IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

特許7379006アラーム管理システムおよびアラーム管理方法
<>
  • 特許-アラーム管理システムおよびアラーム管理方法 図1
  • 特許-アラーム管理システムおよびアラーム管理方法 図2
  • 特許-アラーム管理システムおよびアラーム管理方法 図3
  • 特許-アラーム管理システムおよびアラーム管理方法 図4
  • 特許-アラーム管理システムおよびアラーム管理方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】アラーム管理システムおよびアラーム管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019144753
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021026559
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-02-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小野 優介
(72)【発明者】
【氏名】本多 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】村山 佳津希
(72)【発明者】
【氏名】桑谷 資一
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】刈間 宏信
【審判官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-224893(JP,A)
【文献】特開2006-277696(JP,A)
【文献】特開2005-250521(JP,A)
【文献】特開2010-33118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラーム管理装置と、監視端末と、コントローラとを備えるアラーム管理システムにおいて、
前記アラーム管理装置は、
前記コントローラから受信した情報に基づいてアラームを生成し、又は前記コントローラからアラームを受信し、
前記監視端末からフィルタリング条件に関する情報を受信し、
前記フィルタリング条件に基づいて、前記アラームをフィルタリングし、
前記監視端末を介して、前記フィルタリングされた前記アラームをオペレータに提示し、
前記アラーム管理装置は、
過去のアラームと、前記過去のアラームが時間経過に伴って変化した新たなアラームの比較に基づいて、前記新たなアラームに含まれる情報のうち前記過去のアラームから更新された一部の情報を差分情報として特定し、
前記新たなアラームに含まれる情報のうち前記差分情報のみを前記監視端末に送信し、
前記監視端末は、
前記新たなアラームに含まれる情報のうち前記差分情報のみを前記アラーム管理装置から取得し、
前記過去のアラームに含まれる情報のうち前記差分情報のみを書き替えることによって、前記新たなアラームを構成し、前記新たなアラームをオペレータに提示する、
アラーム管理システム。
【請求項2】
前記フィルタリング条件は、第1のフィルタリング条件と第2のフィルタリング条件とを含む、請求項1に記載のアラーム管理システム。
【請求項3】
前記第1のフィルタリング条件は、前記アラームが前記オペレータの閲覧権限に合致するか否かに関する条件を含み、前記第2のフィルタリング条件は、前記アラームが前記オペレータの閲覧希望対象であるか否かに関する条件を含む、請求項2に記載のアラーム管理システム。
【請求項4】
アラーム管理システムを用いたアラーム管理方法において、
アラーム管理装置が、
コントローラから受信した情報に基づいてアラームを生成する、又はコントローラからアラームを受信するステップと、
監視端末からフィルタリング条件に関する情報を受信するステップと、
前記フィルタリング条件に基づいて、前記アラームをフィルタリングするステップと、
前記監視端末を介して、前記フィルタリングされた前記アラームをオペレータに提示するステップと、を含み、
さらに、前記アラーム管理装置が、
過去のアラームと、前記過去のアラームが時間経過に伴って変化した新たなアラームの比較に基づいて、前記新たなアラームに含まれる情報のうち前記過去のアラームから更新された一部の情報を差分情報として特定するステップと、
前記新たなアラームに含まれる情報のうち前記差分情報のみを前記監視端末に送信するステップと、を含み、
前記監視端末が、
前記新たなアラームに含まれる情報のうち前記差分情報のみを前記アラーム管理装置から取得するステップと、
前記過去のアラームに含まれる情報のうち前記差分情報のみを書き替えることによって、前記新たなアラームを構成し、前記新たなアラームをオペレータに提示するステップと、
