(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】車両用シート、車両、車両の制御方法及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20231107BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20231107BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2019190504
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】泊岩 好
(72)【発明者】
【氏名】増野 秀一
(72)【発明者】
【氏名】西村 顕次
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-116192(JP,A)
【文献】特開2017-199302(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016221508(DE,A1)
【文献】特開2010-188881(JP,A)
【文献】特開2019-077240(JP,A)
【文献】国際公開第2019/164825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの
上部が回動可能な車両用シートであって、
前記車両用シートの右側に設けられた右側撮像手段と、前記車両用シートの左側に設けられた左側撮像手段とを備え、着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像手段と、
前記車両用シートの座面の右側あるいは左側への荷重を検出し、圧力の値を含む圧力情報を出力する圧力センサと、
前記右側撮像手段又は前記左側撮像手段で撮像された撮像情報に含まれる前記乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度変化と、前記左側撮像手段又は前記右側撮像手段で撮像された前記乗員の鼻と首元を結ぶ直線の角度変化に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、かつ前記圧力情報に含まれる圧力の値が所定の範囲内である場合に、前記シートバックの上部を回動させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする、
車両用シート。
【請求項2】
シートバックの少なくとも一部が回動可能な車両用シートと、着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する
前記車両用シートの右側に設けられた右側撮像手段と、前記車両用シートの左側に設けられた左側撮像手段と、を含む撮像手段と、
前記車両用シートの座面の右側あるいは左側への荷重を検出し、圧力の値を含む圧力情報を出力する圧力センサとを備え、前記撮像情報に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、前記振り返り動作を検出し、かつ
前記圧力情報に含まれる圧力の値が所定の範囲内である場合に、前記シートバックの
上部を回動させる制御手段と、を備えた車両を制御する制御方法であって、
着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像ステップと、
前記右側撮像手段又は前記左側撮像手段で撮像された撮像情報に含まれる前記乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度変化と、前記左側撮像手段又は前記右側撮像手段で撮像された前記乗員の鼻と首元を結ぶ直線の角度変化に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、かつ前記圧力情報に含まれる圧力の値が所定の範囲内である場合に、前記シートバックの上部を回動させる回動ステップと、
を含むことを特徴とする、
車両の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート、車両、車両の制御方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトで後退走行する際に、運転者の上半身を容易にねじることができるようにしたシートが知られている。例えば、特許文献1では、シート座席とシートバックとで構成され、シートバックの下部は剛性を有し、上部は可撓性を有するフォークリフトのシートが記載されている。このフォークリフトのシートは、後方視認のために運転者が上半身をねじってシートバックの上部にもたれると、上部が運転者の動きに合わせて変形するため、容易に後方をふり向くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のフォークリフトのシートでは、後方を振り向く際、乗員がシートバックの上方に力を加える必要があり、しかも、後方を振り向いている間シートバックに力を加え続けていなければならないという課題がある。例えば、後方を振り向いて何らかの作業を行いたい場合には、作業中もシートバックに力を加え続けなければならないため、姿勢が限定され、作業が行いにくいという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、乗員が容易に振り返り動作を行うことが可能な車両用シートを提供することを主目的とする。また、乗員が容易に振り返り動作を行うことが可能な車両用シートを備えた車両、車両の制御方法及びそのプログラムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の車両用シートは、
