を有する球形セクタ、球形スライス(spherical slice)、半球などを含み、複数の隆起部によって複数の半径が規定されている。
図1に示すように、縦軸Aに平行な各隆起部122の半径の接線Tは、フランジ108の外径D1(
図2)内でベベル112と交わっている。他の態様においては、縦軸Aを通り、且つ、シャンク114の両側に設けられた一対の隆起部122を通るホールプラグ100の幅Wは、フランジ108の外径D1よりも小さい。これに加えて、隆起部122の中点(midpoint)を通るホールプラグ100の周囲(
図1に示す幅「W」を周囲に沿ってほぼ囲む)は、フランジ108の外側垂直面を囲むホールプラグ100の周囲よりも小さい。さらに、シャンク114の外径D4(
図3)は、フランジ108の外径D1よりも小さい。
【0025】
図1に示す幅Wに示される隆起部122の中点は、上面102と下面104との間のホールプラグ100の略中央でなければならない。この態様においては、
図1に示す「W」は、ホールプラグ100の中央又は中点を指しており、ホールプラグ100の全高の50%は、中点Wよりも上であり、ホールプラグ100の全高の50%は、中点Wよりも下である。図示のように、複数の溝118は、複数の隆起部122と比較して、ホールプラグの第1端における第1面102、及び、第2端における第2面104の近くに配置されることによって、以下に説明するように、シーラント(例えば、粘着剤)を容易に分散させることができる。
【0026】
図1に示すように、面取り部120の表面は、シャンク114の表面及び下面104と交わるとともに、当該下面104と角度シータ3(θ
3)を形成している。角度θ
3は、約131°±5°であってもよい。
【0027】
使用に関して、ホールプラグ100は、フランジ108の直径D1(例えば、上面102の直径D1)が、当該ホールプラグの使用対象である穴(すなわち、炭素繊維樹脂積層体を通る穴)の最小径よりも大きく、且つ、複合繊維アセンブリの外面を通る穴(すなわち、外板を通る穴)の最大径よりも小さくなるように設計されてもよい。さらに、以下に説明するように、フランジ108の厚さ110は、取付中に課される負荷、及び/又は、力に耐えるのに十分な厚みを有しうる。ベベル112(ベベル112の角度及び高さ)は、これのために設計される皿穴に一致するように設計される。
【0028】
ノッチ116は、外板の底部のインターフェースにおける接合を容易にするために含めることができる。ノッチ116により、ホールプラグ100を炭素繊維積層体に少なくとも部分的に取り付ける追加の粘着剤担体(carrier)又は粘着剤受容部が提供される。同様に、シャンク114及び縦軸Aと平行に延びる溝118は、炭素繊維積層体に取り付けるための追加の粘着剤担体又は粘着剤受容部として設計されている。ノッチ116及び溝118はまた、両方とも、粘着剤の硬化前にホールプラグ100を所定位置に維持するための摩擦抵抗を付与することができる。溝118は、ホールプラグ100を受容する穴の長さ全体に亘って粘着剤が運ばれるように、隆起部122の上側及び下側の両方に延びている必要がある。
【0029】
隆起部122のサイズは、炭素繊維積層体の穴にホールプラグ100を維持するのに十分な程度に大きく、且つ、穴を通過する際に炭素繊維積層体を損傷しない程度に十分小さい。面取り部120の長さ、及び、面取り部の角度θ3は、修理中に、炭素繊維アセンブリの穴にホールプラグ100を容易に取り付けられるように設計されている。ボディ106の最小長(すなわち、ホールプラグ100の全長)は、ホールプラグ100の取り付けを容易にする長さであって、且つ、取付中に、隆起部122がシャンク114から折れたり破損したりするのを防止するのに役立つ長さであるように設計される。
【0030】
ホールプラグ100の表面粗さは、当該ホールプラグ100に対する粘着剤の機械的接合に役立つ。一実施形態においては、ホールプラグ100は、表面粗さを有しうる。この場合、表面粗さの平均粗さ中心線(average roughness centerline)「Ra」は、250ミクロン(μm)~400μmである。
