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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20231107BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231107BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20231107BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/88
A61K8/891
A61K8/34
A61K8/02
A61Q19/00
A61Q5/02
A61Q5/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019173262
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050149
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】津村 亜紗子
(72)【発明者】
【氏名】中川 淳史
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-003356(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141919(WO,A1)
【文献】特開平01-143819(JP,A)
【文献】特開平10-158138(JP,A)
【文献】特開2005-082519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、成分B、成分Cおよび成分Dを含有し、
成分Aの含有量が2.5~10.0質量%であり、成分Aの吸油量が150~500ml/100gであり、成分Bの含有量が0.01~5.0質量%であり、成分Dの含有量が40.0~95.0質量%である、エアゾール組成物。
成分A:球状多孔質シリカ
成分B:ナイロン粉末およびシリコーン粉末からなる群から選択される少なくとも1つ
成分C:エタノール
成分D:噴射剤
【請求項2】
さらに成分Eを含有し、成分Eの含有量が0.01~2.0質量%である、請求項1に記載のエアゾール組成物。
成分E:不定形シリカ
【請求項3】
下記成分A、成分B、成分C、成分Dおよび成分Eを含有し
成分Aの含有量が0.3~10.0質量%であり、成分Aの吸油量が150~500ml/100gであり、成分Bの含有量が0.01~5.0質量%であり、成分Dの含有量が40.0~95.0質量%であり、成分Eの含有量が0.01~2.0質量%である、エアゾール組成物。
成分A:球状多孔質シリカ
成分B:ナイロン粉末およびシリコーン粉末からなる群から選択される少なくとも1つ
成分C:エタノール
成分D:噴射剤
成分E:不定形シリカ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関し、より具体的に、頭皮および頭髪用エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水および湯を用いることなく、頭皮および頭髪に付着した皮脂汚れを除去できるドライシャンプーが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、多孔質シリカとデンプンとを含む、ドライシャンプー用組成物が開示されている。一方、特許文献2には、吸油性粉体(例えば、デンプン、セルロースおよびシリカ)を含み、界面活性剤を含まない、頭髪用エアゾール組成物が開示されている。
【0004】
上述したように、従来のドライシャンプーは、一般的に、粉末成分であるシリカおよび/またはデンプンを含んでおり、これらの粉末成分によって、皮脂汚れを除去している。
【0005】
例えば、シリカは、その形状、比表面積および吸油量などに応じて、皮脂汚れの除去効果が上がる。それ故に、現在、皮脂汚れの除去効果が高いシリカが配合されたドライシャンプーの開発に注目が集まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-150271号公報
【文献】WO2018/216242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリカは、組成物中で沈殿および凝固(ケーキング)し易いという問題点を有している。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、使用感、皮脂汚れ除去力およびケーキング抑制に優れたエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定量の球状多孔質シリカと、所定量のナイロン粉末および/またはシリコーン粉末とを含有するエアゾール組成物が、使用感、皮脂汚れ除去力およびケーキング抑制に優れるという新規知見を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を含む。
【0010】
〔1〕下記成分A、成分B、成分Cおよび成分Dを含有し、