シートバックの少なくとも一部が回動可能な車両用シートであって、
着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像手段からの撮像情報に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、前記振り返り動作を検出した場合に、前記シートバックの少なくとも一部を回動させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0008】
この車両用シートは、着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像手段からの撮像情報に基づいて乗員の振り返り動作を検出し、振り返り動作を検出した場合に、シートバックの少なくとも一部を回動させる。こうすることにより、乗員が振り返り動作を行う際に自動的にシートバックの少なくとも一部が回動するため、乗員が振り返り動作を行いやすい。
【0009】
本発明の車両用シートにおいて、前記制御手段は、前記撮像手段で撮像された撮像情報に含まれる前記乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度変化又は前記乗員の鼻と首元を結ぶ直線の角度変化の少なくとも一方に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、前記振り返り動作を検出した場合に、前記シートバックの少なくとも一部を回動させることを特徴としてもよい。着座状態の乗員が振り返り動作を行う場合には、乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度及び乗員の鼻と首元を結ぶ直線の角度が変化するため、これらの直線の角度変化を検出した場合に乗員が振り返り動作を行っていると判定し、シートバックの少なくとも一部を回動させることにより、乗員が振り返り動作を行う際に自動的にシートバックの少なくとも一部が回動するため、乗員が振り返り動作を行いやすい。
【0010】
本発明の車両用シートにおいて、前記撮像手段は、前記車両用シートの右側に設けられた右側撮像手段と、前記車両用シートの左側に設けられた左側撮像手段と、を含み、前記制御手段は、前記右側撮像手段又は前記左側撮像手段で撮像された撮像情報に含まれる前記乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度変化と、前記左側撮像手段又は前記右側撮像手段で撮像された前記乗員の鼻と首元を結ぶ直線の角度変化に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、前記振り返り動作を検出した場合に、前記シートバックの少なくとも一部を回動させることを特徴としてもよい。このように、右肩と左肩を結ぶ直線の角度変化と鼻と首元を結ぶ直線の角度変化とを右側又は左側に設けられた撮像手段で撮像された撮像情報で判定することにより、右肩と左肩を結ぶ直線の角度変化と鼻と首元を結ぶ直線の角度変化を同じ側に設けられた撮像手段で撮像した撮像情報で判定する場合と比較して、より正確に振り返り動作を判定することができる。
【0011】
本発明の車両用シートは、前記車両用シートの右側又は左側に設けられ、圧力の値を含む圧力情報を出力する圧力センサと、を備え、前記制御手段は、前記圧力情報に含まれる圧力の値が所定の範囲内である場合に、前記シートバックの少なくとも一部を回動させることを特徴としてもよい。乗員が振り返り動作を行う際には、右側又は左側への体重移動を伴うため、この体重の変化を圧力センサで検出することにより、乗員の振り返り動作を判定することができる。加えて、上述した撮像情報に基づく振り返り動作の判定に加えて、圧力の変化に基づく振り返り動作の判定を行うことで、より正確に振り返り動作を判定することができる。
【0012】
本発明の車両は、
シートバックの少なくとも一部が回動可能な車両用シートと、
着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像手段と、
前記撮像情報に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、前記振り返り動作を検出した場合に、前記シートバックの少なくとも一部を回動させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0013】
この車両は、着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像手段からの撮像情報に基づいて乗員の振り返り動作を検出し、振り返り動作を検出した場合に、シートバックの少なくとも一部を回動させる。こうすることにより、乗員が振り返り動作を行う際に自動的にシートバックの少なくとも一部が回動するため、乗員が振り返り動作を行いやすい。
【0014】
本発明の車両の制御方法は、