【0031】
ホールプラグ100は、例えば、三次元(3D)プリンティング処理などの付加製造処理により形成することができる。3Dプリンティング処理は、マルエージング鋼(maraging steel)などの金属又は金属合金のレーザー焼結(laser sintering)を含みうる。他の製造処理においては、ホールプラグ100は、金属、金属合金、又は、ポリマーなどの適切な合成物質の成形処理によって形成することができる。ホールプラグ100は、単一の中実構造体、又は、単一の材料から形成することができるが、2つ以上の材料又は層で形成したり、軽量化のためにホールプラグ100を中空にするなどの他の構成も考えられる。上述した表面粗さは、3Dプリンティング処理、成形処理、又は、他の成形処理により実現することができ、これに代えて、化学エッチング、機械エッチング、又は、化学機械エッチングのうちの1つ又は複数などの別の手法によっても実現することができる。
【0032】
上述したようなホールプラグ100を使用するための様々な用途及び技術が考えられる。例示的な用途の例を
図4~9に示す。
図4は、剛性外層すなわち外板402と、炭素繊維積層体404とを含む複合樹脂アセンブリ400(例えば、炭素繊維アセンブリ400)を示す断面図である。
図4に示す炭素繊維積層体404は、4つの炭素繊維層404A~404Dを含むが、炭素繊維積層体は、2つ以上の炭素繊維層を含むことができ、例えば、100以上の層を含んでもよい。炭素繊維アセンブリ400は、再加工又は修理(以降、一般的にまとめて再加工と呼ぶ)が行われる領域406を含む。再加工が行われる領域406は、炭素繊維アセンブリの損傷、保守、再構築、若しくは、補強、又は、他の理由により再加工を受ける。例示の目的で、
図4は、炭素繊維積層体404の裏面410へのアクセスを防止する表面すなわち層408をさらに示しており、裏面410と層408とは隙間412で分離されている。炭素繊維アセンブリ400の外板402側からの真空を適切に生成するために、典型的には、裏面410へのアクセスが必要である。層408は、複数のレイヤを含んでもよく、炭素繊維アセンブリ400の一部、又は、他の表面であってもよい。
【0033】
図5は、
図4に示す構造体において、炭素繊維アセンブリ400の外板402及び炭素繊維積層体404を通る穴500を形成した状態を示す図である。図示のように、穴500のうち外板402を通る部分の直径D2は、ホールプラグ100のフランジ108(
図2)の表面102の直径D1よりも大きい。さらに、D2は、穴500のうち炭素繊維積層体404を通る部分の直径D3よりも大きい。さらに、穴500の周りの炭素繊維積層体404は、穴500の皿穴を形成する傾斜面502(すなわち、勾配(cant)502)を含み、勾配502は、ホールプラグ100のベベル112に近似又は一致している。穴500は、例えば、当該技術分野で知られるドリルビット(drill bit)や皿穴ツールを使用して形成することができる(簡素化のため個々には示していない)。
【0034】
図4に示す構造体、特に、炭素繊維アセンブリ400、及び、これを通る穴500の測定値を使用して、再加工に使用されるホールプラグ100の形状を決定することができる。一実施形態においては、穴500を形成した後に、3Dプリンティングによりホールプラグ100を形成することができる。他の実施形態においては、穴500を形成する前にホールプラグ100を形成してもよく、穴500は、ホールプラグ100に一致する形状を有するように形成される。上記形状を有する穴500及びホールプラグ100を形成した後、ホールプラグ100の溝118に接着材料600を塗布してもよい。次に、ホールプラグを、
図7に示すように穴500に完全に挿入してもよいし、
図6に示すように穴500に部分的に挿入してもよい。
図6に示す位置においては、隆起部122の下側におけるシャンク114の長状部分により、炭素繊維積層体404における穴内のホールプラグ100が安定する。