を含む、アラーム管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アラーム管理システムおよびアラーム管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント設備などで検知された異常は、オペレータの監視端末にアラームとして通知される。オペレータは、監視端末の表示部に表示されたアラームを認識して、この異常に対処する。
【0003】
特許文献1では、サーバが施設側端末から受信した警報情報を全ての監視端末に送信し、各監視端末は、サーバから警報情報を受信すると、警報処理判断部によって自端末にログインしているオペレータの担当エリア権限を確認する。警報処理判断部は、オペレータが担当エリア権限を有している場合、警報情報を受け取って表示する。一方、警報処理判断部は、オペレータが担当エリア権限を有していない場合、警報情報を破棄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-271837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、各監視端末がサーバから警報情報を受信した上で、各監視端末がオペレータの権限に基づいて警報情報を表示するか否かを判断すると、監視端末とサーバとの間の通信量が膨大となる場合がある。換言すると、アラーム管理装置などのサーバと監視端末との間の通信量を低減するためには、改善の余地がある。
【0006】
そこで、本開示は、アラーム管理装置と監視端末との間の通信量を低減することが可能なアラーム管理システムおよびアラーム管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係るアラーム管理システムは、アラーム管理装置と、監視端末と、コントローラとを備え、前記アラーム管理装置は、前記コントローラから受信した情報に基づいてアラームを生成し、又は前記コントローラからアラームを受信し、前記監視端末からフィルタリング条件に関する情報を受信し、前記フィルタリング条件に基づいて、前記アラームをフィルタリングし、前記監視端末を介して、前記フィルタリングされた前記アラームをオペレータに提示する。
【0008】
このように、アラーム管理装置側でフィルタリングされたアラームが監視端末を介してオペレータに提示されるので、アラーム管理装置と監視端末との間の通信量を低減することができる。
【0009】
一実施形態において、前記フィルタリング条件は、第1のフィルタリング条件と第2のフィルタリング条件とを含んでもよい。
【0010】
一実施形態において、前記第1のフィルタリング条件は、前記アラームが前記オペレータの閲覧権限に合致するか否かに関する条件を含み、前記第2のフィルタリング条件は、前記アラームが前記オペレータの閲覧希望対象であるか否かに関する条件を含んでもよい。
【0011】
一実施形態において、前記フィルタリング条件は、前記アラームの抑制条件を含んでもよい。
【0012】
アラームの抑制においては、情報量の低減に加え、オペレータによる重要アラームの見落としを防ぐことができる。
【0013】
一実施形態において、前記アラーム管理装置は、新たなアラームと過去のアラームとの比較に基づいて、前記新たなアラームに含まれる情報のうち更新された情報を特定し、前記監視端末は、前記更新された情報のみを前記アラーム管理装置から取得してもよい。
【0014】
このように、監視端末は、更新された情報のみをアラーム管理装置から取得するので、アラーム管理装置と監視端末との間の通信量をさらに低減することができる。
【0015】
幾つかの実施形態に係るアラーム管理方法は、アラーム管理システムを用いたアラーム管理方法において、アラーム管理装置が、コントローラから受信した情報に基づいてアラームを生成する、又はコントローラからアラームを受信するステップと、監視端末からフィルタリング条件に関する情報を受信するステップと、前記フィルタリング条件に基づいて、前記アラームをフィルタリングするステップと、前記監視端末を介して、前記フィルタリングされた前記アラームをオペレータに提示するステップと、を含む。
【0016】
このように、アラーム管理装置側でフィルタリングされたアラームが監視端末を介してオペレータに提示されるので、アラーム管理装置と監視端末との間の通信量を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、アラーム管理装置と監視端末との間の通信量を低減することが可能なアラーム管理システムおよびアラーム管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態に係るアラーム管理システムの各構成を示す図である。
図2】アラーム管理装置から監視端末に更新された情報のみを送信する場合を説明する図である。
図3図1のアラーム管理システムの第1の処理例を説明するフローチャートである。
図4図1のアラーム管理システムの第2の処理例を説明するフローチャートである。
