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特許7378996豆腐、生豆腐、食品、及び豆腐の鬆立ちの抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】豆腐、生豆腐、食品、及び豆腐の鬆立ちの抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/45 20210101AFI20231107BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20231107BHJP
【FI】
A23L11/45 Z
A23L11/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019134076
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021016346
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】520219807
【氏名又は名称】DAIZ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝次
(72)【発明者】
【氏名】井出 剛
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-123060(JP,A)
【文献】国際公開第2005/004633(WO,A1)
【文献】特開平02-069155(JP,A)
【文献】特開昭60-149354(JP,A)
【文献】特開2009-089682(JP,A)
【文献】特開平03-216164(JP,A)
【文献】金内誠ほか,発芽大豆中のプロテアーゼの特徴と豆乳タンパク質への作用について,日本食品保蔵科学会誌,2014年,Vol.40, No.5,p.233-240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/45
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の条件で得られるペプチドクロマトグラフにおいて、溶出時間24~28分に最大ピークを示す大豆タンパク質由来のペプチドを含む豆腐。
(ペプチドクロマトグラフの条件)
測定対象:大豆原料
使用機器:高速液体クロマトグラフ(UHPLC)、株式会社島津製作所製
検出器:蛍光検出器
カラム:商品名「TSKgel G200SW 10μm」(7.5mm I.D.×30cm)、東ソー社製
カラム温度:25℃
溶出バッファーの組成:40% アセトニトリル、0.1% 酢酸
流量:0.5ml/min
【請求項2】
βコングリシニンのaサブユニット、bサブユニット、グルシニンAcidicサブユニット、及びグルシニンBasicサブユニットからなる群より選ばれるタンパク質の部分分解物を含む、請求項1記載の豆腐。
【請求項3】
グルタミン酸量15mg/100g以上31.1mg/100g以下である、請求項1又は2記載の豆腐。
【請求項4】
発芽大豆の豆乳及び/又はタンパク質分解酵素処理豆乳を原料とする請求項1から3のいずれかに記載の豆腐。
【請求項5】
グルコノラクトンを0.10質量%以上の量で含む請求項1から4のいずれかに記載の豆腐。
【請求項6】
以下の加熱試験後及び破断応力試験において破断点を示す生豆腐である、請求項1から5のいずれかに記載の豆腐
(加熱試験)
豆腐を水中に浸してレトルト用袋(ナイロンポリ(NYPE)製)で包装した状態で、1atm、90℃で20分間静置する。
(破断応力試験)
加熱試験後の豆腐を10mm×10mm×10mmのサイズに切り出し、これを試料台に載台する。次いで、クリープメーター物性試験システム(型式:RE2-33005B、山電社製)を用いて、試料台に載台した豆腐に対して、上面方向からφ30mmのプランジャーを、速度毎秒1.0mm、貫入歪率85%で貫入することにより破断荷重を測定する。
【請求項7】
以下の破断応力試験において破断点を示す、レトルト殺菌された豆腐である、請求項1から5のいずれかに記載の豆腐
(破断応力試験)
豆腐を10mm×10mm×10mmのサイズに切り出し、これを試料台に載台する。次いで、クリープメーター物性試験システム(型式:RE2-33005B、山電社製)を用いて、試料台に載台した豆腐に対して、上面方向からφ30mmのプランジャーを、速度毎秒1.0mm、貫入歪率85%で貫入することにより破断荷重を測定する。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の豆腐を含み、レトルト殺菌された食品。
