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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019182401
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021060434
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 泰治
(72)【発明者】
【氏名】古本 晴久
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-086453(JP,A)
【文献】特開2013-015661(JP,A)
【文献】特開2004-333734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源が内蔵された回転部材と、
前記回転部材を収納するハウジングと、
前記回転部材の回転軸方向に沿って配設され、前記回転部材と前記ハウジングの内面との間を仕切る仕切部材と、を備える定着装置であって、
前記仕切部材は、前記回転部材の上方に位置する庇部と、前記ハウジングと接触して固定された固定部と、を有し、
前記固定部は、前記回転部材の上端よりも下方に設けられ
前記回転部材の回転軸方向に沿って、前記回転部材と前記庇部との間に断熱部材が設けられ、
前記仕切部材は、前記庇部の下方に複数の爪部を有し、
前記断熱部材は、前記庇部と前記爪部との間に挟持されたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
熱源が内蔵された回転部材と、
前記回転部材を収納するハウジングと、
前記回転部材の回転軸方向に沿って配設され、前記回転部材と前記ハウジングの内面との間を仕切る仕切部材と、を備える定着装置であって、
前記仕切部材は、前記回転部材の上方に位置する庇部と、前記ハウジングと接触して固定された固定部と、を有し、
前記固定部は、前記回転部材の上端よりも下方に設けられ、
前記回転部材の回転軸方向に沿って、前記回転部材と前記庇部との間に断熱部材が設けられ、
前記定着装置は、用紙が排出される排出経路を構成するペーパーガイドを有し、
前記ペーパーガイドは、前記ハウジング上部と前記庇部との間を閉塞するように延在し、かつ、前記断熱部材の脱落を防止する凸部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の定着装置において、
前記仕切部材は、前記庇部の下方に複数の爪部を有し、
前記断熱部材は、前記庇部と前記爪部との間に挟持されたことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項3に記載の定着装置において、
前記爪部は、前記仕切部材に一体的に設けられたことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記仕切部材は、他部材の露出又は通過を許容する単数又は複数の透孔を有し、
前記透孔は、前記回転部材の上端よりも下方に設けられたことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記定着装置は、用紙が排出される排出経路を構成するペーパーガイドを有し、
前記ペーパーガイドは、前記ハウジング上部と前記庇部との間を閉塞するように延在することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にトナー像を定着させる定着装置、及びその定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置は、互いに圧接された定着ローラ及び加圧ローラからなるローラ対を備え、いずれかのローラが加熱される。未定着のトナー像は、前記ローラ対により加圧及び加熱されることで用紙に定着される。
【0003】
この種の画像形成装置において加熱されるローラ(以下、“ヒートローラ”と称する)は、印刷の都度、所定の温度まで加熱される。そのため、ヒートローラの加熱に要する消費電力を低減するために、ヒートローラから放熱された熱の定着装置外への流出を阻害する手法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ヒートローラとハウジングとの間を仕切る仕切り板を、ヒートローラを取り囲むように配設することにより、ヒートローラの熱がハウジングに伝導されることを阻害して、定着装置の断熱効果を高める構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-31562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒートローラから放熱された熱は、自然対流により、上方へ伝達される。このような熱の性質を考慮すると、ヒートローラから放熱された熱の定着装置外への流出を阻害するためには、ヒートローラの上方に存在する仕切り板に伝導された熱が、さらにハウジングへ伝導されることを抑制するような構成が求められる。
【0007】
前記特許文献1の構成における仕切り板は、ヒートローラの上方において、ハウジングの上部に固定されている。すなわち、仕切り板は、ヒートローラの上方において、ハウジングと密接している。また、金属製のボルト等の固定部材を用いて、仕切り板をハウジングに固定する場合も想定される。