図6に示す位置において、ホールプラグ100の周囲、例えば、ノッチ116の周囲、及び/又は、内部に追加の接着剤600を塗布してもよい。その後、
図7に示すように、ホールプラグ100を穴500に完全に挿入する。余分な接着剤を除去すると、
図7と同様の構造体が得られる。
【0035】
図7に示すように、ホールプラグ100は、隆起部122の頂部(すなわち、
図1に示す表面102と中点Wとの間の上縁)が、裏面410の高さ又はその近傍にあるように設計される。したがって、隆起部122は、重力又は一定量の真空力が加わっても、接着剤600の硬化前に、ホールプラグ100が穴500から落下したり飛び出したりするのを防止することができる。一態様においては、隆起部122は、硬化若しくは未硬化の接着剤、又は、他の別個の機械的取付部がない状態などにおいて、ホールプラグ100を複合材積層体404に緩く固定、又は、「ロック」する。このため、当該ホールプラグを、「ロック」ホールプラグとも呼ぶことができる。さらに、ホールプラグ100の上面102は、外板402の露出した上面700の下側の高さにあるため、再加工の作業が完了した後、再加工領域406が露出した上面700と連続且つ面一になる。隆起部122の底部と面取り部120との間のシャンク114の長状部分により、ホールプラグ100が炭素繊維積層体404における穴を通ったときに、十分な量の接着剤が溝118に保持されて裏面410へと運ばれ、ホールプラグ100を炭素繊維積層体404に適切に接合することができる。
図7に示す構造体を形成した後、接着剤600を硬化させることにより、ホールプラグ100を炭素繊維積層体404の炭素繊維層404A~404Dに接合する。
【0036】
その後、追加の処理を行って、ホールプラグ100を含む領域406の再加工を行うことができる。
図8に示すように、再加工は、1つ以上の修理層800を領域406に付着させることを含みうる。領域406に対して、真空バッグ804と、真空ノズル806と、真空810に接続する真空ライン808とを含みうる真空アセンブリ802を付着させる。真空アセンブリ802は、1つ以上の修理層800をデバルク(debulk)するため、及び、1つ以上の修理層800を硬化させるときに余分な樹脂を除去するために使用することができる。1つ以上の修理層800を硬化させた後、外板402の露出した上面700から真空アセンブリ802を取り外し、修理層800及び外板402に対して追加の処理を行うことにより、
図9に示す構造体を完成させる。したがって、ホールプラグ100は、炭素繊維アセンブリ400の一部のままである。
【0037】
図4~9に示す構造体に関して、再加工又は修理を受ける領域406は、
図9に示す構造体を完成させるために固体表面であってもよい。他の実施形態においては、
図4に示す領域406は、締結穴の周囲の損傷領域を含みうる。この実施形態においては、締結穴は、ホールプラグ100を使用して一時的に充填されるとともに封止され、
図4~8を参照して上で説明したように修理が行われて、
図9に示す構造体が完成する。その後、
図9に示す構造体に対して、ホールプラグ100の抜き取り(drilling out)や取外しなどのさらなる処理を行って、
図10に示す締結穴1000を得る。一実施形態においては、炭素繊維積層体404を保護するため、又は、締結穴1000にファスナを挿入する準備をするために(簡易化のために個々には示していない)、締結穴1000をライナ1002で内張り(lining)してもよい。
【0038】
なお、図面は、簡略化され、且つ、本開示の理解を容易にするために描かれており、縮尺通りではない。
【0039】
図11は、貫通する第1穴1102を有する複合材積層体1100、及び、当該第1穴1102の内部に配置されたホールプラグ1104を示す機能ブロック図である。複合材積層体1100は、例えば、1つ以上の炭素繊維層などの、1つ以上の層を含みうる。