成分Aの含有量が0.3~10.0質量%であり、成分Bの含有量が0.01~5.0質量%であり、成分Dの含有量が40.0~95.0質量%である、エアゾール組成物;
成分A:球状多孔質シリカ
成分B:ナイロン粉末およびシリコーン粉末からなる群から選択される少なくとも1つ
成分C:エタノール
成分D:噴射剤。
【0011】
〔2〕さらに成分Eを含有し、成分Eの含有量が0.01~2.0質量%である、〔1〕に記載のエアゾール組成物。
成分E:不定形シリカ
〔3〕上記成分Aは、吸油量が40~500ml/100gである、請求項1または2に記載のエアゾール組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用感、皮脂汚れ除去力およびケーキング抑制に優れたエアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0014】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意図する。また、本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、エアゾール組成物全体の質量を100質量%とした値である。
【0015】
〔1.エアゾール組成物〕
本発明に係るエアゾール組成物は、下記成分A、成分B、成分Cおよび成分Dを含有し、成分Aの含有量が0.3~10.0質量%であり、成分Bの含有量が0.01~5.0質量%であり、成分Dの含有量が40.0~95.0質量%である、エアゾール組成物である;
成分A:球状多孔質シリカ
成分B:ナイロン粉末およびシリコーン粉末からなる群から選択される少なくとも1つ
成分C:エタノール
成分D:噴射剤。
【0016】
本発明に係るエアゾール組成物は、使用感、皮脂汚れ除去力およびケーキング抑制に優れる。シリカは、組成物中で沈殿および凝固(ケーキング)する傾向を示し、一般的に、組成物中のシリカの量が多いほど、当該傾向が顕著になる。それ故に、本発明は、組成物中のシリカの量が少ない場合は勿論のこと、組成物中のシリカの量が多い場合にも、優れた効果を発揮する。
【0017】
本明細書において「使用感に優れる」とは、エアゾール組成物が、頭髪のゴワつきを無くし、かつ、エアゾール組成物に含まれる粉が、手移りしないこと、を意味する。本明細書において「皮脂汚れ除去力に優れる」とは、頭皮および頭髪から適度に皮脂を除去すること、を意味する。本明細書において「ケーキング抑制に優れる」とは、エアゾール組成物を静置した場合に、エアゾール組成物中の粉末成分(例えば、球状多孔質シリカ)が沈殿および凝固することを抑制する能力に優れること、を意味する。
【0018】
本発明に係るエアゾール組成物は、さらに、成分E(不定形シリカ)、成分F(デンプン)および他の成分からなる群から選択される少なくとも1つを含有してもよい。
【0019】
本発明に係るエアゾール組成物の成分は、原液と噴射剤とに大別することができる。上述した成分のうち、成分A、成分B、成分C、成分E、成分Fおよび他の成分は原液を構成する成分である。以下では、原液を構成する成分および噴射剤を構成する成分について説明する。
【0020】
〔1-1.原液〕
[成分A]
本発明に係るエアゾール組成物は、成分Aとして球状多孔質シリカを含む。当該成分Aは、皮脂汚れを除去することによって、皮脂によるベタツキを除去する効果を奏する。
【0021】
球状多孔質シリカは、真球形状のものであってもよいし、真球形状に近いものであってもよい。球状多孔質シリカは、好ましくはアスペクト比が2.0以下、より好ましくはアスペクト比が1.5以下、最も好ましくはアスペクト比が1.2以下のものである。なお、当該アスペクト比とは、球状多孔質シリカの長径と短径との比(長径/短径)を意図する。
【0022】
本発明に係るエアゾール組成物中の成分Aの含有量は、0.3~10.0質量%、好ましくは0.4~8.0質量%、より好ましくは0.5~7.0質量%である。当該構成であれば、皮脂汚れの除去効果およびベタツキ除去効果に優れる。
【0023】
球状多孔質シリカの吸油量は、限定されず、好ましくは40~500ml/100g、より好ましくは50~400ml/100g、さらに好ましくは100~400ml/100gである。当該構成であれば、皮脂汚れの除去効果およびベタツキ除去効果に優れる。なお、球状多孔質シリカの吸油量が高すぎると、かさつきが強くなる等により、使用感が劣る傾向を示す。それ故に、球状多孔質シリカの吸油量の上限値は、500ml/100gが好ましい。
【0024】
球状多孔質シリカの平均粒子径は、限定されず、好ましくは1~50μm、より好ましくは3~20μmである。なお、球状多孔質シリカの平均粒子径は、例えば、レーザ回折散乱法によって測定することができる。より具体的に、球状多孔質シリカの平均粒子径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、LA950V2、HORIBA社製)を用いて測定することができる。当該構成であれば、本発明に係るエアゾール組成物をボタンから噴射する場合に、当該ボタンの目詰まりを抑制することができる。
【0025】
球状多孔質シリカの比表面積は、限定されず、好ましくは40~1000m/g、より好ましくは300~800m/gである。当該構成であれば、吸油量が高く、皮脂汚れの除去効果およびベタツキ除去効果に優れる。