【0008】
上記のように、仕切り板をハウジングに固定する固定部が、ヒートローラの上方に存在する場合、ヒートローラの上方に伝達された熱は、仕切り板に伝導され、さらに、仕切り板とハウジングが密接する面や、仕切り板をハウジングに固定する固定部材を介して、ハウジングに伝導される。従って、前記特許文献1の構成においては、ヒートローラの上方に伝達された熱が、そのまま仕切り板を伝ってハウジングへ伝導されてしまうが故に、ヒートローラから放熱された熱の定着装置外への流出を阻害することが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、仕切り板をハウジングに固定する固定部をヒートローラの上方から排除することにより、ヒートローラの上方におけるハウジングへの熱伝導を抑制し、ひいては、定着装置外への熱流出を阻害し、ヒートローラの加熱に要する消費電力を低減することができる定着装置、及びそのような定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1態様の定着装置は、熱源が内蔵された回転部材と、前記回転部材を収納するハウジングと、前記回転部材の回転軸方向に沿って配設され、前記回転部材と前記ハウジングの内面との間を仕切る仕切部材と、を備える定着装置であって、前記仕切部材は、前記回転部材の上方に位置する庇部と、前記ハウジングと接触して固定された固定部と、を有し、前記固定部は、前記回転部材の上端よりも下方に設けられ、前記回転部材の回転軸方向に沿って、前記回転部材と前記庇部との間に断熱部材が設けられ、前記仕切部材は、前記庇部の下方に複数の爪部を有し、前記断熱部材は、前記庇部と前記爪部との間に挟持されたことを特徴とするものである。
また、本発明の第2態様の定着装置は、熱源が内蔵された回転部材と、前記回転部材を収納するハウジングと、前記回転部材の回転軸方向に沿って配設され、前記回転部材と前記ハウジングの内面との間を仕切る仕切部材と、を備える定着装置であって、前記仕切部材は、前記回転部材の上方に位置する庇部と、前記ハウジングと接触して固定された固定部と、を有し、前記固定部は、前記回転部材の上端よりも下方に設けられ、前記回転部材の回転軸方向に沿って、前記回転部材と前記庇部との間に断熱部材が設けられ、前記定着装置は、用紙が排出される排出経路を構成するペーパーガイドを有し、前記ペーパーガイドは、前記ハウジング上部と前記庇部との間を閉塞するように延在し、かつ、前記断熱部材の脱落を防止する凸部を有することを特徴とするものである。
【0011】
これにより、自然対流によって回転部材から上方に伝達された熱が、仕切部材とハウジングとが密接する固定部を介してハウジングへ伝導することが抑制され、ひいては、熱が定着装置外へ流出することが阻害される。
【0013】
また、前記定着装置において、前記仕切部材は、前記庇部の下方に複数の爪部を有し、前記断熱部材は、前記庇部と前記爪部との間に挟持されていてもよい。
【0014】
また、前記定着装置において、前記爪部は、前記仕切部材に一体的に設けられていてもよい。
【0015】
また、前記定着装置において、前記仕切部材は、他部材の露出又は通過を許容する単数又は複数の透孔を有し、前記透孔は、前記回転部材の上端よりも下方に設けられていてもよい。
【0016】
また、前記定着装置において、用紙が排出される排出経路を構成するペーパーガイドを有し、前記ペーパーガイドは、前記ハウジング上部と前記庇部との間を閉塞するように延在してもよい。
【0017】
また、前記定着装置において、前記ペーパーガイドは、前記断熱部材の脱落を防止する凸部を有してもよい。
【0018】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記定着装置を備えた画像形成装置であることを特徴とする。これにより、定着装置の断熱効果を高めて、消費電力の削減に寄与することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、画像形成装置における定着装置外への熱流出を阻害し得て、定着装置の断熱効果を高めて、消費電力のさらなる低減化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る画像形成装置の内部構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態1に係る定着装置の内部構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態2に係る定着装置の内部構成を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態3に係る定着装置の内部構成を示す模式図である。
図5A】前記定着装置における仕切部材及び断熱部材の例の一部を模式的に示す側面図である。
図5B図5Aの仕切り板及び断熱部材を模式的に示す底面図である。
図5C図5Aの仕切り板及び断熱部材を模式的に示す斜視図である。
図6A】前記定着装置における仕切部材と断熱部材との他の例の一部を模式的に示す側面図である。
図6B図6Aの仕切り板及び断熱部材を模式的に示す底面図である。