図11に示す構造体は、外板1106をさらに含み、当該外板は、複合材積層体1100を上から覆う固体シェルであってもよい。外板1106は、貫通する第2穴1108を有しうる。第2穴1108にホールプラグ1104を挿入して、第1穴1102の内部にホールプラグ1104を配置することができる。第1穴1102の第1幅すなわち第1直径D5は、第2穴1108の第2幅すなわち第2直径D6よりも小さい。
図11に示すホールプラグ1104は、フランジ1110と、当該フランジ1110から延びるベベル1112と、当該ベベル1112から延びるシャンク1114とを含む。シャンク1114は、当該シャンク1114の外周に沿って部分的に、或いは完全に延びるノッチ1116を含みうる。シャンク1114は、当該シャンク1114の高さに沿って長手方向に延びる複数の溝1118をさらに含む。シャンク1114からは、複数の隆起部1120、及び、面取り部1122が延びている。
【0040】
図12は、本開示の実施形態による、繊維樹脂アセンブリ400(例えば、炭素繊維アセンブリ400)などのワークピースを再加工するための方法1200を示すフローチャートである。方法1200は、上記図面に示される構造体のうちの1つ又は複数の動作及び用途により実行可能であるため、
図1~9を参照して説明する。しかしながら、方法1200は、特に明示しない限り、特定の構造体又は用途に限定されない。また、方法1200は、一連の行為又は事象として説明されているが、本開示は、このような行為又は事象の順序によって限定されない。いくつかの行為は、異なる順序で起こる場合、及び/又は、本明細書に記載されたものとは異なる他の行為又は事象と同時に起こる場合がある。さらに、本開示による方法は、簡略化のために図示していない他の行為又は事象を含むことができ、一方で、他の図示されている行為又は事象は、排除又は変更が可能である。
【0041】
一実施形態においては、1202において、ワークピース400の再加工領域を処理して、当該ワークピースに穴500を形成する。穴500は、ワークピース400の第1領域(例えば、外板402)を通る第1直径D2を有しうる。当該直径は、ワークピースの第2領域404(例えば、炭素繊維積層体404)を通る第2直径D3よりも大きい。ワークピースの第2領域404は、勾配502を画定するように形成することができる。1204において、ホールプラグ100は、例えば、3Dプリンティング、成形処理、又は、他の適切な処理を用いて形成することができる。ホールプラグ100は、穴500を形成した後、当該穴500の測定値に基づいて形成してもよいし、これに代えて、穴500を、既存のホールプラグ100の寸法と一致するように形成してもよい。ホールプラグ100は、第1直径D2よりも小さい第3直径D1を有するフランジ108を含みうる。
【0042】
その後、1206において、ホールプラグ100の溝118に接着剤600を塗布し、1208において、ホールプラグ100を部分的に穴500に挿入する。例示的な実施形態においては、ホールプラグ100を部分的に挿入して、ホールプラグ100のシャンク114の周囲における隆起部122の下縁が、勾配502などの第2領域に配置されるようにする。1210において、ホールプラグ100が部分的に穴に挿入された状態で、追加の接着剤600をホールプラグ100に、具体的には例えばノッチ116に塗布する。したがって、ノッチ116及び溝118は、穴500に挿入されると、接着剤600の担体として機能し、これによって、十分な量の接着剤600を、シャンク114及びワークピースの他の部分に拡散又は分散して、ホールプラグ100をワークピース400に確実に接合する。次に、1212において、ホールプラグ100を穴500に完全に挿入する。完全に挿入されると、ホールプラグ100の上面102は、外板402の露出した上面700内に埋まる。次に、1214において、ホールプラグ100と1つ以上の修理層800とを含むワークピース400の領域406に、真空バッグ804を取り付ける。その後、1216において、ワークピース400、1つ以上の修理層800、及び、ロックホールプラグ100に真空力を加える。