【0026】
球状多孔質シリカの細孔容積は、限定されず、好ましくは0.05~3mL/g、より好ましくは0.1~2mL/gの範囲である。当該構成であれば、吸油量が高く、皮脂汚れの除去効果およびベタツキ除去効果に優れる。
【0027】
球状多孔質シリカは、公知の方法によって作製され得る。例えば、界面活性剤を含む非極性有機溶媒中で珪酸塩の微粒子状の液滴を形成した後、炭酸ガスを用いて当該液滴をゲル化し、ゲル化された液滴を洗浄および乾燥することにより、球状多孔質シリカを得ることができる。また、溶剤中で珪酸エステルの微粒子の液滴を形成した後、アンモニア等を用いて当該液滴をゲル化することによっても、球状多孔質シリカを得ることができる。また、シリカゾルをスプレードライで乾燥することによっても、球状多孔質シリカを得ることができる。勿論、球状多孔質シリカとして、市販のものを用いてもよい。
【0028】
[成分B]
本発明に係るエアゾール組成物は、成分Bとして、ナイロン粉末およびシリコーン粉末からなる群から選択される少なくとも1つを含む。当該成分Bは、ケーキングを抑制する効果に加えて、頭髪同士が絡み合って、当該頭髪に櫛などがひっかかることを低減する効果を奏する。
【0029】
ひっかかりの低減効果に優れるという観点から、本発明に係るエアゾール組成物は、ナイロン粉末およびシリコーン粉末のうち、シリコーン粉末を含むことが好ましい
本発明のエアゾール組成物中の成分Bの含有量は、ナイロン粉末およびシリコーン粉末の合計量として、0.01~5.0質量%、好ましくは0.02~4.5質量%、より好ましくは0.03~4.0質量%である。当該構成であれば、ケーキングの抑制効果、および、ひっかかりの低減効果に優れる。
【0030】
ナイロン粉末およびシリコーン粉末の平均粒子径は、限定されず、好ましくは1~50μm、より好ましくは3~20μmである。なお、ナイロン粉末およびシリコーン粉末の平均粒子径は、例えば、レーザ回折散乱法によって測定することができる。より具体的に、球状多孔質シリカの平均粒子径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、LA950V2、HORIBA社製)を用いて測定することができる。当該構成であれば、本発明のエアゾール組成物をボタンから噴射する場合に、当該ボタンの目詰まりを抑制することができる。
【0031】
ナイロン粉末およびシリコーン粉末としては、市販品を用いることができる。ナイロン粉末およびシリコーン粉末としては、例えば、架橋型シリコーン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、メチルシロキサン網状重合体、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、PEG-10ジメチコンクロスポリマー、ポリメチルシルセスオキサン、(ビニルメチコン/メチコンシルセスオキサン)クロスポリマー、ナイロン末、アイカ工業社製、商品名「ガンツパール(登録商標) GPA-550」(平均粒子径:5±1μm)、アルケマ社製、商品名「Orgasol(登録商標) 2002 EXD NAT COS」(平均粒子径:10μm)、東レ社製、商品名「SP-500」、東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名「トレフィル(登録商標) E-505C」、東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名「トレフィル(登録商標) E-506C」、信越化学工業社製、商品名「KSP-100」、信越化学工業社製、商品名「KMP-505」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、商品名「TOSPEARL(登録商標) 2000B」などが挙げられる。
【0032】

本発明のエアゾール組成物に含まれる成分Aと成分Bとの量比は、限定されないが、成分Aの量に対する成分Bの量が、多すぎないことが好ましい。「成分Bの量/成分Aの量」の値は、例えば、好ましくは1.2以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.03~0.5である。当該構成であれば、使用感がより優れたエアゾール組成物を実現することができる。
【0033】
[成分C]
本発明のエアゾール組成物は、成分Cとしてエタノールを含む。当該成分Cは、エアゾール組成物における溶媒として機能する。エタノールは、エアゾール組成物に含まれる他の成分(粉体成分を除く)との相溶性が高く、安定なエアゾール組成物を形成する点で好適である。また、エタノールは、低温でも容易に蒸発するため、エアゾール組成物を噴霧した対象に溶媒が与える影響を小さくすることができる。
【0034】
本発明のエアゾール組成物中の成分Cの含有量は、限定されない。例えば、エアゾール組成物では、成分A、成分B、成分D、成分E、成分Fおよび他の成分以外の残部を、エタノールとすることができる。
【0035】
本発明のエアゾール組成物中の成分Cの含有量は、好ましくは0~59.69質量%、より好ましくは5~40.0質量%である。当該構成であれば、より安定なエアゾール組成物を形成することができ、かつ、エアゾール組成物を噴霧した対象に与える影響をより小さくすることができる。
