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特許7379007コンタクト要素、コンタクト要素を有するプラグ、およびバイポーラスタックに接触するためのコンタクト配置
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  • 特許-コンタクト要素、コンタクト要素を有するプラグ、およびバイポーラスタックに接触するためのコンタクト配置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】コンタクト要素、コンタクト要素を有するプラグ、およびバイポーラスタックに接触するためのコンタクト配置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20231107BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01R13/11 A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019146342
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2020027799
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10 2018 213 688.2
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,マイク
(72)【発明者】
【氏名】スチェパノビック,ゾラン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ヘルゲ
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-216486(JP,A)
【文献】特開2014-170626(JP,A)
【文献】特開2002-352820(JP,A)
【文献】特開2003-264023(JP,A)
【文献】特開2013-254681(JP,A)
【文献】実公昭51-006694(JP,Y1)
【文献】特開平03-246875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0177019(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0022382(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0141376(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0023090(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016225438(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014225949(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(49)のバイポーラプレート(47)に接触するためのコンタクト要素(1)であって、長手方向軸(L)に沿って延びるコンタクト本体(2)を有し、前記コンタクト本体(2)はチャネル(8)を有し、前記チャネル(8)は、前記長手方向軸(L)に沿って延び、前記長手方向軸(L)を横切って互いに対向して位置する少なくとも2つのチャネル壁(10、12)により画定されて、前記バイポーラプレート(47)の一部を受け入れる、コンタクト要素(1)であって、
前記コンタクト本体(2)は、少なくとも1つの前記チャネル壁(10)に、前記チャネル(8)内に突出する少なくとも1つのコンタクトばね(24)を有し、前記コンタクトばね(24)は、反対側の前記チャネル壁(12)側に向けられている、前記バイポーラプレート(47)に接触するための切刃(26)を有することを特徴とするコンタクト要素(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのコンタクトばね(24)の前記切刃(26)は、前記長手方向軸(L)に平行に延びることを特徴とする、請求項1に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのコンタクトばね(24)は、前記長手方向軸(L)を横切って延びることを特徴とする、請求項1または2に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコンタクトばね(24)は、枢軸(S)周りで弾性偏向可能であるように前記コンタクト本体(2)に配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項5】