シートバックの少なくとも一部が回動可能な車両用シートと、着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像手段と、前記撮像情報に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、振り返り動作を検出した場合に、シートバックの少なくとも一部を回動させる制御手段と、を備えた車両を制御する制御方法であって、
着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像ステップと、
前記撮像情報に基づいて前記乗員の振り返り動作を検出し、前記振り返り動作を検出した場合に、前記シートバックの少なくとも一部を回動させる回動ステップと、
を含むことを特徴とする、
ものである。
【0015】
この車両の制御方法は、着座状態の乗員が撮像された撮像情報を出力する撮像手段からの撮像情報に基づいて乗員の振り返り動作を検出し、前記振り返り動作を検出した場合に、前記シートバックの少なくとも一部を回動させる。こうすることにより、乗員が振り返り動作を行う際に自動的にシートバックの少なくとも一部が回動するため、乗員が振り返り動作を行いやすい。
【0016】
本発明のプログラムは、上述した車両の制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのものである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVD、コンパクトメモリなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した車両の制御方法の各ステップが実行されるため、上述した車両の制御方法と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、車両10の電気的な接続を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、車両用シート20の通常位置と回動位置を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、駆動制御処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態の一例として、車両10に備えられた車両用シート20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、車両10の制御方法の一例を示すことで、本発明の車両の制御方法及びそのプログラムについても明らかにする。
【0019】
本発明の実施の形態の一例である車両10は、
図1に示すように、座面22と、座面22にリクライニング可能に取り付けられたシートバック24と、を有する車両用シート20と、車両用シート20の四角下部に設けられ、座面22への圧力を検出する圧力センサ26と、車両用シート20に着座する乗員を撮影する右側カメラ30a及び左側カメラ30b(以下、「カメラ30」とも言う。)と、駆動モータ12の駆動等を制御する制御ユニット40と、を備えている。この車両10は、圧力センサ26から出力された圧力情報の値が予め定められた所定の範囲内であると制御ユニット40が判定し、かつ、カメラ30から出力された撮像情報に基づいて乗員が振り返り動作を行ったと判定した場合には、制御ユニット40から駆動モータ12に駆動信号が出力され、この駆動信号に基づいて駆動モータ12が駆動することで、車両用シート20の上部24a(
図2参照)が通常位置(
図2A参照)から乗員が振り返り動作を行いやすい回動位置(
図2B参照)に回動する。こうすることにより、乗員が何ら操作を行うことなく、乗員が振り返り動作を行いやすい方向に車両用シート20の上部24aが回転するため、乗員は容易に振り返り動作を行うことができ、快適に使用することができる。
【0020】
駆動モータ12は、公知の電動モータであり、車両用シート20の上部24aを回転する図示しない回転機構に連接して設けられている。この駆動モータ12は、制御ユニット40から出力される駆動信号によって駆動が制御され、駆動モータ12の駆動により、駆動モータ12と連接する図示しない回転機構を介して車両用シート20の上部が通常位置から回動位置、回動位置から通常位置に回転する。
【0021】
車両用シート20は、
図2に示すように、座面22と、座面22にリクライニング可能に取り付けられたシートバック24と、が設けられており、図示しないリクライニング機構によってリクライニング可能なリクライニングシートである。また、シートバック24は、上部24aと下部24bとからなり、上部24aと下部24bとは、駆動モータ12と連接する図示しない回動機構によって上部24aが側面方向に回動可能に設けられている。こうすることにより、制御ユニット40からの駆動信号に基づいて上部24aが回動することができるため、乗員が振り返り動作を行う際、容易に振り返り動作を行うことができ、快適に使用することができる。なお、座面22、シートバック24、図示しないリクライニング機構及び図示しない回転機構については、特定の形態のものに限定されるものではなく、公知の種々の形態を採用することが可能であり、ここでは説明を省略する。
【0022】
圧力センサ26は、公知の圧力センサであり、車両用シート20の下部右側に右側圧力センサ26aが、車両用シート20の下部左側に左側圧力センサ26bが、それぞれ設けられており、