図5】本開示の変形例に係るアラーム管理システムの各構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一符号は、同一または同等の構成要素を示す。
【0020】
図1を参照して、本開示の一実施形態に係るアラーム管理システム1は、アラーム管理装置10と、エンジニアリング端末20と、監視端末30-1、30-2と、コントローラ40とを備える。
【0021】
エンジニアリング端末20は、エンジニアの操作を受け付けることが可能な入力部21を有することができる。エンジニアは、入力部21を介して、後述するフィルタリング条件が記述された定義ファイルを作成することができる。エンジニアによって作成された定義ファイルは、監視端末30-1、30-2にダウンロードされる。エンジニアリング端末20としては、デスクトップPC等のコンピュータ、スマートフォン、またはタブレット端末などが挙げられる。
【0022】
監視端末30-1、30-2(以下、「監視端末30」と略記する場合がある。)は、それぞれ、エンジニアリング端末20からダウンロードされた定義ファイルに記述されたフィルタリング条件に関する情報をアラーム管理装置10に送信する指示部31-1、31-2(以下、「指示部31」と略記する場合がある。)と、アラーム管理装置10の処理結果を表示する表示部32-1、32-2(以下、「表示部32」と略記する場合がある。)とを有することができる。監視端末30としては、デスクトップPC等のコンピュータ、スマートフォン、またはタブレット端末などの任意の端末が挙げられる。なお、複数のオペレータが同一(1台)の監視端末30を共有してもよい。この場合、監視端末30は、各オペレータのログイン情報に基づいて、各オペレータを判別する。以下、「フィルタリング条件」を説明する。
【0023】
フィルタリング条件は、プラント設備などで発生した異常を報知するアラームをオペレータに提示するか否かを決定するための条件として、「監視端末のアクセス権限に合致するか否かに関する条件」、「オペレータの閲覧権限に合致するか否かに関する条件」、および「オペレータの閲覧希望対象であるか否かに関する条件」などが挙げられる。「監視端末のアクセス権限」とは、プラント設備のロケーション等に基づいて監視端末30毎に決定される権限である。例えば、監視端末30は、アラーム管理装置10のうち、監視端末30のアクセス権限に合致する記憶領域にアクセスすることができる。「オペレータの閲覧権限」とは、監視端末30にログインするオペレータの監視担当エリア、監視担当装置、および監視担当期間などに基づいて決定される権限である。例えば、オペレータは、オペレータの閲覧権限に合致するアラームを閲覧することができる。「オペレータの閲覧希望対象」とは、例えば、オペレータが閲覧権限に合致するアラーム全てを閲覧する必要はなく、特定のアラームのみを閲覧することを希望する場合に、オペレータによって適宜設定される条件である。例えば、オペレータは、アラームの発生時刻または発生期間、発生場所(エリアまたは機器)、運転モード等の条件を設定することにより、閲覧希望対象のアラームを指定することができる。なお、本開示のフィルタリング条件は、これらに限定されず、任意の条件とすることができる。
【0024】
コントローラ40は、フィールド機器などに接続され、フィールド機器を制御する。コントローラ40は、フィールド機器またはプロセスなどの異常を検知し、制御ネットワーク50を介して、アラーム管理装置10に異常に関する情報を送信する。ただし、コントローラ40がアラームを生成する機能を有する場合には、コントローラ40は、フィールド機器またはプロセスなどの異常を検知し、当該異常に基づいてアラームを生成し、制御ネットワーク50を介して、アラーム管理装置10にアラームを送信してもよい。なお、図1では、コントローラ40が1台である場合を示しているが、コントローラ40は複数台であってもよい。
【0025】
アラーム管理装置10は、通信部11と、記憶部12と、処理部13とを有することができる。ここで、アラーム管理装置10は、プラント設備などにおいて異常が発生すると、例えば、制御ネットワーク50および通信部11を介して、コントローラ40から異常に関する情報を受信して、アラームを生成する。ただし、コントローラ40がアラームを生成する機能を有する場合には、アラーム管理装置10は、例えば制御ネットワーク50および通信部11を介して、アラームを受信してもよい。なお、アラーム管理装置10は、上述したアラームを記憶部12に記憶する。以下、アラーム管理装置10の各部の機能の一例を説明する。
【0026】
通信部11は、エンジニアリング端末20、監視端末30、およびコントローラ40とそれぞれ相互に通信可能な任意の1つ又は複数の通信インタフェースを含むことができる。通信インタフェースは、無線通信または有線通信にてデータ通信を行うことが可能なものであれば、任意である。なお、通信部11は、必ずしも1つとは限らない。