前記コンタクト要素(1)は、前記チャネル壁(10)に配置されている少なくとも2つの前記コンタクトばね(24)を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項6】
前記切刃(26)は前記コンタクトばね(24)の自由端(30)に形成され、前記自由端(30)は前記反対側のチャネル壁(12)の方向に曲げられていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコンタクトばね(24)と前記コンタクト本体(2)とは、モノリシック部品(38)として一体に形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項8】
前記コンタクトばね(24)は、前記少なくとも2つのチャネル壁(10、12)を接続し、かつ前記長手方向軸(L)を横切る方向に前記チャネル(8)を画定するベース(14)から離れて延び、前記ベース(14)から離れる方向にテーパ状になっていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項9】
前記切刃(26)はステンレス鋼から成形されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項10】
前記コンタクト本体(2)は、前記長手方向軸の方向(L)に位置する端部(40)に挿入面取り部(42)を備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンタクト要素(1)。
【請求項11】
燃料電池スタック(49)の複数のバイポーラプレート(47)に接触するためのプラグ(46)であって、複数のコンタクトチャンバ(50)を備えるハウジング(48)を有し、前記複数のコンタクトチャンバ(50)は、平行に位置合わせされ、互いに隣接して配置され、長手方向軸(L)の方向に開いている、プラグであって、
請求項1~10のいずれか一項に記載のコンタクト要素(1)が少なくとも1つの前記コンタクトチャンバ(50)に配置されていることを特徴とするプラグ(46)。
【請求項12】
前記プラグ(46)は、互いに対してずれて配置されている、前記コンタクト要素(1)の少なくとも2つの列(52、54)を有することを特徴とする、請求項11に記載のプラグ(46)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記コンタクト要素(1)は、前記コンタクトチャンバ(50)から突出する、電気導体(64)に接続するためのプラグイン部分(16)を有することを特徴とする、請求項11または12に記載のプラグ(46)。
【請求項14】
燃料電池スタック(49)のバイポーラプレート(47)と、長手方向軸(L)に沿って延びるコンタクト本体(2)を有するコンタクト要素(1)とを備え、前記コンタクト本体(2)はチャネル(8)を有し、前記チャネル(8)は、前記長手方向軸に沿って(L)延び、前記長手方向軸(L)を横切って互いに対向して位置する少なくとも2つのチャネル壁(10、12)により画定され、前記バイポーラプレート(47)の少なくとも一部(74)が少なくとも部分的に前記チャネル(8)に配置されている、コンタクト配置(70)であって、
前記コンタクト本体(2)は、少なくとも1つの前記チャネル壁(10)に、切刃(26)を有する少なくとも1つのコンタクトばね(24)を有し、前記切刃(26)は、前記チャネル(8)内に突出し、反対側の前記チャネル壁(12)側に向けられ、前記コンタクトばね(24)に面した前記バイポーラプレート(47)の表面(76)に切り込むことを特徴とするコンタクト配置(70)。
【請求項15】
前記切刃(26)は前記バイポーラプレート(47)より高い強度を有する、請求項14に記載のコンタクト配置(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックのバイポーラプレートに接触するためのコンタクト要素であって、長手方向軸に沿って延びるコンタクト本体を有し、コンタクト本体はチャネルを有し、チャネルは、長手方向軸に沿って延び、長手方向軸を横切って互いに対向して位置する少なくとも2つのチャネル壁により画定されて、バイポーラプレートの一部を受け入れる、コンタクト要素に関する。本発明はさらに、燃料電池スタックの複数のバイポーラプレートに接触するためのプラグであって、複数のコンタクトチャンバを備えるハウジングを有し、複数のコンタクトチャンバは、平行に位置合わせされ、互いに隣接して配置され、長手方向軸の方向に開いている、プラグに関する。