【0036】
[成分E]
本発明のエアゾール組成物は、成分Eとして不定形シリカを含んでいてもよい。当該成分Eは、エアゾール組成物を頭皮および頭髪の上に残すことにより、エアゾール組成物の整髪効果を上げることができる。
【0037】
不定形シリカは、無孔質のもの、または、多孔質のもののうち、いずれであってもよい。不定形シリカの形状は、球状以外であって、エアゾール組成物が頭皮および/または頭髪の上に残りやすい形状であればよく、特に限定されない。不定形シリカの形状としては、例えば、原料であるシリカを破砕および/または粉砕することによって生じる、不定形な形状が挙げられる。不定形シリカの形状としては、より具体的に、鱗片状、楕円体状、直方体状、多面体形状、中空球状、薄片状等が挙げられる。これらの形状の中では、エアゾール組成物が頭皮および頭髪の上により残り易いため、鱗片状が好ましい。
【0038】
不定形シリカは、アスペクト比が2.0よりも大きなものであってもよい。なお、当該アスペクト比とは、不定形シリカの長径と短径との比(長径/短径)を意図する。
【0039】
本発明のエアゾール組成物中の成分Eの含有量は、好ましくは0.01~2.0質量%であり、より好ましくは0.05~1.0質量%である。当該構成であれば、エアゾール組成物の整髪効果をより上げることができる。
【0040】
不定形シリカの平均粒子径は、限定されず、好ましくは1~50μm、より好ましくは3~20μmである。なお、不定形シリカの平均粒子径は、例えば、レーザ回折散乱法によって測定することができる。より具体的に、不定形シリカの平均粒子径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、LA950V2、HORIBA社製)を用いて測定することができる。当該構成であれば、本発明のエアゾール組成物をボタンから噴射する場合に、当該ボタンの目詰まりを抑制することができる。
【0041】
不定形シリカとしては、公知の方法で製造された不定形シリカを用いることができる。例えば、原料であるシリカを破砕および/または粉砕することによって得られる不定形シリカを用いることができる。また、不定形シリカとしては、市販品を用いることができる。不定形シリカとしては、例えば、富士シリシア社製、商品名「サイリシア(登録商標)530」、「サイリシア(登録商標)550」、「サイリシア(登録商標)710」、「サイリシア(登録商標)730」;旭硝子社製、商品名「サンラブリー(登録商標)C」などが挙げられる。
【0042】
[成分F]
本発明のエアゾール組成物は、成分Fとしてデンプンを含んでいてもよい。当該成分Fは、エアゾール組成物の脂質汚れの除去効果を上げることができる。
【0043】
本発明のエアゾール組成物中の成分Fの含有量は、好ましくは0.8~7.0質量%であり、より好ましくは1.0~5.0質量%である。当該構成であれば、エアゾール組成物の脂質汚れの除去効果をより上げることができる。
【0044】
デンプンとしては、例えば、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、シリコネート変性デンプン等が挙げられる。これらのデンプンのうち、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。手触り(サラサラ感)に優れるという観点から、本発明のエアゾール組成物は、これらのデンプンのうち、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウムを含むことが好ましい。
【0045】
[他の成分]
本発明のエアゾール組成物は、任意成分として、通常の化粧品に用いられる成分を含んでいてもよい。当該任意成分としては、例えば、清涼剤、制汗剤、殺菌剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線防止剤、植物エキス、抗炎症剤、キレート剤、防腐剤、保湿剤、油脂類、香料等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。これら任意成分の含有量は、任意成分の用途などに基づいて適宜決定され得る。
【0046】
清涼剤としては、例えば、メントール、メンチルグリセリルエーテル、カンファ等が挙げられる。
【0047】
制汗剤としては、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。
【0048】
殺菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、フェノール、トリクロロカルバニリド、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、ソルビン酸、塩化リゾチーム等が挙げられる。
【0049】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、BHT、没食子酸エステル類等が挙げられる。酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等が挙げられる。
【0050】