【請求項9】
豆腐の鬆立ちの抑制方法であって、
前記豆腐が、請求項1から7のいずれかに記載の豆腐であり、
前記豆腐が、発芽大豆の豆乳及び/又はタンパク質分解酵素処理豆乳を原料として用いて得られる、豆腐の鬆立ちの抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐、生豆腐、食品、及び豆腐の鬆立ちの抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐は調理において幅広く使用される食材のひとつである。しかし、豆腐には、加熱されると細かい穴が生じるという、いわゆる「鬆(す)立ち」の問題がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、鬆立ちが抑制されたカット豆腐の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-75105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、食感等を損なわずに加熱時の鬆立ちが抑制された豆腐に対する、さらなるニーズがある。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、加熱時の鬆立ちが抑制され、食感に優れる豆腐の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のペプチドを含む豆腐によれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) 以下の条件で得られるペプチドクロマトグラフにおいて、溶出時間24~28分に最大ピークを示す大豆タンパク質由来のペプチドを含む豆腐。
(ペプチドクロマトグラフの条件)
使用機器:高速液体クロマトグラフ(UHPLC)、株式会社島津製作所製
検出器:蛍光検出器
カラム:商品名「TSKgel G200SW 10μm」(7.5mm I.D.×30cm)、東ソー社製
カラム温度:25℃
溶出バッファーの組成:40% アセトニトリル、0.1% 酢酸
流量:0.5ml/min
【0009】
(2) βコングリシニンのaサブユニット、bサブユニット、グルシニンAcidicサブユニット、及びグルシニンBasicサブユニットからなる群より選ばれるタンパク質の部分分解物を含む豆腐。
【0010】
(3) 遊離アミノ酸の総量が200mg/100g以上10000mg/100g以下である、(1)又は(2)記載の豆腐。
【0011】
(4) 発芽大豆の豆乳及び/又はタンパク質分解酵素処理豆乳を原料とする(1)から(3)のいずれかに記載の豆腐。
【0012】
(5) グルコノラクトンを0.10質量%以上の量で含む(1)から(4)のいずれかに記載の豆腐。
【0013】
(6) 以下の加熱試験後及び破断応力試験において破断点を示す生豆腐。
(加熱試験)
豆腐を水中に浸してレトルト用袋(ナイロンポリ(NYPE)製)で包装した状態で、1atm、90℃で20分間静置する。
(破断応力試験)
加熱試験後の豆腐を10mm×10mm×10mmのサイズに切り出し、これを試料台に載台する。次いで、クリープメーター物性試験システム(型式:RE2-33005B、山電社製)を用いて、試料台に載台した豆腐に対して、上面方向からφ30mmのプランジャーを、速度毎秒1.0mm、貫入歪率85%で貫入することにより破断荷重を測定する。
【0014】
(7) 以下の破断応力試験において破断点を示す、レトルト殺菌された豆腐。
(破断応力試験)
豆腐を10mm×10mm×10mmのサイズに切り出し、これを試料台に載台する。次いで、クリープメーター物性試験システム(型式:RE2-33005B、山電社製)を用いて、試料台に載台した豆腐に対して、上面方向からφ30mmのプランジャーを、速度毎秒1.0mm、貫入歪率85%で貫入することにより破断荷重を測定する。
【0015】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の豆腐を含み、レトルト殺菌された食品。
【0016】
(9) 発芽大豆の豆乳及び/又はタンパク質分解酵素処理豆乳を原料として用いる、豆腐の鬆立ちの抑制方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱時の鬆立ちが抑制され、食感に優れる豆腐が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例で用いた大豆原料のペプチド分析の結果を示す図である。
図2】実施例で用いた大豆原料に含まれるペプチドの電気泳動の結果を示す図である。