さらに、本発明は、燃料電池スタックのバイポーラプレートと、チャネルを有するコンタクト要素とを備え、チャネルは、長手方向軸に延び、長手方向軸を横切って互いに対向して位置する少なくとも2つのチャネル壁により画定され、バイポーラプレートは少なくとも部分的にチャネルに配置されている、コンタクト配置に関する。
【背景技術】
【0002】
導入部で述べたタイプのコンタクト要素、プラグ、およびコンタクト配置が先行技術から知られている。燃料電池スタックでは、個々のセルが互いに層になってスタックを形成し、各セルはバイポーラプレートにより分離されている。バイポーラプレートを使用して、動作媒体を燃料電池の電極に伝える。車両の燃料電池スタックの性能および/または故障を調査するために、セル間のバイポーラプレートはプラグにより制御回路に接続され、各セルの電圧が測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に車両では、プラグが大きい振動荷重および/または衝撃荷重に晒されるため、好ましくない場合には、コンタクト要素がバイポーラプレートから切り離されることがある。加えて、振動および/または衝撃により、バイポーラプレートとコンタクト要素との間に電圧値の変動が生じることがある。
【0004】
この背景に照らして、本発明の課題は、大きい荷重によっても、特に大きく振動する環境において、かつ/または大きい衝撃荷重のあるときでも、安定した接触を保証する、コンタクト要素、プラグ、およびコンタクト配置を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、コンタクト本体が、少なくとも1つのチャネル壁に、チャネル内に突出する少なくとも1つのコンタクトばねを有し、コンタクトばねは、反対側のチャネル壁側に向けられている、バイポーラプレートに接触するための切刃を有するという特徴の本発明によって、導入部で述べたコンタクト要素により解決される。
【0006】
導入部で述べたタイプのプラグの課題は、本発明によれば、本発明によるコンタクト要素が少なくとも1つのコンタクトチャンバに嵌入することによって、さらに解決される。
【0007】
導入部で述べたコンタクト配置について、課題は、本発明によれば、少なくとも1つのチャネル壁に、チャネル内に突出する少なくとも1つのコンタクトばねを有し、コンタクトばねは、反対側のチャネル壁側に向けられている切刃を有し、前記切刃はコンタクトばねに面したバイポーラプレートの接触領域に切り込む、コンタクト本体よって解決される。
【0008】
切刃により、コンタクトばねはバイポーラプレートの表面に切り込み、その結果、コンタクトばねはバイポーラプレートに大きい接触力で接続される。大きい荷重下でも、例えば振動荷重および/または衝撃荷重によっても、接続が切り離されることはない。したがって、コンタクトばねとバイポーラプレートとを互いに動かないように結合されることにより、生じる振動を補償することができ、動作中に接触が変動しないことが好ましい。
【0009】
以下、希望に応じて互いに独立して互いに組み合わせることができ、それ自体が各々有利であるさらなる発展形態について詳細に述べる。
【0010】
したがって、第1の有利な構成によれば、コンタクト本体は、長手方向軸を横切る横方向の略U字形横断面を有することができ、2つのチャネル壁がU字形横断面のそれぞれの脚部を形成し、ベースにより互いに接続される。これにより、バイポーラプレートの一部を、少なくとも長手方向軸を横切る方向に、ベースで止まるまでチャネルに挿入することができ、コンタクト本体により取り囲むことができる。バイポーラプレートの縁部をチャネルに挿入することができると好ましい。
【0011】
チャネルは、長手方向軸の方向で長手方向に配置されている少なくとも1つの端部において開くことができる。これにより、分離プレートを長手方向軸の方向に押し込むことができる。チャネルが、長手方向軸に沿って配置されている両端において開くことにより、バイポーラプレートをチャネルに受け入れることのできる、長手方向軸に沿ったバイポーラプレートの一部の長さが、長手方向軸の方向で壁により画定されないことが好ましい。これにより、バイポーラプレートが変形および/または損傷することなく、燃料電池スタックのバイポーラプレートの大きい公差および/またはずれを長手方向軸の方向に補償することができるというプラグの状況が得られる。したがって、バイポーラプレートを、それぞれのコンタクト要素のチャネルに長手方向軸の方向で異なる深さまで挿入することができ、コンタクト要素は長手方向軸を横切る平面に配置される。
これにより、積層されたバイポーラプレートの大きい公差および/またはずれの場合でも、スタックのレセプタクルに正確に嵌入して差し込むことができ、それぞれのバイポーラプレートに確実に接触することができるように、プラグの寸法を決めることが可能になる。