油脂類としては、例えば、炭化水素油として、流動パラフィン、スクワレンおよびスクワラン等が挙げられる。また、植物油として、ホホバ油、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油およびアボカド油等が挙げられる。
【0051】
本発明のエアゾール組成物は、実質的に水を含有しない、非水系エアゾール組成物であることが好ましい。なお、「実質的に水を含まない」とは、上述した各成分、および、後述する噴射剤とは別に、エアゾール組成物に水を添加しないことを意味する。上述した各成分、および/または、後述する噴射剤に少量の水が含有されており、エアゾール組成物が、水として当該水のみを含む場合、当該エアゾール組成物は、非水系エアゾール組成物に分類される。
【0052】
〔1-2.噴射剤〕
本発明のエアゾール組成物は、上述した原液以外に、噴射剤(成分D)を含む。当該噴射剤は、エアゾール組成物を噴霧することを可能にするとともに、エアゾール組成物にドライ感を付与する効果を奏する。
【0053】
本発明のエアゾール組成物中の成分Dの含有量は、40.0~95.0質量%、好ましくは45.0~90.0質量%である。当該構成であれば、エアゾール組成物に、より高いドライ感を付与することができる。
【0054】
本発明のエアゾール組成物に含まれる噴射剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。噴射剤としては、ガス(例えば、空気、窒素ガス、フッ素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素等)が挙げられる。当該ガスは、圧縮ガスであることが好ましい。また、噴射剤としては、液化ガス(例えば、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)、ジメチルエーテル(DME:Dimethyl ether)、イソペンタン、フルオロカーボン)が挙げられる。噴射剤としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。例えば、液化ガスのみ、または、圧縮ガスのみを用いてもよいし、液化ガスと圧縮ガスとを併用してもよい。
【0055】
液化ガスとしては、噴射力、環境保全、および生産性の観点から、LPGおよびDMEが好ましく、噴射力および冷却能の制御の容易さの観点から、LPGがより好ましい。
【0056】
より具体的に、噴射剤は、温度20℃における蒸気圧が0.05~0.35MPaである、炭素数が3~5個の炭化水素であることが好ましい。当該構成であれば、噴射力、生産性、冷却能、およびドライ感に優れたエアゾール組成物を実現することができる。
【0057】
このような噴射剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、または、これらの少なくとも2つを含む噴射剤を挙げることができる。このような噴射剤としては、より具体的に、噴射剤100質量%あたり、プロパンを0.1~50質量%(より好ましくは1.0~20質量%)、および、ブタンを50~99.9質量%(より好ましくは80~99.0質量%)含む噴射剤が挙げられる。
【0058】
〔2.エアゾール組成物の製造方法および用途〕
本発明のエアゾール組成物は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、原液をエアゾール容器内に充填し、エアゾール用バルブによってエアゾール容器をクリンチした後、ステムを介してエアゾール容器内へ噴射剤を規定量充填し、ステムに適したボタンを当該ステムに装着する方法が挙げられる。
【0059】
本発明のエアゾール組成物は、頭皮および頭髪用エアゾール組成物として、例えば、整髪用または洗浄用(例えば、ドライシャンプー)として利用することができる。
【実施例
【0060】
本発明の実施例について、以下に説明する。
【0061】
〔1.実施例~4、6~24、参考例1、5および比較例1~5〕
表1~表3に示すように各成分を配合することにより、実施例~4、6~24、参考例1、5および比較例1~5のエアゾール組成物を調整した。なお、これらの実施例では、(i)エアゾール組成物の合計量が100質量%、原液の合計量が30質量%、噴射剤の合計量が70質量%、または、(ii)エアゾール組成物の合計量が100質量%、原液の合計量が15質量%、噴射剤の合計量が85質量%となるように、各成分を配合している。
【0062】
〔2.各成分の詳細〕
<成分A>
無水ケイ酸-1(吸油量150ml/100g、平均粒子径5μm、球状多孔質):AGCエスアイテック社製、製品名「サンスフェアH-51」、
無水ケイ酸-2(吸油量300ml/100g、平均粒子径12μm、球状多孔質):AGCエスアイテック社製、製品名「サンスフェアH-122」、
無水ケイ酸-3(吸油量150ml/100g、平均粒子径20μm、球状多孔質):AGCエスアイテック社製、製品名「サンスフェアH-201」、
無水ケイ酸-4(吸油量40ml/100g、平均粒子径5μm、球状多孔質):日揮触媒化成社製、製品名「SILICA PEARL P-4M」、
<成分B>
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(平均粒子径4μm):東レ・ダウコーニング社製、製品名「トレフィルE-506S」、