図3】実施例で作製した豆腐について、加熱後の破断応力試験の結果を示す図である。
図4】実施例で作製した豆腐について、加熱後の状態を示す図である。
図5】実施例で作製した豆腐について、加熱後の断面の観察結果を示す図である。
図6】実施例で作製した豆腐について、加熱後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに特に限定されない。
【0020】
<本発明の豆腐>
本発明の豆腐は、以下(P1)及び/又は(P2)の要件を満たすペプチドを含む。以下、下記の各ペプチドを単に「P1」、「P2」ともいう。
(P1)以下の条件で得られるペプチドクロマトグラフにおいて、溶出時間24~28分に最大ピークを示す大豆タンパク質由来のペプチド。
(ペプチドクロマトグラフの条件)
使用機器:高速液体クロマトグラフ(UHPLC)、株式会社島津製作所製
検出器:蛍光検出器
カラム:商品名「TSKgel G200SW 10μm」(7.5mm I.D.×30cm)、東ソー社製
カラム温度:25℃
溶出バッファーの組成:40% アセトニトリル、0.1% 酢酸
流量:0.5ml/min
(P2)βコングリシニンのaサブユニット、bサブユニット、及びグルシニンAcidicサブユニット、グルシニンBasicサブユニットからなる群より選ばれるタンパク質の部分分解物。
【0021】
本発明者らの検討の結果、意外にも、上記ペプチドが配合された豆腐は、加熱後であっても鬆立ちが抑制されており、さらには食感にも優れることが見出された。
【0022】
P1及びP2は、いずれも、通常の豆腐に多く含まれるタンパク質よりも相対的に小さい分子量を有する。本発明においては、このように、小さな分子量のペプチドが配合されることで、加熱によるタンパク質の変性及び豆腐の構造変化が抑制される結果、鬆立ちが抑制されるものと推測される。なお、P1にはP2が含まれ得る。
【0023】
なお、P2について、βコングリシニンのaサブユニット、bサブユニット、グルシニンAcidicサブユニット、及びグルシニンBasicサブユニットは、それぞれ分子量が、72kDa、53kDa、37~42kDa、20kDaである。そのため、これらの部分分解物であるP2は、上記分子量よりも小さい分子量を有する。
【0024】
本発明の豆腐中のP1の含量の下限は、豆腐に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。本発明の豆腐中のP1の含量の上限は、豆腐に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0025】
本発明の豆腐中のP2の含量の下限は、豆腐に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。本発明の豆腐中のP2の含量の上限は、豆腐に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
【0026】
本発明の豆腐は、相対的に多い量の遊離アミノ酸が含まれていると、より鬆立ちが抑制されやすい。例えば、本発明の豆腐の遊離アミノ酸の総量の下限は、豆腐の鬆立ちが抑制されやすいという観点から、豆腐に対して、好ましくは200mg/100g以上、より好ましくは600mg/100g以上、さらに好ましくは1000mg/100g以上、さらにより好ましくは1500mg/100g以上である。本発明の豆腐の遊離アミノ酸の総量の上限は過度でなくともよく、豆腐に対して、好ましくは10000mg/100g以下、より好ましくは8000mg/100g以下、さらに好ましくは5000mg/100g以下、さらにより好ましくは3000mg/100g以下である。
【0027】
本発明の豆腐に、相対的に多い量の遊離アミノ酸が含まれていると、より鬆立ちが抑制されやすくなる理由は以下のように推察される。豆腐の原料である大豆に含まれるタンパク質のうち、βコングリシニンは、タンパク質分解酵素によって分解される過程で、繊維状のタンパク質やオリゴペプチド等を生じることが知られる。本発明者らの検討の結果、このような繊維状のタンパク質や、オリゴペプチド等は、豆腐の網目構造構築に寄与している可能性が見出された。本発明の豆腐に相対的に多い量の遊離アミノ酸が含まれていることは、上記の繊維状のタンパク質や、オリゴペプチド等も多いことを意味し、これによって強固な豆腐の網目構造が構築され、鬆立ちが抑制されるものと考えられる。
【0028】