【0012】
さらに有利な構成によれば、少なくとも1つのコンタクトばねの切刃は、長手方向軸に平行に延びることができる。したがって、切刃は、縁部がチャネルに受け入れられたときに大きい接触領域に接触することができ、コンタクト要素の小型の構造が保証される。したがって、接触領域が長手方向に延びるため、コンタクト要素の横方向の幅を小さくすることができる。
【0013】
積層されたバイポーラプレートの横方向のずれおよび/または公差を補償するために、有利な実施形態によれば、コンタクトばねが、長手方向軸を横切ってチャネル壁のベースから離れて延びると特に有利であることがわかっている。これにより、切刃はベースから離間することができるため、バイポーラプレートをチャネルに横方向で異なる深さまで挿入することができ、それにもかかわらず、バイポーラプレートに切刃が接触することができる。したがって、この構成により、バイポーラプレートの、特に横方向の位置合わせ中に大きい公差が生じる。切刃を、ベースよりも、長手方向軸を横切ってチャネルの開口の近くに配置することができ、これにより、バイポーラプレートの可能な接触領域を拡大することができると好ましい。
【0014】
有利な構成によれば、切刃をチャネル壁間でチャネルに配置することができる。切刃を、反対側のチャネル壁に対して約60°~約120°の角度で配置することができると好ましい。
【0015】
少なくとも1つのコンタクトばねを、枢軸周りで弾性偏向可能であるように、コンタクト本体に配置することができる。枢軸を長手方向軸に平行に配置することができ、少なくとも1つのコンタクトばねを、枢軸上でベースによりチャネル壁に接続することができると好ましい。コンタクトばねに、特に反対側のチャネル壁の方向に予張力を加えることができ、反対側のチャネル壁と切刃との間隔は、バイポーラプレートの、または接触のためにチャネルに挿入可能なバイポーラプレートの少なくとも一部の、材料厚さより小さくてよい。これにより、バイポーラプレートがチャネルに挿入されると、コンタクトばねを枢軸周りで弾性偏向させることができる。切刃は、コンタクトばねのばね力により、切刃に面したバイポーラプレートの表面に押し付けられ、バイポーラプレートに確実に接触することができる。
【0016】
さらに有利な構成において、コンタクトばねは、長手方向軸を横切る方向にテーパ状であって、ベースからの間隔が長手方向軸を横切る方向に増加するにつれて、コンタクトばねの長さが長手方向軸の方向に減少するようになっていてもよい。これにより、コンタクトばねのばね力が小さい接触領域にわたって配分されるため、コンタクトばねが切断クランプにより接触される圧力が増加することを保証することができる。したがって、この構成により、切断クランプとバイポーラプレートとの接触をさらに向上させることができる。
【0017】
好ましい構成によれば、コンタクト要素は、チャネル壁において長手方向軸の方向に隣接してかつ/または互いに平行に配置可能な少なくとも2つのコンタクトばねを有することができる。少なくとも2つのコンタクトばねをチャネル壁に配置可能であることにより、特に小型のコンタクト要素を形成することができる。他には、コンタクトばねが周りで弾性偏向可能なばね路のみを考慮すればよい。コンタクトばねが両側のチャネル壁に配置される場合、コンタクトばねが周りで弾性偏向するばね路を、チャネルに位置するバイポーラプレートの一部の両側で差し込まれるバイポーラプレートの場合を考慮しなければならないため、チャネルの幅をチャネル壁間でより広く設計することが必要になる。しかしながら、この好ましい構成により、燃料電池スタックのバイポーラプレートの封止されたスタックが接触可能な、特に小型のプラグを形成することができる。
【0018】
コンタクト要素を特に簡単かつ安価に製造可能にするために、コンタクトばねとコンタクト本体とを、モノリシック部品として、特に型打ち曲げ部分として一体に形成することができる。したがって、コンタクト要素を、例えば型打ち曲げ部分として、製造プロセスで容易に製造することができる。
【0019】
少なくとも1つのコンタクトばねが配置されるチャネル壁は、チャネル壁を横切る少なくとも1つの窓を有することができる。コンタクトばねを窓に配置することができ、コンタクトばねが長手方向軸を横切って窓のフレームから離れて延びると好ましい。これにより、コンタクトばねの弾性変形によってチャネル壁が同様に偏向することを防止することができる。コンタクトばねを、チャネル壁のある平面に実質的に配置可能な程度まで、偏向させることができる。したがって、コンタクトばねがチャネル壁に押し付けられないため、チャネル壁はコンタクトばねの弾性偏向の影響を受けるおそれがない。
