(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20231107BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20231107BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20231107BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20231107BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
C08L23/08
C08K5/13
C08K5/49
(21)【出願番号】P 2019141200
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018167678
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】安井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山下 敦史
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-523763(JP,A)
【文献】特開2007-204674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08L 23/26
C08L 23/08
C08K 5/13
C08K 5/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、ポリアミド樹脂(A)を40~84質量%、オレフィン系アイオノマー(B)を15質量%以上、耐衝撃材(C)を0~10質量%、及び耐熱剤(D)を0.1~3質量%含み、
前記ポリアミド樹脂(A)が、脂肪族共重合ポリアミド(A-1)及び芳香族共重合ポリアミド(A-2)から成る群から選択される少なくとも1種を含み、
前記耐熱剤(D)が、2種以上の有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1)を含むポリアミド樹脂組成物
であって、
前記有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1)がペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートを含むポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記耐熱剤(D)が、さらにリン系耐熱剤(D-2)を含む請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂(A)が、脂肪族共重合ポリアミド(A-1)、芳香族共重合ポリアミド(A-2)及び脂肪族ホモポリアミド(A-3)を含む請求項1又は2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記オレフィン系アイオノマー(B)が、融点75~100℃であり、密度940~980kg/m
3であり、かつ、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法によって得られる亜鉛元素の配合量が3質量%以上である請求項1~3のいずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記耐衝撃材(C)が、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
ISO11443に準じて内径1.0mm、長さ10mmのキャピラリーダイを用いたキャピラリーレオメーターで、測定温度250℃、せん断速度121.6sec
-1にて樹脂を押出し、15cm押し出したストランドを採取した後、室温で24時間冷却して固化させたストランドの径が3.00mm未満である請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有することから、エンジニアリングプラスチックスとして様々な用途で展開され、様々な成形方法によって使用されている。そのなかで、ブロー成形によるブロー成形品としての利用も進んでいる。今後急速に拡大が見込まれるFCV(燃料電池自動車)においては、燃料を入れるための大型のブロー成形品が求められている。
【0003】
ポリアミド樹脂に酸変性耐衝撃材を加えたポリアミド樹脂組成物は、粘度が増大し、ブロー成形性に優れることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、大型ブロー成形品を成形する際には、一度に多くの樹脂を素早く排出させる必要があることから、成形機内にアキュームレーターを搭載させる必要がある。この方式の場合、溶融樹脂がアキュームレーター内に滞留してしまい、樹脂組成物中に酸変性耐衝撃材を含むと、樹脂と酸変性耐衝撃材のグラフト化が進行する。特許文献1のポリアミド樹脂組成物は、組成物中の酸変性耐衝撃材の量が多いため、上記グラフト化進行により成形品の表面外観が悪くなるという問題点があった。
【0004】
一方、ポリアミド樹脂にアイオノマーを加えたポリアミド樹脂組成物が、高粘度化が達成され、ブロー成形に適するとともに、耐衝撃性に優れることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4983004号公報
【文献】特表2006-523763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、このようにブロー成形には、必要なパリソンの保持のために高い溶融粘度が求められていたが、高い溶融粘度と溶融樹脂の均一な肉厚とを両立させることは難しかった。また、従来のポリアミド樹脂組成物では、依然としてブロー成形時の滞留時熱安定性に改善の余地があった。
本発明は、ブロー成形においてブロー成形性と溶融樹脂の均一な肉厚の両立を達成するとともに、溶融樹脂組成物を滞留させる際の熱安定性に優れることにより、良好な成形体の表面外観が得られ、さらには室温及び低温下における耐衝撃性にも優れるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば以下に関する。
[1]ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、ポリアミド樹脂(A)を40~84質量%、オレフィン系アイオノマー(B)を15質量%以上、耐衝撃材(C)を0~10質量%、及び耐熱剤(D)を0.1~3質量%含み、
前記ポリアミド樹脂(A)が脂肪族共重合ポリアミド(A-1)及び芳香族共重合ポリアミド(A-2)から成る群から選択される少なくとも1種を含み、
前記耐熱剤(D)が2種以上の有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1)を含むポリアミド樹脂組成物。