本発明の豆腐の遊離アミノ酸の総量の下限は、豆腐の鬆立ちが抑制されやすいという観点から、好ましくは200mg/100g以上、より好ましくは600mg/100g以上、さらに好ましくは1000mg/100g以上、さらにより好ましくは1500mg/100g以上である。本発明の豆腐の遊離アミノ酸の総量の上限は過度でなくともよく、豆腐に対して、好ましくは10000mg/100g以下、より好ましくは8000mg/100g以下、さらに好ましくは5000mg/100g以下、さらにより好ましくは3000mg/100g以下である。
【0029】
本発明の豆腐に含まれ得る遊離アミノ酸及びその含量の例としては、以下が挙げられる。
グルタミン酸:15~30mg/100g
アラニン:10~20mg/100g
アスパラギン酸:0.5~3mg/100g
リジン:2~5mg/100g
ヒスチジン:2~5mg/100g
フェニルアラニン:2~5mg/100g
メチオニン:0.5~3mg/100g
スレオニン:1.5~5mg/100g
ロイシン:1~5mg/100g
イソロイシン:1~5mg/100g
バリン:1.5~5mg/100g
アルギニン:20~50mg/100g
グリシン:2~5mg/100g
セリン:2~5mg/100g
チロシン:1.5~5mg/100g
【0030】
本発明の豆腐は、上記遊離アミノ酸のうち、美味しさに影響し得るグルタミン酸、アラニン、スレオニン、セリンの量が多い傾向にある。そのため、本発明の豆腐は嗜好性が良好な豆腐であり得る。
【0031】
本発明の豆腐の等電点は2.0~6.8であってもよい。等電点は、酸滴定によって特定される。
【0032】
(豆乳)
本発明の豆腐は、大豆から得られる豆乳を原料とする。豆乳の由来である大豆は特に限定されないが、P1及び/又はP2を含む豆腐を得やすいという観点から、発芽大豆を原料とすることが好ましい。また、豆乳としては、発芽大豆の豆乳及び/又はタンパク質分解酵素処理豆乳が好ましい。
【0033】
本発明において「発芽大豆」とは、後述する発芽処理を施された大豆を意味し、芽(スプラウト)が明確に認められない大豆も包含する。
【0034】
本発明者らの検討の結果、発芽大豆には、通常の大豆(発芽処理をしていない大豆)と比較して、小さな分子量のペプチド(P1、P2等)や遊離アミノ酸が多く含まれることが見出された。発芽大豆を原料とした豆乳及び豆腐についても同様であることが見出された。したがって、原料として発芽大豆の豆乳を使用すれば、本発明の豆腐を容易に製造することができる。
【0035】
発芽大豆としては、発芽処理(発芽を促進させる処理)を施された任意の大豆を用いることができる。発芽処理としては従来知られた方法を採用でき、例えば、大豆を水に浸漬させた後に空気中にさらす方法等が挙げられる。その他の方法として、日本国特許5795676号、日本国特許5722518号の方法等も挙げられる。
【0036】
本発明の豆腐の原料は、好ましくは発芽大豆の豆乳を含む。本発明の豆腐の原料として通常の大豆(発芽処理をしていない大豆)から得られる豆乳を用いる場合、発芽大豆の豆乳と混合して用いたり、通常の大豆から得られる豆乳に対してP1及び/又はP2を添加したりすることで、本発明の豆腐の原料となる豆乳を容易に調製できる。
【0037】
本発明において「タンパク質分解酵素処理豆乳」とは、任意の大豆から得られた豆乳をタンパク質分解酵素処理したものを意味する。
【0038】
本発明者らの検討の結果、任意の豆乳(例えば、市販品の豆乳)にタンパク質分解酵素を施したものにも、小さな分子量のペプチド(P1、P2等)や遊離アミノ酸が多く含まれることが見出された。したがって、原料としてタンパク質分解酵素処理豆乳を使用すれば、本発明の豆腐を容易に製造することができる。
【0039】
タンパク質分解酵素処理を施す豆乳の由来となる大豆は特に限定されず、発芽大豆、発芽処理を施していない大豆のいずれも使用でき、これらを組み合わせて使用することもできる。
【0040】
タンパク質分解酵素としては、豆乳に含まれるタンパク質を分解できれば特に限定されない。例えば、プロテアーゼ、ペプチダーゼ等の酵素(ジンギパイン、システインプロテアーゼ等)が挙げられる。タンパク質分解酵素としては精製品を使用でき、該酵素を含む食品等も使用できる。タンパク質分解酵素を含む食品として、生の生姜、パパイヤ、キウイフルーツや、これらの搾汁等が挙げられる。
【0041】
タンパク質分解酵素の条件(酵素の使用量、温度、時間等)としては、酵素が失活せず、豆乳中のタンパク質を十分に分解できれば特に限定されない。例えば、温度条件は10~50℃であってもよい。酵素処理時間は1~72時間であってもよい。
【0042】
豆乳の製造方法としては従来知られた方法を採用できる。例えば、大豆を水に浸漬し膨張させたものを磨砕した後、繊維質(オカラ)を除去して豆乳を得る方法等が挙げられる。豆乳は必要に応じて殺菌処理等を施してもよい。
【0043】
<豆腐の製造方法>