図6C図6Aの仕切り板及び断熱部材を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
(実施形態1)
-画像形成装置の全体構成-
図1は、本発明の実施形態1に係る定着装置10を備えた画像形成装置1の内部構成を示す模式図である。なお、図1において、符号Xは後述する定着ローラ及び加圧ローラの回転軸方向(奥行方向)を示し、符号Yは奥行方向に直交する左右方向を示し、符号Zは上下方向を示すものとする。
【0023】
実施形態1に係る画像形成装置1は、露光装置11、現像装置12、感光体ドラム13、クリーナ装置14、帯電器15、中間転写ベルト装置16、定着装置10、給紙トレイ18、排紙トレイ19、及び用紙搬送経路200を備える構成となっており、外部から伝達された画像データに応じて、所定の用紙に対して多色及び単色の画像を形成する。
【0024】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。現像装置12、感光体ドラム13、帯電器15、及びクリーナ装置14は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0025】
感光体ドラム13は、画像形成装置1の略中央に配置されている。帯電器15は、感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させる。露光装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。
【0026】
前記一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。クリーナ装置14は、現像及び画像転写の後に感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去及び回収する。
【0027】
中間転写ベルト装置16は、感光体ドラム13の上側に配置され、中間転写ベルト21、中間転写ベルト駆動ローラ22、中間転写ベルト従動ローラ23、中間転写ローラ24、及び中間転写ベルトクリーニング装置25を備えている。なお、中間転写ローラ24は、YMCK用の各色の画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdに対応して4本設けられている。
【0028】
中間転写ベルト駆動ローラ22、中間転写ベルト従動ローラ23、及び中間転写ローラ24は、中間転写ベルト21を張架して、中間転写ベルト21の表面を所定方向(図中矢符C方向)に移動させる。
【0029】
中間転写ベルト21は、矢符Cの方向へ周回移動し、中間転写ベルトクリーニング装置25によって残留トナーを除去及び回収され、各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が順次転写して重ね合わされて、中間転写ベルト21の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0030】
画像形成装置1は、転写ローラ26aを含む2次転写装置26をさらに備えている。転写ローラ26aと中間転写ベルト21との間には、ニップ域が形成されている。転写ローラ26aは、用紙搬送経路200を通じて搬送された用紙を、ニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写される。
【0031】
給紙トレイ18は、画像形成に使用する用紙を蓄積しておくためのトレイであり、露光装置11の下側に設けられている。また、排紙トレイ19は、画像形成装置1の上側に設けられており、画像形成済みの用紙を載置するためのトレイである。
【0032】
用紙搬送経路200は、主経路201と、主経路201の途中で分岐して再合流する反転経路202とを備え、主経路201に沿って、ピックアップローラ31、レジスト前ローラ33、レジストローラ32、2次転写装置26、定着装置10、及び排紙ローラ34が配置されている。反転経路202は、定着装置10と排紙ローラ34との間から分岐し、複数の搬送ローラ35を経由してレジスト前ローラ33とレジストローラ32との間に再合流する。
【0033】
ピックアップローラ31は、給紙トレイ18の端部近傍に備えられ、給紙トレイ18から用紙を1枚ずつ用紙搬送経路200に供給する呼び込みローラである。レジストローラ32は、給紙トレイ18から搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム13上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を転写ローラ26aに搬送する。レジスト前ローラ33は、用紙の搬送を促進補助するための小型のローラである。
【0034】
用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合、用紙を排紙ローラ34から反転経路202へと逆方向に搬送して、用紙の表裏を反転させ、用紙をレジストローラ32へと再度導き、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を排紙トレイ19へと搬出する。
【0035】