【0027】
記憶部12は、アラーム管理装置10が生成した全てのアラーム、又はコントローラ40が生成した全てのアラームのデータベースである。なお、後述する処理部13は、記憶部12を適宜参照して、後述するフィルタリングを行う。記憶部12は、例えば、半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリを用いて実現することができる。記憶部12としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、またはデータを一時的に記憶することができるDRAM(Dynamic Random Access Memory)などが挙げられる。なお、記憶部12は、必ずしも1つとは限らない。なお、記憶部12は、アラーム管理装置10に外付けされてもよい。
【0028】
処理部13は、例えば通信部11を介して、監視端末30の指示部31からフィルタリング条件に関する情報を受信し、当該フィルタリング条件に基づいて、アラームをフィルタリングする。なお、処理部13は、フィルタリングしたアラームを記憶部12の所定の記憶領域に記憶してもよい。「所定の記憶領域」は、監視端末30からアラーム管理装置10へのアクセスが初回のアクセスである場合に、処理部13が、監視端末30の端末情報およびオペレータの識別情報に基づいて、記憶部12内に適宜確保することができる記憶領域である。
【0029】
ここで、上述したフィルタリング条件は、第1のフィルタリング条件と第2のフィルタリング条件とを含むことができる。この場合、処理部13は、第1のフィルタリング条件に基づいてアラームをフィルタリングし、さらに第2のフィルタリング条件に基づいてアラームをフィルタリングする。例えば、第1のフィルタリング条件が、「監視端末のアクセス権限に合致するか否かに関する条件」および「オペレータの閲覧権限に合致するか否かの条件」を含み、第2のフィルタリング条件が「オペレータの閲覧希望対象であるか否かに関する条件」を含む場合には、処理部13は、監視端末30のアクセス権限に合致する記憶領域を参照し、当該記憶領域内に記憶されたアラームの中からオペレータの閲覧権限に合致するアラームを抽出する。さらに、処理部13は、上述した方法で抽出したアラームの中から、オペレータの閲覧希望対象であるアラームを抽出する。図1において、領域A1の大きさは、監視端末30-1のアクセス権限に合致する記憶領域に記憶されたアラームのデータ量を模式的に示し、領域B1の大きさは、オペレータ1の閲覧権限に合致するアラームのデータ量を模式的に示し、領域C1の大きさは、オペレータ1の閲覧希望対象であるアラームのデータ量を模式的に示す。また、図1において、領域A2の大きさは、監視端末30-2のアクセス権限に合致する記憶領域に記憶されたアラームのデータ量を模式的に示し、領域B2の大きさは、オペレータ2の閲覧権限に合致するアラームのデータ量を模式的に示し、領域C2の大きさは、オペレータ2の閲覧希望対象であるアラームのデータ量を模式的に示す。このように、多段階のフィルタリングによって、最終的なアラームのデータ量(領域C1、領域C2の大きさ)が低減され、必要最小限となる。換言すると、オペレータへの提示対象となるアラームのデータ量(伝達量・通信量)が低減される。なお、処理部13は、第1のフィルタリング条件に基づくフィルタリングと、第2のフィルタリング条件に基づくフィルタリングとを同時に実行してもよい。
【0030】
処理部13は、このようにしてフィルタリングしたアラームを、監視端末30を介してオペレータに提示する。処理部13によってフィルタリングされたアラームのオペレータへの提示方法は任意である。例えば、処理部13によってフィルタリングされたアラームを、監視端末30が上述した記憶領域から定期的に取得し、表示部32に表示してもよい。また、処理部13によるアラームのフィルタリングが完了次第、監視端末30がフィルタリングされたアラームを取得し、表示部32に表示してもよい。また、監視端末30が、処理部13によるアラームのフィルタリングが完了した旨の通知を受けると、必要に応じてフィルタリングされたアラームを上述した記憶領域から取得し、表示部32に表示してもよい。なお、オペレータが監視端末30を介してアラーム管理装置10にアクセスすることによって、処理部13によってフィルタリングされたアラームがオペレータに提示されてもよい。
【0031】