(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー(平均粒子径5μm):信越化学工業社製、製品名「KSP-300」、
ポリメチルシルセスキオキサン(平均粒子径6μm):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、製品名「トスパール2000B*」、
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(平均粒子径5μm):信越化学工業社製、製品名「KSP-100」、
ナイロン末(平均粒子径5μm):ガンツ化成社製、製品名「ガンツパールGPA-550」。
【0063】
<成分D>
LPG:小池化学社製、製品名「LPG0.15」。
【0064】
<成分E>
無水ケイ酸-6(平均粒子径9μm、不定形):富士シリシア社製、製品名「サイリシア380」。
【0065】
<成分F>
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム:Nouryon社製、製品名「DRY-FLO PURE」、
トウモロコシデンプン:Nouryon社製、製品名「DRY-FLO AF PURE」、
タピオカデンプン:Nouryon社製、製品名「DRY-FLO TS PURE」、
コメデンプン:日本コーンスターチ社製、製品名「米澱粉」。
【0066】
<他の成分>
無水ケイ酸-5(吸油量30ml/100g、平均粒子径5μm、球状無孔質):AGCエスアイテック社製、製品名「サンスフェアNP-30」。
【0067】
スクワラン:日本サーファクタント社製、製品名「NIKKOL シュガースクワラン」、
ホホバ油:日本サーファクタント社製、製品名「NIKKOL ホホバ油S」。
【0068】
〔3.皮脂汚れ除去力の評価〕
皮脂汚れ除去力は、ミドルレングスのウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)に擬似頭皮脂スプレー(LPGガス 99.95%、スクワラン 0.05%)を0.5g噴霧した後、手櫛で馴染ませることで、ウィッグに擬似頭皮脂を付着させた。そして、擬似頭皮脂を付着させたウィッグに、調整したエアゾール組成物を3.0g噴霧し、手櫛で馴染ませた際の、毛髪のべたつきを以下の判定基準に基づき評価した。
【0069】
<評価基準>
◎:試験結果がべたつきを全く感じなかった場合、皮脂汚れ除去力を「◎」と評価した。
○:試験結果がべたつきをほとんど感じなかった場合、皮脂汚れ除去力を「○」と評価した。
×:試験結果がべたつきを感じた場合、皮脂汚れ除去力を「×」と評価した。
【0070】
〔4.ケーキングの評価〕
ケーキングは、透明な耐圧性のエアゾール試験瓶(容量100ml)にエアゾール組成物(中味+噴射剤)を計20g充填し、室温にて24時間静置し、試験瓶を90度に傾けて垂直に戻す動作を行った際の底部の粉体の分散状態を目視にて観察し、以下の判定基準に基づき官能にて評価を行った。
【0071】
<評価基準>
◎:傾けて戻す動作が3回以内で、底部の粉体の全てが分散した場合、ケーキングを「◎」と評価した。
○:傾けて戻す動作が4回以上6回以内で、底部の粉体の全てが分散した場合、ケーキングを「○」と評価した。
×:傾けて戻す動作を6回行っても、底部の粉体の全てが分散しなかった場合、ケーキングを「×」と評価した。
【0072】
〔5.使用感の評価〕
使用感は、ミドルレングスのウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)の半頭に調整したエアゾール組成物を3.0g噴霧し、手櫛で馴染ませた際のゴワつきの無さ、粉の手移りの無さについて以下の判定基準に基づき評価を行った。
<評価基準>
◎:試験結果がゴワつき及び粉の手移りがまったく感じられなかった場合、使用感を「◎」と評価した。
○:試験結果がゴワつき及び粉の手移りがほとんど感じられなかった場合、使用感を「○」と評価した。
×:試験結果がゴワつき及び粉の手移りを感じた場合、使用感を「×」と評価した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
〔6.試験結果〕
表1~表3より、本実施例に係るエアゾール組成物は、皮脂汚れ除去力、ケーキング、および使用感の評価に優れていることが明らかになった。なお、比較例3は、ゴワつきが大きく使用感が悪かった。比較例5は、手への粉移りがあり、使用感が悪かった。
【0077】
〔処方例〕
球状多孔質シリカ 2.5質量%
不定形シリカ 0.15質量%
ポリメチルシルセスキオキサン 0.1質量%
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム 2.0質量%
ホホバ油 0.02質量%
スクワラン 0.01質量%
チャ乾留液 0.1質量%
エタノール 25.07質量%
香料 0.05質量%
LPG 70.0質量%
合計 100.0質量%
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、頭皮および頭髪用エアゾール組成物として、例えば、整髪用または洗浄用(例えば、ドライシャンプー)として好適に利用することができる。