本発明の豆腐は、豆乳に凝固剤を添加し、適宜型に充填したり、容器で包装したりすることで得られる。凝固剤としては、豆腐の製造において用いられるものを使用できる。その他の条件は特に限定されず、豆腐の製造において通常用いられるものを採用できる。
【0044】
本発明者らの検討の結果、凝固剤としてグルコノラクトンを用いると、加熱時の鬆立ちがより抑制された豆腐が得られやすいことが見出された。グルコノラクトンの量の下限は、食感や風味に優れた豆腐が得られやすいという観点から、豆腐に対して好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上である。グルコノラクトンの量の上限は、豆腐の風味を損ねにくいという観点から、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.35質量%以下である。ただし、凝固剤としてはグルコノラクトン以外のものを用いてもよく、複数の凝固剤(例えば、グルコノラクトン及びその他の凝固剤)を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明の豆腐の製造においては、従来の豆腐の製造において用いられてきた乳化剤を含まなくとも、良好な食感を有する豆腐を得ることができる。このような乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩、ユッカ抽出物、サポニン、レシチン、ポリソルベート等が挙げられる。ただし、本発明においてこのような乳化剤が含まれる態様は排除されない。例えば、本発明の豆腐には、豆腐に対して、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下の上記乳化剤が含まれていてもよい。
【0046】
本発明の豆腐の製造においては、従来の豆腐の製造において用いられてきた増粘剤を含まなくとも、良好な食感を有する豆腐を得ることができる。このような増粘剤としては、以下が挙げられる。ペクチン、カラギナン、キサンタンガム、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、アラビアガム、寒天、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム、プルラン、ラムザンガム、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、水溶性セルロースエーテル(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース等)等の増粘多糖類;コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、米澱粉等の生澱粉や、それらに架橋化、エーテル化、エステル化等の加工を施した加工澱粉等の澱粉。ただし、本発明においてこのような増粘剤が含まれる態様は排除されない。例えば、本発明の豆腐には、豆腐に対して、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下の上記増粘剤が含まれていてもよい。
【0047】
本発明の豆腐の製造においては、従来の豆腐の製造において用いられてきたタンパク助剤を含まなくとも、良好な食感を有する豆腐を得ることができる。このようなタンパク助剤としては、豆乳由来のタンパク質以外のタンパク質が挙げられ、具体的には以下が挙げられる。乳清タンパク質、卵タンパク質、アルブミン等の卵由来のタンパク質;大豆タンパク質;小麦タンパク質;ミオシンタンパク質;ゼラチン;コラーゲン;血しょうタンパク質等。ただし、本発明においてこのようなタンパク助剤が含まれる態様は排除されない。例えば、本発明の豆腐には、豆腐に対して、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下の上記タンパク助剤が含まれていてもよい。
【0048】
本発明の豆腐は、適宜レトルト殺菌された食品として調製され得る。なお、本発明において「レトルト殺菌」とは、包装した食品に対して、100~150℃程度の温度条件下で加圧加熱処理を行うことを意味する。本発明において「食品」とは、豆腐そのものであってもよく、豆腐を材料とする調理品(麻婆豆腐、酸辣湯、スンドゥブ、味噌汁等)であってもよい。
【0049】
本発明の豆腐は、アセプティック充填された食品(食品の滅菌と包装材料の滅菌とを別々に行ったうえで食品を包装したもの)として調製され得る。ただし、このような製品の調製には設備に多大なコストがかかる。本発明によれば、簡易なレトルト殺菌によって、鬆立ちが良好に抑制された包装製品が得られるため、本発明の豆腐の製造においてはアセプティック充填を行わなくともよい。
【0050】