【0020】
切刃をコンタクトばねの自由端に形成することができ、この自由端は反対側のチャネル壁の方向に曲げられる。切刃がバイポーラプレートの表面に切り込む角度を、コンタクトばねの曲げ端部により簡単に設定することができる。
【0021】
さらに有利な構成によれば、少なくとも切刃、好ましくはコンタクト要素を、ステンレス鋼から成形することができる。ステンレス鋼はチタン合金および/またはクロム-ニッケル合金を有することができ、これらの合金は、バイポーラプレートの表面の被覆を貫通することができ、接触領域のバイポーラプレートおよび/またはコンタクト要素の腐食を防止することが好ましい。
【0022】
コンタクト要素はプラグイン部分を有することができ、コンタクト要素を、例えばプリント回路基板などの電気導体に差し込むことができるようにするために、プラグイン部分を自由端に形成し、スズで被覆することができる。
【0023】
コンタクト要素は、長手方向軸の方向に配置されている自由端に挿入面取り部を備えることができる。例えば、ベースから離れたチャネル壁の角部を、自由端で互いから離れる方向に向けることができるため、チャネルが広がり、チャネルへのバイポーラプレートの挿入が容易になる。さらに、バイポーラプレートをレーザ切断または型打ちにより形成することができるが、尖った縁部が生じることがあり、差込み中にコンタクト要素に損傷を与えるおそれがある。これを挿入面取り部により防止することができる。
【0024】
チャネル壁は、特にベースよりもさらに長手方向軸の方向に延びることができ、チャネル壁が接触領域にわたってバイポーラプレートに重なることができるようになっている。チャネル壁が、ベースから離れたそれぞれの側の長手方向軸の方向にテーパ状になることができると好ましい。
【0025】
燃料電池スタックのバイポーラプレートは、例えば、長手方向軸の方向の縁部から離れて延びる略矩形の切欠きを備えることができる。これにより、プラグをスタックに長手方向に差し込むことができ、プラグにはバイポーラプレートの縁部が側方接触する。
【0026】
コンタクト要素は、切欠きを画定するバイポーラプレートの縁部を受け入れることができる。この場合、プラグのコンタクト要素を交互に配置することができ、すなわち、チャネルは、連続するコンタクト要素の長手方向軸を横切る方向で横方向に、反対方向に、開いている。コンタクト要素は、長手方向軸を横切る方向で、少なくとも2列のコンタクトチャンバに嵌入することができると好ましい。プラグの2列のプラグシステムを使用すると、均一のプラグシステムと比べて、ダブルピッチをコンタクトチャンバに使用することができる。これに関し、前後に並んで配置されるバイポーラプレートが反対方向からコンタクト要素に接触されるように、コンタクトチャンバに嵌入されたコンタクト要素の2つの列が、長手方向に対して横方向の相対的関係に関して、燃料電池スタックのバイポーラプレートが続く奥行き方向にずれていれば、特に有利となり得る。
【0027】
コンタクトチャンバの2つの列は各々、ハウジングの、特に互いに対向して位置する異なる壁に隣接することができる。ハウジングはそれぞれの側壁にスロットを有することができ、スロットは、チャネルに平行に配置され、コンタクトチャンバを貫通して、スロットを通してバイポーラプレートをチャネルに挿入できるようになっている。コンタクトチャンバにおけるコンタクト要素の移動を防止するために、スロットは、長手方向軸を横切る奥行き方向の幅に関して、2つのチャネル壁間のチャネルの幅より小さくすることができる。
【0028】
プラグでは、比較的多数の、特に12個のコンタクト要素を使用することができ、第1の群を第1の列に配置し、第2の群を第2の列に配置することができる。これらの群を、横方向に互いに離間して配置することができ、好ましくは各群のコンタクト要素の間隔の半分だけ、奥行き方向において互いに対してずらして配置することができるため、個々の群のコンタクト要素は積層されたバイポーラプレートに交互に接触することができる。しかしながら、プラグはいくつかのコンタクト要素を有することもでき、例えば、プラグは接触するバイポーラプレートの数に対応する数のコンタクト要素を備えることができる。
【0029】
コンタクト要素のプラグイン部分は、電気導体、特にプリント回路基板に接続するために、長手方向軸の方向でコンタクトチャンバから突出することができる。したがって、プラグイン部分を電気導体のプラグイン開口に差し込むことができる。
【0030】
少なくとも切刃は、バイポーラプレートより高い強度を有することができる。これにより、分離および/または変形に対して高い抵抗を有する、特に堅牢なコンタクト要素を形成することができる。したがって、バイポーラプレートに切り込むときの切刃の摩耗を低減させることができる。