[2]前記耐熱剤(D)が、さらにリン系耐熱剤(D-2)を含む[1]記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]前記ポリアミド樹脂(A)が脂肪族共重合ポリアミド(A-1)、芳香族共重合ポリアミド(A-2)及び脂肪族ホモポリアミド(A-3)を含む[1]又は[2]記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記オレフィン系アイオノマー(B)が、融点75~100℃であり、密度940~980kg/m3であり、かつ、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法によって得られる亜鉛元素の配合量が3質量%以上である[1]~[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[5]前記耐衝撃材(C)が(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[6]ISO11443に準じて内径1.0mm、長さ10mmのキャピラリーダイを用いたキャピラリーレオメーターで、測定温度250℃、せん断速度121.6sec-1にて樹脂を押出し、15cm押し出したストランドを採取した後、室温で24時間冷却して固化させたストランドの径が3.00mm未満である[1]~[5]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブロー成形においてブロー成形性と溶融樹脂の均一な肉厚の両立を達成するとともに、溶融樹脂組成物を滞留させる際の熱安定性に優れることにより、良好な成形体の表面外観を得られるとともに、さらには室温及び低温下における耐衝撃性にも優れるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、ポリアミド(A)を40~84質量%、オレフィン系アイオノマー(B)を15質量%以上、耐衝撃材(C)を0~10質量%、及び耐熱剤(D)を0.1~3質量%含み、
前記ポリアミド樹脂(A)が脂肪族共重合ポリアミド(A-1)及び芳香族共重合ポリアミド(A-2)から成る群から選択される少なくとも1種を含み、
前記耐熱剤(D)が2種以上の有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1)を含む。
【0010】
(A)ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂(A)は、脂肪族共重合ポリアミド(A-1)及び芳香族共重合ポリアミド(A-2)から成る群から選択される少なくとも1種を含む。脂肪族共重合ポリアミド(A-1)及び芳香族共重合ポリアミド(A-2)から成る群から選択される少なくとも1種を含むことにより、ブロー成形時のピンチオフ部強度が優れる他、成形品の肉厚が均一となる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、さらに脂肪族ホモポリアミド(A-3)を含むことが好ましい。
【0011】
(A-1)脂肪族共重合ポリアミド
脂肪族共重合ポリアミド(A-1)は、2種以上の脂肪族の構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族共重合ポリアミド(A-1)は、ジアミンとジカルボン酸との組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体である。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
【0012】
ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキシルジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-/1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、脂肪族ジアミンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、直鎖状脂肪族ジアミンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ヘキサメチレンジアミンが更に好ましい。
これらのジアミンは1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0013】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0014】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びドデカンラクタムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0015】
脂肪族共重合ポリアミド(A-1)として具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)等の脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。
【0016】
これらの中でも、生産性の観点から、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6/66及びポリアミド6/66/12がより好ましく、ポリアミド6/66が特に好ましい。
これらの脂肪族共重合ポリアミド(A-1)は、各々単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0017】
脂肪族共重合ポリアミド(A-1)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0018】
脂肪族共重合ポリアミド(A-1)の相対粘度は特に制限されないが、本発明の効果を向上させる観点から、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定した相対粘度が1.8以上5.0以下であることが好ましい。
【0019】
脂肪族共重合ポリアミド(A-1)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ、中和滴定で求められる。脂肪族共重合ポリアミド(A-1)の末端アミノ基濃度は、30μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上50μmol/g以下がより好ましい。
【0020】
脂肪族共重合ポリアミド(A-1)がポリアミド樹脂(A)に含まれる場合、ポリアミド樹脂(A)100質量%に含まれる脂肪族共重合ポリアミド(A-1)の総含有質量は、機械物性や耐熱性の観点から10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0021】
(A-2)芳香族共重合ポリアミド
芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香族系モノマー成分を少なくとも1成分含む芳香族ポリアミド樹脂であり、例えば、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸を原料とし、これらの重縮合によって得られるポリアミド樹脂である。芳香族共重合ポリアミド(A-2)は、上記芳香族ポリアミド樹脂の中で、2種以上の構成単位からなるポリアミド樹脂である。
【0022】
原料の脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸としては、前記の脂肪族共重合ポリアミド樹脂の説明で例示したものと同様のものが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸としては、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。