なお、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdのうち少なくとも1つを用いて、モノクロ画像を形成し、モノクロ画像を中間転写ベルト装置16の中間転写ベルト21に転写することも可能である。このモノクロ画像も、カラー画像と同様に、中間転写ベルト21から用紙に転写され、定着される。
【0036】
-定着装置-
図2は、本発明の実施形態1に係る定着装置10の内部構成を示す模式図である。定着装置10は、加圧ローラ41、定着ローラ42、仕切部材60、断熱部材71、ペーパーガイド80及び剥離爪90がハウジング50に内蔵された構成となっており、2次転写装置26によって用紙の表面に転写されたトナー像を、用紙に定着させる機能を持つ。
【0037】
<加圧ローラと定着ローラ>
加圧ローラ41及び定着ローラ42は、回転軸方向Xに沿うように配置されている。定着装置10は、未定着のトナー像が形成された用紙Pを2次転写装置26から受け取り、用紙を加圧ローラ41と定着ローラ42との間に挟み込んで搬送する。定着後の用紙は、排紙ローラ34によって排紙トレイ19上に排出される。用紙Pを定着装置10内に吸入するための入紙口54が定着装置10の下方に開設されており、用紙Pを定着装置外へ排出するための出紙口55が定着装置10の上方に開設されている。
【0038】
加圧ローラ41は、図示しない駆動部に接続された円柱状のローラであって、ステンレス鋼で形成された芯金と、芯金の周囲にシリコンスポンジゴムで形成された弾性層とを備えている。
【0039】
定着ローラ42は、内部に複数の加熱部材45が設けられたローラであって、加熱部材45を覆う熱伝導層46を備えている。加熱部材45から放射される熱は、熱伝導層46を通じて、定着ローラ42の全体を加熱する。加熱部材45には、例えば、ハロゲンランプなどのランプヒータが採用される。加熱部材45として安価なランプヒータを用いることで、定着装置10の低コスト化を図ることができる。
【0040】
なお、定着装置10には、定着ローラ42と加熱ローラとの間に別途定着ベルトを架け渡したものに、加圧ローラ41を圧接させた、いわゆるベルト定着方式を採用してもよい。また、加熱部材45は、加圧ローラ41の内部にも設けられていてもよい。
【0041】
<ハウジング>
ハウジング50は、主フレーム51と、主フレーム51の外側に設けられた主カバー50aと、副フレーム52と、副フレーム52の外側に設けられた副カバー50bとから構成されている。主フレーム51及び主カバー50aは、定着ローラ42を包囲するように配設されており、副フレーム52及び副カバー50bは、加圧ローラ41を包囲するように配設されている。
【0042】
フレーム51は、例えば亜鉛メッキ鋼板などの金属製の板状体から形成されている。カバー50a,50bは、例えば難燃性合成樹脂系材料から形成されている。各カバー50a,50bの下端部には、入紙口54を構成するガイド部材53がそれぞれ備えられている。
【0043】
<仕切部材と断熱部材>
仕切部材60は、図2に示すように、主仕切部材61と副仕切部材62とからなり、加圧ローラ41及び定着ローラ42と、ハウジング50の内面との間を仕切るものであり、回転軸方向Xに沿うように配設されている。仕切部材60は、例えば亜鉛メッキ鋼板等の板材から形成されている。
【0044】
主仕切部材61は、定着ローラ42と主フレーム51との間を仕切るように配設されており、副仕切部材62は、加圧ローラ41と副フレーム52との間を仕切るように配設されている。主仕切部材61は、定着ローラ42を取り囲むように屈曲されており、副仕切部材62は、加圧ローラ41を取り囲むように屈曲されている。
【0045】
主仕切部材61は、定着ローラ42と主フレーム51との間において上下方向に延設された壁部613と、壁部613の上端から定着ローラ42の上方に延出された庇部611と、壁部613の下端から、定着ローラ42の形状に沿って定着ローラ42の下方に延出されたデッキ部614とを備える構成となっている。壁部613には、主仕切部材61をハウジング50の主フレーム51に固定する単数又は複数の固定部65が設けられている。固定部65には、例えば、ボルト等が採用される。
【0046】
定着ローラ42から放熱された熱は、自然対流により上方に伝達される。そのため、定着ローラ42と主仕切部材61との間に熱が滞留しやすい。この熱が滞留する近傍において、主仕切部材61とハウジング50とが密接する箇所が存在すると、その箇所を介して、熱がハウジング50に伝導され易くなってしまう。
【0047】
そこで、主仕切部材61と、ハウジング50の主フレーム51とが密接する固定部65は、加熱部材45が内蔵された定着ローラ42の上端よりも下方に設けられている。これにより、定着ローラ42から放熱された熱が、ハウジング50の主フレーム51に固定された固定部65を介してハウジング50へさらに伝導されることを抑制できるという効果がある。
【0048】
主仕切部材61の壁部613には、さらに、単数又は複数の開口部66が設けられている。この開口部66は、定着ローラ42の温度を検出する温度センサとしてのサーミスタ57を定着ローラ42に対して露出させるためのものであるが、これ以外に、図示しない配線等を主仕切部材61に貫通させるためにも用いられる。この開口部66は、加熱部材45が内蔵された定着ローラ42の上端よりも下方に設けられている。これにより、定着ローラ42から放熱された熱が、開口部66を通過して主仕切部材61の外方に伝達されることを抑制できるという効果がある。