【0031】
この代わりに、または加えて、少なくとも切刃は、バイポーラプレート、特にバイポーラプレートの表面よりも高い硬度を有することができる。したがって、切刃へのバイポーラプレートの貫入に対する抵抗を防止し、切刃の摩耗をさらに低減させることができる。
【0032】
以下、添付図面を参照しながら、例示的な実施形態を用いて、本発明を例としてより詳細に説明する。図において、構造および/または機能が互いに対応する要素は、同一の参照符号で示す。
【0033】
個々の例示的な実施形態に図示し記載する特徴の組合せは、単独で説明の目的を果たす。上記の説明に従って、例示的な実施形態の特徴は、その技術的効果が特定の適用において重要でない場合には省略することができる。逆に、上記の説明に従って、技術的効果が特定の適用において有利または必要である場合には、さらなる特徴を例示的な実施形態に追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明によるコンタクト要素の概略斜視図である。
図2図1に示すコンタクト要素の概略側面図である。
図3】本発明によるプラグの概略斜視図である。
図4】本発明によるプラグの概略平面図である。
図5】本発明によるプラグの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
最初に、図1および図2を参照しながら、本発明によるコンタクト要素1の構造について説明する。理解できるように、長手方向x、横方向y、および奥行き方向zを含むデカルト座標系を説明において使用する。
【0036】
この例示的な構成において、コンタクト要素1は、長手方向軸Lに沿って延びるコンタクト本体2を有する。長手方向軸Lは長手方向xに略平行である。コンタクト本体2は、横方向yおよび奥行き方向zにまたがる平面に略U字形横断面を有し、脚部4、6が、長手方向軸Lを横切る奥行き方向において互いに離間し、長手方向xおよび横方向yにまたがる平面に略平行に配置される。この場合、脚部4、6はチャネル8を奥行き方向zに画定し、脚部4、6はチャネル壁10、12として機能する。チャネル8は、横方向yの一方側で、チャネル壁10、12を接続するベース14により画定され、チャネル8はベース14から離れた端部で開くようになっている。チャネル8は受入領域15を形成し、この受入領域15にバイポーラプレートの一部を受け入れることができる。この場合、コンタクト本体2は、バイポーラプレートの一部を取り囲むことができ、チャネル壁はこの部分を覆う。
【0037】
コンタクト本体2はプラグイン部分16を有し、このプラグイン部分16は長手方向xに延び、端部18に配置される。プラグイン部分16のチャネル壁10、12の横方向yの幅20は、この場合、受入領域15のチャネル壁10、12の幅22より小さく、例えばプリント回路基板などの電気導体のプラグイン開口に導入することができる。このために、プラグイン部分16は、特にスズ被覆で被覆されて、プラグイン部分を、例えば、電気導体のプラグイン開口にはんだ接合で取り付けることができると好ましい。
【0038】
チャネル8に挿入されたバイポーラプレートの一部に接触するために、コンタクト要素1は、チャネル壁10に2つのコンタクトばね24を有する。コンタクトばね24は、チャネル8内に突出し、反対側のチャネル壁12側に向けられている切刃26を各々備える。コンタクトばね24は、長手方向xに互いに離間し、ベース14から離れて横方向yに延びる。コンタクトばね24は、ベース14の枢軸S周りで弾性偏向可能であり、枢軸Sは長手方向軸Lに略平行に配置される。コンタクトばね24は、チャネル壁10に接続され、反対側のチャネル壁12の方向に予張力を加えられ、バイポーラプレートの一部を挿入したときにコンタクトばね24をチャネル壁10の方向に偏向させることができるようになっている。
【0039】
切刃26はベース14から離れたコンタクトばね24の自由端30に形成され、自由端30は反対側のチャネル壁12の方向に曲げられて、切刃26が長手方向xおよび横方向yにまたがる平面に対して約60°~約120°の角度で配置されるようになっている。バイポーラプレートの挿入部分の表面は、長手方向xおよび横方向yにまたがる平面に平行に配置されることが好ましい。したがって、切刃26がバイポーラプレートの表面に十分に接触することが確実になり得る。
【0040】
切刃26を、コンタクトばね24がそこから離れて延びるチャネル壁10よりも反対側のチャネル壁12の近くに配置することができる。図1および図2に示すコンタクト要素1に従えばバイポーラプレートは一方側で接触するため、コンタクトばねがその周りを弾性偏向可能なばね路は、コンタクトばね24を備えるチャネル壁10上でのみ考慮されればよい。したがって、特に小型のコンタクト要素1を製造することができる。