<豆腐の特性>
本発明の豆腐は、上述のとおり、加熱しても鬆立ちが抑制され、食感に優れる。加熱時の鬆立ちが抑制されているかは、目視や、顕微鏡観察で判断できる。食感は、豆腐を喫食した際の歯ごたえやなめらかさ等として評価できる。
【0051】
本発明の豆腐は、加熱してもその構造変化が抑制される。加熱によって構造変化が生じているかは、例えば、下記の加熱試験後及び破断応力試験によって評価できる。
【0052】
本発明の豆腐は、以下の加熱試験後及び破断応力試験において破断点を示す生豆腐であり得る。なお、「生豆腐」とは、加熱処理(例えば、90℃以上の加熱処理)を経ていない豆腐を意味する。「破断点」とは、豆腐に外力を加え、該外力に抗する応力がもちこたえられなくなって、豆腐が破壊される極限点を意味する。
(加熱試験)
豆腐を水中に浸してレトルト用袋(ナイロンポリ(NYPE)製)(商品名「メイワパックスBRS-1624S」、株式会社メイワパックス製)で包装した状態で、1atm、90℃で20分間静置する。
(破断応力試験)
加熱試験後の豆腐を10mm×10mm×10mmのサイズに切り出し、これを試料台に載台する。次いで、クリープメーター物性試験システム(型式:RE2-33005B、山電社製)を用いて、試料台に載台した豆腐に対して、上面方向からφ30mmのプランジャーを、速度毎秒1.0mm、貫入歪率85%で貫入することにより破断荷重を測定する。
【0053】
本発明の豆腐が生豆腐である場合、そのまま用いることもできるし、加温調理に用いることもできる。加温調理としては、火、湯、油等を介した加熱や、電子レンジ等を用いた加熱等が挙げられる。
【0054】
例えば、本発明の豆腐は、以下の破断応力試験において破断点を示す、レトルト殺菌された豆腐であり得る。
(破断応力試験)
豆腐を10mm×10mm×10mmのサイズに切り出し、これを試料台に載台する。次いで、クリープメーター物性試験システム(型式:RE2-33005B、山電社製)を用いて、試料台に載台した豆腐に対して、上面方向からφ30mmのプランジャーを、速度毎秒1.0mm、貫入歪率85%で貫入することにより破断荷重を測定する。
【0055】
<豆腐の鬆立ちの抑制方法>
上記のとおり、発芽大豆の豆乳及び/又はタンパク質分解酵素処理豆乳を原料として用いることで鬆立ちが抑制された豆腐が得られる。
【0056】
また、豆腐の製造において、P1及び/又はP2を配合することで、鬆立ちが抑制された豆腐を得ることができる。P1及び/又はP2の配合量は、得ようとする豆腐の食感等に応じて適宜調整できる。
【実施例
【0057】
以下に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0058】
<試験1:各種大豆原料から得られた豆腐のアミノ酸分析>
2種の大豆原料、すなわち発芽大豆及び通常大豆から得られた豆腐のアミノ酸分析を行った。
【0059】
(1)大豆原料の準備
北海道産「とよまさり」を30ppmの次亜塩素酸ナトリウムで洗浄後、3時間毎の散水を15時間繰り返し、発芽大豆を作製した。また、北海道産「とよまさり」を15時間水につけた浸漬大豆を、通常大豆として用いた。
【0060】
(2)豆乳の作製
乾燥大豆の質量の2.25倍になるように大豆原料を水で膨潤させた。次いで、膨潤させた大豆原料の質量の2.5倍程度の加水をしながら、大豆原料を磨砕した。磨砕した大豆汁を加熱し、タンパク質やその他の可溶成分を抽出した後、これを濾過した。ろ液を回収し、最終固形分量が11.3%である豆乳を得た。
【0061】
(3)豆腐の作製
上記(2)で得られた各豆乳にグロコノデルタラクトン(豆乳に対して0.34質量%)を加えて凝固させ、豆腐を得た。
【0062】
(4)アミノ酸分析
上記で得られた豆腐のアミノ酸分析を以下の条件で行い、遊離アミノ酸量を特定した。その結果を表1に示す。
使用機器:高速液体クロマトグラフ(UHPLC)、株式会社島津製作所製
検出器:蛍光検出器
カラム:「Inertil ODS-4 HP 3μm」(100mmL.×3.0mmI.D.)、GL Sciences社製
カラム温度:35℃
溶出バッファーの組成:15mmol/L りん酸二水素カリウム、5mmol/L りん酸水素二カリウム、水/アセトニトリル/メタノール=15/45/40(V/V/V)
流量:0~1.5min 9.5%、1.5~6.0min 30%、6.0~11.0min 40%、11.0~16.0min 100%
流量:0.8ml/min
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示されるとおり、発芽大豆から得られた豆腐は、通常大豆から得られた豆腐よりも顕著に遊離アミノ酸量が多かった。
【0065】