図1に示すように、制御ユニット40と電気的に接続されている。この圧力センサ26は、座面22の右側への荷重を右側圧力センサ26aが、座面22の左側への荷重を左側圧力センサ26bが、それぞれ検出し、圧力の値を含む圧力情報を制御ユニット40に出力する。このとき、右側圧力センサ26aから出力された圧力情報に含まれる圧力の値が予め定められた所定の範囲内である場合には、乗員が右側に振り返り動作を行うと判定し、左側圧力センサ26bから出力された圧力情報に含まれる圧力の値が予め定められた所定の範囲内である場合には、乗員が左側振り返り動作を行うと判定する。こうすることにより、乗員が振り返り動作を行うことを検出することができる。
【0023】
カメラ30は、本発明の撮像手段に相当する公知のデジタルカメラであり、車両用シート20に着座した乗員を撮像し、撮像情報として制御ユニット40に送信する。このとき、右側カメラ30aは乗員が着座した際、乗員の正面側であって右手側に、左側カメラ30bは乗員が着座した際、乗員の正面側であって左側に、それぞれ設けられている。このように乗員の正面側であって右手側又は左手側に設けることにより、乗員の正面に設ける場合と比較して、右肩と左肩を結ぶ直線の角度変化と鼻と首元を結ぶ直線の角度変化を撮像情報(二次元画像情報)からより正確に検出することができる。付言すると、右肩と左肩を結ぶ直線の角度変化と鼻と首元を結ぶ直線の角度変化を正確に検出することで、乗員の振り返り動作を正確に検出することができる。
【0024】
制御ユニット40は、CPU41を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、駆動モータ12の駆動を制御する各種制御プログラム等が記憶されたROM42と、圧力センサ26から送信された圧力情報やカメラ30から送信された撮像情報等を一時的に記憶するRAM43と、駆動モータ12や圧力センサ26、カメラ30等との間の各種信号の送受信を行うインタフェース44(以下、「I/F44」と言う。)がそれぞれバス45を介して電気的に接続されている。この制御ユニット40は、各種信号に基づいて車両10の動作を制御すると共に、圧力情報や撮像情報に基づいて駆動モータ12の駆動を制御する。
【0025】
続いて、駆動モータ12の駆動を制御し、シートバック24の上部24aを回動する際の回動制御処理方法について、制御ユニット40で実行される回動制御処理ルーチンを一例に説明する。この回動制御処理ルーチンは、車両用シート20に電力が供給された後、所定の間隔で繰り返し実行される。なお、ここで、
図3は、駆動制御処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。また、以下のフローチャートにおいて、ステップS110からステップS150が本発明の撮像ステップに、ステップS190及びステップS200が本発明の回動ステップに、それぞれ相当する。
【0026】
この駆動制御処理ルーチンが実行されると、CPU41はカメラ30から撮像情報を取得し(ステップS110)、撮像情報から乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度と鼻と首元を結ぶ直線の角度をそれぞれ算出し、右肩と左肩を結ぶ直線の角度を初期肩直線角度とし、鼻と首元を結ぶ直線の角度を初期首直線角度として、それぞれRAM43に一時的に記憶する(ステップS120)。こうすることにより、基準となる乗員の肩直線角度及び首直線角度を取得する。
【0027】
次に、CPU41は、所定時間(例えば、数ミリ秒から数秒)待機し(ステップS130)、再度、カメラ30から撮像情報を取得し(ステップS140)、撮像情報から乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度と鼻と首元を結ぶ直線の角度をそれぞれ算出し、右肩と左肩を結ぶ直線の角度を肩直線角度とし、鼻と首元を結ぶ直線の角度を首直線角度として、それぞれRAM43に一時的に記憶する(ステップS150)。続いて、CPU41は、初期肩直線角度と肩直線角度、初期首直線角度と首直線角度のそれぞれを比較し、角度の変化量が予め定められた所定の閾値以上であるか否かを判定し(ステップS160)、所定の閾値未満であると判定した場合には、本ルーチンを終了する。このような場合には、乗員は振り返り動作を行っていないため、本ルーチンを実行する必要が無い。
【0028】
一方、ステップS160で角度の変化量が予め定められた閾値以上であるとCPU41が判定した場合には、右側圧力センサ26aから取得した圧力情報に含まれる圧力の値が所定の範囲内であるか否かを判定し(ステップS170)、所定の範囲内であると判定した場合には、駆動モータ12に右方駆動信号を出力し(ステップS180)、シートバック24の上部24aを右方に回動する。こうすることにより、乗員が右側に振り返り動作を行う際、シートバック24の上部24aを右方に回動させることができるため、乗員が振り返り動作を行いやすい。
【0029】
一方、ステップS170で右側圧力センサ26aから取得した圧力情報に含まれる圧力の値が所定の範囲内でないと判定した場合には、左側圧力センサ26bから取得した圧力情報に含まれる圧力の値が所定の範囲内であるか否かを判定し(ステップS190)、所定の範囲内であると判定した場合には、駆動モータ12に左方駆動信号を出力し(ステップS200)、シートバック24の上部24aを左方に回動する。こうすることにより、乗員が左側に振り返り動作を行う際、シートバック24の上部24aを左方に回動させることができるため、乗員が振り返り動作を行いやすい。