これらの芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸は1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0023】
具体的な例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6I/6)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ポリアミド6T/M5T)、およびこれらの混合物ないし共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリアミド6T/6Iが好ましい。
【0024】
本発明で使用する芳香族共重合ポリアミド(A-2)として、特に有用なものとしては、芳香族系モノマー成分を少なくとも2成分含む非晶性部分芳香族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。非晶性部分芳香族共重合ポリアミド樹脂としては、動的粘弾性の測定によって得られた絶乾時の損失弾性率のピーク温度によって求められたガラス転移温度が100℃ 以上の非晶性ポリアミドが好ましい。
ここで、非晶性とは、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融解熱量が1cal/g以下であることをいう。
【0025】
前記非晶性部分芳香族共重合ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸成分単位40~95モル%およびイソフタル酸成分単位5~60モル%からなる芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとからなるものが好ましい。好ましい組み合わせとしては、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩とヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の等モル塩が挙げられる。
また、脂肪族ジアミン並びにイソフタル酸およびテレフタル酸からなる芳香族ジカルボン酸からなるポリアミド形成性成分99~60質量%と脂肪族ポリアミド成分1 ~40質量%とであるものが好ましい。
【0026】
本発明における芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の重合度には特に制限はないが、JIS K 6810に従って98% 硫酸中濃度1%、(A-2)芳香族共重合ポリアミド樹脂温度25℃で測定した相対粘度が、1.5~4.0であることが好ましく、より好ましくは1.8~3.0である。
芳香族共重合ポリアミド(A-2)がポリアミド樹脂(A)に含まれる場合、ポリアミド樹脂(A)100質量%に含まれる芳香族共重合ポリアミド(A-2)の総含有質量は、機械物性と成形性の観点から1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。
【0027】
(A-3)脂肪族ホモポリアミド
脂肪族ホモポリアミド(A-3)は、1種類の脂肪族アミドの構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族ホモポリアミド(A-3)は、1種類のラクタム及び当該ラクタムの加水分解物であるアミノカルボン酸の少なくとも一方からなるものであってもよく、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸との組合せからなるものであってもよい。
脂肪族ホモポリアミドをさらに含むことで、機械物性や耐熱性やガスバリアー性の点から好ましい。
【0028】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びドデカンラクタムからなる群から選択される1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される1種が好ましい。
【0029】
ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキシルジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-/1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンジアミン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、脂肪族ジアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミンがより好ましい。
【0030】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジオン酸からなる群から選択される1種がより好ましく、セバシン酸又はドデカンジオン酸が更に好ましい。
【0031】
脂肪族ホモポリアミド(A-3)として具体的には、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリアミド122等が挙げられる。脂肪族ホモポリアミド(A-3)は1種単独でも、2種以上を組合せた混合物として用いてもよい。
【0032】
中でも脂肪族ホモポリアミド(A-3)は、重合生産性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610及びポリアミド612からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610及びポリアミド612ら選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリアミド6が更に好ましい。
【0033】
脂肪族ホモポリアミド(A-3)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0034】
脂肪族ホモポリアミド(A-3)の相対粘度は、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される。脂肪族ホモポリアミド樹脂の相対粘度は、2.7以上であることが好ましく、2.7以上5.0以下であることがより好ましい。更に本発明の効果を向上させる観点から、2.7以上4.5未満がさらに好ましい。2.7以上であると、ポリアミド組成物の溶融粘度が低すぎることがないため、押出成形時の成形品形状保持及び特にブロー成形時のパリソン形状保持が良好であり、5.0以下であるとポリアミド組成物の溶融粘度が高すぎることがなく、ブロー成形時、溶融樹脂の均一な肉厚が得られる。
【0035】
脂肪族ホモポリアミド(A-3)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ、中和滴定で求められる。脂肪族ホモポリアミド(A-3)の末端アミノ基濃度は、30μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上50μmol/g以下がより好ましい。
【0036】