発芽大豆から得られた豆腐は、上記遊離アミノ酸のうち、美味しさに影響し得るグルタミン酸、アラニン、スレオニン、セリンの量が多かった。そのため、発芽大豆から得られた豆腐は、通常大豆から得られた豆腐よりも美味しさが優れていた。
【0066】
<試験2:大豆原料のペプチド分析>
試験1で用いた大豆原料のペプチド分析を以下の条件で行った。その結果を図1に示す。
使用機器:高速液体クロマトグラフ(UHPLC)、株式会社島津製作所製
検出器:蛍光検出器
カラム:商品名「TSKgel G200SW 10μm」(7.5mm I.D.×30cm)、東ソー社製
カラム温度:25℃
溶出バッファーの組成:40% アセトニトリル、0.1% 酢酸
流量:0.5ml/min
【0067】
図1中、溶出時間が長い分画ほど、分子量が短いことを意味する。図1に示されるとおり、発芽大豆は溶出時間24~28分で最大ピークを示し、通常大豆は溶出時間22~28分で最大ピークを示した。このことから、発芽大豆中に含まれるペプチドは、通常大豆中に含まれるペプチドよりも分子量が小さいものが多く含まれていた。
【0068】
図1の結果を踏まえ、図1中、発芽大豆については溶出時間24~28分のピーク分画、通常大豆については溶出時間22~28分のピーク分画を抽出し、以下の条件で電気泳動を行った。その結果を図2に示す。
【0069】
(電気泳動の条件)
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に使用した試薬は全て和光純薬製である。
泳動バッファーは以下のように調製した。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン3g、グリシン14.4g、及びラウリル硫酸ナトリウム1gに蒸留水を加えて、1Lにし、泳動バッファーを得た。
試料添加溶液は以下のように調製した。1.0M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンpH6.8溶液0.5ml、ジチオスレイトール0.154g、10%ラウリル硫酸ナトリウム溶液2ml、ブルムフェノールブルー0.01g、グリセロール1mlに蒸留水を加えて10mlにし、試料添加溶液を得た。
検体100mgを1mlの生理食塩水で懸濁し、超音波破砕装置(株式会社トミー精工製)で均一にした。均一にした10μlの検体に1μlの試料添加溶液を加え、95℃で10分間、アルミブロック恒温槽(アズワン株式会社製)で保温した。ミニスラブサイズ電気泳動装置(アトー株式会社製)にアクリルアミド濃度12.5%のゲルを設置し、陽極、陰極側に泳動バッファーを添加した。保温した検体をアクリルアミドゲルに供し、30V定電圧によるSDS-PAGEを実施し、0.25%クーマシブリリアントブルー溶液でタンパク質を染色して泳動結果を観察した。
【0070】
図2に示されるとおり、通常大豆においては、βコングリシニンのaサブユニット、bサブユニット、及びグルシニンAcidicサブユニットのバンドが明確に認められた。他方で、発芽大豆においては、これらのバンドが明確に認められず、βコングリシニンのaサブユニット、bサブユニット、及びグルシニンAcidicサブユニットの部分分解が生じていることがわかった。
【0071】
<試験3:加熱後の破断応力試験>
試験1で作製した豆腐について、以下の方法で加熱試験及び破断応力試験を行った。その結果を図3に示す。
【0072】
(加熱試験)
各豆腐を、その全体が水中に浸してレトルト用袋(ナイロンポリ(NYPE)製)に包装した状態で、1atm、115℃で23分間静置した。
【0073】
(破談応力試験)
加熱試験後の各豆腐を10mm×10mm×10mmのサイズに切り出し、これを試料台に載台した。次いで、クリープメーター物性試験システム(型式:RE2-33005B、山電社製)を用いて、試料台に載台した豆腐に対して、上面方向からφ30mmのプランジャーを、速度毎秒1.0mm、貫入歪率85%で貫入することにより破断荷重を測定した。
【0074】
図3に示されるとおり、発芽大豆から得た豆腐は破断点を示した。これに対し、通常大豆から得た豆腐は外力を与えた途端に豆腐が崩れ、破断点を示さなかった。また、通常大豆から得た豆腐は、スポンジ化が生じており、破断応力が認められなかった。このことから、発芽大豆から得た豆腐においては、加熱後であっても、豆腐の外観や食感に影響する三次元構造が維持されていることがわかった。
【0075】
<試験4:豆腐断面の観察>
試験1で作製した豆腐について、90℃で20分加熱した後、以下の方法で断面の観察を行った。その結果を図4及び5に示す。図4は、加熱後の豆腐(切断前)の様子である。図5の上段(A)は肉眼による断面の観察結果であり、下段(B)は電子顕微鏡による断面の観察結果である。