真空力を加えることにより、1218に示すように、ワークピース400及びロックホールプラグ100を覆う1つ以上の修理層800をデバルクすることができる。1220において、周囲温度での時間硬化を受動的に利用するか、或いは、接着剤600を加熱する、当該接着剤を紫外線などに曝露するなどの能動的な処理を行うことにより、接着剤600を硬化させる。その後、1222において、領域406に対して追加の処理を任意で行って、再加工の作業を完了する。再加工は、追加の層及び接着剤を塗布すること、追加の層800をサンディング及び/又は硬化させること、真空アセンブリ802を用いて追加の層800に真空を加えること、及び、ワークピース400の塗装又は仕上げを行うこと、のうちの1つ又は複数を含みうる。任意ではあるが、再加工は、ホールプラグ100の抜き取りや取り外しを行って締結穴1000を形成すること、ライナ1002を用いて締結穴1000の内張りを行うこと、及び/又は、他の処理行為をさらに含みうる。
【0043】
したがって、本開示の例示的な実施形態によるホールプラグにより、ワークピースを再加工するための構造及び技術が提供される。ホールプラグは、ワークピースに形成された穴の内部に固定されており、これによって、ワークピースの処理を実行することができる。ワークピースの処理は、修理層の硬化や他の処理中に、再加工領域に対して真空力を加えることを含みうる。
【0044】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算であるが、具体例における数値は可能な限り正確に記載している。しかしながら、いずれの数値も、これらの試験測定値にみられる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、これらに包含される全ての部分範囲を含むと理解されるべきである。例えば、「10未満」の範囲は、最小値0と最大値10との間(及び、これらを含む)の全ての部分範囲、すなわち、1~5の範囲など、0以上の最小値及び10以下の最大値を含む全ての部分範囲を含みうる。場合によっては、パラメータとして記載した数値は負の値をとることもある。その場合、「10未満」と記載した範囲の例示的な値として、-1、-2、-3、-10、-20、-30などの負の値を想定することができる。
【0045】
さらに、本開示は、以下の付記による実施例を含む。
【0046】
付記1.フランジと、ベベルと、シャンクと、複数の隆起部と、を含むホールプラグであって、前記フランジは、第1直径を有するとともに、前記ホールプラグの第1端に設けられており、前記ベベルは、前記フランジから延びるとともに、前記フランジと角度をなして交わっており、前記シャンクは、前記ベベルから延びるとともに、前記フランジから離れて、前記ホールプラグにおいて前記第1端とは反対側の第2端へと延びており、前記シャンクは、前記第1直径よりも小さい第2直径と、前記シャンクに形成されるとともに前記シャンクの外面の周りに配向された複数の縦溝と、を含み、前記複数の隆起部は、前記シャンクの前記外面に設けられるとともに、前記シャンクの外面から延びており、且つ、前記複数の縦溝の間に配置されている、ホールプラグ。
【0047】
付記2.前記複数の隆起部の各々は、半径を含み、前記ホールプラグの縦軸に平行な各半径の接線は、前記第1直径の範囲内で前記フランジと交差している、付記1に記載のホールプラグ。
【0048】
付記3.前記シャンクにより画定される周回ノッチをさらに含み、前記周回ノッチは、前記複数の縦溝と前記フランジとの間に配置されている、付記1に記載のホールプラグ。
【0049】
付記4.前記複数の隆起部の各々は、前記ホールプラグの縦軸に平行な第1高さを有しており、前記複数の縦溝の各々は、前記ホールプラグの前記縦軸に平行であって、且つ、前記第1高さよりも高い第2高さを有しており、前記複数の縦溝は、前記複数の隆起部よりも、前記ホールプラグの前記第1端及び前記第2端の近くに配置されている、付記1に記載のホールプラグ。
【0050】