【0049】
図5Aから図5Cまでは、本発明の実施形態1に係る定着装置10の仕切部材60a及び断熱部材71の例の一部を模式的に示す図であり、図6Aから図6Cまでは、仕切部材60及び断熱部材71の他の例の一部を模式的に示す図である。なお、図5C及び図6Cにおいては、断熱部材71を省略して示している。
【0050】
断熱部材71は、図5Aに示すように、庇部611の裏面に持着されている。このように断熱部材71を設けることにより、定着ローラ42から放射された熱の上方への伝達をさらに効率的に遮断することができるという効果がある。
【0051】
断熱部材71には、耐熱性を有するフェルトや発泡スポンジを用いることができる。耐熱性を有するフェルトとしては、例えば炭化耐炎繊維を交絡させて形成され、難燃性及び断熱効果を備えた耐熱性フェルトが好ましい。また、断熱部材71には、シリカエアロジェルをファイバーに含侵したシート状に加工された断熱シートや多孔質マットであって、熱伝導率が0.01~0.035W/mKであるものも使用することができる。
【0052】
断熱部材71の熱伝導率は、耐熱性フェルトであれば0.015~0.06W/mKとされることが好ましく、耐熱性発泡スポンジあるいは発泡フォームであれば0.03~0.15W/mKとされることが好ましい。発泡フォームであれば、例えばポリイミドをベースとした発泡フォームであって、空隙率50~95%、熱伝導率0.035~0.044W/mKであるものを用いることができる。
【0053】
主仕切部材61には、図5Aから図5Cまでに示すように、庇部611の下方に複数の爪部612がさらに設けられている。断熱部材71は、図5Aに示すように、庇部611と爪部612との間に挟持されている。ここで、「挟持」とは、断熱部材71の天面と庇部611の下面、及び、爪部612の上面と断熱部材71の底面をそれぞれ接触させることにより、断熱部材71を支持することを指す。
【0054】
爪部612は、図5A及び図5Cに示すように、庇部611から壁部613までを跨ぐように、上下方向に沿って、庇部611側が凸となる略コ字状のスリット6121を設けるとともに、そのスリット6121の内側に形成された切片を庇部611の下方側に折り曲げることにより形成されたものである。あるいは、爪部612は、図6A及び図6Cに示すように、庇部611の端部から略平行に2本のスリット6122,6123を設けるとともに、それらスリット6122,6123の間に形成された切片を庇部611の下方側に折り曲げることにより形成されたものであってもよい。上記のように、主仕切部材61にスリットを設けることにより形成された切片を折り曲げるだけで、爪部612を容易に形設することができるという効果があるが、もちろん、主仕切部材61とは独立した、例えば板片状の部品を主仕切部材61に取り付けることにより、爪部612を付設しても構わない。
【0055】
爪部612を断熱部材71の底面に接触させて、庇部611を断熱部材71の天面に接触させることにより、断熱部材71は庇部611の裏面に持着されている。これにより、接着剤を用いなくとも断熱部材71を庇部611に取り付けることができるが、もちろん、接着剤を用いて断熱部材を庇部611に取り付けても構わない。
【0056】
図5B及び図6Bの斜線部は、定着ローラ42から放熱された熱が主仕切部材61に伝導される部分、すなわち、爪部612の底面を示している。爪部612が設けられていることにより、定着ローラ42から放熱された熱に対して、主仕切部材61が露出している面積を低減することができ、ひいては、主仕切部材61への熱伝導を抑制できるという効果がある。
【0057】
なお、断熱部材71は、庇部611の裏面に限らず、主仕切部材61又は副仕切部材62の内側の一部あるいは全部に取り付けてもよい。
【0058】
<ペーパーガイド>
ペーパーガイド80は、出紙口55を構成するとともに、用紙Pを出紙口55に導くものであり、主カバー50aの上方に配設されている。
【0059】
ペーパーガイド80は、図2に示すように、主カバー50aに着接された上端から、庇部611に向かって緩やかに湾曲している。このペーパーガイド80の形状により、主カバー50aと庇部611との間が閉塞され、定着ローラ42から放熱された熱の庇部611の上方への伝達が阻害されるという効果がある。
【0060】
また、ペーパーガイド80の下端には、断熱部材71の先端の位置において、断熱部材71の底面と接触する凸部81が設けられている。この凸部81を設けることにより、断熱部材71の脱落を防止できるという効果がある。
【0061】
<剥離爪>
剥離爪90は、加圧ローラ41と定着ローラ42との間を通過した用紙Pを剥離するために、定着ローラ42に対向するように設けられている。剥離爪90は、定着ローラ42の同じ部分に当接することを防止するために、揺動可能に設けられてもよい。
【0062】
なお、ハウジング50への熱伝導を抑制する構成は、主仕切部材61の多様な形態により実現することができる。そのような形態の例を以下に示す。