【0076】
図4及び5に示されるとおり、通常大豆から得た豆腐は加熱後に鬆立ちが認められた。これに対し、発芽大豆から得た豆腐は加熱後の鬆立ちが認められず、きめの細かい網目構造が構築されていた。
【0077】
<試験5:豆腐の加熱試験-1>
試験1で作製した豆腐を、レトルト用袋(ナイロンポリ(NYPE)製)の容器に充填し、110℃~121℃で7分間加熱し、以下の基準で各観点から評価した。その結果を表2に示す。
【0078】
(評価基準)
◎:大変良い
○:良い
△:どちらともいえない
×:悪い
【0079】
【表2】
【0080】
表2に示されるとおり、発芽大豆から得た豆腐は、通常大豆から得た豆腐と比較して、外観や食感だけではなく、全ての観点において優れていた。
【0081】
なお、データは示していないが、試験1で作製した豆腐を用いて麻婆豆腐を調理し、評価したところ、表2と同様の結果が得られた。さらに、試験1で作製した豆腐を用いて調理した麻婆豆腐をパウチ詰めしてレトルト殺菌し、それを電子レンジ等で加温した後であっても表2と同様の結果が得られた。
【0082】
<試験6:タンパク質分解酵素処理された豆乳から得られた豆腐の各種評価>
2種の豆乳原料、すなわち通常大豆から得られた豆乳(市販品)、及び、該豆乳に対して酵素処理を施した豆乳を準備し、これらの豆乳から得られた豆腐のアミノ酸分析を行った。
【0083】
(1)生姜汁由来のタンパク質分解酵素の調製
生姜(生のひね生姜)200gを粉砕及び搾汁し、生姜汁を得た。得られた生姜汁を2000rpm、20分遠心し、上清を濾過した。濾過物に、0.1mMメルカプトプロピオン酸473μl、及び、アスコルビン酸(濾過物に対して0.2%)を加えた。以下、得られた溶液を生姜汁由来のタンパク質分解酵素として用いた。なお、生姜汁には、ジンギパイン、システインプロテアーゼ等のタンパク質分解酵素が含まれることが知られる。
【0084】
(2)豆乳への酵素処理
通常大豆から得られた豆乳として、市販豆乳(スジャータ社固形分量、12%)を用いた。該豆乳60mlに生姜汁由来のタンパク質分解酵素を0.06ml加え、37℃の恒温槽で48時間放置した。以下、この工程から得られた豆乳を「酵素処理豆乳」ともいう。
また、対象区として市販豆乳(スジャータ社固形分量、12%)60mlに滅菌蒸留水を0.06ml加え、37℃の恒温槽で48時間放置した。以下、この工程から得られた豆乳を「通常豆乳」ともいう。
酵素処理豆乳及び通常豆乳のいずれも、最終固形分量が11.3%となるように滅菌蒸留水で調整した。
【0085】
(3)豆腐の作製
上記(2)で得られた各豆乳にグロコノデルタラクトン(豆乳に対して0.34質量%)を加えて凝固させ、豆腐を得た。
【0086】
(4)アミノ酸分析
上記で得られた豆腐のアミノ酸分析を以下の条件で行い、遊離アミノ酸量を特定した。その結果を表3に示す。
使用機器:高速液体クロマトグラフ(UHPLC)、株式会社島津製作所製
検出器:蛍光検出器
カラム:「Inertil ODS-4 HP 3μm」(100mmL.×3.0mmI.D.)、GL Sciences社製
カラム温度:35℃
溶出バッファーの組成:15mmol/L りん酸二水素カリウム、5mmol/L りん酸水素二カリウム、水/アセトニトリル/メタノール=15/45/40(V/V/V)
流量:0~1.5min 9.5%、1.5~6.0min 30%、6.0~11.0min 40%、11.0~16.0min 100%
流量:0.8ml/min
【0087】
【表3】
【0088】
表3に示されるとおり、酵素処理豆乳から得られた豆腐は、通常豆乳から得られた豆腐よりも顕著に遊離アミノ酸量が多かった。
【0089】
<試験7:豆腐の加熱試験-2>
試験6で作製した豆腐を、レトルト用袋(ナイロンポリ(NYPE)製)の容器に充填し、110℃~121℃で7分間加熱し、以下の基準で各観点から評価した。その結果を表4及び図6に示す。
【0090】
(評価基準)
◎:大変良い
○:良い
△:どちらともいえない
×:悪い
【0091】
【表4】
【0092】
表4及び図6に示されるとおり、酵素処理豆乳から得られた豆腐は、通常豆乳から得られた豆腐と比較して、鬆立ちの発生が顕著に抑制されていた。
【0093】
なお、データは示していないが、試験1で作製した豆腐を用いて麻婆豆腐を調理し、評価したところ、表2と同様の結果が得られた。さらに、試験6で作製した豆腐を用いて調理した麻婆豆腐をパウチ詰めしてレトルト殺菌し、それを電子レンジ等で加温した後であっても表4及び図6と同様の結果が得られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6