上述したフィルタリングに加えて、処理部13は、以下の処理を行ってもよい。すなわち、処理部13は、新たなアラームと過去のアラームとを比較することによって、更新された情報(以下、「差分情報」とも称する。)を特定してもよい。これによって得られる付加的な効果を説明する。図2は、上段に示すアラーム(以下、「変更前のアラーム」とも称する。)が、プラント設備等の状況が時間経過に伴って変化することによって、下段に示すアラーム(以下、「変更後のアラーム」とも称する。)に変わったことを示す。「変更前のアラーム」が過去のアラームに対応し、「変更後のアラーム」が新たなアラームに対応する。より具体的に、図2では、上段に示すアラームと下段に示すアラームとは、アラーム識別情報(「UP-002 358」)が同じであることからわかるとおり、変更前後のアラームは、同じ機器および同じプロセスに関するアラームであり、オペレータの操作または状況の変化によりステータスが変化したことを示している。この場合、アラーム管理装置10の処理部13は、図2に示す斜線部分の情報(つまり、差分情報)のみを特定する。次に、監視端末30は、例えば定期的に、差分情報のみを取得する。次に、監視端末30は、変更前のアラームに含まれる情報のうち差分情報のみを書き替えることによって変更後のアラームを構成し、変更後のアラームをオペレータに提示する。これにより、アラーム管理装置10と監視端末30との間でアラームに含まれる全ての情報をやり取りする場合に比べて、通信量をさらに低減することができる。
【0032】
処理部13は、1つ又は複数のプロセッサを用いて実現することができる。なお、上述した種々の機能を機能毎に複数のプロセッサに分散させてもよく、複数のプロセッサが互いに連携しながら各機能を実行してもよい。
【0033】
(第1の処理例)
次に、図3を参照して、本実施形態に係るアラーム管理システム1が実行することが可能な第1の処理例を説明する。
【0034】
ステップS100において、アラーム管理装置10の処理部13は、コントローラ40から受信した情報に基づいてアラームを生成する。なお、コントローラ40自体がアラームを生成する機能を有する場合には、アラーム管理装置10の処理部13は、例えば通信部11を介して、コントローラ40からアラームを受信してもよい。
【0035】
続いて、ステップS110において、アラーム管理装置10の処理部13は、通信部11を介して、監視端末30の指示部31から第1のフィルタリング条件に関する情報を受信する。例えば、第1のフィルタリング条件が「監視端末のアクセス権限に合致するか否かに関する条件」および「オペレータの閲覧権限に合致するか否かに関する条件」を含む場合、オペレータが監視端末30にログインすることによってアラーム管理装置10へのアクセスが完了した際に、処理部13は、通信部11を介して、第1のフィルタリング条件に関する情報を受信することができる。
【0036】
ここで、監視端末30からのアラーム管理装置10へのアクセスが初回のアクセスである場合、処理部13は、監視端末30の端末情報およびオペレータの識別情報に基づいて、後述するフィルタリングされたアラームを記憶可能な記憶領域を記憶部12に確保してもよい。
【0037】
続いて、ステップS120において、アラーム管理装置10の処理部13は、通信部11を介して、監視端末30の指示部31から第2のフィルタリング条件に関する情報を受信する。例えば、第2のフィルタリング条件が「オペレータの閲覧希望対象であるか否かに関する条件」を含む場合、処理部13は、例えばオペレータの操作に基づく任意のタイミングで、通信部11を介して、第2のフィルタリング条件に関する情報を受信することができる。
【0038】
続いて、ステップS130において、アラーム管理装置10の処理部13は、ステップS110において受信した第1のフィルタリング条件とステップS120において受信した第2のフィルタリング条件とに基づいて、アラームをフィルタリングする。フィルタリングの詳細については既述の説明を援用する。
【0039】
ここで、アラーム管理装置10の処理部13は、ステップS130においてフィルタリングしたアラームを上述した記憶領域に記憶してもよい。
【0040】
続いて、ステップS140において、アラーム管理装置10の処理部13は、監視端末30を介して、フィルタリングしたアラームをオペレータに提示する。
【0041】
第1の処理例によれば、監視端末30において、不要なアラームを含む多量のアラームを受信した後に、アラームに対してフィルタリングを実行するのではなく、アラーム管理装置10においてフィルタリングすることにより、データ量が低減されたアラームが監視端末30を介してオペレータに提示される。これにより、アラーム管理装置10と監視端末30との間の通信量を低減することができる。
【0042】
(第2の処理例)
次に、図4を参照して、本実施形態に係るアラーム管理システム1が実行することができる第2の処理例を説明する。なお、アラーム管理システム1は、第1の処理例の実行後に第2の処理例を実行することができる。一例として、第1の処理例は、監視端末30からのアラーム管理装置10へのアクセスが初回のアクセスである場合に実行され、第2の処理例は、その後のアクセス時に実行される。したがって、第2の処理例における「アラーム」は、第1の処理例と同様のフィルタリングによってデータ量が低減されたアラームである。
【0043】
ステップS200において、アラーム管理装置10の処理部13は、新たなアラームのアラーム識別情報が、過去のアラームのアラーム識別情報と一致するか否かを判断する。一致する場合(ステップS200:YES)、ステップS210に進む。一致しない場合(ステップS200:NO)、ステップS240に進む。