【0063】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係る定着装置10の内部構成を示す模式図である。実施形態2に係る定着装置10の加圧ローラ41、定着ローラ42、断熱部材71、ペーパーガイド80及び剥離爪90の構成は、実施形態1において説明したものと同様である。
【0064】
<ハウジング>
ハウジング50は、フレーム51と、主フレーム51の外側に設けられた主カバー50aと、副フレーム52と、副フレーム52の外側に設けられた副カバー50bとから構成されている。主フレーム51及び主カバー50aは、定着ローラ42を包囲するように配設されている。副フレーム52及び副カバー50bは、加圧ローラ41を包囲するように配設されている。フレーム51の下端は、定着ローラ42に向かって上方に延出されている。このようなフレーム51の形状により、後述する固定部65において、主仕切部材61を主フレーム51に固定することが可能になる。
【0065】
<仕切部材>
主仕切部材61は、図3に示すように、定着ローラ42と主フレーム51との間において上下方向に延設された壁部613と、壁部613の上端から定着ローラ42の上方に延出された庇部611と、壁部613の下端から、定着ローラ42の形状に沿って定着ローラ42の下方に延出されたデッキ部614と、デッキ部614の先端からさらに定着ローラ42に向かって上方に延出された添接部615とを備える構成となっている。
【0066】
添接部615は、フレーム51の下端の形状に合わせて形成されている。添接部615には、主仕切部材61をハウジング50のフレーム51に固定する単数又は複数の固定部65が設けられている。固定部65には、実施形態1に係る定着装置10と同様に、例えば、ボルト等が採用される。
【0067】
固定部65は、実施形態1に係る定着装置10と同様に、加熱部材45が内蔵された定着ローラ42の上端よりも下方に設けられている。これにより、定着ローラ42から放熱された熱が、ハウジング50の主フレーム51に固定された固定部65を介してハウジング50へさらに伝導されることを抑制できるという効果がある。
【0068】
主仕切部材61には、さらに、サーミスタ57等を定着ローラ42に対して露出させる開口部66と、断熱部材71を支持する爪部612とが設けられており、これらの構成は実施形態1において説明したものと同様である。
【0069】
(実施形態3)
図4は、本発明の実施形態3に係る定着装置10の内部構成を示す模式図である。実施形態3に係る定着装置10の加圧ローラ41、定着ローラ42、ハウジング50、断熱部材71、ペーパーガイド80及び剥離爪90の構成は、実施形態1において説明したものと同様である。
【0070】
<仕切部材>
主仕切部材61は、定着ローラ42と主フレーム51との間において上下方向に延設された壁部613と、壁部613の上端から定着ローラ42の上方に延出された庇部611と、壁部613の下端から、定着ローラ42の形状に沿って定着ローラ42の下方に延出されたデッキ部614とを備える構成となっている。
【0071】
主仕切部材61とハウジング50の主フレーム51とが密接する単数又は複数の固定部65は、加熱部材45が内蔵された定着ローラ42の上端よりも下方に設けられている。これにより、定着ローラ42から放熱された熱が、ハウジング50の主フレーム51に固定された固定部65を介してハウジング50へさらに伝導されることを抑制できるという効果がある。
【0072】
主仕切部材61の上方には、さらに、主仕切部材61を主フレーム51に突き当てる突き当て部616が、回転軸方向に沿って局所的に設けられている。この突き当て部616は、主仕切部材61がハウジング50の主フレーム51に向かって経年的に反ることを防止するものである。突き当て部616は、定着ローラ42の上端よりも上方に位置しており、主仕切部材61は、突き当て部616において主フレーム51と軽く接触している。しかし、主仕切部材61が主フレーム51と接触する面積は、主仕切部材61を主フレーム51に固定する固定部を設けた場合における接触面積と比較して小さく、また、その接触面における面圧も、主仕切部材61を主フレーム51に固定する固定部を設けた場合における接触面圧と比較して小さい。突き当て部616を設けたことによる熱流出への影響は僅かであることから、主仕切部材61とハウジング50の主フレーム51とが密接する固定部65が、加熱部材45が内蔵された定着ローラ42の上端よりも下方に設けられる限り、ハウジング50への熱伝導の抑制は達成される。
【0073】
主仕切部材61には、さらに、サーミスタ57等を定着ローラ42に対して露出させる開口部66と、断熱部材71を支持する爪部612とが設けられており、これらの構成は実施形態1において説明したものと同様である。
【0074】
上記の実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置
10 定着装置
41 加圧ローラ
42 定着ローラ
50 ハウジング
50a 主カバー
50b 副カバー
51 主フレーム
52 副フレーム
54 入紙口
55 出紙口
61 主仕切部材
62 副仕切部材
611 庇部
612 爪部
613 壁部
614 デッキ部
615 添接部
616 突き当て部
65 固定部
66 開口部
71 断熱部材
80 ペーパーガイド
90 剥離爪
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C