脂肪族ホモポリアミド(A-3)がポリアミド樹脂(A)に含まれる場合、ポリアミド樹脂(A)100質量%に含まれる脂肪族ホモポリアミド(A-3)の総含有質量は、機械物性や耐熱性やガスバリアー性の観点から、40~85質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。
【0037】
ポリアミド樹脂(A)は、成形品の機械物性、ガスバリアー性、ブロー成形性の観点から、脂肪族共重合ポリアミド(A-1)及び芳香族共重合ポリアミド(A-2)の組み合わせを含むことが好ましく、脂肪族共重合ポリアミド(A-1)、芳香族共重合ポリアミド(A-2)及び脂肪族ホモポリアミド(A-3)の組み合わせがより好ましい。このような組み合わせとしては、脂肪族共重合ポリアミド(A-1)として、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される少なくとも1種と、芳香族共重合ポリアミド(A-2)として、ポリアミド6T/6Iとの組み合わせが好ましく、さらにこの組み合わせに脂肪族ホモポリアミド(A-3)としてポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610及びポリアミド612からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせることが好ましく、脂肪族共重合ポリアミド(A-1)として、ポリアミド6/66と、芳香族共重合ポリアミド(A-2)として、ポリアミド6T/6Iと、脂肪族ホモポリアミド(A-3)として、ポリアミド6との組み合わせがより好ましい。
【0038】
ポリアミド樹脂(A)は、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が2.7以上であり、2.7以上5.0以下であることが好ましい。更に本発明の効果を向上させる観点から、2.7以上4.5未満がより好ましい。2.7以上では、ポリアミド組成物の溶融粘度が低すぎることがないため、押出成形時の成形品形状保持及びブロー成形時のパリソン形状保持が良好である。また5.0以下では、ポリアミド組成物の溶融粘度が高すぎることなく、ブロー成形時、溶融樹脂の均一な肉厚が得られる。
【0039】
ポリアミド樹脂(A)が、相対粘度が異なる2種以上のポリアミド樹脂(例えば、少なくとも1種の脂肪族ホモポリアミド(A-3)と少なくとも1種の脂肪族共重合ポリアミド(A-1))を含む場合、ポリアミド樹脂(A)における相対粘度は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド樹脂(A)の相対粘度としてもよい。
【0040】
耐衝撃材(C)との反応性から、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ中和滴定で求められる末端アミノ基濃度として、30μmol/g以上であり、30μmol/g以上110μmol/g以下の範囲が好ましく、30μmol/g以上70μmol/g以下の範囲がより好ましい。30μmol/g以上であれば、耐衝撃材(B)との反応性が良く、溶融粘度や耐衝撃性を十分に得ることができる。また110μmol/g以下では、溶融粘度が高すぎず、成形加工性が良好である。
【0041】
ポリアミド樹脂(A)が、末端アミノ基濃度の異なる2種以上のポリアミド樹脂(例えば、少なくとも1種の脂肪族ホモポリアミド(A-3)と少なくとも1種の脂肪族共重合ポリアミド(A-1))を含む場合、ポリアミド樹脂(A)における末端アミノ基濃度は、上記中和摘定で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とその混合比が判明している場合、それぞれの末端アミノ基濃度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度としてもよい。
【0042】
ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、40~84質量%、好ましくは40~80質量%、好ましくは50~80質量%、より好ましくは60~80質量%、さらに好ましくは65~80質量%、特に好ましくは65~75質量%含まれる。ポリアミド樹脂(A)の含有割合が40質量%以上であると機械物性や耐熱性が良好であり、84質量%以下であると低温物性及びブロー成形性が良好である。
【0043】
(B)オレフィン系アイオノマー
ポリアミド樹脂組成物は、オレフィン系アイオノマー(B)を含む。オレフィン系アイオノマーとは、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を金属又は金属イオンによって中和したものをいう。オレフィン系アイオノマー(B)を配合すると、ブロー成形時のパリソン特性が大幅に向上する反面、溶融粘度は大きな上昇を伴わないので生産性が向上する。オレフィン系アイオノマー(B)の樹脂としては、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体とを共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これらα,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。アイオノマーに用いられる金属及び金属イオンとしてはNa、K、Cu、Mg、Ca、Ba、Zn、Cd、Al、Fe、Co及びNi並びにそれらのイオンなどが挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよいが、少なくともZn(本明細書では「亜鉛」ともいう)を含むことが好ましい。これらの中でも、エチレンーメタクリル酸共重合体のアイオノマーが好ましい。オレフィン系アイオノマーの市販品としては、三井・ダウ ポリケミカル株式会社製のハイミラン(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0044】
オレフィン系アイオノマー(B)は、示差走査熱量計(DSC)でISO11357-3に準じて、窒素雰囲気下で、20℃/分で昇温して測定した融点が、75~100℃であることが好ましく、80~95℃であることがより好ましい。
また、オレフィン系アイオノマー(B)は、JIS K7112で測定した密度が、940~980kg/m3であることが好ましく、950~970kg/m3であることがより好ましい。
さらに、オレフィン系アイオノマー(B)に含まれる金属イオンは少なくとも亜鉛が含まれることが好ましく、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法ICP-AES測定による亜鉛元素の配合量が3質量%以上であることがより好ましい。
融点、密度及び亜鉛量が上記範囲にあると、ポリアミドとの相溶性やブロー成形時のスウェル拡大抑止による肉厚安定性の観点から好ましい。
【0045】
オレフィン系アイオノマー(B)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、15質量%以上、好ましくは15~45質量%、より好ましくは15~35質量%含まれる。オレフィン系アイオノマー(B)の含有割合が上記範囲にあると、低温特性及びブロー成形におけるパリソン特性が良好になる。
【0046】
(C)耐衝撃材
ポリアミド樹脂組成物は、少なくとも1種の耐衝撃材(C)を含むことが好ましい。耐衝撃材としてはゴム状重合体が挙げられる。耐衝撃材は、ASTM D-790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。