付記5.前記ホールプラグの前記第2端は、面取り面を含む、付記4に記載のホールプラグ。
【0051】
付記6.前記複数の縦溝は、前記面取り面内に延在している、付記5に記載のホールプラグ。
【0052】
付記7.各隆起部が半径を規定することにより、前記複数の隆起部が複数の半径を規定しており、各半径は、前記ホールプラグの縦軸に平行な接線を含み、各半径の各接線は、前記第1直径の範囲内で前記フランジと交わっている、付記1に記載のホールプラグ。
【0053】
付記8.前記ホールプラグは、第1隆起部、前記シャンク、及び、前記第1隆起部の反対側の第2隆起部を通る第3直径を有し、前記第3直径は、前記第1直径よりも小さく、且つ、前記第2直径よりも大きい、付記7に記載のホールプラグ。
【0054】
付記9.前記ホールプラグは、単一の材料から形成される、付記1に記載のホールプラグ。
【0055】
付記10.表面粗さを有しており、前記表面粗さの平均粗さ中心線「Ra」は、250ミクロン(μm)~400μmである、付記9に記載のホールプラグ。
【0056】
付記11.前記単一の材料は、マルエージング鋼である、付記10に記載のホールプラグ。
【0057】
付記12.複合積層材と、前記複合積層材を覆う外板と、ホールプラグと、を含み、前記複合積層材及び前記外板は、これらを貫通する穴を有しており、前記外板を貫通する前記穴の第1直径は、前記複合積層材を貫通する前記穴の第2直径よりも大きく、前記ホールプラグは前記穴内に配置されており、前記ホールプラグは、フランジと、ベベルと、シャンクと、複数の隆起部と、を含み、前記フランジは、第3直径を有するとともに、前記ホールプラグの第1端に設けられており、前記ベベルは、前記フランジから延びるとともに、前記フランジと角度をなして交わっており、前記シャンクは、前記ベベルから延びるとともに、前記フランジから離れて、前記ホールプラグにおいて前記第1端とは反対側の第2端へと延びており、前記シャンクは、前記第3直径よりも小さい第4直径と、前記シャンクに形成されるとともに前記シャンクの外面の周りに配向された複数の縦溝と、を含み、前記複数の隆起部は、前記シャンクの前記外面に設けられるとともに、前記シャンクの外面から延びており、且つ、前記複数の縦溝の間に配置されており、前記複合積層材は、前記フランジと前記複数の隆起部との間で前記ホールプラグに物理的に接触している、複合繊維アセンブリ。
【0058】
付記13.前記複数の隆起部の各々は、半径を含み、前記ホールプラグの縦軸に平行な各半径の接線は、前記第3直径の範囲内で前記フランジと交わっている、付記12に記載の複合繊維アセンブリ。
【0059】
付記14.前記ホールプラグは、前記シャンクにより画定される周回ノッチをさらに含み、前記周回ノッチは、前記複数の縦溝と前記フランジとの間に配置されている、付記12に記載の複合繊維アセンブリ。
【0060】
付記15.前記複数の隆起部の各々は、前記ホールプラグの縦軸に平行な第1高さを有しており、前記複数の縦溝の各々は、前記ホールプラグの前記縦軸に平行であって、且つ、前記第1高さよりも高い第2高さを有しており、前記複数の縦溝は、前記複数の隆起部よりも、前記ホールプラグの前記第1端及び前記第2端の近くに配置されている、付記12に記載の複合繊維アセンブリ。
【0061】
付記16.前記ホールプラグは、前記第2端において面取り面をさらに含み、前記複数の縦溝は、前記面取り面内に延在している、付記15に記載の複合繊維アセンブリ。
【0062】
付記17.複合積層材、及び、当該複合積層材を覆う外板を有する複合樹脂アセンブリの領域を再加工するための方法であって、前記複合樹脂アセンブリの前記領域に穴を形成し、前記穴は、前記外板内に第1直径を有し、且つ、前記複合積層材内に第2直径を有し、前記第1直径は、前記第2直径よりも大きく、ホールプラグのシャンクに形成された複数の溝に接着剤を塗布し、前記ホールプラグを前記ホールに完全に挿入して前記外板に埋め込み、前記接着剤を硬化させ、前記接着剤の硬化後、前記領域の再加工を完了する、方法。
【0063】