【0030】
一方、ステップS190で左側圧力センサ26bから取得した圧力情報に含まれる圧力の値が所定の範囲内でないと判定した場合には、本ルーチンを終了する。このような場合には、肩直線角度及び首直線角度の角度変化が乗員の振り返り動作以外の動作に起因するものであることが予想されるためである。こうすることにより、乗員が振り返り動作以外の動作を行った際に、シートバック24の上部24aが回動する可能性を未然に低減することができる。
【0031】
以上詳述した実施の形態によれば、カメラ30が着座状態の乗員を撮像し、カメラ30から出力された撮像情報に基づいて乗員の振り返り動作を検出し(ステップS110からステップS150)、シートバック24の上部24aを回動する(ステップS180又はステップS200)。こうすることにより、乗員が振り返り動作を行う際に自動的にシートバック24の上部24aが回動するため、乗員が振り返り動作を行いやすい。
【0032】
このとき、撮像情報に含まれる乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度と鼻と首元を結ぶ直線の角度の変化が所定の閾値以上である場合に乗員が振り返り動作を行うと判定しているため、乗員の振り返り動作を高精度で判定することができる。
【0033】
また、右側圧力センサ26aから出力された圧力情報に含まれる圧力の値が所定の閾値範囲内の場合に乗員の右側への振り返り動作を判定し(ステップS170)左側圧力センサ26bから出力された圧力情報に含まれる圧力の値が所定の閾値範囲内の場合に乗員の左側への振り返り動作を判定する(ステップS190)ことで、カメラ30から出力された撮像情報のみから振り返り動作を判定する場合と比較して、より乗員の振り返り動作を高精度で判定することができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施の形態では、撮像情報に含まれる乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度と鼻と首元を結ぶ直線の角度の変化が所定の閾値以上の場合に乗員が振り返り動作を行うと判定しているが、撮像情報に含まれる乗員の右肩と左肩を結ぶ直線の角度の変化又は鼻と首元を結ぶ直線の角度の変化のいずれか一方が所定の閾値以上の場合に乗員が振り返り動作を行うと判定してもよい。また、乗員の振り返り動作を示す挙動であれば、これに限定されるものではなく、撮像情報に表れる種々の挙動に基づいて乗員の振り返り動作を判定しても良い。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0036】
上述した実施の形態では、撮像情報と圧力情報の二つの情報に基づいて乗員の振り返り動作を検出するものとしたが、撮像情報又は圧力情報のいずれかの情報に基づいて乗員の振り返り動作を検出しても良いし、撮像情報及び圧力情報に加え、更に他の情報を追加して乗員の振り返り動作を検出してもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0037】
上述した実施の形態では、カメラ30で撮像された撮像情報に基づいて乗員の右方への振り返り動作及び左方への振り返り動作を判定しているが、乗員の右方への振り返り動作を判定する場合には、右側カメラ30aで撮像した撮像情報から右肩と左肩を結ぶ直線の角度を算出し、左側カメラ30bで撮像した撮像情報から鼻と首元を結ぶ直線の角度を算出してもよい。こうすることにより、それぞれの直線の角度変化が撮像情報により明確に現れるため、乗員の振り返り動作をより高精度で判定することができる。
【0038】
上述した実施の形態では、カメラ30で撮像された撮像情報に基づいて乗員の左方への振り返り動作及び左方への振り返り動作を判定しているが、乗員の左方への振り返り動作を判定する場合には、左側カメラ30bで撮像した撮像情報から右肩と左肩を結ぶ直線の角度を算出し、右側カメラ30aで撮像した撮像情報から鼻と首元を結ぶ直線の角度を算出してもよい。こうすることにより、それぞれの直線の角度変化が撮像情報により明確に現れるため、乗員の振り返り動作をより高精度で判定することができる。
【0039】
上述した実施の形態では、制御ユニット40で車両10の動作と駆動モータ12の駆動の両方を制御するものとしたが、車両10の動作を制御する制御ユニットと駆動モータ12の駆動を制御する制御ユニットは別々のものであってもよい。この場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上述した実施の形態で示すように、車両用シートの制御分野、特にシートバックの回動制御手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10…車両、12…駆動モータ、20…車両用シート、22…座面、24…シートバック、24a…上部、24b…下部、26…圧力センサ、26a…右側圧力センサ、26b…左側圧力センサ、30…カメラ、30a…右側カメラ、30b…左側カメラ、40…制御ユニット、41…CPU、42…ROM、43…RAM、44…インタフェース、45…バス。