【0047】
耐衝撃材(C)として具体的には、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。耐衝撃材(C)として好ましくは、エチレン/α-オレフィン系共重合体が挙げられる。
【0048】
(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上又は4以上のα-オレフィンとを共重合した重合体である。
炭素数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0049】
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0050】
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体とを共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これらα,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0051】
また、耐衝撃材(C)として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体である。このような成分により変性することにより、ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
【0052】
ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。
【0053】
これらの官能基を含む化合物、すなわちカルボン酸及びその誘導体の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの中では無水マレイン酸が好ましい。
【0054】
これらの中でも、耐衝撃材(C)として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、不飽和カルボン酸又はその酸無水物等により酸変性された重合体であることが好ましい。
耐衝撃材(C)に酸無水物基が含まれる場合、耐衝撃材(C)における酸無水物基の含有量は、25μmol/g超過100μmol/g未満が好ましく、35μmol/g以上95μmol未満がより好ましく、40μmol/g以上90μmol/g以下がさらに好ましい。含有量が25μmol/g超過では高い溶融粘度の組成物を得ることができ、ブロー成形において目標の肉厚寸法を得ることができる。また含有量が100μmol/g未満であると溶融粘度が高すぎず、押出機に負荷を抑えて良好に成形加工できる。耐衝撃材(C)が有する酸無水物基の含有量は、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定される。
【0055】
耐衝撃材(C)として、酸無水物基の含有量が異なる2種以上の耐衝撃材を用いる場合、耐衝撃材(C)における酸無水物基の含有量は、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定されるのが好ましいが、それぞれの耐衝撃材の酸無水物基の含有量とその混合比が判明している場合、それぞれの酸無水物基の含有量にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、耐衝撃材(C)の酸無水物量としてもよい。
【0056】
耐衝撃材(C)は、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2160gで測定したMFRが0.1g/10分以上10.0g/10分以下であることが好ましい。MFRが0.1g/10分以上であると、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎず、例えば押出成形時の成形品の形状及びパリソンの形状が不安定になることが抑制され、成形体の厚みがより均一になる傾向がある。また、MFRが10.0g/10分以下であると、押出成形時の成形品及びブロー成形時のパリソンのドローダウンが大きくなりすぎず、良好な押出成形品及びブロー成形品が得られる傾向がある。
【0057】
耐衝撃材(C)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、0~10質量%、好ましくは2~10質量%含まれる。耐衝撃材(C)の含有割合が上記範囲にあると低温物性及びブロー成形品の肉厚均一性が良好である。
【0058】
(D)耐熱剤
ポリアミド樹脂組成物は、耐熱剤(D)を含む。耐熱剤(D)は、2種以上の有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1)を含む。2種以上の有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1)を含むことにより、溶融樹脂の成形機における滞留時間が長くなった場合でも通常の熱老化性、物性、溶融粘度等を維持しながら、熱溶着性をより向上させることができる。その理由としては、例えば、有機系ヒンダードフェノール系耐熱剤の添加によって、耐衝撃剤の熱劣化によるゲル化が抑制され、それにより造核作用が抑制されるためと考えられる。そのため、2種以上の有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤を含むと、ブロー成形性に優れるとともに、ブロー成型時の焼けを防ぐことができる。耐熱剤は、2種以上の有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤に加え、さらにリン系耐熱剤(D-2)を含むことが好ましい。なお、有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤には、ヒンダードフェノール構造を有するリン系耐熱剤、その他ヒンダードフェノール構造を有する無機系耐熱剤は含まない。
【0059】
(ヒンダードフェノール系耐熱剤)
本明細書において、ヒンダードフェノールとは、フェノールの水酸基のO(オルト)位に置換基を有する化合物をいう。O位の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基が好ましく、嵩高いi-プロピル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基がより好ましく、t-ブチル基が最も好ましい。また、O位は、フェノールの水酸基に対する2つのO位がいずれも置換基を有することが好ましい。
【0060】
(有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1))
有機系ヒンダードフェノール系耐熱剤としては、分子内にアミド結合を有する有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-1)及び分子内にアミド結合を有さない有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-2)が挙げられる。この中で、2種以上の有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤の組み合わせとしては、1種以上の分子内にアミド結合を有する有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-1)と1種以上の分子内にアミド結合を有さない有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-2)との組み合わせ、2種以上の分子内にアミド結合を有さない有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-2)の組み合わせが好ましく挙げられる。