付記18.前記領域の再加工の完了は、前記接着剤の硬化後に前記領域に真空バッグを取り付けることと、前記領域及び前記ホールプラグに真空力を加えることと、を含む、付記17に記載の方法。
【0064】
付記19.前記領域に対して前記真空力を加えることにより、前記ホールプラグを覆う1つ以上の修理層をデバルクする、付記18に記載の方法。
【0065】
付記20.前記複合積層材に勾配を形成することと、前記ホールプラグの前記シャンクから延びる隆起部が、前記勾配に保持された状態で、前記穴に前記ホールプラグを部分的に挿入することと、前記ホールプラグの前記シャンクを囲むノッチに前記接着剤を塗布することと、をさらに含む、付記17に記載の方法。
【0066】
本開示は1つ以上の実施形態を用いて説明されているが、添付の請求の範囲の思想及び範囲から逸脱することなく、説明された例に対して変更及び/又は修正を加えることができる。例えば、処理は、一連の行為又は事象として説明されているが、本開示は、そのような行為又は事象の順序によって限定されない。いくつかの行為は、異なる順序で起こる場合、及び/又は、本明細書に記載されたものとは異なる他の行為又は事象と同時に起こる場合がある。また、本開示の1つ以上の態様や実施形態に従って方法を実施するのに、全ての処理工程が必要でない場合もある。なお、構成要素及び/又は処理工程を追加したり、既存の構成要素及び/又は処理工程を排除又は変更したりしてもよい。さらに、本明細書で説明する行為のうちの1つ又は複数は、1つ以上の別個の行為及び/又は段階で実行することができる。さらに、詳細な説明及び請求の範囲において、「含み」、「含む」、「有し」、「有する」、「備える」等、種々の表現が用いられているが、これらは、他の要素が排除されず、包括的に具備されることを意図したものである。「少なくとも1つ」なる表現は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択されうることを意味する。本明細書において、「のうちの1つ又は複数」なる表現が、例えばA及びBからなる項目のリストについて用いられる場合、当該表現は、Aのみ、Bのみ、或いは、A及びBであることを意味する。さらに、本明細書の記載及び請求の範囲において、一方が他方の上にある2つの材料について「上に」なる表現が用いられている場合、当該表現は、材料間の少なくとも一部の接触を意味しており、「上方に」なる表現が用いられている場合、当該表現は、これらの材料が互いに近接して配置されてはいるが、必ずしも接触するとは限らず、間に介在する1つ以上の追加の材料が配置されている可能性があることを意味する。本明細書においては、「上」及び「上方」の何れも方向性を示すものではない。「コンフォーマル(conformal)」なる用語は、下方に設けられた材料の角度を維持することができるコーティング材料を表す。「約」なる用語は、列挙された値が、説明した実施形態の処理や構造体に適合する範囲で変更可能であることを示している。最後に、「例示的な」とは、その説明が理想的であることを意味するのではなく、単なる一例として用いられていることを示している。本明細書及び本開示の実施に鑑みれば、本開示の他の実施形態も当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例の記載は、あくまでも例示であり、本開示の真の範囲及び思想は、添付の請求の範囲に示される。
【0067】
本願で用いられる相対位置の用語は、ワークピースの配向に関わらず、ワークピースの標準面(conventional plane)又は作業面に平行な平面に基づいて規定される。本願で用いられる「水平」又は「横方向」なる用語は、ワークピースの配向に関わらず、ワークピースの標準面又は作業面に平行な平面として規定される。「垂直」なる用語は、水平方向に対して直交する方向を指す。「上」、「側(例えば、「側壁」)、「高」、「低」、「上方」、「頂」、及び、「下側」などの用語は、ワークピースの配向に関わらず、ワークピースの標準面又は作業面をワークピースの頂面として、当該頂面に対して規定される。