【0041】
チャネル壁10は、コンタクトばね24に各々アクセス可能な窓32を備える。コンタクトばね24は、窓32に配置され、ベース14に面したフレーム34から離れてベース14の横方向yに延びる。切刃26を、ベース14よりもチャネル8の開放端の近くに配置することができると好ましい。これにより、切刃26とベース14との間に広い隙間が生じ、バイポーラプレートの一部をその隙間に挿入することができるため、奥行き方向zに積層されたバイポーラプレートの不正確な積層を補償することができる。バイポーラプレートの一部をチャネルに横方向yに挿入する深さは変化することができるため、不正確な積層の場合でも、差込み中に、燃料電池スタックのバイポーラプレートスタックのレセプタクルへ正確な嵌合でプラグを差し込むことができる。
【0042】
窓32により、コンタクトばね24の弾性偏向がチャネル壁10に影響を与えて、チャネル壁10を同様に偏向させることを防止することができる。偏向中、コンタクトばね24はチャネル壁10を押圧せず、また、前記チャネル壁10を反対側のチャネル壁12から押し離すことはない。したがって、バイポーラプレートを挿入しても、チャネル壁10、12間の間隔は変化しない。
【0043】
コンタクトばね24は、ベース14からの間隔が増加するにつれてテーパ状になり、ベース14から切刃26までの間隔が増加するにつれて長手方向xの長さ36が減少するようになっている。この場合、切刃26は、例えば約0.4mmの長さで長手方向xに延びることができる。これにより、コンタクトばね24のばね力によって作用する接触力を、小さい接触領域に集中させることができる。
【0044】
コンタクト要素1を、例えばクロム-ニッケル合金またはチタン合金などのステンレス鋼から成形することができると好ましい。特に、コンタクト要素1は、例えば型打ちおよび曲げによる単一の製造プロセスで簡単かつ安価に製造することができるモノリシック部品38であってよい。金属シートの材料厚さは、例えば約0.1mmであってよい。バイポーラプレートの一部の表面に作用するばねごとの垂直抗力は、約1.8N~3.5Nであって、コンタクト要素1の差込み力が合計約5Nになるようにすることができる。
【0045】
コンタクト要素1は、プラグイン部分16から離れた端部40に挿入面取り部42を有し、コンタクト要素1をバイポーラプレートの一部に差し込むときに、その部分のチャネル8への挿入を容易にし、チャネル8へのバイポーラプレートの挿入中に、例えばバイポーラプレートの尖った縁部によりコンタクト要素1が損傷を受けることを防止するようになっている。
【0046】
奥行き方向zにおけるチャネル8の深さは、挿入面取り部42の領域で増加する。挿入面取り部42を、例えば、ベース14から離れたチャネル壁10、12の角部に形成することができ、角部は互いに離れる方向に曲げられる。これにより、挿入面取り部42は、バイポーラプレートの挿入中に長手方向xおよび横方向yの両方に作用する。
【0047】
チャネル8は長手方向xの両端で開いているため、バイポーラプレートの一部を挿入できる長手方向xの深さは限定されず、変化することができ、したがって、長手方向xにおけるバイポーラプレートの不正確な位置決めを補償することができる。
【0048】
コンタクト要素1は、コンタクトばね24と反対側のチャネル壁12に、チャネル8から離れる方向に偏向するラッチタブ44を備え、このラッチタブ44により、コンタクト要素1は、プラグのハウジングのコンタクトチャンバに掛止することができ、したがって、コンタクト要素1をコンタクトチャンバに確実に嵌入させることができる。
【0049】
図3では、本発明によるプラグ46の実施形態が斜視図で示され、図4および図5では、燃料電池スタック49のバイポーラプレート47のスタックに差し込まれたプラグ46が平面図および正面図でそれぞれ示されている。
【0050】
プラグ46はハウジング48を有し、多数のコンタクトチャンバ50がハウジング48を長手方向xに横切る。ハウジング48は電気的に絶縁され、例えば射出成形法により製造することができる。コンタクトチャンバ50は奥行き方向zに互いに離間し、第1のコンタクトチャンバ50群が第1の列52に配置され、第2のコンタクトチャンバ50群が第2の列54に配置される。第1の列52および第2の列54は横方向yに互いに離間し、列52、54のコンタクトチャンバ50間の間隔56の分だけ奥行き方向zに互いに対してずれて配置される。この場合、間隔56は、前後一列に並んで配置されているバイポーラプレート47間の間隔に対応する。
【0051】