【0061】
(分子内にアミド結合を有する有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-1))
分子内にアミド結合を有する有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-1)としては、具体的には、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの耐熱剤の市販品としては、製品名「Irganox1098」(BASF社)が挙げられる。
【0062】
(分子内にアミド結合を有さない有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-2))
分子内にアミド結合を有さない有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1-2)としては、具体的には、ペンタエリトリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの耐熱剤の市販品としては、「Irganox1010」(BASF社)、「Sumilizer GA-80」(住友化学社)が挙げられる。
【0063】
(リン系耐熱剤(D-2))
リン系耐熱剤(D-2)は、ヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、ヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物が好ましく、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物がより好ましく、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物がさらに好ましい。O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物は、具体的には、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイトを挙げることができる。O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物は、具体的には、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-4,4-ビフィニルジホスフィンを主成分とするビフィニル、三塩化リン及び2,4-ジ-tert-ブチルフェノールの反応生成物を挙げることができる。これらの耐熱剤の市販品としては、「Irgafos168」(BASF社)が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0064】
耐熱剤(D)は、(D-1)、(D-2)以外の有機系耐熱剤、及び無機系耐熱剤を含んでいてもよい。(D-1)、(D-2)以外の有機系耐熱剤としては、イオウ系酸化防止剤等を挙げることができる。
イオウ系酸化防止剤としては、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジドデシル(3,3’-チオジプロピオネート)を挙げることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(D-1)、(D-2)以外の耐熱剤である無機系耐熱剤の種類としては、銅化合物やハロゲン化カリウムであり、銅化合物としては、ヨウ化第一銅、臭化第一銅、臭化第二銅、酢酸銅等が挙げられる。耐熱性と金属腐食の抑制の観点からヨウ化第一銅が好ましい。ハロゲン化カリウムは、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム等が挙げられる。耐熱性と金属腐食の抑制の観点からヨウ化カリウム及び/又は臭化カリウムが好ましい。これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
更に、メラミン、ベングアナミン、ジメチロール尿素又はシアヌール酸などの含窒素化合物を併用するとより効果的である。
【0067】
耐熱剤(D)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、0.1~3質量%、好ましくは0.1~2質量%含まれる。耐熱剤(D)の含有割合が上記範囲にあると、成形品の外観に焼け、内表面の肉厚均一性、成形品全体の黄変を生じることなく、外観を良好にすることができる。
【0068】
また、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、耐熱性、成形品外観の観点から、有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤(D-1)は、好ましくは0.1~2質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%含まれ、耐熱性、成形品外観の観点から、リン系耐熱剤(D-2)は、好ましくは0.1~1質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%含まれる。
【0069】
(E)添加剤
ポリアミド樹脂組成物は目的等に応じて染料、顔料、繊維状補強物、粒子状補強物、可塑剤、酸化防止剤((D)成分を除く)、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等の機能性付与剤等を適宜含有していてもよい。本発明の効果向上の為、ポリアミド樹脂組成物は、酸化防止剤を含有するのが好ましい。
任意の添加剤(E)は、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%含まれる。
【0070】
[ポリアミド樹脂組成物]
ポリアミド樹脂組成物は、ISO11443に準じて、内径1.0mm、長さ10mmのキャピラリーダイを用いたキャピラリーレオメーターで、測定温度250℃、せん断速度121.6sec-1にて樹脂を押出し、15cm押し出したストランドを採取した後、室温で24時間冷却して固化させ、ノギスを用いてストランド直径を測定した場合、3.00mm未満であることが好ましく、2.50mm以下であることがより好ましい。ストランド直径が上記範囲にあると、ブロー成形時にスウェルが抑制でき、目標とする寸法の成形品を得られやすいという点で好ましい。上記値は、オレフィンアイオノマー(B)の融点が80~95℃、密度が950~970kg/m3であり、かつオレフィン系アイオノマーに含まれる金属イオンは少なくとも亜鉛を含み、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法ICP-AES測定によって得られる亜鉛元素の配合量が3質量%以上のものを用いることで達成することができる。
【0071】
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。