【0044】
ステップS210に進んだ場合、ステップS210において、アラーム管理装置10の処理部13は、新たなアラームと過去のアラームとの比較に基づいて、更新された情報を特定する。
【0045】
続いて、ステップS220において、アラーム管理装置10の処理部13は、更新された情報のみを監視端末30に送信する。
【0046】
続いて、ステップS230において、監視端末30は、新たなアラームとアラーム識別情報が一致する過去のアラームに含まれる情報のうち、更新された情報のみを書き替える。これにより、オペレータには、過去のアラームと更新された情報とに基づいて構成される新たなアラームが提示される。その後、本処理が終了する。
【0047】
一方、ステップS240に進んだ場合、ステップS240において、アラーム管理装置10の処理部13は、新たなアラームに含まれる情報の全てを監視端末30に送信する。これにより、オペレータには新たなアラームが提示される。その後、本処理が終了する。
【0048】
第2の処理例によれば、フィルタリングされたアラームに含まれる情報のうち更新された情報のみがアラーム管理装置10から監視端末30に送信される。これにより、アラーム管理装置10と監視端末30との間の通信量をさらに低減することができる。
【0049】
以上、本開示を諸図面および実施形態に基づき説明したが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0050】
例えば、監視端末30がスマートフォンなどの小型端末であって、アラームのメッセージ内容が数行程度である場合には、上述した第2の処理例のように、監視端末30が更新された情報(差分情報)のみを受信して情報を書き替えるよりも、全ての情報を受信するほうが効率的な場合がある。このため、アラーム管理システム1が上述した第2の処理例を実行するか否かは、監視端末30を用いて選択可能であってもよい。より具体的には、監視端末30の種別等に関する情報をアラーム管理装置10に予め登録しておくことによって、またはステップS200の実行前に、監視端末30が元々保持している情報を用いて、監視端末30の機種または条件(モバイル端末であるか否か、画面サイズが小さいか否か等)をアラーム管理装置10が自動的に判定することによって、例えば表示領域が限られるモバイル端末等の監視端末30を介してアラームを提示する場合には、各アラームの差分情報だけではなく、新たなアラームそのものを監視端末30に送信してもよい。
【0051】
また、プラント設備などでは、ある設備がプロセスの変調または機器の故障により異常な状態にあるとき、別の設備においても副次的にプロセス異常が発生する場合がある。このような場合に、発生元の異常を示すアラーム(いわゆる「トリガアラーム」)と副次的な異常を示すアラームとの両方をオペレータの監視対象とすると、重要アラームの見落としに繋がることがある。そこで、副次的な異常を示すアラームをオペレータに提示しないで、発生元の異常を示すアラームのみをオペレータに提示するように、アラームをフィルタリングしてもよい。換言すると、フィルタリング条件は、アラームの抑制条件を含んでもよい。
【0052】
また、アラーム管理装置10の電源がOFFの期間に、過去に発生したアラームのアラーム識別情報と同じアラーム識別情報のアラームが発生した場合、コントローラ40が有するアラームの状態と、アラーム管理装置10が有するアラームの状態とが異なることがある。この場合、図5を参照して、アラーム管理装置10が備える取得部14が、コントローラ40から新たなアラームの状態を取得し、アラーム管理装置10が備える補正部15が、過去のアラームの状態を最新の状態に補正してもよい。取得部14は、コントローラと相互に通信可能な任意の1つ又は複数の通信インタフェースを含むことができる。また、補正部15は、1つ又は複数のプロセッサを用いて実現することができる。なお、上述した実施形態における通信部11が取得部14の機能を兼ねてもよく、処理部13が補正部15の機能を兼ねてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示によれば、アラーム管理装置と監視端末との間の通信量を低減することができるアラーム管理システムおよびアラーム管理方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 アラーム管理システム
10 アラーム管理装置
11 通信部
12 記憶部
13 処理部
14 取得部
15 補正部
20 エンジニアリング端末
21 入力部
30-1、30-2 監視端末
31-1、31-2 指示部
32-1、32-2 表示部
40 コントローラ
50 制御ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5