コンタクトチャンバ50の第1の列52は側壁58に隣接し、この側壁58をスロット60が横切って、バイポーラプレート47の一部をコンタクトチャンバに挿入できるようにする。これと同様に、コンタクトチャンバ50の第2の列54は側壁58とは反対側の側壁62に隣接し、この側壁62をスロット60が同様に横切る。この場合、スロット60は各々、隣接するコンタクトチャンバ50と共に、奥行き方向zに垂直な平面に配置される。
【0052】
図3および図4に分かるように、列52、54において1つおきのコンタクトチャンバ50がコンタクト要素1を備えるように、本発明のコンタクト要素1は交互に嵌入される。列52、54が互いに対してずれているため、これは、コンタクト要素1が、長手方向xおよび横方向yにまたがる共通の平面に配置されていないことを意味する。
【0053】
コンタクト要素1は、チャネル8が隣接する側壁58、62に対して横方向yに開くように、列52、54に配置される。
【0054】
プラグイン部分16は、コンタクトチャンバ50から長手方向xに突出し、電気導体64、例えばフレキシブルプリント回路基板66の挿入口63に挿入され、しっかりとはんだ付けされる。
【0055】
図5では、コンタクト要素1とバイポーラプレート47とを備えるコンタクト配置70が示される。バイポーラプレート47は略矩形の切欠き72を有する。切欠き72は、積層されたバイポーラプレート47と同一平面上にあるべきで、プラグ46を切欠き72に正確に嵌入して挿入できるようになっていることが理想的である。しかしながら、不正確な位置決めが頻繁に生じるおそれがあり、バイポーラプレート47が横方向yおよび/または長手方向xに互いに対してずれて配置されることがある。このずれにより、バイポーラプレート47を変形させることなく、プラグ46を切欠き72に正確に嵌入して挿入することができなくなる。
【0056】
バイポーラプレート47は縁部74を有し、この縁部74は切欠き72に側方接触し、チャネル8に横方向yおよび長手方向xに挿入することができる。縁部74をチャネル8に横方向yに挿入できる深さは、切刃26がベース14から離間する横方向yの長さの分だけ変化することができる。縁部74を、最大限でもベース14で止まるまで横方向yに挿入することができる。長手方向xにおいて、縁部74をハウジング48のスロット60の閉じた端部で止まるまで挿入することもできる。
【0057】
縁部74がチャネル8に挿入されると、コンタクトばね24は、縁部74により、長手方向軸Lに略平行に位置合わせされた枢軸S周りで、コンタクトばね24を配置したチャネル壁10の方向に弾性偏向する。この場合、切刃26は、コンタクトばね24を備えたチャネル壁10に面した、バイポーラプレート47の縁部74の表面76に切り込む。表面76は被覆されることが好ましく、切刃26は被覆を横切って、表面76を約1.8N~約3.5Nの大きい力で押圧する。切刃26が表面76に切り込むため、コンタクト配置70において確実な接触を生じさせることができ、大きい荷重、例えば衝撃荷重および/または振動荷重に耐える。したがって、行程中の測定結果の変動を減少させることができる。
【0058】
図5では、2つのコンタクト配置70が示され、コンタクト配置70は前後に並んで積層され、バイポーラプレート47は、長手方向xおよび横方向yのずれの分だけ互いに対してずれて配置される。コンタクト要素1はプラグ46に嵌入され、切欠き72に差し込み可能であるため、奥行き方向zにおける前コンタクト要素1のチャネル8内の前バイポーラプレート47の縁部74と後バイポーラプレート47の反対側縁部74とが、後コンタクト要素1のチャネル8に配置される。コンタクト要素1の長手方向xおよび横方向yにおける大きい公差により、プラグ46を切欠き72に正確に嵌入して差し込むことができ、バイポーラプレートの形が崩れて曲がることがなく、かつ/またはバイポーラプレートに損傷を与えることがない。
【符号の説明】
【0059】
1 コンタクト要素
2 コンタクト本体
4 脚部
6 脚部
8 チャネル
10 チャネル壁
12 チャネル壁
14 ベース
15 受入領域
16 プラグイン部分
18 プラグイン部分を有する端部
20 プラグイン部分の幅
22 ベースの幅
24 コンタクトばね
26 切刃
30 自由端
32 窓
34 フレーム
36 コンタクトばねの長さ
38 モノリシック部品
40 端部
42 挿入面取り部
44 ラッチタブ
46 プラグ
47 バイポーラプレート
48 ハウジング
49 燃料電池スタック
50 コンタクトチャンバ
52 第1の列
54 第2の列
56 間隔
58 側壁
60 スロット
62 側壁
63 挿入口
64 電気導体
66 プリント回路基板
70 コンタクト配置
72 切欠き
74 縁部
76 表面
L 長手方向軸
S 枢軸
x 長手方向
y 横方向
z 奥行き方向
図1
図2
図3
図4
図5