ポリアミド樹脂(A)と、オレフィン系アイオノマー(B)と、その他任意成分との混合には、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機が用いられる。例えば、2軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
【0072】
ポリアミド樹脂組成物は、溶融粘度が低いにもかかわらず、パリソン保持能力を有し、成形時に滞留した場合でも成形体の表面外観に優れることから、ブロー成形によるブロー成形品の製造に好適に用いることができる。さらには、押出成形による押出成形品の製造に好適に用いることができる。
【0073】
ポリアミド樹脂からブロー成形によりブロー成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。一般的には、通常のブロー成形機を用いパリソンを形成した後、ブロー成形を実施すればよい。パリソン形成時の好ましい樹脂温度は、ポリアミド樹脂組成物の融点より10℃から70℃高い温度範囲で行うことが好ましい。
【0074】
ポリアミド樹脂から押出成形により押出成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。
また、ポリエチレンなどのポリオレフィンや他の熱可塑性樹脂と共押出した後、ブロー成形を行い、多層構造体を得ることも可能である。その場合ポリアミド樹脂組成物層とポリオレフィンなどの他の熱可塑性樹脂層の間に接着層を設けることも可能である。多層構造体の場合、本発明のポリアミド樹脂組成物は外層、内層のいずれにも使用し得る。
【0075】
ブロー成形によるブロー成形品及び押出成形による押出成形品としては、特に限定されないが、スポイラー、エアインテークダクト、インテークマニホールド、レゾネーター、燃料タンク、ガスタンク、作動油タンク、燃料フィラーチューブ、燃料デリバリーパイプ、その他各種ホース・チューブ・タンク類などの自動車部品、電動工具ハウジング、パイプ類などの機械部品を始め、電気・電子部品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品など各種用途が好適に挙げられる。これらの中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物の成形品は大型成形品にも対応可能なブロー成形性に優れ、耐衝撃性にも優れることから、大型タンク、特に高圧ガスタンクにより好適に用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例において使用した樹脂及び成形品の物性評価方法を以下に示す。
【0077】
(生産性)
二軸混練機TEX44HCT、シリンダー径44mm L/D35で、シリンダー温度250℃、スクリュー回転120rpm、吐出量40kg/hrsにて溶融混練し、各種生産性を確認した。
(1)樹脂温度
ストランドが排出される前のダイヘッド付近混練機内樹脂温度を測定した。樹脂温度が高すぎると品質劣化の原因となる。
(2)トルク(電流)
混練中のスクリュー電流値をトルクとして計測した。電流値が低い程、スクリュー回転数を上げることができ、生産性を高めることができる。
(3)ストランド状態
凹凸が無く、滑らかな表面状態なものを良好とし、凹凸があるものや著しく表面粗さが悪いものを不良とした。
以上の生産性の(1)~(3)の結果から、生産性について、以下の基準で評価した。
○:樹脂温度が335℃以下、トルクが134アンペア以下、ストランド状態が良好の全ての条件を満たす。
×:〇の基準で少なくとも、1つの条件を満たさないものがあれば、それを×とした。
【0078】
(ブロー成形性)
株式会社プラコー製のブロー成形機DA-50型アキュームヘッド付きを用いてブロー成形性を確認した。測定条件は、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数40rpm、ダイ口径50mm、円筒状3リットルボトル金型にて成形品を取得した。
(1)押出性
スクリュー回転時の電流値を押出性として計測した。電流値が低い程、押出性が良くスクリュー回転数を上げることが可能であり、ブロー成形サイクルを短縮することができる。
(2)パリソン特性
(2-1)5秒後の垂下り量(ドローダウン量 射出停5sec)
アキュームレーターからパリソンを射出後、5秒経過時点の樹脂の垂下りの長さを動画にて撮影し、時間に対する長さを読み取った。5秒後の垂下り量が少ない程、パリソン保持率が良い。
(2-2)2秒後の垂下り量(ドローダウン量 射出停2sec)
5秒後の垂下り量と同様に2秒後の垂下り量を撮影し読み取った。2秒後の垂下り量が少ない程、パリソン保持率が良い。
(3)内表面状態
目視による判定で、ブロー成形品の内外表面焼けや黄変が成形品全体で確認されないものを良好とした。
(4)滞留後内表面凹凸
肉厚均一性の確認のため、ブロー成形品の滞留後内表面凹凸を目視で判定し、以下の基準で評価した。凹凸が抑えられているほど、肉厚均一性が良い。
無:外表面と同等な表面状態で、大きな凹凸がなく均一であるものを無とした。
有:外表面と異なり大きな凹凸が確認されるものを有とした。
以上のブロー成形性の(1)~(4)の結果から、ブロー成形性について、以下の基準で評価した。
○:押出性の尺度である電流値が40アンペア未満、5秒後の垂下り量及び2秒後の垂下り量のどちらかが、50cm未満、ブロー成形品の内外表面焼けや黄変が成形品全体で確認されない又は内表面で吹込み部やピンチオフ部の一部分にのみ焼けを生じた、滞留後内表面凹凸が無い、の全ての条件を満たすものを〇とした。
×:〇の基準で少なくとも、1つの条件を満たさないものがあれば、それを×とした。
【0079】
(23℃物性及び-60℃物性)
ISO規格TYPE-A又はTYPE-B試験片を射出成形にて作成して機械物性のデータ取得に使用した。
(1)引張降伏応力及び引張降伏呼びひずみ、引張破壊呼びひずみ及び引張強さ
ISO527-2/1A/50に準じて、インストロン製引張試験機型式5567を使用して23℃及び-60℃で測定した。
(2)引張弾性率
ISO527-2/1A/1に準じて、インストロン製引張試験機型式5567を使用して23℃で測定した。
(3)シャルピー衝撃強さ
ISO179-1/1eAに準じて、安田精機製シャルピー衝撃試験機No.258-PCを用いて、-40℃において、Aノッチ入り厚み4mmの試験片を用いてエッジワイズ衝撃試験を行った。(n=10)
以上、23℃物性及び-60℃物性の(1)及び(2)の結果から、23℃物性及び-60℃物性について、以下の基準で評価した。
○:23℃における引張破壊呼びひずみが100%以上、-60℃における引張破壊呼びひずみが17%超、23℃における引張弾性率が1500MPa以上の全ての条件を満たす。
×:〇の基準で少なくとも1つの条件を満たさないものがあれば、それを×とした。
【0080】
(品質)
(1)溶融粘度
ISO11443に準じて、東洋精機製キャピログラフ1D 式P-Cを用いて、溶融粘度を測定した。測定温度は250℃でオリフィスは穴径1.0mm、長さ10mm(L/D=10)を使用して、せん断速度12.16sec-1、60.8sec-1、及び121.6sec-1のそれぞれの時の溶融粘度を測定した。溶融粘度が高すぎると、混練機やブロー成形機に負荷が大きくなることとで、吐出量が制限され、生産性の点で好ましくない。
(2)ストランド径
溶融粘度測定と同様に、測定温度250℃、キャピラリーダイの内径1.0mm、長さ10mm、せん断速度12.16sec-1、60.8sec-1、及び121.6sec-1のそれぞれにて樹脂を押出し、15cm押し出したストランドを採取した後、室温で24時間冷却して固化させ、その中央部の直径をノギスを用いてストランド径を測定した。ストランド径が大きすぎると、ブロー成形時のスウェルが抑制できず、目標とする寸法の成形品を得られ難いという点で好ましくない。
【0081】
(3)融点Tm及び凝固点Tcの測定
PerkinELmer社製PYRIS Diamond DSC用いてISO11357-3に準じて、窒素雰囲気下で、20℃/分で昇温して測定した。
【0082】
(4)耐熱性
ISO規格TYPE-A試験片を射出成形にて作成して、耐熱性のデータ取得に使用した。熱処理は、200℃に調整された熱風式オーブンに試験片を入れ、4.5hrs後に取り出しを行った。冷却後、引張降伏応力、引張破壊ひずみについて、ISO527-2/1A/50に準じて、インストロン製引張試験機型式5567を使用して-60℃で測定した。
(5)耐ブリスター性
87.5MPa、85℃の高圧水素ガスを封入したオートクレーブに、ブロー成形品を4mmtを入れ、20時間超保持後、脱圧速度0.5minで取り出しを行った。試験片に水膨れ状の外観異常有無を目視判定した。
以上の品質の(1)~(5)の結果から、品質について、以下の基準で評価した。
○:せん断速度12.16sec-1における溶融粘度が15,000未満である、せん断速度121.6sec-1におけるストランド径が2.7mm未満である、融点Tm及び結晶化温度Tcの差が、45℃を超える、耐熱性が200℃で4.5時間処理した後、-60℃で引張試験した時の引張破壊ひずみが15%を超える、耐ブリスター性試験において、水膨れが確認されなかった、の全ての条件を満たすものを〇とした。
×:〇の基準で少なくとも1つの条件でも満たさないものがあれば、それを×とした。
【0083】
[実施例1~14、比較例1~11]
表1に記載した各成分を二軸混練機TEX44HCT、シリンダー径44mm L/D35で、シリンダー温度250℃、スクリュー回転120rpm、吐出量40kg/hrsにて溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。
なお、表中の組成の単位は質量%であり、樹脂組成物全体を100質量%とする。
得られたペレットを上記物性評価に使用した。得られた結果を表1に示す。
【0084】
表中の略号は、以下の通りである。
(ポリアミド樹脂)
PA6:ポリアミド6、製品名「1030B」宇部興産株式会社製
PA6/66:ポリアミド6/66、製品名「5034B」、宇部興産株式会社製
芳香族PA6T/6I:ポリアミド6T/6I、製品名「Grivory G21」EMS-CHEMIE(Japan)株式会社製
【0085】
(オレフィン系アイオノマー)
Ionomer-1:密度960kg/m3、融点88℃、メルトフローレート0.9g/10分、亜鉛含有量3.4質量%、エチレン-メタクリル酸共重合体、金属イオン:亜鉛、製品名「ハイミラン(登録商標)1706」三井・ダウ ポリケミカル株式会社製
Ionomer-2:密度950kg/m3、融点96℃、メルトフローレート1.0g/10分、亜鉛含有量2.9質量%、エチレン-メタクリル酸共重合体、金属イオン:亜鉛、製品名「ハイミラン(登録商標)AM7328T」三井・ダウ ポリケミカル株式会社製
Ionomer-3:密度960kg/m3、融点95℃、メルトフローレート1.0g/10分、亜鉛含有量2.9質量%、エチレン-メタクリル酸共重合体、金属イオン:亜鉛、製品名「ハイミラン(登録商標)1554W」三井・ダウ ポリケミカル株式会社製
Ionomer-4:密度950kg/m3、融点101℃、メルトフローレート1.1g/10分、亜鉛含有量1.6質量%、エチレン-メタクリル酸共重合体、金属イオン:亜鉛、製品名「ハイミラン(登録商標)AM7326」三井・ダウ ポリケミカル株式会社製
【0086】
(耐衝撃材)
m-EBR:無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体、製品名「タフマー(登録商標)MH5020」三井化学株式会社製
m-LLDPE:無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン、製品名「UBE BOND F3000」宇部丸善ポリエチレン株式会社製
【0087】
(耐熱剤)
耐熱剤1:フェノール系酸化防止剤(N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)、製品名「Irganox1098」BASF社製
耐熱剤2:フェノール系酸化防止剤(3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、製品名「Sumilizer GA-80」住友化学社製
耐熱剤3:リン系酸化防止剤(トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)、製品名「Irgafos168」BASF社製
耐熱剤4:フェノール系酸化防止剤(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])、製品名「Irganox1010」BASF社製
(分散剤)
分散剤:ノニオン活性剤製品名「バル-7220」丸菱油化工業株式会社製
【表1】
実施例においては、生産性、ブロー成形性、成形品品質、室温及び低温における品質、その他の品質に優れた組成物が得られている、実施例2と実施例4~7とを比較すると、ポリアミド樹脂にオレフィン系アイオノマーのみを加えた場合よりも、さらに耐衝撃材を特定量加えた場合の方が、-40℃におけるシャルピー衝撃強さが優れることがわかる。実施例2と実施例11とを比べると、耐熱剤としてリン系酸化防止剤を含む方が、成形品の内表面状態が優れるとともに耐熱性が優れることがわかる。実施例と比較例1とを比較すると、ポリアミド樹脂組成物が、アイオノマー及び耐衝撃材のいずれも含まないと、パリソン特性が劣る上に引張破壊呼びひずみも劣ることがわかる。実施例2と実施例12~14とを比較すると、オレフィン系アイオノマーの融点または亜鉛含有量が特定の範囲にあると、パリソン特性が良好であり、またストランド径が大きすぎないことが分かる。実施例2と比較例2及び3とを比較すると、耐熱剤として、有機系のヒンダードフェノール系耐熱剤を1種のみしか用いないと、内表面に焼けが生じるとともに、耐熱性が劣ることがわかる。実施例1および2と比較例4~9とを比較すると、ポリアミド樹脂組成物が耐衝撃材を含んでいてもアイオノマーを含まないと、粘度が高く、ブロー成形性や、成形品の品質及び生産性が劣ることがわかる。さらには、耐衝撃材の量が多いと、室温における引張弾性率が低い。実施例と比較例10とを比較すると、ポリアミド樹脂組成物がアイオノマーと耐衝撃材を含む場合であっても、アイオノマーの量が特定の範囲未満であると、粘度が高く、ブロー成形性や、成形品の品質及び生産性が劣ることがわかる。実施例2と比較例11とを比較すると、ポリアミド樹脂が、脂肪族共重合ポリアミドおよび芳香族共重合ポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含まないと、パリソン特性が劣り、肉厚の均一な成形品を得ることが難しいことがわかる。